(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6985774
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B22F 12/49 20210101AFI20211213BHJP
B22F 12/45 20210101ALI20211213BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20211213BHJP
B29C 64/277 20170101ALI20211213BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20211213BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20211213BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20211213BHJP
【FI】
B22F12/49
B22F12/45
B22F10/28
B29C64/277
B29C64/268
B29C64/153
B33Y30/00
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2021-117409(P2021-117409)
(22)【出願日】2021年7月15日
【審査請求日】2021年7月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146087
【氏名又は名称】株式会社松浦機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】天谷 浩一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光慶
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔太
【審査官】
▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】
特開2021−066922(JP,A)
【文献】
特開2021−066059(JP,A)
【文献】
特開2019−147369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F3/16,10/00−12/90
B29C64/00−64/40
B33Y10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末を走行を介してテーブル上に積層するスキージ、粉末層に対しレーザビーム又は電子ビームを走査するガルバノスキャナーを備えた三次元造形装置であって、ガルバノスキャナーは、ダイナミックフォーカスレンズを透過したレーザビーム又は電子ビームに対し、当該透過方向と直交する方向の回動中心軸を介して回動する第1ミラー及び第1ミラーの回動と独立した状態にて前記第1ミラーにおける回動中心軸の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸を介して回動する第2ミラーからの反射によって、レーザビーム又は電子ビームの直交座標を基準とする二次元方向の走査を実現しており、かつ複数個のガルバノスキャナーにおけるレーザビーム又は電子ビームの発振源から第1ミラーに至るまでの長手方向の領域を、テーブル面の中心位置を基準として、第1ミラーを収容している領域を先端側として、レーザビーム又は電子ビームの発振源を収容している領域よりも近い位置とした上で、前記中心位置の周囲にて所定の交差角度を形成するような放射状に設定し、前記先端側から前記長手方向と直交する方向に突設されている各第2ミラーが前記中心位置を両側から挟んだ状態にて向かい合い、かつ各第2ミラーを、水平方向に対して最小の傾斜角度を形成した際に隣り合う第2ミラーの両側の下端が水平方向に即して相互に近接し合う状態に設定し、かつ相互に向かい合う各第2ミラーの回動角度範囲につき、一方側の第2ミラーの水平方向に対して傾斜角度が最も小さい状態にて反射したレーザビーム又は電子ビームが、他方側の第2ミラーにおいて下端から当該レーザビーム又は電子ビームに最も近い状態の傾斜角度を形成した場合に、当該下端の近傍を通過するように設定することによって、前記中心位置を囲む空間をコンパクトな状態としており、各ダイナミックフォーカスレンズにおける焦点距離の調整によって、レーザビーム又は電子ビームの焦点位置又はその近傍にて焼結面を照射している三次元造形装置。
【請求項2】
