特許第6985807号(P6985807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

<>
  • 特許6985807-光学ユニット 図000002
  • 特許6985807-光学ユニット 図000003
  • 特許6985807-光学ユニット 図000004
  • 特許6985807-光学ユニット 図000005
  • 特許6985807-光学ユニット 図000006
  • 特許6985807-光学ユニット 図000007
  • 特許6985807-光学ユニット 図000008
  • 特許6985807-光学ユニット 図000009
  • 特許6985807-光学ユニット 図000010
  • 特許6985807-光学ユニット 図000011
  • 特許6985807-光学ユニット 図000012
  • 特許6985807-光学ユニット 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985807
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】光学ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/076 20060101AFI20211213BHJP
   F21S 41/675 20180101ALI20211213BHJP
   F21V 7/09 20060101ALI20211213BHJP
   F21V 14/04 20060101ALI20211213BHJP
   F21W 102/145 20180101ALN20211213BHJP
   F21W 102/165 20180101ALN20211213BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20211213BHJP
   F21Y 115/20 20160101ALN20211213BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20211213BHJP
【FI】
   B60Q1/076
   F21S41/675
   F21V7/09 200
   F21V7/09 400
   F21V14/04
   F21W102:145
   F21W102:165
   F21Y115:10
   F21Y115:20
   F21Y115:30
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-82156(P2017-82156)
(22)【出願日】2017年4月18日
(65)【公開番号】特開2018-177090(P2018-177090A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀忠
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−224039(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/129105(WO,A1)
【文献】 特開2005−063706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/076
F21S 41/675
F21V 7/09
F21V 14/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射した光を反射しながら回転軸を中心に一方向に回転する回転リフレクタと、を備え、
前記回転リフレクタは、反射した前記光が光源像として走査されることで配光パターンを形成するように構成されており、
前記配光パターンの一部に生じる非照射領域は、先端または後端である直線の端部を有し、
前記光源は、三角形の光出射面をそれぞれ有する複数の発光素子を備え、
前記複数の発光素子は、点消灯が制御されることで前記直線の傾きを変化させることができるように配置されていることを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
前記複数の発光素子の光出射面は、
光源像として走査される方向と交差する第1の辺を有する第1光出射面と、
光源像として走査される方向と交差し、前記第1の辺と方向が異なる第2の辺を有する第2光出射面と、を有することを特徴とする請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項3】
前記第1光出射面および前記第2光出射面の点灯状態をそれぞれ制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、
