特許第6985734号(P6985734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985734過熱水蒸気生成装置及びそのメンテナンス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985734
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】過熱水蒸気生成装置及びそのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   F22G 1/16 20060101AFI20211213BHJP
   F22G 3/00 20060101ALI20211213BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20211213BHJP
   H05B 6/06 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   F22G1/16
   F22G3/00 Z
   H05B6/10 371
   H05B6/06 301
   H05B6/10 301
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-244755(P2017-244755)
(22)【出願日】2017年12月21日
(65)【公開番号】特開2019-113206(P2019-113206A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2020年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】外村 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤本 泰広
(72)【発明者】
【氏名】北野 孝次
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌義
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−116183(JP,A)
【文献】 特開2001−108669(JP,A)
【文献】 特開平07−158848(JP,A)
【文献】 特開2014−025679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22G 1/16
F22G 3/00
H05B 6/10
H05B 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成する誘導加熱方式又は通電加熱方式の過熱水蒸気生成部と、
前記過熱水蒸気生成部の運転温度及び当該運転温度における運転時間をパラメータとしてメンテナンス情報を発する報知部とを備え
前記報知部は、前記過熱水蒸気生成部の運転温度を示す運転温度データと当該運転温度における運転時間を示す運転時間データを取得し、所定温度における運転時間に換算して積算し、当該積算値が所定の積算しきい値を超えた場合に、前記メンテナンス情報を発するものであって、前記過熱水蒸気生成部の過熱水蒸気生成量に基づいて前記積算値を補正し、当該補正した積算値が前記積算しきい値を超えた場合に、前記メンテナンス情報を発する、過熱水蒸気生成装置。
【請求項2】
前記報知部は、1200℃における運転時間に換算して積算するものである、請求項記載の過熱水蒸気生成装置。
【請求項3】
水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成する誘導加熱方式又は通電加熱方式の過熱水蒸気生成部と、
前記過熱水蒸気生成部の運転温度及び当該運転温度における運転時間をパラメータとしてメンテナンス情報を発する報知部とを備え、
前記過熱水蒸気生成部は、前記過熱水蒸気が流れる導体管を有しており、
前記報知部は、前記導体管の交換時期を示すメンテナンス情報を発するものであって、
前記報知部は、所定時間稼動した場合に前記導体管の体積減少率が所定値以上となる運転温度における運転時間をパラメータとして前記メンテナンス情報を発するものである、過熱水蒸気生成装置。
【請求項4】
前記報知部は、前記過熱水蒸気生成部の運転温度においてメンテナンス情報に用いる温度範囲を規定して、当該温度範囲に含まれる運転温度における運転時間を、前記温度範囲における最高温度における運転時間として取り扱う、請求項1乃至の何れか一項に記載の過熱水蒸気生成装置。
