特許第6985830号(P6985830)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985830
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】グリス供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/08 20060101AFI20211213BHJP
   H02K 11/25 20160101ALI20211213BHJP
   F16N 11/00 20060101ALI20211213BHJP
   F16N 29/02 20060101ALI20211213BHJP
   F16N 13/02 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   H02K7/08 Z
   H02K11/25
   F16N11/00
   F16N29/02
   F16N13/02
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-136285(P2017-136285)
(22)【出願日】2017年7月12日
(65)【公開番号】特開2019-22261(P2019-22261A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198352
【氏名又は名称】株式会社IHI回転機械エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】脇阪 裕寿
(72)【発明者】
【氏名】町田 晃一
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−066936(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/029553(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/00− 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと前記ケーシングに設けられたシャフトと前記シャフトを支持する軸受とを含む発電機の前記軸受にグリスを供給するためのグリス供給システムであって、
前記軸受へ前記グリスを供給するように構成されたグリス供給装置と、
前記グリス供給装置と前記軸受とを接続するグリスラインと、
前記グリス供給装置を制御し、前記グリスラインを通じて前記グリスを前記軸受へ供給させるコントローラと、
前記ケーシング内の前記軸受の近傍の温度計測部位に設けられて、前記温度計測部位における温度を計測する温度センサと、を備え、
前記コントローラは、前記温度センサによって計測された前記温度計測部位の前記温度を取得し、取得した前記温度と予め定められた設定温度とに基づいて、前記軸受へ前記グリスを供給する第1グリス供給制御を実施し、
前記コントローラは、前記温度計測部位の前記温度に関わらず所定時間ごとに前記軸受へ前記グリスを供給する第2グリス供給制御を実施すると共に、前記第2グリス供給制御を実施している前記所定時間の間に前記第1グリス供給制御を実施する、グリス供給システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記温度計測部位の前記温度と前記設定温度とに基づいて前記第1グリス供給制御を実施する場合には、前記第2グリス供給制御をキャンセルする、請求項に記載のグリス供給システム。
【請求項3】
ケーシングと前記ケーシングに設けられたシャフトと前記シャフトを支持する軸受とを含む発電機の前記軸受にグリスを供給するためのグリス供給システムであって、
前記軸受へ前記グリスを供給するように構成され、1回の前記グリスの供給で所定量の前記グリスを供給するグリス供給装置と、
前記グリス供給装置と前記軸受とを接続するグリスラインと、
前記グリス供給装置を制御し、前記グリスラインを通じて前記グリスを前記軸受へ供給させるコントローラと、
前記ケーシング内の前記軸受の近傍の温度計測部位に設けられて、前記温度計測部位における温度を計測する温度センサと、を備え、
前記コントローラは、前記温度センサによって計測された前記温度計測部位の前記温度を取得し、取得した前記温度と予め定められた設定温度とに基づいて、前記軸受へ前記グリスを供給する第1グリス供給制御を実施し、