前記中心位置に対し、第2ミラーの回動中心軸の中央位置を等距離にて配列していることを特徴とする請求項1記載の三次元造形装置。
【請求項3】
2個のガルバノスキャナーを採用し、かつ回動段階における第2ミラーの上端から下端に至る幅を50mmとした場合、各第2ミラーの回動中心軸の中央位置同士の距離の最小値が45mmであることを特徴とする請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項4】
2個、又は3個、又は4個、又は5個、又は6個のガルバノスキャナーが前記中心位置を基準として等角度に区分された状態にて配置されていることを特徴とする請求項2に記載の三次元造形装置。
【請求項5】
各ガルバノスキャナーの長手方向を、第1ミラーを収容している先端側を上側とするような傾斜状態に配置し、第1ミラーの回動中心軸を当該傾斜角度に即して傾斜し、かつ第1ミラーがレーザビーム又は電子ビームを水平方向に反射していることを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項6】
各ガルバノスキャナーにおける第2ミラーの突設方向を、上向きとするような傾斜状態に配置すると共に、第1ミラーの回動中心軸を当該傾斜角度に即して傾斜する方向に設定することによって、第1ミラーがレーザビーム又は電子ビームを上記傾斜する方向に反射していることを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項7】
請求項5記載の傾斜状態及び請求項6記載の傾斜状態の双方を採用し、かつ第1ミラーの回動中心軸を鉛直方向に設定していることを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項8】
各第2ミラーの反射の中心位置が、回動中心軸及びその近傍であり、かつ各第2ミラーの反射の領域が、回動段階における上端近傍及び下端近傍の範囲であることを特徴とする請求項1記載の三次元造形装置。
【請求項9】
2個のガルバノスキャナーを採用し、かつ回動段階における第2ミラーの上端から下端に至る幅を50mmとした場合、各第2ミラーの回動中心軸の中央位置同士の距離の最小値が32mmであることを特徴とする請求項8に記載の三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイナミックフォーカスレンズを透過して順次集束するレーザビーム又は電子ビームを、二次元方向に走査するガルバノスキャナーを複数個採用している三次元造形装置を対象としている。
【背景技術】
【0002】
テーブル面上に積層した粉末層5に対するレーザビーム又は電子ビームの照射によって焼結面を形成する三次元造形においては、焦点距離を調整し得るダイナミックフォーカスレンズを透過したレーザビーム又は電子ビームをガルバノスキャナーによって焼結面又はその近傍に集束するような走査(スキャニング)が行われている。
【0003】
前記走査を実現するガルバノスキャナーを、2個又は4個採用することによって効率的な走査を実現する三次元造形方法は、特許文献1記載の発明(以下「先願発明1」と称する。)として開示されている。
【0004】
しかも、先願発明1においては、水平方向にて向かい合う位置にある第2ミラーにおける反射位置の距離を150mm又は100mm以下とすることを要件としており、2個又は4個のガルバノスキャナーをコンパクトな配置とするような工夫が行われている。
【0005】
しかしながら、第2ミラーの相互間の反射位置の距離は第2ミラーの規格、具体的には、回動中心軸と直交する方向の幅によって左右される以上、全ての第2ミラーについて妥当する訳ではない。
【0006】
尤も上記数値要件は、技術常識として採用する全ての第2ミラーの場合に妥当するという趣旨かもしれないが、どうして技術常識として採用する全ての第2ミラーにつき、上記数値要件が成立するかの根拠につき、先願発明1は全く明らかにしていない。
【0007】
更には、第2ミラーは所定の傾斜角度の範囲にて、レーザビーム又は電子ビームを反射しているが、第2ミラー同士の反射位置の最大値は、前記幅だけでなく、前記傾斜角度の範囲によって左右される。
【0008】
然るに、先願発明1は、上記距離の最大値と傾斜角度との関係について全く明らかにしていない。
【0009】
しかも、ガルバノスキャナーのコンパクトな構成としては、前記距離の最小値が重視されねばならないにも拘らず、先願発明1においては、当該最小値につき全く説明していない。
【0010】
更には、先願発明1においては、テーブル面のスペースを有効に活用し得るような複数個のガルバノスキャナーの配置について格別の工夫が行われている訳ではない。