【請求項5】
前記過熱水蒸気生成部は、
水蒸気が流れる導体管を二次コイルとして誘導加熱する誘導加熱方式の第1過熱水蒸気生成部と、
前記第1過熱水蒸気生成部により生成された過熱水蒸気が流れる導体管を通電加熱して、前記過熱水蒸気をさらに加熱する通電加熱方式の第2過熱水蒸気生成部とを有する請求項1乃至の何れか一項に記載の過熱水蒸気生成装置。
【請求項6】
前記報知部は、前記第2過熱水蒸気生成部の導体管の交換時期を示すメンテナンス情報を発するものである、請求項記載の過熱水蒸気生成装置。
【請求項7】
前記第1過熱水蒸気生成部が1000℃未満の過熱水蒸気を生成するものであり、
前記第2過熱水蒸気生成部が1000℃以上の過熱水蒸気を生成するものである、請求項又は記載の過熱水蒸気生成装置。
【請求項8】
水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成する誘導加熱方式又は通電加熱方式の過熱水蒸気生成装置のメンテナンス方法であって、
前記過熱水蒸気生成装置の運転温度及び当該運転温度における運転時間をパラメータとしてメンテナンス情報を発するものであり、
前記過熱水蒸気生成装置の運転温度を示す運転温度データと当該運転温度における運転時間を示す運転時間データを取得し、所定温度における運転時間に換算して積算し、当該積算値が所定の積算しきい値を超えた場合に、前記メンテナンス情報を発するものであって、前記過熱水蒸気生成装置の過熱水蒸気生成量に基づいて前記積算値を補正し、当該補正した積算値が前記積算しきい値を超えた場合に、前記メンテナンス情報を発する、過熱水蒸気生成装置のメンテナンス方法。
【請求項9】
水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成するものであり、前記過熱水蒸気が流れる導体管を有する誘導加熱方式又は通電加熱方式の過熱水蒸気生成装置のメンテナンス方法であって、
前記過熱水蒸気生成装置の運転温度及び当該運転温度における運転時間をパラメータとして前記導体管の交換時期を示すメンテナンス情報を発するものであって、
所定時間稼動した場合に前記導体管の体積減少率が所定値以上となる運転温度における運転時間をパラメータとして前記メンテナンス情報を発する、過熱水蒸気生成装置のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱水蒸気生成装置及びそのメンテナンス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱方式又は通電加熱方式の過熱水蒸気生成部には、耐熱性及び機械耐力が高いSUS304等のオーステナイト系のステンレス鋼やインコネル等の合金が用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
しかしながら、それらステンレス鋼や合金の融点は1400℃程度であるものの、1000℃を超える高温の過熱水蒸気下では水蒸気酸化によって体積減少が進んでしまう。
【0004】
上記の過熱水蒸気生成部は、ステンレス鋼又は合金からなる導体管を有しているため、当該導体管が水蒸気酸化によって体積減少が進むと、過熱水蒸気の圧力や熱膨張変形に耐えられなくなり、導体管が破損してしまう。導体管の破損によって過熱水蒸気が外部に漏れ出てしまうと、火災や人体損傷などを招く恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−176613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、過熱水蒸気生成装置のメンテナンス時期をユーザに知らせることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る過熱水蒸気生成装置は、水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成する誘導加熱方式又は通電加熱方式の過熱水蒸気生成部と、前記過熱水蒸気生成部の運転温度及び当該運転温度における運転時間をパラメータとしてメンテナンス情報を発する報知部とを備えることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、運転温度における運転時間をパラメータとしてメンテナンス情報を発しているので、過熱水蒸気生成装置のメンテナンス時期をユーザに知らせることができ、ユーザは過熱水蒸気生成部が故障する前にメンテナンスを行うことができる。
【0009】
