特許第6985703号(P6985703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人名古屋大学の特許一覧 ▶ 岐阜県の特許一覧

<>
  • 特許6985703-精子活性化剤及びその用途 図000013
  • 特許6985703-精子活性化剤及びその用途 図000014
  • 特許6985703-精子活性化剤及びその用途 図000015
  • 特許6985703-精子活性化剤及びその用途 図000016
  • 特許6985703-精子活性化剤及びその用途 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985703
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】精子活性化剤及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20211213BHJP
   A61K 35/32 20150101ALI20211213BHJP
   A61K 35/51 20150101ALI20211213BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 35/52 20150101ALI20211213BHJP
【FI】
   A61K35/28
   A61K35/32
   A61K35/51
   A61P15/08
   A61K35/52
【請求項の数】18
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-535746(P2018-535746)
(86)(22)【出願日】2017年8月23日
(86)【国際出願番号】JP2017030204
(87)【国際公開番号】WO2018038180
(87)【国際公開日】20180301
【審査請求日】2020年7月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-164159(P2016-164159)
(32)【優先日】2016年8月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】391016842
【氏名又は名称】岐阜県
(74)【代理人】
【識別番号】100202120
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 修
(72)【発明者】
【氏名】山本 徳則
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 康人
(72)【発明者】
【氏名】松川 宜久
(72)【発明者】
【氏名】後藤 百万
(72)【発明者】
【氏名】北山 智広
(72)【発明者】
【氏名】星野 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 哲磨
【審査官】 伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−082987(JP,A)
【文献】 特開2016−007161(JP,A)
【文献】 FAZAELI, H. et al.,J Fertil In Vitro IVF Worldw Reprod Med Genet Stem Cell Biol,2016年04月03日,Vol. 4, Article No. 1000178,pp. 1-7
【文献】 LING, B. et al.,Braz J Med Biol Res,2008年,Vol. 41, No. 11,pp. 978-85
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪組織由来幹細胞、歯髄由来幹細胞、骨髄由来幹細胞及び臍帯血由来幹細胞からなる群より選択される一以上の細胞の破砕物が有効成分である、精子活性化剤。
【請求項2】
以下の(a)〜(d)のいずれかを含有する、請求項1に記載の精子活性化剤であって
(a)凍結状態の、前記細胞、
(b)前記細胞を破砕処理して得られた破砕液、
(c)(b)の破砕液を遠心処理して得られた上清、
(d)(b)の破砕液又は(c)の上清をフィルター処理して得られたろ液。
【請求項3】
人工授精に使用される、請求項1又は2に記載の精子活性化剤。
【請求項4】
前記細胞の生物種と、精子活性化剤によって活性化する精子の生物種が同一である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の精子活性化剤。
【請求項5】
前記細胞の生物種が非ヒト哺乳動物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の精子活性化剤。
【請求項6】
前記非ヒト哺乳動物がウシ、ブタ、ウマ、ヤギ又はヒツジである、請求項5に記載の精子活性化剤。
【請求項7】
前記細胞の生物種がヒトである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の精子活性化剤。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の精子活性化剤を容器に充填してなる人工授精用製剤。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の精子活性化剤及び精液を含有する人工授精用製剤。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の精子活性化剤及び精液の混合物を容器に充填してなる人工授精用製剤。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の精子活性化剤を含有する第1の組成物と、精液を含有する第2の組成物とが同一容器内に存在し、該第1の組成物と該第2の組成物とが該容器内において別の区画として存在する人工授精用製剤。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の精子活性化剤とともに精子を非ヒト哺乳動物の子宮に注入することを特徴とする、人工授精方法。
【請求項13】
前記精子が性選別精液である、請求項12に記載の人工授精方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の人工授精方法により受精卵を生産する方法。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の精子活性化剤の存在下、精子を卵子と生体外で共存させることを特徴とする、非ヒト哺乳動物の体外受精方法。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の精子活性化剤で処理した精子を卵子と生体外で共存させることを特徴とする、非ヒト哺乳動物の体外受精方法。
【請求項17】
以下のステップ(1)を含む、精子活性化方法:
(1)請求項1〜7のいずれか一項に記載の精子活性化剤の存在下、精子を培養するステップ。
【請求項18】
以下のステップ(2)を更に含む、請求項17に記載の精子活性化方法:
(2)培養後の精子を回収するステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は畜産分野及び医療(生殖医療)分野で利用可能な技術に関する。詳しくは、精子活性化剤及びその用途に関する。本出願は、2016年8月24日に出願された日本国特許出願第2016−164159号に基づく優先権を主張するものであり、当該特許出願の全内容は参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
畜産において、高額で販売される黒毛和種肉用牛の受精卵をホルスタイン種乳用牛の子宮へ移植し、乳用牛から肉用牛を生産する受精卵移植が行われている。この技術によれば、生まれた肉用牛の子牛は高額で販売され、その一方、分娩した乳用牛は泌乳を開始する(即ち、搾乳が可能になる)ことから、まさに一石二鳥である。この技術では、まず肉用牛の雌牛に肉用牛の雄の精液を人工授精し、受精卵を子宮から取り出す。取り出した受精卵は乳用牛の子宮へ移植される。正常な受精卵を移植することが必要となるが、人工受精に供した肉用牛から採取できる正常な受精卵の数は採取毎に大きく異なり、十分な数の正常受精卵が得られない場合もある。
【0003】
一方、ホルスタイン種乳牛においては、随時、後継牛を生産する必要があるが、通常の人工授精では雄と雌の子牛の割合がおよそ50%ずつ生まれる。搾乳できる個体は雌に限られることから(言い換えれば、雄のホルスタイン種子牛は乳用牛としての価値がない)、生まれるホルスタイン種の子牛は雌であることが望まれる。この要望を受け、近年、受精すると受精卵が雌になる精子(X精子)のみを精液中から選別する方法(受精卵が雄になるX精子と受精卵が雌になるY精子をフローサイトメーターにより分離し、人工受精用にX精子のみを凍結保存する)が開発され、当該方法によって得られる凍結精液(性選別精液)が販売されている。しかし、選別の過程で精子の運動性が低下することから、このような「性選別精液」は通常の凍結精液に比べて受胎率が低いのが現状である。性選別精液の受胎率を向上させる方法が開発されてはいるものの、性選別精液の受胎率は未だ通常の凍結精液の受胎率には達していないのが現状である。
【0004】
