特許第6985857号(P6985857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985857
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】測長器および測長システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   G01B5/00 B
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-167966(P2017-167966)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-45273(P2019-45273A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【弁理士】
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】水越 哲也
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼山 健司
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−061682(JP,A)
【文献】 特開2004−340795(JP,A)
【文献】 特開2008−185535(JP,A)
【文献】 特許第5544129(JP,B2)
【文献】 特開2018−173300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00 − 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に先端が当接するスピンドルと、
先端側の開口から前記スピンドルを移動可能に突出させる筐体と、
前記測定対象物に前記スピンドルの先端側を当接させ当該スピンドルの位置を検出する検出部と、
前記検出部により前記スピンドルの位置を検出して測定を行う際に、前記筐体の内部に供給されたエアを前記先端側の開口から外部に放出するエア放出手段と、
を備え
前記エア放出手段は、前記筐体にエアが供給されている測定前の待機状態で前記スピンドルの先端が前記測定対象物に当接していないときには、当該筐体に供給されているエアの外部への放出を封止または抑制することを特徴とする測長器。
【請求項2】
前記エア放出手段は、前記スピンドルの外周に一体または別体として設けられ当該スピンドルの移動に伴って移動するとともに当該スピンドルが前記筐体の前記先端側へ最も突出した際に当該筐体の当該先端側の開口に連通した内部開口を形成する内側端面に直接的または間接的に当接する当接部を備え、前記筐体にエアが供給されている測定前の待機状態で前記スピンドルの先端が前記測定対象物に当接していないときには、当該当接部を当該内側端面に直接的または間接的に当接させることで、当該筐体に供給されているエアの外部への放出を封止または抑制することを特徴とする請求項1記載の測長器。
【請求項3】
前記筐体の内部にエアが供給されていない状態で前記スピンドル当該筐体から押し出す方向に付勢する付勢手段と、を更に備えたことを特徴とする請求項記載の測長器。
【請求項4】
測定対象物に先端が当接するスピンドルと、
先端側の開口から前記スピンドルを移動可能に突出させる筐体と、
前記測定対象物に前記スピンドルの先端側を当接させ当該スピンドルの位置を検出する検出部と、
前記検出部により前記スピンドルの位置を検出して測定を行う際に、前記筐体の内部に供給されたエアを前記先端側の開口から外部に放出するエア放出手段と、
前記筐体の内部にエアが供給されていない状態で前記スピンドルを当該筐体から押し出す方向に付勢する付勢手段と、
備え、
前記エア放出手段は、測定前の待機状態で前記スピンドルの先端が前記測定対象物に当接していないときには、前記筐体に供給されたエアの外部への放出を封止または抑制し、
前記スピンドルは、前記筐体の内部にエアが供給された際には、前記付勢手段による付勢力と当該筐体の内部に供給されたエアによる付勢力とによって前記押し出す方向に付勢されることを特徴とす測長器。
【請求項5】
測定対象物に先端が当接するスピンドルと、
先端側の開口から前記スピンドルを移動可能に突出させる筐体と、
前記測定対象物に前記スピンドルの先端側を当接させ当該スピンドルの位置を検出する検出部と、
前記スピンドルの外周に保持され当該スピンドルの移動に伴って移動するとともに、当該スピンドルが前記筐体の前記先端側へ最も突出した際に当該筐体の当該先端側の開口に連通した内部開口を形成する内側端面に当接するシール材と、