過熱水蒸気生成部の劣化や消耗の度合いは運転温度に応じて異なる。そのため、前記報知部は、前記過熱水蒸気生成部の運転温度を示す運転温度データと当該運転温度における運転時間を示す運転時間データを取得し、所定温度(例えば1200℃)における運転時間に換算して積算し、当該積算値が所定の積算しきい値を超えた場合に、前記メンテナンス情報を発するものであることが望ましい。
【0010】
過熱水蒸気生成装置は、誘導加熱又は通電加熱されて過熱水蒸気を生成する導体管と、生成する過熱水蒸気量を調整するための蒸気量調整機構を有するものがある。過熱水蒸気の生成量の増減によって導体管内の過熱水蒸気の流速は増減することになり、流速が大きければ体積減少率が大きく、流速が小さければ体積減少率は小さい。
1200℃における実測では、体積減少率は流速の0.8乗に比例するので、過熱水蒸気生成量が半分であれば流速も半分になり、補正した積算値(運転時間)は、補正前の積算値に対して0.50.8=0.574倍の値となる。つまり、同じ温度の過熱水蒸気を生成する場合において、100%生成量で1000時間稼働したとすると、50%生成量で稼働した場合には、その運転時間は574時間となる。
このように過熱水蒸気生成量によって体積減少率が異なることから、前記報知部は、前記過熱水蒸気生成部の過熱水蒸気生成量に基づいて前記積算値を補正し、当該補正した積算値が前記積算しきい値を超えた場合に、前記メンテナンス情報を発することが望ましい。
【0011】
前記加熱水蒸気生成部は、誘導加熱又は通電加熱されて過熱水蒸気を生成する導体管を有している。この導体管は、過熱水蒸気によって水蒸気酸化されやすく、体積減少が顕著となる。このため、前記報知部は、前記導体管の交換時期を含むメンテナンス情報を発するものであることが望ましい。
【0012】
水蒸気酸化による体積減少が実質的に問題とはならない温度での運転時間は考慮しなくても装置寿命として問題化する可能性は低い。例えばインコネルからなる導体管に1000℃の過熱水蒸気を1000時間流した場合の体積減少率は約5%である。つまり、1000℃以下では流通管の残量が10%以下となるまでに数万時間を要することから、短時間での装置寿命として問題化する可能性は低い。このため、前記報知部は、所定時間稼動した場合に前記流通管の体積減少率が所定値以上となる運転温度をパラメータとして前記メンテナンス情報を発するものであることが望ましい。また、前記報知部は、前記過熱水蒸気生成部の運転温度においてメンテナンス情報に用いる温度範囲を規定して、当該温度範囲に含まれる運転温度における運転時間を、前記温度範囲における最高温度における運転時間として取り扱うことが望ましい。
【0013】
過熱水蒸気生成部の具体的な構成としては、水蒸気が流れる導体管を二次コイルとして誘導加熱する誘導加熱方式の第1過熱水蒸気生成部と、前記第1過熱水蒸気生成部により生成された過熱水蒸気が流れる導体管を通電加熱して、前記過熱水蒸気をさらに加熱する通電加熱方式の第2過熱水蒸気生成部とを有するものが考えられる。
この構成において、第2過熱水蒸気生成部の方を第1過熱水蒸気生成部よりも高温とし、第2過熱水蒸気生成部の導体管の消耗を速くする使用方法が考えられる。この場合、前記報知部は、前記第2過熱水蒸気生成部側に設けられて、前記第2過熱水蒸気生成部の導体管の交換時期を示すメンテナンス情報を発するものであることが望ましい。
【0014】
さらに前記報知部を、前記第1過熱水蒸気生成部側にも設けて、前記第1過熱水蒸気生成部の導体管の交換時期を示すメンテナンス情報を発するものであることが望ましい。これにより、第2過熱水蒸気生成部に加えて第1過熱水蒸気生成部のメンテナンス時期もユーザに知らせることができる。ただし、第2過熱水蒸気生成部の導体管の交換等のメンテナンスを実施する頻度は、第1過熱水蒸気生成部の導体管の交換等のメンテナンスを実施する頻度よりも多くなる。
【0015】
誘導加熱方式の第1過熱水蒸気生成部は、鉄心の周りに導体管が巻回されていることから、導体管を交換するための解体が大変で手間がかかり、導体管の交換等のメンテナンスがしにくいが、通電加熱方式の第2過熱水蒸気生成部は、導体管の給電端子から電源配線を取り外すなどの簡単な作業で簡単に交換等のメンテナンスができる。このため、第1過熱水蒸気生成部は導体管の劣化・消耗の少ない使用条件(例えば1000℃未満)で使用し、交換等のメンテナンスの頻度を極力少なくする。一方、第2過熱水蒸気生成部は、導体管の交換メンテナンスがし易いので、ここで高温(例えば1000℃以上)の過熱水蒸気を生成する。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、運転温度における運転時間をパラメータとしてメンテナンス情報を発しているので、過熱水蒸気生成装置のメンテナンス時期をユーザに知らせることができ、ユーザは過熱水蒸気生成部が故障する前にメンテナンスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る過熱水蒸気生成装置の構成を模式的に示す図である。