尚、本出願人は、脂肪組織由来幹細胞(Adipose-derived stem cells: ASC、Adipose-derived regeneration cells: ADRC、Adipose-derived mesenchymal stem cells: AT-MSC, AD-MSCなどと呼ばれる)がフィーダー細胞の役割を有し、生殖プロセスにも活性的に作用するとの仮説の下で研究を行い、in vitroにおいてASCが精子及び卵子を活性化する作用を有することを発見し、特許出願(特許文献1、2)を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−82987号公報
【特許文献2】特開2016−7161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
黒毛和種肉用牛の受精移植では多数の正常受精卵を高率に且つ安定的に採取することが望まれるが、受精卵の採取数低下や採取される数の変動が大きい等、解決すべき点が多々残されている。一方、ホルスタイン種乳牛の性選別精液は、雌子牛(将来牛乳を生産する個体)のみを出産させる目的で作製され、凍結精液として販売されているが、上記の通り、通常の凍結精液よりも受胎率が低く、受胎率向上が強く求められている。
【0007】
また、ウシに限らず、他の家畜の人工授精に関しても、精子の運動率や受胎率の向上が要望されている。例えば、夏の室内温度上昇のために、いわゆる夏季不妊症と呼ばれるブタ精子の運動率低下が毎年夏季に発生し、人工授精用精液の供給に不安定性を来している。一方、現代社会において不妊症に悩む夫婦は多く、その対処法(治療法)に対するニーズは大きい。不妊症の中でも、主たる原因が男性側に認められるものは男性不妊症と呼ばれる。男性不妊症の一つとして、陰嚢静脈逆流または鬱滞により精巣温度が上昇し、精子運動率が低下する精索静脈瘤の病態がある。
【0008】
本発明は、畜産分野や医療分野における上記の要望に応え、受精卵移植ないし生殖医療の向上、発展に貢献することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、ASCの細胞破砕液(特にフィルター処理後の細胞破砕液であるろ液)がin vitroにおいて精子を活性化し、in vivoにおいては人工授精後の卵子の受精と初期発生を促進するという、驚くべき知見、成果が得られた。ASC自体ではなく、細胞破砕液にこのような利用価値が見出されたことは、使用するタイミングを見計らって細胞培養を開始する必要がなく、その調製や取扱いが容易であることや、事前に材料(即ちASC)を準備しておけるため使用時の調製時間が短くて済むこと等、実用上の利点を考えれば、その意義は極めて大きい。尚、生細胞であるASC自体を使用する場合は細胞の調製に数日(通常は少なくとも3日間の培養)を要していたが、細胞破砕液であれば、予め培養した細胞を保存しておくことにより、使用時の調製に必要な時間を1時間程度に短縮することもでき、使用直前に準備することが可能となる。
【0010】
一方、ASCの破砕液の効果(即ち、精子の活性化)と同様の効果が、歯髄由来幹細胞(DPSC)、骨髄由来幹細胞(BM-MSC)及び臍帯血由来幹細胞(CB-MSC)の破砕液にも認められた。また、更なる検討によって、細胞破砕液に多量に含有されている成分としてのHSP90αを同定することに成功し、併せて、HSP90αが実際に精子を活性化することを確認した。
以下の発明は、主として上記の成果及び考察に基づき完成した。
[1] 脂肪組織由来幹細胞、歯髄由来幹細胞、骨髄由来幹細胞及び臍帯血由来幹細胞からなる群より選択される一以上の細胞の破砕物が有効成分である、精子活性化剤。
[2]以下の(a)〜(d)のいずれかを含有する、[1]に記載の精子活性化剤であって
(a)凍結状態の、前記細胞、
(b)前記細胞を破砕処理して得られた破砕液、
(c)(b)の破砕液を遠心処理して得られた上清、
(d)(b)の破砕液又は(c)の上清をフィルター処理して得られたろ液。
[3]人工授精に使用される、[1]又は[2]に記載の精子活性化剤。
[4]前記細胞の生物種と、精子活性化剤によって活性化する精子の生物種が同一である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の精子活性化剤。
[5]前記細胞の生物種が非ヒト哺乳動物である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の精子活性化剤。
[6]前記非ヒト哺乳動物がウシ、ブタ、ウマ、ヤギ又はヒツジである、[5]に記載の精子活性化剤。
[7]前記細胞の生物種がヒトである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の精子活性化剤。
[8][1]又は[2]に記載の精子活性化剤を容器に充填してなる人工授精用製剤。
[9][1]又は[2]に記載の精子活性化剤及び精液を含有する人工授精用製剤。
[10][1]又は[2]に記載の精子活性化剤及び精液の混合物を容器に充填してなる人工授精用製剤。
[11][1]又は[2]に記載の精子活性化剤を含有する第1の組成物と、精液を含有する第2の組成物とが同一容器内に存在し、該第1の組成物と該第2の組成物とが該容器内において別の区画として存在する人工授精用製剤。
[12][1]〜[6]のいずれか一項に記載の精子活性化剤とともに精子を非ヒト哺乳動物の子宮に注入することを特徴とする、人工授精方法。
[13]前記精子が性選別精液である、[12]に記載の人工授精方法。
[14][12]又は[13]に記載の人工授精方法により受精卵を生産する方法。
[15][1]〜[7]のいずれか一項に記載の精子活性化剤の存在下、精子を卵子と生体外で共存させることを特徴とする、非ヒト哺乳動物の体外受精方法。
[16][1]〜[7]のいずれか一項に記載の精子活性化剤で処理した精子を卵子と生体外で共存させることを特徴とする、非ヒト哺乳動物の体外受精方法。
[17]以下のステップ(1)を含む、精子活性化方法:
(1)[1]〜[7]のいずれか一項に記載の精子活性化剤の存在下、精子を培養するステップ。
[18]以下のステップ(2)を更に含む、[17]に記載の精子活性化方法:
(2)培養後の精子を回収するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】牛の受精卵移植の概要。
図2】培養試験に用いたシャーレの概略図。cont1:精液20μl+PBS 3μl、cont2:精液20μl+PBS 6μl、1/100:精液20μl+ASCろ液3μl、1/50:精液20μl+ASCろ液6μl。
図3】1回目の採卵結果。左:対照区の胚(左子宮角から採取)、右:試験区の胚(右子宮角から採取)。
図4】2回目の採卵結果。左:試験区の胚(左子宮角から採取)、右:対照区の胚(右子宮角から採取)。
図5】各種間葉系幹細胞のろ液による精子活性化作用。1フレーム当たりの平均移動距離を比較した。PBS: PBS(-)添加(陰性コントロール)、B-ASC: ウシ脂肪組織由来幹細胞ろ液添加(陽性コントロール)、H-ASC-f2: ヒト脂肪組織由来幹細胞ろ液添加、H-DPSC-f1: 凍結融解後のヒト歯髄由来幹細胞ろ液添加、H-CB-MSC-f2: ヒト臍帯血由来幹細胞ろ液添加。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.精子活性化剤
本発明の第1の局面は精子活性化剤に関する。精子について使用する用語「活性化」とは、精子の運動性/運動率(特に前進運動性/前進運動率)が高まること、及び/又は精子の生存期間が延びること、を意味する。運動性/運動率の低下を抑え、高い運動性/運動率を維持することも、ここでの「運動性/運動率が高まること」に該当する。活性化した精子を用いると、例えば、人工授精における受精効率や受胎率の向上、初期発生の促進等を期待できる。
【0013】
本発明の精子活性化剤では脂肪組織由来幹細胞(ASC)の破砕物が有効成分となる。言い換えれば、ASCの破砕物中の成分が特有の作用効果、即ち、精子の活性化をもたらす。この点において、ASC自体(即ち生細胞)を精子の活性化に利用する技術と対極をなす。
【0014】
本発明の精子活性化剤の一態様では、歯髄由来幹細胞(DPSC)、ヒト骨髄由来幹細胞(BM-MSC)又は臍帯血由来幹細胞(CB-MSC)の破砕物が有効成分となる。
【0015】
脂肪組織由来幹細胞(ASC)の破砕物、歯髄由来幹細胞(DPSC)の破砕物、、ヒト骨髄由来幹細胞(BM-MSC)の破砕物、及び臍帯血由来幹細胞(CB-MSC)の破砕物、の中の二種類以上を併用して本発明の精子活性化剤を構成してもよい。
【0016】
脂肪組織由来幹細胞(ASC)の破砕物を有効成分とする場合、典型的には、本発明の精子活性化剤は、以下の(a)〜(d)のいずれかを含有することになる。
(a)凍結状態の脂肪組織由来幹細胞(ASC)
(b)脂肪組織由来幹細胞(ASC)を破砕処理して得られた破砕液
(c)(b)の破砕液を遠心処理して得られた上清
(d)(b)の破砕液又は(c)の上清をフィルター処理して得られたろ液
【0017】
(a)、即ち「凍結状態の脂肪組織由来幹細胞(ASC)」を含有する場合には、使用前又は使用時の融解によってASCが破砕され、有効成分として機能する「ASCの破砕物」が生じることになる。この態様の精子活性化剤は、用時調製が不要になること、取扱い易いこと、長期の保存に適することなど、多くの利点を有する。この態様の精子活性化剤を調製するためにはASCを適当な容器(例えば凍結保存に適したチューブ、遠沈管、バッグなど)に入れ、凍結(例えば-20℃〜-196℃)させればよい。尚、ASCの調製方法は後述する。