前記コントローラは、前記第1グリス供給制御において、前記グリス供給装置に対して少なくとも1回の前記グリスの供給を行わせ、当該少なくとも1回の前記グリスの供給が行われてからなじみ時間が経過した後に、前記温度計測部位の前記温度を取得し、取得した前記温度と予め定められた設定温度とに基づいて、前記第1グリス供給制御を再び実施するか否かの判断を行う、グリス供給システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1グリス供給制御において、前記グリス供給装置に対して複数回の前記グリスの供給を行わせ、当該複数回の前記グリスの供給が行われてから前記なじみ時間が経過した後に、前記温度計測部位の前記温度を取得し、取得した前記温度と予め定められた設定温度とに基づいて、前記第1グリス供給制御を再び実施するか否かの判断を行う、請求項に記載のグリス供給システム。
【請求項5】
前記なじみ時間は、前記第1グリス供給制御における前記グリスの供給に要する時間よりも長く設定されている、請求項またはに記載のグリス供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に記載されるように、低温廃熱から電力としてエネルギー回収するため、低沸点の作動媒体を用いたランキンサイクル発電装置が知られている。これらの装置において使用される発電機では、シャフトを支持する軸受の潤滑用にグリスが使用されている。グリスは、外部に設けられたグリス供給装置から一定の間隔で供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−61237号公報
【特許文献2】特開2016−61300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発電機において、シャフトの回転の加速および減速が頻繁に繰り返された場合等、何らかの理由によって、軸受の内部のグリスが不足する可能性がある。軸受のグリスが不足すると、潤滑不良により軸受が発熱し得る。この軸受の発熱は、軸受の焼付きを招き、最終的には、発電機の損傷を引き起こし得る。
【0005】
本発明は、軸受にグリスが不足した場合でも、軸受を正常な状態に維持することができるグリス供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ケーシングとケーシングに設けられたシャフトとシャフトを支持する軸受とを含む発電機の軸受にグリスを供給するためのグリス供給システムであって、軸受へグリスを供給するように構成されたグリス供給装置と、グリス供給装置と軸受とを接続するグリスラインと、グリス供給装置を制御し、グリスラインを通じてグリスを軸受へ供給させるコントローラと、ケーシング内の軸受の近傍の温度計測部位に設けられて、温度計測部位における温度を計測する温度センサと、を備え、コントローラは、温度センサによって計測された温度計測部位の温度を取得し、取得した温度と予め定められた設定温度とに基づいて、軸受へグリスを供給する第1グリス供給制御を実施する。
【0007】
このグリス供給システムによれば、発電機の軸受の近傍の温度計測部位に温度センサが設けられ、その温度センサによる計測温度と設定温度とに基づいて、コントローラによって、第1グリス供給制御が実施される。これにより、何らかの理由により軸受にグリスが不足した場合でも、軸受の近傍の温度計測部位における温度上昇が検知されて、グリスが軸受に供給される。したがって、軸受の焼付き等が生じることを防止し、軸受を正常な状態に維持することができる。
【0008】
いくつかの態様において、コントローラは、温度計測部位の温度に関わらず所定時間ごとに軸受へグリスを供給する第2グリス供給制御を実施すると共に、第2グリス供給制御を実施しているその所定時間の間に第1グリス供給制御を実施する。この場合、コントローラによって、温度計測部位の温度に関わらず、第2グリス供給制御が実施される。所定時間ごとにグリスが軸受に供給されることで、グリスの不足を未然に防ぐことができる。さらに、その所定時間の間に、計測温度と設定温度とに基づく第1グリス供給制御が実施される。よって、第2グリス供給制御において供給されるグリスでは十分でない状況が生じても、計測温度が上がった場合には、グリスが追加で供給され得る。これにより、軸受を正常な状態に維持することができる。
【0009】
いくつかの態様において、コントローラは、温度計測部位の温度と設定温度とに基づいて第1グリス供給制御を実施する場合には、第2グリス供給制御をキャンセルする。この場合、第1グリス供給制御が実施された後、第2グリス供給制御が最初から開始される。よって、第2グリス供給制御と第1グリス供給制御とが併せて実施される態様においても、グリスの過剰な供給が防止される。
【0010】
いくつかの態様において、グリス供給装置は、1回のグリスの供給で所定量のグリスを供給し、コントローラは、第1グリス供給制御において、グリス供給装置に対して少なくとも1回のグリスの供給を行わせ、当該少なくとも1回のグリスの供給が行われてからなじみ時間が経過した後に、温度計測部位の温度を取得し、取得した温度と予め定められた設定温度とに基づいて、第1グリス供給制御を再び実施するか否かの判断を行う。グリスの供給が行われてすぐに、そのグリスが軸受に行き渡らない場合がある。なじみ時間が経過した後に、第1グリス供給制御を再び実施するか否かの判断が行われるので、第1グリス供給制御によるグリス供給の効果(又は更なるグリス供給の必要性)を確実に判定することができる。