図2】同実施形態に係る過熱水蒸気生成部の導体管の一例を示す斜視図である。
図3】1000時間後の過熱水蒸気−インコネル601合金体積減少率特性を示す図である。
図4】変形実施形態に係る過熱水蒸気生成装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明に係る過熱水蒸気生成装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る過熱水蒸気生成装置100は、図1に示すように、水又は水蒸気を加熱して100℃超(200℃〜2000℃)の過熱蒸気を生成する過熱水蒸気生成部10を有する。
【0020】
この過熱水蒸気生成部10は、誘導加熱方式のものであり、螺旋状に巻回された円管状の導体管2と、当該導体管2を誘導加熱するための磁束発生機構3とを有している。
【0021】
導体管2は、図2に示すように、1本の金属製の管から形成され、螺旋状に巻回された巻回部分を有するものであり、一方の端部には、水又は水蒸気が導入される導入ポートP1が形成され、他方の端部には、生成された過熱水蒸気を導出する導出ポートP2が形成されている。なお、導体管2は、耐熱性及び機械耐力が高いSUS304等のオーステナイト系のステンレス鋼やインコネル等の合金を用いることができる。
【0022】
導入ポートP1には、水又は水蒸気を導体管2に供給するための外部配管が接続されている。本実施形態では、誘導加熱方式の飽和水蒸気生成部(図示しない)が接続されている。なお、飽和水蒸気生成部の構成は、過熱水蒸気生成部10の構成と同様である。また、導出ポートP2には、生成された過熱水蒸気を利用側(例えば熱処理室)に供給するための外部配管が接続される。
【0023】
磁束発生機構3は、鉄心31と、当該鉄心31に沿って巻回された誘導コイル32とを備えている。この誘導コイル32には、交流電源4が接続されており、制御された電力が供給されるものである。なお、交流電源4の電源周波数は、50Hz又は60Hzの商用周波数である。この交流電源4により電力が供給される誘導コイル31が一次コイルとなり、当該一次コイルにより給電された結果、導体管2に誘導電流が流れて、導体管2が二次コイルとなる。そして、導体管2がジュール発熱して、内部を流れる水蒸気が加熱される。
【0024】
この過熱水蒸気生成装置100では、導体管2から導出される過熱水蒸気の温度を温度検出器5により検出して、この検出温度と目標温度との偏差に応じた制御信号を電圧制御器6(例えばサイリスタ)に入力して誘導コイル32に印加する交流電圧を制御している。具体的にこの制御を行う温度制御部7は、導体管2により加熱される過熱水蒸気の温度を、目標温度との偏差が±1℃未満となるようにフィードバック制御する。なお、温度制御部7は、CPU、メモリ、入出力インターフェースなどを有するコンピュータである。
【0025】
しかして、本実施形態の過熱水蒸気生成装置100は、過熱水蒸気生成部10の運転温度と、当該運転温度における運転時間と、運転温度における体積減少率とをパラメータとしてメンテナンス情報を発する報知部8をさらに備えている。
【0026】
この報知部8は、過熱水蒸気生成部10の運転温度を示す運転温度データと当該運転温度における運転時間を示す運転時間データを取得し、所定温度における運転時間に換算して積算し、当該積算値が所定の積算しきい値を超えた場合に、メンテナンス情報を発するものである。なお、報知部8は、CPU、メモリ、入出力インターフェースなどを有するコンピュータである。
【0027】
具体的に報知部8は、運転温度データとして、温度検出器5の検出温度を示す検出温度データ又は温度制御部7により制御される目標温度を示す目標温度データを用いている。また、報知部8は、自身の有するタイマー又は温度制御部7のタイマーから運転時間を示す運転時間データを取得する。そして、報知部8は、それらデータを用いて、1200℃における運転時間に換算して積算し、当該積算値が所定の積算しきい値を超えた場合に、メンテナンス情報を発するものである。なお、運転温度データとして、導体管2の温度を用いてもよい。この場合には、温度検出器が導体管2の例えば導出ポートP2又はその近傍に接触して設けられる。特に、過熱水蒸気生成部10が待機状態にある場合、又は間欠運転する場合には、導体管2の温度を用いることが望ましい。