前記配光パターンとして第1の形状の非照射部を有する第1の配光パターンを形成する場合には、前記第1の形状の非照射部を前記第1光出射面から出射した光が走査するタイミングで前記第1光出射面を消灯制御し、
前記配光パターンとして第1の形状と異なる第2の形状の非照射部を有する第2の配光パターンを形成する場合には、前記第2の形状の非照射部を前記第2光出射面から出射した光が走査するタイミングで前記第2光出射面を消灯制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記第1光出射面は、前記第1の辺によって斜めの第1カットラインが形成される形状を有することを特徴とする請求項2または3に記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記第2光出射面は、前記第2の辺によって、前記第1カットラインと角度の異なる第2カットラインが形成される形状を有することを特徴とする請求項4に記載の光学ユニット。
【請求項6】
前記第2光出射面は、前記第2の辺によって、前記第1カットラインと対称の第2カットラインが形成される形状を有することを特徴とする請求項4に記載の光学ユニット。
【請求項7】
前記第1光出射面と前記第2光出射面とは、光源像として走査される方向に配列していることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ユニットに関し、特に車両用灯具に用いられる光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光源から出射した光を車両前方に反射し、その反射光で車両前方の領域を走査することで所定の配光パターンを形成する装置が考案されている。例えば、光源から出射した光を反射しながら回転軸を中心に一方向に回転する回転リフレクタと、発光素子からなる光源と、を備え、回転リフレクタは、回転しながら反射した光源の光が所望の配光パターンを形成するよう反射面が設けられている光学ユニットが考案されている(特許文献1)。
【0003】
また、この光学ユニットは、所定のタイミングで発光素子を消灯することで、配光パターンの一部に非照射領域を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−26628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の光学ユニットは、形成できる配光パターンの形状が限られており、更なる改良の余地がある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成で複数の配光パターンを形成可能な新たな光学ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光学ユニットは、光源と、光源から出射した光を反射しながら回転軸を中心に一方向に回転する回転リフレクタと、を備える。回転リフレクタは、反射した光が光源像として走査されることで配光パターンを形成するように構成されており、光源は、点消灯が制御されることで配光パターンの一部に生じる非照射領域の端部の形状を異ならせることができるように光出射面が構成されている。
【0008】
この態様によると、非照射領域の端部の形状が異なる複数の配光パターンを形成できる。
【0009】
光出射面は、光源像として走査される方向と交差する第1の辺を有する第1光出射面と、光源像として走査される方向と交差し、第1の辺と方向が異なる第2の辺を有する第2光出射面と、を有してもよい。これにより、非照射領域の端部を第1の辺に対応したカットラインと第2の辺に対応したカットラインで形成できる。なお、一つの光出射面が第1の辺と第2の辺とを有していてもよい。
【0010】
第1光出射面および第2光出射面の点灯状態をそれぞれ制御する制御部を更に備えてもよい。制御部は、配光パターンとして第1の形状の非照射部を有する第1の配光パターンを形成する場合には、第1の形状の非照射部を第1光出射面から出射した光が走査するタイミングで第1光出射面を消灯制御し、配光パターンとして第1の形状と異なる第2の形状の非照射部を有する第2の配光パターンを形成する場合には、第2の形状の非照射部を第2光出射面から出射した光が走査するタイミングで第2光出射面を消灯制御してもよい。これにより、非照射部の形状が異なる複数の配光パターンを形成できる。
【0011】
第1光出射面は、第1の辺によって斜めの第1カットラインが形成される形状を有してもよい。これにより、例えば、ヘッドライト等の車両用灯具へ適用できる。
【0012】
第2光出射面は、第2の辺によって、第1カットラインと角度の異なる第2カットラインが形成される形状を有してもよい。これにより、照射方向の状況に応じて非照射部をより適した形にすることが可能となる。例えば、光学ユニットを車両用前照灯に適用した場合、前走車等に与えるグレアを抑制しつつ前方の視認性を向上できる。
【0013】