【0018】
(b)、即ち「脂肪組織由来幹細胞(ASC)を破砕処理して得られた破砕液」を得るためにはASCを破砕処理、例えば凍結融解処理(凍結の後、融解する処理)、超音波処理、フレンチプレスやホモジナイザーによる処理等に供すればよい。非物理的な処理によって細胞を破砕することにしてもよい。また、破砕処理に供する細胞として、生細胞に限らず、死細胞や障害を受けた細胞を用いることにしてもよい。各種破砕処理の中でも凍結融解処理は簡便であり、また、器械と細胞の接触による汚染を回避でき、衛生的である点から特に好ましい。凍結融解処理を複数回(例えば2回〜5回)繰り返すことにしてもよい。凍結融解処理における凍結の条件は特に限定されないが、例えば、-20℃〜-196℃で凍結すればよい。融解の条件も特に限定されない。例えば、湯煎(例えば35℃〜40℃)での融解、室温での融解等を採用することができる。
【0019】
本発明の一態様では、上記の破砕液((b))を遠心処理して得られた上清、即ち、破砕液から不溶成分を除去したもの((c))を精子活性化剤に用いる。不溶成分の除去は完全な除去でなくてもよい。遠心処理の条件を例示すると、200〜300gで5分〜10分である。
【0020】
本発明の別の一態様では、上記の破砕液((b))又はその遠心上清((c))をフィルター処理して得られたろ液を精子活性化剤に用いる。フィルター処理によって不要成分を除去することができる。また、適切な孔径のフィルターを使用すれば、不要成分の除去と滅菌処理を同時に行うことができる。フィルター処理に使用するフィルターの材質、孔径などは特に限定されない。但し、好ましい材質としてセルロースアセテートを例示することができる。金属製のフィルターを使用することにしてもよい。孔径の例は0.2μm〜0.45μmである。
【0021】
歯髄由来幹細胞(DPSC)、ヒト骨髄由来幹細胞(BM-MSC)又は臍帯血由来幹細胞(CB-MSC)の破砕物を有効成分とする場合の精子活性化剤も、典型的には、脂肪組織由来幹細胞(ASC)の破砕物を有効成分とする場合と同様に、(a)凍結状態の細胞、(b)細胞を破砕処理して得られた破砕液、(c)破砕液を遠心処理して得られた上清、(d)破砕液又は上清をフィルター処理して得られたろ液、のいずれかを含有することになる。この態様の(a)〜(d)の調製方法等は、脂肪組織由来幹細胞(ASC)の破砕物を有効成分とする場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0022】
精子活性化剤に、ジメチルスルフォキシド(DMSO)や血清アルブミン等の保護剤、抗生物質、ビタミン類、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水などを含有させてもよい。
【0023】
本発明の精子活性化剤に用いられる細胞(即ち、ASC、DPSC、BM-MSC、CB-MSC)の由来、即ち生物種は特に限定されないが、精子活性化剤の用途を考慮して生物種を特定ないし決定するとよい。例えば、ウシの精子の活性化に使用するのであれば、好ましくはウシの細胞を使用するとよい。同様に、ヒトの精子の活性化に使用する場合はヒトの細胞を使用するとよい。このように、好ましくは、精子活性化剤に用いられる細胞の生物種と精子の生物種を同一にする。但し、所望の効果、即ち、精子の活性化が達成される限りにおいて、細胞と精子の由来が異なっていてもよい。細胞の由来(生物種)の例として、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ハムスターを挙げることができる。また、精子の由来(生物種)の例は、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、鳥類(ニワトリ、ウズラ、カモなど)、魚類(サケ、マス、マグロ、カツオなど)である。一態様では、非ヒト哺乳動物である家畜(例えばウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ)の精子が用いられる。別の一態様ではヒト精子が用いられる。
【0024】
ASCの調製は常法に従えばよい。ASCは各種用途に広く用いられており、当業者であれば文献や成書を参考にして容易に調製することができる。公的な細胞バンクから分譲された細胞や市販の細胞などを用いることにしてもよい。DPSC、BM-MSC及びCB-MSCの調製も同様に常法に従えばよい。これらの細胞も各種用途に広く用いられており、当業者であれば文献や成書を参考にして容易に調製することができ、公的な細胞バンクから分譲された細胞や市販の細胞などを用いることにしてもよい。以下、細胞の調製法の例として、ASCの調製法(一例)とDPSCの調製法(一例)を説明する。
【0025】
<ASCの調製法>
本発明において「脂肪組織由来幹細胞(ASC)」とは、脂肪組織に含まれる体性幹細胞のことをいうが、多能性を維持している限りにおいて、当該体性幹細胞の培養(継代培養を含む)により得られる細胞も「脂肪組織由来幹細胞(ASC)」に該当するものとする。通常、ASCは、生体から分離された脂肪組織を出発材料とし、細胞集団(脂肪組織に由来する、ASC以外の細胞を含む)を構成する細胞として「単離された状態」に調製される。ここでの「単離された状態」とは、その本来の環境(即ち生体の一部を構成した状態)から取り出された状態、即ち人為的操作によって本来の存在状態と異なる状態で存在していることを意味する。尚、ASCはADRC(Adipose-derived regeneration cells)、AT-MSC(Adipose-derived mesenchymal stem cells)、AD-MSC(Adipose-derived mesenchymal stem cells)等とも呼ばれる。本明細書では以下の用語、即ち、脂肪組織由来幹細胞、ASC、ADRC、AT-MSC、AD-MSC、を相互に置換可能に使用する。
【0026】
ASCは、脂肪基質からの幹細胞の分離、洗浄、濃縮、培養等の工程を経て調製される。ASCの調製法は特に限定されない。例えば公知の方法(Fraser JK et al. (2006), Fat tissue: an underappreciated source of stem cells for biotechnology. Trends in Biotechnology; Apr;24(4):150-4. Epub 2006 Feb 20. Review.; Zuk PA et al. (2002), Human adipose tissue is a source of multipotent stem cells. Molecular Biology of the Cell; Dec;13(12):4279-95.; Zuk PA et al. (2001), Multilineage cells from human adipose tissue: implications for cell-based therapies. Tissue Engineering; Apr;7(2):211-28.等が参考になる)に従ってASCを調製することができる。また、脂肪組織からASCを調製するための装置(例えば、Celution(登録商標)装置(サイトリ・セラピューティクス社、米国、サンディエゴ))も市販されており、当該装置を利用してASCを調製することにしてもよい。当該装置を利用すると、脂肪組織より、ASCを含む細胞集団を分離できる(K. Lin. et al. Cytotherapy(2008) Vol. 10, No. 4, 417-426)。以下、ASCの調製法の具体例を示す。
【0027】
(1)脂肪組織からの細胞集団の調製
脂肪組織は動物から切除、吸引などの手段で採取される。ここでの用語「動物」はヒト、及びヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばサル、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター等)を含む。本発明の方法で得られた活性化精子を治療目的で使用する場合には、免疫拒絶の問題を回避するため、活性化精子を適用する対象(レシピエント)と同一の個体から脂肪組織(自己脂肪組織)を採取することが好ましい。但し、同種の動物の脂肪組織(他家)又は異種動物の脂肪組織の使用を妨げるものではない。
【0028】
脂肪組織として皮下脂肪、内臓脂肪、筋肉内脂肪、筋肉間脂肪を例示できる。この中でも皮下脂肪は局所麻酔下で非常に簡単に採取できるため、採取の際のドナーへの負担が少なく、好ましい細胞源といえる。通常は一種類の脂肪組織を用いるが、二種類以上の脂肪組織を併用することも可能である。また、複数回に分けて採取した脂肪組織(同種の脂肪組織でなくてもよい)を混合し、以降の操作に使用してもよい。脂肪組織の採取量は、ドナーの種類や組織の種類、或いは必要とされるASCの量を考慮して定めることができ、例えば0.5〜500g程度である。ヒトをドナーとする場合にはドナーへの負担を考慮して一度に採取する量を約10〜20g以下にすることが好ましい。採取した脂肪組織は、必要に応じてそれに付着した血液成分の除去及び細片化を経た後、以下の酵素処理に供される。尚、脂肪組織を適当な緩衝液や培養液中で洗浄することによって血液成分を除去することができる。
【0029】
