特許第6985796号(P6985796)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985796分散ウレタン変性ポリイソシアヌレートを含有する揺変性ポリオール組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985796
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】分散ウレタン変性ポリイソシアヌレートを含有する揺変性ポリオール組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20211213BHJP
   C08G 18/09 20060101ALI20211213BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20211213BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20211213BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20211213BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   C08G18/00 B
   C08G18/09 020
   C08G18/32 071
   C08G18/66 081
   C09D175/04
   C09J175/04
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-542797(P2016-542797)
(86)(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公表番号】特表2016-537483(P2016-537483A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】US2014055267
(87)【国際公開番号】WO2015038830
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2017年8月28日
【審判番号】不服2019-12016(P2019-12016/J1)
【審判請求日】2019年9月11日
(31)【優先権主張番号】61/877,290
(32)【優先日】2013年9月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/877,287
(32)【優先日】2013年9月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】イレーナ・アミシ−クロウティロヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・エー・クックソン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ホーヘナー
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・カザッティ
【合議体】
【審判長】 杉江 渉
【審判官】 佐藤 健史
【審判官】 橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】 特表平8−507320(JP,A)
【文献】 特表2003−501501(JP,A)
【文献】 特表2003−501502(JP,A)
【文献】 特表2006−526044(JP,A)
【文献】 特表2008−517084(JP,A)
【文献】 特開2008−156643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87
C08L75/00-75/16
REGISTRY/STN
CA/STN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体ベースポリオール中のポリウレタン−イソシアヌレート粒子の揺変性分散体であって、
前記ポリウレタン−イソシアヌレート粒子が、イソシアヌレート三量化触媒、イソシアヌレート基及びイソシアネートまたはイソシアネート反応性基を有するプレポリマー、ならびにベースポリエーテルポリオールの存在下での、最大80のヒドロキシル当量及び1分子当たり2〜6個のヒドロキシル基を有する低当量ポリオールと、最大300のイソシアネート当量を有する1つ以上のポリイソシアネート化合物との反応生成物を含み、前記プレポリマーは下記構造で表されるか、
【化1】
(式中、Rは、構造R−(NCO)x(xは2〜6の整数である)を有するポリイソシアネートの、イソシアネート基を除去した後の残基を表し、PEは200〜8000の分子量を有するポリエーテル鎖を表し、Xは−O−または−NH−であり、各Aは独立して以下である。)
【化2】
または、下記構造で表され、
【化3】
(式中、X、R、PE、及びxは上で定義されたとおりであり、各Zは以下であり、Rはポリオールキャッピング剤の残渣であり、zは1〜5である。)
【化4】
前記分散体は、少なくとも50Pa・sの初期粘度を有し、せん断下で少なくとも75%の粘度低下を呈し、せん断力の除去後に、せん断下での最小粘度と比較して少なくとも2倍の粘度増加を呈し、前記粘度は、20℃で、1分間にわたって直線的に1〜60Hzまで勾配し、さらに1分間かけて1Hzまで戻る速さで回転式で動作する、コーンプレート型の形状を持つBohlin粘度計を使用して測定される、揺変性分散体。
【請求項2】
前記液体ベースポリオールが、少なくとも200のヒドロキシル当量、及び1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシル基の平均公称ヒドロキシル官能価を有する、請求項1に記載の前記揺変性分散体。
【請求項3】
前記低当量ポリオールが、アミノアルコールを含む、請求項1または2に記載の前記揺変性分散体。
【請求項4】
前記低当量ポリオールが、トリエタノールアミンまたは75〜99.9%のトリエタノールアミンを含有する混合物である、請求項3に記載の前記揺変性分散体。
【請求項5】
前記ポリイソシアネート化合物が、トルエンジイソシアネートまたはMDIを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の前記揺変性分散体。
【請求項6】
前記ポリウレタン−イソシアヌレート粒子が、前記分散体の重量の5〜35パーセントを構成する、請求項1〜5のいずれかに記載の前記揺変性分散体。
【請求項7】
前記ポリウレタン−イソシアヌレート粒子が、20nm〜1μmのサイズを有する少なくとも1つの画分を有する多峰性である、請求項1〜6のいずれかに記載の前記揺変性分散体。
【請求項8】
20℃で少なくとも100Pa・sの最小せん断時の粘度を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の前記揺変性分散体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の前記揺変性分散体を作製する方法であって、前記イソシアヌレート三量化触媒、前記プレポリマー、及び前記ベースポリエーテルポリオールの存在下で、前記低当量ポリオールを前記1つ以上のポリイソシアネート化合物と反応させて、前記液体ベースポリオール中に分散された前記ポリウレタン−イソシアヌレート粒子を形成することを含む、前記方法。
【請求項10】
