【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明は以下のように構成される。
【0009】
即ち本発明は、筒形状に形成されており、筒軸方向の一端側に開口する吸気口と、前記吸気口に連通する弁孔と、前記弁孔に連通する弁室とを有する弁箱と、閉弁状態で前記弁孔を塞ぎ、前記吸気口から流入する気体の圧力により前記筒軸方向で浮上して前記弁孔を開放する弁体と、前記弁体を前記弁孔に向けて付勢する付勢部材と、を備えるリリーフ弁について、前記弁体は、前記閉弁状態で前記弁孔を閉止しており前記弁孔から流入する前記気体の圧力を受ける第1の受圧面部と、前記弁体が前記弁孔を開放する開弁状態で前記弁孔から前記弁室に流入する前記気体の圧力を受ける第2の受圧面部と、前記第2の受圧面部から前記弁箱の内周面に沿って筒状に伸長する周壁部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、筒状の弁箱と、弁体と、付勢部材とを備える簡易な装置構造でありながら、弁体の開閉動作に電気的な駆動源を必要とせず、弁体が付勢部材によって弁孔を閉止する設定圧力を超える気体の圧力によって自動で開閉するリリーフ弁を実現することができる。
【0011】
即ち、本発明の弁体は、閉弁状態で弁孔を閉止しており弁孔から流入する気体の圧力を受ける第1の受圧面部を有するため、閉弁状態では弁孔を閉塞する受圧面積の小さい第1の受圧面部が設定圧力を超える圧力を受けることでスムーズに開弁することができる。
【0012】
そして、本発明の弁体は、前記弁体が前記弁孔を開放する開弁状態で前記弁孔から前記弁室に流入する前記気体の圧力を受ける第2の受圧面部と、前記第2の受圧面部を包囲しており前記弁箱の内周面に沿って筒状に伸長する周壁部とを有する。したがって、開弁後は、受圧面積が第2の受圧面部にまで増大するとともに、筒状の周壁部が第2の受圧面部を包囲することから、気体の圧力は減少しつつも第1の受圧面部と第2の受圧面部と周壁部とで圧力を受け続けることで、設定圧力まで開弁状態を安定して維持することができる。このように本発明のリリーフ弁によれば、弁体の開閉動作に電気的な駆動源を必要としない簡易な装置構造でありながら、気体の圧力によって弁体が自動で開閉するリリーフ弁を実現することができる。
【0013】
前記本発明は、前記弁箱の前記筒軸方向の他端側に、前記弁体を付勢する前記付勢部材を押圧して前記弁体が前記弁孔を開放する作動圧を可変とする調圧部材をさらに備えることができる。そしてその調圧部材は、前記弁室と連通する排気口が開口する操作面を有するように構成できる。
【0014】
これによれば、調圧部材によって付勢部材に対する押圧程度を変えることで弁体の作動圧を容易に変えることができる。例えば本発明のリリーフ弁を人工呼吸器に用いる場合、患者が気管支炎による腫脹、腫瘍などにより気道が狭窄し肺の拡張に左右差があるときには連続的な高圧人工呼吸が必要とされるが、調圧部材を操作することで両肺がきちんと動く程度に弁体の作動圧を調節することができる。
【0015】
また、調圧部材は弁室と連通する排気口が開口する操作面を有することで、リリーフ弁の操作者が指で操作面の排気口の一部を塞いで排気口の通気面積を少なくする簡易な操作で、弁体が開く作動圧(開弁圧)を高くする圧力調整ができて便利である。
【0016】
前記調圧部材は一例として、弁箱から突出するハンドルと、締付け量に応じて付勢部材に対する押圧程度を調整可能なねじ部とを備えるものとすることができる。これによれば、弁箱から突出するハンドルを回転させる容易な操作によって、ねじ部による締付け量が変化して付勢部材に対する押圧程度を変えることが可能である。
