特許第6985854号(P6985854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6985854-ハニカム構造体の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985854
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20211213BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20211213BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20211213BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   B01J35/04 301N
   B01J37/08ZAB
   F01N3/10 A
   F01N3/28 301P
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-165821(P2017-165821)
(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公開番号】特開2019-42635(P2019-42635A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 純
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真之助
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−006828(JP,A)
【文献】 特開2011−073945(JP,A)
【文献】 特開2011−051846(JP,A)
【文献】 特開2012−116742(JP,A)
【文献】 国際公開第03/074848(WO,A1)
【文献】 特開平10−251058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86−53/90,53/94−53/96
F01N 3/10
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリア−ジルコニア複合酸化物粒子とアルミナ粒子とアルミナバインダを含む原料ペーストを押出成形して、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を得る成形工程と、
前記ハニカム成形体を800℃未満の温度で脱脂してハニカム脱脂体を得る脱脂工程と、
前記ハニカム脱脂体を800〜1300℃の温度で焼成する焼成工程と、を含むハニカム構造体の製造方法であって、
前記脱脂工程では、前記ハニカム成形体の周囲を酸素濃度が1体積%以下の雰囲気にして加熱し、さらに、200℃未満の温度において、少なくとも1度、前記ハニカム成形体を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露し、
前記焼成工程における酸素濃度が1〜20体積%であることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記脱脂工程において、脱脂炉内を還元性ガスで置換することにより、前記ハニカム成形体を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露する請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記還元性ガスは、水素又は一酸化炭素である請求項2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記脱脂工程において、前記ハニカム成形体を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露する時間は30〜600分である請求項1〜3のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記脱脂工程において、前記ハニカム成形体を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露したあと、前記貫通孔内に雰囲気ガスを流通させながら加熱する請求項1〜4のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記脱脂工程において、前記ハニカム成形体を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露したあと、前記貫通孔内に酸素濃度が1体積%以下のアルゴンガスを流通させながら前記ハニカム成形体を加熱する請求項5に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)等の有害ガスが含まれている。そのような有害ガスを分解する排ガス浄化触媒は三元触媒とも称され、コージェライト等からなるハニカム状のモノリス基材に触媒活性を有する貴金属粒子を含むスラリーをウォッシュコートして触媒層を設けたものが一般的である。
