特許第6985763号(P6985763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6985763-レドックスフロー電池のための活物質 図000083
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985763
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】レドックスフロー電池のための活物質
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   H01M8/18
【請求項の数】7
【全頁数】80
(21)【出願番号】特願2020-502590(P2020-502590)
(86)(22)【出願日】2018年7月20日
(65)【公表番号】特表2020-527843(P2020-527843A)
(43)【公表日】2020年9月10日
(86)【国際出願番号】US2018043048
(87)【国際公開番号】WO2019018741
(87)【国際公開日】20190124
【審査請求日】2020年4月7日
(31)【優先権主張番号】62/671,117
(32)【優先日】2018年5月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/534,781
(32)【優先日】2017年7月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508007514
【氏名又は名称】ボード オブ トラスティーズ オブ ミシガン ステイト ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF TRUSTEES OF MICHIGAN STATE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】グアー、トーマス エフ
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−501337(JP,A)
【文献】 特開2015−115110(JP,A)
【文献】 特開2004−101729(JP,A)
【文献】 特開平08−195199(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0062842(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106654331(CN,A)
【文献】 特開2016−033117(JP,A)
【文献】 特開2012−214671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドックスフロー電池のための活物質であって、該活物質が、以下の式:
(D)-(L)-(A)-[(L)-(A)]-D (F1)又は、
(D)-(L)-(A)-(L-D) (F2)
を有し、
各DはLに共有結合し、各LはAに共有結合し、xは0〜5の数字であり、vは0〜5の数字であり、及びzは0又は1であり、Dは電子供与化合物であり、Lはリンカーであり、及びAは電子受容化合物であり、
各Dは、以下の構造(D1):
【化1】

を有し、
Xは、共有結合、硫黄原子(S)、SO、又はN−Rであり、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ニトリル基、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、アシル基、及びアシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルキルアリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、アリールハロアルキル基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、ハロアルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基であり、
各Lは、2〜6の炭素原子を有するアルキル基、芳香族基、及び直接結合から選択され、及び、
各Aは、以下の構造(A1)又は(A2)又は(A3)又は(A4)又は(A5):
【化2】

又は
【化3】

又は
【化4】

又は
【化5】

又は
【化6】

を有し、
(A1)、(A2)、及び(A3)のそれぞれについて、
12及びR14は、それぞれフェニル基、水素原子、又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、R13及びR15は、それぞれ水素原子、又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、
11は、水素原子、アルキル基、アセチル基、アリール基、置換アリール基、又は以下の構造(P1)又は(P2):
【化7】

を有する基から選択され、
yは、0〜4の数字であり、R16〜R19は、それぞれフェニル基、水素原子、又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、R21、R22及びR24は、それぞれ、フェニル基、水素原子、又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、R20及びR23は、それぞれ、水素原子又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、L2は、任意に第2のリンカーであり、
(A2)において、sは0〜2の数字であり、tは1〜6の数字であり、Bは水素、1〜6の炭素原子を有するアルキル基、又はアリール若しくは置換アリール基である、
ことを特徴とする活物質。
【請求項2】
XはSであり、R及びRは、それぞれt−ブチルであり、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素である、
ことを特徴とする請求項に記載の活物質。
【請求項3】
XはSOであり、R及びRは、それぞれt−ブチルであり、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素である、
ことを特徴とする請求項に記載の活物質。
【請求項4】
Xは共有結合であり、R及びRは、それぞれt−ブチルであり、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素である、
ことを特徴とする請求項に記載の活物質。
【請求項5】
(L)は、−CH−CH−CH−である、
ことを特徴とする請求項に記載の活物質。
【請求項6】
(L)はフェニルである、
ことを特徴とする請求項に記載の活物質。
【請求項7】
構造(A2)は、
【化8】

の構造(A6)として更に定義され、
(A6)において、R25〜R36は、1〜4の炭素原子を有するアルキル基、アルキルエーテル基、アルキルアンモニウムアルキル基、オリゴエーテル基、フェニル基、及び水素から選ばれる、
ことを特徴とする請求項に記載の活物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気エネルギーを蓄えるための装置に一般に関連し、より具体的にはレドックスフロー電池に関連する。より具体的には、レドックスフロー電池は特定の活物質を含む。
【背景技術】
【0002】
レドックスフロー電池は、酸化化学種及び還元化学種から生成された電気エネルギーを蓄えるように設計されたエネルギー貯蔵装置である。レドックスフロー電池は、少なくとも2つの電極と、少なくとも2つの電気的活性物質を含む電気化学セルを一般に有する。電気的活性物質は、それぞれ、一般に電解液又は電解質スラリーの形態であり、電気的活性物質と、適切な溶媒と、任意にイオン伝導率を改善するための電解質塩とを含む。電解液は、ポンプ、重力、圧力又は他の適切な手段を使用して、電気化学セルを通って、各保存容器から移動することがある。
【0003】
電気化学セルは、異なる電気的活性物質の混合を最小化するよう機能するイオン交換膜又はマイクロポーラス膜によって、アノードチャンバとカソードチャンバとに一般的に分離される。電気的活性物質の混合は、「クロスオーバー」又は「クロスコンタミネーション」と、しばしば呼ばれる。使用の間、電解質塩の陰イオン及び/又は陽イオンは、膜を横切って輸送され、電気的活性物質間の電気化学反応を促進し、エネルギーを生成する。
【0004】
イオン交換膜又はマイクロポーラス膜のための材料は、大抵高価であり、一般に膜は定期的なメンテナンス又は交換が必要である。加えて、膜は一般に、やや非効率であり、異なる電気的活性物質の混合につながることがある。少なくともこれらの理由のため、電気的活性物質の交換が、長期にわたって必要となることがある。
【0005】
現在、イオン交換膜又はマイクロポーラス膜を使用しない設計の特定のレドックスフロー電池がある。しかしながら、そのような設計は、層流技術に依拠しており、実社会での適用では非効率的で非実用的である。そのような設計は、非常に高価な材料、制御が困難な材料、及び環境の変化に敏感な材料も採用するため、そのようなレドックスフロー電池の設計の広範な展開が複雑化する。従って、改善の機会が残されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、カソード、アノード、電荷担体電解質、及び(a)酸化及び(b)還元形態の活物質を含むレドックスフロー電池を提供する。活物質は、以下の式:
(D)-(L)-(A)-[(L)-(A)]-D (F1)又は、
(D)-(L)-(A)-(L-D) (F2)
を有する。
【0007】
これらの式において、各DはLに共有結合し、各LはAに共有結合し、xは0〜5の数であり、vは0〜5の数であり、及びzは0又は1である。更に、Dは電子供与化合物であり、Lはリンカーであり、及びAは電子受容化合物である。各Dは、以下の構造(D1):
【化1】

を有する。
ここでXは共有結合、硫黄原子(S)、SO、又はN−Rであり、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ニトリル基、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、アシル基、及びアシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルキルアリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、アリールハロアルキル基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、ハロアルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基である。
更に、各Lは、炭素原子数2〜6のアルキル基、芳香族基、及び直接結合から選択される。更には、Aは、それぞれ以下の構造(A1)又は(A2)又は(A3)又は(A4)又はA5):
【化2】

又は
【化3】

又は
【化4】

又は
【化5】

又は
【化6】

であり、
12及びR14は、それぞれフェニル基、水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R13及びR15は、それぞれ水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基である。加えて、R11は水素原子、アルキル基、アセチル基、アリール基、置換アリール基、又は以下の構造(P1)又は(P2):
【化7】

を有する基から選択される。
【0008】
(P1)及び(P2)において、yは0〜4の数字であり、R16〜R19は、それぞれフェニル基、水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R21、R22及びR24は、それぞれフェニル基、水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R20及びR23は、それぞれ水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、L2は任意に第2のリンカーである。更には、(A2)において、sは0〜2の数字であり、tは1〜6の数字であり、及びBは、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又はアリール若しくは置換アリール基である。
【0009】
本開示は、カソード、アノード、電荷担体電解液、及び2つ以上のピリジン又は置換ピリジンユニットを含み、該ユニットの任意の2つが1〜3のフェニル又は置換フェニル基により分離される活物質を備えるレドックスフロー電池も提供する。ピリジン又は置換ピリジンユニットの1つ以上は、窒素原子を介して可逆的な電気化学的酸化を有する部分に結合している。
【0010】
本開示は、レドックスフロー電池のための活物質も提供し、該活物質は以下の化学式:
(D)-(L)-(A)-[(L)-(A)]-D (F1)又は、
(D)-(L)-(A)-(L-D) (F2)
を有する。
【0011】
Dは、それぞれLに共有結合し、Lは、それぞれAに共有結合し、xは0〜5の数字であり、vは0〜5の数字であり、zは0又は1であり、Dは電子供与化合物であり、Lはリンカーであり、及びAは電子受容化合物である。
【0012】
Dは、それぞれ以下の構造(D1):
【化8】