酵素処理は、脂肪組織をコラゲナーゼ、トリプシン、ディスパーゼ等の酵素によって消化することにより行う。このような酵素処理は当業者に既知の手法及び条件により実施すればよい(例えば、R.I. Freshney, Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 4th Edition, A John Wiley & Sones Inc., Publication参照)。以上の酵素処理によって得られた細胞集団は、多能性幹細胞、内皮細胞、間質細胞、血球系細胞、及び/又はこれらの前駆細胞等を含む。細胞集団を構成する細胞の種類や比率などは、使用した脂肪組織の由来や種類に依存する。
【0030】
(2)沈降細胞集団(SVF画分:stromal vascular fractions)の取得
細胞集団は続いて遠心処理に供される。遠心処理による沈渣を沈降細胞集団(本明細書では「SVF画分」ともいう)として回収する。遠心処理の条件は、細胞の種類や量によって異なるが、例えば1〜10分間、800〜1500rpmである。尚、遠心処理に先立ち、酵素処理後の細胞集団をろ過等に供し、その中に含まれる酵素未消化組織等を除去しておくことが好ましい。
【0031】
ここで得られた「SVF画分」はASCを含む。従って、SVF画分を、精子との共培養に使用する細胞として用いることもできる。尚、SVF画分を構成する細胞の種類や比率などは、使用した脂肪組織の由来や種類、酵素処理の条件などに依存する。また、国際公開第2006/006692A1号パンフレットにはSVF画分の特徴が示されている。
【0032】
(3)接着性細胞(ASC)の選択培養及び細胞の回収
SVF画分にはASCの他、他の細胞成分(内皮細胞、間質細胞、血球系細胞、これらの前駆細胞等)が含まれる。そこで本発明の一態様では以下の選択培養を行い、SVF画分から不要な細胞成分を除去する。そして、その結果得られた細胞をASCとして本発明に用いる。
【0033】
まず、SVF画分を適当な培地に懸濁した後、培養皿に播種し、一晩培養する。培地交換によって浮遊細胞(非接着性細胞)を除去する。その後、適宜培地交換(例えば2〜4日に一度)をしながら培養を継続する。必要に応じて継代培養を行う。継代数は特に限定されないが、多能性と増殖能力の維持の観点からは過度に継代を繰り返すことは好ましくない(5継代程度までに留めておくことが好ましい)。尚、培養用の培地には、通常の動物細胞培養用の培地を使用することができる。例えば、Dulbecco's modified Eagle's Medium(DMEM)(日水製薬株式会社等)、α-MEM(大日本製薬株式会社等)、DMEM:Ham's F12混合培地(1:1)(大日本製薬株式会社等)、Ham's F12 medium(大日本製薬株式会社等)、MCDB201培地(機能性ペプチド研究所)等を使用することができる。血清(ウシ胎仔血清、ヒト血清、羊血清など)又は血清代替物(Knockout serum replacement(KSR)など)を添加した培地を使用することにしてもよい。血清又は血清代替物の添加量は例えば5%(v/v)〜30%(v/v)の範囲内で設定可能である。
【0034】
以上の操作によって接着性細胞が選択的に生存・増殖する。続いて、増殖した細胞を回収する。回収操作は常法に従えばよく、例えば酵素処理(トリプシンやディスパーゼ処理)後の細胞をセルスクレイパーやピペットなどで剥離することによって容易に回収することができる。また、市販の温度感受性培養皿などを用いてシート培養した場合は、酵素処理をせずにそのままシート状に細胞を回収することも可能である。このようにして回収した細胞(ASC)を用いることにより、ASCを高純度で含有する細胞集団を調製することができる。
【0035】
(4)低血清培養(低血清培地での選択的培養)及び細胞の回収
本発明の一態様では、上記(3)の操作の代わりに又は上記(3)の操作の後に以下の低血清培養を行う。そして、その結果得られた細胞をASCとして本発明に用いる。
【0036】
低血清培養では、SVF画分((3)の後にこの工程を実施する場合には(3)で回収した細胞を用いる)を低血清条件下で培養し、目的の多能性幹細胞(即ちASC)を選択的に増殖させる。低血清培養法では用いる血清が少量で済むことから、本発明の方法で得られた活性化精子を治療目的に使用する場合、対象(患者)自身の血清を使用することが可能となる。即ち、自己血清を用いた培養が可能となる。ここでの「低血清条件下」とは5%以下の血清を培地中に含む条件である。好ましくは2%(V/V)以下の血清を含む培養液中で細胞培養する。更に好ましくは、2%(V/V)以下の血清と1〜100ng/mlの線維芽細胞増殖因子-2(bFGF)を含有する培養液中で細胞培養する。
【0037】
血清はウシ胎仔血清に限られるものではなく、ヒト血清や羊血清等を用いることができる。本発明の方法で得られた活性化精子をヒトの治療に使用する場合には、好ましくはヒト血清、更に好ましくは治療対象の血清(即ち自己血清)を用いる。
【0038】
培地は、使用の際に含有する血清量が低いことを条件として、通常の動物細胞培養用の培地を使用することができる。例えば、Dulbecco's modified Eagle's Medium(DMEM)(日水製薬株式会社等)、α-MEM(大日本製薬株式会社等)、DMEM:Ham's F12混合培地(1:1)(大日本製薬株式会社等)、Ham's F12 medium(大日本製薬株式会社等)、MCDB201培地(機能性ペプチド研究所)等を使用することができる。
【0039】
以上の方法で培養することによって、多能性幹細胞(ASC)を選択的に増殖させることができる。また、上記の培養条件で増殖する多能性幹細胞(ASC)は高い増殖活性を持つので、継代培養によって、本発明に必要とされる数の細胞を容易に調製することができる。尚、国際公開第2006/006692A1号パンフレットには、SVF画分を低血清培養することによって選択的に増殖する細胞の特徴が示されている。
【0040】
続いて、上記の低血清培養によって選択的に増殖した細胞を回収する。回収操作は上記(3)の場合と同様に行えばよい。回収した細胞(ASC)を用いることにより、ASCを高純度で含有する細胞集団を得ることができる。
【0041】
以上の方法では、SVF画分を低血清培養して増殖した細胞が利用に供されることになるが、脂肪組織から得た細胞集団を直接(SVF画分を得るための遠心処理を介することなく)低血清培養することによって増殖した細胞をASCとして用いることにしてもよい。即ち本発明の一態様では、脂肪組織から得た細胞集団を低血清培養したときに増殖した細胞をASCとして用いる。また、選択的培養(上記(3)及び(4))によって得られる多能性幹細胞ではなく、SVF画分(脂肪組織由来間葉系幹細胞を含有する)をそのまま用いることにしてもよい。尚、ここでの「そのまま用いて」とは、選択的培養を経ることなく本発明に用いること、を意味する。
【0042】
<DPSCの調製法>
自己増殖能と多分化能を併せ持つ新規な幹細胞集団として、永久歯の歯髄由来幹細胞(dental pulp stem cells: DPSCs)と乳歯の歯髄由来幹細胞(stem cells from exfoliated deciduous teeth; SHED)が同定されている(S. Gronthos, M. Mankani, J. Brahim, P. G. Robey, S. Shi, Postnatal human dental pulp stem cells (DPSCs) in vitro and in vivo, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 97 (2000) 13625-30.;M. Miura, S. Gronthos, M. Zhao, B. Lu, L. W. Fisher, P. G. Robey, S. Shi, SHED: Stem cells from human exfoliated deciduous teeth, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 100 (2003) 5807-12.;国際公開第2006/010600号パンフレット)。
【0043】
歯髄幹細胞の採取・調製法の一例を以下に示す。この採取・調製法では(1)歯髄の採取、(2)酵素処理、(3)細胞培養、(4)細胞の回収を順に行う。
【0044】
(1)歯髄の採取
自然に脱落した乳歯(又は抜歯した乳歯、或いは永久歯)をクロロヘキシジンまたはイソジン溶液で消毒した後、歯冠部を分割し歯科用リーマーにて歯髄組織を回収する。
【0045】
(2)酵素処理
採取した歯髄組織を基本培地(10%ウシ血清・抗生物質含有ダルベッコ変法イーグル培地)に懸濁し、2mg/mlのコラゲナーゼ及びディスパーゼで37℃、1時間処理する。5分間の遠心操作(5000回転/分)により酵素処理後の歯髄細胞を回収する。セルストレーナーによる細胞選別はSHEDやDPSCの神経幹細胞分画の回収効率を低下させるので原則、使用しない。
【0046】
(3)細胞培養
細胞を4cc基本培地で再懸濁し、直径6cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種する。5%CO2、37℃に調整したインキュベーターにて3日間培養した後、コロニーを形成した接着性細胞を0.05%トリプシン・EDTAにて5分間、37℃で処理する。ディッシュから剥離した歯髄細胞を直径10cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種し拡大培養を行う。例えば、肉眼で観察してサブコンフルエント(培養容器の表面の約70%を細胞が占める状態)又はコンフルエントに達したときに細胞を培養容器から剥離して回収し、再度、培養液を満たした培養容器に播種する。継代培養を繰り返し行ってもよい。例えば継代培養を1〜8回行い、必要な細胞数(例えば約1×107個/ml)まで増殖させる。尚、培養容器からの細胞の剥離は、トリプシン処理など常法で実施することができる。以上の培養の後、細胞を回収して保存することにしてもよい(保存条件は例えば-198℃)。