【0011】
いくつかの態様において、コントローラは、第1グリス供給制御において、グリス供給装置に対して複数回のグリスの供給を行わせ、当該複数回のグリスの供給が行われてからなじみ時間が経過した後に、温度計測部位の温度を取得し、取得した温度と予め定められた設定温度とに基づいて、第1グリス供給制御を再び実施するか否かの判断を行う。この場合、第1グリス供給制御では、複数回のグリス供給が行われる。所定量のグリスが複数回にわたって供給されるので、第1グリス供給制御による軸受の保護効果が高められる。
【0012】
なじみ時間は、第1グリス供給制御におけるグリスの供給に要する時間よりも長く設定されている。この場合、なじみ時間の間にグリスが十分に行き渡る。よって、第1グリス供給制御によるグリス供給の効果(又は更なるグリス供給の必要性)をより確実に判定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のいくつかの態様によれば、何らかの理由により軸受にグリスが不足した場合でも、軸受の焼付き等が生じることを防止し、軸受を正常な状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るグリス供給装置の概略構成を示す図である。
図2図1のグリス供給装置によって実施されるグリス供給制御の処理フローを示す図である。
図3】温度計測部位の温度変化およびグリス供給制御の一例を示す図である。
図4】温度計測部位の温度変化およびグリス供給制御の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
まず、図1を参照して、一実施形態に係るグリス供給システム1が適用される発電機2と、その発電機2が用いられる発電装置について説明する。グリス供給システム1は、たとえば、バイナリー発電装置の発電機2に適用される。グリス供給システム1は、発電機2の軸受6にグリスを供給するためのシステムである。
【0017】
バイナリー発電装置は、たとえば工場や源泉井戸等といった比較的低温の廃熱(熱源)が得られる場所に設置されて、廃熱を利用した発電(エネルギー回収)を行う。バイナリー発電装置は、たとえば5〜20kW程度の出力で発電可能な小型の発電装置であり、たとえばオーガニックランキンサイクル(Organic Rankine Cycle;ORC)が採用された装置である。バイナリー発電装置では、温水とバイナリー発電装置内の作動媒体との間で、熱交換が行われ、作動媒体が蒸発させられる。発電機2では、蒸発した作動媒体を用いてタービンを回転させて発電を行う。バイナリー発電装置に用いられる作動媒体は、水よりも沸点の低い冷媒であり、たとえば代替フロン等である。
【0018】
バイナリー発電装置は、作動媒体を蒸発させるための蒸発器(図示せず)と、発電機2と、作動媒体を凝縮させるための凝縮器(図示せず)とを備える。バイナリー発電装置は、これらの蒸発器、発電機2および凝縮器に接続された作動媒体の循環ラインと、循環ラインに設けられた作動媒体循環ポンプ(いずれも図示せず)とを備える。なお、本明細書において、「ライン」は、内部を流体が流れる配管もしくは管路、または、空間を意味する。
【0019】
発電機2は、たとえばタービン型の膨張機(図示せず)と、この膨張機に連結されたシャフト4と、シャフト4を支持する軸受6とを備える。シャフト4および軸受6は、ケーシング3内に設けられている。たとえばシャフト4の第1端がケーシング3から突出しており、タービンに連結されてもよい。タービンは作動媒体によって回転させられ、シャフト4は、タービンと一緒に回転する。シャフト4には、たとえば永久磁石等を含むロータ部7が固定されている。ケーシング3の内部には、たとえばコアおよびコイルを含むステータ部8が固定されている。ステータ部8は、シャフト4の径方向において、ロータ部7に対面する。
【0020】
発電機2には、2個の軸受6が、シャフト4の軸方向に離間した位置に設けられている。たとえば、1個の軸受6がシャフト4の第1端に設けられ、1個の軸受6がシャフト4の第2端に設けられる。各軸受6は、ケーシング3に対して、シャフト4を支持する。軸受6は、たとえば玉軸受(転がり軸受)であってもよいが、これに限られない。軸受6は、その間隙にグリスを含んでおり、このグリスによって潤滑される。なお、発電機2に設けられる軸受6の個数は2個に限られない。1個のみの軸受6が設けられてもよいし、3個以上の軸受6が設けられてもよい。
【0021】
グリス供給システム1は、軸受6の近傍の部位である温度計測部位に設けられた温度センサ21を備える。温度センサ21は、ケーシング3の内部において、軸受6に対して例えば非接触の状態で設置されている。温度センサ21は、軸受6にできるだけ近づけられた位置に設けられてもよい。温度センサ21は、軸受6からの熱が伝達され得る部材上に設けられている。温度センサ21は、温度計測部位における温度を計測することにより、軸受6の温度変化を検知することができるように構成されている。