第2光出射面は、第2の辺によって、第1カットラインと対称の第2カットラインが形成される形状を有してもよい。これにより、非照射領域の端部が左右対称の配光パターンを形成できる。
【0014】
光出射面は、光源像として走査される方向に、第1光出射面と第2光出射面とが配列していてもよい。これにより、省スペースで複数の配光パターンを形成できる。
【0015】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の配光パターンを形成可能な新たな光学ユニットを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。
図2】本実施の形態に係る車両用前照灯の正面図である。
図3】本実施の形態に係る回転リフレクタの構成を模式的に示した側面図である。
図4】本実施の形態に係る回転リフレクタの構成を模式的に示した上面図である。
図5図5(a)は、第1の実施の形態に係る第1の光源を正面から見た場合の模式図、図5(b)は、点灯した状態の第1の光源が静止した回転リフレクタに反射されて前方へ光源像として投影された様子を示す模式図である。
図6図6(a)〜図6(d)は、光源像L15〜L18を走査した場合に形成できる配光パターンを説明するための模式図である。
図7図7(a)〜図7(d)は、第1の実施の形態に係る光学ユニットで実現できる配光パターンの例を示す図である。
図8】各実施の形態に係る車両用前照灯の制御装置を示す図である。
図9図9(a)は、第2の実施の形態に係る第1の光源を正面から見た場合の模式図、図9(b)は、点灯した状態の第1の光源が静止した回転リフレクタに反射されて前方へ光源像として投影された様子を示す模式図である。
図10図10(a)、図10(b)は、光源像L21〜L25を走査した場合に形成できる配光パターンを説明するための模式図である。
図11図11(a)、図11(b)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットで実現できる配光パターンの例を示す図である。
図12】第3の実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0019】
本実施の形態に係る光学ユニットは、種々の車両用灯具に用いることができる。以下では、車両用灯具のうち車両用前照灯に本実施の形態に係る光学ユニットを適用した場合について説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
(車両用前照灯)
図1は、本実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。図2は、本実施の形態に係る車両用前照灯の正面図である。なお、図2においては、一部の部品を省略してある。
【0021】
本実施の形態に係る車両用前照灯10は、自動車の前端部の右側に搭載される右側前照灯であり、左側に搭載される前照灯と左右対称である以外は同じ構造である。そのため、以下では、右側の車両用前照灯10について詳述し、左側の車両用前照灯については説明を省略する。
【0022】
図1に示すように、車両用前照灯10は、前方に向かって開口した凹部を有するランプボディ12を備えている。ランプボディ12は、その前面開口が透明な前面カバー14によって覆われて灯室16が形成されている。灯室16は、1つの光学ユニット18が収容される空間として機能する。光学ユニット18は、可変ハイビームとロービームの両方を照射できるように構成されたランプユニットである。可変ハイビームとは、ハイビーム用の配光パターンの形状を変化させるように制御されているものをいい、例えば、配光パターンの一部に非照射領域(遮光部)を生じさせることができる。
【0023】
本実施の形態に係る光学ユニット18は、第1の光源20と、第1の光源20から出射した第1の光L1の光路を変化させて回転リフレクタ22のブレード22aに向かわせる1次光学系(光学部材)としての集光用レンズ23と、第1の光L1を反射しながら回転軸Rを中心に回転する回転リフレクタ22と、投影レンズ24と、第1の光源20と投影レンズ24との間に配置された第2の光源26と、第2の光源26から出射した第2の光L2をブレード22aに向かわせる1次光学系(光学部材)としての拡散用レンズ28と、制御部29と、を備える。
【0024】
第1の光源20は、発光面が二等辺三角形の素子がマトリックス状に配置されている。第2の光源26は、4個の素子が一列に配置されている。
【0025】
投影レンズ24は、回転リフレクタ22で反射された第1の光L1を光学ユニットの光照射方向(図1左方向)に集光し投影する集光部24aと、回転リフレクタ22で反射された第2の光L2を光学ユニットの光照射方向に拡散し投影する拡散部24bと、を備える。これにより、光学ユニット18の前方に光源像を鮮明に投影できる。
【0026】
