【文献】
梅原佳宏ほか,電子カルテを用いた医薬品の治療効果解析基盤に関する研究,情報処理学会 研究報告 データベースシステム(DBS) 2013−DBS−158 [online] ,日本,情報処理学会,2013年11月19日
【文献】
てんかん発作記録アプリ『nanacara(ナナカラ)』公式,[診察時に便利!nanacara for Doctor],Twitter[オンライン],2021年09月14日,[検索日 2021年9月30日],インターネット:<URL: https://twitter.com/nanacara5/status/1437732883104292868>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施形態の説明では、症状の種類がてんかん発作の種類である場合を例にして説明を行うが、開示の技術は、てんかん発作への適用に限定されるものでは決してない。症状の種類がてんかん発作の種類以外の場合(一例として、喘息発作の種類の場合)にも、開示の技術を適用することができることは、いうまでもない。
【0011】
<実施形態の概要>
例えばてんかんのような疾病においては、症状の種類として、発作の種類ないし型がある。具体的には、てんかん発作は、脳の一部分が興奮して生じる部分発作(焦点発作)と、脳の広い範囲が興奮して生じる全般発作に大別され、前者の部分発作には、単純部分発作及び複雑部分発作等の種類が、また後者の全般発作には、強直間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作等の種類がある。
【0012】
抗てんかん薬には様々なものがあり、前記の発作の種類の各々に対し、有効性を有する薬剤の選択肢が存在する。ただし、患者における薬剤の効果には個人差があり、患者が有する発作の種類に対して第一選択薬とされる薬剤が、当該患者には期待される効果を発揮せず、他の薬剤の選択肢を検討する必要が生じる場合がある。また、かかる個人差のため、発作の種類によっては、抗てんかん薬の服用が、発作の増悪をもたらす場合もある。例えば、患者のある発作の種類には優れた効果を発揮し、症状の発現状況としての発作の回数(頻度)を大きく減少させる薬剤が、同じ患者の別な発作の種類については、効果を発揮しないばかりか、むしろ発作を悪化させてしまう場合もあり得る。加えて、副作用の発生にも、個人差がある。
【0013】
このため、個々の患者が処方された薬剤を服用した際の、症状の発現状況(発作の回数等)の変化を表す情報を、医師が当該患者に対する薬剤の効果を把握しやすいように提示することにより、当該情報を薬剤による治療の評価又は改善等のために効果的に用いることを可能にすることが望まれる。そのとき、患者の症状の種類(例えば、前記の発作の種類)ごとに、前記の発現状況の変化を表す情報が把握しやすいように提示されることが、重要である。
【0014】
開示の技術の実施形態は、如上の背景を踏まえて構成されている。
【0015】
図1は、開示の技術の一実施形態における処理(S100)の例を示すフローチャートである。
当該実施形態においては、薬剤の名称及び投薬開始時を含む特定の患者への投薬に関する情報を取得し(S102)、症状の種類及び発現状況を含む前記患者の症状の発生に関する情報を取得し(S104)、前記薬剤の中から一又は複数の薬剤を選択する入力を受け取り(S106)、前記症状の種類の中から一又は複数の種類を選択する入力を受け取り(S108)、選択された前記薬剤ごと及び選択された前記症状の種類ごとに、前記投薬開始時の前後における前記発現状況の変化を表す情報を生成し(S110)、生成された前記発現状況の変化を表す情報を表示する(S112)処理が実行される。
【0016】
この実施形態によれば、患者の症状の種類(例えば、前記の発作の種類)ごとに、特定の薬剤の投薬開始時の前後における症状の発現状況(発作の回数等)の変化を表す情報が提示され、もって当該情報を前記薬剤による治療の評価又は改善等のために効果的に用いることが可能になる。特に、投薬開始時の前後における症状の発現状況の変化を表す情報が提示されることから、当該情報を見る医師等は、当該患者に対する薬剤の効果を把握することが容易となる。そして、当該情報は、選択された前記症状の種類ごとに生成され、表示されるため、医師等は、患者に対する薬剤の効果を、症状の種類ごとに容易に把握することができる。加えて、別な患者についても、同様に、投薬開始時の前後における症状の発現状況の変化を表す情報が提示されるため、医師等が、例えば担当する患者間で薬剤の効果を比較し検討することも、容易となる。
【0017】
ここで、症状の発現状況の変化を表す情報は、さらに具体的な実施形態の一例によれば、投薬開始時の前後における発作の回数に係る変化率についての情報であり、他の一例によれば、投薬開始時の前後における発作の継続時間に係る変化率についての情報である。かかる症状の発現状況の変化を表す情報は、時系列的に示す図又は表の形で表示され得る。
【0018】
また、実施形態の一例によれば、投薬に関する情報は、患者への薬剤の投与量に関する情報をさらに含み得る。かかる投与量に関する情報は、症状の発現状況の変化を表す情報とともに表示され得、あるいは、発現状況の変化を表す情報を補正するために用いられ得る。投与量に関する情報は、患者の体重に基づき正規化された情報であってもよい。投与量に関する情報が表示され又は用いられることにより、患者に対する薬剤の効果を、投与量を踏まえて把握し評価することが容易となる。このことは、患者に対する薬剤の投与量に変更が行われた場合、あるいは、異なる患者間で薬剤の効果を比較し検討する場合において、特に有用である。
【0019】
図2は、開示の技術の別な実施形態における処理(S200)の例を示すフローチャートである。
当該実施形態においては、薬剤の名称及び投薬開始時を含む複数の患者への投薬に関する情報を取得し(S202)、症状の種類及び発現状況を含む前記患者の症状の発生に関する情報を取得し(S204)、前記薬剤の中から一又は複数の薬剤を選択する入力を受け取り(S206)、前記症状の種類の中から一又は複数の種類を選択する入力を受け取り(S208)、前記患者の各々について、選択された前記薬剤ごと及び選択された前記症状の種類ごとに、前記投薬開始時の前後における前記発現状況の変化を表す情報を生成し(S210)、生成された前記発現状況の変化を表す情報又は前記発現状況の変化を表す情報に統計処理を施した情報を表示する(S212)処理が実行される。
