特許第6985787号(P6985787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985787電力変換装置とバイパス用遮断器の投入方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985787
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】電力変換装置とバイパス用遮断器の投入方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20211213BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20211213BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20211213BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   H02M7/48 N
   H02M7/48 R
   H02J3/32
   H02J3/38
   H02J9/06 120
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-36527(P2016-36527)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-158222(P2017-158222A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年1月25日
【審判番号】不服2020-17221(P2020-17221/J1)
【審判請求日】2020年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】杉村 翔士
【合議体】
【審判長】 田中 秀人
【審判官】 山澤 宏
【審判官】 山崎 慎一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−194981(JP,A)
【文献】 特開2007−209171(JP,A)
【文献】 特開平8−223933(JP,A)
【文献】 特開2000−341881(JP,A)
【文献】 特開2010−093884(JP,A)
【文献】 特開2000−358379(JP,A)
【文献】 特開2009−273205(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/093485(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0252144(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00- 3/44
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源と負荷間に並列接続された系統連系スイッチとバイパス用遮断器を設け、かつ負荷と並列に蓄電装置を有するPCSを接続し、系統電源の異常時にPCSを介して負荷に電力を供給する瞬低補償機能を有するものであって、系統電源が異常から正常に戻ったとき系統電源電圧とPCS出力電圧との位相差が発生している状態でバイパス用遮断器を投入する制御回路において、
前記PCS出力電圧と系統電源電圧の位相差θを検出する位相差算出部と、
前記PCSの直流電圧と予め設定された設定値を比較して当該直流電圧が設定値以下となったとき比較信号を出力する電圧変化検出部と、
前記PCSの出力周波数に対し単位時間当たりの周波数変化量を算出する周波数変化量算出部と、
前記位相差算出部により算出された系統電源電圧とPCS出力電圧との位相差θと前記周波数変化量から前記バイパス用遮断器の閉路時刻を算出し、当該算出された閉路時刻からバイパス用遮断器の投入遅れ時間を差引いて得られた時刻における、バイパス用遮断器への投入指令を出す時間を決めるための系統電源電圧とPCS出力電圧との位相差△θを算出する投入位相差算出部と、
前記PCSの出力周波数と、周波数変化量算出部および投入位相差算出部の各算出結果をホールドするホールド部と、
投入位相差算出部により得られた位相差△θと、前記系統電源電圧とPCS出力電圧との位相差θと、を比較し、|位相差θ−位相差△θ|≦所定値の場合に前記バイパス用遮断器の投入指令を出力する位相差判定部と、