を備えたことを特徴とする測長器。
【請求項6】
前記スピンドルを前記筐体の前記先端側へ突出させる方向に当該スピンドルを付勢する付勢手段と、を更に備え、
前記スピンドルは、測定前の待機状態で先端が前記測定対象物に当接していないときにて、前記付勢手段によって前記筐体から最も突出していることを特徴とする請求項5記載の測長器。
【請求項7】
前記筐体は、内部にエアを供給可能な空間を有し、当該空間にエアが供給された状態にて、前記スピンドルが最も突出している状態では前記シール材が前記内側端面に当接し前記先端側の開口から外部へのエアの放出が封止または抑制され、当該スピンドルが当該最も突出している状態から当該筐体の後端側に移動し当該シール材が当該内側端面から離れることでエアが当該先端側の開口から外部へ放出されることを特徴とする請求項6記載の測長器。
【請求項8】
前記筐体は、前記内部開口の前記先端側にて前記スピンドルと摺動する軸面シール部を備え、当該軸面シール部を弾性的に保持することを特徴とする請求項5記載の測長器。
【請求項9】
前記筐体は、前記軸面シール部を保持するシール保持部と、当該シール保持部が当該軸面シール部と当接する箇所よりも後端側にて当該筐体の構成部材と当該シール保持部との間に設けられる弾性部と、を更に備え、当該軸面シール部を弾性的に保持することを特徴とする請求項8記載の測長器。
【請求項10】
請求項1〜9記載の測長器と、
前記測長器の内部空間にエアを供給するエア供給器と、
を有することを特徴とする測長システム。
【請求項11】
前記測長器により出力された情報を取得し測定値として表示出力するコントローラと、を更に備えたことを特徴とする請求項10記載の測長システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測長器および測長システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
軸線方向に移動可能なスピンドルを測定対象物に当接させ、スピンドルの基準位置からの変位を検出する測長器が知られている。
例えば特許文献1には、スプライン溝と、先端に設けられた接触子とを有する軸体と、軸体に設けられたスケールと、開口端部と、ボールスプライン軸受構造とを有し、ボールスプライン軸受構造により、軸体が開口端部の開口を介してスライドするように軸体を支持する本体と、本体内に配置され、スケールを読み取るセンサと、リング部と、リング部の内周側に設けられ前記スプライン溝に接触する凸部とを有し、本体の開口端部に設けられたパッキン材とを具備し、パッキン材の凸部は、軸方向に垂直な面に対して、軸体の接触子側へ向けて傾くようにリング部から突出して設けられているリニアゲージが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5544129号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、測長器が使用される環境によっては、測長器の内部に油分等の異物が侵入するおそれがある。測長器の内部に異物が存在すると、変位検出の精度が低下したり製品寿命が短くなったりして好ましくない。
本発明は、内部への異物侵入を抑制可能な測長器および測長システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、測定対象物に先端が当接するスピンドルと、先端側の開口から前記スピンドルを移動可能に突出させる筐体と、前記測定対象物に前記スピンドルの先端側を当接させ当該スピンドルの位置を検出する検出部と、前記検出部により前記スピンドルの位置を検出して測定を行う際に、前記筐体の内部に供給されたエアを前記先端側の開口から外部に放出するエア放出手段と、を備え、前記エア放出手段は、前記筐体にエアが供給されている測定前の待機状態で前記スピンドルの先端が前記測定対象物に当接していないときには、当該筐体に供給されているエアの外部への放出を封止または抑制することを特徴とする測長器である。
請求項2に記載の発明は、前記エア放出手段は、前記スピンドルの外周に一体または別体として設けられ当該スピンドルの移動に伴って移動するとともに当該スピンドルが前記筐体の前記先端側へ最も突出した際に当該筐体の当該先端側の開口に連通した内部開口を形成する内側端面に直接的または間接的に当接する当接部を備え、前記筐体にエアが供給されている測定前の待機状態で前記スピンドルの先端が前記測定対象物に当接していないときには、当該当接部を当該内側端面に直接的または間接的に当接させることで、当該筐体に供給されているエアの外部への放出を封止または抑制することを特徴とする請求項1記載の測長器である。
