(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985789
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】アディポネクチン発現増強用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/48 20150101AFI20211213BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20211213BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20211213BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20211213BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20211213BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20211213BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20211213BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20211213BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20211213BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
A61K35/48
A61P3/00
A61P3/04
A61K36/48
A61K31/352
A61P9/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P3/06
A61P9/10
A61P9/12
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-152646(P2016-152646)
(22)【出願日】2016年8月3日
(65)【公開番号】特開2018-20971(P2018-20971A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229519
【氏名又は名称】日本ハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】門岡 桂史
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴之
【審査官】
六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第1850242(CN,A)
【文献】
特開2011−190245(JP,A)
【文献】
大豆たん白質研究,2006年,Vol.9,p.96-101
【文献】
日本食品科学工学会第63回大会講演集,2016年08月,63rd,p.121,3Ea3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
A61K 36/00−36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
睾丸エキスを有効成分として含む、アディポネクチン発現増強用(ただし糖尿病処置用は除く。)組成物。
【請求項2】
睾丸エキスを有効成分として含み、大豆イソフラボンをさらに含む、アディポネクチン発現増強用組成物。
【請求項3】
大豆イソフラボンと睾丸エキスの質量比が1:0.3〜7.0である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
大豆イソフラボンと組み合わせて用いるための、睾丸エキスを有効成分として含む、アディポネクチン発現増強用組成物。
【請求項5】
大豆イソフラボンと睾丸エキスの質量比が1:0.3〜7.0となるように組み合わせて用いるための、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
睾丸エキスを有効成分として含む、アディポネクチン発現増強用組成物であって、メタボリックシンドローム、およびそれに関連する循環器疾患を処置するための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アディポネクチンの発現の増強のための組成物に関する。本発明の組成物は、アディポネクチンの発現増強およびアディポネクチンの発現増強により改善される生体機能の維持・向上のために用いることができる。本発明は、一般食品、健康食品、健康、美容および医療に関連する分野で有用である。
【背景技術】
【0002】