【0020】
この実施形態によれば、複数の患者を対象として、患者の症状の種類(例えば、前記の発作の種類)ごとに、特定の薬剤の投薬開始時の前後における症状の発現状況(発作の回数等)の変化を表す情報又は発現状況の変化を表す情報に統計処理を施した情報が提示されるため、既述の利点に加え、症状の種類ごとに患者間で薬剤の効果を比較し検討することが一層容易となる、統計処理が施された情報により薬剤の効果の一般的傾向が示されやすくなるといった利点も得られる。
【0021】
以下、さらに図面を参照しながら、開示の実施形態の詳細について説明する。
本明細書及び図面に開示された動作フローの各ステップは、矛盾のない限り順番を入れ換えて実行されてもよい。また、複数のステップが同時に実行されてもよい。各ステップは、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現されてもよい。また各ステップの一部は、オペレーティングシステムあるいはハードウェアにより実現されてもよい。
以下の実施形態は、プログラムの発明、方法の発明、プログラムが処理を実行させるコンピュータからなる装置の発明、及びプログラムを記録した記憶媒体の発明などのカテゴリとして把握され得る。
なお、「実施形態のプログラム又は方法」を、適宜、「実施形態のプログラム」と省略して記す。
【0022】
<患者への投薬に関する情報を取得する処理>
図3は、前記ステップS102又はS202における、患者への投薬に関する情報を取得する処理について、さらなる実施形態の例(サブルーチンであるS300)を示すフローチャートである。
実施形態のプログラムは、ステップS302において、患者を選択する入力を受け取る処理をコンピュータに実行させる。ここで、患者は、特定の一又は複数の患者であり得る。このステップS302が、
図2に示される実施形態のプログラムのサブルーチンの一部である場合において、選択される複数の患者は、患者群であり得る。なお、例えば、プログラムのユーザ(例えば医師)が他のプログラム(例えば電子カルテ)を並行して使用しており、当該他のプログラムにおいて既に特定の患者が選択されているような場合には、その患者の選択を実施形態のプログラムが受け取ることにより、ステップS302において改めて患者を選択する入力を受け取る必要をなくすこともできる。
【0023】
実施形態のプログラムは、ステップS304において、患者への投薬に関する情報が格納されている投薬データベースにアクセスする処理をコンピュータに実行させる。
その投薬データベースは、当該コンピュータの一部をなしていてもよいが、当該コンピュータの外部にあって、インターネットその他のネットワークを介して当該コンピュータからアクセスする態様であってもよい。
なお、以下の説明において、「処理をコンピュータに実行させる」との文言は、適宜省略する。
【0024】
ステップS306において、プログラムは、特定の一又は複数の患者に投与された薬剤の名称を取得する。
続くステップS308において、プログラムは、患者に投与された薬剤の投薬開始時の情報を取得する。ここで、「投薬開始時」は、日単位の投薬開始日であってもよい。なお、ある薬剤が患者に投与された後に、中断された期間があり、その後に投与が再開された場合のように、投薬開始時に該当し得る時点が複数あるときには、プログラムは、それら複数の投薬開始時の情報を投薬データベースから取得したうえで、ユーザ(医師等)に提示し、投薬開始時の前後における症状の発現状況の変化を表す情報を生成する際に用いる「投薬開始時」を選択する入力を受け取るようにしてもよい。
【0025】
ステップS310では、プログラムは、患者に投与された薬剤の投与量に関する情報を取得する。ここで、「投与量」は、薬剤自体の量(製剤量)でも、主成分の量でもあり得、またその単位は、適切なものである限り、いかなる単位であってもよい。そして、投与量に関する情報は、患者の体重に基づき正規化された情報であり得る。その場合において、投薬データベースに患者の体重に基づき正規化された情報が格納されており、プログラムが当該情報を取得するようにしてもよく、あるいは、プログラムが投薬データベースから投与量の情報及び患者の体重の情報を取得し、その後に投与量を患者の体重に基づき正規化するようにしてもよい。
【0026】
ステップS312では、プログラムは、患者に投与された薬剤の、当該患者への副作用に関する情報を取得する。ここで、副作用に関する情報は、医師又は医療関係者が患者の診察時等に入力し、投薬データベースに格納されている情報であってよい。あるいは、
図7に関連して後述するように、患者又はその介助者は、当該患者の体調等に関する情報を、携帯端末を介して、随時、入力するようにし得るところ、患者又はその介助者が入力した情報であって、副作用によるものである可能性があるものは、その内容が副作用に係る情報として投薬データベースに格納されるようにしてもよい。この場合において、患者等による入力に基づく情報であることを示すフラグが、当該情報に付されるようにしてもよい。
以上で、サブルーチンであるS300の処理は終了する。
【0027】
<患者の症状の発生に関する情報を取得する処理>
図4は、前記ステップS104又はS204における、患者の症状の発生に関する情報を取得する処理について、さらなる実施形態の例(サブルーチンであるS400)を示すフローチャートである。
実施形態のプログラムは、ステップS402において、患者の症状の発生に関する情報が格納されている症状データベースにアクセスする。
その症状データベースは、投薬データベース同様、実施形態のプログラムが処理を実行させるコンピュータの一部をなしていてもよいが、当該コンピュータの外部にあって、インターネットその他のネットワークを介して当該コンピュータからアクセスする態様であってもよい。また、投薬データベースと症状データベースとが分離されておらず、統合されたデータベースとして存在していてもよいことは、もちろんである。