【0047】
(4)細胞の回収
次に、細胞を回収する。トリプシン処理等で培養容器から細胞を剥離した後、遠心処理を施すことによって細胞(DPSC)を回収することができる。
【0048】
本発明の精子活性化剤は、例えば人工授精用の製剤として、それを単独で含有する形態(例えば適当な容器に充填する)で提供できる他、各種形態、例えば、精子活性化剤と精液を別々の区画(精子活性化剤を含有する第1の組成物が存在する第1区画、及び精液を含有する第2の組成物が存在する第2区画を設ける)に備えた状態で容器に同梱した形態(例えば、人工授精用精液ストローの形態を取り得る)や、精子活性化剤と精液を混合した状態で容器に充填した形態(例えば、人工授精用精液ストローの形態を取りうる)等で提供できる。容器は特に限定されないが、例えば、人工授精に頻用されるストロー管、或いは遠沈チューブ等を用いることができる。
【0049】
2.精子活性化剤の用途
本発明の第2の局面は精子活性化剤の用途に関する。本発明の精子活性化剤は人工授精(体内受精や体外受精の成功率や効率の向上)、精子障害を伴う又は精子障害が主因又は副因の各種疾患(例えば、精索静脈瘤、男子不妊症、停留精巣、X線照射、悪性腫瘍術後又は化学療法後の精子障害)の治療・改善、家畜の繁殖(人工授精の成功率や効率の向上)、育種・種の維持(例えば絶滅危惧種の維持、ペットの系統の維持又は交雑)等に利用され得る。以下、本発明の精子活性剤の用途の中で特に重要なものについて詳細に説明する。尚、本発明に特徴的な条件、即ち、本発明の精子活性化剤を使用すること以外については常法に従えばよい(例えば、牛の人工授精マニュアル(社団法人 畜産技術協会)、馬人工授精マニュアル(一般社団法人 日本家畜人工授精師協会)、牛の繁殖技術マニュアル(一般社団法人 日本家畜人工授精師協会)、家畜人工授精ハンドブック(一般社団法人 日本家畜人工授精師協会)等が参考になる)。
【0050】
2−1.体内受精
本発明の精子活性化剤を体内受精に適用する場合、精子活性化剤とともに精子を非ヒト哺乳動物の子宮に注入することになる。詳細には、例えば、(i)精子活性化剤と精子を混合した後に非ヒト哺乳動物の子宮に注入する、(ii)精子活性化剤と精子を同時に非ヒト哺乳動物の子宮に注入する、又は(ii)精子活性化剤と精子を別々に(順序は問わない)非ヒト哺乳動物の子宮に注入する。
【0051】
精子及び卵子の由来となる生物種の例はウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、鳥類(ニワトリ、ウズラ、カモなど)、魚類(サケ、マス、マグロ、カツオなど)である。精子と卵子の生物種は原則として同一である。但し、受精可能な組合せであれば、精子の生物種と卵子の生物種が異なっていてもよい。
【0052】
精子として、性選別精液を用いることにしてもよい。尚、本明細書では、性選別精液と区別するために、性選別処理を得ていない精液のことと「通常の精液」と呼ぶことがある。性選別精液の使用は、後述のように、例えば乳用牛の生産に本発明を応用する際に有用である。
【0053】
本発明の体内受精方法は、例えば、有用な家畜の生産方法に応用できる。一例として、図1を参照しつつ、受精卵移植を利用したウシ(肉用牛、乳用牛)の生産方法への応用を説明する。典型的には、ウシの受精卵移植は以下の手順で行われる。
(1)肉用牛(例えば和牛)又は乳用牛(例えばホルスタイン種乳牛)に対し、過剰な排卵を促す処理(注射)をする。
(2)肉用牛の場合、通常の凍結精液を人工授精(即ち、子宮へ精液を注入)する。乳牛の場合は、性選別精液(雌胎子を受胎させるために選別したX精子)を人工授精する。
(3)約1週間後、子宮へおりてきた受精卵を取り出す。
(4)採取した受精卵を別の雌牛(通常は複数個体)の子宮へ移植し、肉質の優良な肉用牛の子、又は乳用牛の子(雌)を生ませる。
【0054】
(2)の処置の際に本発明の精子活性化剤を使用する。これによって、(3)で採取される正常な受精卵が増え、優良な肉牛又は乳生産能力の高い雌乳牛の子の生産数が増加する。尚、以上の方法は典型的な生産方法の一例に過ぎない。例えば、受精卵移植を伴わない生産方法、即ち、体内受精後にそのまま妊娠させて出産させる方法等への本発明の応用も想定される。
【0055】
2−2.体外受精
本発明の精子活性化剤を体外受精に利用する場合には、精子活性化剤によって活性化した精子と卵子が共存する状態を形成させるか、或いは、精子活性化剤の存在下、精子と卵子が共存する状態を形成させればよい。前者に使用される「活性化した精子」は以下の方法で調製することができる。尚、精子(活性化した又は活性化前の精子)と卵子が共存する状態を形成させるためには、両者を同一の容器内に入れ、培養(インキュベート)すればよい。
【0056】
精子及び卵子の由来となる生物種の例はヒト、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、鳥類(ニワトリ、ウズラ、カモなど)、魚類(サケ、マス、マグロ、カツオなど)である。精子と卵子の生物種は原則として同一である。但し、受精可能な組合せであれば、精子の生物種と卵子の生物種が異なっていてもよい。体外受精に使用する卵子は、生体からの単離や細胞バンクなどから分譲などによって用意すればよい。
【0057】
まず、精子活性化剤の存在下、精子を培養する(ステップ(1))。当該ステップは、その定義から明らかな通り、in vitro(生体外)で実施される。精子の培養に適した培養条件を採用するとよい。例えば、精子活性化剤を加えた媒精液(BO液)に精子を添加し、35℃〜40℃の温度条件で30分〜24時間培養する。この培養によって精子が活性化される。即ち、活性化された精子が得られる。一態様では、培養後の精子(即ち、活性化された精子)を回収し(ステップ(2))、回収した精子を体外受精に用いる。使用前に濃縮、選別等を行うことにしてもよい。尚、以上の方法によれば活性化した精子が得られることから、本願は精子活性化方法、或いは活性化精子の生産ないし取得方法も提供するといえる。
【0058】
上記の通り、本発明の精子活性化剤を利用した体外受精の一態様では、精子活性化剤の存在下、精子と卵子が共存する状態を形成させることになる。この場合、(i)生体外において、精子活性化剤と卵子を混合し、そこへ精子を添加する方法、(ii)生体外において、精子活性化剤と精子を混合し、そこへ卵子を添加する方法、(iii)生体外において、精子活性化剤、精子、卵子を混合する方法のいずれを採用してもよい。
【実施例】
【0059】
A.黒毛和牛における試験
<試験1>凍結融解したウシASC細胞(ASC細胞破砕液)又はその遠心上清とウシ精子との共培養
1.材料と方法
1−1.脂肪組織由来幹細胞(ASC)の採取
ウシの冷凍皮下脂肪から、特開2010−094076号公報の方法に準じてASCを採取した。具体的には以下のように実施した。
【0060】
(1)脂肪組織の採取と凍結保存
屠場で、枝肉の皮下脂肪組織(約3 cm四方)をハサミで切除し、プラスチックジップバッグに入れた。これを、内部の吸着剤に液体窒素を吸着させた後に余分な液体窒素を捨てたドライシッパーに投入し、液体窒素の蒸気中で凍結した。
【0061】
(2)解凍と組織分解
プラスチックバッグに入った凍結脂肪組織を39℃の湯で解凍した。解凍した脂肪組織をハサミ等で細断し、15 mlの遠心管に入れた。次いで、0.1 w/v %コラゲナーゼ、0.2 w/v %ディスパーゼを含むダルベッコ改変イーグル培地(Sigma)を、裁断した脂肪組織にその体積の3〜5倍となるように加えた。この組織懸濁液を39℃のウォーターバスで振とうしながら1〜2時間培養し、脂肪組織溶解液を得た。
【0062】
(3)細胞採取と細胞培養
脂肪組織溶解液を遠心分離し、上層の融け残った脂肪と上清を捨てた。残った沈殿を、最終濃度100μg/mlとなるように抗生物質Primocin(登録商標、INVIVOGEN)を添加した初代培養用培地(MF-start、登録商標、東洋紡)500μlに懸濁し、24ウェルプレートの1ウェルに入れ、CO2インキュベーターで培養(5% CO2、95%空気、39℃、飽和湿度)した。1ウェルがコンフルエントになるまで細胞が増殖したら、トリプシンEDTAで細胞をはがし、1ウェル分を5ウェルに分けて継代培養を行った。
【0063】
1−2.ウシ精液の凍結と融解
ウシ精液を精子濃度が約1億個/mlになるように卵黄クエン酸液で希釈し、ストロー容器に約500μlずつ分注、封入した後、液体窒素の蒸気中で凍結し、液体窒素中で保管した。このウシ凍結精液を38℃の湯で融解して以下の試験に用いた。
【0064】
1−3.ASC破砕液の製造
24ウェルプレートの1ウェル分(ASC×1)又は2ウェル分(ASC×2)のウシASC(コンフルエントな状態のもの)をトリプシンEDTAにより剥離し、PBSで洗浄後、500μlのPBSに再浮遊した。続いて、0.5 ml容量の精液凍結保存用ストローへ充填・封入し、-20℃にて凍結保存した。充填・封入したストローのそれぞれについて、38℃で融解後、以下のようにして用いた。
ASC×1: ストロー1本の融解物をそのまま用いる
ASC×2: ストロー2本の融解物をそのまま用いる