アディポネクチンは1996年に大阪大学医学部が発見した脂肪細胞が分泌するホルモンであり、その血中濃度は、一般的なホルモンの血中濃度が数ng/mlであるのに比べて桁違いに高く、μg/mlオーダーに達する。アディポネクチンについては非常に多くの機能が、例えば、糖の取り込み利用の促進、脂肪の分解、血管の拡張、血管の修復、腫瘍の増殖抑制が知られている。そのため、アディポネクチンの血中濃度の上昇により、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化、がん等への効果が期待されている。またアディポネクチンは、メタボリックシンドローム対策のキー分子と考えられており、アディポネクチンを上昇させる食事によって、食事制限および運動制限なしで抗メタボリックシンドローム効果を示したとの報告がある(非特許文献1)。
【0003】
幾つかの食品成分については、アディポネクチンを上昇させる効果、または抗メタボリックシンドローム効果やメタボリックシンドロームに関連する2型糖尿病や肥満に対する効果が報告されている。例えば特許文献1は、タンパク質、脂質および糖質を含有する栄養組成物であって、エネルギー比率がタンパク質10〜25%、脂質10〜35%および糖質40〜60%であり、かつ脂質のエネルギー比率中のオレイン酸エステルが60〜90%、糖質のエネルギー比率中のパラチノースおよび/またはトレハルロースが60〜100%である、PPARおよび/またはPPAR関連因子産生増強用組成物を提案し、この栄養組成物によるインスリン抵抗性や肥満の改善効果により、耐糖能異常、2型糖尿病や肥満が治療または予防できると述べている。また特許文献2は、ホスファチジルイノシトールを含有するアディポネクチン上昇剤を提案する。特許文献3は、グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、イソフラボン類の少なくとも1種、およびカルニチン類もしくはカルニチン前駆体の少なくとも1種を含有してなるメタボリックシンドロームの予防、改善または治療組成物を提案する。特許文献4は、明日葉のカルコンおよびイソフラボンを含有する組成物を提案し、この組成物が優れたアディポネクチン産生誘導作用を奏すると述べている。
【0004】
一方、豚睾丸は、海外では様々な料理に利用される食経験のある食材であり、豚睾丸を原料として抽出したエキスには、ラットにおけるテストステロン分泌促進機能、ラットにおける精子形成促進機能、ラットにおける運動持久力向上機能等が確認されてきた(非特許文献2)。しかしながら、睾丸エキスについては、アディポネクチンを上昇させる効果は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2006/006286
【特許文献2】特開2008−291002号公報
【特許文献3】国際公開WO2008/093826
【特許文献4】特開2011−190245号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Miki Okada-Iwabu et al., A small-molecule AdipoR agonist for type 2 diabetes and short life in obesity, Nature 503, 493-499 (28 November 2013) doi:10.1038/nature12656
【非特許文献2】Muneshige Shimizu et al., 豚睾丸エキス「P-テスティス」の滋養強壮作用, Food style 21, 11(4), 46-48, 2007-04, 食品化学新聞社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年その増加が報告されるメタボリックシンドロームは様々な疾患の引き金となることがわかっており、その対策は急務である。
【0008】
本発明者らは、生物資源を活用して、健康に役立つ食品・素材の研究開発に取り組んできた。その中で、今般、メタボリックシンドロームおよびその関連疾患の予防、改善効果を有する成分を見出すことを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下を提供する。
[1]睾丸エキスを含む、アディポネクチン発現増強用組成物。
[2]大豆イソフラボンをさらに含む、1に記載の組成物。
[3]大豆イソフラボンと睾丸エキスの質量比が1:0.3〜7.0である 、2または3に記載の組成物。
[4]アディポネクチン発現増強のための、大豆イソフラボンおよび睾丸エキスの組み合わせ。
[5]大豆イソフラボンと睾丸エキスの質量比が1:0.3〜7.0である 、4に記載の組み合わせ。
[6]メタボリックシンドローム、ならびにそれに関連する糖尿病および循環器疾患を処置するための、1〜5のいずれか1項に記載の組成物または組み合わせ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】食品由来素材のアディポネクチン発現増強効果。豚睾丸エキス(PT)において、顕著なアディポネクチンの増強作用が確認された。