図3は、本実施の形態に係る回転リフレクタの構成を模式的に示した側面図である。図4は、本実施の形態に係る回転リフレクタの構成を模式的に示した上面図である。
【0027】
回転リフレクタ22は、モータ34などの駆動源により回転軸Rを中心に一方向に回転する。また、回転リフレクタ22は、回転しながら反射した各光源の光を走査することで所望の配光パターンを形成するように反射面としてのブレード22aが設けられている。つまり、回転リフレクタは、その回転動作により、発光部からの可視光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって所望の配光パターンを形成する。
【0028】
回転リフレクタ22は、反射面として機能する、形状の同じ2枚のブレード22aが筒状の回転部22bの周囲に設けられている。回転リフレクタ22の回転軸Rは、光軸Axに対して斜めになっており、光軸Axと各光源とを含む平面内に設けられている。換言すると、回転軸Rは、回転によって左右方向に走査する各光源の光(照射ビーム)の走査平面に略平行に設けられている。これにより、光学ユニットの薄型化が図られる。ここで、走査平面とは、例えば、走査光である各光源の光の軌跡を連続的につなげることで形成される扇形の平面ととらえることができる。
【0029】
また、回転リフレクタ22のブレード22aの形状は、回転軸Rを中心とする周方向に向かうにつれて、光軸Axと反射面とが成す角が変化するように捩られた形状を有している。これにより、図4に示すように第1の光源20や第2の光源26の光を用いた走査が可能となる。
【0030】
各光源には、LED、EL素子、LD素子などの半導体発光素子が用いられる。集光部24aおよび拡散部24bを有する凸状の投影レンズ24の形状は、要求される配光パターンや照度分布などの配光特性に応じて適宜選択すればよいが、非球面レンズや自由曲面レンズを用いることも可能である。
【0031】
制御部29は、外部からの制御信号に基づいて、第1の光源20および第2の光源26の点消灯制御と、モータ34の回転制御を行う。第1の光源20は、ヒートシンク30に搭載され、第2の光源26は、ヒートシンク32に搭載されている。
【0032】
以下では、第1の光源における発光素子の光出射面の形状やレイアウトに着目して説明する。本実施の形態では、回転リフレクタ22で反射された光源像を走査することで配光パターンを形成するが、光源像を構成する発光素子の光出射面の形状や点灯状態を工夫することで、様々な形態の配光パターンを形成できる。
【0033】
図5(a)は、第1の実施の形態に係る第1の光源を正面から見た場合の模式図、図5(b)は、点灯した状態の第1の光源が静止した回転リフレクタに反射されて前方へ光源像として投影された様子を示す模式図である。なお、図5(a)では、集光用レンズ23の図示を省略している。また、図5(b)の光源像は、図5(a)の発光素子の像が投影レンズ24によって上下が反転したものである。
【0034】
図5(a)に示すように、第1の光源20は、8つの発光素子E11〜E18が配置されている。各発光素子E11〜E18は、発光面(光出射面)が直角二等辺三角形である。また、2つの発光素子が組み合わさることで矩形の発光面としても機能する。図5(b)に示す光源像L11〜L18は、発光素子E11〜E18の各発光面に対応したものである。
【0035】
図6(a)〜図6(d)は、光源像L15〜L18を走査した場合に形成できる配光パターンを説明するための模式図である。図6(a)〜図6(d)に示すように、光源像L11〜L18は、走査されることで形成されるパターンを考慮すると、4種類に分類される。
【0036】
図6(a)に示すように、発光素子E15が連続点灯している状態であると、その光源像L15が走査されることで形成されるパターンP1は、左辺S11が垂直で右辺S12が斜め右下がりの台形となる。また、発光素子E15が所定のタイミングで消灯すると、その光源像L15が走査されることで形成されるパターンP1’は、一部に非照射領域R1が形成されたものとなる。非照射領域R1は、左辺S11’が斜め左上がりで右辺S12’が垂直の台形である。
【0037】
同様に、図6(b)に示すように、発光素子E16が連続点灯している状態であると、その光源像L16が走査されることで形成されるパターンP2は、左辺S21が斜め左上がりで右辺S22が垂直の台形となる。また、発光素子E16が所定のタイミングで消灯すると、その光源像L16が走査されることで形成されるパターンP2’は、一部に非照射領域R2が形成されたものとなる。非照射領域R2は、左辺S21’が垂直で右辺S22’が斜め右下がりの台形である。
【0038】
同様に、図6(c)に示すように、発光素子E17が連続点灯している状態であると、その光源像L17が走査されることで形成されるパターンP3は、左辺S31が垂直で右辺S32が斜め右上がりの台形となる。また、発光素子E17が所定のタイミングで消灯すると、その光源像L17が走査されることで形成されるパターンP3’は、一部に非照射領域R3が形成されたものとなる。非照射領域R3は、左辺S31’が斜め左下がりで右辺S32’が垂直の台形である。