前記低当量ポリオール、前記1つ以上のポリイソシアネート化合物、前記イソシアヌレート三量化触媒、前記プレポリマー、及び前記ベースポリエーテルポリオールの撹拌された混合物を形成し、前記ベースポリエーテルポリオール、前記プレポリマー、及び前記イソシアヌレート三量化触媒の存在下で、前記低当量ポリオールを前記1つ以上のポリイソシアネート化合物と反応させて、前記液体ベースポリオール中に分散された前記ポリウレタン−イソシアヌレート粒子を形成することによって実施される、請求項9に記載の前記方法。
【請求項11】
前記ベースポリエーテルポリオールが少なくとも200のヒドロキシル当量を有する、請求項9または10に記載の前記方法。
【請求項12】
前記反応ステップが、イソシアネートまたはイソシアネート反応性基を含有する追加のプレポリマーの存在下で実施され、前記追加のプレポリマーは下記構造で表される、請求項9〜11のいずれかに記載の前記方法。
【化5】
(式中、Rは、構造R−(NCO)x(xは2〜6の整数である)を有するポリイソシアネートの、イソシアネート基を除去した後の残基を表し、PEは200〜8000の分子量を有するポリエーテル鎖を表し、Xは−O−または−NH−である。)
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載の前記揺変性分散体と、ヒドロキシル基と反応する少なくとも1つの硬化剤とを含む、硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
配合コーティング、配合シーラント、または配合接着剤である、請求項13に記載の前記硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コーティング、シーラント、及び接着剤用途に有用な揺変性ポリオール組成物に関する。
【0002】
揺変性物質とは、せん断適用下に置かれたときに、粘度の大きな可逆的低下を呈する物質である。かかる物質は、低せん断条件下では、強粘液またはペースト状の固体でさえあり得るが、せん断が適用されると、その粘度は劇的に降下する。せん断条件が中断されると、揺変性物質の粘度は、多くの場合その最初のレベル近くまで回復する。この特性は、特定の種類の生成物において非常に貴重であり、その中でもシーラント及び接着剤は顕著な例である。この物質は、結果として生じた粘度の低下に起因して容易に流動するため、揺変性の挙動により、生成物がせん断の適用を通じて容易に適用されることを可能にする。適用されて、生成物がもう一度静的条件下にあると、その粘度は再度上昇する。適用後のこの高粘度によって、適用された物質が、基剤が硬化するような時間まで、垂れるまたは流出するのを防ぐ。これらの生成物は、多くの場合、緩徐に硬化するか、または特定の硬化条件(高温、フリーラジカルもしくは紫外線照射への曝露、湿気曝露等)に曝露された後にのみ硬化するように配合されるため、硬化の前の垂れ及び流出に耐える物質の能力が非常に重要である。揺変性の挙動はまた、適用された生成物が鏝塗りまたは他の方法によって容易に作業されることを可能にするため、物質が適用された後でも有益である。
【0003】
コーティング、シーラント、及び接着剤等の生成物は、概して、適用後に硬化して高分子量ポリマーを形成する1つ以上の樹脂物質を含む。これらの樹脂物質自体は、それらのみで揺変性となることはほとんどないため、揺変性の挙動は、ほとんどの場合に1つ以上の添加物を生成物に組み込むことによって達成される。様々な種類が既知である。それらは概して、機械的エネルギーを適用することによって容易に克服される、物理的「架橋」を形成することによって機能すると考えられる。したがって、長鎖線状ポリマー及び所謂「超分岐」ポリマーが、揺変剤として使用されている。これらは、鎖絡み合い機構を通じて、少なくとも部分的に機能すると考えられる。他の揺変剤は、生成物の他の成分との水素結合を形成することによって主に機能すると考えられる。したがって、自ら及び/または生成物中の他の物質と強力に水素結合する特定の物質が、揺変性添加物として使用されている。この種類の揺変性添加物の例としては、高分散シリカ生成物(親水性ケイ酸、非晶質ケイ酸等としても既知である)及び結晶化尿素粒子が挙げられる。尿素揺変剤は、例えば、米国特許第3893956号、米国特許第3547848号、米国特許第4,311,622号、米国特許第8,207,268号、カナダ特許第2345874号、及び国際公開第2012/076611号において説明されている。多くの尿素化合物が水素結合時に特に有効であり、これがその揺変剤としての実用性を説明するものと考えられる。
【0004】
添加物の使用には、いくつかの欠点がある。それらは、生成物の物理的特徴を著しく変化させる可能性がある。微粒子添加物が、生成物から沈殿し得る。添加物は、硬化生成物と化学結合されない限り、経時的に硬化物質から押し出されるか、またはそこから外に溶解される場合があり、収縮、多孔性、物理的特性の変化、及び他の問題を引き起こし得る。尿素揺変剤は、アミンとイソシアネートとの高い反応性、及びいくつかの例におけるキラルアミン等の特殊な原料を使用する必要性により、製造が困難かつ高価であり得る。場合によって、尿素が生成物の他の成分中に溶解して、その有効性を失わせることがある。
【0005】
米国特許第4,522,986号では、ウレタンコーティング組成物用の揺変剤が説明される。この揺変剤は、ポリエーテルポリオールを、ジイソシアネートを用いてキャッピングしてプレポリマーを形成し、次いで、プレポリマーのイソシアネート基を、モノ−、ジ−、またはトリエタノールアミンを用いてキャッピングして、1000〜4000の数平均分子量及び3000〜12,000の重量平均分子量を有する非架橋性尿素化合物を形成することによって、調製される。これらの揺変剤は、ウレタンコーティング組成物に溶解すると見られるワックス状の固体である。
【0006】
様々な参照文献が、イソシアヌレート含有化合物を、溶剤型もしくは水溶型配合物中の揺変剤または垂れ制御剤として説明する。これらには、欧州特許第192,304号、欧州特許第198,519号、欧州特許第2,444,443号、カナダ特許第2,813,844号、国際公開第2003/091350号、英国特許第2,237,277号、及びバングラディシュ特許第2,462,105号が含まれる。これらのイソシアヌレート化合物は、典型的に、(アミンとの反応による)尿素基を含有し、かつ/または高分岐物質である。各場合において、それらは、高価な原料を使用する必要性、複雑な製造プロセス、生成物の乏しい収量、及び生成物の一貫性のなさ等の問題に苦しむ別個に製造された化合物である。これらの化合物は、製造される手法に起因して高価となる傾向にある。それらは、別個の生成物として形成されるため、使用される配合物中に組み込まれる必要がある。これは多くの場合、融解及び/または他のブレンドステップを必要とし、使用における費用及び困難がさらに加わる。
【0007】
揺変性ポリオールは、日本特許第2007−186647A号、旧東ドイツ特許第156480号、及び旧ソ連特許第1986−4124651号において説明される。
【0008】
米国特許第4,326,043号は、ポリイソシアネート化合物を溶液中で三量化して、イソシアヌレート化合物を形成するプロセスを説明する。次いで、これらのイソシアヌレート化合物は、ポリオールへ分散され得る。結果として生じた分散体は、イソシアヌレート化合物を添加したために揺変性とならない。
【0009】
本発明は、一態様において、液体ベースポリオール中のポリウレタン−イソシアヌレート粒子の揺変性分散体である。
【0010】
本発明はまた、本発明の揺変性分散体を作製する方法であり、イソシアネート三量化触媒及びベースポリエーテルポリオールの存在下で、低当量ポリオールを1つ以上のポリイソシアネート化合物と反応させて、ベースポリオール中に分散されたポリウレタン−イソシアヌレート粒子を形成することを含む。
【0011】
