(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本開示の実施形態の概要を説明する。
【0012】
本開示の一実施形態による検査装置は、対象物に刻印された刻印文字を検査する検査装置であって、前記刻印文字を、それぞれ異なる方向から照明する第1照明装置および第2照明装置と、前記刻印文字を撮像する撮像装置と、前記第1照明装置、前記第2照明装置、および前記撮像装置を制御し、前記撮像装置によって取得された画像を処理する処理装置と、を備える。前記処理装置は、前記第1照明装置を点灯させた状態で前記撮像装置に第1画像を取得させ、前記第2照明装置を点灯させた状態で前記撮像装置に第2画像を取得させ、前記第1画像に対して、各画素の周囲の画素値のばらつきの程度を計算する空間フィルタを用いたフィルタリング処理を実行することにより、第1フィルタリング画像を生成し、前記第2画像に対して、前記フィルタリング処理を実行することにより、第2フィルタリング画像を生成し、前記第1フィルタリング画像および前記第2フィルタリング画像に基づいて、前記刻印文字の正常性を判定し、判定結果を示す信号を出力する。
【0013】
前記空間フィルタは、各画素の周囲の画素値の標準偏差を計算する標準偏差フィルタであり得る。前記空間フィルタは、各画素の周囲の画素値の分散を計算する分散フィルタであってもよい。
【0014】
前記処理装置は、前記第1フィルタリング画像および前記第2フィルタリング画像を合成した合成画像を生成し、前記合成画像に基づいて、前記刻印文字の正常性を判定してもよい。
【0015】
前記処理装置は、前記第1フィルタリング画像および前記第2フィルタリング画像から、画素ごとに最大の画素値を選択して構成した最大値画像を前記合成画像として生成してもよい。
【0016】
前記検査装置は、前記刻印文字を、前記第1照明装置および前記第2照明装置とは異なる方向から照明する第3照明装置をさらに備えていてもよい。前記処理装置は、前記第3照明装置を点灯させた状態で前記撮像装置に第3画像を取得させ、前記第3画像に対して、前記フィルタリング処理を実行することにより、第3フィルタリング画像を生成し、前記第1フィルタリング画像、前記第2フィルタリング画像、および前記第3フィルタリング画像に基づいて、前記刻印文字の正常性を判定してもよい。
【0017】
前記処理装置は、前記第1フィルタリング画像、前記第2フィルタリング画像、および前記第3フィルタリング画像を合成した合成画像を生成し、前記合成画像に基づいて、前記刻印文字の正常性を判定してもよい。
【0018】
前記処理装置は、前記第1フィルタリング画像、前記第2フィルタリング画像、および前記第3フィルタリング画像から、画素ごとに最大の画素値を選択して構成した最大値画像を前記合成画像として生成してもよい。
【0019】
前記第1照明装置は、前記刻印文字を正面上方から照射するように配置され得る。前記第2照明装置は、前記刻印文字を正面左方から照射するように配置され得る。前記第3照明装置は、前記刻印文字を正面右方から照射するように配置され得る。
【0020】
前記検査装置は、前記第1照明装置、第2照明装置、および第3照明装置とは異なる方向から前記刻印文字を照明する第4照明装置をさらに備えていてもよい。前記処理装置は、前記第4照明装置を点灯させた状態で前記撮像装置に第4画像を取得させ、前記第4画像に対して、前記フィルタリング処理を適用することにより、第4フィルタリング画像を生成し、前記第1フィルタリング画像、第2フィルタリング画像、第3フィルタリング画像、および第4フィルタリング画像に基づいて、前記刻印文字の正常性を判定してもよい。
【0021】
前記対象物は、塗布剤を封入したメタルチューブであり得る。前記刻印文字は、前記メタルチューブの折込部に刻印されていてもよい。
【0022】
前記検査装置は、前記メタルチューブを直立させた状態で保持するホルダを備えたコンベアをさらに備えていてもよい。
【0023】
本開示の他の実施形態による方法は、対象物に刻印された刻印文字を検査する方法である。前記方法は、前記刻印文字を、それぞれ異なる方向から照明する第1照明装置および第2照明装置と、前記刻印文字を撮像する撮像装置とを用いる。前記方法は、前記第1照明装置を点灯させた状態で前記撮像装置に第1画像を取得させるステップと、前記第2照明装置を点灯させた状態で前記撮像装置に第2画像を取得させるステップと、前記第1画像に対して、各画素の周囲の画素値のばらつきの程度を計算する空間フィルタを用いたフィルタリング処理を実行することにより、第1フィルタリング画像を生成するステップと、前記第2画像に対して、前記フィルタリング処理を実行することにより、第2フィルタリング画像を生成するステップと、前記第1フィルタリング画像および前記第2フィルタリング画像に基づいて、前記刻印文字の正常性を判定し、判定結果を示す信号を出力するステップと、
