(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリマー粒子中の構成単位(C)の含有量は、構成単位(A)及び(B)の合計モル数に対して、0.001モル%以上1モル%以下である、請求項2又は3に記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、蓄電デバイス電極用樹脂組成物に所定のポリマー粒子を含有させ、該樹脂組成物の表面張力を所定の大きさに規定することで、電極の結着性を確保しつつ、電池特性を向上できるという知見に基づく。
【0016】
すなわち、本開示は、前記式(I)で表される化合物由来の構成単位(A)、並びに、前記式(II)で表される化合物、前記式(III)で表される化合物、及び不飽和二塩基酸から選ばれる少なくとも1種の化合物由来の構成単位(B)を含有するポリマー粒子を含む、蓄電デバイス電極用樹脂組成物であって、
前記ポリマー粒子の全構成単位中の構成単位(A)の含有量が、50質量%以上99.9質量%以下であり、
前記ポリマー粒子の全構成単位中の構成単位(B)の含有量が、0.1質量%以上20質量%以下であり、
前記樹脂組成物の表面張力が、55mN/m以上である、蓄電デバイス電極用樹脂組成物(以下、「本開示に係る樹脂組成物」ともいう)に関する。本開示に係る樹脂組成物によれば、電極への良好な結着性を確保しつつ、電池特性を向上できる。そして、本開示に係る樹脂組成物を蓄電デバイス用電極に用いることで、電池特性を向上できる。
【0017】
本開示の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のことが推定される。
本開示の蓄電デバイス電極用樹脂組成物は、所定のポリマー粒子を含有し、かつ、表面張力が所定の値以上であることで、バインダーとして良好な結着性を有しつつ、蓄電デバイスに用いる電解液への親和性を優れたものとすることができる。そのため、電解液に含まれるリチウムイオン等のアルカリイオンの移動も阻害しないようにすることができる。これにより、本開示に係る樹脂組成物を用いて作製した電池は、電池の内部抵抗が抑制され、電池特性を向上できると考えられる。
但し、これらは推定であって、本開示はこれらメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0018】
以下、本開示に係る樹脂組成物について具体的に説明する。
【0019】
[ポリマー粒子]
本開示に係る樹脂組成物に含まれるポリマー粒子は、構成単位(A)及び構成単位(B)を含むものである。構成単位(A)及び(B)はそれぞれ、後述する化合物の単官能モノマー由来の構成単位である。単官能モノマーとは、不飽和結合を1個有するモノマーをいう。
【0020】
<構成単位(A)>
構成単位(A)は、下記式(I)で表される化合物(以下、「モノマー(A)」ともいう)由来の構成単位である。モノマー(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0022】
式(I)中、R
1は、合成の容易性の観点から、水素原子又はメチル基を示す。R
2は、電解液への親和性及びバインダー物性の観点から、炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、及び、−CH
2OR
3から選ばれる少なくとも1種を示し、炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好ましく、炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が更に好ましい。R
3は、炭素数4以上6以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。Xは、−O−又は−NH−を示す。本開示において、上記式(I)、後述する式(II)、及び式(III)におけるR
1は、それぞれ独立している。
【0023】
モノマー(A)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、ノルマルプロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、セカンダリーブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ノルマルペンチル(メタ)アクリレート、ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキルエステル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基含有エステル(メタ)アクリレート;メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、ノルマルプロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ノルマルブチル(メタ)アクリルアミド、イソブチル(メタ)アクリルアミド、セカンダリーブチル(メタ)アクリルアミド、ターシャリーブチル(メタ)アクリルアミド、ノルマルペンチル(メタ)アクリルアミド、ノルマルヘキシル(メタ)アクリルアミド、及びシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリルアミド;から選ばれる1種又は2種以上の組合せが挙げられる。これらの中でも、電解液への親和性及びバインダー物性の観点から、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、ノルマルブチルメタクリレート(BMA)、エチルアクリレート(EA)及びノルマルブチルアクリレート(BA)から選ばれる1種又は2種以上の組合せが好ましい。本開示において、(メタ)アクリレートとは、メタクリレート又はアクリレートを意味し、(メタ)アクリルアミドとは、メタクリルアミド又はアクリルアミドを意味する。
【0024】
本開示におけるポリマー粒子の全構成単位中の構成単位(A)の含有量は、合成の容易性の観点から、50質量%以上であって、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上がより更に好ましく、そして、同様の観点から、99.9質量%以下であって、99.5質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、98質量%以下が更に好ましく、97質量%以下がより更に好ましい。構成単位(A)の含有量は、公知の分析方法又は分析装置によって求めることができる。構成単位(A)が2種以上のモノマー(A)由来の構成単位からなる場合、構成単位(A)の含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0025】
<構成単位(B)>
構成単位(B)は、下記式(II)で表される化合物(以下、「モノマー(B1)」ともいう)、下記(III)で表される化合物(以下、「モノマー(B2)」ともいう)及び不飽和二塩基酸(以下、「モノマー(B3)」ともいう)から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、モノマー(B)ともいう)由来の構成単位であり、電解液への親和性及びバインダー物性の観点から、構成単位(B)は、モノマー(B1)由来の構成単位が好ましい。モノマー(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0027】
前記式(II)中、R