【0017】
前記本発明の弁箱は、前記筒軸方向の一端側を閉塞するとともに前記弁室に通じる排気口が開口する操作面を形成した天井壁を有するように構成できる。
【0018】
これによれば、前述の調圧部材に設けた排気口を有する操作面と同様に、排気口の通気面積を換える簡単な操作で、弁体の作動圧を高くする圧力調整を行うことができる。また、リリーフ弁の使用者が筒状の弁箱の外周面を手で掴んでも天井壁の排気口を塞ぐことがないため、使用時の安全性を確保することができる。
【0019】
前記本発明の操作面は、溝面が前記排気口に繋がる凹状の通気溝を有するように構成できる。
【0020】
これによれば、操作面に開口する通気溝の上端開口を指で塞いでしまっても、通気溝をなす凹状の溝面は排気口に連通しているため完全に排気口が遮断されることがない。また、様々な使用状況において、通気溝が開口する操作面の全面が例えば壁面、身体の一部、衣類、枕などと密着して意図せず塞がれてしまっても、通気溝によって排気路が確保されるため、完全に排気が遮断されてしまうことがない。
【0021】
また、弁箱の外周を手で掴み、親指や人差し指で操作面に開口する通気溝の上端開口を開閉できるので、操作性良く弁体の作動圧を調整することができる。
【0022】
こうしたリリーフ弁を、例えば人工呼吸器に用いる際、喀痰や異物による気管または気管支閉塞、喀痰吸引による肺虚脱(無気肺)時など肺の拡張に左右差がある場合に、空気が通り難くなっている肺を膨らませるために一時的に高い圧力をかけて空気を送り込む必要があるときに好適に使用することができる。そして、通気溝があるため操作面に開口する通気溝の上端開口を指で塞いでも完全に排気が遮断されることがないので、肺を過剰に膨張させてしまうようなこともなく、安全に使用することができる。
【0023】
前記本発明の弁箱は、前記筒軸方向における一方側から他方側に向けて拡径するテーパー壁を有するように構成できる。
【0024】
これによれば、弁箱が筒軸方向における一方側から他方側に向けて拡径するテーパー壁を有するため、安価な熱溶解積層タイプの3Dプリンタのような立体造形装置でも、支持柱を一切用いずに弁箱を造形することが可能となる。テーパー壁は、弁箱の筒軸方向における全長に亘るものでもよいし又は一部であってもよい。
【0025】
前記本発明の弁体の周壁部は、前記弁箱の前記内周面と対向する外周縁に湾曲面部を有するように構成できる。
【0026】
これによれば、弁体が開閉動作する際にその中心がずれたり斜めに傾いたりしても周壁部の外周縁が湾曲面部であるため、周壁部が弁箱の内周面に引っ掛からず適切に開閉させることができる。
【0027】
前記本発明のリリーフ弁は、弁体に挿通されており弁体の開閉動作を支持する弁軸を備えることができる。弁体を弁軸に沿って変位させることができるので、弁体を確実に開閉動作させることができる。ただし本発明のリリーフ弁において弁軸は必須ではなく、弁体は弁箱の弁室を軸方向に沿って変位可能なものとして構成することができる。この場合には、特に弁体の周壁部には前記湾曲面部を有するのが好ましい。弁軸が無いと、開閉動作の際に弁体の中心がずれたり、弁体が傾きやすく、弁箱の内周面に引っ掛かりやすくなるが、前記湾曲面部を有する弁体であれば引っ掛からず、弁軸が無くても安定して作動することができる。
【0028】
前記本発明のリリーフ弁は、弁体の周壁部と弁箱の内周面との間に通気間隙を有することができる。
【0029】
本発明によれば、弁体の周壁部と弁箱の内周面との間に通気間隙を有するので、弁体が変位する際に弁箱の内周面と接触することなく、円滑に開閉動作を行うことができる。また、通気間隙を周壁部の全周に亘って均一なものとすれば、周壁部の全周に亘って偏りなく気体を通気間隙へ逃がすことができるため、気体の通路が偏在することで変位する弁体の姿勢が崩れるのを防ぐことができる。