を有し、
系統電源が異常から正常に戻りPCSの直流電圧が設定値以下となったとき、前記周波数変化量算出部が算出した周波数変化量から導出される出力周波数の減少割合に基づき出力周波数を低減させ、
位相差算出部が算出した系統電源電圧とPCS出力電圧の各電圧波形の微分値および電圧値が同一もしくは所定範囲の値となった場合に、バイパス用遮断器を投入して系統電源と負荷を連系することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
系統電源と負荷間に並列接続された系統連系スイッチとバイパス用遮断器を設け、かつ負荷と並列に蓄電装置を有するPCSを接続し、系統電源の異常時にPCSを介して負荷に電力を供給する瞬低補償を行うものであって、系統電源が異常から正常に戻ったときバイパス用遮断器を投入する制御回路により、系統電源電圧とPCS出力電圧との位相差が発生している状態でバイパス用遮断器を投入する方法において、
制御回路は、
前記PCS出力電圧と系統電源電圧の位相差θを検出する位相差算出部と、
前記PCSの直流電圧と予め設定された設定値を比較して当該直流電圧が設定値以下となったとき比較信号を出力する電圧変化検出部と、
前記PCSの出力周波数に対し単位時間当たりの周波数変化量を算出する周波数変化量算出部と、
前記位相差算出部により算出された系統電源電圧とPCS出力電圧との位相差θと前記周波数変化量から前記バイパス用遮断器の閉路時刻を算出し、当該算出された閉路時刻からバイパス用遮断器の投入遅れ時間を差引いて得られた時刻における、バイパス用遮断器への投入指令を出す時間を決めるための系統電源電圧とPCS出力電圧との位相差△θを算出する投入位相差算出部と、
前記PCSの出力周波数と、周波数変化量算出部および投入位相差算出部の各算出結果をホールドするホールド部と、
投入位相差算出部により得られた位相差△θと、前記系統電源電圧とPCS出力電圧との位相差θと、を比較し、|位相差θ−位相差△θ|≦所定値の場合に前記バイパス用遮断器の投入指令を出力する位相差判定部と、
を有し、
系統電源が異常から正常に戻りPCSの直流電圧が設定値以下となったとき、前記周波数変化量算出部が算出した周波数変化量から導出される出力周波数の減少割合に基づき出力周波数を低減させ、
位相差算出部が算出した系統電源電圧とPCS出力電圧の各電圧波形の微分値および電圧値が同一もしくは所定範囲の値となった場合に、バイパス用遮断器を投入して系統電源と負荷を連系することを特徴とした電力変換装置のバイパス用遮断器の投入方法。
【請求項3】
系統電源が異常から正常に戻ったときに、PCS出力電圧と系統電源電圧との位相差が略一致するまでの時間を次式で算出することを特徴とする請求項記載の電力変換装置のバイパス用遮断器の投入方法。
【数7】
ただし、θ;位相差、a;出力周波数の減少割合、n;0,1,2,…、
【請求項4】
前記位相差判定部から出力される投入指令は、系統電源電圧とPCS出力電圧の各電圧波形の微分値の出力周波数を低減させる各微分値(傾き)が共にプラスの最大時、マイナスの最大時若しくは最大時近辺、および系統電圧とPCS出力電圧が0のとき、系統電圧=PCS出力電圧若しくは系統電圧−PCS出力電圧の絶対値が所定値内の何れかであることを特徴とする請求項または記載の電力変換装置のバイパス用遮断器の投入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列接続された系統連系スイッチとバイパス用遮断器を介して接続された電力変換装置と、電力変換装置のバイパス用遮断器の投入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
並列接続された系統連系スイッチ(以下、高速スイッチという)とバイパス用遮断器を介してPCS(Power Conditioning Subsystem)を接続した電力変換装置(以下、瞬低補償装置という)の概略の回路構成を図10に示す。並列型の瞬低補償装置は、LCフィルタ1とIGBTなどのスイッチングユニットからなるAC/DC変換器2から構成されるPCS3と、高速スイッチ4及びバイパス用遮断器5を備え、系統電源6に対して、高速スイッチ4もしくはバイパス用遮断器5を介して負荷7と並列に接続される。インバータ・コンバータ機能を有するAC/DC変換器2の直流リンクには二次電池や電気二重層キャパシタなどの蓄電装置8が接続され、系統電源6の異常時には蓄電装置8から負荷7に対しPCSを介して電力を供給する。