1は、合成の容易性の観点から、水素原子又はメチル基である。Mは、分散安定性及びバインダー物性の観点から、水素原子又はカチオンであって、カチオンが好ましい。カチオンとしては、分散安定性及びバインダー物性の観点から、アルカリ金属イオン及びアンモニウムイオンの少なくとも一方が好ましく、アンモニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、リチウムイオン及びナトリウムイオンの少なくとも一方が更に好ましい。
【0028】
前記式(II)中のMがカチオンである場合、モノマー(B1)は、例えば、Mが水素原子であるモノマーを、アルカリ(アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等)で中和したものであってもよいし、あるいは、Mが水素原子であるモノマーを重合したポリマーの構成単位となってから中和されたものでもあってもよい。重合反応制御の観点から重合後にポリマーの構成単位となってから中和されたものであることが好ましい。
【0029】
モノマー(B1)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の組合せが挙げられる。塩としては、例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0031】
前記式(III)中、R
1は、水素原子又はメチル基を示し、Xは、−O−又は−NH−を示す。R
4は、−(CH
2)
nOH、−R
5SO
3M、−R
6N(R
7)(R
8)及び−R
6N
+(R
7)(R
8)(R
9)・Y
-から選ばれる少なくとも1種を示す。nは、平均付加モル数を示し、1以上4以下である。R
5は、炭素数1以上5以下の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。Mは、水素原子又はカチオンを示す。カチオンとしては、上述した式(II)中のMのカチオンと同じものが挙げられる。本開示において、式(II)及び式(III)におけるMは、それぞれ独立している。R
6は、炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。R
7及びR
8は同一又は異なり、炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。R
9は、炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。Y
-は、アニオンを示す。アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン等のハロゲン化物イオン;硫酸イオン;リン酸イオン;等が挙げられる。
【0032】
前記式(III)中のMがカチオンである場合、モノマー(B2)は、例えば、Mが水素原子であるモノマーをアルカリで中和したものであってもよいし、あるいは、Mが水素原子であるモノマーを重合したポリマーの構成単位となってから中和されたものでもあってもよい。重合反応制御の観点から重合後にポリマーの構成単位となってから中和されたものであることが好ましい。
【0033】
モノマー(B2)としては、合成の容易性の観点から、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有エステル(メタ)アクリレート;及びジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルアンモニオエチル(メタ)アクリレート等の窒素原子含有エステル(メタ)アクリレート;から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ヒドロキシエチルメタクリレート及びヒドロキシエチルアクリレートの少なくとも一方がより好ましい。
【0034】
モノマー(B3)は、不飽和二塩基酸であって、合成の容易性の観点から、例えば、炭素数4以上12以下の不飽和二塩基酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、炭素数は4以上8以下が好ましく、炭素数4以上6以下がより好ましい。
【0035】
モノマー(B3)としては、合成の容易性の観点から、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、2−ペンテン二酸、3−ヘキセン二酸、及びそれらの塩が挙げられ、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、マレイン酸及びその塩の少なくとも一方がより好ましい。
【0036】
モノマー(B3)が不飽和二塩基酸の塩である場合、塩としては、分散安定性及びバインダー物性の観点から、アンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、リチウム塩及びナトリウム塩の少なくとも一方がより好ましい。
【0037】
モノマー(B3)の不飽和二塩基酸の塩としては、不飽和二塩基酸がアルカリで中和されたものであってもよいし、前記不飽和二塩基酸を用いて重合した後に中和されたものを用いていてもよい。重合反応制御の観点から重合後にポリマーの構成単位となってから中和されたものであることが好ましい。
【0038】
本開示におけるポリマー粒子の全構成単位中の構成単位(B)の含有量は、分散安定性及びバインダー物性の観点から、0.1質量%以上であって、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましく、3質量%以上がより更に好ましく、そして、同様の観点から、20質量%以下であって、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下が更に好ましく、6質量%以下がより更に好ましい。構成単位(B)の含有量は、公知の分析方法又は分析装置によって求めることができる。構成単位(B)が2種以上のモノマー(B)由来の構成単位からなる場合、構成単位(B)の含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0039】
本開示におけるポリマー粒子中の構成単位(B)の含有量に対する構成単位(A)の含有量の比(A/B)は、分散安定性及びバインダー物性の観点から、500以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下が更に好ましく、そして、分散安定性及びバインダー物性の観点から、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。
【0040】
本開示におけるポリマー粒子は、本開示の効果を損なわない範囲で、前記構成単位(A)及び構成単位(B)以外のその他の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成単位としては、モノマー(A)及び(B)と共重合可能なモノマー(以下、「モノマー(C)」ともいう)の構成単位(以下、「構成単位(C)」ともいう)であればよい。モノマー(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0041】
モノマー(C)としては、例えば、多官能モノマーが挙げられ、具体的には、ビニル基を2個以上有する架橋性モノマーが挙げられる。ビニル基を2個以上有する架橋性モノマーとしては、例えば、多官能(メタ)アクリレート、芳香族ジビニル系化合物等が挙げられる。本開示において、多官能モノマーとは、不飽和結合を2個以上有するモノマーをいう。本開示におけるポリマー粒子が多官能モノマー(C)由来の構成単位(C)をさらに含む場合、吸液による膨張を抑制できる。また、多官能モノマー(C)由来の構成単位(C)を含むポリマー粒子を用いて作製した電池は、電池の内部抵抗をより抑制でき、とりわけ高容量の電池に好適である。