【0028】
ステップS404において、プログラムは、特定の一又は複数の患者の症状の種類を取得する。ここで、「症状の種類」の例は、患者に発現した発作の種類である。
続くステップS406において、プログラムは、患者の症状の発現状況の情報を取得する。ここで、「症状の発現状況」の例は、発作の回数に係る情報であり、別な例は、発作の継続時間に係る情報である。
例えば、
図7に関連して後述するように、患者又はその介助者は、当該患者の症状の発生に関する情報を、携帯端末を介して、随時、入力する。その情報に基づき、症状データベースには、患者ごとに、日々、どの種類の発作が何回発現したかについての情報が蓄積されており、プログラムは、当該情報を取得する。あるいは、症状データベースには、前記携帯端末を介した入力に基づき、患者ごとに、発作が発現するたびに、当該発作はどの種類の発作であって、どれだけの時間、継続したかについての情報が蓄積されていく。その結果、症状データベースには、患者ごとに、日々、各々の発作の種類について発作の継続時間の総和の情報が蓄積されていて、プログラムは、当該情報を取得する。
【0029】
続くステップS408〜S414では、プログラムは、取得された症状の種類について、適当な場合に用語を変換する処理をコンピュータに実行させる。
その背景は、次のとおりである。症状データベースに蓄積されている発作の種類等の症状の種類は、患者又はその介助者が携帯端末を介して入力した情報に基づくものであり得る。このため、蓄積された症状の種類の中には、医学用語に基づき記述されていないものがあり得る。そのような、症状の種類についての、いわば標準化されていない記述をそのままにしておくと、後の処理において、症状の種類ごとに投薬開始時の前後における症状の発現状況の変化を表す情報を生成する際に、適切な情報の生成ができないことがあり得る。そこで、実施形態のプログラムにあっては、取得された症状の種類が医学用語に基づき記述されていない場合に、かかる症状の種類の記述を医学用語に基づく記述に変換する処理が実行されるようにしている。
【0030】
ステップS408〜S414に示される実施形態の一例では、取得された症状の種類のそれぞれについて、それらステップが実行されることにより、あらかじめ用意され、随時更新され得る、医学用語変換テーブルを用いた変換が行われる。
ステップS408では、取得された症状の種類が医学用語に基づき記述されたものか否かの判断が行われる。その判断は、例えば、取得された症状の種類を、あらかじめ用意された、症状の種類に関連した医学用語の一覧(医学用語変換テーブル中の医学用語を用いてもよい。)と対照することにより、行うことができる。
【0031】
ステップS408での判断の結果がNOである場合、すなわち取得された症状の種類が医学用語に基づき記述されたものではないとの判断がなされた場合には、ステップS410において、取得された症状の種類が医学用語変換テーブルにより変換可能であるか否かの判断が行われる。ここで、医学用語変換テーブルは、医学用語に基づき記述されていない症状の種類を、それに対応する医学用語に基づき記述された症状の種類と対照させた表であり、実施形態のプログラムが処理を実行させるコンピュータの一部又は当該コンピュータの外部に用意されていて、随時更新され得るものである。そのステップS410での判断の結果がYESである場合には、取得された症状の種類が、医学用語変換テーブルにより、医学用語に基づく記述に変換される。
【0032】
ステップS410での判断の結果がNOである場合、すなわち取得された症状の種類が医学用語変換テーブルにより変換可能ではないとの判断がなされた場合には、ステップS414において、取得された症状の種類に、医学用語に基づき記述されていないことを示すフラグの付与が行われる。これにより、例えば、
図8及び
図10に例示する患者情報の表示画面、あるいは、
図9、
図11、及び
図12に例示する「発作変化率グラフ」の表示画面における「発作種類γ*」のように、症状の種類がフラグ(この場合「*」)付きで表示され得る。そのため、当該表示を見る医師等の者は、その症状の種類が、いわば標準化されていない記述によるものであることを容易に確認することができる。この場合、当該医師等は、例えば、「発作種類γ*」及び対応する医学用語に基づき記述された発作種類を、医学用語変換テーブルに加えるように、同テーブルを更新させることができ、そのうえで、必要に応じて、全体の処理をやり直すこともできる。
【0033】
ステップS408〜S414の処理は、取得された症状の種類のすべてについて繰り返される。
なお、実施形態のプログラムは、ステップS408〜S414の処理を含まないように簡略化されたものであってもよい。また、当該プログラムは、ステップS408〜S414の一部の処理(例えば、医学用語変換テーブルを用いる処理であるステップS410及びS412の処理)を含まないように簡略化されたものであってもよい。
以上で、サブルーチンであるS400の処理は終了する。
【0034】
<投薬開始時の前後における症状の発現状況の変化を表す情報を生成する処理>
図5は、前記ステップS110又はS210における、投薬開始時の前後における症状の発現状況の変化を表す情報を生成する処理について、さらなる実施形態の例(サブルーチンであるS500)を示すフローチャートである。
実施形態のプログラムは、ステップS502において、投薬開始時の前の評価対象期間、投薬開始時の後の評価対象期間、及び投薬開始時の後の評価対象期間の単位区分を取得する処理をコンピュータに実行させる。ここで、投薬開始時の前の評価対象期間は、その間の症状発現状況を投薬開始時の後の評価対象期間の単位区分における症状発現状況と比較する、比較対照のための期間である(以下、「観察期間」ということがある。)。当該期間は、通常、投薬開始時を基準にして、その直近の期間(例えば30日間)である。投薬開始時の後の評価対象期間は、症状の発現状況の変化を表す情報を生成し表示する対象の期間である(以下、「総評価期間」ということがある。)。当該期間は、通常、投薬開始時を基準にして、その投薬開始時からの期間である。当該期間の中の単位区分が、投薬開始時の後の評価対象期間の単位区分であって(以下、「評価単位」ということがある。)、当該単位区分は、通常、比較の容易化のため、投薬開始時の前の評価対象期間と同じ長さ(例えば30日間)を有する。投薬開始時の後の評価対象期間は、通常、その単位区分の長さの倍数にあたる長さ(例えば360日間)を有する。