を有する。
【0013】
Xは共有結合、硫黄原子(S)、硫黄原子(S)、SO、又はN−Rであり、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ニトリル基、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、アシル基、及びアシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルキルアリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、アリールハロアルキル基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、ハロアルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基である。
【0014】
Lは、それぞれ炭素原子数2〜6のアルキル基、芳香族基、及び直接結合から選択され、Aは、それぞれ以下の構造(A1)又は(A2)又は(A3)又は(A4)又は(A5):
【化9】

又は
【化10】

又は
【化11】

又は
【化12】

又は
【化13】

を有する。
【0015】
(A1)、(A2)及び(A3)のそれぞれについて、R12及びR14は、それぞれフェニル基、水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R13及びR15は、それぞれ水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R11は、水素原子、アルキル基、アセチル基、アリール基、置換アリール基、又は、以下の構造(P1)又は(P2):
【化14】

を有する基から選択される。
【0016】
ここで、yは0〜4の数字であり、R16〜R19は、それぞれフェニル基、水素原子、又は炭素原子数2〜6のアルキル基であり、R21、R22及びR24は、それぞれフェニル基、水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R20及びR23は、それぞれ水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、L2は任意に第2のリンカーである。(A2)において、sは0〜2の数字、tは1〜6の数字、Bは、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又はアリール若しくは置換アリール基である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本開示の利点は、添付の図面に関連して考慮される場合に、以下の詳細な説明を参照して同じことがよりよく理解されるようになると、容易に認識されるだろう。図面は純粋に例示的なものであり、必ずしも縮尺通りに描かれていないことが理解されるべきである。
【0018】
図1】図は、本開示の1つの非限定的な実施形態に係るレドックスフロー電池の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図を参照すると、図は、本開示の実施形態に係るレドックスフロー電池10を説明する。レドックスフロー電池10は、レドックス(酸化及び還元)反応を使用してエネルギーを生成し、該エネルギーを電池10を通じて流れる電解液中に蓄えるエネルギー貯蔵装置として説明されてもよい。電池10の放電中、電池10の負極(又はアノード)側で酸化反応の間に電子が放出される。電子は外部回路を通じて移動し、有用な働きをし、その後、電池10の正極(又はカソード)側で還元反応の間に受容される。充電中は、電流及び化学反応の向きは逆になる。レドックスフロー電池10により生成されるエネルギーは、グリッド貯蔵用途にしばしば使用される。しかしながら、レドックスフロー電池10が任意の適切な用途のニーズに適合するように拡大縮小できることが理解されるべきである。
【0020】
次に図を参照すると、レドックスフロー電池10は、正極(カソード)側14と、負極(アノード)側16とを含む電気化学セル12を有する。正極側14は、電荷担体電解質と、電気的活性物質の酸化形態(本明細書では活物質と呼ぶ)とを含有する第1の容器18を有し、負極側16は、電荷担体電解質と電気的活性物質の還元形態とを含有する第2の容器20を有する。正極側14はカソード22を更に含み、負極側はアノード24を更に含む。各容器における正味の電荷はゼロである。正に帯電した種は、負に帯電した種によってバランスがとられ、逆も同様である。
【0021】
レドックスフロー電池10の充電及び放電の間、正極側14の電荷担体電解質は、第1のポンプ26によって、第1の容器18からカソード22を通って循環する。負極側16の電荷担体電解質は、第2のポンプ28によって、第2の容器20からアノード24を通って循環する。カソード22及びアノード24は、外部電気抵抗30を有する集電装置を介して電気的に接続されてもよい。電解質がカソード22及びアノード24を通過すると、電気的活性物質が反応し(レドックス反応を介して)、エネルギーを生成する。
【0022】
カソード22は、一般的な状況下では、通常の動作下で達成できる最高の電位を有する1つ又は1対の電極又は電極のアレイとすることができる。アノード24は、一般的な状況下では、通常の動作下で達成できる最低の電位を有する1つ又は1対の電極である又は電極のアレイとすることができる。カソード22及びアノード24は、特に限定されず、当技術分野で知られている任意のものとすることができる。非限定的な例では、カソード22及びアノード25の1つ以上は、炭素ベースの電極、金属ベースの電極、及びそれらの組み合わせである。炭素ベースの電極の非限定的な例は、多孔質炭素(例えば、カーボンフェルト、及びグラファイトフェルト)、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤ、グラフェン等、及び/又はそれらの組み合わせで作られた又は形成された電極を含む。金属ベースの電極の非限定的な例は、金、鋼、ニッケル、白金被覆金、白金被覆カーボン等、及び/又はそれらの組み合わせで作られた又は形成された電極を含む。別の非限定的な例において、カソード22及び/又はアノード24は多孔質である。カソード22及び/又はアノード24は、カーボンブラック、フレークグラファイト等のような添加剤を更に含んでもよい。カソード22及びアノード24は、それぞれ、箔、プレート、ロッド、スクリーン、ペースト、又は、導電性集電体若しくは他の適切な支持体の上に電極材料のコーティングを形成することによって作られる複合体を含む任意の便利な形態であってもよい。
【0023】
電荷担体電解質は、電荷担体媒体とイオンとを一般に含む。電荷担体媒体は特に限定されず、カソード22とアノード24との間でエネルギーを適切に輸送する任意の媒体から選択することができる。非限定的な例において、電荷担体媒体は、1つ以上の液体及び/又はゲルであり得る。加えて、電荷担体媒体は、広い温度範囲にわたって、例えば約−30℃〜約70℃で、凍ることなく又は沸騰することなく使用することができ、カソード22及びアノード24が作動する範囲内の電気化学窓において一般的に安定である。電荷担体媒体の非限定的な例は、これに限るものではないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、メチルジフルオロアセテート、エチルジフルオロアセテート、ジメトキシエタン、ジグリム(ビス(2−メトキシエチル)エーテル)、及び/又はそれらの組み合わせを含む。様々な実施形態において、電荷担体媒体は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及び/又はそれらの組み合わせを含む。
【0024】
電荷担体媒体は、電荷担体電解質の全重量に基づき、それぞれ、40重量%〜99重量%、60重量%〜99重量%、65重量%〜95重量%、又は70重量%〜90重量%の量で一般に存在する。上述したこれらの数値内にある全ての数値及び数値の範囲は、様々な非限定的な実施形態において、明示的に企図される。
【0025】
ここで活物質を参照すると、活物質は、一般に、正極14側及び負極16側の両方で電荷担体電解質に取り込まれる、又は電荷担体電解質によって運ばれる。完全に充電されたレドックスフロー電池10において、(a)活物質の酸化形態と、(b)活物質の還元形態とが存在する。以下に示すように、非酸化形態又は非還元形態の活物質は極めて少ないか全くない。完全に放電された(死んだ)レドックスフロー電池10において、(a)活物質の酸化形態はほとんど存在せず、(b)活物質の還元形態は極めて少ないか全くない。代わりに、活物質の全て又は大部分は、以下に示すように非酸化形態又は非還元形態で存在するだろう。
【0026】
活物質は、任意の量で存在することができる。様々な実施形態において、活物質は、電荷担体電解質の全重量に基づき、1〜50、5〜45、10〜40、15〜35、20〜30、25〜30、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10重量%の量で存在する。上記の数値を含む及び上記の数値の間の全ての数値は、様々な非限定的な実施形態において、明示的に企図される。
【0027】
(活物質)
ここで、活物質の(a)酸化形態、及び(b)還元形態を参照すると、活物質は、以下の式:
(D)-(L)-(A)-[(L)-(A)]-D (F1)又は、
(D)-(L)-(A)-(L-D) (F2)
を有し、
Dは、それぞれLに共有結合し、Lは、それぞれAに共有結合し、xは0〜6の数であり、vは0〜5の数であり、及びzは0又は1である。この式において、Dは電子供与化合物であり、Lはリンカーであり、及びAは電子受容化合物である。この式において、xは0、1、2、3、4、又は5であり得る。更に、vは、0、1、2、3、4、又は5であり得る。
【0028】
簡素化する及び基本的なD−L−A構造を参照する目的のため、正極側14では、カソード22上で一般的に起きる半反応が、化学反応式1:
-L-A +e → D-L-A (反応式1)
に示される。
負極側では、アノード24上で一般的に起きる半反応が、化学反応式2:
L-A +e → D-L-A (反応式2)
に示される。
【0029】
上記の反応式1及び反応式2で示される半反応の生成物が同じであるため、使用済みの活性種のクロスコンタミネーションは、一般的に起きない。従って、レドックスフロー電池10では、カソード22とアノード24とを分離するイオン交換膜又は非選択的多孔質セパレータが必要とされない。しかしながら、そのような膜又は非選択的多孔質セパレータを、カソード22とアノード24との直接の電気的短絡の機会を防ぐため若しくは最小化するために、又はフェイルセーフ機構として任意に使用することができる。様々な実施形態において、従来のレドックスフロー電池とは異なり、レドックスフロー電池10は、カソード22とアノード24とを分離する膜(選択膜、イオン選択膜、又は上記の任意の膜)がない。この設計では、正極側14及び負極側16における電解質は、それぞれカソード22及びアノード24を通じて導入されることができ、外部回路を使用して電子の移動が起きる。レドックスフロー電池10は、カソード22とアノード24とを分離する膜がない状態で、確実に動作する。膜がない場合、活物質の電子供与基と電子受容基との間の化学結合を設けることによって、正極側14及び負極側16での電解質のクロスコンタミネーションを最小化する、又は防ぐ。
【0030】
活物質自体を再び参照すると、1つの実施形態において、(F1)又は(F2)のいずれかについて、化学式はD-L-Aであり、v及びzは、それぞれ0である。
【0031】
別の実施形態において、(F1)について、化学式はD-L-A-L-A-Dであり、vは1であり、zは1である。
【0032】
別の実施形態において、(F1)について、化学式はD-L-A-L-A-L-A-Dであり、vは2であり、zは1である。
【0033】
別の実施形態において、(F1)について、化学式はD-L-A-L-A-L-A-L-A-Dであり、vは3であり、zは1である。
【0034】
別の実施形態において、(F1)について、化学式はD-L-A-L-A-L-A-L-A-L-A-Dであり、vは4であり、zは1である。
【0035】
別の実施形態において、(F1)について、化学式はD-L-A-L-A-L-A-L-A-L-A-L-A-Dであり、vは5であり、zは1である。
【0036】
代替的な実施形態において、(F2)について、化学式はD-L-A-2L-D2である。
【0037】
代替的な実施形態において、(F2)について、化学式はD-L-A-3L-D3である。
【0038】
代替的な実施形態において、(F2)について、化学式はD-L-A-4L-D4である。
【0039】
代替的な実施形態において、(F2)について、化学式はD-L-A-5L-D5である。
【0040】
前述のD、L、A、v、x及びzの全ての組み合わせは、様々な非限定的な実施形態において明確に企図される。本明細書の任意の実施形態における1つ以上の(D)電子供与化合物は、以下に説明する任意の(D)電子供与化合物であり得る。同様に、本明細書の任意の実施形態における1つ以上の(L)リンカーは、以下に説明する任意の(L)リンカーであり得る。更に、本明細書の任意の実施形態における1つ以上の(A)電子受容化合物は、以下に説明する任意の(A)電子受容化合物であり得る。換言すると、1つの活物質中に2つ以上の異なる(D)、(L)、及び/又は(A)が存在し得る。
【0041】
(電子供与化合物(D))
様々な実施形態において、1つ以上の(D)電子供与化合物は、以下の構造:
【化15】

