(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示における不等毛植物門に属する微細藻類とは、微細藻類のうち、不等毛植物門に属するものをいう。微細藻類とは、酸素を発生する光合成を行う生物の中からコケ植物、シダ植物、及び種子植物を除いた残りのうちの、細胞サイズが直径1μm〜100μmのものをいう。なお、細胞サイズは、光学顕微鏡を用いて観察倍率400倍で測定した細胞の長軸径である。不等毛植物門に属する微細藻類の具体例としてはBacillariophyceae綱、及びEustigmatophyceae綱等が挙げられる。Bacillariophyceae綱の微細藻類の具体例としては、Chaetoceros属、Nitzschia属、及びSkeletonema属等が挙げられる。Eustigmatophyceae綱の微細藻類の具体例としては、Nannochloropsis(ナンノクロロプシス)属が挙げられる。このうち、脂質の生産性及び脂質の回収性の観点から、Eustigmatophyceae綱の微細藻類が好ましく、中でもNannochloropsis属がより好ましい。Nannochloropsis属の藻類としては、Nannochloropsis oculata、Nannochloropsis salina、Nannochloropsis gaditana、Nannochloropsis oceanicaなどが例示される。微細藻類は、海中等に生息するものを採取したものでも、培養したものでもよく、さらには商業的に入手したものでもよい。
【0012】
本実施形態の藻類の処理方法は、不等毛植物門に属する微細藻類に対し、初期窒素濃度が12mg/L未満の培地を用いて3日以上培養する環境的ストレスを加える第1の工程と、環境的ストレスを加えた微細藻類に対し、pHが2.0以上、10.0以下で、且つ35℃以上、80℃以下の温度で熱処理を行う第2の工程とを備えている。
【0013】
本願発明者らは、微細藻類をアルカリ処理して溶媒抽出した場合と、アルカリ処理せずに溶媒抽出した場合との脂質回収量の比較を行った。この結果、環境的ストレスを加えていない微細藻類の場合には、アルカリ処理をした場合と、アルカリ処理をしていない場合とで抽出量に大きな差が認められないが、環境的ストレスを加えた微細藻類の場合には、アルカリ処理をした場合には、環境的ストレスを加えていない場合よりも脂質の回収量が増大するが、アルカリ処理をしていない場合には、環境的ストレスを加えていない場合と同程度の量しか回収できないことを見いだした。
【0014】
これは、微細藻類に環境的ストレスを加えることにより、藻体内に蓄積される脂質の量は増大するが、環境的ストレスを加えていない場合と比べて脂質の回収が困難な状態となっていることを示している。環境的ストレスを加えることにより、藻体内に蓄積される脂質の量を増大させたとしても、脂質を回収するために、高圧条件や、強酸又は強アルカリ条件による処理が必要となれば、商業的な価値は大きく低下する。
【0015】
一方、本願発明者らは、環境的ストレスを加えて、脂質の蓄積量を増大させた場合においても、pHが2.0以上、10.0以下で、且つ35℃以上、80℃以下の温度で熱処理を行うことにより、環境的ストレスを加えていない場合と同等又はそれ以上の脂質を回収しやすい状態にできることを見いだした。
【0016】
なお、ここでいう環境的ストレスとは、微細藻類の生育に最適ではない環境とすることにより微細藻類に与えられるストレスである。例えば、窒素等の栄養成分が増殖に最適な状態よりも欠乏した状態としたり、塩濃度、温度又は生育密度等を増殖に最適な状態とは異なる状態としたりすることである。
【0017】
<培養工程>
本実施形態において、環境的ストレスを加える第1の工程よりも前に、微細藻類を増殖させる培養工程(前培養)を行うことができる。培養工程において微細藻類を増殖させ、第1の工程において環境的ストレスを加えて微細藻類に脂質を蓄積させることにより、効率良く脂質を生産することができる。前培養は、微細藻類を初期窒素濃度が12mg/L以上の培地を用いて3日以上培養することにより行うことができる。
【0018】
初期窒素濃度が高い条件で前培養を行うことにより、藻類の細胞数を大きく増殖させることができる。前培養において藻類を増殖させた後、環境的ストレスを加えて藻類に脂質を蓄積させることにより、より効率良く脂質を生産することができる。
【0019】
前培養における初期窒素濃度は、細胞数を増大させる観点から、好ましくは12mg/L以上、より好ましくは30mg/L以上、さらに好ましくは40mg/L以上、さらにより好ましくは50mg/L以上、さらにより好ましくは60mg/L以上とすることができる。培養液が極端に富栄養化することを抑える観点から、初期窒素濃度は、好ましくは200mg/L以下、より好ましくは150mg/L以下、さらに好ましくは100mg/L以下、さらにより好ましくは80mg/L以下とすることができる。
【0020】
前培養における初期窒素濃度は、培養液の調製時における含窒素化合物の濃度×(窒素の分子量(g/mol)/含窒素化合物の分子量(g/mol))から計算できる。例えば、含窒素化合物として分子量が85g/molである硝酸ナトリウムを用いる場合には、硝酸ナトリウムの濃度×(14/85)として計算できる。また、培養液中の窒素濃度は、酸化分解-化学発光法を利用した全窒素測定装置を用いて測定することができる。
【0021】
前培養において用いる培養液の組成は、通常の藻類を培養する培地に準じた組成とすることができる。例えば、f/2培地、IMK培地、ESM培地等に準じた組成とすることができる。培養する藻類の種類に応じて、培地を選択し、組成を適宜調整することができる。
【0022】
前培養における培養液は塩を含むようにすることができる。前培養において、培養液の塩濃度をある程度高くすることにより、後で行う環境的ストレスを加える第1の工程において脂質の蓄積量を増大させることができる。脂質の蓄積量を増大させる観点から、前培養における培養液の塩濃度は、好ましくは18g/L(1.8%)以上、より好ましくは36g/L(3.6%)以上、さらに好ましくは55g/L(5.5%)以上、さらにより好ましくは65g/L(6.5%)以上とすることができる。前培養において細胞を十分に増殖させる観点から、前培養工程における培養液の塩濃度は、好ましくは85g/L(8.5%)以下、より好ましくは80g/L(8.0%)以下とすることができる。なお、培養液の塩濃度は、電気伝導度及び液温から塩濃度を測定する塩濃度計を用いて求めることができる。
【0023】
前培養において用いる培養液は、例えば窒素成分及びその他の藻類の生育に必要な培地成分を人工海水又は所定の濃度になるように塩を添加した塩添加人工海水に溶解させることにより調製することができる。培地成分と必要量の塩とを先に混合して人工海水に溶解させることもできる。人工海水に代えて天然の海水を用いることもできる。また、培地成分と人工海水の成分と必要量の塩とを水に溶解させて調製することもできる。添加する塩には塩化ナトリウムを用いることができる。
【0024】
前培養は、藻類が十分に増殖するまで培養を行うことができる。細胞数及び培養液中の窒素濃度等を指標として培養状態をモニタして、これらの値が予め定めた条件と一致するまで培養を行うことができる。培養状態をモニタすることなく、時間だけを管理することも可能である。
【0025】
具体的な培養期間は、温度や光照射量などの培養の環境や培養のスケールに応じて設定することができるが、生産効率の観点から、好ましくは3日以上、より好ましくは4日以上、さらに好ましくは5日以上とすることができ、好ましくは21日以下、より好ましくは15日以下、さらに好ましくは10日以下とすることができる。
【0026】
培養の環境及び培養のスケール等によって異なるが、前培養開始時における培養液中の微細藻類の濃度(藻体濃度)は、生産効率の観点から、好ましくは0.01g/L以上、より好ましくは0.02g/L以上、さらに好ましくは0.03g/L以上である。また、前培養終了時の藻体濃度は、培養環境等に応じて設定することができるが、生産効率の観点から、好ましくは0.1g/L以上、より好ましくは0.2g/L以上、さらに好ましくは0.3g/L以上である。