【0028】
なお、所定の積算しきい値は、体積減少限度時間であり、過熱水蒸気の圧力及び導体管2の熱膨張変形値などから予め算出して決定しておく。また、体積減少率と温度との関係は、何点かを測定して近似式化しておき(図3参照)、温度検出器5の検出温度又は温度制御部7により制御される目標温度から、当該検出温度又は目標温度から体積減少率を演算できるようにしておく。
【0029】
ここで、過熱水蒸気生成装置の機種ごとに導体管が破壊するまで最高温度で試験運転を行う。これは、導体管の曲率、過熱水蒸気の流速及び過熱水蒸気発生量によって破壊条件が違うためである。
例えば、過熱水蒸気発生量60kg/h、過熱水蒸気温度1200℃の過熱水蒸気発生能力を持つ機種で、インコネル製の導体管(外径Φ33.4mm、内径Φ26.64mm、管厚t3.38mm)での破壊試験を行った。破壊した最高温度部の残肉厚は0.45mmであった。また、1000時間後の体積減少率特性は図2であり、減少率は式yで表される。
【0030】
過熱水蒸気温度1200℃で、1000時間運転した場合には、管厚tは1.4872mm(減少率y1200=0.56)となり、1.8928mm減少している。
使用限界を0.5mmとすると、管厚減少値は、3.38−0.5=2.88mmとなり、到達時間Tは、T=2.88/(1.8928/1000)≒1521時間となる。
運転温度θにおける減少率yθ・運転時間hθとすると、1200℃の換算運転時間h1200は、h1200=yθ×hθ/y1200となる。
【0031】
例えば、各温度の運転時間が1200℃で500時間、1100℃で500時間、1000℃で500時間であれば、1200℃に換算した運転時間は下記となる。
換算運転時間h1200=500+(0.33/0.56)×500+(0.05/0.56)×500≒840時間
【0032】
そして、上記の換算運転時間が所定の積算しきい値に到達した時点で導体管2の交換時期を示す警報などのメンテナンス情報を発する。
【0033】
メンテナンス情報を発することには、ディスプレイ上に警告表示を行うこと、スピーカから警告音を発すること、LEDなどのランプを点灯又は点滅させることなどが含まれる。また、所定の積算しきい値を多段階に設定しておき、換算運転時間に応じてメンテナンス情報を段階に分けて発することもできる。さらに、メンテナンス情報として、体積減少限度時間までの残り時間をディスプレイ上に表示しても良い。
【0034】
このように構成した過熱水蒸気生成装置100によれば、運転温度における運転時間をパラメータとしてメンテナンス情報を発しているので、過熱水蒸気生成装置100のメンテナンス時期をユーザに知らせることができ、ユーザは過熱水蒸気生成装置100の導体管2などが故障する前にメンテナンスを行うことができる。
【0035】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、報知部8がメンテナンス情報を発するために演算する値としては、前記実施形態の換算運転時間に限られず、運転温度における運転時間と前記運転温度における体積減少率との積の積算値などを用いても良い。
【0036】
また、報知部8は、実質的に体積減少が問題となる運転温度のみを考慮してメンテナンス情報を発するようにしても良い。具体的に報知部8は、所定時間稼動した場合に導体管2の体積減少率が所定値(例えば5%)以上となる運転温度をパラメータとしてメンテナンス情報を発するものである。例えば、報知部8は、例えば1000時間運転した場合に導体管2の体積減少率が例えば5%以上となる運転温度(インコネルの場合1000℃)以上の運転時間を積算して当該積算値が所定の積算しきい値を超えて場合にメンテナンス情報を発する。
【0037】
さらに報知部8は、過熱水蒸気生成部10の運転温度においてメンテナンス情報に用いる温度範囲を規定して、当該温度範囲に含まれる運転温度における運転時間を、前記温度範囲における最高温度における運転時間として取り扱うようにしても良い。例えば、メンテナンス情報に用いる温度範囲を900〜1000℃、1000〜1100℃、1100〜1200℃に規定する。そして、報知部8は、900〜1000℃の範囲内における運転時間を1000℃の運転時間として取り扱い、1000℃の運転時間として累積する。同様に、1000〜1100℃の範囲内の運転時間は1100℃の運転時間として取り扱い、1100〜1200℃の範囲内における運転時間は1200℃の運転時間として取り扱う。
【0038】