【
図2】PTとダイゼインとのアディポネクチン発現増強効果の比較。PTは5mg/mlまで濃度依存的にアディポネクチンの発現を増強し、それはダイゼインによる効果を上回るものであった。
【
図3】PTとダイゼインとの組み合わせの効果。PTとダイゼインとの同時添加は、目的の効果を相乗的に増強した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔有効成分〕
本発明は、アディポネクチンの発現を増強するための、睾丸エキスの使用、ならびにダイズイソフラボンおよび睾丸エキスの組み合わせ使用に関する。
【0012】
(睾丸エキス)
本発明における有効成分の一つは睾丸エキスである。睾丸エキスは、原料である睾丸から抽出されたものを指す。睾丸エキスは、典型的には、原料を、酵素分解、適切な溶媒による抽出、圧搾等の操作に供して得られた液状物から固形物を除いた液であるが、睾丸エキスの形態は、油状、ペースト状、ゲル状、液体状、固体状、粉末状等いずれでもあり得る。睾丸エキスは、粗精製、殺菌等の工程を経たものであってもよい。
【0013】
睾丸エキスは、動物性試料からエキスを得る際に用いられる公知の方法を利用して製造することができる。原料は、種々の動物から、例えば、ブタ、牛、ヤギ、イノシシ等から得ることができる。原料は必要に応じて洗浄し、裁断することができる。製造工程は、例えば、酵素分解、酵素失活、ろ過、濃縮、殺菌、乾燥の各工程を含む。酵素分解は、例えばプロテアーゼによる加水分解することによる。使用されるプロテアーゼとしては、食品、医薬品または化粧品の製造のために許容されるものであり、タンパク質を分解できるものであれば特に限定されず、例えば、パパイン、トリプシン、ペプシン、ブロメライン、サーモライシンなどが例示できる。プロテアーゼは2種類以上を併用してもよい。酵素の失活処理は、例えば、十分な温度にまで加温することによる。得られた原料の酵素分解物は、必要に応じて活性炭、珪藻土等を用いてろ過して固形物を除去し、また粗精製してもよい。ろ過物または粗精製物はさらに加熱により水分を蒸発させて濃縮してもよい。得られた濃縮物は必要に応じて殺菌し、さらに慣用の乾燥手段、例えば、熱風乾燥、スプレー乾燥、凍結乾燥等により、乾燥して粉末状としてもよい。
【0014】
(大豆イソフラボン)
大豆イソフラボンは、大豆に含まれるイソフラボン類の総称である。大豆イソフラボンは、非配糖体(アグリコン)である、ダイゼイン、ゲニステイン、およびグリシテイン、ならびに配糖体であるゲニスチン、ダイジン、およびグリシチンを含む。本発明の組成物は、これらを1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよい。好ましい大豆イソフラボンの例は、ダイゼインである。
【0015】
ダイゼインは、下式で表される化合物である。
【0017】
本発明においては、大豆イソフラボンとして、植物抽出物、粗精製物、単離されたもの、精製されたもの、合成物を用いることができる。
【0018】
本発明に関し、大豆イソフラボンの量、濃度、比率を数値で表すときは、特に記載した場合を除き、アグリコンとしての値である。また、大豆イソフラボンとして複数の成分が用いられている場合は、大豆イソフラボンの量、濃度、比率は、特に記載した場合を除き、複数の成分の合計量、合計量に基づく濃度および比率を指す。
【0019】
大豆イソフラボン配糖体から大豆イソフラボンアグリコンに換算する場合、配糖体とアグリコンとの分子量の比から求めることができる。また、大豆イソフラボン配糖体から大豆イソフラボンアグリコンへの換算は、便宜的に、3種類のアグリコン中一番エストロゲン活性の高いゲニステイン(分子量(270.24)とその配糖体であるゲニスチンの分子量(432.38)との比(0.625)を係数として用いて行ってもよい。例えば、大豆イソフラボン配糖体10mgは、大豆イソフラボンアグリコンとして6.25mgに換算できる。
【0020】
〔用途、機能〕
本発明の組成物は、アディポネクチンの発現増強のために用いることができる。アディポネクチンの発現増強とは、アディポネクチンの血中濃度を上昇させること、アディポネクチンのmRNA発現を上昇させることを含む。本発明によれば、睾丸エキスと組み合わせることにより、大豆イソフラボンの摂取量を抑えながらもアディポネクチンの発現を増強させることができる。
【0021】
アディポネクチンの発現増強作用の有無および程度は、本明細書の実施例の項に示したように、培養細胞を用いて評価することができる。培養細胞としては、各種の動物由来の、種々のものを用いることができるが、例えば、前駆脂肪細胞株等の脂肪組織に関連した細胞を用いることが好ましい。
【0022】