【0022】
温度センサ21としては、公知の温度センサが採用され得る。温度センサ21は、たとえば、白金測温抵抗体式のセンサである。温度センサ21は、ケーシング3内の温度計測部位における温度を計測し、計測した温度を後述のコントローラ20に出力する。
【0023】
グリス供給システム1は、軸受6にグリスを供給するように構成されたグリス供給装置10と、グリス供給装置10と軸受6とを接続するグリスライン11とを備える。
【0024】
グリス供給装置10は、シリンダと、シリンダ内に設けられたピストンと、駆動装置であるモータと、ピストンに接続され、モータの回転駆動力を用いてギアを介してピストンを進行させるロッドと(いずれも図示せず)を含んでもよい。グリス供給装置10は、ピストンを進行方向に進行させることで、シリンダ内のグリスを吐出する。グリス供給装置10としては、公知のポンプが用いられ得る。グリス供給装置10は、ピストンを往復させる型式の装置であってもよい。このグリス供給装置10は、1回のグリスの供給で(1回のピストンの往復で)所定量のグリスを供給するように構成されている。
【0025】
グリスライン11の基端部は、グリス供給装置10のシリンジの吐出口に接続される。グリスライン11の先端部は、ケーシング3に形成されて軸受6に繋がるグリス流路(図示せず)を含む。グリス供給装置10から供給されたグリスは、グリスライン11を通じて軸受6へ供給される。
【0026】
グリス供給システム1は、グリス供給装置10を制御するコントローラ20を備える。コントローラ20は、グリス供給装置10を制御して、グリスライン11を通じてグリスを軸受6へ供給させる。コントローラ20は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアと、から構成されたコンピュータである。コントローラ20は、グリス供給装置10とは別に設けられた制御装置に設置されてもよいし、グリス供給装置10と一体に設置されてもよい。
【0027】
コントローラ20は、温度センサ21によって計測された温度計測部位の温度を取得する。コントローラ20は、温度計測部位に関する温度閾値である「設定温度」を記憶している。この設定温度は、予め定められた温度であり、発電機2の通常の運転時における軸受6の近傍の温度よりも高い温度である。本実施形態において、コントローラ20は、2種類のグリス供給制御を実施するように構成されている。すなわち、コントローラ20は、所定時間ごとに軸受6へグリスを供給する基本グリス供給制御(第2グリス供給制御)と、温度計測部位の温度と上記の設定温度とに基づいて軸受6へグリスを供給する特別グリス供給制御(第1グリス供給制御)とを実施するように構成されている。
【0028】
コントローラ20は、基本グリス供給制御におけるグリス供給の間隔である「所定時間」を記憶している。コントローラ20は、基本グリス供給制御において、最新のグリス供給時刻(たとえばグリス供給の終了時刻)を記憶しており、その時刻からの経過時間を計測している。その経過時間が所定時間になったときに、コントローラ20は、グリス供給装置10を制御して軸受6へグリスを供給させる。この所定時間は、任意に設定可能であるが、たとえば24時間以上の値であってもよい。このように、基本グリス供給制御は、温度計測部位の計測温度に関わらず、所定時間ごとに軸受6にグリスを供給する制御である。なお、本実施形態のグリス供給システム1における基本グリス供給制御は、上記した特許文献1または2に記載のグリス供給方法と同様であってもよい。
【0029】
コントローラ20は、特別グリス供給制御に係るグリスの「供給回数(設定回数)」と、グリスを供給した後、再び特別グリス供給制御を実施するか否かの判断を行うまでの間隔である「なじみ時間」とを記憶している。
【0030】
図3に示されるように、1回の特別グリス供給制御におけるグリスの供給回数は、たとえば4回である。複数回に分けてグリスを供給することにより、軸受6の内部または周辺における抵抗を低減することができる。1回の特別グリス供給制御において供給される総グリス量は、1回の基本グリス供給制御において供給される総グリス量と同程度であってもよいし、それより少なくてもよい。なじみ時間t2は、特別グリス供給制御におけるグリスの供給に要する時間であるグリス供給時間t1よりも長く設定されてもよい。すなわち、「なじみ時間t2>グリス供給時間t1」の関係が成立してもよい。
【0031】
なお、図3に示されるように、グリス供給装置10によるグリスの供給は、ON−OFFが繰り返されることによって行われる。1回のグリスの供給の開始点は、ONの立ち上がり時刻であり、1回のグリスの供給の終了点は、ONが立ち下がってOFFとなってから一定時間が経過した時刻である。特別グリス供給制御におけるグリスの供給回数が4回である場合、グリス供給時間t1は、上記した1回のグリスの供給(ON−OFF)に要する時間の4倍である。