【0039】
同様に、図6(d)に示すように、発光素子E18が連続点灯している状態であると、その光源像L18が走査されることで形成されるパターンP4は、左辺S41が斜め左下がりで右辺S42が垂直の台形となる。また、発光素子E18が所定のタイミングで消灯すると、その光源像L18が走査されることで形成されるパターンP4’は、一部に非照射領域R4が形成されたものとなる。非照射領域R4は、左辺S41’が垂直で右辺S42’が斜め右上がりの台形である。
【0040】
このように、本実施の形態に係る発光素子E11〜E18は、矩形の発光素子と比較して、対向する2辺が平行でない。そのため、光源像が走査されることで形成されるパターンの形状は、矩形ではなく、走査方向の先端と後端の辺が平行でない台形となる。また、光源像が走査される際に点消灯が制御されることでパターンの一部に生じる非照射領域の形状も、矩形ではなく、走査方向の先端と後端の辺が平行でない台形となる。
【0041】
しかも、本実施の形態に係る第1の光源20は、発光面が二等辺三角形の同じ発光素子E11〜E18を配置したにもかかわらず、その配置を工夫することで互いに並進対称性のない4つの光源像L15〜L18(L11〜L14)を実現できる。そして、4つの光源像L15〜L18を走査することで、形状の異なる4つのパターンP1〜P4が形成できる。加えて、光源像で走査する際に発光素子を点消灯制御することで、並進対称性のない4つの非照射領域R1〜R4も実現できる。したがって、これらのパターンや非照射領域を組み合わせることで、全体の形状や遮光領域の形状が異なる複数種の配光パターンを簡易な構成の光学ユニットで実現できる。具体的には、第1の実施の形態に係る第1の光源は、1種類の発光素子で実現できる。
【0042】
図7(a)〜図7(d)は、第1の実施の形態に係る光学ユニットで実現できる配光パターンの例を示す図である。
【0043】
図7(a)に示す配光パターンPH1は、第1の光源20の全ての発光素子E11〜E18が常時点灯することで形成される。配光パターンPH1は、光源像L11が走査されることで形成されるパターンP11と、光源像L12が走査されることで形成されるパターンP12と、光源像L13が走査されることで形成されるパターンP13と、光源像L14が走査されることで形成されるパターンP14と、光源像L15が走査されることで形成されるパターンP15と、光源像L16が走査されることで形成されるパターンP16と、光源像L17が走査されることで形成されるパターンP17と、光源像L18が走査されることで形成されるパターンP18と、が合成されたハイビーム用配光パターンである。
【0044】
図7(b)に示す配光パターンPH2は、第1の光源20の発光素子E11,E14,E15,E18が点消灯することで形成される。配光パターンPH2は、光源像L11が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP11’と、光源像L14が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP14’と、光源像L15が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP15’と、光源像L18が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP18’と、が合成された可変ハイビーム用配光パターンである。配光パターンPH2では、左右対称の斜めのカットラインを有する台形の非照射領域が中央部に形成されている。
【0045】
図7(c)に示す配光パターンPH3は、第1の光源20の発光素子E13,E14,E17,E18が点消灯することで形成される。配光パターンPH3は、光源像L13が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP13’と、光源像L14が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP14’と、光源像L17が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP17’と、光源像L18が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP18’と、が合成された可変ハイビーム用配光パターンである。配光パターンPH3では、左右平行の斜めのカットラインを有する平行四辺形の非照射領域が中央部に形成されている。
【0046】