【0027】
また、前培養終了時の窒素濃度は、生産効率の観点から、好ましくは15mg/L以下、より好ましくは10mg/L以下、さらに好ましくは5mg/L以下である。
【0028】
<第1の工程>
第1の工程は、微細藻類に対し、環境的ストレスを加える条件下で培養(本培養)を行うことにより、脂質蓄積量を増大させる工程である。本培養には、例えば前培養により増殖させた微細藻類を用いることができ、初期窒素濃度が12mg/L未満の培地を用いて3日以上培養することにより行うことができる。
【0029】
脂質の蓄積を促進する観点から、本培養における培養液の初期窒素濃度は、12mg/L未満、好ましくは6mg/L以下、より好ましくは3mg/L以下であり、窒素成分が実質的に含まれていない条件とすることもできる。ここで、窒素成分が実質的に含まれていない条件とは、窒素成分を意図的に加えていない条件である。培養の開始時における窒素濃度が低い方が、1つの細胞内に蓄積される脂質の量を多くすることができる。
【0030】
本培養は、例えば前培養を行った培養液を希釈してさらに培養することにより行うことができる。希釈倍率は、脂質生産量を増大させる観点から、好ましくは1.6倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは2.5倍以上である。また、藻体濃度をある程度以上に保つ観点から、好ましくは20倍以下、より好ましくは15倍以下、さらに好ましくは10倍以下である。
【0031】
本培養開始時の藻体濃度は、特に限定されず培養環境等に応じて設定することができるが、脂質生産量を増大させる観点から、好ましくは0.005g/L以上、より好ましくは0.01g/L以上、さらに好ましくは0.015g/L以上であり、脂質生産性の観点から、好ましくは3.0g/L以下、より好ましくは2.0g/L以下、さらに好ましくは1.0g/L以下である。
【0032】
前培養をした培養液を希釈する希釈液は、希釈後の培養液が本培養に適した状態とできればよい。例えば、通常の耐塩性藻類を培養する培地に準じた組成で、希釈後の窒素濃度が12mg/L未満となる培地とすることができる。通常の耐塩性藻類を培養する培地の例としては、f/2培地、IMK培地、ESM培地が挙げられる。また、第1の培養工程において用いた培養液から窒素成分等を除いた液を希釈液とすることもできる。また、人工海水、人工海水を水で希釈した希釈人工海水、又は人工海水に塩を添加した塩添加人工海水等を用いることができる。人工海水に代えて天然の海水を用いることもできる。さらに、塩を実質的に含まない水を希釈液とすることもできる。
【0033】
前培養において、培養液中の窒素が消費され窒素濃度がほぼ0mg/Lとなっている場合には、本培養の開始時における窒素濃度を適切に制御する観点から、希釈液の初期窒素濃度は、12mg/L未満、好ましくは10mg/L以下、より好ましくは5mg/L以下とすることができ、実質的に窒素を含まないようにすることもできる。
【0034】
希釈した後の培養液の塩濃度は、微細藻類が生育できる濃度であれば特に限定されない。微細藻類の種類にもよるが、脂質生産量を増大させる観点から、塩濃度は、好ましくは90g/L(9.0%)以下、より好ましくは70g/L(7.0%)以下、さらに好ましくは、60g/L(6.0%)以下、さらにより好ましくは45g/L(4.5%)以下とすることができる。本培養における培養液の塩濃度は、藻類の生育に最低限必要な塩を含む条件まで下げることができるが、脂質生産量を増大させる観点から、好ましくは15g/L(1.5%)以上、より好ましくは30g/L(3.0%)以上とすることができる。また、脂質生産量を増大させる観点から、本培養における培養液の塩濃度は、前培養を終了させた際の培養液の塩濃度に対して、好ましくは1.0倍以下、より好ましくは0.9倍以下、さらに好ましくは0.8倍以下とすることができる。
【0035】
培養を効率的に行う観点から、前培養を終了した培養液の一部を抜き取り、希釈液により希釈して本培養を行うことが好ましい。前培養の後に、培養液の少なくとも一部を希釈して本培養を行うことにより、藻類と培養液との分離を行うことなく、前培養から本培養に移行することができ、生産効率を向上させることができる。
【0036】
例えば、前培養を第1の培養槽で行い、前培養の後に、培養液の一部を第2の培養槽に移し、希釈液により所定の希釈倍率に希釈して本培養を行うことができる。第1の培養槽には培養液を加えて継代培養をすることができる。このようにすれば、藻類の株の維持と、脂質の生産とを効率良く行うことができる。なお、第1の培養槽から、他の複数の培養槽にそれぞれ移送を行い、それぞれにおいて本培養を行うこともできる。第2の培養槽への移送量は、藻体濃度をある程度以上に保つ観点から、培養液の好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上、さらにより好ましくは20体積%以上である。また、脂質の蓄積を増大させる観点から、好ましくは60体積%以下、より好ましくは50体積%以下、さらに好ましくは40体積%以下、さらにより好ましくは30体積%以下である。なお、第1の培養槽に希釈液を加えて本培養を行い、抜き出した第2の培養槽において継代培養を行うこともできる。
【0037】
本培養は、藻類の細胞内に脂質が十分に蓄積されるまで行えばよいが、脂質生産量を増大させる観点から、本培養終了時の藻体中の脂質蓄積量は、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは45%以上、さらに好ましくは50%以上とすることができ、脂質生産性の観点から、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは65%以下とすることができる。なお、藻体中の脂質蓄積量は、実施例に記載した方法により求めることができる。
【0038】
脂質蓄積量以外の指標により藻体への脂質の蓄積等をモニタして、この値が予め定めた条件と一致するまで培養を行うことができる。培養状態をモニタすることなく、時間だけを管理することも可能である。一般的には、本培養の培養期間は、温度や光照射量などの培養の環境や培養のスケールに応じて設定することができるが、生産効率の観点から、3日以上、好ましくは5日以上、より好ましくは10日以上、さらに好ましくは15日以上とすることができ、好ましくは40日以下、より好ましくは30日以下、さらに好ましくは25日以下とすることができる。
【0039】
前培養及び本培養は、藻類が生育する温度で培養を行うことができ、例えば、5℃〜40℃の範囲で設定することができる。効率良く培養する観点から、好ましくは10℃〜35℃であり、より好ましくは15℃〜30℃であり、さらに好ましくは20℃〜30℃である。培養槽の大きさ、培養槽が設置された環境、必要とする培養効率及びコスト等を考慮して、積極的な温度制御をしても、積極的な温度制御をしなくてもよい。
【0040】
前培養及び本培養において太陽光を用いて培養を行うことができる。また、人工光を用いたり、太陽光と人工光とを併用したりすることもできる。培養の際に所定の周期で明期と暗期とを作り出すようにしてもよい。第1の培養工程及び第2の培養工程において、培養槽内を積極的に攪拌することも、自然対流させることもできる。また、培養液中の空気又は二酸化炭素の溶存量を高くするように、バブリング等を行うこともできる。
【0041】
環境的ストレスを加える第1の工程として、窒素を欠乏状態として培養する例を示した。しかし、微細藻類の細胞に脂質を蓄積させることができればよく、窒素を欠乏状態とすることに代えて又は窒素を欠乏状態とすることに加えて、塩濃度、紫外線、培養密度及び培養温度等の他の環境的ストレスを加えるようにすることもできる。
【0042】
<第2の工程>