【0003】
すなわち、瞬低補償装置は、系統電源6が正常なときには高速スイッチ4を介して系統と連系し、負荷の平準化や電力のピークカットを目的として電力の充放電を行う。または、瞬低補償動作に備えて直流エネルギーを充電した状態でPCSのゲートを停止して待機している。系統電源6に異常が発生すると、高速スイッチ4を遮断して系統電源6と負荷7を切り離し、PCS3を自立運転に移行することで、所定の時間内で負荷7に安定した電力を供給する。
【0004】
ここで、負荷7として同期電動機が直接接続されている場合がある。系統異常により系統から同期電動機を含む負荷7と瞬低補償装置が切り離されると、場合によっては同期電動機が回生動作を行って周波数が動揺することが、特許文献1や特許文献2において開示されており、その際、有効電力に対し装置の出力周波数を低減させる垂下特性の有用性についても特許文献1,2に開示されている。
また、大きな慣性エネルギーを有している電動機が停電となったとき、電動機端子に誘起される電圧の周波数と略同じ電圧の周波数をインバータで発生させてフリーランさせる技術が特許文献3,4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−242173
【特許文献2】特開2007−20361
【特許文献3】特開2013−223302
【特許文献4】特開平8−223933
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11はPCS連系時の概念図で、系統に異常が発生したとき高速スイッチ4を介して負荷7を系統から切り離すと同時に、瞬低補償装置が動作を開始し、系統が正常に戻るまでの時間に対しての周波数と位相を示したものである。縦軸は、周波数とある時刻を基準とした位相の2種類の電気量を1種類の値で評価したもので、時刻t1が最初の基準でその際の系統周波数・位相をf0とする。時刻t1で系統に異常が発生し、高速スイッチ4で系統から負荷7を切り離して瞬低補償装置が動作を開始する。同時に蓄電装置8から負荷7へ電力を供給するため蓄電装置8の電圧(例えば、二次電池電圧)が低下し、装置が補償できる時間は時刻t1〜t5となる。
【0007】
時刻t2で系統が異常から正常に復帰すると、異常発生前の系統周波数・位相f0とは異なるf1になったとき、PCS3は周波数と位相がf0の自立運転から系統との連系運転に移行するため、PCS出力周波数と系統周波数の位相をf0からf1に合わせる動作をする。同期合わせが無いまま連係すると過電流が発生する虞がある。蓄電装置8の所定の直流電圧値である時刻t3までに位相同期制御が完了した場合には、時刻t3で高速スイッチ4を投入しても電流の動揺もなく系統と接続できる。
【0008】
しかし、負荷7に慣性を持つ同期電動機(回生動作も含む)などが存在した状態では、PCS3が時刻t2から同期電動機が回転している間は内部誘起電圧があり、端子電圧の周波数・位相fsを有する同期電動機と、周波数・位相fpのPCS3が出力する電圧との間での電圧・位相差異を無くす制御はしているが、
時刻t3で系統連系スイッチを投入したとき同期電動機の誘起電圧の位相差と系統電圧との位相差が存在している場合があり、高速スイッチ4に過電流が流れて高速スイッチ4が故障する虞がある。
【0009】
そのため、系統が正常に復帰した後、同期電動機が回転した状態でのPCS3での位相同期処理が、蓄電装置8のエネルギー源が電気二重層キャパシタの直流電圧が所定の値以上で完了していれば問題ないが、同期電動機の状態により位相同期処理が遅れ、電気二重層キャパシタの直流電圧が所定の値までに同期完了できない場合が生じる。また、高速スイッチ4の代わりにバイパス用遮断器5を用いて瞬低から復帰動作を行うことも考えられるが、半導体素子よりなる高速スイッチと違い、機械的遮断器の投入には遅れがあるため、位相差が0になるタイミングで遮断器投入(投入遅れを考慮した投入指令)を見つける必要がある。
【0010】
本発明が目的とするところは、系統異常から正常に戻ったときの時刻t2〜t3の期間での連系時に過電流が流れることを考慮し、時刻t3以降で電流耐量に余裕のあるバイパス用遮断器を用いて迅速に同期投入を可能とした電力変換装置と、電力変換装置のバイパス用遮断器の投入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、系統電源と負荷間に並列接続された系統連系スイッチとバイパス用遮断器を設け、かつ負荷と並列に蓄電装置を有するPCSを接続し、系統電源の異常時にPCSを介して負荷に電力を供給する瞬低補償機能を有するものであって、系統電源が異常から正常に戻ったとき系統電源電圧とPCS出力電圧との位相差が発生している状態でバイパス用遮断器を投入する制御回路において、
