特許第6985726号(P6985726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985726
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】染毛用第1剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/40 20060101AFI20211213BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20211213BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   A61K8/40
   A61K8/34
   A61K8/39
   A61K8/86
   A61K8/891
   A61Q5/10
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-190229(P2017-190229)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-64949(P2019-64949A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】松崎 晃一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 恵
(72)【発明者】
【氏名】土井 南美
【審査官】 田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−137309(JP,A)
【文献】 特開2005−023023(JP,A)
【文献】 特開2004−189717(JP,A)
【文献】 Corporacion Life, Peru,Permanent Hair Colourant,Mintel GNPD [online],2017年06月,https://portal.mintel.com,ID#4853673
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化染料、アルカリ剤およびシリコーン油を含有する染毛用第1剤組成物であって、次の成分(A)、(B)および(C)
(A)25℃で固体の高級アルコール
(B)2種以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤
(C)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムを含有し、
成分(A)は、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコールから選ばれる少なくとも1種であり、
染毛用第1剤組成物中の成分(A)/(成分(B)+成分(C))の含有比率が0.6〜3であり、
成分(B)/成分(C)の含有比率が0.75〜2.5であり、
かつ多価アルコールが0.5質量%以下であることを特徴とする染毛用第1剤組成物。
【請求項2】
前記成分(B)の平均HLB値が11以上19以下であることを特徴とする請求項1に記載の染毛用第1剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛用第1剤組成物に関する。さらに詳しくは、良好な染毛性を有し、高温時の長期経時安定性および高温時の経時安定性に優れた染毛用第1剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のファッション意識の高まりから、手軽に髪の色を変化させることのできるヘアカラーリング剤は、男女問わず多くの人に受け入れられている。ヘアカラーリング剤には、永久染毛剤、半永久染毛剤、脱色剤、一時着色料等、様々な種類があり、それぞれのニーズによって使用される。なかでも永久染毛剤は染毛効果の持続性に優れ、この特性から現在最も多くの人に使われているヘアカラーリング剤である。
【0003】
永久染毛剤としては、酸化染料とアルカリ剤を含有する染毛用第1剤組成物と、過酸化水素などの酸化剤を含有する染毛用第2剤組成物からなる二剤式が広く利用されている。染毛用第1剤組成物に含有するアルカリ剤は脱色、染色のために必要不可欠な成分であるが、毛髪にきしみなどの感触低下を引き起こす原因となりうる。
【0004】
そこで染毛用第1剤組成物には、毛髪の感触向上等のために炭化水素、高級アルコールおよびシリコーン油等の油性成分が含有されている。これらの油性成分は、界面活性剤等の乳化剤とともに含有されることで、乳化物として染毛用第1剤組成物中に存在している。しかし、染毛用第1剤組成物には酸化染料を含有しているため、一般の乳化物よりも経時安定性が低下しやすい。また、輸送中や保存時に過酷な環境下に置かれる可能性があり、特に夏場は気温や反射熱の影響を受けて、海外などへの運搬に用いられるコンテナ中は60℃程度になることもあり、そのような高温環境下においては、合一やクリーミングが促進され、分離を引き起こしやすい。
【0005】
これら問題を解決するために様々な試みが行われている。例えば、下記特許文献1には、染毛剤組成物の安定性と感触向上を目的として、アニオン性界面活性剤と多価アルコールを含有し、実質的にノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤を含有しない染毛剤組成物が開示されている。
【0006】
下記特許文献2には、良好な染毛性と感触向上を目的として、アルカノールアミン、高級アルコールおよび第四級アンモニウム型カチオン性界面活性剤を含有する染毛剤組成物が開示されている。
【0007】
下記特許文献3には、高温安定性と感触向上を目的として、シリコーン油、高級アルコール、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、高級脂肪酸および水を含有する染毛用第1剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−171247号公報