を有する。
【0042】
この構造では、Xは共有結合、硫黄原子(S)、SO、又はN−Rであり、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ニトリル基、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、アシル基、及びアシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルキルアリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、アリールハロアルキル基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、ハロアルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基である。更には、本明細書の任意の構造についてのR、R、R、R、R、R、R、R及びR10のいずれか1つは、以下により詳細に説明され得る。言い換えると、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10が、それぞれ独立して以下に全てのセクションで説明されるように独立して選択されるという様々な非限定的な実施形態が、明確に企図される。様々な実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基(ペルハロアルキルを含む)、又はアルキルエーテル基であり、R及びRのうち少なくとも1つは、アルキル基、ハロアルキル基(ペルハロアルキルを含む)、アルキルエーテル基、アシル基、又はハロアシル基である。特定の理論に縛られることを意図しないが、これらの位置での置換は、立体効果により酸化電位を増加させると考えられている。他の実施形態において、R、R、R、Rは、それぞれアルキル基、アルキルエーテル基、アセチル基、及びCF基から選択される。代替的な電子供与化合物は、置換カルバゾール、置換5,10−ジヒドロフェナジン、及びそれらの組み合わせを含む。様々な実施形態において、R及びRは、どの構造が利用されたとしても、それぞれ水素原子である(例えば、R=R=H)。
【0043】
他の実施形態において、1つ以上の(D)電子供与化合物は、以下の構造:
【化16】

を有する。
【0044】
様々な実施形態において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)、ペルハロアルキル基、アシル基、アシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルカリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基である。あるいは、R及びRの1つは、水素原子である。1つの実施形態において、R及びRの1つは水素原子であり、これに対してR及びRの他方は水素原子ではない。
【0045】
1つの実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)、ペルハロアルキル基、アシル基、アシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルカリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基である。関連する実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、1〜6又は1〜12の炭素原子を有するアルキル基、又は1〜12の炭素原子を有するハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)である。あるいは、R及びRの1つは、水素原子である。1つの実施形態において、R及びRの一方は水素原子であり、これに対してR及びRの他方は水素原子ではない。
【0046】
更なる実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、1、2、3、4、5、又は6の炭素原子又は1〜12の炭素原子を有するアルキル基、トリフルオロメチル基、ハロ基、シアノ基、1〜12の炭素原子を有するアルキルエーテル基、1〜12の炭素原子を有するアルキルエーテル基、又は1〜12の炭素原子を有するトリアルキルアンモニウムアルキル基である。他の実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、1、2、3、4、5、又は6の炭素原子又は1〜12の炭素原子を有するアルキル基、1〜6又は1〜12の炭素原子を有するハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)、1〜6又は1〜12の炭素原子を有するペルハロアルキル基、アシル基、ハロアシル基、又はペルハロアシル基である。適切なアルキル基の非限定的な例は、当業者に理解されるように、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、n−ペンチル、ヘキシル、オクチル等である。あるいは、上述したこれらの数値内にある全ての数値及び数値の範囲は、様々な非限定的な実施形態において、明示的に企図される。
【0047】
更に他の実施形態において、R及びRは、それぞれ立体的に嵩高い。「立体的に嵩高い」という用語は、当業者には理解されている。例えば、R及びRは、それぞれイソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、又はtert-ブチル基のようなC−Cアルキル基であり得る。これらのタイプの基は、化合物の安定性を犠牲にすることなく(又は、化合物の安定性への影響を少なくとも最小限にして)、電位をより正の値にシフトすることができる。あるいは、R及びRは、それぞれ、C−Cアルキル基であることができ、上述したこれらの基とネオペンチル基とを含むことができる。更に他の実施形態において、R及びRは、それぞれメチル及び/又はCF基であり得る。いくつかの実施形態において、フェノチアジン、5,10−ジヒドロフェナジン、及びカルバゾールに対して、計算により、メチル基、ハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)、及びペルハロアルキル基が、酸化電位の正へのシフトを誘導するために、十分に立体的に嵩高いことが示される。
【0048】
様々な実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基(ペルハロアルキルを含む)、又はアルキルエーテル基であり、R及びRの少なくとも1つは、アルキル基、ハロアルキル基(ペルハロアルキルを含む)、アルキルエーテル基、アシル基、又はハロアシル基である。他の実施形態において、R、R、R及びRは、それぞれ、アルキル基、アルキルエーテル基、アセチル基、及びCF基から選ばれる。特定の論理で縛ることを意図しないが、これらの位置での置換は、立体効果により酸化電位を驚くほど増加させると考えられる。
【0049】
他の実施形態において、1つ以上の(D)電子供与化合物は、以下の構造:
【化17】