を含む。
【0024】
本開示のさらに他の実施形態による方法は、対象物に刻印された刻印文字を検査するための検査装置におけるコンピュータによって実行されるプログラムである。前記検査装置は、前記刻印文字を、それぞれ異なる方向から照明する第1照明装置および第2照明装置と、前記刻印文字を撮像する撮像装置とを備える。前記プログラムは、前記コンピュータに、前記第1照明装置を点灯させた状態で前記撮像装置に第1画像を取得させるステップと、前記第2照明装置を点灯させた状態で前記撮像装置に第2画像を取得させるステップと、前記第1画像に対して、各画素の周囲の画素値のばらつきの程度を計算する空間フィルタを用いたフィルタリング処理を実行することにより、第1フィルタリング画像を生成するステップと、前記第2画像に対して、前記フィルタリング処理を実行することにより、第2フィルタリング画像を生成するステップと、前記第1フィルタリング画像および前記第2フィルタリング画像に基づいて、前記刻印文字の正常性を判定し、判定結果を示す信号を出力するステップと、を実行させる。
【0025】
以下、本開示の実施形態をより具体的に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略することがある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略することがある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。本明細書においては、同一または類似の構成要素には、同一の参照符号を付している。なお、本願の図面に示される構造物の全体または一部分の形状および大きさは、現実の形状および大きさを制限するものではない。また、以下に説明する実施形態の構成を適宜組み合わせて、他の実施形態を構成してもよい。
【0026】
(実施形態)
図1は、本開示の例示的な実施形態による検査装置の構成を示すブロック図である。検査装置は、例えば塗布剤または接着剤などの半固形物の容器として用いられるメタルチューブなどの対象物に刻印された刻印文字を検査する用途で使用される。検査装置は、撮像ユニット100と、処理装置200と、表示装置300とを備える。撮像ユニット100は、第1照明装置111と、第2照明装置112と、第3照明装置113と、撮像装置120とを含む。処理装置200は、制御回路210と、信号処理回路220と、記憶装置230とを含む。制御回路210は、第1照明装置111、第2照明装置112、前記第3照明装置113、および撮像装置120に接続され、これらを制御する。信号処理回路220は、撮像装置120、制御回路210、記憶装置230、および表示装置300に接続されている。信号処理回路220は、制御回路210からの指示に応答して、撮像装置120から出力された画像信号(以下、単に「画像」と称することがある。)に基づく処理を行い、検査結果を示す信号を出力する。
【0027】
第1照明装置111、第2照明装置112、および第3照明装置113の各々は、例えばLED(Light Emitting Diode)または蛍光灯などの任意の光源を有する照明装置である。各照明装置111、112、113は、例えば白色光を出射する。各照明装置111、112、113から出射される光は白色光以外の光であってもよい。検査の目的に応じて、紫外線または赤外線を出射する照明装置を使用してもよい。照明装置111、112、113は、対象物を異なる方向から照射するように配置される。各照明装置111、112、113は、対象物での光の反射の影響を抑制するために、偏光板を備えていてもよい。各照明装置111、112、113は、制御回路210から入力される制御信号に応答して動作する。
【0028】
なお、本実施形態では3つの照明装置が用いられるが、照明装置の数は3つに限らず、2つ、または4つ以上であってもよい。照明装置の数が3つとは異なる例については後述する。
【0029】
撮像装置120は、CMOSまたはCCDなどのイメージセンサと、イメージセンサに像を形成する1つ以上のレンズを含む光学系とを備え得る。光学系は、対象物での光の反射の影響を抑制するために、偏光板を含んでいてもよい。撮像装置120は、制御回路210から入力された制御信号に応答して、撮像を行い、画像信号を出力する。本実施形態における撮像装置120は、モノクロ画像を取得するように構成されている。撮像装置120は、R、G、Bなどのカラー画像を取得するように構成されていてもよい。