【0042】
多官能(メタ)アクリレートのモノマー(C)としては、例えば、下記式(IV)で表される化合物が挙げられる。
【化10】
【0043】
前記式(IV)中、R
10は、合成の容易性及び吸液膨張抑制の観点から、水素原子又はメチル基が好ましい。Xは、吸液膨張抑制の観点から、−O−又は−NH−が好ましい。nは、吸液膨張抑制の観点から、1以上20以下の整数が好ましい。本開示において、前記式(III)及び式(IV)におけるXは、それぞれ独立している。
【0044】
上記式(IV)で表される化合物の具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0045】
その他の多官能(メタ)アクリレートのモノマー(C)としては、例えば、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0046】
芳香族ジビニル系化合物のモノマー(C)としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0047】
本開示のポリマー粒子が多官能モノマー(C)由来の構成単位(C)を含む場合、本開示におけるポリマー粒子中の構成単位(C)の含有量は、吸液膨張抑制の観点から、構成単位(A)及び(B)の合計モル数に対して、0.001モル%以上が好ましく、0.01モル%以上がより好ましく、0.05モル%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、1モル%以下が好ましく、0.9モル%以下がより好ましく、0.8モル%以下が更に好ましい。構成単位(C)が2種以上のモノマー(C)由来の構成単位からなる場合、構成単位(C)の含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0048】
本開示におけるポリマー粒子の全構成単位中の構成単位(A)及び(B)の合計含有量は、電解液への親和性及びバインダー物性の観点から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0049】
[ポリマー粒子の製造方法]
本開示におけるポリマー粒子は、例えば、モノマー(A)及びモノマー(B)、並びに必要に応じて他のモノマー(C)を共重合させることによって製造できる。すなわち、本開示は、一態様において、モノマー(A)及びモノマー(B)、並びに必要に応じてモノマー(C)を含むモノマー混合物を重合させる重合工程を含む、ポリマー粒子の製造方法に関する。重合法としては、例えば、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法等の公知の重合法が挙げられ、ポリマーの製造容易性の観点から、乳化重合法が好ましい。
【0050】
本開示において、ポリマー粒子の全構成単位中の構成単位(A)の含有量は、重合に用いるモノマー全量に対する、モノマー(A)の使用量の比と見なすことができる。ポリマー粒子の全構成単位中の構成単位(B)の含有量は、重合に用いるモノマー全量に対する、モノマー(B)の使用量の比と見なすことができる。構成単位(B)に対する構成単位(A)の含有量の比(A/B)は、重合に用いるモノマー全量における、モノマー(B)の使用量に対するモノマー(A)の使用量の比と見なすことができる。ポリマー粒子の全構成単位中の構成単位(A)及び構成単位(B)の合計含有量は、重合に用いるモノマー全量に対する、モノマー(A)及びモノマー(B)の合計使用量の比と見なすことができる。ポリマー粒子中の構成単位(C)の含有量は、重合に用いるモノマー(A)及び(B)の合計モル数に対する、モノマー(C)の使用量の比と見なすことができる。
【0051】
乳化重合法としては、乳化剤を使用する公知の方法及び乳化剤を実質的に使用しない方法、いわゆる、ソープフリー乳化重合法が挙げられ、電解液への親和性及びバインダー物性の観点から、ソープフリー乳化重合法が好ましい。本開示におけるポリマー粒子としては、例えば、モノマー(A)とモノマー(B)とを含有するモノマー混合物を乳化重合、好ましくはソープフリー乳化重合させてなるポリマー粒子が挙げられる。
【0052】
前記重合工程で乳化剤を用いる場合、乳化剤としては、重合安定性の観点から、水溶性の乳化剤が好ましい。水溶性の乳化剤としては、重合安定性の観点から、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及び反応性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤が挙げられ、結着性低下を抑制する観点から、反応性界面活性剤が好ましい。反応性界面活性剤とは、重合中にポリマーに取り込まれる界面活性剤をいう。
【0053】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;ラウリルスルホン酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸エステル塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレン基を有するアニオン性界面活性剤;等が挙げられる。
【0054】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;等が挙げられる。
【0055】
反応性界面活性剤としては、例えば、分子中にビニル重合性二重結合を有する反応性乳化剤が挙げられ、具体的には、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル等が挙げられる。
【0056】
乳化重合に用いられる乳化剤量は、結着性低下を抑制する観点から、モノマー全量に対して、0.05質量%以下が好ましく、0.02質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が更に好ましく、実質的に0質量%がより更に好ましい。本開示において、乳化重合に用いられる乳化剤量は、前記重合工程における界面活性剤の使用量とすることができる。
【0057】
前記重合工程では、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、重合安定性の観点から、水溶性の重合開始剤が好ましい。水溶性の重合開始剤としては、重合安定性の観点から、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物;等が挙げられ、過硫酸塩が好ましく、過硫酸アンモニウムがより好ましい。
【0058】
前記重合工程における重合開始剤の使用量は、モノマー全量に対し、0.01モル%以上が好ましく、0.05モル%以上がより好ましく、0.1モル%以上が更に好ましく、そして、5モル%以下が好ましく、3モル%以下がより好ましく、1モル%以下が更に好ましい。
【0059】
前記重合工程では、イオン交換水等の水を溶媒として用いることができる。前記重合工程における水の使用量は、例えば、モノマー全量100質量部に対し、40質量部以上1500質量部以下(重合固形分で6.25〜71.4質量%)とすることができる。
【0060】
前記重合工程では、重合開始剤と併用可能な還元剤を用いることができる。還元剤としては、例えば、亜硫酸塩、ピロ亜硫酸塩等が挙げられる。
【0061】
前記重合工程では、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、公知の連鎖移動剤を用いることができ、例えば、イソプロピルアルコールや、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、メルカプトエタノール等のメルカプト化合物が挙げられる。