驚くべきことに、ポリウレタン−イソシアヌレート粒子は、揺変性の挙動を分散体に付与することが見出された。本発明の分散体は、安価で製造するという非常に重大な利点を有する。加えて、本揺変剤(すなわち、ポリウレタン−イソシアヌレート)は、ポリオール中で直接形成され、別個に製造される揺変剤を形成して、後にそれを樹脂成分に組み合わせることに関連付けられる問題及び費用を回避する。
【0012】
本発明はまた、本発明の揺変性分散体、及びヒドロキシル基と反応する少なくとも1つの硬化剤を含む硬化性樹脂組成物でもある。かかる硬化性樹脂組成物は、例えば、配合シーラントまたは接着剤であってもよい。
【0013】
本発明の目的として、分散体は、最小せん断下での粘度と比較して、少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%のせん断下での粘度の低下を呈し、せん断力の除去後に、その粘度がせん断下での最小値から少なくとも2倍になる場合に揺変性である。いくつかの実施形態では、分散体は、せん断下に置かれたときに、その初期(最小せん断)粘度から少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも95%の粘度低下を呈する。いくつかの実施形態では、分散体の粘度は、せん断力の除去をせん断下で得られる少なくとも4倍または少なくとも8倍の最小値まで増大させる。最小せん断時の分散体の初期粘度は、例えば、少なくとも50Pa・sまたは少なくとも100Pa・sであってもよい。最小せん断、またはせん断がない状況で、分散体は典型的に、粘性流体もしくはペーストでさえある。粘度測定は、以下の実施例で説明されるように、回転式のコーンプレート型粘度計を使用して、20±5℃で行われる。
【0014】
本発明の揺変性分散体は、少なくとも1つのポリオール、または少なくとも200のヒドロキシル当量を有するポリオールの混合物を含む液相を含む。ポリウレタン−イソシアヌレート粒子は、液相中に分散される。ポリウレタン−イソシアヌレート粒子は、例えば、分散体の重量の1〜50、1〜35、5〜35、5〜25、または10〜25パーセントを構成し得る。
【0015】
ポリウレタン−イソシアヌレート粒子は、以下の実施例で説明されるように測定される、20nm〜100μmの粒径を有してもよい。いくつかの実施形態では、ポリウレタン−イソシアヌレート粒子は、20〜750nmの粒径を有する少なくともいくつかの微粒子を含む。他の実施形態では、ポリウレタン−イソシアヌレート粒子のうちの少なくともいくつかは、20〜200nmのサイズを有する微粒子である。微粒子は、例えば、ポリウレタン−イソシアヌレート粒子の5〜100重量パーセント、5〜50重量パーセント、5〜25重量パーセント、または5〜10重量パーセントを構成してもよい。粒子の5重量パーセント以下は、30μmより大きいことが好ましい。
【0016】
いくつかの実施形態では、粒子は、多峰性であり、粒径の2つ以上の異なる範囲に分類され、粒子のうちのいずれかが個々の範囲の間の粒径を有する場合、非常に少ない。したがって、例えば、粒子のうちのいくつかが、20nm〜1μmもしくは20nm〜0.5μmのサイズを有する異なる画分に分類され得るが、他の粒子は、1つ以上のより大きい異なる範囲に分類される。
【0017】
ポリウレタン−イソシアヌレート粒子のうちのいくつかもしくは全ては、液体ポリオールの分子に合体されてもよいが、さもなければ凝集及び/または沈殿を、様々な種類の安定剤を組み込むことによって安定化させる。
【0018】
ベースポリオールの平均ヒドロキシル当量は、好ましくは少なくとも200であり、例えば高くて約8000であってもよい。好ましいヒドロキシル当量は360〜3000であり、より好ましい当量は500〜2000であり、特に好ましい当量は500〜1500である。ベースポリオールが、2つ以上の別個に作製されたポリエーテルポリオールの混合物である場合、その別個に作製されたポリオールの各々は、これらの範囲内のヒドロキシル当量を有さなければならない。
【0019】
本発明で出発物質として使用されるベースポリオールは、少なくとも2.0の平均官能価を有することが好ましい。これは、高くて6.0であってもよいが、4.0以下であることがより好ましい。ポリエーテルポリオールの場合、本発明の目的のための官能価は、公称官能価である。「公称」官能価は、ポリエーテルポリオールを作製するのに使用される開始剤(複数可)の、1分子当たりのオキシアルキル化可能な水素の平均数を意味する。
【0020】
ベースポリオールのヒドロキシル基は、第一もしくは第二ヒドロキシル、またはその両方のいくらかの混合物であってもよい。いくつかの実施形態では、ベースポリオールのヒドロキシル基のうちの少なくとも75%は、第二ヒドロキシルである。ベースポリオールは、少なくとも85%、少なくとも92%、少なくとも95%、または少なくとも98%の第二ヒドロキシルを含有してもよい。反対に、ベースポリオールは、25%以下、15%以下、8%以下、5%以下、または2%以下の第一ヒドロキシルを含有してもよい。他の実施形態では、ベースポリオールは、少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも85%の第一ヒドロキシル基を含有してもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、ベースポリオールは、プロピレンオキシドのホモポリマーもしくはコポリマー、または2つ以上のそれらの混合物である。
【0022】
プロピレンオキシドの有用なコポリマーには、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドのランダムコポリマーが含まれる。これは、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの混合物を重合することによって調製される。混合物は、好ましくは少なくとも80重量%のプロピレンオキシド及び20%以下のエチレンオキシドを含有する。より好ましい混合物は、85〜99.5重量%のプロピレンオキシド及び0.5〜15重量%のエチレンオキシドを含有する。
【0023】
プロピレンオキシドの別の有用なコポリマーは、重合エチレンオキシドの1つ以上の内部ブロック及び重合プロピレンオキシドの末端ブロックを含有するブロックコポリマーである。エチレンオキシドブロックまたはブロック(複数)は、集合体において、コポリマーの重量の0.5〜30%を構成するが、ブロックまたはブロック(複数)の好ましい重量は、コポリマーの総重量の0.5〜20%である。
【0024】
特に好ましいベースポリオールは、700〜2000のヒドロキシル当量を有し、2〜6、特に2〜4もしくは2〜3の公称官能価を持つ、80〜99.5重量%のプロピレンオキシド及び0.5〜20重量%のエチレンオキシドのポリ(プロピレンオキシド)ホモポリマーまたはランダムコポリマーである。
【0025】
分散体は、原位置のポリウレタン−イソシアヌレート粒子をベースポリオール中に形成することによって調製することができる。かかる原位置のプロセスは概して、上述にようにイソシアヌレート三量化触媒及びベースポリオールの存在下で、低当量ポリオールを1つ以上のポリイソシアネート化合物と反応させて、ベースポリオール中に分散されたポリウレタン−イソシアヌレート粒子を形成することを包含する。
【0026】