【0011】
現に、先願発明1の
図5、6、13を参照するも、2個のガルバノスキャナー22、42の長手方向、及び4個のガルバノスキャナー32、42、52、62は長手方向が何れも平行状態であって、二次元のテーブル面を有効に活用していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】日本国特許第6,793,806号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、複数個のガルバノスキャナーをテーブル面の中心位置を基準として可能な限りコンパクトな状態にて配置し得ると共に、テーブル面のスペースを有効に活用し得るような三次元造形装置の構成を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を達成するため、本発明の基本構成は、
(1) 粉末を走行を介してテーブル上に積層するスキージ、粉末層に対しレーザビーム又は電子ビームを走査するガルバノスキャナーを備えた三次元造形装置であって、ガルバノスキャナーは、ダイナミックフォーカスレンズを透過したレーザビーム又は電子ビームに対し、当該透過方向と直交する方向の回動中心軸を介して回動する第1ミラー及び第1ミラーの回動と独立した状態にて前記第1ミラーにおける回動中心軸の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸を介して回動する第2ミラーからの反射によって、レーザビーム又は電子ビームの直交座標を基準とする二次元方向の走査を実現しており、かつ複数個のガルバノスキャナーにおけるレーザビーム又は電子ビームの発振源から第1ミラーに至るまでの長手方向の領域を、テーブル面の中心位置を基準として、第1ミラーを収容している領域を先端側として、レーザビーム又は電子ビームの発振源を収容している領域よりも近い位置とした上で、前記中心位置の周囲にて所定の交差角度を形成するような放射状に設定し、前記先端側から前記長手方向と
直交する方向に突設されている各第2ミラーが前記中心位置を両側から挟んだ状態にて向かい合い、かつ各第2ミラーを、水平方向に対して最小の傾斜角度を形成した際に隣り合う第2ミラーの両側の下端が
水平方向に即して相互に近接し合う状態に設定し、かつ相互に向かい合う各第2ミラーの回動角度範囲につき、
一方側の第2ミラーの水平方向に対して傾斜角度が最も小さい状態にて反射したレーザビーム又は電子ビームが、他方側の第2ミラーにおいて下端から当該レーザビーム又は電子ビームに最も近い状態の傾斜角度を形成した場合に、当該下端の近傍を通過するように設定
することによって、前記中心位置を囲む空間をコンパクトな状態としており、各ダイナミックフォーカスレンズにおける焦点距離の調整によって、レーザビーム又は電子ビームの焦点位置又はその近傍にて焼結面を照射している三次元造形装置。
(2)前記中心位置に対し、第2ミラーの回動中心軸の中央位置を等距離にて配列していることを特徴とする基本構成(1)の三次元造形装置、
からなる。
【発明の効果】
【0015】
基本構成(1)においては、テーブル面の中心位置に対し、各ガルバノスキャナーにおける第2ミラーの回動中心軸の中央位置を
挟んだ状態にて向かい合うように配列した上で、各第2ミラーを、水平方向に対して最小の傾斜角度を形成した際に隣り合う第2ミラーの両側の下端が相互に近接し合う状態とすることによって、複数個のガルバノスキャナーが前記中心位置を囲んだ状態にある空間を極めてコンパクトに設定することができる。
【0016】
基本構成(1)のようなコンパクトな設定によって、複数個のガルバノスキャナーの協働の結果、均一な焼結状態が実現することが可能となる。
【0017】
しかも、基本構成(
1)のように、テーブル面に向かう前記一方側の第2ミラーの水平方向に対して傾斜角度が最も小さい状態にて反射したレーザビーム又は電子ビームが、前記他方側の第2ミラーにおいて下端から当該レーザビーム又は電子ビームに最も近い状態の傾斜角度を形成した場合に、当該下端の近傍を通過する構成
によってコンパクトな構成を更に徹底することができる。
【0018】
更には、複数個のガルバノスキャナーの長手方向の領域を前記中心位置の周囲にて放射状に設定することによって、二次元のテーブル面のスペースを有効に活用することができる。
【0019】
基本構成(