【0062】
重合条件としては、使用する重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって適宜設定すればよい。例えば、重合反応は、窒素雰囲気下、60〜100℃の温度範囲で行うことができ、重合時間は、例えば、0.5〜20時間と設定できる。
【0063】
本開示におけるポリマー粒子を構成する各構成単位の配列は、ランダム、ブロック、又はグラフトのいずれでもよい。ポリマーの組成分析は、例えば、NMRスペクトル、UV−visスペクトル、IRスペクトル、アフィニティクロマトグラフィー等によって行うことができる。
【0064】
ポリマー粒子の平均粒径は、電解液への親和性及びバインダー物性の観点から、0.2μm以上が好ましく、0.3μm超がより好ましく、そして、1μm以下が好ましく、0.9μm以下がより好ましく、0.8μm以下が更に好ましく、0.7μm未満がより更に好ましい。
【0065】
ポリマー粒子の形態としては、粉体であってもよいし、ポリマー粒子を水に分散させたポリマー粒子分散体であってもよい。
【0066】
本開示に係る樹脂組成物中のポリマー粒子の含有量は、蓄電デバイス電極用スラリーへの配合性の観点から、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、そして、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。
【0067】
<水性媒体>
本開示に係る樹脂組成物は、水性媒体をさらに含有することができる。水性媒体としては、イオン交換水等が挙げられる。本開示に係る樹脂組成物が水性媒体を含有する場合、本開示に係る樹脂組成物の形態としては、例えば、上記ポリマー粒子が水性媒体に分散されたポリマー粒子分散体が挙げられる。ポリマー粒子分散体としては、例えば、上述した乳化重合法で得られるポリマー粒子を含む混合液をそのまま使用できる。
【0068】
<任意成分>
本開示に係る樹脂組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で、上記ポリマー粒子及び水性媒体以外に任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、中和剤等が挙げられる。
【0069】
界面活性剤としては、公知の界面活性剤が挙げられ、例えば、上述した乳化剤として用いられうる界面活性剤であってもよい。本開示に係る樹脂組成物において、界面活性剤の含有量は、バインダー物性と電池特性向上の観点から、樹脂組成物の全固形分量に対して、0.05質量%以下が好ましく、0.02質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が更に好ましく、実質的に0質量%がより更に好ましい。本開示において、樹脂組成物中の界面活性剤の含有量には、乳化重合で使用される乳化剤由来の界面活性剤も含まれる。
【0070】
[樹脂組成物の製造方法]
本開示に係る樹脂組成物は、上述したポリマー粒子、並びに必要に応じて上述した水性媒体及び任意成分を公知の方法で配合することにより製造できる。すなわち、本開示は、少なくともポリマー粒子を配合する配合工程を含む、樹脂組成物の製造方法(以下、「本開示に係る製造方法」ともいう)に関する。前記配合は、例えば、スターラー、ディスパー、ホモミキサー等の公知の混合装置を用いて行うことができる。前記配合工程における各成分の配合量は、上述の樹脂組成物中の各成分の含有量と同様とすることができる。
【0071】
本開示に係る製造方法は、モノマー(A)及びモノマー(B)、並びに必要に応じてモノマー(C)を含むモノマー混合物を重合させてポリマー粒子を得る重合工程を含むことができる。本開示に係る製造方法の重合工程における、重合方法、重合に用いうる各成分の種類及びその使用量については、上述したポリマー粒子の製造方法の重合工程と同様とすることができる。
【0072】
本開示に係る樹脂組成物の表面張力は、バインダー物性と電池特性向上の観点から、55mN/m以上であって、57mN/m以上が好ましく、そして、72mN/m以下が好ましい。本開示に係る樹脂組成物の形態がポリマー粒子分散体である場合、ポリマー粒子分散体の表面張力は、55mN/m以上が好ましく、57mN/m以上がより好ましく、そして、72mN/m以下が好ましい。表面張力は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0073】
本開示に係る樹脂組成物は、例えば、蓄電デバイス電極材料、蓄電デバイス電極用バインダー等として使用できる。蓄電デバイスとしては、例えば、二次電池、キャパシタ等が挙げられる。本開示に係る樹脂組成物は、例えば、リチウムイオン二次電池の材料に好適に用いられる。
【0074】
[蓄電デバイス用電極]
本開示は、集電体、及び前記集電体上に形成された合材層を含む蓄電デバイス用電極であって、前記合材層が、活物質、及び本開示に係る樹脂組成物を含む、蓄電デバイス用電極(以下、「本開示に係る電極」ともいう)に関する。
【0075】
前記合材層は、例えば、活物質、本開示に係る樹脂組成物、及び溶媒を含むスラリーを調製し、このスラリーを集電体に塗布し、スラリー中の溶媒を乾燥除去することにより得られる。活物質としては、蓄電デバイスの種類等に応じて適宜選択できる。例えば、本開示に係る電極がリチウムイオン二次電池の負極である場合、活物質としては、炭素材料、珪素材料、チタン材料、スズ材料等が挙げられる。溶媒としては、本開示に係る樹脂組成物を分散できる溶媒であればよく、例えば、水、N−メチルピロリドン(NMP)等が挙げられる。
【0076】
集電体としては、導電性を有する材料から選ぶことができ、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔等の金属箔が挙げられる。
【0077】
[蓄電デバイス]
本開示は、本開示に係る電極、及び電解液を含む、蓄電デバイス(以下、「本開示に係る蓄電デバイス」ともいう)に関する。
【0078】
本開示に係る蓄電デバイスは、公知の蓄電デバイス製造方法により製造できる。蓄電デバイスの製造方法としては、例えば、2つの電極(正極及び負極)を、セパレータを介して重ね合わせ、電池形状に捲回あるいは積層させて、電池容器あるいはラミネート容器に入れ、容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。
【0079】
電解液としては、通常、有機溶媒に電解質を溶解した溶液やイオン液体類が用いられる。
有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられ、これらは単独、又は2種以上を併用してもよい。特に、酸化・還元に対する安定性から、環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとの混合系電解液が好ましい。
電解質とは、有機溶媒に溶解して電気を伝導する働きを有するイオン性化合物を示す。電解質としては、例えば、LiClO
4、LiPF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiCF
3CO
2、LiCl、LiBr、LiSCN等のリチウム塩を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。中でもLiPF
6を用いるのが好ましい。