ASC×1遠心上清: ストロー1本の融解物を遠心分離し、得られた上清を用いる
ASC×2遠心上清: ストロー2本の融解物を遠心分離し、得られた上清を用いる
【0065】
1−4.ASC破砕液とウシ精子の共培養
ウシ凍結融解精液100μlとASC破砕液(ASC×1、ASC×2)又はASC遠心上清(ASC×1遠心上清、ASC×2遠心上清)100μlとを24ウェルプレートに入れ、CO2インキュベーター(5% CO2、95%空気、39℃、飽和湿度)で共培養した。対照区では、ASC破砕液/ASC遠心上清の代わりに、卵黄クエン酸液(グリセリンを6.5%含む)、一次希釈液(グリセリンを含まない卵黄クエン酸液)又はPBSを用いた。
【0066】
1−5.精子運動性の評価
共培養開始から0時間後、3時間後、6時間後、8時間後及び9時間後に精子を顕微鏡で観察した。具体的には、共培養した精液6μlをスライドグラス上に滴下し、その上から18 mm×18 mmのカバーガラスをかぶせ、グリッド状のマイクロメーター付きの接眼レンズを備えた顕微鏡で観察した。精子の運動性を前進運動(PR)、非前進運動(NP)及び不動(IM)に分類し、10グリッド中のそれぞれの運動性の精子数を数え、比率を求めた。
【0067】
2.結果
結果を以下に示す。ASC破砕液(ASC×1、ASC×2)及びASC遠心上清(ASC×1遠心上清、ASC×2遠心上清)に精子の運動性を高める効果が認められる。
【表1】
【0068】
<試験2>黒毛和牛ASCろ液の効果
1.材料と方法
1−1.ASCの採取と培養
と畜場にてウシの背部皮下織より脂肪組織を採取した(1〜3 g)。実験室へ持ち帰り、脂肪組織をハサミで細断し、50 mlの遠心管に入れた。0.1重量%コラゲナーゼと0.2 w/v %ディスパーゼを含むダルベッコ改変イーグル培地(Sigma)を、裁断した脂肪組織にその体積の3〜5倍となるように加えた。この組織懸濁液を39℃のウォーターバスで振とうしながら1〜2時間培養して、脂肪組織溶解液を得た。脂肪組織溶解液を遠心し、上層の融け残った脂肪と上清を捨てた。残った沈殿を、20% FCSを添加したMesenPro培養液に懸濁し、10 cmプレートに入れ、CO2インキュベーターで培養(5% CO2、95%空気、39℃、飽和湿度)した。コンフルエントになったらトリプシン/EDTAで細胞を剥離し、10 cmプレート1枚〜5枚に継代培養した。
【0069】
1−2.ASC液の製造
ASCが10 cmプレートにコンフルエントになった状態でトリプシン/EDTAにより細胞を剥離し、PBS(-)で1回洗浄した。一部のプレートでは無数の細胞塊が形成されたので、分化した細胞と判断した。いずれの細胞も、1×106/mlとなるようにPBS(-)に懸濁し、-20℃にて凍結保存した。細胞液を38℃の湯煎又は室温で融解し、以下のとおり処理した。
(a)そのまま共培養に使用した(ASC細胞破砕液)。
(b)遠心分離後、上清を採取した(ASC遠心上清)。
(c)遠心分離後の上清をセルロースアセテート膜のフィルター(ポアサイズ0.2μm)で濾過した(ASC上清ろ液)。
【0070】
(a)〜(c)のASC液を、細胞数換算で種々の濃度となるようにPBSで希釈した。
【0071】
1−3.ASC液とウシ凍結融解精液の共培養
各ASC液100μlと、融解した凍結精液100μl(約1×108 cells/ml)を混合し、24ウェルプレートに入れ、CO2インキュベーター(5% CO2、95%空気、39℃、飽和湿度)で共培養した。培養時間は0時間、3時間、6時間、9時間、14時間、16時間、18時間とし、以下の細胞濃度のASC液を使用した。
ASC細胞破砕液:1、10又は100×104 cells/ml(1回目);10、50、75又は100×104 cells/ml(2回目)
ASC遠心上清:1又は10×104 cells/ml
ASC上清ろ液:1、10又は100×104 cells/ml
【0072】
1−4.精子運動性の評価
所定の時間培養後、位相差顕微鏡下で運動精子を観察し、運動精子の大部分が以下のどの状態であるかを判定した。
+++:活発な前進性のある運動(尾部1往復で頭部の長径以上の長さを前進する)
++:前進性は弱いが、頭部が回転している運動
+:頭部が回転しない弱い運動
−:運動精子が認められない
【0073】
2.結果
結果を以下に示す。ASC細胞破砕液、ASC遠心上清及びASC上清ろ液に精子の運動性を高める効果が認められる。
【表2】
【0074】
<試験3>ウシ体内受精卵採取に及ぼすASCろ液の効果
1.材料と方法
1−1.ASCろ液の製造
前述の方法及び条件で培養して増殖させたASCを100×104 cells/mlとなるようにPBSに再浮遊させ、-20℃にて凍結した。その後、室温で融解し、ポアサイズ0.2μmのセルロースアセテート膜の濾過滅菌フィルターで濾過し、ろ液を回収した(「ASCろ液」と呼ぶ)。ASCろ液を0.5 ml容量の精液凍結保存用ストローへ充填・封入し、-20℃にて凍結保存した。
【0075】
1−2.黒毛和種雌牛の過剰排卵処置
発情誘起する日を0日として、11日前に雌牛の膣内に腟内留置型プロゲステロン製剤(CIDR)を挿入した。過剰排卵処置は前葉性卵胞刺激ホルモン(FSH:アントリン、共立製薬株式会社)の漸減投与によって行った。具体的には、発情4日前はFSH 2.5 ml(午前、午後の2回)、3日前はFSH 1.5 ml(午前、午後の2回)、2日前はFSH 1 mlとPG 2 ml(午前、午後の2回)を投与した。更に、2日前の午前にCIDRを抜去した。
【0076】
1−3.人工授精
人工授精は発情日の午後に1回実施した。凍結精液を38℃の湯で融解し、人工授精器を用いて子宮体内に注入した。続いて試験区は融解したASCろ液(0.5 ml)を、人工授精器を用いて子宮体内へ注入した。対照区はPBS(0.5 ml)を注入した。
【0077】
1−4.受精卵の回収
発情から8日後、左右両子宮角を還流することにより受精卵を回収した。バルーンカテーテルを子宮内に挿入して子宮角基部に固定し、子宮角に0.5%の牛胎子血清(FCS)とペニシリンおよびストレプトマイシンを添加した乳酸加リンゲル液(ハルゼン;日本全薬工業株式会社)を30〜40 ml注入後、排出した液を遮光瓶に回収した。これを左右両子宮角で約12回繰り返すことにより、子宮角の還流を行った。還流液をエムコンフィルターでろ過して濃縮し、実体顕微鏡下で受精卵を検索した。
【0078】
1−5.受精卵の評価
採取された受精卵の発育段階と品質、及び個数を調べた。発育段階は拡張胚盤胞(EXB)、胚盤胞(B)、初期胚盤胞(EB)、桑実期胚(CM)、退行、未受精に分類した。桑実期胚以上に発生していない受精卵のうち、正常分割または異常分割して発生停止しているものを退行、分割していないものを未受精とみなした。受精卵の品質は、IETSマニュアルに従って判定した。変性部分がないものをExcellent(優良)、15%以下のものをGood(良)、50%以下のものをFair(可)、75%以下のものをPoor(不良)とした。退行および未受精はDead(死)とした。
【0079】
1−6.試験回数
1回の試験で2頭の雌牛に過剰排卵処置を行い、1頭を試験区、別の1頭を対照区として採卵を行った。採卵後、約1ヶ月の間隔を空けて同じ雌牛に過剰排卵処置を行い、試験区、対照区を入れ替えて採卵を行った。これを3組6頭の雌牛で実施し、試験区6回分、対照区6回分の採卵結果を集計した。
【0080】
2.結果
結果を以下(表3及び表4)に示す。試験区は対照区に比べ、受精卵採取個数が多く、発育段階及び品質も高かった。
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
B.ホルスタイン種乳牛における試験
<試験1>「脂肪幹細胞液を添加した性選別精液」を利用した体内胚の採取成績
過剰排卵処理を行い、体内胚を生産する場合の人工授精において、性選別精液にASCを添加した場合と添加しなかった場合の間で体内胚の採取成績を比較した。性選別精液にASCを添加した区を試験区、添加しなかった区(PBSを添加した区)を対照区とした。体内胚の採取は2回行い、1回目の採胚の授精は、右子宮角を試験区、左子宮角を対照区として、いずれも精液を子宮角深部に注入した。2回目の採胚では、右子宮角を対照区、左子宮角を試験区とし、1回目と同様左右とも深部注入を行った。
【0083】
1.材料および方法
1−1.供試牛
名号:チェルシー(個体識別番号:1338723678)
生年月日:平成24年2月29日
最終分娩:平成26年3月26日(初産)
過去の採卵成績(分娩後):平成26年9月1日(採取個数:5個、正常卵数:3個(Excellent及びGood:3))、平成26年11月6日(採取個数14個、正常卵数:10個(Excellent及びGood:8、Fair:2))
【0084】
1−2.過排卵処理方法
発情周期の任意の時期に、腟内留置型プロゲステロン製剤(CIDR)を腟内に挿入するとともにエストラジオール安息香酸エステル(EB:オバホルモン)1 mlを筋肉内注射した。この日を0日目として、4日目から6日目までの3日間、1日2回(朝9時と夕方5時)に前葉性卵胞刺激ホルモン(FSH:アントリン、共立製薬株式会社)を漸減投与(4日目は6 AU/回、5日目は4 AU/回、6日目は3 AU/回)した。7日目の朝はFSH 2 AUとプロスタグランディンF2α(PG:ダルマジン、共立製薬株式会社)3 mlを投与し、同日夕方はFSH 2 AUを投与しCIDRを抜去した。その翌日午後4時に性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH;スポルネン、共立製薬株式会社)4 ml(酢酸フェルチレリンとして200μg)を投与した。GnRH投与24時間後に人工授精を行い、1週間後に採卵を行った。また、1回目と2回目の採胚の間隔は87日間であった。