【0003】
一方、特許文献1には、モノリス基材がセリア−ジルコニア複合酸化物粒子とθ相のアルミナ粒子とを含み、上記モノリス基材に貴金属粒子が担持された排ガス浄化触媒が開示されている。そして、上記モノリス基材を製造する方法として、セリア−ジルコニア複合酸化物粒子とθ相のアルミナ粒子との混合物に水とバインダーを加え、混練した後に押出し機により成形し、乾燥及び焼成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−85241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたようなモノリス基材を製造する方法では、モノリス基材となる成形体から有機分を除去する工程(脱脂工程ともいう)において、成形体にクラックや割れなどが発生しやすいという問題があった。
【0006】
発明者らが上記問題について鋭意検討した結果、セリア−ジルコニア複合酸化物の酸素吸蔵能(以下、OSCともいう)によって有機分の脱脂反応が急速に進行することが、クラックや割れの原因となっていることが推察された。
すなわち、モノリス基材となる成形体を脱脂する際、有機分が温度の上昇に伴って周囲の酸素と結合して燃焼することによって発熱を伴って除去される。この時、OSCを有するセリア−ジルコニア複合酸化物から次の酸素が供給されるため、燃焼により有機分が除去された領域の周囲には、熱と酸素の両方が存在することとなり、有機分の燃焼が急激に進行する。その結果、モノリス基材となる成形体の一部が急激に加熱されてクラックや割れが発生すると考えられる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、割れやクラックの発生しにくいハニカム構造体を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、セリア−ジルコニア複合酸化物粒子とアルミナ粒子とアルミナバインダを含む原料ペーストを押出成形して、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を得る成形工程と、上記ハニカム成形体を脱脂してハニカム脱脂体を得る脱脂工程と、上記ハニカム脱脂体を焼成する焼成工程と、を含むハニカム構造体の製造方法であって、上記脱脂工程では、上記ハニカム成形体の周囲を酸素濃度が1体積%以下の雰囲気にして加熱し、さらに、200℃未満の温度において、少なくとも1度、上記ハニカム成形体を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露することを特徴とする。
【0009】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、脱脂工程において、ハニカム成形体の周囲を酸素濃度が1体積%以下の雰囲気にして加熱するため、有機分の分解(燃焼)に伴う発熱によって、次の反応(周囲に存在する有機分の燃焼)に必要な酸素が供給されにくくなり、ハニカム成形体の急激な発熱を抑制することができる。
さらに、本発明のハニカム構造体の製造方法では、200℃未満の温度において、少なくとも一度、ハニカム成形体を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露することにより、ハニカム成形体を構成するセリア−ジルコニア複合酸化物が吸蔵する余剰の酸素を、有機分の分解が開始されるよりも前に放出させることができるため、セリア−ジルコニア複合酸化物から酸素が供給されることによる有機分の燃焼反応を抑制することができる。そのため、ハニカム成形体の急激な発熱を抑え、クラックの発生を抑制することができる。
従って、本発明のハニカム構造体の製造方法では、ハニカム成形体が急激に発熱することがなく、クラックや割れを抑制することができる。
なお、ハニカム成形体の周囲を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露することを脱酸素工程ともいう。
【0010】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記脱脂工程において、脱脂炉内を還元性ガスで置換することにより、上記ハニカム成形体を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露することが望ましい。
脱脂炉内を還元性ガスにより置換することで、セリア−ジルコニア複合酸化物が吸蔵している余剰の酸素を奪いやすくなり、有機分の燃焼の局所的進行を大きく抑制することができる。
