特許第6985719号(P6985719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985719凍結体製造装置、凍結体製造方法、及び気体成分濃度測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985719
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】凍結体製造装置、凍結体製造方法、及び気体成分濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/04 20180101AFI20211213BHJP
   F25D 15/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   F25C1/04 301
   F25D15/00
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-138221(P2017-138221)
(22)【出願日】2017年7月14日
(65)【公開番号】特開2019-20030(P2019-20030A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(72)【発明者】
【氏名】五島 崇
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−297976(JP,A)
【文献】 特開平02−130366(JP,A)
【文献】 特開2011−010770(JP,A)
【文献】 特開2015−052579(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0090473(US,A1)
【文献】 特開2004−278894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/04
F25D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と、前記液体に分散している気体成分とを含む気体分散液であって、前記気体成分には、気泡と、分子レベルで前記液体に溶解した形態で前記液体中に存在している溶解成分とが含まれる気体分散液を形成する気体分散液形成装置と、
前記気体分散液を大気圧下において凍結させる凍結装置と、
を備え、
前記気体分散液形成装置が、
前記液体を貯留する液槽と、
前記液槽から吸入管を通じて前記液体を吸い込み、吸い込んだ前記液体を吐出管を通じて前記液槽内に吐出するポンプと、
前記吸入管の、前記液槽の外部に配置される部分に設けられた気体導入弁と、
前記吐出管の、前記液槽の内部に配置される端部に設けられたノズルと、
を備え、
前記ポンプの吸引力によって、前記液槽から前記液体が前記吸入管内に吸い込まれると共に、前記気体導入弁から気体が前記吸入管内に吸い込まれ、前記吸入管内で混ざり合った前記液体及び前記気体の流れが前記ノズルによって絞られることにより、前記液槽内に前記気体分散液が形成され、
前記凍結装置が、
前記液槽内に形成された前記気体分散液を収容する容器構造体と、
前記容器構造体を冷却することにより、前記容器構造体に収容されている前記気体分散液を大気圧下において凍結させて凍結体と成す冷却装置と、
を備え、
前記容器構造体が、底板部と、前記底板部の縁から立ち上がった側面部と、を有し、
前記底板部の全体が、前記側面部よりも熱伝導率の高い良導体で形成されており、
前記冷却装置によって、前記容器構造体の前記底板部が冷却されることにより、前記気体成分よりなる柱状の空隙である気柱が、前記気泡を種として、前記凍結体の内部に複数本形成される冷却速度で前記気体分散液が凍結され、かつ前記気体分散液が凍結される過程で、前記気体分散液から前記容器構造体に向かう熱の流れの方向のうち、前記底板部に対する法線方向の熱の流れが優先的に生じることにより、複数本の前記気柱が前記法線方向を向くように互いに平行に近づけられている前記凍結体が形成される、
凍結体製造装置
【請求項2】
前記凍結体に形成される複数本の前記気柱には、前記法線方向の両端が開口した連通構造を有するものが含まれる、
請求項1に記載の凍結体製造装置。
【請求項3】
前記気体分散液形成装置によって形成される前記気体分散液に含まれる前記気泡の平均直径が100μm以下であり、かつ前記気泡の個数密度が1億個/mL以上である、
請求項1又は2に記載の凍結体製造装置。
【請求項4】
液体と、前記液体に分散している気体成分とを含む気体分散液であって、前記気体成分には、平均直径が100μm以下であり、かつ個数密度が1億個/mL以上である気泡と、分子レベルで前記液体に溶解した形態で前記液体中に存在している溶解成分とが含まれる気体分散液を形成する気体分散液形成工程と、
前記気体分散液を容器構造体に収容し、前記容器構造体を冷却することにより、前記気体分散液を大気圧下において凍結させて凍結体と成す冷却工程と、を有し、
前記容器構造体が、底板部と、前記底板部の縁から立ち上がった側面部と、を有し、
前記底板部の全体が、前記側面部よりも熱伝導率の高い良導体で形成されており、
前記冷却工程では、前記容器構造体の前記底板部を冷却することにより、前記気体成分よりなる柱状の空隙である気柱が、前記気泡を種として、前記凍結体の内部に複数本形成される冷却速度で前記気体分散液を凍結させ、かつ前記気体分散液を凍結させる過程で、前記気体分散液から前記容器構造体に向かう熱の流れの方向のうち、前記底板部に対する法線方向の熱の流れを優先的に生じさせることにより、複数本の前記気柱が前記法線方向を向くように互いに平行に近づけられている前記凍結体を形成する、