図7(d)に示す配光パターンPH4は、第1の光源20の全ての発光素子E11〜E18が点消灯することで形成される。配光パターンPH4は、光源像L11が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP11’と、光源像L12が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP12’と、光源像L13が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP13’と、光源像L14が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP14’と、光源像L15が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP15’と、光源像L16が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP16’と、光源像L17が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP17’と、光源像L18が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP18’と、が合成された可変ハイビーム用配光パターンである。配光パターンPH3では、カットラインが垂直な矩形の非照射領域が中央部に形成されている。
【0047】
上述のように、本実施の形態に係る第1の光源20は、点消灯が制御されることで配光パターンの一部に生じる非照射領域の端部の形状を異ならせることができるように光出射面が構成されている。これにより、非照射領域の端部の形状が異なる複数の配光パターンPH2〜PH4を形成できる。
【0048】
ここで、光出射面とは、第1の光源20を構成する複数の発光素子E11〜E18の発光面である。そして、この発光面の形状を、矩形の発光素子のような対向する2辺が平行な形状ではなく、少なくとも一辺が他のいずれの辺とも平行でないようにするとなおよい。例えば、台形でも可能である。なお、第1の光源が一つの発光素子で構成されており、その前面に光の透過を領域毎に制御する光透過制御部材(例えば、液晶シャッターや調光ミラー)を配置した場合は、光等制御部材の表面を光出射面と捉えてもよい。
【0049】
本実施の形態に係る第1の光源20は、図5(a)や図5(b)に示すように、光源像として走査される方向D1と交差する第1の辺A1を有する第1光出射面(発光素子E15)と、光源像として走査される方向と交差し、第1の辺A1と方向が異なる第2の辺A2を有する第2光出射面(発光素子E18)と、を有している。これにより、図7(b)に示す配光パターンPH2のように、非照射領域の端部を第1の辺A1に対応した斜めのカットラインCL1と第2の辺A2に対応した斜めのカットラインCL2で形成できる。これにより、ヘッドライト等の車両用灯具へ適用できる。
【0050】
また、発光素子E18は、第2の辺A2によって、カットラインCL1と角度の異なるカットラインCL2が形成される形状を有している。これにより、照射方向の状況に応じて非照射部をより適した形にすることが可能となる。例えば、前走車等に与えるグレアを抑制しつつ前方の視認性を向上できる。
【0051】
また、発光素子E18は、第2の辺A2によって、カットラインCL1と対称のカットラインCL2が形成される形状を有している。これにより、非照射領域の端部が左右対称の配光パターンPH2を形成でき、例えば、ドーバー法規への対応が容易なヘッドライトを実現できる。
【0052】
また、本実施の形態係る光学ユニット18は、例えば、発光素子E15および発光素子E17の点灯状態をそれぞれ制御する制御部29を更に備えている。制御部29は、配光パターンとして台形の非照射部を有する配光パターンPH2(図7(b)参照)を形成する場合には、台形の非照射部を発光素子E15から出射した光が走査するタイミングで発光素子E15を消灯制御し、配光パターンとして平行四辺形の非照射部を有する配光パターンPH3(図7(c)参照)を形成する場合には、平行四辺形の非照射部を発光素子E17から出射した光が走査するタイミングで発光素子E17を消灯制御してもよい。これにより、非照射部の形状が異なる複数の配光パターンを形成できる。
【0053】
なお、本実施の形態に係る第1の光源20は、光源像として走査される方向D1に、発光素子E15〜E18が配列している。これにより、省スペースな光源で複数の配光パターンを形成できる。
【0054】
図8は、各実施の形態に係る車両用前照灯の制御装置を示す図である。図8に示すように、本実施の形態に係る車両用前照灯10の制御装置100は、車両前方や周囲を撮影するカメラ44と、車両前方の他車両や歩行者までの距離や存在を検出するレーダ46と、ドライバにより車両用前照灯の点灯状態や照射モード(ハイビーム用配光パターンやロービーム用配光パターンの選択や自動制御モード等)を制御するスイッチ48と、操舵状態を検出する検知部50と、車速センサや加速度センサ等のセンサ52と、制御部29と、モータ34と、第1の光源20と、第2の光源26と、を備える。