【0011】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記還元性ガスは、水素又は一酸化炭素であることが望ましい。
【0012】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記脱脂工程において、上記ハニカム成形体を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露する時間は30〜600分であることが望ましい。
【0013】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記脱脂工程において、上記貫通孔内に雰囲気ガスを流通させながら加熱することが望ましい。
貫通孔内に雰囲気ガスを流通させながら加熱することにより、脱脂工程中におけるハニカム成形体の温度ムラを低減することができる。
【0014】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記脱脂工程において、上記貫通孔内に酸素濃度が1体積%以下のアルゴンガスを流通させながら上記ハニカム成形体を加熱することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明のハニカム構造体の製造方法により製造されるハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【0016】
(発明の詳細な説明)
[ハニカム構造体]
まず、本発明のハニカム構造体の製造方法により製造する対象物であるハニカム構造体について説明する。
【0017】
図1は、本発明のハニカム構造体の製造方法により製造されるハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すハニカム構造体10は、複数の貫通孔12が隔壁13を隔てて長手方向に並設された単一のハニカム焼成体11を備えている。ハニカム焼成体11は、セリア−ジルコニア複合酸化物粒子(以下、CZ粒子ともいう)とアルミナとを含み、押出成形体の形状を有している。
図1に示すように、ハニカム構造体10が単一のハニカム焼成体11からなる場合、ハニカム焼成体11はハニカム構造体そのものでもある。
【0018】
ハニカム構造体は、CZ粒子、アルミナ粒子及びアルミナバインダを含む押出成形体からなる。ハニカム構造体は、CZ粒子、アルミナ粒子及びアルミナバインダを含む原料ペーストを押出成形して得られたハニカム成形体を焼成することにより作製されたハニカム焼成体により構成される。
ハニカム構造体が上記した成分を有していることは、X線回折(XRD)にて確認することができる。
【0019】
ハニカム構造体は、単一のハニカム焼成体を備えていてもよいし、複数個のハニカム焼成体を備えていてもよく、複数個のハニカム焼成体が接着剤層により結合されていてもよい。
【0020】
ハニカム構造体に含まれるアルミナとしては、原料ペーストに含まれるアルミナ粒子由来のアルミナと、アルミナバインダ由来のアルミナがある。また、アルミナ繊維を含む場合にはアルミナ繊維に含まれるアルミナもある。
アルミナバインダがベーマイトであり、ハニカム構造体にはベーマイト由来のアルミナが含まれることが望ましい。また、θ相のアルミナ粒子(以下、θ−アルミナ粒子ともいう)に由来するアルミナが含まれることが望ましい。
また、ハニカム構造体に含まれるアルミナ中の、θ相のアルミナの割合が15重量%以上であることが望ましい。
【0021】
ハニカム構造体におけるセリア−ジルコニア複合酸化物の含有割合は、25〜75重量%であることが望ましい。
ハニカム構造体におけるセリア−ジルコニア複合酸化物の占める割合が25〜75重量%であると、セリウムの酸素吸蔵能(OSC)を高めることができる。
【0022】
ハニカム構造体におけるアルミナの含有割合は、15〜35重量%であることが望ましい。
【0023】
ハニカム構造体の直径に対する長さの比(長さ/直径)は、0.5〜0.9であることが望ましく、0.6〜0.8であることがより望ましい。
【0024】
ハニカム構造体の直径は、130mm以下であることが望ましく、125mm以下であることがより望ましい。また、ハニカム構造体の直径は、85mm以上であることが望ましい。
ハニカム構造体の直径を130mm以下にすることにより、ハニカム構造体内の温度分布を小さくすることができるため、使用中の熱衝撃による破損をおさえることができる。
【0025】
ハニカム構造体の長さは、65〜120mmであることが望ましく、70〜110mmであることがより望ましい。
【0026】
ハニカム構造体の形状としては、円柱状に限定されず、角柱状、楕円柱状、長円柱状、丸面取りされている角柱状(例えば、丸面取りされている三角柱状)等が挙げられる。
【0027】