【0035】
プログラムは、それらの、投薬開始時の前の評価対象期間、投薬開始時の後の評価対象期間、及び投薬開始時の後の評価対象期間の単位区分について、既定値を有していてもよい。その場合において、プログラムは、例えば、ユーザに対して既定値を、確認入力又は変更入力が可能であるように提示してもよい。
【0036】
続くステップS504では、プログラムは、選択された薬剤ごと及び選択された症状の種類ごとに、投薬開始時の前後における症状の発現状況の変化を表す情報を生成する。ステップS302において複数の患者が選択されている場合には、プログラムは、それら患者の各々について、選択された薬剤ごと及び選択された症状の種類ごとに、投薬開始時の前後における症状の発現状況の変化を表す情報を生成する。
症状の種類が発作の種類である場合、症状の発現状況は、発作の回数に係る情報又は発作の継続時間に係る情報を含むものであってよい。
【0037】
かかる症状の発現状況の変化を表す情報の生成は、実施形態の一つによれば、投薬開始時の前後における発作の回数に係る変化率についての情報を生成することにより、行うことができる。
その発作の回数に係る変化率は、投薬開始時の後の評価対象期間の各単位区分に対して、次式により算出することができる。
Rsf=(SFa−SFb)/SFb
Rsf:発作の回数に係る変化率
SFb:前記投薬開始時の前の評価対象期間における発作の回数
SFa:前記投薬開始時の後の評価対象期間の単位区分における発作の回数
【0038】
当該式において、ある症状の種類(発作種類)に対し、SFb、すなわち投薬開始時の前の評価対象期間における発作の回数が「0」である場合には、実施形態のプログラムは、次のような処理をコンピュータに実行させることができる。例えば、プログラムは、当該回数が0であることを示すフラグを生成することができる。また、プログラムは、変化率(Rsf)として、識別可能な所定の値を生成することもできる。そのような所定の値の例は、投薬開始時の後の評価対象期間の各単位区分に対して「0」、あるいは「100%」である。さらに、プログラムは、ユーザに対して表示するメッセージを生成することができる。そのようなメッセージの一例は、「観察期間の発作回数が0回のため、発作変化率を計算することができません(患者:a,薬剤:A,投薬開始日;日付A,観察期間:・・・−・・・,発作種類:α)。」。
【0039】
別な実施形態の一つによれば、症状の発現状況の変化を表す情報の生成は、投薬開始時の前後における発作の継続時間に係る変化率についての情報を生成することにより、行うことができる。
その発作の継続時間に係る変化率は、投薬開始時の後の評価対象期間の各単位区分に対して、次式により算出することができる。
Rsd=(SDa−SDb)/SDb
Rsd:発作の継続時間に係る変化率
SDb:前記投薬開始時の前の評価対象期間における発作の継続時間の総和
SDa:前記投薬開始時の後の評価対象期間の単位区分における発作の継続時間の総和
【0040】
当該式において、ある症状の種類(発作種類)に対し、SDb、すなわち投薬開始時の前の評価対象期間における発作の継続時間の総和が「0」である場合には、実施形態のプログラムは、先にSFb、すなわち投薬開始時の前の評価対象期間における発作の回数が「0」である場合について説明したのと同様の処理をコンピュータに実行させることができる。
【0041】
続くステップS506では、実施形態のプログラムは、患者への薬剤の投与量に関する情報に基づき症状の発現状況の変化を表す情報を補正する処理をコンピュータに実行させる。プログラムは、補正前の情報及び補正後の情報の双方をコンピュータに保持させる。
【0042】
補正は、ステップS310において取得された、患者に投与された薬剤の投与量に関する情報を用いて、当該薬剤に適した方法で実行することができる。
例えば、症状の発現状況の変化を表す情報が、投薬開始時の前後における発作の回数に係る変化率(Rsf)である場合において、当該変化率に投与量に基づく補正係数を乗じた値を、補正された変化率としてもよい。すなわち、次式のとおりである。
Rsf’=C・Rsf
Rsf’:投与量に基づき補正された発作の回数に係る変化率
C:投与量に基づく補正係数
その際、補正係数Cは、一例として、Dn/Dpの関数の形であらかじめ定めておくことができる。ここで、
Dn:体重に基づき正規化された標準投与量
Dp:体重に基づき正規化された患者への投与量
である。関数は、数式の形態で用意される必要はなく、表(テーブル)形式で用意されていてもよい。
【0043】
実施形態のプログラムは、ステップS506での補正に関連して、どのような補正が行われたかをプログラムのユーザ(医師等)が認識することができるようにするための情報を、生成することができる。
例えば、プログラムは、投薬開始時の後の評価対象期間の各単位区分に対して適用された前記補正係数Cを、後述のサブルーチンS600の実行時に表示可能に、表(テーブル)形式でコンピュータに保持させることができる。
また、プログラムは、次式により定義される、補正された発作の回数SFa’を、後述のサブルーチンS600の実行時に表示可能に、投薬開始時の後の評価対象期間の各単位区分に対して生成してもよい。
Rsf’=(SFa’−SFb)/SFb
SFa’: 投与量に基づき補正された、前記投薬開始時の後の評価対象期間の単位区分における発作の回数
このSFa’は、前記補正係数Cを用いると、次のように表すこともできる。
SFa’= Rsf’・SFb+SFb=C・Rsf・SFb+SFb
=C(SFa−SFb)+SFb
以上で、サブルーチンであるS500の処理は終了する。
【0044】
<症状の発現状況の変化を表す情報等を表示する処理>
図6は、前記ステップS112又はS212における、症状の発現状況の変化を表す情報(又は症状の発現状況の変化を表す情報に統計処理を施した情報)を表示する処理について、さらなる実施形態の例(サブルーチンであるS600)を示すフローチャートである。