【0030】
制御回路210は、各照明装置111、112、113、撮像装置120、および信号処理回路220を制御するコントローラである。制御回路210は、例えばMCU(Micro Controller Unit)などの、プロセッサとメモリとを含む集積回路であり得る。制御回路210は、記憶装置230に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、後述する制御動作を実行する。
【0031】
信号処理回路220は、撮像装置120から出力された画像信号に基づく画像処理により、対象物に刻印された刻印文字の正常性を検査する回路である。信号処理回路220は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing nit)、またはDSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサを備え得る。信号処理回路220のプロセッサは、
図5を参照して後述する画像処理により、刻印文字を鮮明に示す合成画像を生成し、合成画像に基づき、刻印文字が正しく刻印されているかを判定する。そして、刻印文字が正しく刻印されているかを示す信号を表示装置300に出力する。
【0032】
なお、制御回路210および信号処理回路220は、1つの回路として統合されていてもよい。また、制御回路210および信号処理回路220の各々が、複数の回路の集合体であってもよい。制御回路210および信号処理回路220が実行する動作の一部が、処理装置200の外部に設けられた他の処理装置によって実行されてもよい。そのような他の処理装置は、ネットワークを介して処理装置200に接続されたサーバなどのコンピュータであってもよい。
【0033】
記憶装置230は、半導体記憶媒体、磁気記憶媒体、または光学記憶媒体などの、1つ以上の記憶媒体を含む装置である。記憶装置230は、制御回路210および信号処理回路220によって実行されるコンピュータプログラム、および信号処理回路220が処理の過程で生成する画像データなどの各種のデータを記憶する。
【0034】
表示装置300は、例えば液晶またはOLED(Organic Light Emitting Diode)などの任意のディスプレイである。表示装置300は、信号処理回路220から出力された検査結果を示す信号に基づく画像を表示する。なお、表示装置300は検査装置の外部に設けられていてもよい。
【0035】
図2Aは、検査の対象物の一例であるメタルチューブ50を示す図である。メタルチューブ50は、例えば塗布剤(軟膏)または接着剤などの半固体物を封入する容器として用いられる。メタルチューブ50の典型例はアルミチューブであるが、材料はアルミニウムに限定されない。
図2Aに示すチューブ50は、キャップ51の反対側の先端に折込部52を有する。折込部52は、チューブ50の先端の折り畳まれた部分であり、先端の開口部から内容物が出てしまうことを防止する。折込部52には、例えば使用期限などを示す刻印文字53が形成されている。
【0036】
図2Bは、折込部52に形成された刻印文字53の一例を示す図である。この例では、チューブ50の折込部52の中央部に、使用期限を示す「2022.11」という文字(この例では数字)が刻印されている。使用期限に限らず、例えば製造番号などの、他の種類の文字が刻印されることもある。なお、刻印文字は、折込部52以外の位置に形成されていてもよい。本実施形態では、メタルチューブ50を対象物とするが、本開示の実施形態による検査装置は、メタルチューブ50以外の金属または非金属に刻印された文字の検査にも使用できる。
【0037】
第1照明装置111、第2照明装置112、および第3照明装置113は、対象物における刻印文字を、それぞれ異なる方向から照明するように配置される。例えば、第1照明装置111、第2照明装置112、および第3照明装置113は、それぞれ、刻印文字を、正面上方、正面左方、正面右方から照射するように配置され得る。
【0038】
図3Aおよび
図3Bは、第1照明装置111、第2照明装置112、第3照明装置113、および撮像装置120の配置の例を示している。
図3Aは、チューブ50における刻印文字が形成された面の裏側から見た照明装置111、112、113および撮像装置120の配置を示している。
図3Bは、チューブ50の側方側から見た照明装置111、112、113および撮像装置120の配置を示している。
【0039】