ハニカム構造体において、ハニカム焼成体の隔壁の厚さは、均一であることが望ましい。具体的には、ハニカム焼成体の隔壁の厚さは、0.05〜0.50mmであることが望ましく、0.05〜0.30mmであることがより望ましい。
【0028】
ハニカム構造体において、ハニカム焼成体の貫通孔の形状としては、四角柱状に限定されず、三角柱状、六角柱状等が挙げられる。
【0029】
ハニカム構造体において、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な断面の貫通孔の密度は、31〜155個/cmであることが望ましい。
【0030】
ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の気孔率は、40〜70%であることが望ましい。ハニカム構造体の気孔率を上記範囲とすることにより、ハニカム構造体の強度を維持しつつ、高い排ガス浄化性能を発揮することができる。
【0031】
ハニカム構造体の気孔率は、以下に説明する重量法にて測定することができる。
(1)ハニカム構造体を10セル×10セル×10mmの大きさに切断して、測定試料とする。この試料をイオン交換水中およびアセトンを用いて超音波洗浄した後、オーブンにて100℃で乾燥する。
(2)測定顕微鏡(Nikon製 Measuring Microscope MM−40 倍率100倍)を用いて、試料の断面形状の寸法を計測し、幾何学的な計算から体積を求める(なお、幾何学的な計算から体積を求めることができない場合は、飽水重量と水中重量を実測して、体積を計測する)。
(3)計算上求められた体積およびピクノメーターで測定した試料の真密度から、試料が完全な緻密体であったと仮定した場合の重量を計算する。なお、ピクノメーターでの測定手順は以下の通りである。
(4)ピクノメーターによる真密度の測定方法
ハニカム構造体を粉砕し、23.6ccの粉末を調整し、得られた粉末を200℃で8時間乾燥させる。その後、Auto Pycnometer 1320(Micromeritics社製)を用いて、JIS−R−1620(1995)に準拠し真密度を測定する。なお、この時の排気時間は40分とする。
(5)次に、試料の実際の重量を電子天秤(A&D製 HR202i)にて測定する。
(6)気孔率は、以下の計算式(1)にて計算する。
100−(実際の重量/緻密体としての重量)×100(%)・・・(1)
【0032】
本発明のハニカム構造体の製造方法で得られるハニカム構造体の比表面積は、20〜50m/gであることが望ましい。
ハニカム構造体の比表面積はNを使用したBET比表面積測定により測定することができる。
【0033】
ハニカム構造体には、貴金属が担持されていてもよい。
貴金属の担持量は、0.1〜15g/Lであることが望ましく、0.5〜10g/Lであることがより望ましい。
本明細書において、貴金属の担持量とは、ハニカム構造体の見掛けの体積当たりの貴金属の重量をいう。なお、ハニカム構造体の見掛けの体積は、空隙の体積を含む体積であり、接着層を含む場合は接着層の体積を含むこととする。
【0034】
[ハニカム構造体の製造方法]
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。
【0035】
[混合工程]
本発明のハニカム構造体の製造方法を構成する混合工程について説明する。
混合工程では、セリア−ジルコニア複合酸化物粒子(以下、CZ粒子ともいう)、アルミナ粒子及びアルミナバインダを混合して原料ペーストを調製する。
原料ペーストには、さらに無機繊維、有機バインダ、造孔剤、成形助剤、分散媒等が含まれていてもよい。
【0036】
CZ粒子を構成するセリア−ジルコニア複合酸化物は、排ガス浄化触媒の助触媒(酸素貯蔵材)として用いられている材料である。セリア−ジルコニア複合酸化物としては、セリアとジルコニアとが固溶体を形成したものが望ましい。
【0037】
セリア−ジルコニア複合酸化物は、セリウム以外の希土類元素をさらに含んでいてもよい。希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)、ルテニウム(Lu)等が挙げられる。
【0038】
セリア−ジルコニア複合酸化物は、セリアを30重量%以上含むことが好ましく、40重量%以上含むことがより好ましく、一方、セリアを90重量%以下含むことが好ましく、80重量%以下含むことがより望ましい。また、セリア−ジルコニア複合酸化物は、ジルコニアを60重量%以下含むことが好ましく、50重量%以下含むことがより望ましい。このようなセリア−ジルコニア複合酸化物は熱容量が小さいため、ハニカム構造体の温度が上昇しやすくなり、暖機性能を高めることができる。
【0039】
CZ粒子の平均粒子径は耐熱衝撃性を向上させる観点から、1〜50μmであることが望ましい。また、CZ粒子の平均粒子径は1〜30μmであることがより望ましい。CZ粒子の平均粒子径が1〜50μmであると、ハニカム構造体とした際に、表面積が大きくなるため、酸素吸蔵能を高くすることができる。