第2の工程では、環境的ストレスを加えられ、藻体内に蓄積された脂質の量が増大した微細藻類に対して、pHが3.5以上、9.5以下で、且つ40℃以上、65℃以下の温度で熱処理を行う。所定のpH範囲及び温度範囲において熱処理を行うことにより、環境的ストレスを加えた微細藻類においても、環境的ストレスを加えていない場合と同等以上に脂質を回収しやすくすることができる。
【0043】
熱処理は、微細藻類を効率良く処理して脂質回収率を向上させる観点から、pH2.0以上、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.5以上、さらに好ましくは3.8以上、さらにより好ましくは4.0以上、さらにより好ましくは4.5以上、さらにより好ましくは5.0以上であり、そして、微細藻類を効率良く処理して脂質回収率を向上させる観点から、pH10.0以下、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下、さらに好ましくは8.5以下、さらにより好ましくは8.0以下、さらにより好ましくは7.5以下、さらにより好ましくは7.0以下、さらにより好ましくは6.5以下、さらにより好ましくは6.0以下である。
【0044】
pHは、JIS Z8802に従った測定方法で、処理液のpHを25℃で測定することにより求めることができる。
【0045】
熱処理の温度は、微細藻類を効率良く処理して脂質回収率を向上させる観点から、35℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは42℃以上、さらに好ましくは43℃以上、さらにより好ましくは45℃以上であり、そして、微細藻類を効率良く処理して脂質回収率を向上させる観点から、80℃以下、好ましくは65℃以下、より好ましくは62℃以下、さらに好ましくは60℃以下、さらにより好ましくは57℃以下、さらにより好ましくは55℃以下、さらにより好ましくは52℃以下、さらにより好ましくは50℃以下である。
【0046】
熱処理の時間は、処理液の温度を上記の熱処理の温度範囲内で維持した時間を表し、微細藻類を効率良く処理して脂質回収率を向上させる観点から、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは3時間以上、さらにより好ましくは5時間以上、さらにより好ましくは8時間以上、さらにより好ましくは10時間以上、さらにより好ましくは20時間以上、さらにより好ましくは24時間以上、さらにより好ましくは48時間以上とすることができる。処理時間の上限は、生産効率の観点から、好ましくは96時間以下、より好ましくは72時間以下とすることができる。
【0047】
熱処理は、所定の時間続けて行えばよいが、合計が所定の時間となるように複数回に別けて行うこともできる。
【0048】
以上の条件の範囲でpH、温度及び時間を自由に組み合わせることができるが、微細藻類を効率良く処理して脂質回収率を向上させる観点から、中でもpHを5.0以上、7.5以下で、温度を45℃以上、60℃以下で、時間を10時間以上とすることが好ましい。このような、pH及び温度範囲とすることにより、藻体細胞内の酵素が活性化され、細胞壁の分解が促進される。
【0049】
熱処理は、開放又は密閉された処理槽により行うことができる。処理槽内の温度は、既知の方法により制御すればよい。例えば、熱源と、所定の温度になるように熱源をオンオフする制御装置とを設けることができる。温度制御は、通常の工業的処理の精度で行えばよく、好ましくは±5℃以下、より好ましくは±3℃以下、さらに好ましくは±1℃以下に制御することができる。制御が困難である場合には、処理液の温度が所定の温度範囲内にある時間の合計が、所定の時間となればよい。熱源は処理槽の内部に設けても、外部に設けてもよい。処理槽はバッチ式であっても、フロー式であってもよい。フロー式の場合、処理液が流れる通路状の処理槽としてもよい。熱処理は常圧で行うことができるが、加圧又は減圧環境で行うこともできる。
【0050】
処理温度は、例えば温度計又は温度センサ等を処理液中に挿入して測定することができる。また、非接触の温度センサを用いて処理液の液温を測定することも可能である。処理液の温度を直接測定するのではなく、処理槽の雰囲気温度又は外部温度等を測定してもよい。この場合、雰囲気温度等と処理液の温度との相関係数を予め求めておき、雰囲気温度等を処理液の温度に換算してもよい。また、温度計又は温度センサ等の出力を記録装置に接続して、連続的に又は周期的に温度を記録することにより、熱処理の時間を精度良く管理することが可能となる。
【0051】
熱処理は、本培養後の培養液をそのまま処理液として行うことができる。また、藻体濃度を調整するための希釈又は濃縮等の操作を行ってから熱処理を行うこともできる。さらに、分散媒の置換又は添加物の添加等を行うこともできる。
【0052】
処理液中の藻体濃度は、特に限定されない。処理効率の観点及び脂質の回収性の観点からは、好ましくは0.1g/L以上、より好ましくは0.5g/L以上、さらに好ましくは0.8g/L以上、さらにより好ましくは1g/L以上、さらにより好ましくは5g/L以上である。また、処理液の流動性及び脂質の回収性の観点から、好ましくは300g/L以下、より好ましくは250g/L以下、さらに好ましくは200g/L以下、さらにより好ましくは100g/L以下、さらにより好ましくは50g/L以下、さらにより好ましくは20g/L以下、さらにより好ましくは10g/L以下である。なお、処理液中の藻体濃度は、実施例に記載された方法により測定された値である。
【0053】
第2の処理は、特に限定されないが、処理効率の観点及び脂質の回収性の観点から、脂質蓄積量が、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは45%以上、さらに好ましくは50%以上、また、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは65%以下の藻体に対して行うことができる。
【0054】
培養液の希釈又は分散媒の置換を行う場合、希釈液又は置換液は、所定のpH範囲とすることができれば特に限定されないが、経済性の観点から水が好ましい。また、海水とすることもできる。希釈液又は置換液は、塩化ナトリウム等の塩、窒素若しくはリンを含む化合物、微量金属、無機系凝集剤、有機系凝集剤、キレート剤、及び緩衝剤等のいずれか1つ又は2つ以上からなる添加物を含んでいてもよい。最終的に調製された処理液が、通常の培養液に含まれる種々の成分を含んでいてかまわない。
【0055】
培養液の濃縮をする場合には、例えばろ過、圧搾、遠心分離、重力沈降、凝集沈降、加圧浮上又は分散媒の蒸発等の方法により行うことができる。上記の方法を組み合わせて多段階の濃縮を行ってもよい。
【0056】
処理液のpHが所定の値ではない場合には、処理液に酸又はアルカリを加えることによりpHを調整することができる。酸は特に限定されず、有機酸、鉱酸又はこれらの混合物を用いることができる。例えば、酢酸、クエン酸、リン酸、塩酸、硝酸又は硫酸等を用いることができる。アルカリは特に限定されないが、炭酸ナトリウム、アンモニア又は水酸化ナトリウム等を用いることができる。また、分散媒を緩衝液としてもよい。緩衝液は必要とするpHに応じて選択すればよいが、酢酸、クエン酸、リン酸又は炭酸ナトリウム等を含む緩衝液を用いることができる。
【0057】
熱処理の際に処理液にどのような添加物を加えてもよい。但し、細胞壁の分解作用を有する酵素、例えば、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ及びラミナリナーゼ等を積極的に添加する必要はない。また、塩、アルカリ、界面活性剤及び洗剤等の細胞壁を分解する作用を有する薬剤を積極的に添加する必要もない。但し、これらの酵素又は薬剤が処理液に含まれていてもかまわない。
【0058】
処理液は、調製後すぐに熱処理をすることができるが、低温若しくは常温での保存又は凍結保存等をすることもできる。熱処理を行う前に、微細藻類が80℃以上の温度にさらされていないことが好ましい。