又は
【化18】

又は
【化19】

の1つを有する。
【0050】
特定の理論に縛られるものではないが、5,10−ジヒドロフェナジンは最も低いベースライン酸化電位を有し、フェノチアジンは中間レベルの酸化電位を有し、カルバゾールはフェノチアジンよりもわずかに高いベースライン酸化電位を有し、フェノチアジン−5,5−二酸化物は最も高いベースライン酸化電位を有する。様々な実施形態において、カルバゾールの1,8の位置でのオルト置換の立体効果は、比較的控えめである可能性がある。加えて、5,10−ジヒドロフェナジンの1,4,6,9の位置でのオルト置換の立体効果は、より大きい可能性がある。
【0051】
これらの構造において、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)、ペルハロアルキル基、アシル基、アシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルカリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基である。1つの実施形態において、R及びRの一方、及び/又はR及びRの一方は、水素原子であり、それに対し、R及びRの他方、及び/又はR及びRの他方は、水素原子ではない。R及びR10は、それぞれ独立して、上述したR、R、R、R、R、R及び/又はRの任意の1つと同じ又は異なってもよい。他の実施形態において、R、R、R及びR10のいずれか又は全ては、Hであることができる。あるいは、R及びRの一方は水素原子である。1つの実施形態において、R及びRの一方は水素原子であり、それに対し、R及びRの他方は水素原子ではない。別の実施形態において、R及びR及びR及びRは、それぞれ水素である。
【0052】
他の実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)、ペルハロアルキル基、アシル基、アシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルカリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基である。関連する実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、1〜12の炭素原子を有するアルキル基、又は1〜12の炭素原子を有するハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)である。あるいは、R及びRの一方は水素原子である。1つの実施形態において、R及びRの一方は水素原子であり、それに対して、R及びRの他方は水素原子ではない。他の実施形態において、Rは、独立して、1、2、3、4、5、又は6の炭素原子又は1〜12の炭素原子を有するアルキル基、1〜6又は1〜12の炭素原子を有するハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)、1〜6又は1〜12の炭素原子を有するペルハロアルキル基、1〜12の炭素原子を有するアルキルエーテル基、又はトリアルキルアンモニウムアルキル基である。更に他の実施形態において、R及びRのそれぞれは、それぞれR及びRと同じ又は異なる。あるいは、R及びRのそれぞれは、R及び/又はRに関連して上述した任意の基であり得る。あるいは、上述したこれらの数値内にある全ての数値及び数値の範囲は、様々な非限定的な実施形態において、明示的に企図される。
【0053】
更なる実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、1、2、3、4、5又は6の炭素原子又は1〜12の炭素原子を有するアルキル基、トリフルオロメチル基、ハロ基、シアノ基、1〜12の炭素原子を有するアルキルエーテル基、又は1〜12の炭素原子を有するトリアルキルアンモニウムアルキル基である。他の実施形態においてR及びRは、それぞれ独立して、1、2、3、4、5又は6の炭素原子又は1〜12の炭素原子を有するアルキル基、1〜6の炭素原子又は1〜12の炭素原子を有するハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)、1〜6又は1〜12の炭素原子を有するペルハロアルキル基、アシル基、又はハロアシル基である。あるいは、上記のこれらの値に入る全ての数値及び数値の範囲は、様々な非限定的な実施形態において、明示的に企図される。
【0054】
更に他の実施形態において、R及びRは、それぞれ立体的に嵩高い。「立体的に嵩高い」の用語は、当業者には理解されている。例えば、R及びRは、それぞれ、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、又はtert-ブチル基のようなC−Cアルキル基であり得る。これらのタイプの基は、化合物の安定性を犠牲にすることなく(又は化合物の安定性への影響を少なくとも最小限にして)、電位をより正の値にシフトさせることができる。あるいは、R及びRは、それぞれ、C−Cアルキル基であることができ、上述したこれらの基とネオペンチル基とを含み得る。更に他の実施形態において、R及びRは、それぞれ、メチル及び/又はCF基であり得る。あるいは、R及びRの一方は水素原子である。1つの実施形態において、R及びRの一方は水素原子であり、それに対し、R及びRの他方は水素原子ではない。いくつかの実施形態において、フェノチアジン、5,10−ジヒドロフェナジン、及びカルバゾールに対して、計算により、メチル基、ハロアルキル基(例えば、モノ、ジ、又はトリハロ)及びペルハロアルキル基は、酸化電位の正へのシフトを誘導するために、十分に立体的に嵩高いことが示される。
【0055】
様々な実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基(ペルハロアルキルを含む)、又はアルキルエーテル基であり、R及びRの少なくとも1つは、アルキル基、ハロアルキル基(ペルハロアルキルを含む)、アルキルエーテル基、アシル基、又はハロアシル基である。他の実施形態において、R、R、R2、R及びRは、それぞれ、アルキル基、アルキルエーテル基、及びCF基から選択される。特定の理論に縛られることを意図するものではないが、これらの位置での置換は、立体効果により酸化電位を驚くほど増加させると考えられる。
【0056】
他の実施形態において、1つ以上の(D)電子供与化合物は、以下の構造:
【化20】

を有する。
【0057】
これらの実施形態において、Xは共有結合であり、それにより直下に示すように中心環は5員環である。様々な実施形態において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)、ペルハロアルキル基、アシル基、アシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルカリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基である。1つの実施形態において、R及びRの一方は水素原子であり、R及びRの他方は水素原子ではない。別の実施形態において、R及びRはそれぞれ水素原子である。
【0058】
他の実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)、ペルハロアルキル基、アシル基、アシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルカリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基である。関連する実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、1〜12の炭素原子を有するアルキル基、又は1〜12の炭素原子を有するハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)である。代わりに、R及びRの一方は水素原子である。1つの実施形態において、R及びRの一方は水素原子であり、それに対して、R及びRの他方は水素原子ではない。
【0059】
更なる実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子又は1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、トリフルオロメチル基、ハロ基、シアノ基、1〜6又は1〜12個の炭素原子を有するアルキルエーテル基、又は1〜12個の炭素原子を有するトリアルキルアンモニウムアルキル基である。他の実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子又は1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6又は1〜12個の炭素原子を有するハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)、1〜6又は1〜12個の炭素原子を有するペルハロアルキル基、アシル基、又はハロアシル基である。あるいは、上述したこれらの数値内にある全ての数値及び数値の範囲は、様々な非限定的な実施形態において、明示的に企図される。
【0060】
更に他の実施形態において、R及びRは、それぞれ立体的に嵩高い。「立体的に嵩高い」という用語は、当業者には理解されている。例えば、R及びRは、それぞれ、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、又はtert-ブチル基のようなC−Cアルキル基であり得る。これらのタイプの基は、化合物の安定性を犠牲にすることなく(又は化合物の安定性への影響を少なくとも最小限にして)、電位をより正の値へシフトさせることがある。しかしながら、特定の理論に縛られることを意図するものではないが、嵩高い置換基の効果は、通常、カルバゾールよりもフェノチアジンについての方が大きいと考えられている。あるいは、R及びRは、それぞれ、C−Cアルキル基であることができ、上述したこれらの基及びネオペンチル基を含み得る。カルバゾールの窒素に結合した基の同一性は、溶解度を増加又は減少させるために当業者により選択されてもよい。更に他の実施形態において、R及びRは、それぞれ、メチル及び/又はCF基であってもよい。あるいはR及びRの一方は水素原子である。1つの実施形態において、R及びRの一方は水素原子であり、それに対し、R及びRの他方は水素原子ではない。
【0061】
様々な実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基(ペルハロアルキルを含む)、又はアルキルエーテル基であり、R及びRの少なくとも1つは、アルキル基、ハロアルキル基(ペルハロアルキルを含む)、アルキルエーテル基、アシル基、又はハロアシル基である。他の実施形態において、R、R、R及びRは、それぞれ、アルキル基、アルキルエーテル基、アセチル基、及びCF基から選択される。特定の理論に縛られることを意図するものではないが、これらの位置での置換は、立体効果により酸化電位を驚くほど増加させると考えられる。
【0062】
他の実施形態において、1つ以上の(D)電子供与化合物は、以下の構造:
【化21】