【0040】
アルミナ粒子の種類は特に限定されないが、θ相のアルミナ粒子(以下、θ−アルミナ粒子ともいう)であることが望ましい。
θ相のアルミナ粒子をセリア−ジルコニア複合酸化物の仕切り材として用いることにより、アルミナ粒子が使用中に熱によって互いに焼結することを抑制できるため、触媒機能を維持することが可能となる。さらに、アルミナ粒子をθ相とすることにより、耐熱性を高くすることができる。
【0041】
アルミナ粒子の平均粒子径は特に限定されないが、ガス浄化性能及び暖機性能を向上させる観点から、1〜10μmであることが望ましく、1〜5μmであることがより望ましい。
【0042】
製造されたハニカム構造体において、CZ粒子及びアルミナ粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製 S−4800)を用いて、ハニカム構造体のSEM写真を撮影することにより求めることができる。
また、ハニカム構造体の原料となるCZ粒子及びアルミナ粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(MALVERN社製 MASTERSIZER2000)により求めることができる。
【0043】
アルミナバインダとしては、ベーマイトが望ましい。
ベーマイトは、AlOOHの組成で示されるアルミナ1水和物であり、水等の媒体に良好に分散するので、ベーマイトをアルミナバインダとして用いることが望ましい。
また、ベーマイトを用いることで原料ペースト中の水分率を低くし、成形性を高めることができる。
【0044】
無機繊維を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等が挙げられ、二種以上併用してもよい。これらの中では、アルミナ繊維が望ましい。
【0045】
無機繊維のアスペクト比は、5〜300であることが望ましく、10〜200であることがより望ましく、10〜100であることがさらに望ましい。
なお、無機繊維とは、アスペクト比が5以上のものをいう。
【0046】
有機バインダとしては、特に限定されないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0047】
造孔剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、コークス、デンプン等が挙げられる、本発明では、アクリル樹脂、コークス及びデンプンのうち2種類以上を用いることが望ましい。
造孔剤とは、焼成体を製造する際、焼成体の内部に気孔を導入するために用いられるものをいう。
【0048】
成形助剤としては、特に限定されないが、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0049】
分散媒としては、特に限定されないが、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0050】
上記した原料としてCZ粒子、アルミナ粒子、アルミナ繊維及びアルミナバインダを使用した際、これらの配合割合は、原料中の焼成工程後に残存する全固形分に対し、CZ粒子:25〜75重量%、アルミナ粒子:15〜35重量%、アルミナ繊維:5〜15重量%、アルミナバインダ:5〜20重量%が望ましい。
【0051】
原料ペーストを調製する際には、混合混練することが望ましく、ミキサー、アトライタ等を用いて混合してもよく、ニーダー等を用いて混練してもよい。
【0052】
成形工程では、セリア−ジルコニア複合酸化物粒子とアルミナ粒子とアルミナバインダを含む上記原料ペーストを成形することにより、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を得る。成形は押出成形により行うことが望ましい。
【0053】
ハニカム成形体の形状は特に限定されるものではないが、円柱形状が望ましい。また、円柱形状の場合の直径が130mm以下であることが望ましい。
また、ハニカム成形体の形状は角柱形状であってもよく、角柱形状である場合は、四角柱形状であることが望ましい。
【0054】
続いて、ハニカム成形体を脱脂してハニカム脱脂体を得る脱脂工程を行う。
脱脂工程の前に、必要により、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等の乾燥機を用いて、ハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を作製する。
本明細書においては、脱脂工程を行う前のハニカム成形体及びハニカム乾燥体をまとめてハニカム成形体とも呼ぶ。
【0055】
(脱脂工程)
脱脂工程では、ハニカム成形体の周囲を酸素濃度が1体積%以下の雰囲気にして加熱する。