【0059】
<脂質の回収処理>
環境的ストレスを与えて脂質の蓄積量を増大させた後、本実施形態の熱処理を行って得られた藻類の処理物に対して脂質を回収する処理行うことにより、藻類から脂質を効率良く回収することができる。
【0060】
−脂質−
本開示において、脂質には、単純脂質、複合脂質及び誘導脂質が含まれる。単純脂質には、油脂又は脂肪酸エステルなどの脂肪酸と各種アルコールとのエステル等が含まれる。複合脂質には、脂肪酸、アルコール及びリン酸を含むリン脂質、並びに脂肪酸、アルコール及び糖を含む糖脂質等が含まれる。誘導脂質には、単純脂質又は複合脂質の加水分解生成物であり、水に不溶性の脂肪酸、高級アルコール、ステロール、テルペン、及び脂溶性ビタミン等が含まれる。脂質の回収性の観点から、単純脂質又は複合脂質が好ましく、単純脂質がより好ましく、油脂がさらに好ましい。
【0061】
・油脂
油脂とは、脂肪酸とグリセリンとのエステルを意味し、具体的には、モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリドのような中性脂質をいう。油脂を構成する脂肪酸は、単一でなくてよい。
【0062】
・脂肪酸
脂肪酸は、炭素数が2〜4の短鎖脂肪酸、炭素数が5〜12の中鎖脂肪酸、及び炭素数が12以上の長鎖脂肪酸のいずれであってもよい。また、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよい。飽和脂肪酸の具体例としては、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、及びイコサン酸が挙げられる。一価の不飽和脂肪酸の具体例としては、9−ヘキサデセン酸、及び9−オクタデセン酸等が挙げられる。多価の不飽和脂肪酸の具体例としては、9,12−オクタデカジエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、5,8,11,14−イコサテトラエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、5,8,11,14,17−イコサペンタエン酸、及び4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸が挙げられる。
【0063】
・脂肪酸エステル
脂肪酸エステルとは、油脂以外の、脂肪酸とアルコールとのエステルであり、長鎖脂肪酸と1価又は2価の高級アルコールとのエステルである蝋、中鎖脂肪酸と低級又は高級アルコールとのエステルである中鎖脂肪酸エステル等を含む。
【0064】
−脂質の回収−
脂質の回収方法は、第2の処理をした微細藻類の処理物を含む液から脂質を分取することができれば特に限定されない。例えば、溶媒抽出、遠心分離、凝集沈殿、静置処理、カラムクロマトグラフィー等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて適用することができる。中でも、脂質の回収性の観点から、溶媒抽出、遠心分離、凝集沈殿及び静置処理から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせが好ましく、中でも溶媒抽出と遠心分離との組み合わせ、又は溶媒抽出と静置処理との組み合わせが好ましい。
【0065】
溶媒抽出は、第2の処理をした微細藻類の処理物を含む液に抽出用の溶媒を添加して混合すればよい。溶媒を添加した後、攪拌を行ってもよい。微細藻類から溶出した脂質は、溶媒に溶解するため、溶媒相と水相とを相分離させて、溶媒相を回収することにより、脂質を回収することができる。
【0066】
溶媒抽出に用いる溶媒としては、例えば、酢酸メチル、及び酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、及びジエチルエーテル等の鎖状並びに環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、及び四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、及び石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、及びトルエン等の芳香族炭化水素類;ピリジン類;ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、及びイソプロピルアルコール(2−プロパノール)等のアルコール類;ブチレングリコール等の多価アルコール類;メチルエチルケトン等のケトン類;超臨界二酸化炭素等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
これらの溶媒の中でも、脂質の回収性の観点から、非極性溶媒が好ましい。非極性溶媒の具体例として、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類、又は芳香族炭化水素類が挙げられ、中でも、炭化水素類が好ましく、ヘキサンがより好ましい。また、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びアセトン等の水と相溶性のある溶媒を非極性溶媒に補助的に添加して用いることもできる。また、超臨界二酸化炭素等を用いた超臨界抽出を用いることもできる。さらに、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、又は亜臨界抽出等を用いることもできる。例えば、「生物化学実験法24 植物脂質代謝実験法」(山田晃弘 編著、株式会社学会出版センター、p3−4)に記載の方法を参考にすることができる。
【0068】
溶媒抽出の温度は特に限定されないが、脂質の回収性の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上である。また、上記観点及び溶媒を加温する等の経済性の観点から、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらにより好ましくは40℃以下である。
【0069】
また、溶媒抽出は1回でもよく、2回以上行ってもよい。溶媒抽出を2回以上行う場合は、同じ溶媒により行っても、異なる溶媒により行ってもよい。
【0070】
遠心分離は、分離板型、円筒型、又はデカンタ型等の一般的な機器を使用することができる。この場合の遠心力は、脂質の回収性の観点から、好ましくは500G以上、より好ましくは1000G以上とすることができる。また、経済性の観点から、好ましくは10000G以下、より好ましくは5000G以下、さらに好ましくは2000G以下とすることができる。
【0071】
遠心分離の処理時間は、脂質の回収性の観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上、さらに好ましくは10分以上とすることができる。また、経済性の観点から、好ましくは80分以下、より好ましくは40分以下、さらに好ましくは20分以下とすることができる。
【0072】
遠心分離の際の温度は特に限定されないが、脂質の回収性及び経済性の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。
【0073】
溶媒抽出と遠心分離とを組み合わせる場合には、溶媒相と水相との分離を遠心分離により迅速に行うことができる。
【0074】
静置処理は、脂質と水相とが相分離するまで反応液を静止状態に置けばよい。溶媒抽出と組み合わせる場合には、溶媒相と水相とが相分離するまで静止状態とすればよい。
【0075】
本開示の藻類から脂質を回収する方法によれば、このような簡便な操作により、環境的ストレスを与えられ体内に脂質を高濃度に蓄積した微細藻類から高い回収率で脂質を回収することができる。
【0076】
微細藻類から抽出された脂質は、直接又は精製処理若しくは分解処理等を行ってバイオディーゼル燃料等のバイオ燃料として用いることができる。また、機能性食品又は医薬品等の原料、化成品の原料、化粧品の原料として用いることができる。