を有する。
【0063】
様々な実施形態において、R及びRは、独立して、アルキル基、ニトリル基、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、アシル基、及びアシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルキルアリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、アリールハロアルキル基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、ハロアルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基である。R及び/又はRは、独立して、水素、アルキル基、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、アシル基、及びアシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルキルアリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、アリールハロアルキル基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、ハロアルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基であり得る。
【0064】
他の実施形態において、R及びRは、独立して、アルキル基、ニトリル基、ハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、またはトリ−ハロ)、ペルハロアルキル基、アシル基、アシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルカリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基である。1つの実施形態において、R及びRの1つ又は両方は水素である。別の実施形態において、R及びRの一方は水素原子であり、それに対して、R及びRの他方は、水素原子ではない。他の実施形態において、Rは1、2、3、4、5、又は6の炭素原子を有する、又は1〜12の炭素原子を有するアルキル基、1〜6又は1〜12の炭素原子を有するハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)、1〜6又は1〜12の炭素原子を有するペルハロアルキル基、1〜6又は1〜12の炭素原子を有するアルキルエーテル基、又は1〜6又は1〜12の炭素原子を有するトリアルキルアンモニウムアルキル基である。あるいは、上述したこれらの数値内にある全ての数値及び数値の範囲は、様々な非限定的な実施形態において、ここに明示的に企図される。
【0065】
更なる実施形態において、R及びRは独立して、1、2、3、4、5、又は6の炭素原子、又は1〜12の炭素原子を有するアルキル基、トリフルオロメチル基、ハロ基、シアノ基、1〜12の炭素原子を有するアルキルエーテル基、1〜12の炭素原子を有するアルキルエーテル基、又は1〜12の炭素原子を有するトリアルキルアンモニウムアルキル基である。他の実施形態において、R及びRは、独立して、1、2、3、4、5、又は6の炭素原子、又は1〜12の炭素原子を有するアルキル基、1〜6又は1〜12の炭素原子を有するハロアルキル基(例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ハロ)、1〜6又は1〜12の炭素原子を有するペルハロアルキル基、アシル基、ハロアシル基、又はベルハロアシル基である。適切なアルキル基の非限定的な例は、当業者に理解されるように、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、n−ペンチル、ヘキシル、オクチル等である。あるいは、上述したこれらの数値内にある全ての数値及び数値の範囲は、様々な非限定的な実施形態において、明示的に企図される。
【0066】
更に別の実施形態において、R及びRの一方は立体的に嵩高い。別の実施形態において、R及びRは、それぞれ立体的に嵩高い。「立体的に嵩高い」という用語は、当業者には理解されている。例えばR及びRの一方又はそれぞれは、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、又はtert-ブチル基のようなC−Cアルキル基であってもよい。これらのタイプの基は、化合物の安定性を犠牲にすることなく(又は化合物の安定性への影響を少なくとも最小化にして)、電位をより正の値にシフトさせることができる。いくつかの実施形態において、基のこれらのタイプは、化合物の安定性を実際に高め得る。あるいは、R及びRの一方又はそれぞれは、C−Cアルキル基であってもよく、上述した基及びネオペンチル基を含んでもよい。更に他の実施形態において、R及びRは、それぞれメチル及び/又はCF基であってもよい。
【0067】
様々な実施形態において、R及びRは、独立して、アルキル基、ハロアルキル基(ペルハロアルキル基を含む)、又はアルキルエーテル基であり、R、R及びRの少なくとも1つは、アルキル基、ハロアルキル基(ペルハロアルキル基を含む)、アルキルエーテル基、アシル基、又はハロアシル基である。他の実施形態において、R、R、R及びRは、それぞれ、アルキル基、アルキルエーテル基、アセチル基、及びCF基から選択される。特定の理論に縛られることを意図しないが、これらの位置のいくつかでの(例えば、R及び/又はR)置換は、立体効果により酸化電位を驚くほど増加させると考えられる。
【0068】
1つの特定の実施形態において、R及びRは、独立して、アルキル基又はニトリル基である。別の実施形態において、Rは、アルキル基、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、アシル基、及びアシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルキルアリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、アリールハロアルキル基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、ハロアルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、アルキルホスホン酸基、又はトリアルキルアニリニウム基である。様々な実施形態において、R及びRの1つ又は両方は、独立して、水素、アルキル基、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、アシル基、及びアシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルキルアリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、アリールハロアルキル基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、ハロアルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基である。
【0069】
付加的な実施形態において、1つ以上の(D)電子供与化合物は、以下の構造:
【化22】

を有する。
【0070】
この構造(D2)は、上記の供与構造(D)のいずれかとともに、又は他の供与構造(D)とは独立して使用することができる。
【0071】
加えて、上記の各構造において、Lはリンカーであることに留意されたい。
【0072】
(リンカー(L))
ここで、リンカー(L)を参照すると、Lは、それぞれ、2〜6の炭素原子を有するアルキル基、芳香族基、及び電子供与化合物(D)と電子受容化合物(A)との直接結合から選ばれる結合化合物であり得る。様々な実施形態において、アルキル基は、2、3、4、5、又は6の炭素原子を有し、直鎖、分岐、又は環状であってもよい。1つの実施形態において、(L)は、−CH−CH−CH−である。別の実施形態において、(L)はフェニル又はフェニレンである。芳香族基は、当業界で既知のものであってよく、例えば、アリール又は置換アリール基であってもよい。様々な実施形態において、(L)は、それぞれエーテル、アンモニウム基、又はホスホニウム基も含んでもよい。リンカーが直接結合である実施形態において、電子供与化合物(D)は、例えば、共有結合を用いて電子受容化合物(A)に直接結合される。
【0073】
(電子受容化合物(A))
戻って参照すると、実施形態において、1つ以上の(A)電子受容化合物は、以下の構造(A1)又は(A2)又は(A3)又は(A4)又は(A5):
【化23】

又は
【化24】

又は
【化25】

又は
【化26】

又は
【化27】

を有してもよい。
【0074】
(A1)及び(A3)に関連し、R12及びR14は、それぞれフェニル基、水素原子、アリール基若しくは置換アリール基、又は、1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、R13及びR15は、それぞれ水素原子、又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基である。様々な実施形態において、アルキル基は、それぞれ独立して2、3、4、5、又は6の炭素原子を有し、直鎖、分岐、又は環状であってもよい。
【0075】
(A1)及び(A3)に関連し、R11は、水素原子、アルキル基、アセチル基、アリール基、置換アリール基、又は以下の構造(P1)又は(P2):
【化28】

を有する基から選択される。
【0076】
(A3)について、R11は、水素原子を除く前述の基のいずれかである。
【0077】
上述したR11のアルキル基は、当技術分野で既知の任意のものであってもよく、直鎖、分岐、又は環状であってもよい。様々な実施形態において、アルキル基は1〜6の炭素原子、例えば2、3、4、5、又は6の炭素原子を有する。他の様々な実施形態において、アルキル基は、アルキル基、アルキルエーテル基、アルキルオリゴエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、アルキルリン酸基、アルキルホスホン酸基、又はアルキルホスホニウム基であってもよい。同様に、窒素の位置も、yサブユニットの任意のフェニル中間ユニットに対して環の何れの位置であってもよく、例えば、オルト、メタ、又はパラであってもよい。置換アリール基は、本明細書に記載の任意のものであってよい。
【0078】
更には、(P1)及び(P2)に関連し、yは、0〜4の数、例えば、0、1、2、3、又は4である。更に、R16〜R19は、それぞれフェニル基、水素原子、又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基である。様々な実施形態において、アルキル基は、それぞれ独立して、1、2、3、4、5、又は6の炭素原子を有し、直鎖、分岐、又は環状であってもよい。加えて、R16〜R19のいずれも、環の任意の位置にあってもよい。
【0079】
加えて、(A1)及び(A2)について、R20、R21、R23及びR24は、それぞれフェニル基、水素原子、又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基である。R22は、フェニル基又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基である。様々な実施形態において、アルキル基は、それぞれ独立して1、2、3、4、5、又は6の炭素原子を有し、直鎖、分岐、又は環状であってもよい。加えて、zが1〜5、例えば、1、2、3、4、又は5である場合に、L2は任意に第2又は付加的なリンカーである。しかしながら、L2は使用する必要はない。
【0080】
(P1)及び(P2)は末端での結合を可能とするが、(P1)及び(P2)は構造の任意の位置への結合を可能とできることが理解されるべきである。加えて、(A1)は、先端での結合を可能とし、(A3)は末端での結合を可能とする。(A1)及び(A3)は構造の任意の位置での結合を可能とできることが理解されるべきである。
【0081】
戻って参照すると、(A2)に関連し、sは0〜2の数字、例えば、0、1、又は2であり、tは1〜6の数字、例えば、1、2、3、4、5、又は6であり、Bは、それぞれ水素原子、1〜6の炭素原子を有するアルキル基、又はアリール若しくは置換アリール基である。更に、様々な実施形態において、アルキル基は、それぞれ独立して1、2、3、4、5、又は6の炭素原子を有することができ、直鎖、分岐、又は環状であってもよい。アリール基の非限定的な例は、フェニル基である。置換アリール基の非限定的な例は、4−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−(t−ブチル)フェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル等である。様々な実施形態において、一般的な位置は、4、次に2及び/又は6である。しかしながら、(A2)の全ての環上で置換され得る。加えて、ピリジンは位置3及び/又は5で置換されることもできる。更に他の実施形態において、置換基は、短鎖アルキル基(C−C)及び/又は短鎖アルコキシ基(C−C)である。
【0082】
様々な実施形態において、1つ以上の電子受容化合物(A)は、上記のいずれか1つのアクセプタ化合物(A1)、(A2)及び(A3)のアルキル置換バージョンであり得る。
【0083】
別の実施形態において、電子受容化合物(A2)は、以下の構造(A6):
【化29】