実施形態のプログラムは、ステップS602において、ステップS504及びS506にて生成された症状の発現状況の変化を表す情報を、ユーザ(医師等)が患者に対する薬剤の効果を把握しやすいように、時系列的に示す図又は表を表示する。このステップS602が、
図2に示される実施形態のプログラムのサブルーチンの一部である場合においては、症状の発現状況の変化を表す情報に統計処理を施した情報も、併せて表示され得る。そのような統計処理は、患者群について、患者ごとの症状の発現状況の変化を表す情報を平均する処理(例えば、患者ごとの発作の回数に係る変化率の平均値を算出する処理)であり得る。
【0045】
また、実施形態のプログラムは、ステップS506での補正に関連して、どのような補正が行われたかをプログラムのユーザ(医師等)が認識することができるようにするための情報を、表示することができる。例えば、プログラムは、投薬開始時の後の評価対象期間の各単位区分に対して適用された前記補正係数Cを、表(テーブル)形式で表示させることができる。あるいは、プログラムは、補正された発作の回数である前記SFa’を、投薬開始時の後の評価対象期間の各単位区分に対して表示させるようにしてもよい。
【0046】
実施形態のプログラムは、続くステップS604において、患者への投薬に関する情報に含まれる情報を時系列的に示す図又は表を表示する。その投薬に関する情報に含まれる情報には、例えば、ステップS306〜S310にて取得された、薬剤の名称、投薬開始日、及び投与量に関する情報がある。さらに、ステップS312にて取得された、患者への副作用に関する情報も、図又は表の中に、あるいはそれら以外の形で、表示され得る。こうした投薬に関する情報の表示により、ユーザ(医師等)は、患者に対する薬剤の効果を把握することが一層容易となる。
以上で、サブルーチンであるS600の処理は終了する。
【0047】
<症状の発生に関する情報を入力し得る携帯端末>
図7は、患者又は介助者が患者の症状の発生に関する情報を入力し得る、携帯端末700の画面の例を示す図である。
携帯端末700は、ネットワーク及び図示しないサーバを介して、実施形態のプログラムが処理を実行させるコンピュータと接続されている。当該コンピュータ及び携帯端末700は、サーバからネットワークを介して種々の情報を取得し得る。当該コンピュータ及び携帯端末700が受け取り得る情報には、気象に関する情報(例えば、気圧及び気温に関する情報)が含まれる。サーバには、情報を記憶するクラウドストレージ機能が存在してもよい。
携帯端末700において入力された情報は、ネットワーク及びサーバを介して、実施形態のプログラムが処理を実行させるコンピュータ、さらには当該プログラムのユーザ(医師等)が使用する端末装置に伝達され得る。
実施形態のプログラムが処理を実行させるコンピュータが、携帯端末700がネットワークを介して接続されるサーバであってもよい。その場合、実施形態のプログラムのユーザ(医師等)が自身の使用する端末装置から当該サーバにアクセスするようにしてよい。
【0048】
既述のとおり、患者又はその介助者は、当該患者の症状の発生に関する情報を、携帯端末700を介して、随時、入力する。その情報に基づき、症状データベースには、患者ごとに、日々、どの種類の発作が何回発現したかについての情報が蓄積されており、実施形態のプログラムは、サブルーチンS400において当該情報を取得する。あるいは、症状データベースには、携帯端末700を介した入力に基づき、患者ごとに、発作が発現するたびに、当該発作はどの種類の発作であって、どれだけの時間、継続したかについての情報が蓄積されていく。その結果、症状データベースには、患者ごとに、日々、各々の発作の種類について発作の継続時間の総和の情報が蓄積されていて、実施形態のプログラムは、サブルーチンS400において当該情報を取得する。
【0049】
携帯端末700の画面上の領域710には、年月日及び曜日が、カレンダー形式で表示されている。その年月日及び曜日は、初期状態では画面表示がなされている現在の年月日及び曜日であるが、携帯端末700の操作者は、過去の年月日あるいは現在の年月日の過去の時刻における発作種類の入力又は体調等の入力を行う際には、領域710のタップ操作により、過去の年月日あるいは現在の年月日における記録を呼び出して入力を行うことができる。
【0050】
携帯端末700の画面上の領域720は、てんかん発作の発生(症状の発現)に対応した入力を行うことができる領域である。図示の形態では、「発作発生」、「発作終了」、及び「発作なし」のボタンが選択可能に現れている。該当の患者にてんかん発作が発生し、携帯端末700の操作者が「発作発生」ボタンをタッチすると、その時の日時が携帯端末より取得され、発作が発生したという入力の内容が、当該日時の情報と関連付けられて記憶され、蓄積されていく。
【0051】
ここで、領域720内のボタンへのタッチ操作に応じて、種々の情報が取得され得る。例えば、「発作発生」を示す入力及び取得された日時の情報の蓄積から、特定の日における発作発生の回数が得られる。また、「発作終了」ボタンがタッチされた時刻が、発作終了時刻として、記録され得る。発作終了時刻の代わりに、あるいは発作終了時刻と併せて、発作継続時間が記憶され得る。
【0052】
「発作発生」ボタンがタッチされた時刻が、発作発生時刻として記録され得る結果、実施形態のプログラムは、処理を実行させるコンピュータに、前記サーバからネットワークを介して患者の症状の発生に関連した気象に関する情報を取得する処理を実行させることができる。そのような症状の発生に関連した気象に関する情報としては、例えば、発作発生時の気圧や気温に関する情報、あるいは発作発生直前の所定期間における気圧の変化に関する情報がある。これにより、実施形態のプログラムは、かかる気象に関する情報に基づく情報を表示する処理をコンピュータに実行させることができる。プログラムのユーザ(医師等)は、そうした表示を見ることにより、症状の種類ごとに、気象と患者の症状の発現状況との相関の有無及び程度について知見を得ることが可能となり、症状の発現の予測、予防、抑制等に資することもできる。