低当量ポリオールは、好ましくは最大80、より好ましくは最大75のヒドロキシル当量を有する。これは、1分子当たりに好ましくは2〜6個、より好ましくは2〜3個のヒドロキシル基を有する。これは、少なくとも2個の第一ヒドロキシル基(及び、任意に1個以上の第二ヒドロキシル基も)を含有し、かつ/またはアミノアルコールであることが好ましい。これは、好ましくは、プロセスで使用される相対的な量で、低当量ポリオールがベースポリオール中に小滴の形態で分散するように、ベースポリオール中で低い混和性を有する。例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ショ糖、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びジイソプロパノールアミン等が挙げられる。アミノアルコール化合物は、好ましい種類である。トリエタノールアミンは、大いに好ましい低当量ポリオールであり、それ自体で、または前述のもののうちの1つ以上との混合物として使用することができる。かかる混合物は、例えば、75〜99.9重量%のトリエタノールアミンを含有してもよい。
【0027】
重量に関しては、ベースポリオールの100重量部当たり約1〜50重量部の低当量ポリオールが典型的に使用されるが、これは、プロセスのステップ(a)で形成される混合物中に存在するイソシアネート基、ならびにかかる混合物に添加されるいずれかの追加のポリイソシアネート(複数可)の量によって変化し得る。好ましい量は、ベースポリオールの100重量部当たり、少なくとも2重量部、より好ましくは少なくとも3重量部である。好ましい高位の量は、ベースポリオールの100重量部当たり、最大20重量部、より好ましくは最大15重量部である。いくつかの特定の実施形態では、ベースポリオールの100重量部当たり、3〜10または3〜7重量部が使用される。
【0028】
ポリイソシアネート化合物は、好ましくは最大300、より好ましくは最大250、なおより好ましくは最大175、及びいくつかの実施形態では、50〜175のイソシアネート当量を有する。これは、1分子当たり少なくとも2個、好ましくは2〜4個のイソシアネート基の平均量を含有しなければならない。官能化ポリエーテルを作製するのに有用なポリイソシアネートの例としては、m−フェニレンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、1,3−及び/または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(シス−及び/またはトランス異性体を含む)メトキシフェニル−2,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、水素化ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、水素化ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4−4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(PMDI)、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート、ならびに4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートが挙げられる。上述のもののうちのいずれか2つ以上の混合物を使用することができる。好ましくは、ポリイソシアネートは、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、PMDI、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、またはそれらの混合物である。ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、及びそれらの混合物は、一般的にMDIとして称され、全て使用することができる。トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、及びそれらの混合物は、一般的にTDIとして称され、全て使用することができる。
【0029】
ポリイソシアネートの量は、例えば、ベースポリオールの100重量部当たり0〜50重量部であり得る。好ましい量は、ベースポリオールの100重量部当たり、少なくとも2重量部、より好ましくは少なくとも3重量部である。好ましい高位の量は、ベースポリオールの100重量部当たり、最大20重量部、より好ましくは最大15重量部である。いくつかの特定の実施形態では、ベースポリオールの100重量部当たり、3〜10または3〜7重量部のポリイソシアネートが組み合わせられる。
【0030】
有用なイソシアネート三量化触媒には、アルカリ金属フェノラート、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属カルボキシレート、第四級アンモニウム塩等の強塩基が含まれる。中でもアルカリ金属三量化触媒は、ナトリウムp−ノニルフェノラート、ナトリウムp−オクチルフェノラート、ナトリウムp−tert−ブチルフェノラート、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、グリシン N−[(2−ヒドロキシ−5−ノニルフェニル)メチル]−N−メチル−モノナトリウム塩、カリウムp−ノニルフェノラート、カリウムp−オクチルフェノラート、カリウムp−tert−ブチルフェノラート、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、酪酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、グリシン N−[(2−ヒドロキシ−5−ノニルフェニル)メチル]−N−メチル−モノカリウム塩、セシウムp−ノニルフェノラート、セシウムp−オクチルフェノラート、セシウムp−tert−ブチルフェノラート、ギ酸セシウム、酢酸セシウム、プロピオン酸セシウム、酪酸セシウム、2−エチルヘキサン酸セシウム、及びグリシン N−[(2−ヒドロキシ−5−ノニルフェニル)メチル]−N−メチル−モノセシウム塩である。中でも有用なアンモニウム塩は、(2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸、及び(2−ヒドロキシプロピル)ギ酸トリメチルアンモニウム等である。アミノフェノール化合物及びN,N’,N’’−トリス(3−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジンもまた、有用な三量化触媒である。イミダゾリウムまたはイミダゾリニウム塩もまた、1−エチル、2−メチル−イミダゾリウム酢酸、1,3−ジ−tert−ブチル−イミダゾリニウム酢酸、1,3−ジアダマンチル−イミダゾリウム酢酸、1,3−ジイソプロピル−イミダゾリウム酢酸 1,3−ジ−tert−ブチル−イミダゾリウム酢酸、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム酢酸、及び米国特許第2011/0201709 A1号に開示される他のもの等の三量化触媒として使用することができる。アルカリ金属及びアンモニウム化合物は、概して好ましい。
【0031】
イソシアネート三量化触媒に加えて、ウレタン触媒が存在し、低当量ポリオールとポリイソシアネートとの反応を促進させてポリウレタン基を形成してもよい。ウレタン触媒は、ヒドロキシル基とイソシアネート基との反応を触媒する物質である。好適な触媒には、例えば、第三級アミン、環状アミジン、第三級ホスフィン、様々な金属キレート、酸金属塩、強塩基、様々な金属アルコラート及びフェノラート、ならびに有機酸の金属塩が含まれ、含まれる。最も重要な触媒は、第三級アミン触媒、環状アミジン、及びスズ触媒である。第三級アミン触媒の例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジメチルピペラジン、1,4−ジアゾビシクロ−2,2,2−オクタン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、及びアルキル基が4〜18個の炭素原子を含有するジメチルアルキルアミンが挙げられる。これら第三級アミン触媒の混合物が、多くの場合使用される。