として更に定義される。
【0084】
構造(A6)は構造(A2)のアルキル置換バージョンである。構造(A6)において、R25〜R36は、同じであっても異なっていてもよく、1〜4の炭素原子を有するアルキル基、アルキルエーテル基、アルキルトリアンモニウムアルキル基、オリゴエーテル基、フェニル基、又は水素であってもよい。1つの実施形態において、R25及びR28は、それぞれ1〜4の炭素原子を有するアルキル基であり、残りのR26、R27、及びR29〜R36は、それぞれ水素原子である。この実施形態では、還元されたピリジンは中央の架橋フェニル基と共平面性を達成することができず、より負の還元電位をもたらすことが発見された。平面性の欠如は、還元時に得られる中性種の溶解性も促進し得る。別の実施形態において、R25、R28、及びR29〜R36基は、それぞれ1〜4の炭素原子を有するアルキル基であり、残りのR25〜R32基は、それぞれ水素原子である。別の実施形態において、R25〜R28基は、それぞれ1〜4の炭素原子を有するアルキル基であり、残りのR29〜R36基は、それぞれ水素原子である。更に別の実施形態において、R25〜R32基は、1〜4の炭素原子を有するアルキル基であり、残りのR33〜R36基は、水素原子である。
【0085】
代替的な実施形態において、1つ以上の電子受容化合物(A)は、上記の(A4)及び(A5)から選ばれるアリールイミドであり得る。これらのアリールイミド化合物は、低分子量、合理的な酸化還元電位、可逆電気化学性、及び比較的安定な還元生成物を有する。構造(A4)は、フタルイミドである。実施形態において、構造(A4)を有する電子受容化合物は、以下の構造(A7):
【化30】

によって与えられるピロメリット酸ジイミドとして更に定義される
【0086】
別の実施形態において、構造(A5)を有する電子受容化合物は、リレン色素である。この実施形態において、構造(A5)を有する電子受容化合物は、構造(A8)又は(A9)
【化31】

又は
【化32】

によって更に定義される。
【0087】
代替的な実施形態において、電子受容化合物(A)は、溶解性を改善するため、芳香環の1つ以上の任意の位置に置換基を有する構造(A5)又は(A8)又は(A9)の誘導体であることができる。置換基の非限定的な例は、アルキル基、アルキルエーテル基若しくはオリゴエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、アルキルホスホン酸基、アルキルリン酸基、アルキルホスホニウム基、アルキルスルホン酸基、及びアルキル硫酸基、アルキルカルボン酸基、及びシアノアルキル基を含む。置換基の1つ以上もアリール基であり得ることが企図される。
【0088】
(付加的な実施形態)
様々な実施形態において、電子供与化合物(D)は、以下の化合物:
【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

の1つから選択される。
【0089】
(ドナー1)に関連し、XはSであり、R及びRは、それぞれt−ブチルであり、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素である。
【0090】
(ドナー2)に関連し、XはSOであり、R及びRは、それぞれ1〜4の炭素原子を有するアルキルでありR、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素である。
【0091】
(ドナー3)に関連し、Xは共有結合であり、R及びRは、それぞれt−ブチルであり、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素である。
【0092】
(ドナー5)、(ドナー6)、及び(ドナー7)に関連し、R及びRは、それぞれアルキル基である。加えて、R及びRが(L)リンカーで置き換え可能であるように、結合位置は、R又はRであってもよい。(ドナー5)について、(L)は、芳香族炭素のいずれか1つに結合されることもできる。
【0093】
付加的な実施形態において、リンカー(L)は、以下のリンカー:
【化38】

の1つから選択される。
【0094】
更に他の実施形態において、電子受容化合物(A)は、以下の化合物:
【化39】

【化40】

【化41】

の1つから選択される。
【0095】
(アクセプタ1)に関連し、構造(A1)が用いられ、R11はメチル基であり、R12、R13、R14及びR15は、それぞれ水素である。
【0096】
(アクセプタ2)に関連し、構造(A1)が用いられ、R11はアセチル基であり、R12、R13、R14及びR15は、それぞれ水素である。
【0097】
(アクセプタ3)に関連し、構造(A1)が用いられ、R11は化合物(P2)であり、yは1であり、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R23及びR24は、それぞれ水素である。
【0098】
(アクセプタ4)に関連し、構造(A1)が用いられ、R11は化合物(P2)であり、yは1であり、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR23は、それぞれ水素であり、R12、R14、R21及びR24は、それぞれメチルである。
【0099】
(アクセプタ5)に関連し、構造(A1)が用いられ、R11は化合物(P2)であり、yは1であり、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR23は、それぞれ水素であり、R12、R14、R21及びR24は、それぞれフェニルである。アクセプタ5は、パラ方向で(中央のベンゼンのC及びCで)結合されたピリジンを有する。
【0100】
(アクセプタ6)に関連し、構造(A1)が用いられ、R11は化合物(P2)であり、yは1であり、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR23は、それぞれ水素であり、R12、R14、R21及びR24は、それぞれフェニルである。アクセプタ6は、メタ配置で(C及びCで)結合されたピリジンを有する。
【0101】
(アクセプタ7)に関連し、構造(A2)が用いられ、Bは、それぞれ水素原子、1〜6の炭素原子を有するアルキル基、又はアリール若しくは置換アリール基であり、sは0〜2の数であり、tは3である。
【0102】
(アクセプタ8)に関連し、構造(A2)が用いられ、Bは、それぞれ水素原子、1〜6の炭素原子を有するアルキル基、又はアリール若しくは置換アリール基であり、sは0〜2の数であり、tは6である。
【0103】
電子受容化合物の付加的な実施形態は、以下の
【化42】

【化43】

に記載される。
【0104】
特に、前述の(A)電子受容化合物の任意の1つ以上について、(L)への結合点が1つだけ存在する必要がある。(L)への2つ以上の結合点が示されている(A)の様々な実施形態において、これらの任意の1つ以上は、(L)への結合点として使用されてもよく、又は代わりに水素原子又は炭素数1、2、3、4、5又は6であってもよく、該アルキル基は直鎖、分岐又は環状のアルキル基であってもよい。加えて、上述した(A)電子受容化合物の任意の1つ以上について、電子供与化合物(D)は、リンカー(L)を介してピリジンの窒素原子Nに結合されてもよい。代わりに、電子供与化合物(D)は、C−2又はC−4位置のようなピリジンのN以外の位置で、リンカー(L)を介して上述した(A)電子受容化合物のいずれかに結合することができる。供与化合物(D)が、受容化合物(A)のピリジンのC−4にフェニリンリンカー(L)で結合する場合の構造の非限定的な例は、
【化44】

である。
【0105】
更に他の実施形態において、(A)電子受容化合物は、1電子ピリジニウムベースアクセプタとして説明されてもよい。例は、Physical Organic Approach to Persistent, Cyclable, Low-Potential Electrolytes for Flow Battery Applications; J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 2924-2927に記載されており、これを引用によって、様々な非限定的な実施形態において明示的に本明細書に取り込む。
【0106】
上述したように、リンカー(L)は、ドナー化合物(D)とアクセプタ化合物(A)との間の直接結合(共有結合のような)であり得る。ドナー化合物(D)とアクセプタ化合物(A)との間のリンカー(L)が共有結合である場合の活物質の構造の非限定的な例は、以下の
【化45】

【化46】

【化47】

に記載される。
【0107】
(活物質2)から(活物質6)に関連し、R及びRは、独立して、フェニル基、アリール基若しくは置換アリール基、2〜6の炭素原子を有するアルキル基、アルキルエーテル基、アルキルオリゴエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、アルキルリン酸基、アルキルホスホン酸基、又はアルキルホスホニウム基である。様々な実施形態において、アルキル基は、それぞれ独立して、2、3、4、5、又は6の炭素原子を有し、直鎖、分岐、又は環状であってもよい。
【0108】
活物質の付加的で非限定的な例は、以下の(活物質7)〜(活物質9):
【化48】