【特許文献2】特開2004−189717号公報
【特許文献3】特開2016−121104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1の染毛用第1剤組成物は、アニオン性界面活性剤およびグリセリンまたはプロピレングリコール等の多価アルコールを含有することで、高温での経時安定性を向上させている。しかしながら、多価アルコールによって毛髪への染料の浸透が阻害され、染毛効果が低下するおそれがあった。
【0010】
上記特許文献2の染毛用第1剤組成物は、アルカリ剤としてアルカノールアミンを用い、高級アルコールと第四級アンモニウム型カチオン性界面活性剤の比率を特定の範囲内とすることにより、良好な染毛効果と毛髪の感触向上を達成したが、シリコーン油を含有した染毛剤による高温での経時安定性については開示されていない。
【0011】
上記特許文献3の染毛用第1剤組成物は、シリコーン油、高級アルコール、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、高級脂肪酸および水を含有することで、高温の経時安定性の向上と施術後の髪の感触向上を達成している。しかしながら、高級脂肪酸を含有すると、経時的に脂肪酸由来の臭いが発生し、使用に際して、使用者にとって好ましくない臭いを感じさせてしまう傾向があった。
【0012】
そこで本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、良好な染毛性を有し、高温時の長期経時安定性および高温時の経時安定性に優れた染毛用第1剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、染毛用第1剤組成物に25℃で固体の高級アルコール、ノニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤を含有させ、25℃で固体の高級アルコール、ノニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤との含有比率、ノニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤の含有比率を特定範囲に調整することで上記課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、酸化染料、アルカリ剤およびシリコーン油を含有する染毛用第1剤組成物であって、次の成分(A)、(B)および(C)
(A)25℃で固体の高級アルコール
(B)2種以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤
(C)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム
を含有し、染毛用第1剤組成物中の成分(A)/(成分(B)+成分(C))の含有比率が0.6〜3、かつ多価アルコールが0.5質量%以下であることを特徴とする染毛用第1剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の染毛用第1剤組成物は、良好な染毛性を有し、高温時の長期経時安定性および高温時の経時安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
酸化染料、アルカリ剤およびシリコーン油を含有する染毛用第1剤組成物であって、次の成分(A)、(B)および(C)
(A)25℃で固体の高級アルコール
(B)2種以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤
(C)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム
を含有し、染毛用第1剤組成物中の成分(A)/(成分(B)+成分(C))の含有比率が0.6〜3、かつ多価アルコールが0.5質量%以下であることを特徴とする染毛用第1剤組成物である。
【0018】
本発明による染毛用第1剤組成物には、粘度調整の観点から(A)25℃で固体の高級アルコールを含有する。
【0019】
本発明で用いられる前記成分(A)としては、特に限定されないが、例えばミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。これら前記成分(A)は乳化安定性の観点から、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましい。前記成分(A)は1種以上を含有してよい。
【0020】
本発明で用いられる前記成分(A)の含有量は、好ましくは3〜8質量%がよい。前記成分(A)が3質量%未満の場合、粘度低下により使用性が悪くなるおそれがあり、8質量%を超える場合は、伸びが悪くなり、均一に染毛できないおそれがある。
【0021】
本発明による染毛用第1剤組成物には、乳化安定性の観点から(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤を含有する。
【0022】
本発明で用いられる前記成分(B)としては、特に限定されないが、例えばポリオキシエチレン(以下、POEという)ラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル等が挙げられる。前記成分(B)は乳化安定性の観点から2種以上を含有することが好ましい。
【0023】
本発明に用いられる前記成分(B)の含有量は、好ましくは2〜4質量%がよい。前記成分(B)が2質量%未満の場合および4質量%を超える場合は、乳化安定性が悪くなるおそれがある。
【0024】
本発明に用いる前記成分(B)は、乳化安定性の観点から、好ましくは2種以上含有することであり、さらに好ましくはHLB値が10未満およびHLB値が10以上の前記成分(B)を含有することがよい。
【0025】
本発明の染毛用第1剤組成物に含有される前記成分(B)の平均HLB値は、好ましくは11〜19、より好ましくは12〜17である。平均HLB値が11未満、または19を超える場合、乳化安定性が悪くなる恐れがある。