【0030】
以上のような本発明のリリーフ弁は、次のような様々な機器装置に応用することが可能である。
【0031】
即ち本発明は、前記本発明のリリーフ弁を人工呼吸弁として備える人工呼吸器を提供する。
【0032】
また本発明は、前記本発明のリリーフ弁を人工呼吸弁として備える吸入麻酔器を提供する。
【0033】
これらの人工呼吸器及び吸入麻酔器によれば、空気が肺に流入して圧力が高まると自動開弁し、肺がしぼんで圧が下がると自動閉弁することができ、エアーコンプレッサーなどから、一定流量の空気・酸素を流すことで、安定した呼吸サイクルを得ることができる。そしてその動力源は空気圧であり電気や電子部品を用いていないので、水に濡れても故障することがない。また、プラスチックを用いれば、低コストで量産することも可能である。
【0034】
さらに本発明は、人体の所定の部位にあてがったり、沿わせたり、包み込んだりすることで、人体の所定部位に接触して気体により膨張・収縮変形可能な気室部材と、気室部材に気体を供給する気体供給装置と、気体供給装置と気室部材とを連通する通気管と、通気管に接続した前記本発明のリリーフ弁と、を備える運動支援装置を提供する。
【0035】
前記気室部材はクッション体とすることができ、具体的には気密なゴム製の袋体とすることができる。なお、ゴム製の袋体には使用感等を考慮して布製のカバーを装着することができる。
【0036】
この運動支援装置によれば、気室部材を本発明のリリーフ弁の開弁圧に応じて膨張・収縮変形させることができる。こうした気室部材を人体の所定部位に接触させることで人体の所定部位を他動運動させたり、揉んだりすることができる。
【0037】
より具体的には、本発明の運動支援装置によって、気室部材の膨縮変形により人体の各種部材を他動運動させることによる上肢、下肢の近位部・遠位部、体幹、掌、頚部などの拘縮予防、血行の改善による褥瘡予防、深呼吸の補助(気室部材の膨縮変形による上肢の挙上運動により肋間筋を広げて、胸式呼吸を補助できる。気室部材の膨縮変形による下肢、体幹の運動により腹部臓器を移動させ、間接的に横隔膜を動かすことで腹式呼吸を補助できる。)、リラックス効果(膨縮変形する気室部材を抱きしめて呼吸リズムを感じることで脳の興奮状態を抑えるリラックス状態に近づけることが出来る。)を得ることができる。また、緊急災害時におけるバックアップ用の人工呼吸器としても活用できる。
【0038】
そして本発明は、前記本発明のリリーフ弁を有する管材を備える機器を提供する。
【0039】
この機器の一例として本発明は、浄化槽内の処理対象物を曝気するエアレーション管に連結したブロワを備え、前記エアレーション管に本発明のリリーフ弁を備える浄化処理装置を提供する。
【0040】
これによればリリーフ弁の開閉音によりエアレーション管の詰まりによる異常昇圧を知らせることができるので、ブロワの破損を防ぐことができる。
【0041】
また、他の機器の一例として本発明は、前記本発明のリリーフ弁を通気路に有するダイビングレギュレータを提供する。
【0042】
これによれば、リリーフ弁は空気が肺に流入して圧力が高まると自動開弁し、肺がしぼんで圧が下がると自動閉弁することができるため、ダイビングレギュレータに自動人工呼吸機能を付加することができ、スキューバダイビング中の緊急時における救命率を高めることができる。そしてリリーフ弁の動力源は空気圧であり電気や電子部品を用いていないので、水に濡れても故障することがなく、水中でも安定した動作を実現できる。また、プラスチックを用いれば、低コストで量産することも可能である。