【化49】

【化50】

に示される。
【0109】
実施形態において、活物質の構造を、以下に示すように、
【化51】

ピリジン上での異なる結合位置が可能となるように設計することができる。
【0110】
上記の(活物質10)に関連して、Rはフェニル基、アリール基若しくは置換アリール基、2〜6の炭素原子を有するアルキル基、アルキルエーテル基、アルキルオリゴエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、アルキルリン酸基、アルキルホスホン酸基、又はアルキルホスホニウム基である。様々な実施形態において、アルキル基は、それぞれ独立して、2、3、4、5、又は6の炭素原子を有し、直鎖、分岐、又は環状であってもよい。
【0111】
更に別の実施形態において、活物質の構造を、以下に示すように、
【化52】

ドナー化合物上での異なる結合位置が可能となるように設計することができる。
【0112】
(活物質11)に関連し、R及びRは、独立して、フェニル基、アリール若しくは置換アリール基(例えば、トリアルキルアンモニウムフェニル基)、アルキル基、アルキルエーテル基、アルキルオリゴエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、アルキルリン酸基、アルキルホスホン酸基、又はアルキルホスホニウム基である。
【0113】
(F1)及び(F2)の更なる実施形態において、(L)は、−CH−CH−CH−又はフェニルである。1つの実施形態において、vは0であり、zは0である。別の実施形態において、vは1であり、zは1である。更なる実施形態において、vは1であり、xは1である。更に別の実施形態において、yは1であり、xは1であり、2つの(D)電子供与化合物が利用され、各(D)において、XはSOであり、R及びRは、それぞれt−ブチルであり、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素であり、単一の(A)電子受容化合物があり、構造(A1)が利用され、R11は化合物(P2)であり、yは1であり、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR23は、それぞれ水素であり、R12、R14、R21及びR24は、それぞれメチルである。
【0114】
更に別の実施形態において、yは1であり、xは1であり、2つの(D)電子供与化合物が利用され、各(D)において、Xは共有結合であり、R及びRは、それぞれt−ブチルであり、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素であり、単一の(A)電子受容化合物があり、構造(A1)が利用され、R11は化合物(P2)であり、yは1であり、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR23は、それぞれ水素であり、R12、R14、R21及びR24は、それぞれメチルである。
【0115】
更に別の実施形態において、本開示は、カソード、アノード、電荷担体電解質、及び2つ以上のピリジン又は置換ピリジンユニットを備える活物質を含むレドックスフロー電池を提供し、該ユニットの任意の2つは、1〜3のフェニル又は置換フェニル基によって分離されており、ピリジン又は置換ピリジンユニットの1つ以上は、化学的に可逆な電気化学的酸化を有する部分に、窒素原子を介して結合する。この実施形態において、「化学的に可逆的な電気化学酸化」の用語は、ここでは、サイクリックボルタンメトリー実験において観察される応答を説明するために使用される。具体的に、少なくとも0.1Mの適切な支持電解質塩を含有する炭酸プロピレンで実験を実施する場合、電気化学的酸化プロセスに対応するアノード波とカソード波は、100mV/sの掃引速度で測定する場合、高さと面積との両方で同一又はほぼ同一となる。
【0116】
(実施例)
レドックスフロー電池の様々な非限定的な実施例が形成及び評価され、以下の表1に示される一連の電気的特性が決定される。全ての電気化学データは、通常の実験室測定−サイクリックボルタンメトリー及び異なるパルスのボルタンメトリーを使用して収集される。特に、使用された参照電極は、銀ワイヤ擬似参照電極であり、ドリフトを受けやすい。これが特定の電位測定に影響を与える可能性があるが、レドックスフロー電池全体の電圧は、酸化電位と還元電位との間の差として表され、参照電極のドリフトによる影響を受けない。
表1
【表1】
【0117】
D1はドナー1である。D2はドナー2である。D3はドナー3である。D4はドナー4である。それぞれ上記に記載されている。D5は、以下の構造:
【化53】

で表される。
【0118】
L1はリンカー1である。L2はリンカー2である。L3はリンカー3である。L4はリンカー4である。それぞれ、上記に記載されている。
【0119】
A1はアクセプタ1である。A2はアクセプタ2である。A3はアクセプタ3である。A5はアクセプタ5である。A6はアクセプタ6である。A7はアクセプタ7である。A9はアクセプタ9である。A10はアクセプタ10である。A12はアクセプタ12である。それぞれ、上記に記載されている。
【0120】
N−Mepyは、4−(N−メチルピリジニウム)である。
【0121】
Redは、活物質の第2還元に対応する還元電位を指す。
【0122】
Redは、活物質の第1還元に対応する還元電位を指す。
【0123】
は、活物質の第1酸化に対応する酸化電位を指す。
【0124】
は、活物質の第2酸化に対応する酸化電位を指す。
【0125】
「irr」という表記は、化学的に不可逆的な電気化学プロセスを指す。
【0126】
これらの実施例についての上記の結果は、本明細書に記載のレドックスフロー電池において使用されるために適した特性を有する結合された供与−受容化合物を調製可能であることを実証する。この表は、よく分離された(>1Vにより)酸化還元プロセスを示す結合された化合物の複数の例を含む。
【0127】
本開示の全体を通じて上記の実施形態の全ての組み合わせは、そのような開示が上記の単一の段落又はセクション内に逐語的に示されていない場合であっても、1つ以上の非限定的な実施形態において、明示的に企図されている。換言すると、明示的に企図された実施形態は、本開示の任意の部分から選択及び組み合わされた、上記の1つ以上の要素を含むことができる。
【0128】
上記の1つ以上の値は、±5%、±10%、±15%、±20%、25%等に変わることがある。他の全ての要素から独立したマーカッシュ形式の要素から予期しない結果が得られることがある。各要素は、個別に及び又は組み合わせに依存し、添付の請求項の範囲内で、特定の実施形態の適切なサポートを提供する。独立請求項及び、単独及び複数への従属請求項の全てを組み合わせによる主題が、明示的に企図される。本開示は、限定ではなく説明の言葉を含む例示である。多くの修正及び変形が、上記の教示に照らして可能であり、本開示は、本明細書で具体的に説明した物とは別の方法で実施されてもよい。
【0129】
本開示の様々な実施形態において、依拠される任意の範囲及び部分範囲は、添付の請求項の範囲内にあることも理解されるべきであり、全体に及び/又はそれらに入る小数値が本明細書に明示的に記載されていなくとも、それらの値を含む全ての範囲を説明する及び企図すると理解されるべきである。当業者は、列挙された範囲及び部分範囲が本開示の様々な実施形態を十分に説明しており、可能とすることを容易に理解し、そのような範囲及び部分範囲は、関連する半分、3分の1、4分の1、5分の1等に更に区切ることができる。単なる一例として、「0.1〜0.9」の範囲は、下の3分の1、つまり0.1〜0.3へと、中間の3分の1、つまり0.4〜0.6、及び上の3分の1、つまり0.7〜0.9へと更に区切ることができ、これらは個別に及び集合的に添付の請求項の範囲に入り、添付の請求項の範囲に入る特定の実施形態に個別に及び/集合的に依拠し、適切なサポートを提供し得る。「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」等のような範囲を定義する又は修正する言葉に加えて、そのような言葉が部分範囲及び/又は上限または下限を含むことが理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10〜35の部分範囲、少なくとも10〜25の部分範囲、25〜35の部分範囲等を本質的に含み、各部分範囲は、添付の請求項の範囲内に入る特定の実施形態に個別に及び/又は集合的に依拠し、適切なサポートを提供する。最後に、開示された範囲に入る個別の数字は、添付の請求項の範囲内の特定の実施形態に依存し、適切なサポートを提供し得る。例えば、「1〜9」の範囲は、3のような様々な個々の整数を含み、同様に、4.1のような小数点(又は分数)を含む個別の数字を含み、これらは添付の請求項の範囲に入る特定の実施形態に依拠し、適切なサポートを提供し得る。
【0130】
[付記]
[付記1]
(I)カソード、
(II)アノード、
(III)電荷担体電解質、及び、
(IV)以下の式:
(D)-(L)-(A)-[(L)-(A)]-D (F1)又は、
(D)-(L)-(A)-(L-D) (F2)
を有する(a)酸化形態及び(b)還元形態の活物質を備え、
各DはLに共有結合し、各LはAに共有結合し、xは0〜5の数字であり、vは0〜5の数字であり、及びzは0又は1であり、
Dは電子供与化合物であり、Lはリンカーであり、及びAは電子受容化合物であり、
各Dは、以下の構造(D1):
【化54】