【0032】
たとえば、これらのグリス供給時間t1やなじみ時間t2は、基本グリス供給制御におけるグリス供給の間隔である上記「所定時間」より格段に短くなっていてもよい。
【0033】
コントローラ20は、基本グリス供給制御を実施すると共に、基本グリス供給制御を実施しているその所定時間の間に、特別グリス供給制御を実施する。より詳細には、コントローラ20は、温度センサ21から取得した温度計測部位の計測温度Tが設定温度Tthよりも高いと判断した場合に、特別グリス供給制御を実施する。コントローラ20は、特別グリス供給制御を実施する場合には、基本グリス供給制御をキャンセルする。この場合、コントローラ20は、基本グリス供給制御における最新のグリス供給時刻からの経過時間をキャンセル(リセット)し、特別グリス供給制御に続くなじみ時間の終了時刻からの経過時間を新たに計測する。
【0034】
このように、コントローラ20によるグリス供給制御では、基本グリス供給制御の途中に、特別グリス供給制御が割り込むことができるようになっている。その場合、基本グリス供給制御は中断される。言い換えれば、温度計測部位の温度に基づいて特別グリス供給制御を実施するとの判断がなされた場合には、基本グリス供給制御よりも、特別グリス供給制御が優先される。
【0035】
続いて、図2を参照して、グリス供給システム1のコントローラ20によって実施されるグリス供給制御の処理フロー(グリス供給方法)について説明する。コントローラ20は、基本グリス供給制御を実施している状態、すなわち、最新のグリス供給時刻からの経過時間を計測している状態である。ここでまず、コントローラ20は、温度センサ21から出力された計測温度を取得する(ステップS1)。次に、コントローラ20は、取得した計測温度Tが設定温度Tthより高いか否かを判断する(ステップS2)。計測温度Tが設定温度Tthと同じかそれより低いと判断すると(ステップS2:NO)、コントローラ20は、処理を終了し、基本グリス供給制御を実施している状態を継続する。
【0036】
一方、ステップS2において、計測温度Tが設定温度Tthより高いと判断すると(ステップS2:YES)、コントローラ20は、基本グリス供給制御をキャンセルする(ステップS3)。コントローラ20は、基本グリス供給制御における最新のグリス供給時刻からの経過時間をキャンセル(リセット)する。
【0037】
続いて、コントローラ20は、特別グリス供給制御を実施する(ステップS4)。図3は、温度計測部位の温度変化およびグリス供給制御の一例を示す図である。図3に示されるように、コントローラ20は、計測温度Tが設定温度Tthを超えた場合に、グリス供給装置10を制御してON−OFFを4回繰り返す。これにより、コントローラ20は、軸受6へのグリスの供給を4回行わせる。その後、なじみ時間t2が経過した後に、温度センサ21から出力された温度計測部位の計測温度を取得する(ステップS5)。
【0038】
コントローラ20は、取得した計測温度Tが設定温度Tthより高いか否かを判断する(ステップS6)。計測温度Tが設定温度Tthと同じかそれより低いと判断すると(ステップS6:NO)、コントローラ20は、基本グリス供給制御を再開する(ステップS7、図3参照)。この場合、コントローラ20は、特別グリス供給制御に続くなじみ時間t2の終了時刻からの経過時間を新たに計測する。すなわち、コントローラ20は、基本グリス供給制御を再び最初から開始する。図3に示されるように、コントローラ20は、基本グリス供給制御の最初に、グリス供給装置10を制御して1回のグリス供給を行ってもよい。
【0039】
一方、ステップS6において、計測温度Tが設定温度Tthより高いと判断すると(ステップS6:YES)、コントローラ20は、ステップS4の特別グリス供給制御を再び実施する。図4は、温度計測部位の温度変化およびグリス供給制御の他の例を示す図である。図4に示されるように、コントローラ20は、1回の特別グリス供給制御および1回のなじみ時間t2を経た後においても計測温度Tが設定温度Tthを超えている場合に、グリス供給装置10を制御して、特別グリス供給制御を再度実施する。
【0040】
その後、ステップS4〜ステップS6を経て、計測温度Tが設定温度Tthと同じかそれより低いと判断すると(ステップS6:NO)、コントローラ20は、基本グリス供給制御を再開する(ステップS7、図4参照)。すなわち、コントローラ20は、基本グリス供給制御を再び最初から開始する。図4に示されるように、コントローラ20は、基本グリス供給制御の最初に、グリス供給装置10を制御して1回のグリス供給を行ってもよい。
【0041】