さらに、温度制御部7は、報知部8がメンテナンス情報を発したことを示す信号を取得して、過熱水蒸気生成部10の運転を停止するものであっても良い。温度制御部7及び報知部8を同一のコンピュータにより構成しても良い。
【0039】
前記実施形態では、導体管2の交換時期を示すメンテナンス情報を発するものであったが、導体管2の導出ポートP2に接続される外部配管の交換時期を示すメンテナンス情報を発するものであっても良い。
【0040】
報知部は、メンテナンス情報に用いるパラメータとして導体管2を流れる過熱水蒸気の流速(流量)や過熱水蒸気発生量を用いても良い。例えば、報知部は、過熱水蒸気生成部の過熱水蒸気生成量に基づいて積算値を補正し、当該補正した積算値が積算しきい値を超えた場合に、メンテナンス情報を発する。過熱水蒸気発生量をパラメータとする場合には、報知部は、水蒸気量調整機構により調整量又は過熱水蒸気生成量を測定する測定部の測定値を用いて運転時間を増減させるようにしても良い。所定の過熱水蒸気量よりも発生量が多い場合には運転時間をそれに応じて増加させ、所定の過熱水蒸気量よりも発生量が少ない場合には運転時間をそれに応じて減少させることが考えられる。このとき、報知部は、各温度における体積減少率と流速との関係(1200℃の場合には体積減少率は流速の0.8倍に比例)を用いて、運転時間(積算値)を補正する。
【0041】
また、報知部は、導体管の肉厚をパラメータとしてメンテナンス情報を発するようにしても良い。
【0042】
過熱水蒸気生成部10は誘導加熱方式の他、通電加熱方式のものであっても良い。この場合、流体が流れる導体管2両端部に交流電源又は直流電源を接続して、導体管に交流電流又は直流電流を流すことによって導体管をジュール発熱させる。
【0043】
また過熱水蒸気生成装置は、図4に示すように、誘導加熱方式と通電加熱方式とを組み合わせたものであっても良い。具体的には、過熱水蒸気生成部10が、水蒸気が流れる導体管を二次コイルとして誘導加熱する誘導加熱方式の第1過熱水蒸気生成部10Aと、第1過熱水蒸気生成部10Aにより生成された過熱水蒸気が流れる導体管を通電加熱して、過熱水蒸気をさらに加熱する通電加熱方式の第2過熱水蒸気生成部10Bとを有する。
【0044】
第1過熱水蒸気生成部10Aは、前記実施形態と同様の構成である。また、第1過熱水蒸気生成部10Aは、1000℃未満の過熱水蒸気を生成するように設定されている。また、第2過熱水蒸気生成部10Bは、第1過熱水蒸気生成部10Aの導体管2の導出ポートP2に直接又は中間配管を介して接続される導体管11を有している。導体管11には、過熱水蒸気を噴出する複数のノズル11aが設けられている。導体管11の両端部には給電端子12、13が設けられており、当該給電端子には交流電源17が接続されている。この交流電源により導体管11に電流が流れることにより、導体管がジュール発熱して内部を流れる過熱水蒸気が加熱される。
【0045】
この過熱水蒸気生成装置100では、導体管11から導出される過熱水蒸気の温度を温度検出器14により検出して、この検出温度と目標温度との偏差に応じた制御信号を電圧制御器15(例えばサイリスタ)に入力して誘導コイル32に印加する交流電圧を制御している。具体的にこの制御を行う温度制御部16は、導体管11により加熱される過熱水蒸気の温度を、目標温度との偏差が±1℃未満となるようにフィードバック制御する。なお、温度制御部16は、CPU、メモリ、入出力インターフェースなどを有するコンピュータである。
【0046】
そして、報知部8は、第2過熱水蒸気生成部10B側に設けられており、運転温度データとして、温度検出器14の検出温度を示す検出温度データ又は温度制御部16により制御される目標温度を示す目標温度データを用いている。また、報知部8は、自身の有するタイマー又は温度制御部16のタイマーから運転時間を示す運転時間データを取得する。そして、報知部8は、それらデータを用いて、1200℃における運転時間に換算して積算し、当該積算値が所定の積算しきい値を超えた場合に、導体管11の交換時期を示す警報などのメンテナンス情報を発する。その他の報知部8の機能は前記実施形態と同様である。なお、図4の構成に加えて、報知部8を第1過熱水蒸気生成部10A側にも設けて、前記実施形態と同様に、体管2の交換時期を示すメンテナンス情報を発するものとしてもよい。
【0047】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
100・・・過熱水蒸気生成装置
10 ・・・過熱水蒸気生成部
2 ・・・導体管
8 ・・・報知部
図1
図2
図3
図4