2)のように、各ガルバノスキャナーにおける第2ミラーの回動中心軸の中央位置を、等距離に配列することによって、前記のような均一な焼結状態を更に助長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】基本構成(1)、(2)に立脚している実施例の平面図であって、(a)は2個の場合を示し、(b)は3個の場合を示し、(c)は4個の場合を示し、(d)は5個の場合を示し、(e)は6個の場合を示す。 尚、各ガルバノスキャナーにおける構成要素の図示は省略しており、かつQは、第2ミラーの回動中心軸の中央位置を示す。
【
図2】基本構成(1)の構成
において、隣り合う第2ミラーの両側の下端が最小の傾斜角度を形成する際に、相互に水平方向に即して近接し合う状態を示しており、(a)は、平面図であって、(b)は、2個の場合に即した側面図である。
【
図3】基本構成(
1)
の構成において、一方側の第2ミラーの水平方向に対して傾斜角度が最も小さい状態にて反射したレーザビーム又は電子ビームが、他方側の第2ミラーにおいて下端から当該レーザビーム又は電子ビームに最も近い状態の傾斜角度を形成した場合に、当該下端の近傍を通過するような状態にあることを示す側面図である。
【
図4】基本構成(
2)の特徴点を示す平面図である。
【
図5】ガルバノスキャナーが水平方向に対し傾斜している実施形態を示す側面図であって、(a)は、長手方向が先端側に向かって傾斜している実施形態を示し、(b)は、第2ミラーの突設方向が上側に傾斜している実施形態を示し、(c)は、(a)の傾斜状態及び(b)の傾斜状態の双方を採用している実施形態を示す。 尚、
図5(a)における両側方向の矢印は、第1ミラーが上向きの傾斜方向に進行するレーザビーム又は電子ビームを水平方向に反射している状態を示す。
【
図6】各第2ミラーの反射位置が回動中心軸及びその近傍であり、かつ反射領域が上端及び下端の近傍の範囲内にあることを特徴とする実施形態に関する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
基本構成(1)は、
図2に示すように、粉末を走行を介してテーブル4上に積層するスキージ、当該粉末層5に対しレーザビーム又は電子ビーム7を走査するガルバノスキャナー3を備えた三次元造形装置であって、ガルバノスキャナー3は、ダイナミックフォーカスレンズ2を透過したレーザビーム又は電子ビーム7に対し、当該透過方向と直交する方向の回動中心軸30を介して回動する第1ミラー31及び第1ミラー31の回動と独立した状態にて前記第1ミラー31における回動中心軸30の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸30を介して回動する第2ミラー32からの反射によって、レーザビーム又は電子ビーム7の直交座標を基準とする二次元方向の走査を実現しており、かつ複数個のガルバノスキャナー3におけるレーザビーム又は電子ビーム7の発振源1から第1ミラー31に至るまでの長手方向の領域を、テーブル4の面の中心位置Pを基準として、第1ミラー31を収容している領域を先端側として、レーザビーム又は電子ビーム7の発振源1を収容している領域よりも近い位置とした上で、前記中心位置Pの周囲にて所定の交差角度を形成するような放射状に設定し、前記先端側から前記長手方向と
直交する方向に突設されている各第2ミラー32が前記中心位置Pを両側から挟んだ状態にて向かい合い、かつ各第2ミラー32を、水平方向に対して最小の傾斜角度を形成した際に隣り合う第2ミラー32の両側の下端が相互に近接し合う状態に設定し、かつ相互に向かい合う各第2ミラー32の回動角度範囲につき、
一方側の第2ミラー32の水平方向に対して傾斜角度が最も小さい状態にて反射したレーザビーム又は電子ビーム7が、他方側の第2ミラーにおいて下端から当該レーザビーム又は電子ビーム7に最も近い状態の傾斜角度を形成した場合に、当該下端の近傍を通過するように設定
することによって、前記中心位置を囲む空間をコンパクトな状態としており、各ダイナミックフォーカスレンズ2における焦点距離の調整によって、レーザビーム又は電子ビーム7の焦点位置又はその近傍にて焼結面6を照射している三次元造形装置である。
【0022】
基本構成(1)においては、各第2ミラー32が水平方向に対して最小の傾斜角度を形成する際に、隣り合う第2ミラー32の両側の下端が相互に近接し合う状態とすることによって、複数個のガルバノスキャナー3をコンパクトに配置し得ることについては、既に効果の項において説明したが、特に2個のガルバノスキャナー3の場合には、先願発明1に比し、更にコンパクトな配置を実現している。
【0023】
因みに、基本構成(1)においては、2個のガルバノスキャナー3を採用し、かつ回動段階における第2ミラー32の上端から下端に至る幅を50mmとした場合、各第2ミラー32の回動中心軸30の中央位置Q同士の距離が、最大値として、各第2ミラー32が水平方向である場合(実際にはそのような方向はあり得ないが)に、5mmの余裕幅を設定することによって、