凍結体製造方法。
【請求項5】
前記凍結体に形成される複数本の前記気柱には、前記法線方向の両端が開口した連通構造を有するものが含まれる、
請求項4に記載の凍結体製造方法。
【請求項6】
液体と、前記液体に分散している気体成分とを含む気体分散液であって、前記気体成分には、気泡と、分子レベルで前記液体に溶解した形態で前記液体中に存在している溶解成分とが含まれる気体分散液における、前記溶解成分の濃度である溶解濃度を計測する溶解濃度計測工程と、
前記気体分散液を凍結させ、前記気体成分よりなる柱状の空隙である気柱が内部に形成されている凍結体と成す凍結体形成工程と、
前記凍結体に形成されたすべての前記気柱の占める容積を計測し、その計測結果に基づいて、前記気体分散液における前記気体成分の総濃度を算出する総濃度算出工程と、
前記総濃度算出工程で求めた前記総濃度から、前記溶解濃度計測工程で計測した前記溶解濃度を差し引くことにより、前記気体分散液中に存在していた前記気泡の濃度を求める気泡濃度算出工程と、
有する、気体成分濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結体製造装置、凍結体製造方法、及び気体成分濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、オゾンガスの気泡が水に混入しているオゾン気泡含有水を凍結させることにより、オゾン氷を製造する技術が知られている。
【0003】
特許文献2に開示されるように、二酸化炭素の気泡が水に混入している炭酸水にレーザ光を照射し、炭酸水によって散乱された散乱光の強度を測定することにより、炭酸水における二酸化炭素の濃度を推定する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−47629号公報
【特許文献2】特開2009−8510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の製氷技術によれば、オゾンガスの気泡が内部に閉じ込められたオゾン氷が得られる。このオゾン氷は、内部に気泡よりなる球状の空隙が一様に分布しているので、構造上の等方性に優れる。
【0006】
しかし、その一方で、異方性を有する凍結体も産業上、有効に利用されうると考えられる。この点、特許文献1の製氷技術では、オゾン気泡含有水を急速に凍結させるため、異方性の良好なオゾン氷を得ることができない。
【0007】
また、特許文献2の測定技術に関しては、次の課題がある。即ち、上記散乱光の強度は、炭酸水に占める気泡の体積には依存するが、気泡の内圧には依存しない。しかし、一般に気泡のサイズによって、気泡の内圧が異なる。
【0008】
このため、気泡の体積のみからは、二酸化炭素の物質量に関する濃度を正確に推定することができない。また、気泡を形成することなく分子レベルで水中に溶解している二酸化炭素は、レーザ光を用いた測定にかかり難い。
【0009】
そこで、液体とその液体に分散している気体成分とを含む気体分散液に含まれる気体成分の濃度を正確に測定できる技術が望まれる。ここで、本明細書において“分散している”とは、気体成分が気泡の形態で液体中に存在することのみならず、気泡を形成することなく分子レベルで液体に溶解した形態で存在することも含む意味とする。
【0010】
本発明は、上記各実情に鑑みてなされたものであり、異方性の良好な凍結体を得ることができる技術を提供することを第1の目的とする。
【0011】
また、本発明は、気体分散液に含まれる気体成分の濃度を従来よりも正確に求めることができる技術を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の観点に係る凍結体製造装置は、
液体と、前記液体に分散している気体成分とを含む気体分散液であって、前記気体成分には、気泡と、分子レベルで前記液体に溶解した形態で前記液体中に存在している溶解成分とが含まれる気体分散液を形成する気体分散液形成装置と、
前記気体分散液を大気圧下において凍結させる凍結装置と、
を備え、
前記気体分散液形成装置が、
前記液体を貯留する液槽と、
前記液槽から吸入管を通じて前記液体を吸い込み、吸い込んだ前記液体を吐出管を通じて前記液槽内に吐出するポンプと、
前記吸入管の、前記液槽の外部に配置される部分に設けられた気体導入弁と、
前記吐出管の、前記液槽の内部に配置される端部に設けられたノズルと、
を備え、
前記ポンプの吸引力によって、前記液槽から前記液体が前記吸入管内に吸い込まれると共に、前記気体導入弁から気体が前記吸入管内に吸い込まれ、前記吸入管内で混ざり合った前記液体及び前記気体の流れが前記ノズルによって絞られることにより、前記液槽内に前記気体分散液が形成され、
前記凍結装置が、
前記液槽内に形成された前記気体分散液を収容する容器構造体と、
前記容器構造体を冷却することにより、前記容器構造体に収容されている前記気体分散液を大気圧下において凍結させて凍結体と成す冷却装置と、
を備え、
前記容器構造体が、底板部と、前記底板部の縁から立ち上がった側面部と、を有し、
前記底板部の全体が、前記側面部よりも熱伝導率の高い良導体で形成されており、
前記冷却装置によって、前記容器構造体の前記底板部が冷却されることにより、前記気体成分よりなる柱状の空隙である気柱が、前記気泡を種として、前記凍結体の内部に複数本形成される冷却速度で前記気体分散液が凍結され、かつ前記気体分散液が凍結される過程で、前記気体分散液から前記容器構造体に向かう熱の流れの方向のうち、前記底板部に対する法線方向の熱の流れが優先的に生じることにより、複数本の前記気柱が前記法線方向を向くように互いに平行に近づけられている前記凍結体が形成される。