この例における検査装置は、チューブ50を倒立した状態で支持するホルダ60を備えている。ホルダ60は、凹部または開口部を有する。チューブ50のキャップの部分をホルダ60の凹部または開口部に差し込むことにより、チューブ50が倒立した状態で保持される。ホルダ60は、静止していてもよいし、コンベアなどの駆動装置によってホルダ60が移動するように構成されていてもよい。そのようなコンベアは、複数のホルダを備えていてもよい。複数のホルダを備えるコンベアを用いることにより、複数のチューブ50を連続して検査することができる。
【0040】
図3Aおよび
図3Bに示す例において、撮像装置120は、チューブ50における刻印文字が形成された面に正対するように配置されている。この例における照明装置111、112、113は、バー照明である。各照明装置は、バー照明に限らず、例えばリング照明などの他の種類の照明装置であってもよい。第1照明装置111は、刻印文字を正面上方から照射する位置に配置されている。第2照明装置112は、刻印文字を正面左方(
図3Aでは右側)から照射する位置に配置されている。第3照明装置113は、刻印文字を正面右方(
図3Aでは左側)から照射する位置に配置されている。このような配置により、刻印文字を異なる方向から照明した3種類の画像を取得し、それらの画像に基づいて高い精度で刻印文字を明瞭に示す合成画像を生成することができる。なお、照明装置111、112、113の配置は図示される配置に限定されない。例えば、照明装置111が、刻印文字を正面下方から照明するように配置されていてもよい。あるいは、斜め上方または斜め下方から刻印文字を照明する照明装置を用いてもよい。
【0041】
チューブ50に刻印された文字の色は背景色と同一であるため、コントラストが低く、従来の検査装置では刻印文字を正しく認識することが難しかった。そこで、本実施形態では、3つの照明装置を異なる位置に配置し、それらの照明装置の点灯を切り替えながら刻印文字を撮像することにより、3つの画像を取得する。それらの3つの画像のそれぞれに対して、各画素の周囲の画素領域のばらつきの度合いを計算するフィルタを用いたフィルタリング処理を行うことにより、3つのフィルタリング画像を生成する。それらの3つのフィルタリング画像から、刻印文字53を明瞭に示す合成画像を生成することができる。
【0042】
以下、本実施形態における処理装置200の動作をより詳細に説明する。
【0043】
本実施形態における制御回路210は、概略的には以下の動作を行う。
・第1照明装置111を点灯させ、撮像装置120に撮像を実行させて第1画像を出力させる。
・第2照明装置112を点灯させ、撮像装置120に撮像を実行させて第2画像を出力させる。
・第3照明装置113を点灯させ、撮像装置120に撮像を実行させて第3画像を出力させる。
【0044】
上記の動作の後、信号処理回路220が、以下の処理を行う。
・第1画像に対して、各画素の周囲の画素値のばらつきの程度を計算する空間フィルタを用いたフィルタリング処理を実行することにより、第1フィルタリング画像を生成する。
・第2画像に対して、上記フィルタリング処理を実行することにより、第2フィルタリング画像を生成する。
・第3画像に対して、上記フィルタリング処理を実行することにより、第3フィルタリング画像を生成する。
・第1フィルタリング画像、第2フィルタリング画像、および第3フィルタリング画像に基づいて、刻印文字の正常性を判定し、判定結果を示す信号を出力する。
【0045】
このような動作により、対象物に刻印文字が正しく形成されているかを高い精度で判定することができる。以下、制御回路210および信号処理回路220の動作をより具体的に説明する。
【0046】
図4は、制御回路210による動作を示すフローチャートである。本実施形態における制御回路210は、対象物の検査を行うとき、
図4に示すステップS110からS160の動作を実行する。
図4に示す動作は、
図3Aに示すようにメタルチューブ50の刻印文字が撮像装置120の正面に位置する状態で実行される。メタルチューブ50がコンベアによって移動する場合は、メタルチューブ50の刻印文字が撮像装置120の正面に位置するタイミングで、
図4に示す動作が実行される。
図4に示す動作の実行に許容される時間は、コンベアの移動速度に依存する。ある例において、
図4に示す動作は、0.5秒以内に実行される。コンベアが速い場合、
図4に示す動作は、例えば0.1秒以内に実行され得る。
【0047】