50mm+5mm=55mm
を設定することができ、最小値については、実際の水平方向に対する傾斜角度の最小値が約34°であることを考慮し、
50mm×cos34°
≒50mm×0.829
≒41.5mm
であることから、3.5mmの余裕幅を設定することによって、45mmを設定することを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0024】
基本構成(1)においては、一方側の第2ミラー32から反射されたレーザビーム又は電子ビーム7が他方側の第2ミラー32の下側を通過するように設定しているが、このような要件は、一方側の第2ミラー32から反射したレーザビーム又は電子ビーム7が、他方側の第2ミラー32によって遮蔽されないために当然要請される要件に該当する。
【0025】
基本構成(
1)
においては、
図3に示すように、基本構成(1)において、前記回動角度範囲につき、前記一方側の第2ミラー32の水平方向に対して傾斜角度が最も小さい状態にて反射したレーザビーム又は電子ビーム7が、前記他方側の第2ミラー32において下端から当該レーザビーム又は電子ビーム7に最も近い状態の傾斜角度を形成した場合に、当該下端の近傍を通過するように設定していることを要件としており、このような要件によって、基本構成(1)のコンパクトな状態を更に徹底することができることについては、既に効果の項において指摘した通りである。
【0026】
基本構成(
1)
のように、下端の近傍を通過するという要件を充足する前記下端が中心位置Pに近い位置と合致するか否かは、具体的な設計状態によって左右され、常に中心位置Pに近い場合に前記レーザビーム又は電子ビーム7に最も近い形成状態を形成する訳ではない。
【0027】
基本構成(
2)は、
図4に示すように、前記中心位置Pに対し、第2ミラー32の回動中心軸30の中央位置Qを等距離にて配列していることを特徴としているが、このような特徴によって、基本構成(1)の均一な焼結状態を更に助長するという効果については、既に効果の項において指摘した通りである。
【0028】
複数個のガルバノスキャナー3の各第2ミラー32から反射されたレーザビーム又は電子ビーム7が粉末層5を照射し、かつ焼結面6を形成する際、各第2ミラー32の照射領域については、各ガルバノスキャナー3毎に区分されている実施形態及び各ガルバノスキャナー3による照射が重畳し合う実施形態の双方を採用することができる。
【0029】
区分による実施形態の場合には、迅速な焼結面6を形成し、重畳による実施形態の場合には、均一状態の焼結面6を形成することができる。
【0030】
図2においては、基本構成(1)のガルバノスキャナー3の長手方向が水平方向に配置されていることを示すが、基本構成(1)、(2)においては、各ガルバノスキャナー3を水平方向に設定することが要件とされる訳ではなく、各ガルバノスキャナー3を水平方向に対し傾斜した状態とすることができる。
【0031】
具体的に説明するに、
図5(a)に示すように、レーザビーム又は電子ビーム7の照射方向を前記中心位置Pに近づくにつれて上側とし、かつ長手方向につき、第1ミラー31が収容されている先端側を上側とするような傾斜状態に配置するような実施形態、及び
図5(b)に示すように、各ガルバノスキャナー3における第2ミラー32の突設方向を、上側に傾斜する方向に設定していることを特徴とする実施形態、更には
図5(c)に示すように、
図5(a)、
図5(b)の双方の特徴に立脚している実施形態を採用することができる。
【0032】
尚、
図5(a)に示す実施形態の場合には、上向きに傾斜したレーザビーム又は電子ビーム7と第1ミラー31とが水平方向に反射することを必要とすることから、当該
図5(a)に示すように、第1ミラー31の回動中心軸30については、上側に傾斜する方向に進行しているレーザビーム又は電子ビーム7を水平方向に反射するために、鉛直方向ではなく、
図5(a)に示すように当該方向に対し、当該傾斜角度に即して傾斜する方向に設定することを必要不可欠とする。
【0033】
図5(b)に示す実施形態においては、水平方向に直進し、かつレーザビーム又は電子ビーム7を第2ミラー32が突設された方向に即して上側に傾斜する方向に反射するためには、第1ミラー31の回動中心軸30については、鉛直方向ではなく、当該方向に対し
図5(b)に示すように、当該傾斜角度に即して傾斜する方向に設定することを必要不可欠とする。
【0034】
これに対し、
図5(a)及び