【0015】
前記凍結体に形成される複数本の前記気柱には、前記法線方向の両端が開口した連通構造を有するものが含まれていてもよい。
【0016】
前記気体分散液形成装置によって形成される前記気体分散液に含まれる前記気泡の平均直径が100μm以下であり、かつ前記気泡の個数密度が1億個/mL以上でもよい。
【0017】
本発明の第の観点に係る凍結体製造方法は、
液体と、前記液体に分散している気体成分とを含む気体分散液であって、前記気体成分には、平均直径が100μm以下であり、かつ個数密度が1億個/mL以上である気泡と、分子レベルで前記液体に溶解した形態で前記液体中に存在している溶解成分とが含まれる気体分散液を形成する気体分散液形成工程と、
前記気体分散液を容器構造体に収容し、前記容器構造体を冷却することにより、前記気体分散液を大気圧下において凍結させて凍結体と成す冷却工程と、を有し、
前記容器構造体が、底板部と、前記底板部の縁から立ち上がった側面部と、を有し、
前記底板部の全体が、前記側面部よりも熱伝導率の高い良導体で形成されており、
前記冷却工程では、前記容器構造体の前記底板部を冷却することにより、前記気体成分よりなる柱状の空隙である気柱が、前記気泡を種として、前記凍結体の内部に複数本形成される冷却速度で前記気体分散液を凍結させ、かつ前記気体分散液を凍結させる過程で、前記気体分散液から前記容器構造体に向かう熱の流れの方向のうち、前記底板部に対する法線方向の熱の流れを優先的に生じさせることにより、複数本の前記気柱が前記法線方向を向くように互いに平行に近づけられている前記凍結体を形成する。
前記凍結体に形成される複数本の前記気柱には、前記法線方向の両端が開口した連通構造を有するものが含まれていてもよい。
【0018】
本発明の第の観点に係る気体成分濃度測定方法は、
液体と、前記液体に分散している気体成分とを含む気体分散液であって、前記気体成分には、気泡と、分子レベルで前記液体に溶解した形態で前記液体中に存在している溶解成分とが含まれる気体分散液における、前記溶解成分の濃度である溶解濃度を計測する溶解濃度計測工程と、
前記気体分散液を凍結させ、前記気体成分よりなる柱状の空隙である気柱が内部に形成されている凍結体と成す凍結体形成工程と、
前記凍結体に形成されたすべての前記気柱の占める容積を計測し、その計測結果に基づいて、前記気体分散液における前記気体成分の総濃度を算出する総濃度算出工程と、
前記総濃度算出工程で求めた前記総濃度から、前記溶解濃度計測工程で計測した前記溶解濃度を差し引くことにより、前記気体分散液中に存在していた前記気泡の濃度を求める気泡濃度算出工程と、
有する
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の観点に係る凍結体製造装置、及び第の観点に係る凍結体製造方法によれば、内部に気柱が複数本形成されている凍結体が形成される。それら複数本の気柱は、同じ法線方向を向くように互いに平行に近づけられている。このため、異方性の良好な凍結体を得ることができる。
【0021】
本発明の第3の観点に係る気体成分濃度測定方法によれば、気体分散液が凍結される過程で、気体成分が気柱を構成するために集まって合一化される。この合一化によって形成される空隙の内圧は、凍結中の気体分散液に作用している気圧に等しい。即ち、凍結によって、気体成分が、既知の同一の圧力に統一された状態で気柱を構成する。このため、気柱の容積に基づいて、気体分散液に含まれる気体成分の濃度を従来よりも正確に求めることができる。さらに、その総濃度から、溶解濃度計測工程で計測した溶解濃度を差し引くことにより、気体分散液中に存在していた気泡の濃度を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態1に係る凍結体製造装置の構成を示す概念図。
図2】実施形態1に係る気体分散液形成装置の構成を示す概念図。
図3】実施形態1に係る凍結装置によって凍結中の凍結体の部分拡大断面図。
図4】(A)及び(B)は実施例1で得た凍結体の側面を示す写真。
図5】(A)及び(B)は比較例で得た凍結体の側面を示す写真。
図6】(A)及び(B)は実施例2で得た凍結体の上面を示す写真。
図7】実施形態2に係る気体成分濃度測定装置の構成を示す概念図。
図8】実施形態2に係る気体成分濃度測定方法の手順を示すフローチャート。
図9】実施形態3に係る気体成分濃度測定方法の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付す。
【0024】
[実施形態1]
図1に示すように、本実施形態に係る凍結体製造装置300は、液体とその液体に分散している気体成分とを含む気体分散液LBを形成する気体分散液形成装置100を備える。
【0025】
図2に示すように、気体分散液形成装置100は、液体を貯留する液槽110と、液槽110から吸入管120を通じて液体を吸い込み、吸い込んだ液体を吐出管130を通じて液槽110内に吐出するポンプ140とを備える。
【0026】
吸入管120の、液槽110の外部に配置されている部分には、外部から気体を取り込む気体導入弁150が設けられている。また、吐出管130の、液槽110の内部に配置されている端部には、液体の流れを絞るノズル160が接続されている。
【0027】