を有し、
Xは、共有結合、硫黄原子(S)、SO、又はN−Rであり、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ニトリル基、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、アシル基、及びアシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルキルアリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、アリールハロアルキル基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、ハロアルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基であり、
各Lは、2〜6の炭素原子を有するアルキル基、芳香族基、及び共有結合から選択され、及び、
各Aは、以下の構造(A1)又は(A2)又は(A3)又は(A4)又は(A5):
【化55】

又は
【化56】

又は
【化57】

又は
【化58】

又は
【化59】

を有し、
(A1)、(A2)、及び(A3)のそれぞれについて、
12及びR14は、それぞれフェニル基、水素原子、又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、R13及びR15は、それぞれ水素原子、又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、及び、
11は、水素原子、アルキル基、アセチル基、アリール基、置換アリール基、又は以下の構造(P1)又は(P2):
【化60】

を有する基から選択され、
yは、0〜4の数字であり、R16〜R19は、それぞれフェニル基、水素原子、又は2〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、R21、R22及びR24は、それぞれフェニル基、水素原子、又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、R20及びR23は、それぞれ水素原子又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、L2は、任意に第2のリンカーであり、及び、
(A2)において、sは0〜2の数字であり、tは1〜6の数字であり、Bは、それぞれ水素原子、1〜6の炭素原子を有するアルキル基、又はアリール若しくは置換アリール基である、
ことを特徴とするレドックスフロー電池。
【0131】
[付記2]
還元されたカソライトと酸化されたアノライトとの混合を防ぐために前記アノードと前記カソードとを分離するイオン選択膜がない、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0132】
[付記3]
XはSであり、R及びRは、それぞれ1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、及びR、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素である、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0133】
[付記4]
XはSOであり、R及びRは、それぞれt−ブチルであり、及び、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素である、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0134】
[付記5]
Xは共有結合であり、R及びRは、それぞれt−ブチルであり、及びR、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素である、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0135】
[付記6]
構造(D1)は、
【化61】

の構造(ドナー1)として更に定義され、
Lは前記リンカーである、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0136】
[付記7]
構造(D1)は、
【化62】

の構造(ドナー2)として更に定義され、
Lは前記リンカーである、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0137】
[付記8]
構造(D1)は、
【化63】

の構造(ドナー3)として更に定義され、
Lは前記リンカーである、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0138】
[付記9]
(L)は、−CH−CH−CH−である、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0139】
[付記10]
(L)は、フェニルである、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0140】
[付記11]
11は、化合物(P2)であり、yは1であり、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R23及びR24は、それぞれ水素である、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0141】
[付記12]
構造(A1)が用いられ、R11は化合物(P2)であり、yは1であり、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR23は、それぞれ水素であり、及びR12、R14、R21及びR24は、それぞれメチルである、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0142】
[付記13]
構造(A1)が用いられ、R11は化合物(P2)であり、yは1であり、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR23は、それぞれ水素であり、及びR12、R14、R21及びR24は、それぞれフェニルである、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0143】
[付記14]
vは0であり、及びzは0である、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0144】
[付記15]
vは1であり、及びzは1である、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0145】
[付記16]
vは1であり、及びxは1である、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0146】
[付記17]
構造(A2)は、
【化64】

の構造(A6)として更に定義され、
(A)において、R25〜R36は、1〜4の炭素原子を有するアルキル基、アルキルエーテル基、アルキルアンモニウムアルキル基、オリゴエーテル基、フェニル基、及び水素から選択される、
ことを特徴とする付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0147】
[付記18]
25〜R36は、それぞれ水素である、
ことを特徴する付記17に記載のレドックスフロー電池。
【0148】
[付記19]
yは1であり及びxは1であり、2つの(D)電子供与化合物があり、各(D)において、XはSOであり、R及びRは、それぞれt−ブチルであり、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素であり、且つ、1つの(A)電子受容化合物があり、構造(A1)が用いられ、及びR11は化合物(P2)であり、yは1であり、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR23は、それぞれ水素であり、及びR12、R14、R21及びR24は、それぞれメチルである、
ことを特徴する付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0149】
[付記20]
yは1であり及びxは1であり、2つの(D)電子供与化合物があり、各(D)において、Xは共有結合であり、R及びRは、それぞれt−ブチルであり、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素であり、且つ、1つの(A)電子受容化合物があり、構造(A1)が用いられ、及びR11は化合物(P2)であり、yは1であり、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR23は、それぞれ水素であり、及びR12、R14、R21及びR24は、それぞれメチルである、
ことを特徴する付記1に記載のレドックスフロー電池。
【0150】
[付記21]
(I)カソード、
(II)アノード、
(III)電荷担体電解質、及び、
(IV)2つ以上のピリジン又は置換ピリジンユニットを含み、該ユニットの任意の2つが1〜3のフェニル又は置換フェニル基によって分離されており、前記ピリジン又は置換ピリジンユニットの1つ以上は、窒素原子を介して、可逆的電気化学的酸化を有する部分に結合している活物質、
を備える、
ことを特徴とするレドックスフロー電池。
【0151】
[付記22]
レドックスフロー電池のための活物質であって、該活物質が、以下の式:
(D)-(L)-(A)-[(L)-(A)]-D (F1)又は、
(D)-(L)-(A)-(L-D) (F2)
を有し、
各DはLに共有結合し、各LはAに共有結合し、xは0〜5の数字であり、vは0〜5の数字であり、及びzは0又は1であり、Dは電子供与化合物であり、Lはリンカーであり、及びAは電子受容化合物であり、
各Dは、以下の構造(D1):
【化65】

を有し、
Xは、共有結合、硫黄原子(S)、SO、又はN−Rであり、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ニトリル基、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、アシル基、及びアシルオキシ基、アセチル基、ハロアセチル基、アルキルアリール基、アルコキシ基、アセトアミド基、アミド基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルスルホニル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロ基、ハロアセトアミド基、ハロアシル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリール基、アリールハロアルキル基、メチルスルホニルオキシル基、ニトロ基、アルキルエーテル基、ハロアルキルエーテル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基、又はアルキルホスホン酸基であり、
各Lは、2〜6の炭素原子を有するアルキル基、芳香族基、及び直接結合から選択され、及び、
各Aは、以下の構造(A1)又は(A2)又は(A3)又は(A4)又は(A5):
【化66】

又は
【化67】

又は
【化68】

又は
【化69】

又は
【化70】

を有し、
(A1)、(A2)、及び(A3)のそれぞれについて、
12及びR14は、それぞれフェニル基、水素原子、又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、R13及びR15は、それぞれ水素原子、又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、
11は、水素原子、アルキル基、アセチル基、アリール基、置換アリール基、又は以下の構造(P1)又は(P2):
【化71】

を有する基から選択され、
yは、0〜4の数字であり、R16〜R19は、それぞれフェニル基、水素原子、又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、R21、R22及びR24は、それぞれ、フェニル基、水素原子、又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、R20及びR23は、それぞれ、水素原子又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり、L2は、任意に第2のリンカーであり、
(A2)において、sは0〜2の数字であり、tは1〜6の数字であり、Bは水素、1〜6の炭素原子を有するアルキル基、又はアリール若しくは置換アリール基である、
ことを特徴とする活物質。
【0152】
[付記23]
XはSであり、R及びRは、それぞれt−ブチルであり、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素である、
ことを特徴とする付記22に記載の活物質。
【0153】
[付記24]
XはSOであり、R及びRは、それぞれt−ブチルであり、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素である、
ことを特徴とする付記22に記載の活物質。
【0154】
[付記25]
Xは共有結合であり、R及びRは、それぞれt−ブチルであり、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素である、
ことを特徴とする付記22に記載の活物質。
【0155】
[付記26]
(L)は、−CH−CH−CH−である、
ことを特徴とする付記22に記載の活物質。
【0156】
[付記27]
(L)はフェニルである、
ことを特徴とする付記22に記載の活物質。
【0157】
[付記28]
構造(A2)は、
【化72】

の構造(A6)として更に定義され、
(A)において、R25〜R36は、1〜4の炭素原子を有するアルキル基、アルキルエーテル基、アルキルアンモニウムアルキル基、オリゴエーテル基、フェニル基、及び水素から選ばれる、
ことを特徴とする付記27に記載の活物質。
【0158】
[付記29]
25〜R36は、それぞれ水素である、
ことを特徴とする付記28に記載のレドックスフロー電池。
図1