図4の例において、制御回路210は、まず、第1照明装置111を点灯させる(ステップS110)。次に、第1照明装置111が点灯している状態で、撮像装置120に撮像を実行させ、第1画像を生成させる(ステップS120)。第1画像は、記憶装置230に記録される。続いて、制御回路210は、第1照明装置111を消灯させ、第2照明装置112を点灯させる(ステップS130)。次に、第2照明装置112が点灯している状態で、撮像装置120に撮像を実行させ、第2画像を生成させる(ステップS140)。第2画像は、記憶装置230に記録される。続いて、制御回路210は、第2照明装置112を消灯させ、第3照明装置113を点灯させる(ステップS150)。次に、第3照明装置113が点灯している状態で、撮像装置120に撮像を実行させ、第3画像を生成させる(ステップS160)。第3画像は、記憶装置230に記録される。
【0048】
なお、第1照明装置111を用いた撮像(ステップS110およびS120)、第2照明装置112を用いた撮像(ステップS130およびS140)、および第3照明装置113を用いた撮像(ステップS150およびS160)の順序は、
図4に示す例に限定されない。これらの順序は、互いに入れ替わっていてもよい。
【0049】
図5は、信号処理回路220による処理の例を示すフローチャートである。
図4に示す動作が終了すると、制御回路210は、信号処理回路220に
図5に示すステップS210からS270の動作を実行させる。なお、
図5に示す動作は、
図4に示す動作の直後に行われてもよいし、複数の対象物の撮像が完了した後で行ってもよい。また、
図4に示す動作が終了する前であっても、
図5に示す処理のうち、撮像が完了した一部の画像についての処理を先行して行ってもよい。例えば、第2画像および第3画像の撮像が終了する前に、ステップS220における第1画像についてのフィルタリング処理を開始してもよい。
【0050】
図5の例において、信号処理回路220は、まず、
図4に示す動作によって記録された第1画像、第2画像、および第3画像を記憶装置230から取得する(ステップS210)。次に、第1、第2、第3画像に、標準偏差フィルタをそれぞれ適用することにより、第1、第2、第3フィルタリング画像を生成する(ステップS220)。このフィルタリング処理の前に、第1画像、第2画像、および第3画像のそれぞれから、刻印文字を含む領域のみを抽出する処理を行ってもよい。そのようにして抽出された領域の画像を、第1画像、第2画像、および第3画像として扱ってもよい。
【0051】
ここで、
図6を参照しながら、ステップS220の処理の具体例を説明する。
図6は、ステップS220におけるフィルタリング処理の一例を説明するための図である。
図6には、画像30と、標準偏差フィルタ32とが模式的に示されている。画像30は、上記の第1画像、第2画像、第3画像のいずれかであり、複数の画素を有する。画像30は、例えば10万から1000万程度の画素を有する。画像30の画素数はこの範囲に限定されず、任意に設定され得る。
【0052】
フィルタ32は、n行m列の線形フィルタである。nおよびmのそれぞれは、例えば3以上の奇数であり得る。
図6には、n=5、m=5の計25個の要素を含むフィルタ32が例示されている。フィルタ32の行数および列数は、図示される例に限定されない。例えば、n=3、m=3の計9個の要素を含むフィルタ、またはn=3、m=5の計15個の要素を含むフィルタが用いられてもよい。フィルタ32のサイズ(nおよびm)をユーザが設定できるようにしてもよい。例えば、信号処理回路220が、nおよびmをユーザが設定可能なユーザインターフェース(UI)を表示装置300に表示させてもよい。
【0053】
フィルタ32は、画像30におけるn行m列の画素領域内の標準偏差を計算し、計算した標準偏差の値を、その領域の中心画素の画素値に設定する演算を表す。ここで、
図6に示すように、フィルタ32が適用されるn×m個の画素領域におけるi番目(i=1,2,・・・,)の画素値をPiとする。当該画素領域内の標準偏差σは、例えば以下の数1に従って計算される。
【数1】
【0054】
ここで、Paは、当該画素領域内の画素値の平均値であり、以下の数2に従って計算される。
【数2】
【0055】
信号処理回路220は、上記の標準偏差σを計算し、その値を、当該画素領域内の中心画素(
図6の例ではP13)の画素値として設定する処理を行う。この処理を、画像30中の例えば左上の端から右方向にフィルタ32を走査しながら実行する。右端まで到達すると、次のn行に移動し、同様の動作を実行する。以後、n行ずつ改行しながら画像30の右下の端に到達するまで同様の動作を繰り返す。これにより、各画素が、その周囲のn行m列の領域の標準偏差の値を有する標準偏差画像を生成することができる。このような処理によって第1画像、第2画像、第3画像からそれぞれ生成した標準偏差画像を、上記の第1フィルタリング画像、第2フィルタリング画像、第3フィルタリング画像として用いることができる。