ポンプ140が作動すると、ポンプ140の吸引力によって、液槽110から液体が吸入管120内に吸い込まれると共に、気体導入弁150から気体が吸入管120内に吸い込まれる。気体導入弁150から吸い込まれた気体は、吸入管120内で液体と混ざり合う。その混ざり合った液体及び気体は、ポンプ140の吐出力によって、吐出管130を通じてノズル160に圧送される。
【0028】
ノズル160は、液体及び気体の流れを絞るため、液体と混ざり合った気体は、ノズル160を通過する過程で、せん断力や撹拌力を受け、液体中で微細化された気泡と成る。この結果、ノズル160から、微細化された気泡を含む気体分散液LBが吐出される。また、一旦吐出された気体分散液LBが、再び吸入管120に吸い込まれてノズル160から吐出される。これにより、気体分散液LB中の気泡がさらに微細化される。
【0029】
このようにして、液槽110内に、気体成分が主として気泡の形態で液体中に存在している気体分散液LBが形成される。形成される気体分散液LB中の気泡の平均直径は、例えば100μm以下である。なお、気体成分の一部は、気泡を形成することなく、分子レベルで液体に溶解して存在しうる。
【0030】
図1に戻って、凍結体製造装置300の説明を続ける。凍結体製造装置300は、上述した気体分散液形成装置100によって形成された気体分散液LBを、大気圧下において凍結させる凍結装置200も備える。
【0031】
凍結装置200は、気体分散液LBを収容する容器構造体210と、容器構造体210を冷却することにより、容器構造体210に収容されている気体分散液LBを凍結させて凍結体FBと成す冷却装置220とを備える。
【0032】
容器構造体210は、底板部211と、底板部211から立ち上がった側面部212とを有し、上部が開口した有底管状をなす。側面部212は、熱伝導率の小さい材料、具体的には、合成樹脂よりなる。底板部211は、側面部212より熱伝導率の高い良導体、具体的には、銅よりなる。底板部211と側面部212とは液密に接合されている。
【0033】
冷却装置220は、気体分散液LBより凝固点が低い不凍液221が貯められた不凍液槽222と、不凍液槽222を冷却する冷却ユニット223とを有する。不凍液221には、例えば、エチレングリコールが用いられる。不凍液槽222に貯められた不凍液221に、容器構造体210の底板部211が浸漬している。
【0034】
冷却ユニット223は、冷媒を用いて冷凍サイクルを構成することにより、不凍液槽222を冷却する。これにより、不凍液槽222を通じて不凍液221が冷却され、不凍液221に浸っている底板部211が冷却される。底板部211の冷却到達温度は、気体分散液LBの凝固点より低い温度、具体的には、例えば−10℃以下である。
【0035】
このようにして、冷却装置220は底板部211を冷却する。これにより、底板部211を通じて、容器構造体210内の気体分散液LBが冷却され、凍結される。冷却装置220は、気体分散液LBを構成する気体成分よりなる柱状の空隙である気柱GCが凍結体FBの内部に複数本形成される冷却速度で、気体分散液LBを凍結させる。
【0036】
なお、底板部211は側面部212より熱伝導率が高いため、気体分散液LBが凍結される過程で、気体分散液LBから底板部211への熱の移動が、気体分散液LBから側面部212への熱の移動よりも優先的に生じる。つまり、気体分散液LBから容器構造体210に向かうあらゆる熱の流れの方向のうち、図1における上下方向、即ち底板部211に対する法線方向である一軸方向の熱の流れが優先的に生じる。
【0037】
これにより、複数本の気柱GCが、底板部211に対する法線方向である一軸方向を向くように互いに平行に近づけられている凍結体FBが形成される。
【0038】
図3を参照し、気体分散液LBの凍結の進行に伴って、一軸方向に配向化された気柱GCが形成されるメカニズムについて説明する。
【0039】
容器構造体210に気体分散液LBが注入されたとき、底板部211の表面における複数の位置(以下、基端位置という。)BPに、気体分散液LB中の気体成分が付着する。その各々の基端位置BPに付着した気体成分を種として、気柱GCが成長する。
【0040】
既述のように、気体分散液LBから底板部211に向かって下方に優先的に熱が流れるため、凍結体FB及び気柱GCは、上方に向かって成長する。凍結体FBが上方に成長し始めたとき、基端位置BPに付着していた種としての気体成分に、気体分散液LB中における他の領域に存在していた気体成分が集まって合一化され、空隙を形成する。そして、その空隙が気柱GCと成る。
【0041】
また、既に形成された気柱GCの、気体分散液LBと凍結体FBとの界面SFの高さ位置における上端部にも、気体分散液LB中の気体成分が集まって合一化されてなる気泡核BNが形成される。そして、その気泡核BNの周囲の液体が凍結することで、気柱GCが成長する。
【0042】
なお、気体分散液LBが凍結し始めるときに、基端位置BPおける種としての気体成分に他の領域の気体成分が集まって合一化し、また、凍結の途中においても、気柱GCの上端部に気体成分が集まって合一化されてなる気泡核BNが形成される理由は、次の通りであると推定される。
【0043】
即ち、気体分散液LBを構成する液体は、凍結によって結晶化する。気体成分は、結晶である凍結体FBにとっては不純物であり、結晶である凍結体FB中で一様に存在するよりも、既に存在する種としての気体成分又は気泡核BNの位置に移動してそれらと合一化した方が、エネルギー的に安定する。
【0044】
このため、基端位置BPに気体成分が集まり、かつ気柱GCの上端部に気泡核BNが形成される。なお、液体として用いる物質の種類や冷却条件によっては、一部又は全部がアモルファスな凍結体FBも形成され得るが、その場合でも、気体成分は互いに合一化した方がエネルギー的に安定すると考えられる。