イオン液体類としては、例えば、ビス(フルオロスルフォニル)アミド(FSA)、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)アミド(TFSA)のアルキル塩;N−メチルプロピルピロリジニウム(P13);ジエチルメチルメトキシエチルアンモニウム(DEME);トリグライム(G3)等が挙げられる。
【0080】
本開示は、さらに下記の組成物に関する。
<1> 下記式(I)で表される化合物由来の構成単位(A)、並びに、下記式(II)で表される化合物、下記式(III)で表される化合物、及び不飽和二塩基酸から選ばれる少なくとも1種の化合物由来の構成単位(B)を含有するポリマー粒子を含む、蓄電デバイス電極用樹脂組成物であって、
前記ポリマー粒子の全構成単位中の構成単位(A)の含有量が、50質量%以上99.9質量%以下であり、
前記ポリマー粒子の全構成単位中の構成単位(B)の含有量が、0.1質量%以上20質量%以下であり、
前記樹脂組成物の表面張力が、55mN/m以上である、
蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
【化11】
[式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基を示す。R
2は、炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、及び、−CH
2OR
3から選ばれる少なくとも1種を示す。R
3は、炭素数4以上6以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。Xは、−O−又は−NH−を示す。]
【化12】
[式(II)中、R
1は、水素原子又はメチル基を示し、Mは、水素原子又はカチオンを示す。]
【化13】
[式(III)中、R
1は、水素原子又はメチル基を示し、Xは、−O−又は−NH−を示す。R
4は、−(CH
2)
nOH、−R
5SO
3M、−R
6N(R
7)(R
8)及び−R
6N
+(R
7)(R
8)(R
9)・Y
-から選ばれる少なくとも1種を示す。nは、1以上4以下である。R
5は、炭素数1以上5以下の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。Mは、水素原子又はカチオンを示す。R
6は、炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。R
7及びR
8は同一又は異なり、炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。R
9は、炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。Y
-は、アニオンを示す。]
【0081】
<2> ポリマー粒子の全構成単位中の構成単位(A)の含有量は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上がより更に好ましい、<1>に記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<3> ポリマー粒子の全構成単位中の構成単位(A)の含有量は、99.5質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、98質量%以下が更に好ましく、97質量%以下がより更に好ましい、<1>又は<2>に記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<4> ポリマー粒子の全構成単位中の構成単位(B)の含有量は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましく、3質量%以上がより更に好ましい、<1>から<3>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<5> ポリマー粒子の全構成単位中の構成単位(B)の含有量は、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下が更に好ましく、6質量%以下がより更に好ましい、<1>から<4>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<6> ポリマー粒子中の構成単位(B)の含有量に対する構成単位(A)の含有量の比(A/B)は、500以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下が更に好ましい、<1>から<5>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<7> ポリマー粒子中の構成単位(B)の含有量に対する構成単位(A)の含有量の比(A/B)は、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上が更に好ましい、<1>から<6>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<8> ポリマー粒子の全構成単位中の構成単位(A)及び構成単位(B)の合計含有量が、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい、<1>から<7>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<9> 前記式(I)中、R
1が水素原子であり、R
2が炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Xが−O−であり、
前記構成単位Bが、前記式(II)で表される化合物由来の構成単位であり、前記式(II)中、R
1が水素原子又はメチル基であり、Mが水素原子又はカチオンである、<1>から<8>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<10> 前記ポリマー粒子は、多官能モノマー由来の構成単位(C)をさらに含有し、前記ポリマー粒子中の構成単位(C)の含有量は、構成単位(A)及び(B)の合計モル数に対して、0.001モル%以上1モル%以下である、<1>から<9>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<11> 前記ポリマー粒子中の構成単位(C)の含有量は、構成単位(A)及び(B)の合計モル数に対して、0.001モル%以上が好ましく、0.01モル%以上がより好ましく、0.05モル%以上が更に好ましい、<10>に記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<12> 前記ポリマー粒子中の構成単位(C)の含有量は、構成単位(A)及び(B)の合計モル数に対して、1モル%以下が好ましく、0.9モル%以下がより好ましく、0.8モル%以下が更に好ましい、<10>又は<11>に記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<13> 前記多官能モノマーは、下記式(IV)で表される化合物である、<10>から<12>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
【化14】
[式(IV)中、R
10は、水素原子又はメチル基を示す。Xは、−O−又は−NH−を示す。nは、1以上20以下の整数を示す。