【0053】
さらに、「発作発生」ボタンがタッチされたとき、「撮影開始」ボタンが表示されるようにし、携帯端末700の操作者が当該ボタンをタッチすることによって、患者の動画の撮影が開始されるようにすることができる。「発作発生」ボタンがタッチされたときに、直ちに動画の撮影が開始されるようにしてもよい。
【0054】
携帯端末700の画面上の領域730は、症状の種類としての、てんかん発作の種類ないし型に対応した入力を行うことができる領域である。図示の形態では、「種類α」、「種類β」などのボタンが選択可能に現れている。前記「発作発生」ボタンのタッチ操作に続いて領域730のボタンをタッチ操作することにより、発作発生時刻等の情報と発作種類とが結び付けられて記憶される。なお、全項目を領域730に一度に表示しきれない場合、スクロールダウンすることにより全項目を表示し得るようにすることができる点は、もちろんである。さらに、発作種類を表す複数の項目に関しては、携帯端末700の操作者から新たな項目の追加を受け付けるようにすることもできる。
【0055】
これら発作種類を表す複数の項目の表示の順序は、特定の優先順位により定められている。当該優先順位は、設定された優先順位に基づいて、携帯端末700に係るプログラムにより決定することができる。その優先順位は、携帯端末の操作者が任意に設定し又は設定変更することができるものでもよい。あるいは、優先順位は、これら発作種類を表す複数の項目の中から選択する入力の履歴に基づいて、更新していくようにすることもできる。
この優先順位の更新は、次のようにして行われ得る。例えば、携帯端末700に係るプログラムが、発作種類を表す複数の項目の各々について、過去に又は直近の一定期間内に選択された回数の情報を取得し、当該回数の多い項目に高い優先順位を付与するようにすることができる。このようにして更新される優先順位に基づいて、発作種類の項目の表示の優先順位を決定することにより、該当する患者について過去に行われた入力の内容が、項目の表示の順序に反映されることとなる。このため、個々の患者に適した優先順位で発作種類を表す複数の項目が表示されることとなり、発作種類を表す項目を選択する入力を一層簡便化することが可能となる。
【0056】
発作種類は、任意で携帯端末700の操作者が発作の状況に係るメモを文字入力することができる領域750に、例えば「発作種類:γ」というように操作者が記入することにより、入力することもできる。この機能は、携帯端末700の操作者が、発現した発作が領域730内に表示されたボタンが表す発作種類のいずれにも該当しないと考える場合、あるいはいずれに該当するかを決定しがたい場合に、有効に活用され得る。領域750には、それに限らず、任意にメモを入力し得る。
【0057】
携帯端末700の画面の領域740には、「体調等入力」との表示のもと、てんかん発作に関連する可能性のある事象を表す複数の項目が表示されている。
図7に示す形態では、かかる事象として、次のような項目が表示されている。まず、「問題なし」のほか、「発熱」、「不眠」(ここでは睡眠不足一般を意味する)、「傾眠」、「認知障害」、「食欲低下」、「嘔吐」、「精神緊張」といった、体調に関連する項目(薬剤の副作用である可能性がある項目を含む。)が簡潔な形で表示されている。また、体調に関連する項目だけではなく、「服薬忘れ」といった治療に関連する項目や、「動画視聴」(ここでは特に光や音が強い動画の視聴が念頭にある)といった患者の行動に関連する項目も表示されている。このように、領域740には、体調に関連する項目をはじめとして、それに限らず、てんかん発作に関連する可能性のある事象を表す複数の項目が表示されている。なお、全項目を領域740に一度に表示しきれない場合、スクロールダウンすることにより全項目を表示し得るようにすることができる点は、もちろんである。さらに、事象を表す複数の項目に関しては、携帯端末700の操作者から新たな項目の追加を受け付けるようにすることもできる。
【0058】
画面領域740を有するこの形態によれば、てんかん発作あるいは抗てんかん薬の服用に関連する可能性のある、体調等に係る種々の事象について、項目の選択という簡便な入力により情報を蓄積することが可能となる。そして、蓄積された事象に係る情報の履歴は、症状の発現に係る情報の履歴とともに、携帯端末上又は医師等が使用する端末上で、認識しやすく表示することができる。このような履歴の表示を見ることにより、医師等の医療関係者、介助者、あるいは患者本人は、体調等に係る種々の事象のうち、どのような事象が該当の患者における症状の発現に関連性が高そうか、あるいは、薬剤の副作用としてどのようなものがあり得るかを知ることが可能となる。個々の患者について、症状の発現に関連性が高そうな事象、あるいは薬剤の副作用の可能性がある事象を知ることで、症状の発現の予測、予防、抑制、投薬の改善等に資することができる。
【0059】
それら事象を表す複数の項目の表示の順序は、発作種類を表す複数の項目の表示の順序と同様、特定の優先順位により定められている。当該優先順位は、設定された優先順位に基づいて、携帯端末700に係るプログラムにより決定することができる。その優先順位は、携帯端末700の操作者が任意に設定し又は設定変更することができるものでもよい。あるいは、優先順位は、これら事象を表す複数の項目の中から選択する入力の履歴に基づいて、更新していくようにすることもできる。
【0060】
事象を表す項目の入力の内容に関連して、携帯端末700の操作者から、さらに詳細な情報の入力を受け付けるようにしてもよい。例えば、「発熱」の項目に関して体温の値を入力できるようにしたり、「不眠」の項目に関して睡眠時間又は就寝時刻及び起床時刻を入力できるようにしたりしてもよい。
また、服用している薬(処方された薬剤に限らない。)に関する情報、例えば薬の名称、場合により服薬時刻を入力できるようにしてもよい。服用している薬に関する情報を入力できるようにする場合においては、あらかじめ設定されている薬の種類又は名称から携帯端末700の操作者が選択できるようにする画面領域(図示しない)を設けることができる。
【0061】
<実施形態に係る表示画面の例>