【0045】
以上のようにして、上方への凍結の進行に伴って、気泡核BNが存在した位置の軌跡に沿って気柱GCが成長する。このため、各々の気柱GCが、凍結体FBが成長する方向と同一の方向、即ち底板部211に対する法線方向である一軸方向に配向化される。
【0046】
また、気柱GCは、凍結体FBにおいて、底板部211に平行な面内方向に関してほぼ一様に分布しており、かつ気柱GCの内径は、ほぼ均等に揃っている。これは、気体分散液LB中に気体成分が一様に分散しており、凍結の過程で気体分散液LBから底板部211に向かう熱の流れが、底板部211に平行な面内で一様であることによる。
【0047】
なお、気体分散液LBにおける気泡の数密度が高い程、多くの基端位置BPから気柱GCが成長するため、凍結体FBにおける気柱GCの数密度が高くなる。また、気体分散液LBにおける気泡のサイズが小さい程、そして、冷却装置220による気体分散液LBの冷却速度が速い程、各々の気柱GCが細くなる。逆に、気体分散液LBにおける気泡のサイズが大きい程、そして、冷却装置220による気体分散液LBの冷却速度が遅い程、各々の気柱GCが太くなる。
【0048】
このように、気体分散液LBにおける気泡の数密度、気泡のサイズ、及び気体分散液LBの冷却速度によって、気柱GCの内径及び数密度を調整することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、内部に気柱GCが複数本形成されている凍結体FBが形成される。それら複数本の気柱GCは、同じ一軸方向を向くように互いに平行に近づけられている。このため、異方性の良好な凍結体FBを得ることができる。
【0050】
具体的には、凍結体FBは、圧縮強度又はせん断強度に関して異方性を有する。このため、アイスキャンディーやシャーベット等の氷菓として利用した場合に、従来とは異なる新規な食感を提供できる。なお、氷菓としての凍結体FBを製造するためには、気体分散液LBとして、例えば、果汁若しくはその濃縮還元液又は無果汁飲料を用い、気体成分として、例えば、果実等の種々のフレーバーのあるものを用いることができる。
【0051】
また、凍結体FBにおいて、気柱GCは、一軸方向の両端が外部に開口した連通構造を有しうる。このため、凍結体FBを、飲料等の対象液体を冷却する用途に用いた場合には、気柱GCの内部においても対象液体との接触面積を確保できるため、対象液体をすみやかに冷却できる。
【0052】
また、凍結体FBにおける一軸方向の両端が開口した気柱GCに、その開口から別の液体を充填させて再凍結させれば、気柱GCが存在していた空隙が、別の液体が凍結したもので埋められた芯鞘構造を形成することもできる。
【0053】
また、凍結体FBの構造上の異方性は、光学的な異方性としても発現する。このため、凍結体FBは、光学素子、アート作品、又はオブジェといった、光が照射される被照射体としても利用されうる。
【0054】
[実施例1]
以下、凍結体FBの光学的な異方性を調べた実施例を述べる。図2に示す気体分散液形成装置100を用い、液体としての蒸留水に、気体成分としての空気が気泡化されて分散している気体分散液LBを形成した。これを図1に示す凍結装置200によって、鉛直方向に気柱GCが成長する冷却速度で凍結させ、凍結体FBとしての氷晶と成した。底板部211の冷却到達温度は−25℃であった。
【0055】
図4に、得られた氷晶である凍結体FBの写真を示す。凍結体FBの光学的な異方性を調べるために、図4(A)には、凍結体FBに対し、気柱GCが配向している方向と平行に、下方から上方に向かってレーザ光を入射させたときの写真を示す。一方、図4(B)には、凍結体FBに対し、気柱GCが配向している方向と直交する横方向にレーザ光を入射させたときの写真を示す。なお、照射したレーザ光の波長は532nmである。
【0056】
図4(A)に示すように、気柱GCが配向している一軸方向に入射したレーザ光は、一軸方向と直交する面内に一様に広がって、一軸方向に伝播する。一方、図4(B)に示すように、一軸方向と直交する方向に入射したレーザ光は、さほど広がらずに伝播する。図4(A)と図4(B)の比較より、凍結体FBの光学的な異方性が確認された。
【0057】
[比較例1]
以下、比較例に係る凍結体製造方法について述べる。実施例1で凍結体FBの原料とした気体分散液LBと同一のものを、樹脂製の容器に注入し、容器ごと冷凍庫に収容して凍結させた。本比較例で得た凍結体は、図4(A)に示す凍結体FBのように一軸方向に配向化された気柱GCを有するものではなかった。これは、用いた容器に、局所的に熱伝導率が高い部分が存在しないため、凍結中に気体分散液LBから容器に対してあらゆる方向に熱の流れが生じたためと考えられる。
【0058】
図5に、本比較例で得た凍結体にレーザ光を入射させたときの写真を示す。レーザ光の波長は、実施例1の場合と同じく、532nmである。図5(A)に示すように、下方から上方に向かって入射したレーザ光も、図5(B)に示すように、横方向に入射したレーザ光も、同じように凍結体内で広がって伝播する。
【0059】
図5(A)と図5(B)の比較から分かるように、レーザ光の入射方向による伝播特性の異方性は殆ど確認されない。これは、本比較例に係る凍結体においては、気柱GCが一軸方向に配向化されておらず、組織の等方性が高いためである。
【0060】
[実施例2]
次に、気体分散液LBにおける気泡の数密度と、凍結体FBにおける気柱GCの数密度との関係を調べた実施例を述べる。
【0061】