本実施形態のグリス供給システム1によれば、発電機2の軸受6の近傍の温度計測部位に温度センサ21が設けられ、その温度センサ21による計測温度Tと設定温度Tthとに基づいて、コントローラ20によって、特別グリス供給制御が実施される。これにより、何らかの理由により軸受6にグリスが不足した場合でも、軸受6の近傍の温度計測部位における温度上昇が検知されて、グリスが軸受6に供給される。したがって、軸受6の温度上昇を検知したタイミングでグリスが供給されて軸受6が潤滑され、軸受6の焼付き等が生じることが防止される。その結果として、軸受6が正常な状態に維持される。発電機2において、シャフト4の回転の加速および減速(たとえば起動・発停等)が頻繁に繰り返された場合には、何らかの理由によって、軸受6の内部のグリスが不足する可能性がある。そのような非常時にも、温度センサ21とコントローラ20とグリス供給装置10とによって、軸受6にグリスが供給・追加される。
【0042】
また、コントローラ20によって、温度計測部位の温度に関わらず、基本グリス供給制御が実施される。所定時間ごとにグリスが軸受6に供給されることで、グリスの不足が未然に防がれ得る。さらに、その所定時間の間に、計測温度Tと設定温度Tthとに基づく特別グリス供給制御が実施される。よって、基本グリス供給制御において供給されるグリスでは十分でない状況が生じても、計測温度Tが上がった場合には、グリスが追加で供給され得る。これにより、軸受6が正常な状態に維持される。
【0043】
コントローラ20は、特別グリス供給制御を実施する場合には、基本グリス供給制御をキャンセルする。よって、特別グリス供給制御が実施された後、基本グリス供給制御が最初から開始される。すなわち、特別グリス供給制御が実施されてから所定時間が経過するまでの間に、基本グリス供給制御が実施されることはない。よって、基本グリス供給制御と特別グリス供給制御とが併せて実施される態様においても、グリスの過剰な供給が防止される。
【0044】
グリスの供給が行われてすぐに、そのグリスが軸受6に行き渡らない場合がある。なじみ時間t2が経過した後に、特別グリス供給制御を再び実施するか否かの判断が行われるので、特別グリス供給制御によるグリス供給の効果(又は更なるグリス供給の必要性)を確実に判定することができる。
【0045】
コントローラ20は、特別グリス供給制御において、グリス供給装置10に対して複数回のグリスの供給を行わせる。よって、所定量のグリスが複数回にわたって供給されるので、特別グリス供給制御による軸受6の保護効果(潤滑効果)が高められる。
【0046】
なじみ時間t2がグリス供給時間t1よりも長く設定されているので、なじみ時間t2の間にグリスが十分に行き渡る。よって、特別グリス供給制御によるグリス供給の効果(又は更なるグリス供給の必要性)をより確実に判定することができる。なじみ時間t2が短すぎる場合には、グリスが軸受6に十部に行き渡っていないにも関わらず、計測温度Tを基にグリス供給の必要性を判断してしまう場合がある。その結果、グリス量は実施には十分であるのに、まだグリスが必要であるとの誤判定が生じ得る。十分に長いなじみ時間t2により、そのような誤判定を防止できる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。
【0048】
たとえば、1回の特別グリス供給制御において、グリスの供給回数は1回のみであってもよい。1回の特別グリス供給制御において、グリスの供給回数が2回、3回、または5回以上であってもよい。グリス供給装置10が1回のグリス供給で供給するグリスの量は、適宜、(たとえばシリンジの大きさやピストンのストローク等により)設定または変更され得る。
【0049】
特別グリス供給制御において、なじみ時間が省略されてもよい。すなわち、グリス供給が終了した後、特に時間をおかずに計測温度Tが取得されて、当該計測温度Tと設定温度Tthとの比較が行われてもよい。なじみ時間t2は、グリス供給時間t1と等しいか、グリス供給時間t1より短くてもよい。
【0050】
特別グリス供給制御が実施された場合に、基本グリス供給制御がキャンセルされなくてもよい。すなわち、前回の基本グリス供給制御から所定時間が経過した後に、(その間に特別グリス供給制御が実施されたとしても)次の基本グリス供給制御が実施されてもよい。また、基本グリス供給制御が省略されてもよい。すなわち、計測された軸受6の近傍の温度に基づく特別グリス供給制御(第1グリス供給制御)のみが実施されてもよい。その場合、予め定められた所定時間ごとのグリス供給は行われない。
【0051】
本発明は、バイナリー発電装置の発電機に適用される場合に限られず、他の発電装置の発電機に適用されてもよい。シャフト4とそれを支持する軸受6とを有し、その軸受6にグリスが供給(注入)される発電機に対して、本発明は適用され得る。
【符号の説明】
【0052】
1 グリス供給システム
2 発電機
3 ケーシング
4 シャフト
6 軸受
7 ロータ部
8 ステータ部
10 グリス供給装置
11 グリスライン
20 コントローラ
21 温度センサ
t1 グリス供給時間
t2 なじみ時間
T 計測温度
Tth 設定温度
図1
図2
図3
図4