【0077】
微細藻類から回収されて製造された脂質には通常油脂が含まれている。この油脂を原料として次の[A]〜[E]の方法により、脂肪族アルコール及び又はグリセリンを製造することができる。なお、原料とする油脂は予め脂質から単離した油脂でも良く、脂質に含まれた状態の油脂でもよい。
【0078】
[A:油脂からの脂肪族アルコール及び又はグリセリンの製造]
微細藻類から得られた油脂を触媒の存在下、水素化して還元することにより、食料と競合しない非可食原料由来の脂肪族アルコール及び又はグリセリンを製造することができる。水素化反応に用いられる触媒は、公知のアルコール製造に用いられる水素化触媒でよく、特に限定されるものではない。例えば、Co/Mo、及びCo/Zr等のCo系触媒、Cu/Cr、及びCu/Zn等のCu系触媒、その他にRe系触媒、Ru系触媒、及びRh系触媒、並びに白金等の貴金属系触媒を使用することができる。これらの触媒の中では、Ru系触媒、及びCo系触媒が好ましく、さらにCo系触媒、特にCo/Zr触媒が好ましい。好ましくは水の共存下に水素化反応を行うことによってグリセリンの収率を高めることができる。
【0079】
[B:油脂からの脂肪族アルキルエステル及び又はグリセリンの製造]
微細藻類から得られた油脂を触媒の存在下、炭素数1〜5の低級アルコールとエステル交換することにより、脂肪酸アルキルエステル及び又はグリセリンを製造することができる。エステル交換反応に用いられる触媒は、均一触媒及び不均一触媒を用いることができる。均一触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムアルコラート等を用いることができる。また不均一触媒としては、イオン交換樹脂、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、側鎖にアミノ基やアンモニウム基を有する高分子化合物、無機リン酸及び有機リン酸とアルミニウム、ガリウム、鉄から選ばれる一種以上の金属原子を含む弱酸性触媒等を用いることができる。これら触媒の内、高い反応温度で使用でき、石鹸の副生が無いことから弱酸性の不均一触媒を用いることが好ましい。
【0080】
[C:脂肪族アルキルエステルからの脂肪族アルコールの製造]
[B]で得られたた脂肪酸アルキルエステルを触媒の存在下、水素化して還元することにより、食料と競合しない非可食原料由来の脂肪族アルコールの製造することができる。水素化反応に用いられる触媒は、公知のアルコール製造に用いられる水素化触媒でよく、特に限定されるものではない。例えば、Cu/Cr、Cu/Zn、Cu/Fe、Cu/Al、及びCu/Si等のCu系触媒、Co/Mo、及びCo/Zr等のCo系触媒、その他にRe系触媒、Ru系触媒、Rh系触媒、並びに白金等の貴金属系触媒を使用することができる。これらの触媒の中では、Cu系触媒が好ましく、さらにCu/Zn 系触媒が好ましい。
【0081】
[D:油脂からの脂肪酸及び又はグリセリンの製造]
微細藻類から得られた油脂を加水分解することにより、脂肪酸及び又はグリセリンを製造することができる。加水分解は高圧分解法、中圧分解法、及び酵素分解法等で行うことができる。
【0082】
[E:脂肪酸からの脂肪族アルコールの製造]
[D]で得られた脂肪酸を触媒の存在下、水素化して還元することにより、食料と競合しない非可食原料由来の脂肪族アルコールの製造することができる。水素化反応に用いられる触媒は、公知のアルコール製造に用いられる水素化触媒でよく、特に限定されるものではない。例えば、Co/Mo、及びCo/Zr等のCo系触媒、Cu/Cr、Cu/Zn、Cu/Fe、Cu/Al、及びCu/Si等のCu系触媒、その他にRe系触媒、Ru系触媒、Rh系触媒、並びに白金等の貴金属系触媒を使用することができる。
【0083】
本実施形態の処理により得られた微細藻類の処理物から脂質を回収する方法、並びに当該脂質に含まれる油脂から脂肪族アルコール及び又はグリセリン等の製造方法について説明したが、糖質及び蛋白質等の脂質以外の生成物を回収して利用することもできる。これらの回収について既知の方法を用いることができる。
【0084】
上述した実施の形態に関し、本開示はさらに以下の藻類を処理する方法を開示する。
【0085】
<1>
不等毛植物門に属する微細藻類に対し、初期窒素濃度が12mg/L未満、好ましくは10mg/L以下、宜好ましくは5mg/L以下の培地を用いて3日以上、好ましくは5日以上、好ましくは21日以下、より好ましくは15日以下、さらに好ましくは10日以下培養する第1の工程と、前記第1の工程を行った微細藻類に対し、pHが2.0以上、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.5以上、さらに好ましくは3.8以上、さらにより好ましくは4.0以上、さらにより好ましくは4.5以上、さらにより好ましくは5.0以上、10.0以下、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下、さらに好ましくは8.5以下、さらにより好ましくは8.0以下、さらにより好ましくは7.5以下、さらにより好ましくは6.5以下、さらにより好ましくは6.0以下で、且つ35℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは42℃以上、さらに好ましくは43℃以上、さらにより好ましくは45℃以上、80℃以下、好ましくは65℃以下、より好ましくは62℃以下、さらに好ましくは60℃以下、さらにより好ましくは57℃以下、さらにより好ましくは55℃以下、さらにより好ましくは52℃以下、さらにより好ましくは50℃以下の温度で熱処理を行う第2の工程とを備えている、藻類の処理方法。
【0086】
<2>
前記微細藻類が、ナンノクロロプシス属である、前記<1>に記載の藻類の処理方法。
【0087】
<3>
前記熱処理は、0.5時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上、さらにより好ましくは8時間以上、さらにより好ましくは10時間以上、さらにより好ましくは20時間以上、さらにより好ましくは24時間以上、さらにより好ましくは48時間以上、好ましくは96時間以下、より好ましくは72時間以下行う、前記<1>又は<2>に記載の藻類の処理方法。
【0088】
<4>
前記第1の工程よりも前に、前記微細藻類を初期窒素濃度が12mg/L以上、好ましくは30mg/L以上、より好ましくは40mg/L以上、さらに好ましくは50mg/L以上、さらにより好ましくは60mg/L以上、好ましくは200mg/L以下、より好ましくは150mg/L以下、さらに好ましくは100mg/L以下、さらにより好ましくは80mg/L以下の培地を用いて3日以上、好ましくは4日以上、より好ましくは5日以上、好ましくは21日以下、より好ましくは15日以下、さらに好ましくは10日以下培養する培養工程をさらに備えている、前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の藻類の処理方法。
【0089】
<5>
前記第1の工程は、前記培養工程終了後の培養液を、1.6倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上、20倍以下、好ましくは15倍以下、より好ましくは10倍以下に希釈して行う、前記<4>に記載の藻類の処理方法。
【0090】
<6>
前記第1の工程における培養液の塩濃度は、前記培養を終了させた際の培養液の塩濃度に対して1.0倍以下、好ましくは0.9倍以下、より好ましくは0.8倍以下である、前記<4>又は<5>に記載の藻類の処理方法。
【0091】
<7>