<14> 前記ポリマー粒子は、前記式(I)で表される化合物と、前記式(II)で表される化合物、前記式(III)で表される化合物、及び不飽和二塩基酸から選ばれる少なくとも1種の化合物と、選択的に多官能モノマーとを含有するモノマー混合物を乳化重合させてなるポリマー粒子である、<1>から<9>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<15> 前記乳化重合に用いられる乳化剤量が、モノマー全量に対して、0.05質量%以下が好ましく、0.02質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が更に好ましく、実質的に0質量%がより更に好ましい、<14>に記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<16> 前記乳化重合が、ソープフリー乳化重合である、<14>又は<15>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<17> ポリマー粒子の平均粒径が、0.2μm以上0.7μm未満である、<1>から<16>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<18> ポリマー粒子の平均粒径が、0.2μm以上が好ましく、0.3μm超がより好ましい、<1>から<17>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<19> ポリマー粒子の平均粒径が、1μm以下が好ましく、0.9μm以下がより好ましく、0.8μm以下が更に好ましく、0.7μm未満がより更に好ましい、<1>から<18>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<20> 樹脂組成物中のポリマー粒子の含有量は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましい、<1>から<19>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<21> 樹脂組成物中のポリマー粒子の含有量は、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい、<1>から<20>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<22> 界面活性剤の含有量が、樹脂組成物の全固形分量に対して、0.05質量%以下が好ましく、0.02質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が更に好ましく、実質的に0質量%がより更に好ましい、<1>から<21>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<23> 水性媒体をさらに含有し、前記樹脂組成物の形態が、前記ポリマー粒子が前記水性媒体に分散したポリマー粒子分散体である、<1>から<22>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<24> 樹脂組成物の表面張力は、57mN/m以上が好ましい、<1>から<23>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<25> 樹脂組成物の表面張力は、72mN/m以下が好ましい、<1>から<24>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<26> ポリマー粒子を含む蓄電デバイス電極用樹脂組成物の製造方法であって、
モノマー(A)及びモノマー(B)を含むモノマー混合物を重合してポリマー粒子を得る重合工程を含み、
前記モノマー(A)は、下記式(I)で表される化合物であり、
前記モノマー(B)は、下記式(II)で表される化合物、下記式(III)で表される化合物、及び不飽和二塩基酸から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、
前記重合工程におけるモノマー(A)の使用量は、モノマー全量に対して、50質量%以上99.9質量%以下であり、
前記重合工程におけるモノマー(B)の使用量は、モノマー全量に対して、0.1質量%以上20質量%以下であり、
前記重合工程における界面活性剤の使用量は、モノマー全量に対して、0.05質量%以下である、蓄電デバイス電極用樹脂組成物の製造方法。
【化15】
[式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基を示す。R
2は、炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、及び、−CH
2OR
3から選ばれる少なくとも1種を示す。R
3は、炭素数4以上6以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。Xは、−O−又は−NH−を示す。]
【化16】
[式(II)中、R
1は、水素原子又はメチル基を示し、Mは、水素原子又はカチオンを示す。]
【化17】
[式(III)中、R
1は、水素原子又はメチル基を示し、Xは、−O−又は−NH−を示す。R
4は、−(CH
2)
nOH、−R
5SO
3M、−R
6N(R
7)(R
8)及び−R
6N
+(R
7)(R
8)(R
9)・Y
-から選ばれる少なくとも1種を示す。nは、1以上4以下である。R
5は、炭素数1以上5以下の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。Mは、水素原子又はカチオンを示す。R
6は、炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。R
7及びR
8は同一又は異なり、炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。R
9は、炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。Y
-は、アニオンを示す。]
<27> 重合工程におけるモノマー(A)の使用量は、重合に用いるモノマー全量に対して、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上がより更に好ましい、<26>に記載の製造方法。
<28> 重合工程におけるモノマー(A)の使用量は、重合に用いるモノマー全量に対して、99.5質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、98質量%以下が更に好ましく、97質量%以下がより更に好ましい、<26>又は<27>に記載の製造方法。
<29> 重合工程におけるモノマー(B)の使用量は、重合に用いるモノマー全量に対して、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましく、3質量%以上がより更に好ましい、<26>から<28>のいずれかに記載の製造方法。
<30> 重合工程におけるモノマー(B)の使用量は、重合に用いるモノマー全量に対して、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下が更に好ましく、6質量%以下がより更に好ましい、<26>から<29>のいずれかに記載の製造方法。
<31> 重合工程におけるモノマー(B)の使用量に対するモノマー(A)の使用量の比(A/B)は、500以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下が更に好ましい、<26>から<30>のいずれかに記載の製造方法。
<32> 重合工程におけるモノマー(B)の使用量に対するモノマー(A)の使用量の比(A/B)は、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上が更に好ましい、<26>から<21>のいずれかに記載の製造方法。