【0026】
HLB値は、Griffinの式により求められる値であり、平均HLB値とは、前記成分(B)を1種単独で用いる場合はそのもの単独のHLB値を意味する。また、2種以上の前記成分(B)を組み合わせて用いる場合は、Griffinの式および各々の含有量を基に求められる前記成分(B)全体の平均HLB値を意味する。
【0027】
本発明による染毛用第1剤組成物には、乳化安定性の観点から(C)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムを含有する。
【0028】
本発明で用いられる前記成分(C)の含有量は、好ましくは0.5〜4質量%がよい。前記成分(C)が0.5質量%未満の場合、粘度低下により使用性が悪くなるおそれがあり、4質量%を超える場合は、伸びが悪くなり、均一に染毛できないおそれがある。
【0029】
本発明による染毛用第1剤組成物には、前記成分(A)、前記成分(B)および前記成分(C)を含有するが、高温時の長期経時安定性の観点から、染毛用第1剤組成物の含有比率、成分(A)/(成分(B)+成分(C))が、好ましくは0.6〜3がよい。染毛用第1剤組成物の含有比率、成分(A)/(成分(B)+成分(C))が0.6未満の場合および3を超える場合は、高温時の長期経時安定性が悪くなるおそれがある。
【0030】
本発明による染毛用第1剤組成物は染毛性の観点から、多価アルコールの含有量が0.5質量%以下であることが好ましい。
【0031】
本発明における多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えばグリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。これら多価アルコールは1種以上を含有してよい。
【0032】
本発明による染毛用第1剤組成物には、染毛後の毛髪感触向上の観点から、シリコーン油を含有する。
【0033】
本発明に用いるシリコーン油は、特に限定されないが、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン等が挙げられる。染毛後の毛髪感触向上の観点から、ジメチルポリシロキサンが好ましい。これらシリコーン油は1種以上を含有してよい。
【0034】
本発明で用いられるシリコーン油の含有量は、好ましくは1〜10質量%がよい。前記シリコーン油が1質量%未満の場合、染毛後の毛髪感触の向上が得られないおそれがあり、10質量%を超える場合は、べたつき感を与えるおそれがある。
【0035】
本発明による染毛用第1剤組成物には、前記成分(B)および前記成分(C)を含有するが、高温時の経時安定性向上の観点から、染毛用第1剤組成物の含有比率、成分(B)/成分(C)が、好ましくは0.5〜7がよく、より好ましくは0.75〜2.5がよい。染毛用第1剤組成物の含有比率、成分(B)/成分(C)が0.5未満の場合および7を超える場合は、高温時の経時安定性が悪くなるおそれがある。
【0036】
本発明による染毛用第1剤組成物には、染毛性の観点から酸化染料を含有する。
【0037】
本発明に用いる酸化染料は、特に限定されないが、例えばパラフェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、オルトアミノフェノール、パラアミノフェノール、メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、1−ナフトールおよびそれらの塩類等が挙げられる。その他、「医薬部外品原料規格2006 統合版」(2013年11月発行、薬事日報社)に収載されたものも適宜用いることができる。これらの酸化染料は1種以上を含有してよい。
【0038】
本発明の染毛用第1剤組成物に含有される酸化染料とは、染料中間体やカップラー等の酸化染毛剤に用いられる染料を意味する。
【0039】
本発明による染毛用第1剤組成物には、脱色および染毛性の観点からアルカリ剤を含有する。
【0040】
本発明に用いるアルカリ剤は、特に限定されないが、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、モルホリン、グアニジン等の有機アミン類、アンモニア等の無機アルカリ、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸及びそれらの塩等が挙げられる。前記アルカリ剤のうち、脱色および染毛性の観点からモノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、アンモニア等の無機アルカリが好ましい。特に使用時の刺激臭の観点からモノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類がより好ましい。これらのアルカリ剤は1種以上を含有してよい。
【0041】
本発明に用いるアルカリ剤の含有量は脱色および染毛性の観点から、好ましくは0.5〜10質量%がよい。
【0042】
本発明による染毛用第1剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で上記成分以外の通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、HC染料、界面活性剤、油性成分、保湿剤、増粘剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、キレート剤、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、防腐剤、色素、顔料、粉体、pH調整剤、紫外線吸収剤、香料等から選ばれる1種以上を含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものでない。
【0043】
本発明による染毛用第1剤組成物は染毛用第2剤組成物と用時混合して染毛剤組成物として使用される。
【0044】