【0085】
1−3.性選別精液に脂肪幹細胞液を添加する場合の濃度を決めるための予備試験
上記A.黒毛和牛における試験の試験2「黒毛和牛ASCろ液の効果」において、通常精液での試験では精子数の1/100相当の濃度のASCを添加することで精子運動性の維持効果がみられた。本実験では、性選別精液における効果を確認するために、1/100と1/50相当の濃度のASCろ液(A.黒毛和牛における試験の試験3「ウシ体内受精卵採取に及ぼすASCろ液の効果」で作製したASCろ液)の性選別精子運動性へ及ぼす効果を調べた。コントロールとしてPBSを使用した(cont1及びcont2)。性選別精液(ストロー内に在中)として、家畜改良事業団の「RCAアスリート ツー シックス」(JP5H54411X)平成24年11月12日(1ストロー当たり精子数300万個の凍結精液と空気層を挟んで希釈液層を含む2層式ストロー)を使用した。37℃の温湯中で融解後、精子を含む液層(200μl程度)のみシャーレに押し出し供試した。図2に示すようにシャーレで培養試験を実施した。種々の時間培養後、精子の運動性について、前進(前に進む精子)及び運動(前進はしないが動いている精子)を示す精子の割合を4段階(−、+、++、+++)に分類した。添加したASCろ液中のASC濃度は100万個/ml相当であった。細胞浮遊液をミネラルオイルで被い、37℃のウォームプレート上で28時間まで培養した。
cont1:精液20μl+PBS 3μl
cont2:精液20μl+PBS 6μl
1/100:精液20μl+ASCろ液3μl
1/50:精液20μl+ASCろ液6μl
【0086】
性選別精液200μl中に300万個の精子が入っていることから、20μl中には精子30万個が含まれる。従って、精子30万個の1/100相当はASCろ液(100万個/ml) 3μl(ASC 1000 個分)、同1/50相当はASCろ液6μlとなる。
【0087】
1−4.人工授精に使用した精液の処理方法
家畜改良事業団の種雄牛名「オーケーファーム ハート ランカスター ET」(JP5H53562X) 平成26年4月7日の凍結精液ストロー(採卵用として販売されている1ストロー当たり精子数600万個の凍結精液層と空気層を挟んで希釈液層を含む2層式ストロー)4本を使用した。精子を含む液量として約200μl/ストローであった。左右の子宮角(試験区用と対照区用)に1本分ずつ注入するため、1回の採胚当たり2本使用し、2回採胚した(合計4本)。
【0088】
凍結精液の融解は37℃の温湯で約30秒間の処理とした。精液の処理としては、融解後、試験区用精液、対照区用精液ともに精液層のみをシャーレに押し出し、試験区用精液にはASCろ液60μlを添加混合し、対照区用精液にはPBS 60μlを添加混合した。混合後、別の0.5 ml容量のストローへ再充填し、続いて少量の空気層を充填した後、元のストローに入っていた希釈液層を再充填し、子宮へ注入するまで37〜38℃で保温した。
【0089】
1−5.人工授精
注入器は「モ5号」(ミサワ医科工業)を使用し、1回目の採胚では、試験区用精液を右子宮角深部に、対照区用精液を左子宮角深部に注入した。2回目の採胚では、逆に試験区用精液を左子宮角深部に、対照区用精液を右子宮角深部に注入した(注入器の先端を子宮体から子宮角へ5cm程挿入した地点で、チューブを20 cm程深部へ押し入れ、精液を注入した)。
【0090】
1−6.採卵
左右の子宮角を別々に0.5%仔牛血清(CS)加乳酸加リンゲルで灌流した。
【0091】
2.結果
2−1.予備試験の結果
表5に示すとおり、対照区(cont1、cont2)はいずれも融解後9時間以降で前進する精子が見られなくなったが、試験区(1/100、1/50)ではいずれも12時間まで前進する精子がみられた。1/100と1/50では同程度であったことから、以降の実験は1/100で実施することとした。
【表5】
【0092】
2−2.採卵の結果
発育段階は拡張胚盤胞(EXB)、胚盤胞(B)、初期胚盤胞(EB)、桑実期胚(CM)、退行、未受精に分類した。また、品質について、Excellent(優良)及びGood(良)をA、Fair(可)をB、Poor(不良)をCとした。退行および未受精はDead(死)とした。表6及び表7、並びに図3及び図4に示すとおり、採取した胚は対照区で11個、試験区で13個とほぼ同数であったが、正常胚は対照区で2個、試験区で11個であり、試験区で多かった。一般の精液と比べ、1ストロー当たりの精子数が少なく、活力に問題があるとされている性選別精液にASCろ液を添加することで、受精率が向上し、正常胚数、正常胚率が向上したものと思われる。
【表6】
【0093】
【表7】
【0094】
採取した胚の移植成績は以下の通りであった。
対照区の胚:正常胚2個の内、1個を移植し、受胎した。受胎率100%(1/1)。
試験区の胚:正常胚11個の内、6個を移植し、3個が受胎した。受胎率50%(3/6)。
【0095】
一方、産子(分娩)の結果は以下の通りであった。
対照区(平成27年2月16日に移植):平成27年11月16日に外見上正常な産子が出生した。
試験区1(平成27年6月26日に移植):平成28年3月27日に外見上正常な産子が出生した。
試験区2(平成27年6月26日に移植):平成28年3月29日に外見上正常な産子が出生した。
試験区3(平成27年8月19日に移植):平成28年5月に外見上正常な産子が出生した。
【0096】
C.各種幹細胞破砕液による精子活性化
脂肪組織由来幹細胞(ASC)の破砕液に認められた精子活性化作用と同様の作用が、他の間葉系幹細胞にも認められるか否か、検討することにした。
1.材料と方法
1−1.各種間葉系幹細胞のろ液の調製
常法で調製し、凍結保存しておいた、ヒト脂肪組織由来幹細胞(H-ASC)、ヒト歯髄由来幹細胞(H-DPSC)、ヒト骨髄由来幹細胞(H-BM-MSC)及びヒト臍帯血由来幹細胞(H-CB-MSC)を融解した後、遠心処理(1500rpm、5分)した。上清をセルロースアセテート膜のフィルター(ポアサイズ0.2μm)で濾過し、各幹細胞のろ液とした(ヒト脂肪組織由来幹細胞のろ液:H-ASC-f2、ヒト歯髄由来幹細胞のろ液:H-DPSC-f2、ヒト骨髄由来幹細胞:H-BM-MSC-f2、ヒト臍帯血由来幹細胞のろ液:H-CB-MSC-f2)。各ろ液の一部は-80℃で凍結保存し、融解した後、実験に使用した(H-DPSC-f1、H-DPSC-f1、H-BM-MSC-f1、H-CB-MSC-f1)。陽性対照(PC)には、同様の処理(凍結融解後に遠心処理し、フィルターろ過した後、再度、凍結保存し、融解したもの)によって得られたウシ脂肪組織由来幹細胞のろ液(B-ASC-f1)を用いた。
【0097】
1−2.幹細胞ろ液とウシ凍結融解精液の共培養
各幹細胞ろ液(100μl又は50μl)を24ウェルプレートのウェルに添加した。一方、ウシ凍結精液(同一ロット6本)を常法(38℃、45秒)により融解し、チューブで混ぜた後(合計3ml分)、各ウェルに規定量を分注した。24ウェルプレートをCO2インキュベーター(5% CO2、95%空気、38℃、飽和湿度)へ移し、共培養した。
【0098】
1−3.精子運動性の評価(目視による評価)
所定の時間培養後(0時間後、1.5時間後、3時間後、4.5時間後、6時間後、7.5時間後、9時間後、10.5時間後、12時間後)、位相差顕微鏡下で運動精子を観察し、運動精子の大部分が以下のどの状態であるかを判定した。
+++:活発な前進性のある運動(尾部1往復で頭部の長径以上の長さを前進する)
++:前進性は弱いが、頭部が回転している運動
+:頭部が回転しない弱い運動
±:ほぼ不動だが、わずかに動く精子あり
−:運動精子が認められない
【0099】
1−4.精子運動性の評価(移動距離の解析)
目視による観察の際(1.5時間後、3時間後、4.5時間後、6時間後、7.5時間後、9時間後)、顕微鏡に取り付けたカメラで30秒間の動画を撮影した。動画データを変換・加工し、ImageJソフトウエアに取り込み、精子の移動距離を解析した。
【0100】
2.結果
目視による観察の結果を以下に示す。ウシASCろ液(B-ASC)に最も強いウシ精子活性化作用を認めたものの、他の間葉系幹細胞ろ液もウシ精子活性化作用を示した。特に、ヒトDPSCろ液はウシASCろ液とほぼ同等の効果が認められた。尚、フィルターろ過後の再凍結の有無は、精子活性化作用に大きな影響を及ぼさなかった。
【表8】
【0101】
精子の移動距離の解析結果(1フレーム当たりの平均移動距離の比較)を図5に示す。目視による観察の結果と同様に、いずれの間葉系幹細胞ろ液もウシ精子の運動性を高めた。
【0102】
D.精子活性化成分の分析
これまでの実験の結果を踏まえ、ASC細胞破砕液の精子活性化にはタンパク性因子が関与しているとの仮説を立て、その検証を試みた。まず、タンパク質吸着フィルターで濾過したASC細胞破砕液は精子の運動性を亢進しなかった。対照的に、タンパク質非吸着フィルターで濾過したASC細胞破砕液の場合、精子の運動性が亢進された。この結果を受け、ASC細胞破砕液中のタンパク質成分をLCMSで分析した。分析の結果、含有量の多い成分として熱ショックタンパク質90α(HSP90α)が特定された。そこで、ウシ精液50μlに対してHSP90α溶液(2μg/ml、10μg/ml、又は50μg/mlの濃度でPBSに溶解したもの)を単回添加(1回で50μlを添加)又は分割して添加(0時間後、2時間後、4時間後、6時間後に10μlを添加)して培養した。所定の時間培養後(0時間後、2時間後、4時間後、6時間後、7時間後、8時間後)、位相差顕微鏡下で運動精子を観察し、運動精子の大部分が以下のどの状態であるかを判定した。