図5(b)の各特徴点の双方を発揮し得るような実施形態を採用した場合には、上側に傾斜する方向にて進行するレーザビーム又は電子ビーム7は鉛直方向に設定された回転中心軸30を有する第1ミラー31によって、第2ミラー32が突設されている方向の上向き方向に反射することが可能であることから、
図5(c)に示すように、
図5(a)、(b)に示すような傾斜方向に設定する必要はない。
【0035】
図5(c)に示す実施形態は、第1ミラー31の回動中心軸30の設定方法において最もシンプルである。
【0036】
このような傾斜状態に配置した場合には、水平方向の空間を節約することができ、テーブル4の面積が小さい場合であっても、各ガルバノスキャナー3による作動を実現することができる。
【0037】
前記各実施形態の場合には、第2ミラー32のテーブル4の面に対する位置が高くなるが、その結果、粉末層5に対する照射角度の変化状態が少ないことに帰する。
【0038】
一般に、三次元造形においては、第2ミラー32による照射の程度を均一状態とするために、第1ミラー31及び第2ミラー32の回動速度のコントロールが行われており、前記照射角度が小さいほど第1ミラー31及び第2ミラー32の回動速度を小さく設定している。
【0039】
但し、上記設定によるコントロールによって必ずしも均一な照射が保証される訳ではない。
【0040】
このような場合、前記実施形態の場合には、傾斜角度の変化状態が少ないことから、前記コントロールの精度を改良することができる。
【0041】
基本構成(1)、(2)においては、
図6に示すように、各第2ミラー32の反射の中心位置が、回動中心軸30及びその近傍であり、かつ各第2ミラー32の反射の領域が、回動段階における上端近傍及び下端近傍の範囲であることを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0042】
このような実施形態の場合には、回動中心軸30の幅を更に小さく設定することができ、たとえばレーザビーム又は電子ビーム7のスポット径が20mmの場合には、2個のガルバノスキャナー3を採用した場合には、前記幅を35mmとし、かつ第2ミラー32の回動軸30の中央位置Q間の距離については、既に説明したように、実際の水平方向に対する傾斜角度の最小値が約34°であることを考慮し、
35mm×cos34°
≒35mm×0.829
=29.0
であることから、3mmの余裕幅を考慮し、32mmに設定することも可能となる。
【0043】
基本構成(1)においては、焼結された三次元造形物の表面を切削する切削工具を必要不可欠としていないが、精緻な形状による三次元造形物を実現するために、切削工具を採用する場合が多い。
【実施例】
【0045】
実施例は、
図1(a)、(b)、(c)、(d)、(e)に示すように、基本構成(1)、(2)に立脚した上で、2個、又は3個、又は4個、又は5個、又は6個のガルバノスキャナー3が前記中心位置Pを基準として等角度に区分された状態にて配置されていることを特徴としている。
【0046】
このような特徴点によって、実施例においては、基本構成(1)の効果を現実に発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本願発明は、複数個のガルバノスキャナーをテーブル面の中心位置を基準として、極めてコンパクトな構成とテーブル面の有効な活用の双方を両立する一方、効率的な焼結面の形成に寄与することを可能とする点において画期的であり、その利用範囲は広範である。
【符号の説明】
【0048】
1 レーザビーム又は電子ビームの発振源
2 ダイナミックフォーカスレンズ
3 ガルバノスキャナー
30 回動中心軸
31 第1ミラー
32 第2ミラー
4 テーブル
5 粉末層
6 焼結面
7 レーザビーム又は電子ビーム
P テーブル面の中心位置
Q 基本構成(1)における回動中心軸30の中央位置
【要約】
【課題】複数個のガルバノスキャナーをコンパクトに配置し、テーブル面のスペースを有効に活用
する三次元造形装置の提供。
【解決手段】
複数個のガルバノスキャナー3において、レーザビーム又は電子ビーム7の発振源1を収容領域を後端側とし、第1ミラー31
の収容領域を先端側とする長手
方向領域を、テーブル4の面の中心位置Pの周囲にて放射状に設定し、先端側領域から突設された各第2ミラー32が中心位置P
の両側から向かい合い、各第2ミラー32が最小の傾斜角度を形成する際に隣り合う第2ミラー32の両側の下端が相互に近接し合う状態
とし、一方側の第2ミラー32の傾斜角度が最も小さい状態にて反射したレーザビーム又は電子ビーム7が、他方側の第2ミラーの下端近傍を通過し、ダイナミックフォーカスレンズ2の焦点調整によって、前記課題を達成する三次元造形装置。
【選択図】図
2