【0032】
スズ触媒の例としては、塩化第二スズ、塩化第一スズ、第一スズオクトアート、第一スズオレアート、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ならびに式SnR(OR)4−nであって、式中、Rがアルキルまたはアリールであり、nが0〜2である他のスズ化合物等が挙げられる。スズ触媒は概して、少しでも使用する場合は、1つ以上の第三級アミン触媒と連結して使用される。スズ触媒は、強力なゲル化触媒である傾向があるため、少しでも使用する場合は、少量で使用するのが好ましい。スズ触媒の使用は、特に分散体が15〜40%等の10%を超える固体レベルで生成されるときに、ならびに特に低当量ポリオールがトリエタノールアミンであるときに、分散体の安定性に悪影響を及ぼし得ることが見出されている。したがって、スズ触媒を除外すること、及びスズを含有しない1つ以上のウレタン触媒を代わりに使用することが好ましい。
【0033】
イソシアネート三量化触媒及びウレタン触媒はそれぞれ、典型的に少量で使用され、例えば、各触媒は、約0.0015〜約5重量%のベースポリオールで用いられる。
【0034】
安定剤は、分散体の製造プロセスの間存在し得る。様々な種類の安定剤は、有用であり、様々な有機シリコーン界面活性剤、米国特許第4,305,857号に説明されるようなエチレンオキシドの官能化ポリマー、または、例えば国際公開第94/20558号及び国際公開第2012/154820号に説明されるような、ポリウレタン粒子または種粒子の先に形成した分散体を含む。
【0035】
プレポリマーもまた、分散体の製造プロセスの間存在し得る。かかるプレポリマーは、イソシアネート基もしくはイソシアネート反応性基を含有し、分散体形成ステップの間に低当量ポリオール及び/またはポリイソシアネートと反応して、分散相粒子の中へ、もしくは上へ少なくとも部分的に組み込まれる。プレポリマーは、イソシアヌレート基を含有してもよく、いくつかの実施形態では、ポリウレタン−イソシアヌレート粒子のイソシアヌレート基の全てではない場合、少なくともいくつかの源である。プレポリマーの例は、参照により本明細書に組み込まれる、2013年9月13日出願の米国仮特許出願第61/877,287号で説明されるようなイソシアネート官能化及び/またはイソシアヌレート含有ポリエーテルである。中でも、イソシアネート官能化ポリエーテルプレポリマーは、構造Iで表わされるものであり:
【0036】
【化1】
【0037】
式中、Rは、イソシアネート基を除去した後の、構造R−(NCO)(xは、開始ポリイソシアネート上のイソシアネート基の数を表し、典型的に2〜6個の数である)を有するポリイソシアネートの残渣を表し、PEは、200〜8000の分子量を有するポリエーテル鎖であり、Xは、−O−または−NH−である。構造1のPE基は、好ましくはヒドロキシル、第一級アミノ、及び第二級アミノ基が欠けている。
【0038】
構造Iに示される官能化ポリエーテルは、単官能ポリエーテルのポリイソシアネートとの反応において調製することができる。単官能ポリエーテルは、1個のイソシアネート反応性基を含有し、例えば、アルコール、第一級アミン、第二級アミン、チオール、またはエポキシ基であってもよい。単官能ポリエーテルは、好ましくはポリエーテルモノオールまたはポリエーテルモノアミンである。単官能ポリエーテルは、好ましくは、単官能性開始剤化合物上で、例えば、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,3−プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、及びテトラヒドロフラン等の1つ以上の環状エーテルのポリマーである。環状エーテルを多官能性開始剤上へ重合してポリオールを生成し、次いで1つを除いて全てのアルコール基をキャッピングすることによって、開始ポリエーテルモノオールを生成することも可能である。キャッピングは、例えば、モノイソシアネート、カルボン酸、またはカルボン酸アルキル(好ましくはメチル)エステルとの反応によって完了することができる。十分なポリイソシアネートが、単官能ポリエーテルのイソシアネート反応性基を消滅させるのに使用される。その量を超える過剰な量が使用されてもよく、その場合に生成物は、構造Iのような官能化ポリエーテルと未反応開始ポリイソシアネートとの混合物を含むであろう。
【0039】
いくつかの実施形態では、プレポリマーは、構造Iによるイソシアネート終端官能化ポリエーテルを含み、変性されて1個以上のビウレット、イソシアヌレート、尿素、またはアロフォネート基を含有する。その中でも、イソシアヌレート含有種が好ましい。ビウレット、尿素及び/またはアロフォネート含有種は、水、及び別のプレポリマー分子または未反応開始ポリイソシアネート化合物の分子のいずれかを用いて、構造1による官能化プレポリマー分子の反応によって形成することができる。これは、1つ以上のビウレット、尿素、及び/またはアロフォネート連鎖、ならびに200〜8000の分子量を有する少なくとも1つの(及び好ましくは少なくとも2つの)ポリエーテル鎖を有する化合物を生成する。代替的に、ビウレット、尿素、及び/またはアロフォネート含有プレポリマーは、まず開始ポリイソシアネートを水と反応させてビウレット、尿素、及び/またはアロフォネート基を導入し、次いで、結果として生じた物質をポリエーテルモノオールもしくはモノアミンと反応させることによって形成することができる。
【0040】
イソシアヌレート含有ポリエーテルプレポリマーは、構造(II)によって表わされるものを含む:
【0041】
【化2】
【0042】
式中、各R、PE、X、及びxは、構造Iに関して定義される通りであり、各Aは独立して、
【0043】
【化3】
または
【0044】
【化4】
【0045】
である。これらは、構造Iのイソシアネート終端プレポリマーを三量化することによって調製することができる。イソシアヌレート基は、単官能ポリエーテルとポリイソシアネートとの反応の前、それと同時に、またはその後に形成されて、構造Iの官能化ポリエーテルを形成してもよい。この三量化反応は、イソシアネート三量化触媒の存在下で、好都合に実施される。
【0046】
上述のようなイソシアヌレート含有プレポリマー中のポリエーテル鎖の数は、構造Iにおいて少なくても1または多くても3(x−1)であり得る。しかしながら、ほとんどの場合、ポリエーテル鎖の数は平均して3(x−1)より著しく少ないと考えられる。かかる場合では、反応で得られた生成物は、上の構造Iによる種を含有し得、A基のうちの少なくともいくつかは
【0047】
【化5】
【0048】
である。
【0049】
プレポリマー形成反応の生成物は、上の構造Iを有するようなもの等のイソシアネート終端分子に加えて、例えば、いくらかの量の未反応ポリイソシアネート化合物及び/またはポリエーテル基を含有しない三量化種等の、様々な他の反応生成物及び/または未反応開始物質を含有し得る。三量化反応中に水が存在する場合、上述のようなビウレット、尿素、及び/またはアロフォネート含有種もまた形成し、生成物混合物中に存在し得る。これらの様々な種の相対的な量は主に、三量化反応がその程度まで継続する、使用される単官能ポリエーテル及びポリイソシアネートの相対的な量と、もしある場合は水の存在とに依存する。
【0050】
構造IIのイソシアヌレート含有ポリエーテルプレポリマーを形成するための反応もまた、まずポリイソシアネートを単官能ポリエーテルと反応させ、次いで、三量化反応を実施することによって、後続的に実施することができる。