前記第1の工程は、前記培養工程を終了させた際の培養液の5体積%以上、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上、さらに好ましくは20体積%以上、60体積%以下、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下、さらにより好ましくは30体積%以下を用いて行う、前記<4>〜<6>のいずれか1つに記載の藻類の処理方法。
【0092】
<8>
前記第2の工程は、藻体濃度が0.1g/L以上、好ましくは0.5g/L以上、より好ましくは0.8g/L以上、さらに好ましくは1g/L以上、さらにより好ましくは5g/L以上、300g/L以下、好ましくは250g/L以下、より好ましくは200g/L以下、さらに好ましくは100g/L以下、さらにより好ましくは50g/L以下、さらにより好ましくは20g/L以下、さらにより好ましくは10g/L以下で行う、前記<1>〜<7>のいずれか1つに記載の藻類の処理方法。
【0093】
<9>
前記第2の工程は、藻体中の脂質蓄積量が、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは45%以上、さらに好ましくは50%以上、また、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは65%以下である藻体に対して行う、前記<1>〜<8>のいずれか1つに記載の藻類の処理方法。
【0094】
<10>
前記培養工程において、前記微細藻類を増殖させ、前記第1の工程において、前記微細藻類に脂質を蓄積させる、前記<1>〜<9>のいずれか1つに記載の藻類の処理方法。
【0095】
<11>
前記<1>〜<10>のいずれか1つに記載の藻類の処理方法により得られた藻類の処理物から脂質を回収する、脂質の製造方法。
【0096】
<12>
前記脂質は油脂を含む、前記<11>に記載の脂質の製造方法。
【0097】
<13>
前記<12>に記載の脂質の製造方法により得られた油脂を触媒存在下に水素化し、脂肪族アルコール及び又はグリセリンを製造する方法。
【0098】
<14>
前記<12>に記載の脂質の製造方法により得られた油脂を触媒存在下に炭素数1〜5の低級アルコールとエステル交換し、脂肪酸アルキルエステル及び又はグリセリンを製造する方法。
【0099】
<15>
前記<14>に記載の方法により得られた脂肪酸アルキルエステルを触媒存在下に水素化し、脂肪族アルコールを製造する方法。
【0100】
<16>
前記<12>に記載の脂質の製造方法により得られた油脂を加水分解し、脂肪酸及び又はグリセリンを製造する方法。
【0101】
<17>
前記<16>に記載の方法により得られた脂肪酸を水素化し、脂肪族アルコールを製造する方法。
【実施例】
【0102】
本開示について実施例を用いてさらに詳細に説明する。以下の実施例は例示であり、本発明を限定するものではない。
【0103】
<使用藻体>
沖縄県石垣島近郊の沿岸から藻体含む海水サンプルを取得した。取得した海水サンプルをフィルタによって濃縮し、マイクロピペットにより一つの藻体株を単離した。この単離した藻体は、培養液(和光純薬工業社製、ダイゴIMK培地)によって培養を行い、さらに培養液(f/2培地)を用いて藻体を増殖させた。この藻体の一部はテキサス大学(UTEX Culture Collection)に分析を依頼し、ナンノクロロプシス・サリナ(Nannochloropsis salina)であることが同定された。
【0104】
<培養液>
培養液はf/2培地に準じて調製した。表1に培養液100mLあたりの組成を示す。表1における微量金属(f/2 metals)は、表2に組成を示す。溶媒には、人工海水(ダイゴ人工海水SP、和光純薬工業(株)製)又は、人工海水に塩化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を添加して所定の塩濃度とした塩添加人工海水を用いた。なお、使用した人工海水の塩濃度は36g/L(3.6%)である。培養液の塩濃度は、海水濃度計(PAL-06S、株式会社アタゴ社製)にて測定した。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
<希釈液>
希釈液には、塩濃度36g/L(3.6%)の人工海水(ダイゴ人工海水SP、和光純薬工業(株)製)又はこれに塩化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を添加して所定の塩濃度とした塩添加人工海水を用いた。希釈液の塩濃度は、海水濃度計(PAL-06S、株式会社アタゴ社製)にて測定した。
【0108】
<培養条件>
所定量の培養液を、直径25cm、高さ25cmのポリカーボネート製ボトルに、滅菌された閉鎖系となるように培養液を入れた。培養液中には、セラミックエアストーン(30Ф×78#100、いぶきエアストーン製)を用いて、1.5%CO
2含有空気を吹き込み、通気した。光源にはLEDスクエアライト(LED-12-40DA、光電気通信システム製)を用い、ボトル側面から照射した。光照射は点灯時間12時間、消灯時間12時間の24時間周期とした。なお、光強度光量子センサー(MQ-200、apogee製)により、ボトル側面における光強度は2000μmol/m
2/sであった(波長409〜659nmにおける光量子束密度量(μmol/m
2/s)として測定)。培養を行う部屋の温度は25℃に設定した。
【0109】
<窒素量の測定>
微細藻類を含む分散液をフィルタ(孔径0.45μm、Supor-450、日本ポール製)にて吸引ろ過した。このろ液0.5mLを微量全窒素分析装置(TN-2100V、三菱化学アナリティック社製)にて分析した。
【0110】
<藻体濃度の測定>
微細藻類を含む分散液をフィルタ(Supor-450、孔径0.45μm、日本ポール製)にて吸引ろ過し、等量の蒸留水で掛け洗いした。藻体を捕集したフィルタをアルミカップに移して105℃で2時間乾燥させた。乾燥後の重量を測定し、フィルタの風袋を差し引いて乾燥重量(g)を求めた。用いた分散液の体積(L)で乾燥重量を除した値を藻体濃度(g/L)とした。また、分散液がフィルタで吸引ろ過しにくい場合は、適当な濃度に分散液を人工海水(ダイゴ人工海水SP、和光純薬工業(株)製)で希釈して、乾燥後の重量を測定し、フィルタの風袋を差し引いた後、希釈率を乗じて藻体濃度(g/L)とした。
【0111】
<熱処理>
本培養後の培養液に、1Mの塩酸又は1Mの水酸化ナトリウムを滴下してpHを所定の値に調整した。pHを調整した培養液をポリエチレン製の容器に入れ、予め所定の温度に設定した定温乾燥機(ADP300、ヤマト科学社製)のチャンバ内に静置した。チャンバ内は大気圧とした。処理液の温度を熱電対(TM20、横河メータ&インスツルメンツ株式会社)を用いて測定し、所定の温度となったことを確認した。所定の温度を保持した状態で所定の時間が経過した後、サンプルを乾燥機から取り出し、室温にて冷却した。
【0112】
<脂質回収量の測定>
藻体からの脂質回収量は、E.G.BlighとW.J.Dyerによって1959年に報告された生体材料からの脂質の抽出方法(Bligh & Dyer法)に従って分析した(E.G.Bligh、W.J.Dyer、Canadian journal of biochemistry and physiology、37(1959)、p.911-917)。
【0113】