まず、気泡の個数密度が異なる2種類の気体分散液LBを準備した。なお、気体分散液LBにおける気泡の個数密度は、図2に示した気体分散液形成装置100におけるポンプ140の作動時間によって調整した。次に、それら2種類の気体分散液LBの各々を、図1に示す凍結装置200によって、同じ冷却速度で凍結させて凍結体FBと成した。
【0062】
図6に、得られた凍結体FBの写真を示す。図6(A)は、気泡の個数密度が1億個/mL程度の気体分散液LBを凍結させて得た凍結体FBを示し、図6(B)は、気泡の個数密度が4.1億個/mL程度の気体分散液LBを凍結させて得た凍結体FBを示す。図6(A)に示す凍結体FBよりも、図6(B)に示す凍結体FBの方が、多くの気柱GCを有することが目視で確認された。即ち、凍結体FBにおける気柱GCの本数密度を、気体分散液LBにおける気泡の数密度によって調整できることが確認された。
【0063】
[実施形態2]
上記実施形態1では、図1に示した凍結装置200を凍結体製造装置300に応用したが、凍結装置200によって形成される凍結体FBにおいては、気体分散液LBに含まれていた気体成分が気柱GCを構成するので、気柱GCの容積に基づいて、気体分散液LBに含まれていた気体成分の濃度を推定することができる。即ち、凍結装置200は、気体成分の濃度の測定にも応用することができる。以下、その具体例について述べる。
【0064】
但し、気体分散液LBにおいて、気体成分は、気泡の形態のみならず、分子レベルで溶解した形態によっても液体中に存在しうる。そして、その液体に溶解していた気体成分が気柱GCを構成するか否かについては、自明でない。
【0065】
そこで、実施形態2の具体的な説明に先立ち、液体に溶解していた気体成分が気柱GCを構成するか否かを調べることを一目的として行った実施例をまず述べる。
【0066】
[実施例3]
まず、予め酸素の溶解濃度が既知である20℃の蒸留水を準備した。この蒸留水には、気泡は存在していない。蒸留水における酸素の溶解濃度は、市販の溶存酸素計で測定したところ、6.5mg/Lであった。なお、溶解濃度の測定は大気圧下で行ったので、この測定値は、大気圧下での酸素の溶解濃度を表す。
【0067】
次に、この蒸留水を図1に示した凍結装置200にて大気圧下で凍結させた。この結果、蒸留水の凍結体FBである氷晶の内部に、気柱GCが形成されていることを確認した。即ち、蒸留水に溶解していた気体成分も気柱GCを構成することが判明した。なお、気柱GCは、酸素成分のみならず、蒸留水に溶解していたあらゆる種類の気体成分によって構成されたものと考えられる。
【0068】
次に、氷晶中で気柱GCの占める容積を、次の要領で測定した。各々の気柱GCは高さ方向に関して断面積が一定な円柱状をなし、互いの気柱GCの内径は等しいとみなす。1つの気柱GCの容積は、その気柱GCの内径と高さの測定値から算出でき、その算出した容積の値に、気柱GCの本数をかけることで、気柱GCの占める容積が求まる。
【0069】
ここで、気柱GCの内径、高さ、及び本数は、顕微鏡を用いて得られる氷晶の拡大画像から計測できる。なお、気柱GCの内径は80μmであった。
【0070】
次に、求めた気柱GCの容積の、蒸留水の体積に対する割合(以下、容積率という。)を求めた。この容積率とは、気柱GCの容積を、氷晶の体積を蒸留水の体積に換算した値、即ち氷晶を得るために凍結させた蒸留水の体積で割った値である。気柱GCの容積率は、7.49mm/mLであった。
【0071】
次に、その気柱GCの容積率を、質量に関する密度に換算した。具体的には、簡単のため、気柱GCの容積率に、大気圧における空気の単位体積あたりの質量をかけ算した。かけ算の結果の値(以下、全気体成分濃度という。)は、9.62mg/Lであった。なお、全気体成分濃度は、蒸留水に溶解していた全ての気体成分の全体としての濃度を表す。
【0072】
次に、全気体成分濃度に、酸素成分の寄与する割合をかけ算することで、酸素成分の濃度を求めた。具体的には、空気は酸素と窒素とよりなるものとみなし、20℃での水1gに対する酸素の溶解量:窒素の溶解量の理論的な質量比が、0.043g:0.019gであることを考慮して、酸素成分の寄与する割合は、0.043/(0.043+0.019)とし、これを全気体成分濃度9.62mg/Lにかけ算した。
【0073】
このかけ算の結果の値は、6.67mg/Lであった。この値は、上述の算出過程から分かるように、蒸留水中に溶存していた酸素成分の濃度を表す。そして、この値は、事前に市販の溶存酸素計を用いて、大気圧下で測定した酸素成分の濃度の値6.5mg/Lとほぼ一致している。
【0074】
以上の実施例3によって、次のことが判明した。まず、液体に溶解していた気体成分も気泡と同様に、凍結体FBにて気柱GCを構成する。従って、液体に溶解していた気体成分も、気泡と同様に、気体分散液LBが凍結される過程で、気柱GCを構成するために合一化されると考えられる。
【0075】
また、気柱GCの容積から求めた酸素成分の濃度が、大気圧下での酸素の濃度を表したことより、気柱GCの容積は、液体に溶解していた気体成分の、大気圧における体積を表しているといえる。
【0076】
より一般的には、凍結の過程で、気泡の形態で存在していた気体成分と溶解した形態で存在していた気体成分の双方が、気柱GCを構成するために合一化され、かつその合一化がなされて形成される空隙の内圧は、凍結中の気体分散液LBに作用している気圧、即ち大気圧と等しい。
【0077】
以上の結果を踏まえ、以下、本実施形態の構成について述べる。
【0078】