【0051】
構造Iまたは構造IIの官能化ポリエーテルのイソシアネート基(ビウレット、尿素、アロフォネート、及び/もしくはイソシアヌレート基を含有するように変性されたものを含む)が、ポリオール(アミノアルコール等)または2個以上のイソシアネート反応性基を有する他の化合物を用いてキャッピングされ得る。ポリオールキャッピング剤は、イソシアネート基をヒドロキシル基と置換し、他のキャッピング剤は、イソシアネート基を他の種類のイソシアネート反応性基と置換する。イソシアネート反応性基は、1個以上の尿素及び/またはウレタン基を通じて、官能化ポリエーテルのポリエーテル部分に結合される。これを行うことは、例えば、プレポリマーがベースポリオールと反応するのを防ぐため、または本発明の分散体を形成する前にプレポリマーがベースポリオールとブレンドされることを可能にするために望ましくあり得る。この種類の官能化ポリエーテルは、構造IIIに従った構造を有し得る:
【0052】
【化6】
【0053】
この中で、PE、X、及びRは、以前に定義された通りであり、zは、ポリオールもしくはアミノアルコールのヒドロキシル及び/またはアミノ基の除去後の1〜5、好ましくは1〜2の数字であり、かつR’は残渣である。キャッピングされたイソシアヌレート含有化合物は、構造IVに従った構造を有し得る:
【0054】
【化7】
【0055】
式中、X、R、PE、及びxは、以前に定義された通りであり、各Zは、
【0056】
【化8】
【0057】
であり、式中、Rはポリオールキャッピング剤の残渣であり、zは、1〜5、好ましくは1または2であり、かつXは、以前に定義された通りであるが、但し、少なくとも1つのZは
【0058】
【化9】
であることを条件とする。
【0059】
構造IIIまたはIV等の構造を有するプレポリマーを生成するためのキャッピング剤として使用されるポリオールまたはアミノアルコールは好適に、最大399、より好ましくは最大150、とりわけ最大80のヒドロキシル当量を有し、かつ好適に、2〜6個のヒドロキシル基及び0または1個の第一級もしくは第二級アミノ基を含有する。例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ショ糖、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びジイソプロパノールアミン等が挙げられる。トリエタノールアミン等のアミノアルコールが好ましい。前述のもののうちの2つ以上の混合物を使用することができる。
【0060】
本発明の揺変性ポリオール分散体の作製において、ベースポリオール、ポリイソシアネート、低当量ポリオール、触媒(複数可)、プレポリマー(ある場合は)、及び安定剤(ある場合は)を、いかなる順序でも組み合わせることができるが、但し、低当量ポリオールとポリイソシアネートとの反応は、ベースポリオールの存在下で起こることを条件とする。プレポリマーが、イソシアネート基を含有する、または1つ以上の他のイソシアネート含有化合物との混合物として添加される場合、(追加のポリイソシアネートが必要な場合)ポリイソシアネートと組み合わせられて、結果として生じた組み合わせが一緒に導入されてもよい。プレポリマーは、大量の未反応開始ポリイソシアネートを含有する混合物として提供される場合、追加のポリイソシアネート化合物の提供を必要としなくてもよい。
【0061】
物質の混合物は次いで、反応させられて、ベースポリオール中に分散されたポリウレタン−イソシアヌレート粒子を形成する。反応は、例えば、0〜100℃の温度で実施されてもよい。典型的に、成分が0〜100℃、好ましくは10〜70℃、より好ましくは20〜60℃の温度である間に、ベースポリオール、ポリイソシアネート、及び触媒は混合される。次いで、混合物を反応させる。これは、所望であれば熱をさらに適用することなく完了することができる。低当量ポリオールとポリイソシアネートとの反応は発熱性であり、熱を全く適用しなかったとしても温度上昇をもたらし得る。必要な場合は冷却が適用されて、反応の発熱による過剰な温度上昇を防ぐことができる。反応は典型的に、30秒〜1時間を要するが、このことは温度等の要因に依存する。より好ましい反応時間は、1分〜10分であり、特定の実施形態では2〜7または2〜5分である。
【0062】
反応の完了後に、粗い分散体が剥離されるか、さもなければ未反応物質及び揮発性反応副生成物等を除去するように処理され得る。
【0063】
本発明の特定の態様では、分散体は、水、ベースポリオール、低当量ポリオール、プレポリマー(ある場合は)、及びポリイソシアネート化合物(複数可)を組み合わせた重量に基づいて、0〜2部、好ましくは0〜0.5部の水の存在下で調製される。
【0064】
分散体の固体含有量は、1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは8〜25重量パーセント、とりわけ10〜25重量パーセントであってもよい。固体含有量は、分散体の総重量のパーセンテージとしてのポリウレタン−イソシアヌレート粒子の重量を指す。本発明の目的として、粒子の重量は、(a)分散体形成プロセスに導入されたポリイソシアネート、(b)低当量ポリオール、(c)プレポリマーの作製に使用されるポリイソシアネート(もしある場合は、かつプレポリマーに残留し、それと共に添加される、プレポリマーを作製するのに使用されるいずれかの未反応開始ポリイソシアネートを含む)、及びもしある場合は(d)ポリウレタン種粒子を組み合わせた重量と等しい、計算された重量である。プレポリマーの作製に使用されるポリイソシアネートの重量を、プレポリマー形成反応に使用されるポリイソシアネート化合物の重量パーセンテージで乗じたプレポリマーの重量として捉える。
【0065】
いくつかの実施形態では、分散体は、実施例で説明される方法に従って1rpmで測定される場合に、20℃で50〜10000Pa・sの粘度を有する。他の実施形態では、1rpmのせん断速度下の20℃での粘度は、100〜5000Pa・sまたは100〜2500Pa・sである。
【0066】
分散体は、ヒドロキシル基を含有する。ベースポリオールのヒドロキシル基のうちの少なくともいくつかは、分散体を調製するときは未反応のままである。加えて、分散された粒子はまた、遊離ヒドロキシル基を含有し得る。後者の場合は、分散された粒子の存在に関わらず、分散体のヒドロキシル価がベースポリオールのそれよりも多くなり得る。
【0067】
本発明の揺変性分散体は、ヒドロキシル基と反応する少なくとも1つの硬化剤をさらに含む硬化性樹脂組成物の成分として有用である。分散体の存在により、硬化性樹脂組成物に揺変特性が付与される。
【0068】
本発明の揺変性分散体は、例えば、硬化性樹脂組成物の重量の5〜90、5〜75、10〜75、または25〜60パーセントを構成する。
【0069】
硬化剤は、例えば、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂、ジカルボン酸、またはヒドロキシル基と反応して組成物を硬化させる2個以上の官能基を有する他の物質であってもよい。
【0070】
加えて、硬化性樹脂組成物は、例えば、追加のポリオール、架橋剤、鎖伸長剤、ポリアミン、硬化触媒、粒状充填剤、補強剤、着色剤、レオロジー改質剤、保存剤、及び酸化防止剤等を含む、有用であり得るような他の物質を含有し得る。
【0071】
硬化性樹脂組成物は、シーラント及び/もしくは接着剤として、または塗装もしくは他の保護コーティング等のコーティング組成物に配合され得る。
【0072】