本発明の組成物はまた、アディポネクチンの発現増強が関連する疾患または状態(病的な状態と、病的ではない状態とを含む。)の処置のために用いることができる。例えば、メタボリックシンドローム、それと強く関連する糖尿病および循環器疾患の処置のために、用いることができる。
【0023】
本発明で疾患または状態について「処置」というときは、発症リスクの低減、発症の遅延、予防、治療、進行の停止、遅延を含む。処置には、医師が行う、病気の治療を目的とした医療行為と、医師以外の者、例えば栄養士(管理栄養士、スポーツ栄養士を含む。)、スポーツ指導員、プロスポーツ選手(アスリート)、保健師、助産師、看護師、臨床検査技師、美容部員、エステティシャン、食品製造者、食品販売者等が行う、非医療的行為とが含まれる。また処置には、特定の食品の投与または摂取の推奨、食餌方法指導、保健指導、栄養指導(傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導、および健康の保持増進のための栄養の指導を含む。)、給食管理、給食に関する栄養改善上必要な指導を含む。本発明における処置の対象は、ヒト(個体)を含み、好ましくは、上述したいずれかの処置を施すことが望ましいか、または上述したいずれかの処置を施す必要のあるヒトである。
【0024】
処置の際には、対象に睾丸エキス、またはダイズイソフラボンおよび睾丸エキスを摂取させる(投与する、使用する、ということもある。)。摂取させる量は、当業者であれば、対象の、年齢、体重、性別、適用される疾患または状態等に応じ、適宜設計することができる。
【0025】
睾丸エキスの摂取量は、例えば、1 mg/day以上とすることができ、5 mg/day以上とすることが好ましく、10 mg/day以上とすることがより好ましく、20 mg/day以上とすることがさらに好ましい。また、25 mg/day以上としてもよく、50 mg/day以上としてもよく、100 mg/day以上としてもよく、200 mg/day以上としてもよい。いずれの場合であっても、1,000 mg/day以下としてもよく、700 mg/day以下としてもよく、400 mg/day以下としてもよい。睾丸エキスとして、上記の一日当たりの摂取量を一度に摂取してもよいし、複数回に分けて摂取してもよい。なお本発明に関し、睾丸エキスの量を表すときは、睾丸を、酵素分解し、酵素失活し、ろ過し、濃縮し、殺菌し、および乾燥させることにより得られた睾丸エキスパウダーの量で記載している。例えば、P-テスティス(日本ハム株式会社製、以下、PTともよぶ)の量が、本明細書に記載の睾丸エキスの量にかかる所定の範囲内にある限り、本発明の範囲に包含される。その他の睾丸エキスを用いる場合、PTに含有される成分量や固形分等を指標として、PTに換算したときに、その換算値が本明細書に記載の睾丸エキスの量にかかる所定の範囲内にある限り、本発明の範囲に包含される。
【0026】
大豆イソフラボンの摂取量は、例えば、5 mg/day以上とすることができ、10 mg/day以上とすることが好ましく、15 mg/day以上とすることがより好ましく、20 mg/day以上とすることがさらに好ましい。下限値がいずれの場合であっても、180 mg/day以下とすることができ、120 mg/day以下とすることが好ましく、60 mg/day以下とすることがより好ましく、30 mg/day以下とすることがさらに好ましい。大豆イソフラボンとして、上記の一日当たりの摂取量を一度に摂取してもよいし、複数回に分けて摂取してもよい。
【0027】
大豆イソフラボンと睾丸エキスとを組み合わせて摂取させる場合、大豆イソフラボンと睾丸エキスとの質量比は、1:0.3〜7.0とすることができ、1:0.5〜6.0とすることが好ましく、1:1.0〜5.0とすることがより好ましく、1:1.2〜4.0とすることがさらに好ましく、1:1.3〜2.0とすることがさらに好ましい。組み合わせて摂取させるとは、同時に吸収されるように摂取させることを指し、二成分を同時に摂取させること、および二成分それぞれを別個に時間を空けずに摂取させることを含む。
【0028】
睾丸エキスはまた、細胞に対し、例えば、0.1 mg/ml以上の濃度で添加することができ、0.5 mg/ml以上の濃度で添加することが好ましく、0.75 mg/ml以上の濃度で添加すること、例えば1 mg/ml以上の濃度で添加することが、より好ましい。いずれの場合であっても、50 mg/ml以下の濃度で添加してもよく、20 mg/ml以下の濃度で添加することが好ましく、10 mg/ml以下の濃度で添加すること、例えば8 mg/ml以下の濃度で添加すること、
5 mg/ml以下の濃度で添加することがより好ましい。
【0029】