図7に示すように、本実施形態に係る気体成分濃度測定装置500は、測定の対象である気体分散液LBを凍結させて凍結体FBと成す凍結装置200と、凍結装置200によって形成された凍結体FBにおける気柱GCの占める容積を計測するための気柱容積計測手段としての観察装置400とを備える。
【0079】
観察装置400は、凍結体FBの気柱GCが形成された部分を拡大して撮像する顕微鏡と、その顕微鏡で撮像された顕微鏡画像を表示するモニタと、そのモニタに表示される顕微鏡画像上で所望の領域を指定するユーザインターフェースと、そのユーザインターフェースによって指定された領域の寸法測定を行い、測定結果をモニタに表示させるオンスクリーン画素測定機能を有するコンピュータ本体と、を備える。
【0080】
以下、上記実施例3の場合のように、測定の対象が、気体成分が気泡の形態ではなく溶解した形態でのみ液体に分散している気体分散液LBである場合について、気体成分濃度測定装置500で気体成分の濃度を測定する手順を説明する。
【0081】
図8に示すように、まず凍結体形成工程において、気体分散液LBを、図7に示す溶結装置200で凍結させて凍結体FBと成す(ステップS11)。
【0082】
次に、凍結体FBにおいて気柱GCが占める容積を、図7に示す観察装置400を用いて測定する(ステップS12)。具体的には、観察装置400を用いて、気柱GCの内径、高さ、及び本数を計測する。そして、気柱GCの内径と高さとから、1つの気柱GCの容積を算出し、それに気柱GCの本数をかけ算することで、気柱GCの容積が求まる。
【0083】
なお、ステップS12で求めた気柱GCの容積は、気体分散液LBに溶解していた全ての種類の気体成分の、凍結中の気体分散液LBに作用している気圧、即ち大気圧における体積を表す。
【0084】
次に、ステップS12で求めた気柱GCの容積に、測定対象である気体成分の占める割合をかけ算することで、測定対象である気体成分の占める容積を求める(ステップS13)。具体的には、測定対象である気体成分の占める割合は、測定対象である気体成分の、気体分散液LBを構成する液体に対する溶解度を、気体分散液LBに溶解していた全ての種類の気体成分の、同液体に対する溶解度の和で割った値とする。ここで溶解度は、気体分散液LBの温度における値とする。
【0085】
ステップS13で求めた容積は、気体分散液LBに溶解していた測定対象である気体成分の、凍結中の気体分散液LBに作用している気圧、即ち、大気圧における体積を表す。
【0086】
但し、気体分散液LBに溶解していた気体成分が1種類である場合、即ち、気体分散液LBに溶解していた気体成分が純物質である場合には、ステップS13でかけ算する“測定対象である気体成分の占める割合”は、1である。即ち、その場合は、ステップS13を省略することができる。
【0087】
次に、ステップS13で求めた容積、又はステップS13を省略する場合にステップS12で求めた容積に、測定対象である気体成分の単位体積あたりの質量の理論値をかけ算することで、容積を質量に換算し、凍結体FBを得るために凍結させた気体分散液LBの体積で割り算する(ステップS14)。これにより、測定対象である気体成分の、気体分散液LBにおける濃度が求まる。
【0088】
なお、上述したステップS12〜S14は、凍結体FBに占める気柱GCの容積を計測し、その計測結果に基づいて、気体分散液LBにおいて溶存していた気体成分の濃度を算出する気体成分濃度算出工程に相当する。
【0089】
以上説明したように、本実施形態によれば、気体成分が気泡の形態ではなく溶解した形態でのみ液体に分散している気体分散液LBを測定の対象とし、気体分散液LBにおける気体成分の濃度を求めることができる。液体に溶解した気体成分は、気体分散液LBに照射するレーザ光によっては測定にかかり難いため、従来のレーザ光を用いた測定に比べると、気体成分の濃度をより正確に求めることができる。
【0090】
[実施形態3]
上記実施形態2では、気体成分が気泡の形態ではなく溶解した形態でのみ液体に分散している気体分散液LBを測定の対象としたが、図7に示す気体成分濃度測定装置500によれば、気体成分が溶解した形態のみならず気泡の形態でも液体に分散している気体分散液LBを測定の対象とし、気体成分のうち気泡を構成していたものの濃度を求めることもできる。以下、その具体例について述べる。
【0091】
図9に示すように、本実施形態では、まず溶解濃度測定工程において、気体分散液LB中の液体に溶解している気体成分の溶解濃度を、市販の溶存濃度計で測定しておく(ステップS21)。
【0092】
なお、この溶解濃度の測定は、次のステップS22で気体分散液LBを凍結させる過程で気体分散液LBに作用する気圧と同一の気圧下で行う。具体的には、溶解濃度の測定は、大気圧下で行う。
【0093】
次に、凍結体形成工程において、気体分散液LBを、図7に示す凍結装置200によって、大気圧下で凍結させて凍結体FBと成す(ステップS22)。
【0094】
次に、凍結体FBにおいて気柱GCが占める容積を、図7に示す観察装置400を用いて測定する(ステップS23)。気柱GCが占める容積の測定の要領は、実施形態2で述べた通りである。
【0095】
なお、実施例3で述べたように、気体分散液LBにおいて、溶解した形態で存在していた気体成分も、気柱GCを構成する。気柱GCが構成される過程で、溶解した形態で存在していた気体成分が大気圧にて合一化されるのであるから、気泡の形態で存在していた気体成分も同様に、大気圧にて合一化される。
【0096】
従って、ステップS23で求めた気柱GCの容積は、気体分散液LB中に気泡の形態及び溶解した形態で存在していた全部の気体成分の、大気圧における体積を表す。