藻体が分散した培養液0.5mLに、内部標準として1mg/mLの7−ペンタデカノン(メタノール溶液)を100μL添加した。次に、2NのHClを10μL添加し、さらにクロロホルム500μLとメタノール0.9mLを添加した。撹拌後、25℃にて30分間静置し、クロロホルム500μLと1.5%KClを500μL添加した。撹拌した後、遠心分離機(himacCF7D2、日立工機株式会社製)を用いて遠心分離(遠心力:1500G、回転数:3000r/min、温度:25℃、時間:15分間)した。次に、下層のクロロホルム相を採取し、窒素を用いて乾固した。次に、0.7mLの0.5N KOH−メタノール溶液(水酸化カリウム2.8g、メタノール100mL)を添加し、80℃で30分間保温してケン化を行った。さらに1mLの14%三フッ化ホウ素溶液を添加し、80℃にて10分間保温してメチルエステル化を行い、溶媒と飽和食塩水をそれぞれ1mL添加して撹拌した後、25℃で30分間放置して溶媒相を取得した。溶媒にはヘキサンを用いた。得られた溶媒相を回収し、脂肪酸エステルの同定及び定量を下記の条件のガスクロマトグラフィー(GC)により行った。脂肪酸エステルの同定は、後述の標準物質とのリテンションタイムと同一かどうかにより判断した。またGC分析にて検出した脂肪酸エステルの量を、内部標準を基準にして算出し、その総量を培養液0.5mL中の脂質量(mg)として求めた。分析に用いた培養液の体積0.5mLで除することにより、培養液1Lからの脂質回収量(g/L)を求めた。また、前述の方法で求めた藻体濃度(g/L)から、藻体1gあたりの脂質回収量を求めた。
【0114】
培養液をアルカリ処理した処理液についても、同様にして藻体1gあたりの脂質回収量を求めた。アルカリ処理は、培養液0.5mLに濃度48%の水酸化ナトリウム水溶液を238μL加え、80℃で2時間保持した。この後、5Nの塩酸1mLを加え、脂質の抽出及び定量を行った。
【0115】
また、藻体中の脂質蓄積量(%)は、前述の方法で求めた藻体濃度(g/L)から、以下の式(1)で求めることができる。
藻体中の脂質蓄積量(%)=アルカリ処理後培養液1Lからの脂質回収量(g/L)/藻体濃度(g/L)×100・・・(1)
【0116】
−GC分析−
装置:Agilent technology 7890A
カラム:DB1−MS(J&W scientific製、20m×100μm×0.1μm)
オーブン温度:150℃(0.5min hold)−[40℃/min]−220℃(0min hold)−[20℃/min]−320℃(2min hold)−post run2min
キャリアガス:水素
メイクアップガス:ヘリウム
サンプル注入量:5μL
注入法:スプリットモード(スプリット比=75:1)
注入口温度:300℃
検出器:FID
カラム流量:0.28mL/minコンスタント
圧力(ゲージ圧):62.403psi
標準物質:SIGMA社製の下記脂肪酸エステルを用いた。
ラウリン酸メチル(C12)、ミリスチン酸メチル(C14)、パルミチン酸メチル(C16)、ステアリン酸メチル(C18)、パルミトレイン酸メチル(C16:1)、オレイン酸メチル(C18:1)、リノール酸メチル(C18:2)、リノレン酸メチル(C18:3)、エイコサペンタエン酸メチル(C20:5)、ドコサヘキサエン酸メチル(C22:6)
【0117】
(実施例1)
−前培養−
不等毛植物門に属する微細藻類としてナンノクロロプシス・サリナ(Nannochloropsis salina)を、塩濃度を36g/L(3.6%)とした培養液10Lに分散させた。培養開始時における培養液中の硝酸ナトリウムの初期濃度は369mg/L(初期窒素濃度として60.8mg/L)、りん酸二水素ナトリウム二水和物の濃度は30mg/Lとした。培養10日後の藻体濃度は0.90g/Lであった。
【0118】
−本培養−
前培養を行った培養液10Lのうちの2L(培養液の20%)を別のポリカーボネート製ボトルに移した。ここに希釈液として塩濃度を36g/L(3.6%)とした塩添加人工海水8Lを添加(希釈倍率5倍)して本培養の培養を開始し、24日間培養した。本培養開始時の初期窒素濃度は0.9mg/Lであり、本培養終了時の藻体濃度は、1.03g/Lであった。
【0119】
−熱処理−
本培養後の培養液のpHを、1MのHClにて5.0に調整した後、液温を50℃とし、72時間保持した。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.53gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は0.53gであった。
【0120】
(比較例1)
熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様とした。本培養後の藻体濃度は1.03g/Lであり、藻体1gあたりの脂質回収量は、0.26gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.52gであった。
【0121】
(比較例2)
本培養の際の希釈液を前培養と同じ培養液とし、環境的ストレスを加えずに本培養を行った。また、本培養は25日間行った。他の条件は、実施例1と同様とした。本培養開始時の初期窒素濃度は、54.9mg/Lであり本培養終了時の藻体濃度は1.89g/Lであった。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.31gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.27gであった。
【0122】
(比較例3)
熱処理を行わなかった以外は、比較例2と同様とした。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.29gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.29gであった。
【0123】
(実施例2)
−前培養−
不等毛植物門に属する微細藻類としてナンノクロロプシス・サリナ(Nannochloropsis salina)を、塩濃度を36g/L(3.6%)とした培養液10Lに分散させた。培養開始時における培養液中の硝酸ナトリウムの初期濃度は364mg/L(初期窒素濃度として60.0mg/L)、りん酸二水素ナトリウム二水和物の濃度は30mg/Lとした。培養14日後の藻体濃度は1.64g/Lであった。
【0124】
−本培養−
前培養を行った培養液10Lのうちの2L(培養液の20%)を別のポリカーボネート製ボトルに移した。ここに希釈液として塩濃度を36g/L(3.6%)とした塩添加人工海水8Lを添加(希釈倍率5倍)して本培養の培養を開始し、7日間培養した。本培養開始時の初期窒素濃度は0mg/Lであり、本培養終了時の藻体濃度は、0.63g/Lであった。
【0125】
−熱処理−
本培養後の培養液のpHを、1MのHClにて5.0に調整した後、液温を50℃とし、72時間保持した。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.43gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は0.49gであった。
【0126】
(比較例4)
実施例2と同様にして本培養を行った後、培養液のpHを5.0に調製したが、熱処理を行わなかった。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.10gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.49gであった。
【0127】
(比較例5)
本培養後の培養液のpHを7.0とした以外は、比較例4と同様とした。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.10gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.49gであった。
【0128】
表3に実施例1、2、及び比較例1〜5の条件及び結果をまとめて示す。環境的ストレスを加えていない場合には、熱処理を行っていなくても、アルカリ処理を行っていない場合の脂質回収量とアルカリ処理を行った場合の脂質回収量との差は認められなかった。また、熱処理を行うことによる脂質回収量の低下等も認められなかった。一方、環境的ストレスを加えた場合において熱処理を加えないと、アルカリ処理を行えば環境的ストレスを加えていない場合よりも脂質回収量が増大したが、アルカリ処理を行わなければ環境的ストレスを加えていない場合よりも脂質回収量が低下した。環境的ストレスを加えた場合に熱処理を行うことにより、アルカリ処理を行った場合と同様に高い脂質回収量が得られた。環境ストレスの条件が異なっていても同様の傾向を示した。