大豆イソフラボンはまた、細胞に対し、例えば、5μM以上の濃度で添加することができ、12.5μM以上の濃度で添加することが好ましく、25μM以上の濃度で添加すること、例えば30μM以上の濃度、40μM以上の濃度、50μM以上の濃度で添加することが、より好ましい。いずれの場合であっても、 200μM以下の濃度で添加してもよく、100 μM以下の濃度で添加することが好ましく、90μM以下の濃度で添加すること、例えば80μM以下、75μM以下、70μM以下の濃度で添加することが、より好ましい。
【0030】
大豆イソフラボンと睾丸エキスとを組み合わせる場合はまた、細胞に対し、睾丸エキスを0.01〜5 mg/ml以上の濃度で添加するとき、大豆イソフラボンは14〜350μMの濃度で添加することができ、16〜200μMの濃度で添加することが好ましく、20〜95μMの濃度で添加することがより好ましく、25〜85μMの濃度で添加することがさらに好ましく、50〜80μMの濃度で添加することがさらに好ましい。
【0031】
〔組成物〕
本発明の組成物は、食品組成物、医薬組成物または化粧用組成物とすることができる。経口で摂取されるもの、すなわち食品組成物または経口投与用の医薬組成物であることが好ましい。なお、以下では本発明の組成物を、食品組成物である場合を例に説明することがあるが、当業者であれば、その説明を食品以外の組成物にも適宜あてはめて理解できる。また本発明に関し、組成物が食品である場合を想定して「摂取」という用語を用いることがあるが、「摂取」は、組成物の形態に応じ、「投与」(主として医薬の場合)、「使用」(主として化粧品の場合)等に置き換えることができる。
【0032】
食品は、固形の経口摂取物、並びに飲料およびスープのような液状の経口摂取物を含む。食品はまた、一般食品(いわゆる健康食品、サプリメント、ドリンク剤、ゼリー飲料を含む。栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品と表示されることもある。)、保健機能食品(機能性表示食品、栄養機能食品、および特定保健用食品を含む。)を含む。また治療食(治療の目的を果たすもの。医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの。)、食事療法食、成分調整食、減塩食、介護食、減カロリー食、およびダイエット食を含む。そのまま摂取される形態のもののほか、食品素材等の食品原料として使用されるものも含む。またヒト用のもののほか、非ヒト動物用のもの(ペットフード、動物用サプリメント、飼料等)も含む。
【0033】
本発明の食品組成物の形態の例として、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液状製剤(エリキシル剤、リモナーデ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、溶液剤、ドリンク剤を含む。)、ゲル状剤、治療食、飲料、菓子、食肉加工品、魚介加工品、野菜加工品、惣菜、調味料組成物、食品添加物を挙げることができる。
【0034】
本発明の食品組成物には、目的の効果を発揮しうる限り、有効成分以外の他の成分を配合することができる。他の成分は、食品として許容される種々の添加剤、または医薬として許容される種々の添加剤であり得る。この例には、賦形剤、酸化防止剤抗(酸化剤)、香料、調味料、甘味料、着色料、増粘安定剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料等、酵素、光沢剤、酸味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、結合剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、凝固剤等である。
【0035】
他の成分は、有効成分以外の機能性成分であってもよい。他の機能性成分に例としては、アミノ酸類(例えば、分岐鎖アミノ酸類、オルニチン)、不飽和脂肪酸類(例えば、EPA、DHA)、ビタミン類、微量金属類、グルコサミン、コンドロイチン類等が挙げられる。
【0036】
本発明の組成物が有効成分と有効成分以外の他の成分からなる場合、有効成分の含有量は、当業者であれば、製造し易さ、用い易さ等の点から適宜設計でき、例えば、0.1〜99.9%とすることができ、また1〜95%とすることができ、また10〜90%とすることができ、さらに51〜90%以上とすることができる。
【0037】
本発明の組成物における、有効成分である大豆イソフラボンおよび睾丸エキスの含有量は、当業者であれば適宜設計できる。
【0038】
組成物における睾丸エキスの含有量は、組成物の一日摂取量あたり、例えば、1 mgとすることができ、5 mgとすることが好ましく、10 mg以上とすることがより好ましく、20 mg以上とすることがさらに好ましい。また、25 mg以上としてもよく、50 mg以上としてもよく、100 mg以上としてもよく、200 mg以上としてもよい。いずれの場合であっても、一日摂取量あたり、1,000 mg以下とすることができ、400 mg以下としてもよい。
【0039】