前記PCS出力電圧と系統電源電圧の位相差θを検出する位相差算出部と、
前記PCSの直流電圧と予め設定された設定値を比較して当該直流電圧が設定値以下となったとき比較信号を出力する電圧変化検出部と、
前記PCSの出力周波数に対し単位時間当たりの周波数変化量を算出する周波数変化量算出部と、
前記位相差算出部により算出された系統電源電圧とPCS出力電圧との位相差θと前記周波数変化量から前記バイパス用遮断器の閉路時刻を算出し、当該算出された閉路時刻からバイパス用遮断器の投入遅れ時間を差引いて得られた時刻においてバイパス用遮断器への投入指令を出す時間を決めるための系統電源電圧との位相差△θを算出する投入位相差算出部と、
前記PCSの出力周波数と、周波数変化量算出部および投入位相差算出部の各算出結果をホールドするホールド部と、
投入位相差算出部により得られた位相差△θと、前記系統電源電圧とPCS出力電圧との位相差θと、を比較し、|位相差θ−位相差△θ|≦所定値の場合に前記バイパス用遮断器の投入指令を出力する位相差判定部と、
を有するものである。
【0013】
本発明による投入位相差算出部は、系統電源電圧とPCS出力電圧の位相差θと略一致する時刻を演算し、当該演算により求まった時刻からバイパス用遮断器の投入遅れ時間を差引いた時刻を得て、この時刻における系統電源電圧に対する位相差△θする。
【0014】
また、本発明は、系統電源と負荷間に並列接続された系統連系スイッチとバイパス用遮断器を設け、かつ負荷と並列に蓄電装置を有するPCSを接続し、系統電源の異常時にPCSを介して負荷に電力を供給する瞬低補償を行うものであって、系統電源が異常から正常に戻ったときバイパス用遮断器を投入する制御回路により、系統電源電圧とPCS出力電圧との位相差が発生している状態でバイパス用遮断器を投入する方法において、
制御回路は、
前記PCS出力電圧と系統電源電圧の位相差θを検出する位相差算出部と、
前記PCSの直流電圧と予め設定された設定値を比較して当該直流電圧が設定値以下となったとき比較信号を出力する電圧変化検出部と、
前記PCSの出力周波数に対し単位時間当たりの周波数変化量を算出する周波数変化量算出部と、
前記位相差算出部により算出された系統電源電圧とPCS出力電圧との位相差θと前記周波数変化量から前記バイパス用遮断器の閉路時刻を算出し、当該算出された閉路時刻からバイパス用遮断器の投入遅れ時間を差引いて得られた時刻においてバイパス用遮断器への投入指令を出す時間を決めるための系統電源電圧との位相差△θを算出する投入位相差算出部と、
前記PCSの出力周波数と、周波数変化量算出部および投入位相差算出部の各算出結果をホールドするホールド部と、
投入位相差算出部により得られた位相差△θと、前記系統電源電圧とPCS出力電圧との位相差θと、を比較し、|位相差θ−位相差△θ|≦所定値の場合に前記バイパス用遮断器の投入指令を出力する位相差判定部と、
を有し、
系統電源が異常から正常に戻りPCSの直流電圧が設定値以下となったとき、前記周波数変化量算出部が算出した周波数変化量から導出される出力周波数の減少割合に基づき出力周波数を低減させ、
位相差算出部が算出した系統電源電圧とPCS出力電圧の各電圧波形の微分値および電圧値が同一もしくは所定範囲の値となった場合に、バイパス用遮断器を投入して系統電源と負荷を連系する。
【0016】
また、本発明は、系統電源が異常から正常に戻ったときに、PCS出力電と系統電源電圧との位相差が略一致するまでの時間を次式で算出する。
【0017】
【数1】
【0018】
ただし、θ;位相差、a;出力周波数の減少割合、n;0,1,2,…、
本発明の相差判定部から出力される投入指令は、系統電源電圧とPCS出力電圧の各電圧波形の微分値の出力周波数を低減させる各微分値(傾き)が共にプラスの最大時、マイナスの最大時若しくは最大時近辺、および系統電圧とPCS出力電圧が0のとき系統電圧=PCS出力電圧若しくは系統電圧−PCS出力電圧の絶対値が所定値内の何れかである。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によれば瞬時補償装置の負荷として誘起電圧を生じる電動機のような負荷が含まれて、同期合わせに時間がかかって高速スイッチの投入が困難な場合でも、バイパス用遮断器が短時間で投入されるため、インバータへの過電流を防止しながらPCSの系統への連系が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態を示すバイパス用遮断器の制御回路図。