図8は、実施形態において、患者への投薬に関する情報が表示され、薬剤を選択する入力が行われる画面であって、投薬開始時前後の評価対象期間及び投薬開始時後の評価対象期間の単位区分の指定が可能となっている画面の例を示す図である。
図示の場合において、対象の患者は「患者a」である。
【0062】
実施形態のプログラムは、サブルーチンS300を実行し、投薬データベースにアクセスする結果、患者aへの投薬に関する情報を取得している。具体的には、当該患者には「薬剤A」が投与されており、その投薬開始日は「日付A」であり、投与量は1日当たり「DAmg」である。また、
図9に関して後述するとおり、プログラムは、当該患者に発生した副作用に関する情報も取得している。
【0063】
実施形態のプログラムは、また、サブルーチンS400を実行し、症状データベースにアクセスする結果、患者aの症状の発生に関する情報を取得している。具体的には、当該患者には「発作種類α」、「発作種類β」、及び「発作種類γ*」の3種類の発作が発現したことが記録されている。ここで、「発作種類γ*」におけるアスタリスク(*)は、その症状の種類としての発作種類が、医学用語に基づき記述されていないことを示すフラグである。プログラムは、発作種類ごとに、発作の発現状況の情報(例えば、日々の発作の回数に係る情報、あるいは、日々の発作の継続時間に係る情報)を取得している。さらに、プログラムは、発作発現時に携帯端末700の操作者が患者を撮影した動画、及び、携帯端末700の操作者が領域750に入力したメモの内容等の情報も取得している。
【0064】
図8の画面では、薬剤Aが、症状の発現状況の変化を表す情報を生成する対象として、選択されている。
図8の例では、薬剤を選択する入力を行う入力欄が1か所設けられているが、複数の薬剤を選択する入力を行うこともできるよう、薬剤を選択する入力を行う入力欄が複数設けられるようにしてもよい。なお、薬剤を選択する入力を行う入力欄の直下に、「投薬期間」の表示欄があるが、選択された薬剤について、その投薬期間が中断を挟んで複数存在する場合には、その欄において投薬期間を選択し得ることになる。
【0065】
図8の画面には、投薬開始時の前の評価対象期間(観察期間)、投薬開始時の後の評価対象期間(総評価期間)、及び投薬開始時の後の評価対象期間の単位区分(評価単位)の表示欄がある。本例の場合、既定値として、ユーザによる変更可能に、それぞれ、「30日」、「360日」、及び「30日」が表示されている。これは、それぞれ、投薬開始日(日付A)の前日までの30日間、投薬開始日(日付A)からの360日間、及び当該360日間を12等分した30日間を意味する。
【0066】
図9は、実施形態において、患者の症状の種類を選択する入力が行われ、選択された薬剤及び選択された症状の種類について、投薬開始時の前後における症状の発現状況の変化を表す情報が表示されている画面の例を示す図である。
図9の画面では、患者の症状の種類の中から2つの種類である「発作種類α」及び「発作種類β」が、チェックボックス形式の入力欄において、選択されている。
図9の画面にはまた、症状の発現状況の変化を表す情報の生成に関し、選択された薬剤の投与量に関する情報に基づき補正された当該発現状況の変化を表す情報を生成するか否かを選択できる、チェックボックス形式の入力欄があるが、この画面ではチェックが入っておらず、選択されていない。
【0067】
以上の取得情報及び選択入力に応じて、サブルーチンS500により、薬剤Aの投薬開始時の前後における「発作種類α」及び「発作種類β」の発現状況の変化を表す情報が生成され、サブルーチンS600により、当該情報が図(グラフ)の形で時系列的に表示されている。本例では、当該情報は、投薬開始時の前後における発作の回数に係る変化率の情報である。当該変化率の最小値(下限)は、投薬開始時の後の評価対象期間の単位区分における発作回数が0回であった場合の「−100%」である。当該変化率が負の値であることは、投薬開始時の後の評価対象期間の単位区分における発作回数が、投薬開始時の前の評価対象期間(観察期間)における発作回数よりも減少したことを、逆に当該変化率が正の値であることは、発作回数が増加したことを、それぞれ示す。当該変化率に上限はないが、その表示に上限を設け、例えば、当該変化率が100%以上の場合には、グラフ上、100%の位置にプロットされるようにしてもよい。
また、患者への投薬に関する情報に含まれる情報を時系列的に示す図として、患者に投与されている薬剤の名称、投薬開始日を含む投薬期間、及び投与量の情報を示す「投薬バー」が表示されている。
【0068】
さらに、
図9の画面では、「発作回数表」として、投薬開始時の前後における発作の回数(前記変化率の生成のもととなった数値)が表形式で表示されるとともに、発作発生時の気象データ(気圧及び気温)が、評価対象期間の単位区分の各々について算出された平均値の形で表示されている。気象に関する情報の取得については、前記「症状の発生に関する情報を入力し得る携帯端末」の項目にて説明したとおりである。
加えて、画面には、ステップS312にて取得された、患者に投与された薬剤(ここでは薬剤A)の、当該患者aへの副作用に関する情報も表示されている。ここで、副作用に関する情報は、医師又は医療関係者により患者の診察時等に入力され、投薬データベースに格納されている情報であってよい。あるいは、患者又はその介助者が携帯端末700を介して入力した情報に基づき、副作用に係る情報として投薬データベースに格納されている情報であってもよい。
【0069】
図9の例に「発作変化率グラフ」として示されている、薬剤Aの投薬開始時の前後における「発作種類α」及び「発作種類β」の発現の回数に係る変化率を見ると、薬剤Aの投薬開始後に「発作種類α」の発現の回数が、相当顕著に減少している。他方、「発作種類β」の発現の回数には、改善が見られない。また、薬剤Aの副作用の可能性がある事象が表示されている。
そこで、まずは「発作種類β」に対応するため、「薬剤B」が追加的に投与されることとなった。
【0070】
図10は、
図8に示されている画面と同様の画面であって、患者に投与される薬剤として、薬剤Aに加えて「薬剤B」(投薬開始日:「日付B」;投与量:1日当たり「DBmg」)が追加された状態に対応する画面の例を示す図である。