◎:頭部が回転する前進性のある運動
〇:頭部が回転しない弱い運動
△:ほぼ不動だが、わずかに動く精子あり
×:運動精子が認められない
また、上記の基準では同じ判定となるが、目視での観察において、わずかに運動性の差が認められる場合、相対的な運動性の大きさを+の数で表した(なし、+、++、+++)。
【0103】
試験結果を以下に示す。HSP90αは、生存時間は延ばさないが、精子の活力を濃度依存的に向上させた。この結果によれば、HSP90αを有効成分として精子活性化剤を構成できるといえる。
【表9】
【0104】
E.豚における試験
<試験1>
1.方法
1−1.精子
デュロック種種雄豚(1頭;個体番号 D2003)より採取した濃厚部精液を希釈液(GPロング、グローバルピッグファーム社)で希釈し17℃に保存した。5日間精液を保存した後、精子濃度が3×107/mlとなるようにGPロングで希釈した。
【0105】
1−2.ろ液
フラスコ内で培養によりコンフレントとなったブタ脂肪幹細胞(pASC)を剥離し、室温でDPBS(−)により1回遠心洗浄後、DPBS(−)に再浮遊し、−30℃にて凍結保存した。室温で融解することにより細胞を破砕し、200 G、5分間室温で遠心した。上清を取り孔径0.2μmの濾過滅菌フィルターを通し、pASC ろ液とした。
【0106】
1−3.培養及び精子の運動性と凝集の評価
ろ液及び精子を、最終精子濃度が3×107/ml、且つ添加細胞濃度が精子濃度の1,000分の1(3×104/ml)又は100分の1(3×105/ml)となるように、精子とpASC ろ液を丸底のマイクロチューブ内で混合し(pASCろ液無添加のコントロールでは同量のDPBS(-)を添加)、38.5℃の水浴中で0.25、1、10、15及び17.5時間培養した。培養後、一部の精子を取り(3μl)精子運動計測用カウンティングチャンバー(Leja社、深さ 20μm)に入れ、38.5℃に加温した。位相差顕微鏡下で精子を観察し、以下の項目について運動性及び凝集を判定した。
(1)運動率(%)
運動している全ての精子が全精子に占める割合を主観的に判定し、運動率とした。
(2)直進率(%)
頭部を輝かせながら極めて速く運動する精子あるいは緩慢であるが直進する精子が占める全運動精子に対する割合を主観的に判定し直進率とした。
(3)運動の活発さ
精子の運動の活発さを以下のとおり5段階に分類した。
0=全く動かない(この場合運動率は0%となる)
1=運動するが場所を移動せず、その場で極めて緩慢な運動を示す精子が全てあるいはほとんどを占める場合
2=直進あるいは非直進運動(円運動を含む)するが尾部の振動が遅い場合
3=直進あるいは非直進運動(円運動を含む)するが、尾部の運動が比較的早い場合(振動している尾部の輪郭が見える)
4=直進あるいは非直進運動(円運動を含む)するが、尾部の運動が極めて速い場合(振動している尾部の輪郭が見えないほど早い場合)
(4)凝集
複数精子が頭部で結合している度合いを以下の通り5段階に判定した。
0=全く凝集が観察されない、あるいはごくわずか観察される場合
1=25%以下の精子が凝集している場合
2=25〜50%の精子が凝集している場合
3=50〜75%の精子が凝集している場合
4=75%以上の精子が凝集している場合
(5)生存率の測定
既報(Harrison, RA, Vickers SE. Use of fluorescent probes to assess membrane integrity in mammalian spermatozoa. J. Reprod. Fertil. 88 (1): 343-352 (1990).)の方法に従い、培養後の精子をヨウ化プロピジウム染色した。蛍光位相差顕微鏡下で200 精子を観察し、頭部が赤く発色していない精子を生存精子として、生存率(%)を算出した。
【0107】
2.結果
以下の表10に示す通り、pASC ろ液無添加では、運動率が培養1〜10時間で0.25時間に比べて上昇し、10時間を超えると低下した。直進率は培養0.25時間に比べて培養1〜15時間まで上昇した後、17.5時間で低下した。一方、pASC ろ液添加では、培養10及び15時間で無添加に比べて運動率及び直進率が上昇した。培養17.5時間では運動率と直進率に両者の間で差は見られなかった。しかし、培養17.5時間における運動性において、pASC ろ液無添加の直進精子は観察中直進を止めたが、ろ液添加では直進精子はより長い距離を直進した。活発さと凝集については、pASC ろ液添加の有無及び培養時間に関わらず差は見られなかった。
【表10】
デュロック種ブタ精子の性状へ及ぼすpASC ろ液(精子濃度の100分の1及び1,000分の1濃度)添加の影響。*:最終精子濃度は3×107/ml。a: 直進精子は観察中直進を止める。b: 直進精子はより長い距離を直進する。
【0108】
<試験2>
1.方法
1−1.精子
デュロック種種雄豚(1頭;個体番号 D7302)より採取した濃厚部精液を希釈液(GPロング、グローバルピッグファーム社)で希釈し17℃に保存した。5日間保存した精液を、精子濃度が2×107/mlとなるようにGPロングで希釈した。
【0109】
1−2.ろ液
フラスコ内で培養によりコンフルエントとなったpASCを剥離し、室温でDPBS(-)により1回遠心洗浄後、濃度が1.75×106/mlとなるようにDPBS(-)に再浮遊した。−30℃にて凍結後室温で融解することにより細胞を破砕し、200 G、5分間室温で遠心した。上清を取り孔径0.2μmの濾過滅菌フィルターを通し、pASC ろ液とした。pASC ろ液の原液(1.75×106/ml)、原液をDPBS(-)にて2×104/ml相当に希釈したもの、及び同2×105/ml相当に希釈したものを使用した。
【0110】
1−3.培養及び精子の運動性と凝集の評価
GPロング希釈液に再浮遊した精子(2×107/ml)とDPBS(-)又は所定の濃度のpASC ろ液(2×104/ml、2×105/ml及び17.5×105/ml相当)を1 : 1に混合し、最終精子濃度が1×107/ml、且つ最終pASC 添加濃度が0.1×104/ml(最終精子濃度の1,000分の1)、1×105/ml(最終精子濃度の100分の1)又は9×105/ml(最終精子濃度の11分の1)相当とした。pASC ろ液と混合したブタ精子を38.5℃の水浴中で0.25、1及び7時間培養した。培養後、精子を10μl取り、予め温めておいたスライドグラスへ載せ、予め温めておいた18 mm×18 mmのカバーガラスで覆った。直ちに200倍及び400倍の位相差顕微鏡下で精子を観察し、試験1と同様に、運動性及び凝集を判定した。
【0111】
2.結果
表11に示す通り、pASCろ液無添加では,運動率が培養1時間で0.25時間に比べて上昇し、7時間で低下した。直進率はいずれの培養時間においても0%であった。一方、pASC ろ液添加では、培養1時間で運動率及び直進率が若干対照に比べてpASC ろ液1×104/ml相当において上昇した(50% vs 55%及び0 vs 0.5)。また、培養7時間における運動率は、pASC ろ液無添加で30%であったの対して、ろ液1×104/ml相当添加及び9×105/ml相当添加で上昇した(それぞれ50%及び40%)。活発さと凝集については、pASC ろ液添加の有無及び培養時間に関わらず差は見られなかった。
【表11】
デュロック種ブタ精子の性状へ及ぼすpASC ろ液(精子濃度の11分の1、100分の1及び1,000分の1濃度)添加の影響。*: 最終精子濃度は1×107/ml。
【0112】
<考察>
実際にブタ精子を人工授精する際に使用する新鮮精液を希釈液で希釈して状態におけるpASC ろ液の作用を確認した。試験1では、培養10時間と15時間で、pASC ろ液添加による運動率と直進率の上昇が確認された。また、培養17.5時間において、観察開始直後における運動性の急激な低下が見られたが、ろ液無添加で直進精子は観察中直進を止めたのに対してろ液添加では直進精子はより長い距離を直進していた。この結果は、pASCろ液に精子の運動性改善作用があることを示している。試験2では、pASC ろ液による運動率の維持作用と若干の直進率の上昇が認められたが、差は劇的ではなかった。この理由は恐らく、培養0時間における直進率が0%であったため、このようなサンプルではpASC ろ液による回復が困難であることが原因であった可能性が考えられる。このことは試験1において、培養0時間で30%であった直進率が培養後、無添加よりpASC ろ液添加において上昇したことと対照的であった。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は畜産分野及び生殖医療での多大な貢献が期待される。例えば、本発明を肉用牛の受精移植に適用すれば、正常受精卵を高率に採取でき、より多くの子牛を得ることが可能となる。本発明を乳用牛の人工授精に適用した場合には、性選別精液の受胎率を向上させることができる。一方、本発明は男性不妊症の治療・改善や育種・種の維持(例えば絶滅危惧種の維持、ペットの系統の維持又は交雑)等への利用も図られるものであり、その利用価値は大きい。
【0114】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
図1
図2
図3
図4
図5