組成物における大豆イソフラボンの含有量は、組成物の一日摂取量あたり、例えば、5 mg以上とすることができ、10 mg以上とすることが好ましく、15 mg以上とすることがより好ましく、20 mg以上とすることがさらに好ましい。下限値がいずれの場合であっても、180 mg以下とすることができ、120 mg以下とすることが好ましく、60 mg以下とすることがより好ましく、30 mg以下とすることがさらに好ましい。
【0040】
組成物が大豆イソフラボンと睾丸エキスとを組み合わせて含有する場合、大豆イソフラボンと睾丸エキスとの質量比は、1:0.3〜7.0とすることができ、1:0.5〜6.0とすることが好ましく、1:1.0〜5.0とすることがより好ましく、1:1.2〜4.0とすることがさらに好ましく、1:1.3〜2.0とすることがさらに好ましい。
【0041】
本発明の食品組成物を治療食(治療の目的を果たすもの。医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの。)、食事療法食、成分調整食、減塩食、介護食、減カロリー食、ダイエット食、またはスポーツ食(有酸素運動における能力増強を目的とした食、有酸素運動における持久力の増強を目的とした食、競技当日までの栄養を身体に蓄積するための食、競技中に栄養補給するための食、および競技終了後の疲労の回復を目的とする食が含まれる。)とする場合、有効成分の含量は、一食としての摂取量を勘案して設計することができる。
【0042】
本発明の食品組成物は、繰り返し対象に摂取させることができ、また長期間にわたり、対象に摂取させることができる。特に、メタボリックシンドロームの処理を目的とする場合は、また日常的に摂取させることが好ましいであろう。
【0043】
本発明の食品組成物には、アディポネクチンの発現増強のために用いることができる旨を表示することができ、また特定の対象に対して摂取を薦める旨を表示することができる。より具体的には、アディポネクチンの発現増強が望ましい対象に適している旨、アスリートに適している旨、アディポネクチンの発現増強に関連した疾患または状態の処置(例えば、メタボリックシンドロームと強く関連する糖尿病および循環器疾患、認知症およびパーキンソン病に代表される神経変性疾患、がんの処理)、有酸素運動における能力増強、有酸素運動における持久力の増強等に資する旨を表示することができる。表示は、直接的にまたは間接的にすることができ、直接的な表示の例は、製品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグ等の有体物への記載であり、間接的な表示の例は、ウェブサイト、店頭、展示会、看板、掲示板、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、郵送物、電子メール等の場所または手段による、広告・宣伝活動を含む。
【0044】
〔製造方法〕
本発明の組成物は、種々の公知の技術を用いて製造することができる。有効成分を所定の含有量または濃度になるように調整する工程は、製造工程の種々の段階で適用できる。当業者であれば、有効成分の溶解性、安定性、揮発性等を考慮して、本発明の組成物のための製造工程を、適宜設計しうる。
【0045】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明の範囲は実施例に記載したものに限られない。
【実施例】
【0046】
〔実験1:睾丸エキス〕
豚睾丸を原料とし、酵素分解、酵素失活、ろ過、濃縮、殺菌、および乾燥の工程を経ることにより製造された、P-テスティス(PT)(日本ハム株式会社製)を用いた。
PTの組成を下表に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
〔実験2:アディポネクチン発現増強効果の評価〕
(1)方法
脂肪モデル細胞を用いて畜肉由来成分のアディポネクチン分泌促進効果について評価した。マウス由来前駆脂肪細胞(3T3-L1細胞)を、10%FBS含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、5% CO
2条件下にて培養し、コラーゲンコートされた12ウェルプレートに1ウェルあたり1×10
5個にて播種後、コンフルエントになるまで培養した。2〜3日後コンフルエントになった細胞の培地を、0.5 mmol/Lイソブチルメチルキサンチン、1 mol/Lデキサメタゾン、10 g/mLインスリンおよび10%FBSを含むDMEM培地に交換した。その際、それぞれのウェルにダイゼイン、素材A〜J、豚睾丸エキス粉末(PT)および対照としてPBSを加えた13種類の成分もそれぞれの所定の終濃度となるように添加した。各成分の濃度および詳細は表3にて示す。2日後、各成分を添加した10 g/mLインスリンおよび10%FBSを含むDMEM培地に交換し、測定を行うまで2〜3日毎に前述の培地に交換しつつ5〜7日間培養した。