図2】瞬時補償動作時の直流電圧の状態図。
図3】出力周波数変化図で、(a)は従来図、(b)は本発明の変化図。
図4】バイパス用遮断器の投入時点の波形説明図。
図5】系統電圧に対しPCS出力電圧が進み時の波形図。
図6】電圧波形図。
図7】系統電圧に対しPCS出力電圧が遅れ時の波形図。
図8】位相差算出の説明用波形図。
図9】説明用波形図。
図10】電力変換装置の構成図。
図11】従来の瞬時補償動作時の直流電圧の状態図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は並列型の瞬低補償装置におけるバイパス用遮断器5の投入制御回路を示したものである。11は位相差算出部で、PCS3の出力電圧Vpと系統電源6の検出電圧Vgを入力して両電圧の位相差θを算出する。12は電圧変化検出部で、AC/DC変換器2の直流リンク電圧と予め設定された設定値を比較し、直流リンク電圧>設定値で論理0、直流リンク電圧<設定値で論理1の信号を出力する。
そして、電圧変化検出部12から論理1の信号が出力された場合には、当該論理1の立ち上がりエッジでホールド部15の動作を開始し各算出結果をホールドするまた、前記論理1の信号の出力により、後述の実行モジュール18も動作(後述するように、周波数変化部16,位相差判定部17がそれぞれ動作)することとなる。
なお、前記直流リンク電圧の設定値は、補償できる電力量が生成できる最低の直流電圧値と、系統電圧と瞬低補償装置の出力電圧の位相合わせ時間とバイパス用遮断器5が閉路するまでの時間から設定する。
【0022】
13は周波数変化量算出部で、PCSの動作として負荷有効電力Pが増加した場合にはPCS出力周波数を減少させ、有効電力が減少した場合には周波数を増加させる動作を繰り返すことで時間と共にPCS出力周波数が低下するので、この動作状況から単位時間あたりに変化した周波数変化量df/dtを算出する。この特性は略同期電動機の略フリーランの時間に対する端子周波数の変化である。なお、周波数変化量df/dtを予め同期電動機のフリーラン動作の試験を行って取得し、この値を適用してもよい。
【0023】
14は投入位相差算出部で、まず、位相差算出部11で算出した位相差θと周波数変化量算出部13で算出された周波数変化量df/dtから、系統と連系(バイパス用遮断器の開閉)する時刻を算出する。この後、投入位相差算出部14では、当該算出した時刻から投入遅れ時間を差し引いた時刻において、バイパス用遮断器5への投入指令を出す時間を決めるための系統電圧との位相差△θを算出する。
前記位相差△θは、ホールド部15の動作(電圧変化検出部12の論理1の立ち上がりエッジで開始する動作)により、それぞれホールドされる。
実行モジュール18は、周波数変化部16と位相差判定部17から構成され、前記論理1の信号の出力により実行されるものであり、前記ホールド部15によりホールドされたホールド値(出力周波数f,周波数変化量df/dt,位相差△θ)と、位相差算出部11による位相差θと、が入力される。このとき、周波数変化部16によりPCSのPWM波形は前記df/dtの変化で出力周波数が低減する。
【0024】
周波数変化部16においては、前記ホールド部15によりホールドされた出力周波数fと周波数変化量df/dtとに基づいて、単位時間当たりに一定量の周波数を変化させてAC/DC変換器2の出力電圧を制御(PWM制御)する信号を生成するものであり、当該生成された信号に基づいてインバータを構成するスイッチング素子のドライブ信号を生成する。このような周波数変化部16の動作により、PCS3の出力電圧、PWM基本波周波数が生成される。
位相差判定部17においては、前記投入位相差算出部14で算出されてホールド部15によりホールドされた位相差△θと位相差算出部11による位相差θとを比較し、|位相差θ−位相差△θ|≦所定値のときバイパス用遮断器5に対して投入指令を出力する。
【0025】
図2は本発明における動作順序と直流リンク電圧(蓄電装置8の直流電圧Vbat)の態様を示す説明図である。時刻t1で系統異常が発生して瞬低補償装置が瞬低補償動作を開始すると、直流電圧Vbatは徐々に低下し、同期電動機が略フリーラン状態であることから誘起電圧周波数が低下する。この周波数が略PCS3の周波数でもあり、補償できる時間は時刻t1から時刻t5までの時間である。