【0055】
制御部29は、カメラ44、レーダ46、スイッチ48、検知部50およびセンサ52から取得した情報に基づいて、モータ34の回転や、第1の光源20や第2の光源26が有する各発光素子の点消灯を制御する。これにより、簡易な構成で複数の配光パターンを形成可能な新たな光学ユニット18を実現できる。
【0056】
[第2の実施の形態]
図9(a)は、第2の実施の形態に係る第1の光源を正面から見た場合の模式図、図9(b)は、点灯した状態の第1の光源が静止した回転リフレクタに反射されて前方へ光源像として投影された様子を示す模式図である。なお、図9(a)では、集光用レンズ23の図示を省略している。また、図9(b)の光源像は、図9(a)の発光素子が投影レンズ24によって上下が反転したものである。
【0057】
図9(a)に示すように、第1の光源120は、5つの発光素子E21〜E25が配置されている。各発光素子E21〜E25は、発光面(光出射面)が矩形(正方形)である。また、発光素子E21〜E23は、各辺が水平線H−Hに対して斜めになるように配置されており、発光素子E24,E25は、各辺が水平線H−Hに対して平行になるように配置されている。このように、同じ形状の発光素子を異なる向きに配置することで、種々の形状の配光パターンを実現できる。図9(b)に示す光源像L21〜L25は、発光素子E21〜E25の各発光面に対応したものである。
【0058】
図10(a)、図10(b)は、光源像L21〜L25を走査した場合に形成できる配光パターンを説明するための模式図である。図10(a)、図10(b)に示すように、光源像L21〜L25は、走査されることで形成されるパターンを考慮すると、2種類に分類される。
【0059】
図10(a)に示すように、発光素子E24が連続点灯している状態であると、その光源像L24が走査されることで形成されるパターンP1は、左辺S11が垂直で右辺S12も垂直な矩形となる。また、発光素子E24が所定のタイミングで消灯すると、その光源像L24が走査されることで形成されるパターンP1’は、一部に非照射領域R1が形成されたものとなる。非照射領域R1は、左辺S11’が垂直で右辺S12’も垂直な矩形である。
【0060】
同様に、図10(b)に示すように、発光素子E21が連続点灯している状態であると、その光源像L21が走査されることで形成されるパターンP2は、左辺S21が斜め左上がりおよび斜め左下がりの折れ線であり、右辺S22が斜め右上がりおよび斜め右下がりの折れ線であり、横長の六角形となる。また、発光素子E21が所定のタイミングで消灯すると、その光源像L21が走査されることで形成されるパターンP2’は、一部に非照射領域R2が形成されたものとなる。非照射領域R2は、左辺S21’が斜め左上がりおよび斜め左下がりの折れ線であり、右辺S22’が斜め右上がりおよび斜め右下がりの折れ線である。
【0061】
このように、本実施の形態に係る発光素子E21〜E25は、矩形の発光素子が1種類用いられており、対向する2辺が平行である。しかしながら、発光素子E24,E25に対して、一部の発光素子E21〜E23を配置する場所や向きを工夫することで複数のパターンを実現できる。また、光源像が走査されることで形成されるパターンの形状は、矩形だけではなく、走査方向の先端と後端の辺が折れ線となった六角形となる。また、光源像が走査される際に点消灯が制御されることでパターンの一部に生じる非照射領域の形状も、矩形ではなく、走査方向の先端と後端の辺が折れ線となる。
【0062】
図11(a)、図11(b)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットで実現できる配光パターンの例を示す図である。
【0063】
図11(a)に示す配光パターンPH1は、第1の光源120の全ての発光素子E21〜E25が常時点灯することで形成される。配光パターンPH1は、光源像L21が走査されることで形成されるパターンP21と、光源像L22が走査されることで形成されるパターンP22と、光源像L23が走査されることで形成されるパターンP23と、光源像L24が走査されることで形成されるパターンP24と、光源像L25が走査されることで形成されるパターンP25と、が合成されたハイビーム用配光パターンである。
【0064】
図11(b)に示す配光パターンPH2は、第1の光源120の発光素子E21〜E24が点消灯し、発光素子E25は常時消灯することで形成される。配光パターンPH2は、光源像L21が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP21’と、光源像L22が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP22’と、光源像L23が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP23’と、光源像L24が走査されると共に所定のタイミングで消灯することで形成されるパターンP24’と、が合成された可変ハイビーム用配光パターンである。配光パターンPH2では、左右対称の斜めのカットラインを有する台形の非照射領域が中央部に形成されている。