【0050】
培養終了後、培地を除き0.5 mlのTRIzol(Invitrogen)を加え細胞を融解し、1.5 mlのエッペンチューブに回収した。室温で5分間静置した後、0.1 mlのクロロホルムを添加し、10秒間ボルテックスにて攪拌した。5分間静置後、15000 rpm、4℃にて10分間遠心し、透明の水層のみを丁寧に新しいエッペンに回収した。これに100%エタノールを加え、よくピペッティングした上でスピンカラムに全量添加し、10000 rpmにて1分間遠心した。その後、スピンカラムにWash Buffer(Promega)を0.5 ml添加し、10000 rpmにて1分間遠心する洗浄作業を2回繰り返し、スピンカラムを数分間風乾した後、Nuclease-free waterを40μlスピンカラムに加え、さらに15000 rpmにて1分間遠心することでtotal RNAを得た。
【0051】
逆転写反応はReverTra Ace qPCR RT Kit(TOYOBO)を用いて行った。プロトコルはメーカーのプロトコルに従った。次にリアルタイムPCRは、THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix (TOYOBO)を用いて行った。アディポネクチン遺伝子特異的プライマーと、対照のβ-actin遺伝子特異的プライマーを用い、測定は、CFX96 Deep Well Real-Time System(BIO-RAD)を使い全て3連で行い、結果はそれぞれのアディポネクチンmRNA発現をβ-actinのアディポネクチンmRNA発現にて割った値で示した。
【0052】
実験に用いた他の食品素材等の詳細を下表に示した。
【0053】
【表3】
【0054】
(2)結果
結果を
図1に示した。PTにおいて、顕著なアディポネクチンの増強作用が確認された。
【0055】
〔実験3:ダイゼインとの比較〕
(1)方法
畜肉由来成分を細胞に添加した際の培養上清中のアディポネクチン濃度について評価した。実験2と同様の方法で細胞を準備し、培養終了時に回収した培養上清をマウス/ラットアディポネクチンELISAキット(大塚製薬)を用いて測定した。
(2)結果
結果を
図2に示した。PTは5mg/mlまで濃度依存的にアディポネクチンの発現を増強し、それはダイゼインによる効果を上回るものであった。
【0056】
〔実験4:組み合わせによる効果の評価〕
(1)方法
ダイゼインで単独処理したものと、ダイゼインとPTで同時処理したものについて、そのアディポネクチン発現の差を評価した。実験2および3の方法に従って細胞の播種からリアルタイムPCR、ELISAまでを行った。
【0057】
(2)結果
結果を
図3に示した。ダイゼインとPTの同時添加は、アディポネクチン発現を相乗的に増強させた。なお、実験におけるダイゼインおよびPTの濃度およびダイゼインに対するPTの質量比を下表にまとめた。
【0058】
【表4】
【0059】
〔製造例〕
(1)カプセル剤
大豆イソフラボン0.3重量部、上記の実験1で得た豚睾丸エキス0.9重量部および乳糖1.3重量部を混合して均一化した後、常法に準じてハードカプセルに充填し、内容量250mgのカプセル剤(大豆イソフラボン30mg、豚睾丸エキス90mg/カプセル、1日の推奨摂取量1カプセル)を製造する。
【0060】
(2)錠剤
マルトース、デキストリン、デンプン、ビタミンE含有直物油、イソマルトオリゴ糖、難消化性デキストリン、貝カルシウム、トレハロース、ショ糖エステル、ビタミンC、クエン酸、リン酸カルシウム、香料、シェラック、ナイアシン、ビタミンK、甘味料、塩化カリウム、ビタミンA、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ピロリン酸鉄、ビタミンB類、ビタミンD、炭酸マグネシウム、葉酸とともに、1錠(300mg)あたり大豆イソフラボン10mgおよび豚睾丸エキス50mgを含む錠剤を製造する(1日の推奨摂取量3錠)。
【0061】
(3)スポーツ用飲料
甘味料、ビタミン類、アイソトニックミックス等を合計20g、クエン酸0.2g、フレーバー0.1g、大豆イソフラボンおよび実験1で得た豚睾丸エキスの混合物0.01gに、水を加えて全量を100重量部とし、常法により飲料を調製し、500ml入りの容器詰飲料とする(大豆イソフラボン15mg、豚睾丸エキス35mg/500ml)。
【0062】
(4)ゲル状剤
グラニュー糖8重量部、増粘多糖類を6重量部をあらかじめ混合し、ゼラチン加水分解物2重量部と適量の水を加え、加熱溶解した。あら熱を除去した後、アイソトニックミックス10重量部、フレーバー0.1重量部、大豆イソフラボンおよび実験1で得た豚睾丸エキスの混合物0.02重量部、ビタミンミックス0.09重量部、クエン酸0.3重量部を加え、全量を100重量部とし、常法により一食150gのゲル状剤を製造する(大豆イソフラボン10mg、豚睾丸エキス20mg/150ml)。