薬剤を選択する入力を行う入力欄では、「薬剤A」が選択されている。
【0071】
図11は、
図9に示されている画面と同様の画面であって、患者に投与される薬剤として薬剤Bが追加された状態に対応する画面の例を示す図である。
「投薬バー」には、選択されている薬剤Aのみならず、薬剤Bを含めて、薬剤の名称、投薬開始日を含む投薬期間、及び投与量の情報が示されており、実施形態のプログラムのユーザ(医師等)は、患者への投薬の全体像を一目で把握することができる。
図10及び11に示される例では、前述のとおり、薬剤Aが選択されているが、薬剤Bが選択された場合には、薬剤Bの投薬開始時(日付B)が時間的基準となり、その前後における「発作種類α」及び「発作種類β」の発現の回数に係る変化率が表示される。また、薬剤Bが選択された場合であって、「投与量による補正」欄の「補正あり」が選択されたときには、選択された薬剤である薬剤Bの投与量に関する情報に基づき補正された変化率が表示される。
【0072】
「発作変化率グラフ」として示されている、「発作種類α」及び「発作種類β」の発現の回数に係る変化率を見ると、薬剤Bの投薬開始後に、「発作種類β」の発現の回数が減少していることが示されている。
その状況を踏まえ、次に、薬剤Aの副作用の可能性がある事象に対応するため、薬剤Aの投与量について調整が検討される状況を考える。
実施形態のプログラムは、こうした状況においても、特に有用な情報を提供し得る。
【0073】
図12は、複数の患者の各々について、選択された薬剤ごと及び選択された症状の種類ごとに、投薬開始時の前後における症状の発現状況の変化を表す情報が生成されている場合に、かかる症状の発現状況の変化を表す情報が表示されている画面の例を示す図であり、
図2に示される実施形態に対応する。
複数の患者は、例えば、実施形態のプログラムのユーザ(医師等)が指定した、患者a及びある別な患者であってもよいが、
図12の例では、患者a及び患者群bが指定されている。患者群bは、同じ医療機関で受診している、同様の疾病を有する患者からなる群であり得る。あるいは、患者群bは、患者aと同年代の患者からなる群や、患者aと比較するのに適した疾病の進行程度を有する患者からなる群であり得る。
薬剤については薬剤Aが、症状の種類については「発作種類α」が、それぞれ選択されている。
【0074】
この
図12に示される例では、選択された薬剤(この場合、薬剤A)の投与量に関する情報に基づき補正された発現状況の変化を表す情報を生成するか否かを選択できる、チェックボックス形式の入力欄において、チェックが入っており、当該選択肢が選択されている。これにより、症状の発現状況の変化を表す情報である、投薬開始時の前後における発作の回数に係る変化率の情報は、薬剤の投与量に関する情報に基づき補正されたものとなっている。また、患者群bについては、平均値にあたる情報(症状の発現状況の変化を表す情報に統計処理を施した情報)の表示がなされている。
【0075】
ここで、補正は、「投薬開始時の前後における症状の発現状況の変化を表す情報を生成する処理」の項目において説明した方法によって行われている。
図12は、体重に基づき正規化された患者aへの薬剤Aの投与量の情報より、補正係数Cが0.8とされた場合における、補正された発作の回数に係る変化率(前記Rsf’)を示している。
そして「発作回数表」には、患者aの発作回数として、補正された発作の回数である前記SFa’が、評価対象期間の各単位区分に対して表示されている。
【0076】
図12に例示される画面を見るユーザ(医師等)は、薬剤Aの投与量に関する情報に基づき補正された発作の回数に係る変化率の情報を、患者aと患者群bとの間で、一目で比較することができる。そのため、実施形態のプログラムは、薬剤Aの「発作種類α」に対する効果を、投与量を踏まえて把握し評価することを容易化することができる。これにより、実施形態のプログラムは、薬剤Aの副作用の可能性がある事象に対応するために薬剤Aの投与量について調整が検討されるような状況においても、特に有用な情報を提供し得、治療の評価及び改善に資することができる。さらに、患者群について、症状の発現状況の変化を表す情報に統計処理を施した情報の生成及び表示がなされることによって、薬剤の効果の一般的傾向が示されやすくなる、といった利点も得られる。
【0077】
<ハードウェア構成>
図13は、実施形態のプログラム又は方法を実行するコンピュータ1300のハードウェア構成図である。当該コンピュータ1300は、CPU1302、ROM1304、RAM1306、キー操作部1308、通信部1310、表示部1312、及び外部記憶制御部1314を有する。当該コンピュータ1300は、外部記憶制御部1314により、メモリ1316に記憶された実施形態のプログラムを読み込んで動作することが可能である。実施形態のプログラムは、ROM1304及びRAM1306にも保存され得る。すなわち、実施形態のプログラムは、一時的でない(non-transitory)、実体のある(tangible)、そして機械可読の(machine-readable)記憶媒体であるメモリ1316、ROM1304、及び/又はRAM1306に記憶される。当該コンピュータ1300は、実施形態のプログラム又は方法を実行するCPU1302の管理のもとに動作する。
【0078】
以上、実施形態に基づいて説明を行ってきたが、本明細書に記載されている実施形態は一例であって、特許請求の範囲において特定された発明を限定するためのものと解釈してはならない。
開示の技術によれば、薬剤の名称及び投薬開始時を含む特定の患者への投薬に関する情報を取得し(S102)、症状の種類及び発現状況を含む前記患者の症状の発生に関する情報を取得し(S104)、前記薬剤の中から一又は複数の薬剤を選択する入力を受け取り(S106)、前記症状の種類の中から一又は複数の種類を選択する入力を受け取り(S108)、選択された前記薬剤ごと及び選択された前記症状の種類ごとに、前記投薬開始時の前後における前記発現状況の変化を表す情報を生成し(S110)、生成された前記発現状況の変化を表す情報を表示する(S112)処理が実行される。