【0056】
なお、標準偏差フィルタに代えて、分散フィルタなどの他の種類の空間フィルタを用いて各フィルタリング画像を生成してもよい。各画素の周囲の画素値のばらつきの程度を計算する任意の空間フィルタを標準偏差フィルタの代わりに用いることができる。
【0058】
ステップS220の後、信号処理回路220は、第1、第2、第3フィルタリング画像から合成画像を生成する(ステップS230)。例えば、信号処理回路220は、第1、第2、第3フィルタリング画像における対応する画素の画素値から最大の画素値を選択する処理を画素ごとに実行することによって得られる最大値画像を合成画像として生成する。
【0059】
続いて、信号処理回路220は、合成画像から刻印文字を認識する(ステップS240)。刻印文字の認識には、例えばテンプレートマッチングなどのマッチング技術、またはニューラルネットワークを利用した機械学習などの任意の方法が用いられ得る。信号処理回路220は、認識した刻印文字が正しいか否かを判定する(ステップS250)。例えば、予め記憶装置230に記録された、正しい刻印文字を示す参照データと、認識した刻印文字とを照合し、刻印文字が正しく形成されているかを判定する。
【0060】
刻印文字が正しく形成されている場合、信号処理回路220は、刻印文字の検査が合格であることを示す信号を出力する(ステップS260)。例えば、信号処理回路220は、検査が合格であることを示す画像を表示装置300に表示させる制御信号を出力してもよい。あるいは、信号処理回路220は、光または音を発する装置に、検査が合格であることを示す光または音を発出させる制御信号を出力してもよい。
【0061】
刻印文字が正しく形成されていない場合、信号処理回路220は、刻印文字の検査が不合格であることを示す信号を出力する(ステップS270)。例えば、信号処理回路220は、検査が不合格であることを示す画像を表示装置に表示させる制御信号を出力してもよい。あるいは、信号処理回路220は、光または音を発する装置に、検査が不合格であることを示す光または音を発出させる制御信号を出力してもよい。対象物を移動させるコンベアが用いられる場合、信号処理回路220は、コンベアを停止させる制御信号を出力してもよい。
【0062】
以上の動作により、対象物に刻印文字が正常に形成されているか否かを高い精度で判定することができる。なお、複数の対象物について連続して刻印文字の検査が行われる場合、
図4および
図5に示す動作が対象物ごとに繰り返される。
【0063】
図7は、本実施形態における信号処理によって生成される画像の例を示す図である。
図7における(a1)は、第1照明装置111が点灯している状態で取得された第1画像の例を示している。(a2)は、第2照明装置112が点灯している状態で取得された第2画像の例を示している。(a3)は、第3照明装置113が点灯している状態で取得された第3画像の例を示している。(b1)は、第1画像に標準偏差フィルタを適用することによって生成された第1フィルタリング画像の例を示している。(b2)は、第2画像に標準偏差フィルタを適用することによって生成された第2フィルタリング画像の例を示している。(b3)は、第3画像に標準偏差フィルタを適用することによって生成された第3フィルタリング画像の例を示している。(c)は、第1フィルタリング画像、第2フィルタリング画像、および第3フィルタリング画像から、画素ごとに最大の画素値を選択することによって生成された合成画像の例を示している。なお、
図7において、(a1)、(a2)、(a3)と、(b1)、(b2)、(b3)、(c)とで、上下が逆転して示されている。
【0064】
図7の(a1)から(a3)に示すように、メタルチューブに刻印される文字は溝が浅く、一方向から刻印文字を照射した状態で取得される画像だけでは刻印文字を明瞭に識別することは難しい。(b1)から(b3)に示すように、本実施形態におけるフィルタリング処理により、刻印文字の輪郭が強調された画像が得られるが、それでも単独のフィルタリング画像だけでは、刻印文字を正しく認識することが難しい。そこで、本実施形態では、3つのフィルタリング画像から、画素ごとに最大画素値を選択する処理を行うことによって得られる最大値画像を合成画像として生成する。この処理により、
図7に示すように、それぞれのフィルタリング画像において途切れていた部分が繋がり、文字の認識が可能な明瞭な合成画像を生成することができる。
【0065】