時刻t2で系統が正常に復帰すると、同期合わせを開始する。時刻t2以降時刻t3までに位相が合った場合には従来と同様にそのまま高速スイッチ4が投入されて連系運転に入るが、負荷として同期電動機が接続されている場合には時刻t3までに同期合わせができず同期投入ができない場合がある。
本発明では時刻t3以降で機能し、時刻t5までに系統と連系される。本発明では直流電圧Vbatが所定値以下となった時刻t3から動作を開始するもので、直流電圧の設定値は、動作開始から終了までかかる時間が(時刻t5−t3)であることを予め確認し、且つこの直流電圧の設定値以降でも出力が補償できる値に設定される。
【0026】
本発明では、並列型の瞬低補償装置において、系統電源が異常状態から正常状態に復帰し、所定の位相同期制御期間(高速スイッチの投入期間)を超えたとき、バイパス用遮断器を用いて系統との連系運転に切り替えるときのショックを極力小さくするように、系統電圧とPCS側位相が略ゼロ、同時に電圧も同一となるときにバイパス用遮断器5を閉路して系統と連系するものである。
【0027】
図4はその状態を示し図4(a)〜図4(c)の○で囲んだ時刻で投入したいとしていることを示したものである。以下、原理を説明する。
同期投入するタイミングは電圧が正の傾斜で、系統,PCS電圧値が共にゼロとなった図4(a)の場合とする。算出条件は、図2で示す直流電圧が設定値となった時刻t3である。時刻t3における、系統電圧とPCS3の電圧、位相周波数変化量算出部13においてdf/dt値を用いている。
【0028】
(1).系統電圧とPCS出力電圧との位相がずれていてもPCS出力周波数が低下することで電圧が一致するまでの時刻を求める。
【0029】
PCSの出力電圧Vpは式(1)となる。ここで、角周波数ω0は現在の角周波数ω0で、aは出力周波数の減少割合でdf/dtから算出する。
【0030】
Vp=E1sin((ω0(1−at)t+θ) …… (1)
θは時刻t3での系統電圧に対してPCSの電圧の位相差で、位相が遅れている場合はθ<0、進んでいる場合にはθ>0で、位相として−180゜〜+180゜の範囲とし、系統電圧Vgは式(2)とする。
【0031】
Vg=E2sin(ωt) …… (2)
ここで、E1,E2はそれぞれの電圧振幅、ω0とωはそれぞれの角周波数ある。
【0032】
E1=E2とし、角周波数はω0≒ωであるので以下ω0=ωとする。ω0=ωとすることによりラジアン(電気角)単位と時間単位は等価性があり、例えば、周波数50Hzでは360゜=2π=20mの意味を持つ。以下、周波数50Hzを基準とする。電圧値同一ではVp=Vgとなり、共に周期2πの正弦波であるので式(3),(4)が成立する。
【0033】
【数2】
【0034】
【数3】
【0035】
(ただし、n=0,±1,±2,…)
式(3)は系統波形1周期毎に生じる交点時刻であり、式(4)はPCS周波数変化量により生成される交点時刻である。
【0036】
(2).PCS電圧と系統電圧が共に電圧ゼロ付近で連系することを目標に、PCS電圧の周波数が低下してPCSの電圧がゼロで、かつ電圧波形の微分値が正であるのは、図4(a)に示すように1周期に1回であり、この状態を生じさせる時刻を求める。
【0037】
式(1)のVp=0から次の関係が得られる。
【0038】
ω(1−at)t+θ=2nπ …… (5)
(ただし、n=0,1,2,…)
式(5)を解くと
【0039】
【数4】
【0040】
位相差算出部11において、PCSにおける出力電圧の時刻tでの位相差の算出には、式(1)からω0tの項は位相差とは関係なく、系統電圧との位相差Δθは、
−aωt2+θ+2nπ …… (7)
(ただし、n=0,1,2,…)
で得られる。
【0041】
(3).系統電圧に対してPCSの電圧が進み位相の場合
図5は、例として基準となる50Hzの系統電圧Vgに対し、50HzのPCS出力電圧Vp、a=0.026で60゜進みのときの波形図を示し、横軸は時間を示したものである。上記のようにPCSの電圧がゼロで、かつ周波数変化量算出部13により生成された電圧波形の微分値が正の1回目の交点は図5における時刻t1で、2回目が時刻t2である。
【0042】
【表1】
【0043】