【0097】
次に、総濃度算出工程において、ステップS23で求めた気柱GCの容積に基づいて、気体分散液LBにおける気体成分の総濃度を求める(ステップS24)。具体的には、ステップS23で求めた気柱GCの容積に、気体成分の単位体積あたりの質量の理論値をかけ算することで容積を質量に換算し、換算して得た質量を、凍結体FBを得るために凍結させた気体分散液LBの体積で割り算する。
【0098】
これにより、気体分散液LB中に気泡の形態及び溶解した形態で存在していた全部の気体成分の、気体分散液LBにおける濃度を表す総濃度が求まる。
【0099】
次に、気泡濃度算出工程において、ステップS24で求めた総濃度から、ステップS21で計測した溶解濃度を差し引く(ステップS25)。即ち、気体分散液LB中に気泡の形態及び溶解した形態で存在していた全部の気体成分の濃度から、気体分散液LB中に溶解した形態で存在していた気体成分の濃度を差し引く。これにより、気体分散液LB中に気泡として存在していた気体成分の濃度が求まる。
【0100】
なお、上述したステップS23〜S25は、凍結体FBに占める気柱GCの容積を計測し、その計測結果に基づいて、気体分散液LBにおいて気泡の形態で存在していた気体成分の濃度を算出する気体成分濃度算出工程に相当する。
【0101】
以上説明したように、本実施形態によれば、気体分散液LBにおいて気泡の形態で存在していた気体成分の濃度を求めることができる。
【0102】
なお、気泡の形態で存在していた気体成分の濃度を推定すること自体は、レーザ光に対する散乱光の強度を観測する従来技術においても可能ではあった。しかし、一般に小さな気泡ほど内圧が高いにも関わらず、散乱光の強度は、気泡の体積には依存するが、気泡の内圧には依存しない。このため、従来技術では、気泡の形態で存在していた気体成分の濃度を、気泡の内圧を加味して正確に求めることができなかった。
【0103】
これに対し、本実施形態では、ステップS22の凍結体形成工程において、気体分散液LBが凍結される過程で、気体成分が、気柱GCを構成するために、大気圧にて合一化される。即ち、気体分散液LBにおいて、溶解した形態で存在していた気体成分及び様々なサイズの気泡を構成していた気体成分のいずれもが、凍結によって、大気圧に統一されて気柱GCを構成する。このため、ステップS23〜S25の気体成分濃度算出工程において、気柱GCの容積に基づいて、気体分散液LBに含まれる気体成分の濃度を従来よりも正確に求めることができる。
【0104】
以上、本発明の実施形態と実施例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、以下に述べる変形も可能である。
【0105】
上記実施形態1では、重力が作用する鉛直方向に関して下方から上方に向かって凍結を進行させる凍結装置200の構成例を図1図3に示したが、凍結装置200は、上方から下方に向かって凍結を進行される構成としてもよい。また、鉛直方向に関して、上下の両側から凍結を進行させる構成としてもよい。いずれの場合も、鉛直方向に気柱GCが配向化された凍結体FBを得ることができる。また、気柱GCが一軸方向に配向化された凍結体FBを得ることができれば、凍結を進行させる方向は、特に鉛直方向に限定されず、任意の方向に凍結を進行させてよい。
【0106】
上記実施形態2及び3では、気体分散液LBにおける気体成分の、質量に関する濃度を求めたが、これを気体成分の既知のモル質量で割ってモル濃度に換算することもできる。いずれの濃度も、気体成分の物質量に関する濃度である。既述のように、レーザ光に対する散乱光の強度を観測する従来技術では、気体成分の体積に関する濃度しか正確に測定することができなかったが、上記実施形態2及び3によれば、気体成分の物質量に関する濃度を正確に求めることができる。
【0107】
上記実施形態2及び3で述べた気体成分濃度測定装置500は、例えば、気体成分が気泡の形態で分散している排液から気泡を除去する工程において、気泡の除去が適切になされているか否かを評価する評価装置として用いることもできる。即ち、気泡の除去がなされた排液を測定の対象として凍結させた場合に、規定量以上の気柱GCが形成された場合には、気泡の除去が適切になされていないと評価でき、気柱GCが殆ど形成されない場合には、気泡の除去が適切になされていると評価できる。気体成分濃度測定装置500で測定された気体成分の濃度を、評価指標として用いることもできる。
【0108】
本発明は、その広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な変形が可能とされる。上記実施形態及び実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって示される。請求の範囲内及びそれと同等の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0109】
100…気体分散液形成装置、
110…液槽、
120…吸入管、
130…吐出管、
140…ポンプ、
150…気体導入弁、
160…ノズル、
200…凍結装置、
210…容器構造体、
211…底板部、
212…側面部、
220…冷却装置、
221…不凍液、
222…不凍液槽、
223…冷却ユニット、
300…凍結体製造装置、
400…観察装置(気柱容積計測手段)、
500…気体成分濃度測定装置、
LB…気体分散液、
FB…凍結体、
GC…気柱、
BP…基端位置、
SF…界面、
BN…気泡核。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9