信号処理回路220は、第1画像、第2画像、第3画像から、上記のフィルタリング処理を行わずに最大値画像を生成し、その最大値画像を検査に利用してもよい。実際のチューブの検査においては、刻印文字だけでなく、チューブの幅、特定のデザイン(文字、図形、記号など)の位置、および折込部の寸法なども同時に検査され得る。それらの検査においては、上記のフィルタリング処理を経ずに生成される画像を利用できる。
【0066】
図8Aから
図8Cは、それぞれ、上側から光で照射された刻印部を示す第1画像、上記のフィルタリング処理を伴わずに生成された最大値画像、および上記のフィルタリング処理を行った後に合成された最大値画像の例を示している。
図8Bに示す最大値画像は、
図7の(a1)から(a3)に示す3つの画像から、画素ごとに最大画素値を選択して生成された合成画像である。
図8Cに示す最大値画像は、
図7の(c)に示す画像が縮小された画像を示している。
図8Aおよび
図8Bに示す画像は、刻印文字の検査には適さないが、他の検査項目の検査には利用できる場合がある。例えば、チューブの幅、デザインの位置(例えば「製造番号」の文字の位置など)、および折込部の寸法は、
図8Aまたは
図8Bに示す画像から明瞭に認識され得る。したがって、信号処理回路220は、刻印文字以外の検査のために、
図8Aまたは
図8Bに示すような画像を併せて生成してもよい。
【0067】
図8Aまたは
図8Bに示すような画像のみに基づいて検査を行う従来の検査装置においては、チューブの幅、デザインの位置、および折込部の寸法は高い精度で検査できるが、刻印文字の検査の精度は低い。これは、刻印文字の色が背景色と同一であり、コントラストが低いからである。このため、従来は、刻印文字の有無を
図8Aまたは
図8Bに示すような画像に基づいて検査し、刻印文字が正しいか否かは検査員が目視で検査していた。これに対し、本実施形態におけるフィルタリング処理および合成処理によって生成された
図8Cのような画像を用いることにより、刻印文字の正常性の検査を自動で行うことが可能になる。これにより、目視による検査を省略でき、他の検査項目と同時に刻印文字を検査することが可能になる。結果として、検査時間の短縮、人件費の削減、および目視による検査ミスの可能性を低減することができる。
【0068】
(変形例)
本開示は上記の実施形態に限定されず、多様な変形が可能である。以下、上記の実施形態のいくつかの変形例を説明する。
【0069】
図9Aおよび
図9Bは、
図3Aおよび
図3Bに示す構成に加えて、第4照明装置114をさらに備える検査装置の例を示す図である。第4照明装置114は、第1照明装置111、第2照明装置112、および第3照明装置113とは異なる方向から刻印文字を照明する。この例における処理装置200の制御回路210は、第4照明装置114を点灯させた状態で撮像装置120に第4画像を取得させる。信号処理回路220は、第4画像に対して、上記のフィルタリング処理を適用することにより、第4フィルタリング画像を生成する。信号処理回路220は、第1から第4フィルタリング画像に基づいて、刻印文字の正常性を判定する。このように、検査装置は4つ以上の照明装置を備えていてもよい。照明装置の数が多いほど、上記のフィルタリング処理および合成処理によって生成される合成画像がより鮮明になり、刻印文字の検査の精度を向上させることができる。
【0070】
検査装置は、第1照明装置111、第2照明装置112、第3照明装置113、および撮像装置120を含む撮像ユニットを2つ以上備えていてもよい。そのような構成は、例えばメタルチューブなどの対象物の前面側と背面側とを同時に検査する用途で採用され得る。
【0071】
図10は、2つの撮像ユニット100を備える検査装置の構成例を示す図である。各撮像ユニット100は、第1照明装置111、第2照明装置112、第3照明装置113、および撮像装置120を備える。2つの撮像ユニット100の一方は対象物70の正面側に配置され、他方は対象物の背面側に配置されている。各撮像ユニット100の構成は、
図3Aおよび
図3Bに示す構成と同様である。各撮像ユニット100における照明装置111、112、113、および撮像装置120は、処理装置200に接続されている。処理装置200は、2つの撮像ユニット100を用いて前述の実施形態と同様の処理を実行し、対象物70の正面側と背面側の両方に形成された刻印文字を同時に検査することができる。
【0072】
図11は、検査装置のさらに他の例を示す斜視図である。この例における検査装置は、4つの撮像ユニット100と、検査の対象物であるメタルチューブを搬送するコンベア400とを備える。コンベア400は、同時に複数のメタルチューブを図の太い矢印の方向に搬送することができる。4つの撮像ユニット100のうちの2つは、1つのメタルチューブの前面側と背面側に配置され、残りの2つは、他のメタルチューブの前面側と背面側に配置される。