【0065】
なお、第1の実施の形態の図7(c)に示した配光パターンPH3と同様に、第1の光源120の発光素子E21〜E23の点消灯を制御することで、左右平行の斜めのカットラインを有する平行四辺形の非照射領域を中央部に形成することもできる。
【0066】
上述のように、本実施の形態に係る第1の光源120は、点消灯が制御されることで配光パターンの一部に生じる非照射領域の端部の形状を異ならせることができるように光出射面が構成されている。これにより、非照射領域の端部の形状が異なる複数の配光パターンを形成できる。
【0067】
本実施の形態に係る第1の光源120は、図9(a)や図9(b)に示すように、光源像として走査される方向D1と交差する第1の辺A1を有する第1光出射面(発光素子E21〜E23)と、光源像として走査される方向と交差し、第1の辺A1と方向が異なる第2の辺A2を有する第2光出射面(発光素子E21〜E23)と、を有している。これにより、図11(b)に示す配光パターンPH2のように、非照射領域の端部を第1の辺A1に対応した斜めのカットラインCL1と第2の辺A2に対応した斜めのカットラインCL2で形成できる。
【0068】
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態に係る車両用前照灯10においては、回転リフレクタ22のブレード22aの形状が、回転軸Rを中心とする周方向に向かうにつれて、光軸Axと反射面とが成す角が変化するように捩られた形状を有している。一方、第3の実施の形態に係る車両用前照灯においては、回転リフレクタとしてポリゴンミラーを用いており、それ以外は第1の実施の形態と実質的な違いはない。したがって、以下の説明においては、回転リフレクタについて詳述し、第1の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0069】
図12は、第3の実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。第3の実施の形態に係る車両用前照灯110は、前方に向かって開口した凹部を有するランプボディ12を備えている。ランプボディ12は、その前面開口が透明な前面カバー14によって覆われて灯室16が形成されている。灯室16は、1つの光学ユニット118が収容される空間として機能する。光学ユニット118は、可変ハイビームとロービームの両方を照射できるように構成されたランプユニットである。
【0070】
本実施の形態に係る光学ユニット118は、光源220と、光源220から出射した第1の光L1の光路を変化させてポリゴンミラー122の反射面122aに向かわせる1次光学系(光学部材)としての集光用レンズ23と、第1の光L1を反射しながら回転軸Rを中心に回転するポリゴンミラー122と、投影レンズ124と、制御部29と、を備える。
【0071】
光源220は、複数の素子がマトリックス状に配置されている。投影レンズ124は、ポリゴンミラー122で反射された第1の光L1を光学ユニットの光照射方向(図1左方向)に集光し投影する。これにより、光学ユニット118の前方に光源像を鮮明に投影できる。
【0072】
ポリゴンミラー122は、モータなどの駆動源により回転軸Rを中心に一方向に回転する。また、ポリゴンミラー122は、回転しながら反射した各光源の光を走査することで所望の配光パターンを形成するように反射面122aが設けられている。つまり、ポリゴンミラー122は、その回転動作により、発光部からの可視光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって所望の配光パターンを形成する。
【0073】
ポリゴンミラー122の回転軸Rは、光軸Axに対してほぼ垂直になっており、光軸Axと光源220とを含む平面と交差するように設けられている。換言すると、回転軸Rは、回転によって左右方向に走査する光源の光(照射ビーム)の走査平面と略直交するように設けられている。このようなポリゴンミラー122を用いた車両用前照灯110においても、前述の各種配光パターンの形成が可能である。
【0074】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0075】
10 車両用前照灯、 18 光学ユニット、 20 第1の光源、 22 回転リフレクタ、 22a ブレード、 22b 回転部、 24 投影レンズ、 29 制御部、 34 モータ、 100 制御装置、 120 第1の光源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12