<33> 重合工程におけるモノマー(A)及びモノマー(B)の合計使用量が、重合に用いるモノマー全量に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい、<26>から<32>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
<34> 重合工程における重合開始剤の使用量は、重合に用いるモノマー全量に対して、0.01モル%以上が好ましく、0.05モル%以上がより好ましく、0.1モル%以上が更に好ましい、<26>から<33>のいずれかに記載の製造方法。
<35> 重合工程における重合開始剤の使用量は、重合に用いるモノマー全量に対して、5モル%以下が好ましく、3モル%以下がより好ましく、1モル%以下が更に好ましい、<26>から<34>のいずれかに記載の製造方法。
<36> 重合工程における界面活性剤の使用量が、重合に用いるモノマー全量に対し、0.05質量%以下が好ましく、0.02質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が更に好ましく、実質的に0質量%がより更に好ましい、<26>から<35>のいずれかに記載の製造方法。
<37> 前記モノマー混合物は、多官能モノマー(C)をさらに含み、前記重合工程における多官能モノマー(C)の使用量は、重合に用いるモノマー(A)及び(B)の合計モル数に対して、0.001モル%以上1モル%以下である、<26>から<36>のいずれかに記載の製造方法。
<38> 集電体、及び前記集電体上に形成された合材層を含む蓄電デバイス用電極であって、
前記合材層が、活物質、及び<1>から<25>のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物を含む、蓄電デバイス用電極。
<39> <38>に記載の蓄電デバイス用電極、及び電解液を含む、蓄電デバイス。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本開示を説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0083】
1.各パラメータの測定
[ポリマー粒子の平均粒径の測定]
ポリマー粒子の平均粒径は、レーザー回折法の粒径測定器(堀場製作所製LA−920)を用いて、室温下、機器の所定の光量範囲になるまで分散媒(水)で希釈し、測定した。
【0084】
[表面張力の測定]
20℃に調整したポリマー粒子分散体(固形分として0.03質量%になるように純水で希釈した液)をシャーレに入れ、ウィルヘルミ法(白金プレートを浸漬し、一定速度で引き上げる方法)により表面張力計(協和界面化学株式会社製、「CBVP-Z」)を用いて、表面張力を測定した。
【0085】
[負極ペーストおよび樹脂組成物の固形分濃度の測定]
負極ペーストおよび樹脂組成物の固形分濃度は、105℃で24時間乾燥し重量減量を測定することにより算出した。
【0086】
[負極及び正極ペーストの粘度の測定]
正極ペーストおよび負極ペーストの粘度は、B型粘度計(温度:25℃、回転速度:6rpm、ローターNo.3)を用いて測定した。正極ペーストの粘度は、12,050mPa・sであった。負極ペーストの粘度の測定結果については表2に示した。
【0087】
2.ポリマー粒子分散体の調製(実施例1〜9及び比較例1〜2)
表1に示す実施例1〜9及び比較例1〜2のポリマー粒子分散体の調製には、下記原料を用いた。表1及び以下の実施例に用いた原料の略号は次の通りである。
【0088】
<モノマー(A)> (下記R
1及びR
2は、式(I)中の記号を意味する)
・MMA:メチルメタクリレート(和光純薬工業製)(R
1:CH
3、R
2:CH
3)
・EMA:エチルメタクリレート(和光純薬工業製)(R
1:CH
3、R
2:C
2H
5)
・EA:エチルアクリレート(和光純薬工業製)(R
1:H、R
2:C
2H
5)
・BA:ブチルアクリレート(和光純薬工業製)(R
1:H、R
2:C
4H
9)
<モノマー(B)> (下記R
1は、式(II)中の記号を意味する)
・MAA:メタクリル酸(和光純薬工業製)(R
1:CH
3)
・AA:アクリル酸(和光純薬工業製)(R
1:H)
<モノマー(C)> (下記R
10、Xは、式(IV)中の記号を意味する)
・EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート(和光純薬工業製)(R
10:CH
3、X:O)
<ポリマー>
・SBR:スチレンブタジエンゴム(日本ゼオン製、「BM−400B」、固形分40質量%)
<重合開始剤>
・APS:過硫酸アンモニウム
<中和塩>
・Na:ナトリウム
・Li:リチウム
<乳化剤>
・AES:ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王製、「エマール20C」、有効分:25質量%)
【0089】
(実施例1のポリマー粒子分散体)
モノマー(A)としてMMA 74g、モノマー(B)としてBA 120g及びAA 6g、並びにイオン交換水 340gを、内容量1Lのガラス製4つ口セパラブルフラスコに入れ、窒素雰囲気下で一定時間(0.5時間)攪拌した。そして、フラスコ内の反応溶液を70℃付近まで昇温した後、イオン交換水 10gにAPS 1gを溶解した重合開始剤溶液をフラスコ内に添加し、フラスコ内の反応溶液を70〜75℃付近で6時間保持することで重合・熟成し、ポリマー粒子分散体を得た。その後、フラスコ内のポリマー粒子分散体を室温まで冷却し、1NのNaOH水溶液 29.14gを加えて中和した後、200メッシュ濾布を用いて凝集物を除去し、濃度が30〜35質量%程度になるまで濃縮し、実施例1のポリマー粒子分散体を得た。実施例1のポリマー粒子分散体の調製に用いた各成分の量及び種類を表1に示す。さらに、実施例1のポリマー粒子の平均粒径及びポリマー粒子分散体の表面張力の測定結果を表1にまとめて示す。
【0090】
(実施例2〜7のポリマー粒子分散体)
表1に示す構成単位となるようモノマー(A)及び(B)を変更したこと、表1に示すように重合開始剤の添加量を変更したこと、及び表1に示すように中和塩の種類を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜7のポリマー粒子分散体を得た。実施例2〜7のポリマー粒子分散体の調製に用いた各成分の量及び種類を表1に示す。さらに、実施例2〜7のポリマー粒子の平均粒径及びポリマー粒子分散体の表面張力の測定結果を表1にまとめて示す。
【0091】
(実施例8のポリマー粒子分散体)
モノマー(A)としてEA 194g、モノマー(B)としてAA 6g、モノマー(C)としてEGDMA 0.20g[モノマー(A)及び(B)の合計モル数に対して0.1モル%]を用いたこと、及び、1NのNaOH水溶液に代えて1NのLiOH水溶液(29.14g)を用いて中和したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8のポリマー粒子分散体を得た。実施例8のポリマー粒子分散体の調製に用いた各成分の量及び種類を表1に示す。
【0092】
(実施例9のポリマー粒子分散体)
モノマー(C)の使用量を1.0g[モノマー(A)及び(B)の合計モル数に対して0.5モル%]に変更したこと以外は、実施例8と同様にして、実施例9のポリマー粒子分散体を得た。実施例9のポリマー粒子分散体の調製に用いた各成分の量及び種類を表1に示す。
【0093】
(比較例1のポリマー粒子分散体)