表1は式(3)で求めた系統電圧とPCS電圧が一致する時刻を示したものである。さらに式(4)で得た時刻は358msの時点で電圧が交差している。図6が式(3),(4)で得られた交差前後の時刻と電圧の状態を示したものである。すなわち、P1,P2が式(3)で得られた1回目と2回目の交点電圧、P3が式(4)で得られ交点電圧である。PCSの周波数が徐々に低下することによって周期が長くなることで、遅れ位相を生成して時刻t1の波形部が時刻t0の波形部に接近している。このため、遅れ位相より進み位相の方が同期するまでの時間が短くてすむので、以後は進み位相で位相差を表記する。例えば、遅れ60゜の位相差は位相差300゜で表す。
【0044】
表2(a)は投入位相差算出部14により生成された微分係数が正のときのゼロクロスの時刻と位相差を示したものである。
【0045】
図5で示す時刻t1のPCS電圧位相の波形部分の周波数が低下することで、18サイクル目で系統電圧の時刻t0部分の波形と図4(a)で示すように両者の波形は略一致する。一致するまでに掛かる時間は、式(4)から
【0046】
【数5】
【0047】
が得られる。得られた358mと表2(a)での18サイクル目の360mとの差異は、18サイクル目では位相差0.7゜が生じていることに基づく。
【0048】
【表2】
【0049】
(4).系統電圧に対してPCSの電圧が遅れ位相の場合
図7は、50Hzの系統電圧Vgに対し、50HzのPCS出力電圧Vpが60゜遅れのときの波形図を示したもので、横軸は時間を示したものである。上記のようにPCSの電圧がゼロで、且つ電圧波形の微分値が正の1回目の交点は時刻t1で、2回目が時刻t2である。周波数が徐々に低下することにより時刻t1の波形部が時刻t0の波形部に接近することで同期投入ができる。PCSの位相が系統に対して遅れ位相のとき、同期させるまでに時間を要している。
【0050】
表2(b)は投入位相差算出部14により生成された微分係数が正のときのゼロクロスの時刻と位相を示したもので、位相は常に系統電圧波形の時刻t0の部分を基準とし、360゜として表している。図7で示す時刻t1のPCS電圧位相の波形部分は周波数を低下させることで、40サイクル目で系統電圧の時刻t0部分の波形と図4(a)で示すように両者は略一致する。一致するまでにかかる時間は、式(4)から
【0051】
【数6】
【0052】
が得られる。
以上の算出は周波数が連側的に低下することを前提としたものである。
【0053】
(5).バイパス用遮断器の動作遅れの場合
多くの場合、バイパス用遮断器に使用される機械的遮断器では投入指令を受け取ってから、回路が閉路となるまでの動作遅れ時間を、例えば保証値100mのように公称値として開示している。しかし、実際にはさらに短い時間で動作する場合もあるので、予め動作の実際時間を測定した時間を遅れ時間としてもよい。
【0055】
図9は位相差の初期値を180゜の例で示したものである。この状態からdf/dt=2.56Hz/s(a=0.026)としてPCS周波数・位相差変化を示したものが図3であり、経過時間に対する位相差を示したものが表3、表4である。
図3(a)は時間軸に対するPCS周波数の様子を示している
【0056】
図3(b)は時間軸に対し系統電圧の位相を基準に、PCS電圧位相が図9で示すように−180゜ずれている状態から周波数が低下することにより位相差が徐々に減少する様子を示している。時刻t2で図4(a)の○で囲んだ時刻で示すように位相差が略ゼロとなっている。ここで、遮断器投入指示から閉状態になるまでの遅れ時間を(t2−t1)と見込んでいることで、系統が正常に復帰後の時刻t1に遮断器の投入指令が出されると時刻t2で遮断器が閉路し、PCS電圧位相と系統電源6の電圧位相の位相差ゼロの状態で系統電源6と負荷7とが接続される。
【0057】
【表3】
【0058】
表3は系統電圧を50Hz周期20ms(=2π=360゜)初期位相ゼロとして時間軸設定している。df/dtを連続的に減少させている式(1)から得た式(6)を用いてPCS電圧ゼロの時刻を算出している。位相差は基準位相を20ms×n(n=1,2,3,…)として算出している
図3(b)は、表4で得られた時間tと位相差を示している。位相差略ゼロまでの時間は620msで、遮断器の投入遅れ時間を100msとすると、520msで遮断器への投入指令を発する必要がある。この時の位相差△θは略50゜が得られ、以上の演算は投入位相差算出部14で行われる。位相差算出部11の出力と、投入位相差算出部14で得た投入位相が位相差判定部17に入力され、この2入力の差が所定の範囲内のときが遮断器投入指令を発する時刻となる。