【0073】
コンベア400は、複数のホルダ60を備える。各ホルダ60は、メタルチューブのキャップを差し込むための開口部を有し、メタルチューブを直立(例えば倒立)した状態に保持する。コンベア40は、ホルダ60の開口部にキャップが差し込まれた複数のメタルチューブを、
図11における太い矢印の方向に搬送する。コンベア40は、搬送するための機構として、例えば1つ以上の電動モータを備え得る。
【0074】
この例における各撮像ユニット100における撮像装置120は、対象物であるメタルチューブに正対せず、ミラー130を介してメタルチューブからの反射光を受光する。第1照明装置111、第2照明装置112、第3照明装置113は、前述の実施形態と同様、メタルチューブに形成された刻印文字を、正面上方、正面左方、正面右方からそれぞれ照明する。
【0075】
図11の例においても、各照明装置111、112、113、および各撮像装置120は、処理装置200(
図1または
図10参照)によって制御される。これらの装置の制御方法については、前述の各実施形態における制御方法と同様である。処理装置200は、各撮像装置120によって取得された画像に基づいて、各メタルチューブの形状、寸法、デザインの位置などと共に、刻印文字を検査することができる。
【0076】
図11に示す構成によれば、同時に2つのメタルチューブの前面側と背面側とを検査することができる。このため、前述した高精度の刻印文字検査を含む検査を効率的に実施することができる。
【0077】
なお、検査の対象物は、塗布剤用のメタルチューブに限定されない。刻印文字が形成され得る任意の物品の検査に、上記の各実施形態における検査装置を適用することができる。
【0078】
以上の各実施形態では、検査装置が3つ以上の照明装置を備えるが、刻印された文字列によっては、照明装置が2つであってもよい。文字列の長さや縦横比、溝の深さ等によっては、2つの照明装置を用いた場合でも、上記のフィルタリング処理および合成処理により、刻印文字を鮮明に示す合成画像を生成することができる。以下、そのような構成の例を説明する。
【0079】
図12は、2つの照明装置(第1照明装置111および第2照明装置112)を備える検査装置の構成例を示す図である。
図13Aおよび
図13Bは、2つの照明装置111、112および撮像装置120の配置例を示す図である。本実施形態の構成は、第3照明装置113が設けられていない点を除けば、
図1、
図3A、および
図3Bに示す構成と同様である。第1照明装置111は、チューブ50の正面上方から刻印文字を照明する。第2照明装置112は、チューブ50の正面左方から刻印文字を照明する。このような配置に限定されず、照明装置111、112のそれぞれは、正面下方、正面左方、正面斜め上方、または正面斜め下方から刻印文字を照明するように配置されていてもよい。照明装置111、112の好ましい配置は、刻印文字の特性によって異なる。
【0080】
本実施形態のように、照明装置の数が2つである場合には、
図4および
図5における第3画像に関する処理は省略される。本実施形態では、制御回路210は、第1照明装置111を点灯させた状態で撮像装置120に第1画像を取得させ、第2照明装置112を点灯させた状態で撮像装置120に第2画像を取得させる。信号処理回路220は、第1画像および第2画像に対して、各画素の周囲の画素値のばらつきの程度を計算する空間フィルタ(例えば標準偏差フィルタ)を用いたフィルタリング処理をそれぞれ実行することにより、第1フィルタリング画像および第2フィルタリング画像をそれぞれ生成する。そして、第1フィルタリング画像および第2フィルタリング画像に基づいて、合成画像を生成する。本実施形態においても、前述したフィルタリング処理により、刻印文字を鮮明に示す合成画像を生成することができる。そのような鮮明な合成画像に基づき、刻印文字の正常性を高い精度で判定することができる。
【解決手段】検査装置は、対象物に刻印された刻印文字をそれぞれ異なる方向から照明する第1および第2の照明装置と、撮像装置と、処理装置とを備える。前記処理装置は、前記第1および第2の照明装置をそれぞれ点灯させた状態で前記撮像装置に第1および第2の画像を取得させ、前記第1および第2の画像に対して、各画素の周囲の画素値のばらつきの程度を計算する空間フィルタを用いたフィルタリング処理を実行することにより、第1および第2のフィルタリング画像をそれぞれ生成し、前記第1および第2のフィルタリング画像に基づいて、前記刻印文字の正常性を判定し、判定結果を示す信号を出力する。