比較例1のポリマー粒子分散体としては、SBRを用いた。比較例1のポリマー粒子の平均粒径及びポリマー粒子分散体の表面張力の測定結果を表1にまとめて示す。
【0094】
(比較例2のポリマー粒子分散体)
実施例1で用いたイオン交換水 340gを、イオン交換水 336gと乳化剤AES 4gに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のポリマー粒子分散体を得た。比較例2のポリマー粒子分散体の調製に用いた各成分の量及び種類を表1に示す。さらに、比較例2のポリマー粒子の平均粒径及びポリマー粒子分散体の表面張力の測定結果を表1にまとめて示す。
【0095】
【表1】
【0096】
3.リチウムイオン二次電池の作製(実施例10〜22及び比較例3〜4)
蓄電デバイスの一種であるリチウムイオン二次電池を以下のようにして作製した。
【0097】
[負極の作製]
表2に示す組成で実施例10〜22及び比較例3〜4の負極ペーストを調製し、各負極ペーストを用いて負極を以下のようにして作製した。負極ペーストに用いた材料は以下の通りである。
・樹脂組成物:実施例1〜9及び比較例1〜2のポリマー粒子分散体
・負極活物質:グラファイト、昭和電工製、「AF−C」
・負極導電材:カーボンファイバー、昭和電工製、「VGCF−H」
・負極増粘剤:カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ダイセル製、「#2200」
【0098】
まず、負極活物質 288g、負極導電材 3g及び負極増粘剤 3gを混合した後、最終固形分濃度が50〜55質量%となるのに必要な量の蒸留水を徐々に加えてディスパーを用いて混練した。そして、混練物に樹脂組成物をポリマー固形分として6gを加え、さらにディスパーで混練を行った。その後、撹拌脱泡機(シンキー社製「あわとり練太郎」)で脱泡を行い、150メッシュ濾布で粗大粒子を除去し、実施例10〜22及び比較例3〜4の負極ペーストを得た。ここで、負極ペーストの固形分濃度(質量%)とは、負極ペーストが含有する、負極活物質、負極導電材、負極増粘剤及び樹脂組成物からなる材料の固形分の合計量(質量%)である。
【0099】
実施例10〜22及び比較例3〜4の負極ペーストをそれぞれ、集電体である銅箔上に乾燥後80g/m
2となるように厚さを調節してバーコーターで塗工した。塗膜は、送風乾燥器を用いて80℃で5分乾燥し、さらに150℃で10分乾燥した。その後、ロールプレスにより電極密度が1.3〜1.4g/cm
3に調整し、ドライルームにて1晩以上放置し、負極合材層を有する負極を作製した。
【0100】
[正極の作製]
正極ペーストに用いた材料の略号は次の通りである。
・正極活物質:NMC111(日本化学工業製)、組成:LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2(D50:6.5μm、BET比表面積:0.7m
2/g)
・正極導電材:アセチレンブラック(電気化学工業製、品名:デンカブラックHS−100)
・正極バインダー:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(クレハ製、L#7208;8%NMP溶液)
【0101】
まず、正極活物質 282g、正極導電材 9g、及び正極バインダー 9gを、非水系溶媒としてNMPを用いて混合し、正極ペーストを調整した。ここで、正極活物質、正極導電材及び正極バインダーの質量比率は94:3:3(固形分換算)とした。上記混合には、ディスパーを用いた混練を行った。正極ペースト中の固形分(質量%)は、非水系溶媒の量により調整した。ここで、正極ペースト中の固形分(質量%)とは、正極ペーストが含有する、正極活物質、正極導電材及び正極バインダーからなる材料の固形分の全量(質量%)である。
【0102】
作製した正極ペーストを集電体であるアルミ箔上に乾燥後125g/m
2となるように厚さを調節してバーコーターで塗工した。塗膜は、送風乾燥器を用いて100℃で5分乾燥し、さらに150℃で10分乾燥した。その後、ロールプレスにより電極密度を2.8〜3.2g/cm
3に調整し、ドライルームにて1晩以上放置し、正極合材層を有する正極を作製した。
【0103】
[リチウムイオン二次電池の作製]
端子取り付け部分を残して、負極を45mm×45mmに、正極を40mm×40mmに打ち抜き、それぞれ端子を取り付けた。50mm×50mmに打ち抜いたセパレータを介して負極と正極とが向き合うように重ね、それらをアルミ包材ラミネートフィルムに挟んで、端子側の辺を除く3辺を熱融着により閉じた。端子側の開口部より下記電解液を注入し、内部を真空状態にして端子側も熱融着してセルを密閉し、リチウムイオン二次電池を作製した。電解液には、エチレンカーボネート(EC)及びメチルエチルカーボネート(MEC)を体積比EC:MEC=3/7で含有する溶媒中に、LiPF
6を1モル/L溶解させ、炭酸ビニレン(VC)を1質量%添加したものを用いた。
【0104】
4.評価
[負極の結着性の評価]
負極を45mm×45mmに打ち抜き、角と角を合わせて三角形に谷折りにしたのち、指で折り目を付け、再度開いた際に塗膜(負極合材層)の剥がれのないものをA、剥がれが見られるものをBとした。結果を表2に示した。
【0105】
[電池特性]
下記の条件で、充放電DCR及び充電容量を測定し、電池特性を評価した。
【0106】
<充放電DCR(直流抵抗)>
作製したリチウムイオン二次電池を用いて、電池の充電量(SOC)50%のときの放電及び充電DCRを測定した。測定方法は、25℃の環境下で、各測定ごとにSOC50%状態に電池を調整した。そして、電流0.2C、0.33C、1C、3C、5Cの放電(もしくは充電)を行い、その際の3秒目(もしくは10秒目)の電圧をプロットし、線形近似した時の傾きをDCRとした。結果を表2に示す。DCR値が小さいほど、抵抗が少なく、電池特性が良好であることを表す。
【0107】
<充電容量>
作製したリチウムイオン二次電池を用いて、25℃の環境下で、電圧4.2Vまで電流値1Cで定電流充電した後、4.2V一定で0.05Cになるまで定電圧充電(CC/CV)し、続いて電流値1Cで、電圧3.0Vまで定電流放電した。充電は、電流値5Cで電圧4.2Vまで定電流充電した。CC/CV後の充電容量を1とし、各電流で得られた充電容量の容量維持率(%)を求めた。結果を表2に示す。
【0108】
【表2】
【0109】
表2によれば、実施例10〜22及び比較例3の負極は、結着性が良好であった。そして、表2に示されるように、実施例10〜22の負極を用いたリチウムイオン二次電池では、比較例3、4の負極を用いたリチウムイオン二次電池よりも抵抗が低下し、充電容量の維持率の低下が抑制された。すなわち、実施例10〜22の負極を用いたリチウムイオン電池は、比較例3、4の負極を用いたリチウムイオン電池よりも電池特性が向上しているといえる。
【0110】
さらに、実施例10及び比較例3の負極を用いて作製したリチウムイオン二次電池の充放電サイクル特性を下記条件で評価した。
【0111】
<充放電サイクル特性>
実施例10及び比較例3の負極を用いて作製したリチウムイオン二次電池を用いて、25℃の環境下で、電圧4.2Vまで電流値1Cで定電流充電した後、4.2V固定で0.05Cになるまで定電圧充電した。放電は、電流値3Cで、電圧3.0Vまで定電流放電した。この充放電を1サイクルとして1000サイクル繰り返した。1サイクル目の放電容量に対する各サイクル後の放電容量の比を容量維持率(%)として算出した。結果を
図1に示す。
【0112】
図1に示されるように、実施例10の負極を用いたリチウムイオン二次電池では、比較例3の負極を用いたリチウムイオン二次電池よりも常温充放電サイクルでの容量維持率が高く、充放電サイクル特性に優れているといえる。