本発明による前記染毛用第2剤組成物には、毛髪に含まれるメラニンの脱色性の観点から酸化剤を含有する。
【0045】
本発明に用いる酸化剤は、特に限定されないが、例えば過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、過酸化塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物、臭素酸ナトリウム等が挙げられる。前記酸化剤のうち、毛髪に含まれるメラニンの脱色向上の観点から、過酸化水素が好ましい。これらの酸化剤は1種以上を含有してよい。
【0046】
本発明に用いる前記酸化剤は、染毛用第2剤組成物に含有されていればよいが、好ましくは3〜6質量%である。
【0047】
本発明による染毛用第1剤組成物は、その剤型がクリーム状または乳液状であることが好ましい。
【0048】
本発明による染毛用第1剤組成物は、染毛用第2剤組成物との混合性および毛髪への塗布性の観点から、20℃の条件下で粘度が5,000〜40,000mPa・sであることが好ましい。
【0049】
本発明において粘度は、ヘリカルスタンド付きB型粘度計(モデル;デジタル粘度計TVB−10M、東機産業株式会社製)を用いて、4号ローターにて1分間、回転速度12rpmの条件下で測定する。
【0050】
本発明に用いられる染毛用第1剤組成物および染毛用第2剤組成物は、ポリ容器、アルミチューブ容器、エアゾール容器、パウチ容器等の各種容器に充填され、使用時まで保存される。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0052】
本明細書に示す評価試験において、染毛用第1剤組成物に含まれる成分、およびその含有量を変更しながら実施した。各成分の含有量を示す単位は全て質量%であり、これを常法にて調製した。
【0053】
本明細書に示す評価試験において、「染毛性」、「高温時の長期経時安定性」および「高温時の経時安定性」について評価した。
【0054】
常法に従い、表1から表4に示す染毛用第1剤組成物および染毛用第2剤組成物を調製し、下記の評価方法で評価を行った。評価の結果は表に記載する。
【0055】
[染毛性]
本明細書に示す「染毛性」に係る評価試験においては、染毛用第1剤組成物と表1の染毛用第2剤組成物を質量比1:1で混合し、得られた混合物を毛束(株式会社ビューラックス社製 中国人白髪毛、品番;BM−W−A)に質量比で1:1となるように塗布した。この毛束を、25℃の条件下において15分間放置した後、シャンプーでよく洗浄し、タオルで水分を拭き取った後、ドライヤーで乾燥した。この毛束を10名のパネラーにより、下記の評価基準のように評価し、その合計点を評価結果として評価した。
【0056】
<染毛性の評価基準>
濃い褐色に染まった:3点
やや濃い褐色に染まった:2点
やや薄い褐色に染まった:1点
薄い褐色に染まった:0点
【0057】
5:25点〜30点
4:20点〜24点
3:15点〜19点
2:10点〜14点
1:0点〜9点
【0058】
[高温時の長期経時安定性]
染毛用第1剤組成物をガラス瓶に充填し、50℃条件下で保存し、目視にて外観状態を確認し、以下に示すように評価した。
【0059】
<高温時の長期経時安定性の評価基準>
○:50℃条件下1ヶ月以上経過しても組成物に変化が確認されなかった。
△:50℃条件下1ヶ月未満で若干の分離が確認された。
×:50℃条件下3日未満で分離が確認された。
【0060】
[高温時の経時安定性]
染毛用第1剤組成物をアルミチューブ(武内プレス工業社製、外径:25.2mm、肩下寸法:130mm、内面コート:TPL−418、ライニング剤:ハイラップK)に40g充填し、60℃条件下で24時間保存した後、アルミチューブから全量絞り出し、目視にて乳化組成物の状態を確認し、以下に示すように評価した。
【0061】
<高温時の経時安定性の評価基準>
○:60℃条件下24時間保存で分離が確認されなかった。
△:60℃条件下24時間保存で若干の水ハキはあるものの分離が確認されなかった。
×:60℃条件下24時間保存で分離が確認された。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
以下に染毛用第1剤組成物の処方例を記載する。
【0068】
(実施例22)
成 分 含有量(質量%)
(A)セチルアルコール 2.00
(A)ステアリルアルコール 2.50
(B)POE(5)ベヘニルエーテル 1.90
(HLB:8.06)
(B)POE(40)セチルエーテル 2.10
(HLB:17.58)
(C)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 1.60
パラアミノフェノール 0.80
レゾルシン 0.32
5−アミノオルトクレゾール 0.23
流動パラフィン 3.00
ジメチルポリシロキサン 3.60
高重合ジメチルポリシロキサン 0.20
亜硫酸ナトリウム 0.20
L−アスコルビン酸 0.50
ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム液 0.90
DL−リンゴ酸ナトリウム 1.00
モノエタノールアミン 6.40
ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム液(41.5%) 1.00
カンゾウエキス 0.10
海藻エキス(1) 0.10
ローヤルゼリーエキス 0.10
加水分解シルク液 0.10
精製水 71.35
合計 100.00
【0069】
実施例22の染毛用第1剤組成物について、「高温時の長期経時安定性」および「高温時の経時安定性」は良好な結果を得た。また、実施例22および表1の染毛用第2剤組成物を1:1で混合して得られた染毛剤組成物の「染毛性」は良好な結果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、良好な染毛性を有し、高温時の長期経時安定性および高温時の経時安定性に優れた染毛用第1剤組成物を提供することができる。