硬化性樹脂組成物は、一液組成物または二液組成物として配合され得る。一液組成物では、硬化剤を含む全ての成分が組み合わせられる。一液組成物は、潜在硬化のために、高温等の特定の条件に曝露されるときのみ硬化するように配合され得る。潜在硬化特性は、例えば、反応性基硬化剤をブロックすること、硬化剤もしくは触媒をカプセルに包むこと、加熱活性化触媒を選択すること、または他の方法によって達成され得る。分散体は、ポリイソシアネートと反応することによって、イソシアネート終端プレポリマーへ形成され得、かかるイソシアネート終端プレポリマーは、シーラントまたは接着剤の湿気硬化性樹脂成分として有用である。二液組成物は概して、本発明の分散体を含む第1の成分と、硬化剤(複数可)を含む第2の成分とへ配合される。この2つの成分を、適用の直前に混合する。
【0073】
本発明の分散体はまた、ポリイソシアネートとの反応によってポリウレタンを作製するのに有用である。ポリオールのイソシアネートとの反応によるポリウレタンの製造が、既知である。中でも、この様式で作製することができるポリウレタンの種類には、例えば、ポリウレタン注型エラストマ、反応射出成型エラストマ、スプレーエラストマ、スプレーフォーム(弾性または剛性であり得る)、スラブストック可撓性ポリウレタンフォーム、成型可撓性ポリウレタンフォーム、半可撓性フォーム、微細セルエラストマー、剛性ポリウレタンフォーム(現場注入用途で作製された電化製品フォーム及び剛性ボードフォームを含む)、ならびに構造ポリウレタンが含まれる。
【0074】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されるが、その範囲を制限することを意図しないものとする。全ての部及びパーセンテージは、別段示されない限り重量によるものである。なお、「実施例1」〜「実施例9」のうち、「実施例5」〜「実施例9」は令和1年9月11日付け手続補正書で特定される補正後の本願発明の対象外であるため、それぞれ「参考例5」〜「参考例9」とする。
【0075】
ポリオールIは、約0.1%の水を含有する分子量2000の全てのポリ(プロピレンオキシド)ジオールである。これは、少なくとも98%の第二ヒドロキシル基を含有する。
【0076】
ポリオールIIは、約0.1%の水を含有する分子量1000の全てのポリ(プロピレンオキシド)ジオールである。これは、少なくとも98%の第二ヒドロキシル基を含有する。
【0077】
ポリオールIIIは、三官能開始剤及び水酸化カリウム触媒の存在下でモノマーを重合することによって形成された分子量3500のプロピレンオキシド及びエチレンオキシドの公称三官能ランダムコポリマーである。
【0078】
ポリオールIVは、48のヒドロキシル価を有する公称三官能ポリ(プロピレンオキシド)である。これは、複金属シアン化物触媒錯体を使用して調製される。そのヒドロキシル基のうちの少なくとも70%は第二ヒドロキシルである。
【0079】
ポリオールVは、18重量%のポリ(エチレンオキシド)末端基を有する分子量4500のポリ(プロピレンオキシド)トリオールである。そのヒドロキシル基のうちの70%超は、第一ヒドロキシル基である。ポリオールVは、約0.1%の水を含有する。
【0080】
ポリオールVIは、約8%のポリ(オキシエチレン)基でキャッピングされた分子量3000の公称三官能ポリ(プロピレンオキシド)ホモポリマーである。これは、約0.1%の水を含有する。
【0081】
ポリオールVIIは、0.2%未満の水、及び約0.2%の酢酸カリウムを含有する、90%のプロピレンオキシドと10%のエチレンオキシドとの分子量1500の線状単官能ブロックコポリマーである。この生成物は、約0.2%の酢酸カリウムを含有する。
【0082】
ポリオールVIIIは、0.2%未満の水を含有し、酢酸カリウムを含有しない、90%のプロピレンオキシドと10%のエチレンオキシドとの分子量1500の線状単官能ブロックコポリマーである。
【0083】
ポリオールIXは、トリエタノールアミンである。
【0084】
80/20TDIは、80%の2,4−トルエンジイソシアネートと20%の2,6−ジイソシアネートとの混合物である。
【0085】
種分散体Aは、ポリオールIII中の10%のポリウレタン粒子の分散体である。ポリウレタン粒子は、ポリオールIXと80/20TDIとの反応生成物である。
【0086】
種分散体Bは、ポリオールV中の10%のポリウレタン粒子の分散体である。ポリウレタン粒子は、ポリオールIXと80/20TDIとの反応生成物である。
【0087】
実施例1〜4
80部のポリオールVIII、20部の80/20TDI、及び0.05部の第四級アンモニウムイソシアネート三量化触媒を組み合わせて、45℃で数時間撹拌する。結果として生じたプレポリマーのイソシアネート含有量は3.6%である。85部の結果として生じたプレポリマーを、次いで、15部のポリオールIXと組み合わせて、その混合物をイソシアネート含有量が0.1重量%未満まで低減されるまで反応させる。結果として生じた生成物は、プレポリマーAである。
【0088】
80部のポリオールVIII、20部の80/20TDI、及び0.05部の第四級アンモニウムイソシアネート三量化触媒を組み合わせて、イソシアネート含有量が約3.2%まで低減されるまで45℃で撹拌する。結果として生じた生成物は、プレポリマーBである。
【0089】
実施例1:89部のポリオールI、1.1部のプレポリマーA、0.05部の第四級アンモニウム三量化触媒、及び4.45部のポリオールIXを、室温で60秒間、高速実験室用ミキサ上で混合する。5.81部の80/20TDIを添加して、結果として生じた混合物を、室温まで冷却する前に5分間迅速に撹拌する。この生成物が、ポリオールI中のポリウレタン−イソシアヌレート粒子の安定した分散体である。
【0090】
Beckman Coulter LS粒度分析計を使用して、粒径を測定する。20℃で、回転式で動作するコーンプレート型の形状を持つBohlin粘度計を使用して、分散体の粘度を測定する。粘度計は、1分間にわたって直線的に1〜60Hzまで勾配し、さらに1分間かけて1Hzまで戻る速さで動作する。粘度測定を継続的に行い、かつ記録する。初期、最小、及び最終粘度は、表1に報告される通りである。
【0091】
実施例2:89部のポリオールII、1.5部のプレポリマーA、0.05部の第四級アンモニウムイソシアネート三量化触媒、0.1部のカルボン酸亜鉛触媒、及び4.25部のポリオールIXを、室温で60秒間、高速実験室用ミキサ上で混合する。5.72部の80/20TDIを添加して、結果として生じた混合物を、室温まで冷却する前に5分間迅速に撹拌する。この生成物が、ポリオールI中のポリウレタン−イソシアヌレート粒子の安定した分散体である。この生成物中において、イソシアヌレート基は、プレポリマーAの調製中、及び分散体自体が調製されているときの両方で形成すると考えられる。ウレタン基は、ウレタン触媒の存在により、分散体調製ステップの間に形成する。粒径及び粘度を、実施例1と同じ様式で測定する。結果は、表1に報告される通りである。
【0092】
実施例3:86部のポリオールIII、及びポリオールIII中の2部のポリウレタン粒子の種分散体を、5.5部の80/20TDI及び2.3部のプレポリマーBと、室温で60秒間、高速実験室用ミキサ上で混合する。0.02部の同様のイソシアネート三量化触媒及び4.5部のポリオールIXを添加して、結果として生じた混合物を室温まで冷却する前に10分間迅速に撹拌する。この生成物が、ポリオールIII中のポリウレタン−イソシアヌレート粒子の安定した分散体である。イソシアヌレート基はプレポリマーBの調製中に形成し、イソシアヌレート及びウレタン基は、分散体自体が調製されるときに形成する。粒径及び粘度を前述のように測定し、結果は表1に示される通りである。
【0093】