ハニカム成形体の周囲を酸素濃度が1体積%以下の雰囲気にして加熱することにより、有機分の分解(燃焼)に伴う発熱によって、次の反応(周囲に存在する有機分の燃焼)に必要な酸素が供給されにくくなり、ハニカム成形体の急激な発熱を抑制することができる。
【0056】
脱脂工程においてハニカム成形体を加熱する際の最高温度は800℃未満であることが望ましい。また加熱時間は300〜1440分であることが望ましい。
加熱は、後述する脱酸素工程と並行して行ってもよく、脱酸素工程の後に行ってもよい。
ただし、脱酸素工程を行っている場合、200℃以上に加熱しない。
【0057】
脱脂工程ではさらに、200℃未満の温度において(すなわち、脱脂工程においてハニカム成形体の周囲の温度が200℃以上となる前に)、少なくとも一度、ハニカム成形体を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露する。
ハニカム成形体の周囲を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露することを脱酸素工程ともいう。
200℃未満の温度において、少なくとも一度、ハニカム成形体を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露することにより、ハニカム成形体を構成するセリア−ジルコニア複合酸化物が吸蔵する余剰の酸素を、有機分の分解が開始されるよりも前に放出させることができるため、セリア−ジルコニア複合酸化物から酸素が供給されることによる有機分の燃焼反応を抑制することができる。
そのため、ハニカム成形体の急激な発熱を抑え、クラックの発生を抑制することができる。
従って、本発明のハニカム構造体の製造方法では、ハニカム成形体が急激に発熱することがなく、クラックや割れを抑制することができる。
【0058】
脱脂工程において、ハニカム成形体を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露する方法は特に限定されないが、例えば、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスをハニカム成形体の周囲に通気させる方法や、水素ガスや一酸化炭素ガス等の還元性ガスでハニカム成形体の周囲を置換する方法等が挙げられる。
これらの中では水素ガスや一酸化炭素ガス等の還元性ガスを用いることが望ましい。
還元性ガスを用いることにより、ハニカム成形体を構成するセリア−ジルコニア複合酸化物が吸蔵する余剰の酸素を放出させやすくなる。
【0059】
脱脂工程において、ハニカム成形体を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露するタイミングは、ハニカム成形体の周囲の温度が200℃以上となる前であれば特に限定されないが、加熱開始前であることが望ましい。
【0060】
ハニカム成形体を酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気に暴露する時間は、特に限定されないが、30〜600分であることが望ましい。
【0061】
(焼成工程)
続いて、ハニカム脱脂体を焼成してハニカム焼成体を得る焼成工程を行う。
焼成工程の温度は、800〜1300℃であることが望ましく、900〜1200℃であることがより望ましい。また、焼成工程の時間は、1〜24時間であることが望ましく、3〜18時間であることがより望ましい。焼成工程の雰囲気は特に限定されないが、酸素濃度が1〜20体積%であることが望ましい。
【0062】
焼成工程は脱脂工程から連続して行ってもよいし、脱脂工程の完了後に別途行ってもよい。
脱脂工程から連続して焼成工程を行う場合、脱脂炉として用いた炉を焼成炉として用いてもよい。
なお、脱脂工程においてハニカム成形体の脱脂が完了したかどうかは、重量変化率により確認する。具体的には、原料中に含まれる有機物の重量分だけ、成形体の重量に対して脱脂体の重量が変化していることを確認して、脱脂が完了したものとする。
【0063】
以上の工程により、ハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造することができる。
【0064】
(担持工程)
続いて、該ハニカム構造体の隔壁に対して貴金属を担持させる担持工程について説明する。ハニカム構造体の隔壁に貴金属を担持させることによりハニカム触媒とすることができる。
【0065】
隔壁に貴金属を担持する方法としては、例えば、貴金属もしくは錯体を含む溶液にハニカム焼成体又はハニカム構造体を浸漬した後、引き上げて加熱する方法等が挙げられる。
上記担持工程では、貴金属の担持量が0.1〜15g/Lであることが望ましく、0.5〜10g/Lであることがより望ましい。
【0066】
(その他の工程)