実際には、PCS出力周波数を連続的に低下させる場合もあるが、例えば、系統周波数の周期20ms毎に周波数を低下させる場合もある。低減された周波数の周期は計算上20msを超え、超過した分が位相差の調整分になり、時間の経過および周波数の低下と共に調整分が蓄積されて初期の位相差との差が縮まって行く。
【0059】
【表4】
【0060】
表4は系統周波数の周期に周波数を低減させ、その周期を算出する。この算出された周期は系統の周期より長く、系統周波数に対して時間増分を算出する。次に、時間の経過に伴い時間差を累積した累積時間差分を算出する。この累積時間差分を位相差に換算し、時間の経過に対する位相差を演算する。前述の通り位相差と時間差は同値である。この場合、時刻620ms時の位相差は略7゜となっている。式(6)で求めた値との差は、計算方法の差異に基づくものである。
【0062】
以上の説明では、d(系統電圧)/dtとd(PCS電圧)/dtがプラスの最大値の時についてであるが、系統電圧とPCS電圧の微分(傾き)と絶対値が同一である、次の場合でもよい。
図4(b)で示すようにd(系統電圧)/dtとd(PCS電圧)/dtがマイナスの最大値のとき、または最大値付近の所定の範囲、
図4(c)で示すようにd(系統電圧)/dt=0、&d(PCS電圧)/dt=0のときで、かつ系統電圧=PCS電圧、または|系統電圧−PCS電圧|<所定値。
【0063】
以上、図1で示すバイパス遮断器の投入制御回路での位相差算出部11は、図8で示すように系統電圧Vgを基準として時刻t21−t11間の時間を測定し、系統電圧Vgの1周期時間を360゜として時刻t21−t11間のPCS出力電圧Vpとの位相差θを求める。電圧変化検出部12での比較結果、図2で示す直流電圧Vbatが設定値を負の方向で越えた時刻t3で本発明における動作開始信号を生成する。
【0064】
周波数変化量算出部13では、PCSの動作として負荷有効電力Pが増加した場合にはPCS出力周波数を減少させ、有効電力が減少した場合には周波数を増加させる動作を繰り返すことで時間と共にPCS出力周波数が低下するので、PCS周波数を制御しつつ周波数変動分からdf/dtを演算する。または、予め試験で得たdf/dtを用いる。
【0065】
投入位相差算出部14では、所定の時間T毎に低減した周波数の周期を演算して基準周波数に対する時間差を演算し、経過時刻に対する累積時間差を得ると同時に位相差を演算する。また、系統電圧とPCS電圧の位相差と略一致する時刻を演算し、求まった時刻から遮断器の投入遅れ時間を差引いた時刻を得て位相差△θを演算する。算出された時刻における位相差△θに基づいてバイパス用遮断器の投入指令を生成する。
【0066】
ホールド部15は、電圧変化検出部12から論理1の信号が出力された場合には、当該論理1の立ち上がりエッジで動作してPCSの出力周波数周波数変化量算出部13による演算結果である周波数変化量df/dt、投入位相差算出部14の演算結果である位相差△θホールドする。周波数変化部16はホールド値に基づいて単位時間当たりに一定量の周波数を変化させてAC/DC変換器2の出力電圧を制御する信号を生成するもので、生成された信号に基づいてインバータを構成するスイッチング素子のドライブ信号を生成する。
【0067】
位相差判定部17は、投入位相差算出部14にて演算された位相差△θと位相差算出部11にて検出されている位相差θとを比較し、系統電圧VgとPCS出力電圧Vpとの位相差θが一致または所定の範囲内で交差したときバイパス用遮断器への投入指令を出力する。この投入指令位相差で、バイパス用遮断器が閉路となったとき系統電圧とPCS電圧の位相差は略ゼロである。
【0068】
上記説明では、電圧変化検出部12が動作したとき1回の計算で投入指令位相差を生成していたが、電圧変化検出部12が動作してから位相差△θを求めるための演算時間を予め把握し、この時間毎にPCSと系統の位相差、およびdf/dtを得て△θを求めるよう複数回の演算値にしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
3… PCS
4… 高速スイッチ(系統連系スイッチ)
5… バイパス用遮断器
8… 蓄電装置
11… 位相差算出部
12… 電圧変化検出部
13… 周波数変化量算出部
14… 投入位相差算出部
15… ホールド部
16… 周波数変化部
17… 位相差判定部
18… 実行モジュール
図1
図2
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