【0129】
【表3】
【0130】
(
参考例3)
熱処理の処理時間を5時間とした以外は、実施例2と同様とした。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.27gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.54gであった。
【0131】
(
参考例4)
熱処理の処理時間を10時間とした以外は、実施例2と同様とした。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.34gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.52gであった。
【0132】
(
参考例5)
熱処理の処理時間を24時間とした以外は、実施例2と同様とした。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.33gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.52gであった。
【0133】
(実施例6)
熱処理の処理時間を48時間とした以外は、実施例2と同様とした。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.39gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.48gであった。
【0134】
表4に実施例2
、6及び参考例3〜5の条件及び結果をまとめて示す。熱処理を行うことにより、熱処理を行っていない比較例4と比べて脂質回収量が増加した。また、脂質回収量は処理時間を長くすることにより増加する傾向が認められた。
【0135】
【表4】
【0136】
(
参考例7)
熱処理の際の液温を40℃とした以外は、
参考例5と同様とした。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.31gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.52gであった。
【0137】
(
参考例8)
熱処理の際の液温を65℃とした以外は、
参考例5と同様とした。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.25gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.54gであった。
【0138】
(
参考例9)
熱処理の際の液温を80℃とした以外は、
参考例5と同様とした。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.18gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.51gであった。
【0139】
(比較例6)
熱処理の際の液温を25℃とした以外は、
参考例5と同様とした。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.10gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.49gであった。
【0140】
表5に
参考例5、7〜9及び比較例6の条件及び結果をまとめて示す。25℃よりも高い液温において熱処理を行った場合には、熱処理を行っていない場合と比べて脂質回収量が増加した。
【0141】
【表5】
【0142】
(
参考例10)
pHを2.0とした以外は、
参考例5と同様とした。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.20gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.46gであった。
【0143】
(
参考例11)
pHを3.5とした以外は、
参考例5と同様とした。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.36gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.58gであった。
【0144】
(
参考例12)
pHを9.5とした以外は、
参考例5と同様とした。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.18gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.58gであった。
【0145】
(
参考例13)
pHを10.0とした以外は、
参考例5と同様とした。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.19gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.56gであった。
【0146】
表6に
参考例5、10〜13の条件及び結果をまとめて示す。pHが2.0〜10.0の範囲において熱処理を行った場合には、熱処理を行っていない比較例4及び5と比べて脂質回収量が増加した。
【0147】
【表6】
【0148】
(実施例14)
−前培養−
不等毛植物門に属する微細藻類としてナンノクロロプシス・サリナ(Nannochloropsis salina)を、塩濃度を36g/L(3.6%)とした培養液10Lに分散させた。培養開始時における培養液中の硝酸ナトリウムの初期濃度は375mg/L(初期窒素濃度として61.8mg/L)、りん酸二水素ナトリウム二水和物の濃度は30mg/Lとした。培養8日後の藻体濃度は0.98g/Lであった。
【0149】
−本培養−
前培養を行った培養液10Lのうちの2L(培養液の20%)を別のポリカーボネート製ボトルに移した。ここに希釈液として塩濃度を36g/L(3.6%)とした塩添加人工海水8Lを添加(希釈倍率5倍)して本培養の培養を開始し、7日間培養した。本培養開始時における培養液中の硝酸ナトリウムの初期濃度は63mg/L(初期窒素濃度として10.3mg/L)、りん酸二水素ナトリウム二水和物の濃度は30mg/Lとした。本培養終了時の藻体濃度は、0.66g/Lであった。
【0150】
−熱処理−
本培養後の培養液のpHを、1MのHClにて5.0に調整した後、液温を50℃とし、72時間保持した。藻体1gあたりの脂質回収量は、0.31gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は0.32gであった。
【0151】
(比較例7)
熱処理を行わなかった以外は、実施例14と同様とした。本培養後の藻体濃度は0.66g/Lであり、藻体1gあたりの脂質回収量は、0.21gであった。アルカリ処理した場合の藻体1gあたりの脂質回収量は、0.36gであった。
【0152】
表7に実施例14及び比較例7の条件及び結果をまとめて示す。
【0153】
【表7】
【0154】
(実施例15)
各実施例
等により得られた脂質は、[A]に記述した方法により、水素化反応に用いることができる。これにより、脂肪族アルコール及び又はグリセリンを製造することができる。
【0155】
また、得られた脂質は、[B]に記述した方法により、エステル交換反応に用いることができる。これにより、脂肪酸アルキルエステル及び又はグリセリンを製造することができる。さらに、得られた脂肪族アルキルエステルは、[C]に記載した方法により、水素化反応に用いることができる。これにより、脂肪族アルコールを製造することができる。
【0156】
さらに、得られた脂質は、[D]に記述した方法により、加水分解反応に用いることができる。これにより、脂肪酸及び又はグリセリンを製造することができる。さらに、得られた脂肪酸は、[E]に記載した方法により、水素化反応に用いることができる。これにより、脂肪族アルコールを製造することができる。