本発明のハニカム構造体の製造方法において、ハニカム焼成体の外周面に外周コート層を形成する場合、外周コート層は、ハニカム焼成体の両端面を除く外周面に外周コート層用ペーストを塗布した後、乾燥固化することにより形成することができる。外周コート層用ペーストとしては、原料ペーストと同じ組成のものが挙げられる。
【0067】
複数個のハニカム焼成体が接着層を介して接着されてなるハニカム構造体は、複数個のハニカム焼成体の両端面を除く外周面に接着層用ペーストを塗布して、接着させた後、乾燥固化することにより作製することができる。接着層用ペーストとしては、原料ペーストと同じ組成のものが挙げられる。
【0068】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0069】
[ハニカム構造体の作製]
(実施例1)
CZ粒子(平均粒子径:2μm)を26.4重量%、θ−アルミナ粒子(平均粒子径:2μm)を13.2重量%、アルミナ繊維(平均繊維径:3μm、平均繊維長:60μm)を5.3重量%、アルミナバインダとしてベーマイトを11.3重量%、有機バインダとしてメチルセルロースを5.3重量%、造孔剤としてアクリル樹脂を2.1重量%、同じく造孔剤としてコークスを2.6重量%、成形助剤として界面活性剤であるポリオキシエチレンオレイルエーテルを4.2重量%、及び、イオン交換水を29.6重量%混合混練して、原料ペーストを調製した。
【0070】
押出成形機を用いて、原料ペーストを押出成形して、円柱状のハニカム成形体を作製した。そして、減圧マイクロ波乾燥機を用いて、ハニカム成形体を出力1.74kW、減圧6.7kPaで12分間乾燥させた。
【0071】
乾燥させたハニカム成形体を脱脂炉内に静置し、脱脂炉内を一酸化炭素ガス(酸素濃度0.01体積%=100ppm)で置換し、300分間室温で保持することで脱酸素工程を行った。その後、脱脂炉内の酸素濃度が1.0体積%以下となるようにアルゴンガスを流通させながら加熱を開始し、最高温度700℃まで5℃/minの昇温速度で加熱し、8時間保持してハニカム脱脂体を得た。なお、ハニカム成形体の脱脂が完了したかどうかは、事前に準備した同組成のハニカム成形体(別サンプル)を同条件で加熱して、その重量変化率を測定することにより確認した。
なお、得られたハニカム脱脂体は脱脂炉から出さずにそのまま焼成工程を行うため、脱脂炉は焼成炉を兼ねており、脱脂工程では脱脂炉、焼成工程では焼成炉と呼ぶ。
【0072】
続いて、焼成炉内に空気(酸素濃度約20体積%)を流通させながら、最高温度1100℃まで5℃/minの昇温速度で加熱して2.5時間保持することにより、ハニカム脱脂体を焼成して実施例1に係るハニカム焼成体(ハニカム構造体)を作製した。作製したハニカム焼成体は直径が103mm、長さが105mmの円柱状であり、貫通孔の密度が77.5個/cm(500cpsi)、隔壁の厚さが0.127mm(5mil)であった。
【0073】
(実施例2)
脱脂工程における一酸化炭素ガスを水素ガス(酸素濃度0.005体積%=50ppm)に変更したほかは、実施例1と同様の方法で実施例2に係るハニカム構造体を得た。
【0074】
(実施例3)
脱脂工程において、置換した一酸化炭素ガスに暴露させる時間を300分から180分に変更したほかは、実施例1と同様の方法で実施例3に係るハニカム構造体を得た。
【0075】
(実施例4)
脱脂工程において、脱脂炉内を一酸化炭素ガスにより置換する方法に変わって、脱脂炉内の酸素濃度が0.1体積%となるように、窒素ガス(酸素濃度0.005体積%=50ppm)を脱脂炉内に通気させたほかは、実施例1と同様の方法で実施例4に係るハニカム構造体を得た。ただし、脱酸素工程後の加熱保持時間が480分を経過しても、ハニカム成形体の脱脂が完了しなかったため、保持時間を720分に変更した。
【0076】
(比較例1)
脱脂炉内の酸素濃度が1.0体積%となるように窒素ガスの供給量を変更したほかは、実施例4と同様の方法により、比較例1に係るハニカム構造体を得た。
【0077】
(耐熱衝撃性試験)
上記工程により製造された実施例1〜4及び比較例1のハニカム構造体を、アルミナ製マットを介して金属ケース内に封入し、ガスバーナーで熱せられた空気と室温の空気とを交互に通気させた。ハニカム焼成体の中心の温度が200℃及び950℃に交互になるように冷却と加熱を100サイクル繰り返すヒートサイクル試験を行った。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1の結果より、本発明のハニカム構造体の製造方法により製造されたハニカム構造体はクラックが発生せず、耐熱衝撃性に優れることがわかった。
ただし、還元性ガスではない窒素ガスを雰囲気ガスとして用いた実施例4については、脱脂工程においてより長時間の加熱が必要であった。
【符号の説明】
【0080】
10 ハニカム構造体
11 ハニカム焼成体
12 貫通孔
13 隔壁
図1