実施例4は、イソシアネート三量化触媒の量が0.2部まで増加する、80/20TDIの量が5.52部まで増加する、かつプレポリマーBの量が2.52部まで増加することを除いて、実施例3と同様の様式で行う。粒径及び粘度を前述のように測定し、結果は表1に示される通りである。
【0094】
【表1】
【0095】
実施例1及び2はそれぞれ、強く揺変性である挙動を示す。せん断下に置かれたときに、実施例1及び2の粘度は、最小せん断下で測定される初期粘度の5〜10%まで低減される。せん断力の除去後、これらの実施例のそれぞれの粘度は、再度上昇する。それぞれの初期値に対する粘度のさらなる回復が、せん断条件なしで、または低いせん断条件下でさらに静置させることにより生じる。実施例2は実施例1より低い初期粘度を有し、これは、ウレタン触媒の存在による、より多くのウレタン連鎖(したがって、より少ないイソシアヌレート基)の形成に起因し得る。
【0096】
これらの実施例では、イソシアヌレート基の存在は、揺変性の挙動に寄与すると考えられる。三量化触媒の影響は、実施例3を実施例4と比較することで見られる。両方が明らかに揺変性であっても、実施例3は、せん断下で実施例4よりも小さい粘度変化を呈する。三量化触媒をカルボン酸亜鉛ウレタン触媒と置換することによって、実施例3及び4を繰り返す場合、粘度測定においてせん断依存はほとんど見られない。
【0097】
以降の「実施例5」〜「実施例9」は令和1年9月11日付け手続補正書で特定される補正後の本願発明の対象外であるため、それぞれ「参考例5」〜「参考例9」とする。
実施例5及び6
プレポリマーCを、50重量部のポリオールVIIと50部の80/20TDIとを組み合わせて、その混合物を、密封容器中で、室温で数時間撹拌することによって作製する。モノオール及び80/20TDIの量に基づいた理論上のイソシアネート含有量(ビウレット、尿素、アロフォネート、またはイソシアヌレート形成を考慮せず)は、23.6%である。生成物の測定されたイソシアネート含有量は16%であり、これはイソシアヌレート(おそらくはビウレット、尿素、及び/またはアロフォネート)形成が、ポリオールVII中の酢酸カリウムの存在によって生じていることを示す。
【0098】
プレポリマーDを、25部のポリオールVIIと75部の80/20TDIとを組み合わせて、その混合物を、密封容器中で、室温で数時間撹拌することによって作製する。モノオール及び80/20TDIの量に基づいた理論上のイソシアネート含有量(ビウレット、尿素、アロフォネート、またはイソシアヌレート形成を考慮せず)は、35.5%である。生成物の測定されたイソシアネート含有量は30.8%であり、これはイソシアヌレート(おそらくはビウレット、尿素、及び/またはアロフォネート)形成が、ポリオールVII中の酢酸カリウムの存在によって生じていることを示す。
【0099】
実施例5:66.1部のポリオールIIIと22.45部のプレポリマーCとを、室温で60秒間、高速実験室用ミキサ上で混合する。0.4部カルボン酸亜鉛触媒、ポリオールII中の10%のポリウレタン粒子の2部の種分散体、及び9.36部のポリオールIXを添加して、結果として生じた混合物を室温まで冷却する前に10分間迅速に撹拌する(反応の発熱を除去するため)。この生成物が、ポリオールIII中のポリウレタン−イソシアヌレート粒子の安定した分散体である。この場合では、プレポリマーCを調製するときに、イソシアヌレート基を形成する。プレポリマーCのうちの少なくともいくらかは、分散体の形成中に粒子内へ組み込まれると考えられる。粒径及び粘度を、前述のように測定する。結果は、表2に示される通りである。
【0100】
実施例6:88部のポリオールIII、4.5部のポリオールIX、及び0.3部のカルボン酸亜鉛触媒を、室温で60秒間、高速実験室用ミキサ上で混合する。8.65部のプレポリマーDをポリオール/触媒混合物へ添加して、結果として生じた混合物を室温まで冷却する前に10分間迅速に撹拌する。この生成物が、ポリオールIII中のポリウレタン−イソシアヌレート粒子の安定した分散体である。粒径及び粘度を、前述のように測定する。結果は、表2に示される通りである。
【0101】
【表2】
【0102】
実施例7及び8
プレポリマーEを、80重量部のポリオールVIII、0.05部のイソシアネート三量化触媒、及び20部の80/20TDIを組み合わせて、その混合物を密封容器中で、イソシアネート含有量が2.4%まで減少するまで50℃で撹拌することによって作製する。
【0103】
イソシアネート含有量が1.8%まで減少するまで生成物を撹拌することを除いて、プレポリマーFをプレポリマーEと同様の様式で作製する。
【0104】
実施例7:プレポリマーEを、80/20TDIを25/75の重量比で用いて希釈する。7.25部の結果として生じた混合物を、86部のポリオールIIIと組み合わせて、60秒間高速実験室用ミキサ上で撹拌する。4.5部のポリオールIX、2部の種分散体A、及び0.2部のカルボン酸亜鉛触媒を添加して、結果として生じた反応混合物を10分間撹拌する。この生成物が、ポリオールIII中のポリウレタン−イソシアヌレート粒子の分散体である。イソシアヌレート基は、プレポリマーEが作製され、プレポリマーEが分散体形成反応において反応する際に、粒子に組み込まれるときに形成する。粒径及び粘度測定を、前述のように行う。結果は、表4に示される通りである。
【0105】
実施例8:プレポリマーFを、80/20TDIを25/75の重量比で用いて希釈する。7.28部の結果として生じた混合物を、86部のポリオールIIIと組み合わせて、60秒間高速実験室用ミキサ上で撹拌する。4.5部のトリエタノールアミン、2部の種分散体A、及び0.2部のカルボン酸亜鉛触媒を添加して、結果として生じた反応混合物を10分間撹拌する。この生成物が、ポリオールIII中のポリウレタン−イソシアヌレート粒子の分散体である。イソシアヌレート基は、プレポリマーFが作製され、プレポリマーFが分散体形成反応において反応する際に、粒子に組み込まれるときに形成する。粒径及び粘度測定を、前述のように行う。結果は、表3に示される通りである。
【0106】
【表3】
【0107】
実施例7は、実施例8より高い初期粘度及びより優れた揺変性の挙動を呈するが、プレポリマーF中のイソシアネート三量化の度合いは、プレポリマーE中よりも高い。これは、プレポリマー中のより多くの反応性基の存在が、揺変性生成物の形成のより強い助けとなることを提示しており、このような場合に、これらの実施例にあるように、イソシアヌレート形成は、分散体自体の調製中にほとんどまたは全く生じない。これらの反応性基なしでは、プレポリマーは、分散相粒子中へ有意に組み込まれず、粒子は本質的に、ポリウレタン−イソシアヌレート粒子に代わってポリウレタン粒子となる。実施例7及び8の相対的性能により、高い揺変性を呈する生成物の作製に対する、分散相ポリウレタン−イソシアヌレート粒子を生成することの重要性がますます強くなる。
【0108】
実施例9
実施例9を、室温での撹拌下で、79部のポリオールIII、2部のポリオールVIII、0.05部の第四級アンモニウムイソシアネート三量化触媒、及び11.7部のTDI80/20のブレンドを4分間事前に反応させることによって行う。次いで、9部のポリオールIX及び0.1部のカルボン酸亜鉛を添加して、その反応物質を5分間撹拌する。粒径及び粘度測定を、前述のように行う。結果を、表4に報告する。
【0109】
【表4】
【0110】
実施例9は、第四級アンモニウムイソシアネート三量化触媒の存在に少なくとも部分的に起因して、高粘度を呈する。しかしながら、触媒レベルの量が小さいため、以前の実施例と比較してより少ないイソシアヌレート基が形成すると考えられる。結果として、実施例9は、実施例1〜9ほど強い揺変性ではない。より強い揺変性の挙動は、触媒レベル及び/または反応時間を増加させることによって達成することができる。