請求項3に記載の発明は、前記筐体の内部にエアが供給されていない状態で前記スピンドル当該筐体から押し出す方向に付勢する付勢手段と、を更に備えたことを特徴とする請求項記載の測長器である。
請求項4に記載の発明は、測定対象物に先端が当接するスピンドルと、先端側の開口から前記スピンドルを移動可能に突出させる筐体と、前記測定対象物に前記スピンドルの先端側を当接させ当該スピンドルの位置を検出する検出部と、前記検出部により前記スピンドルの位置を検出して測定を行う際に、前記筐体の内部に供給されたエアを前記先端側の開口から外部に放出するエア放出手段と、前記筐体の内部にエアが供給されていない状態で前記スピンドルを当該筐体から押し出す方向に付勢する付勢手段と、備え、前記エア放出手段は、測定前の待機状態で前記スピンドルの先端が前記測定対象物に当接していないときには、前記筐体に供給されたエアの外部への放出を封止または抑制し、前記スピンドルは、前記筐体の内部にエアが供給された際には、前記付勢手段による付勢力と当該筐体の内部に供給されたエアによる付勢力とによって前記押し出す方向に付勢されることを特徴とす測長器である。
請求項5に記載の発明は、測定対象物に先端が当接するスピンドルと、先端側の開口から前記スピンドルを移動可能に突出させる筐体と、前記測定対象物に前記スピンドルの先端側を当接させ当該スピンドルの位置を検出する検出部と、前記スピンドルの外周に保持され当該スピンドルの移動に伴って移動するとともに、当該スピンドルが前記筐体の前記先端側へ最も突出した際に当該筐体の当該先端側の開口に連通した内部開口を形成する内側端面に当接するシール材と、を備えたことを特徴とする測長器である。
請求項6に記載の発明は、前記スピンドルを前記筐体の前記先端側へ突出させる方向に当該スピンドルを付勢する付勢手段と、を更に備え、前記スピンドルは、測定前の待機状態で先端が前記測定対象物に当接していないときにて、前記付勢手段によって前記筐体から最も突出していることを特徴とする請求項5記載の測長器である。
請求項7に記載の発明は、前記筐体は、内部にエアを供給可能な空間を有し、当該空間にエアが供給された状態にて、前記スピンドルが最も突出している状態では前記シール材が前記内側端面に当接し前記先端側の開口から外部へのエアの放出が封止または抑制され、当該スピンドルが当該最も突出している状態から当該筐体の後端側に移動し当該シール材が当該内側端面から離れることでエアが当該先端側の開口から外部へ放出されることを特徴とする請求項6記載の測長器である。
請求項8に記載の発明は、前記筐体は、前記内部開口の前記先端側にて前記スピンドルと摺動する軸面シール部を備え、当該軸面シール部を弾性的に保持することを特徴とする請求項5記載の測長器である。
請求項9に記載の発明は、前記筐体は、前記軸面シール部を保持するシール保持部と、当該シール保持部が当該軸面シール部と当接する箇所よりも後端側にて当該筐体の構成部材と当該シール保持部との間に設けられる弾性部と、を更に備え、当該軸面シール部を弾性的に保持することを特徴とする請求項8記載の測長器である。
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9記載の測長器と、前記測長器の内部空間にエアを供給するエア供給器と、を有することを特徴とする測長システムである。
請求項11に記載の発明は、前記測長器により出力された情報を取得し測定値として表示出力するコントローラと、を更に備えたことを特徴とする請求項10記載の測長システムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、測長器内部への異物侵入を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態が適用される測長システムの一例を示した図である。
図2】第1の実施の形態が適用される測長器の全体断面図であり、(a)はスピンドルの最大突出の状態を示し、(b)はその部分拡大図である。
図3】測定器により測定される際の押し込み量と測定力との関係を示すグラフであり、横軸がスピンドル押し込み位置(mm)であり、縦軸が測定力(N)である。
図4】第1の実施の形態が適用される測長器の動作の説明図であり、(a)はスピンドルの最大突出以外の状態を示し、(b)はその部分拡大図である。
図5】第2の実施の形態が適用される測長器の全体断面図である。
図6】第2の実施の形態が適用される移動部の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[測長システム100の説明]
図1は、本実施の形態が適用される測長システム100の一例を示した図である。
測長システム100は、加工済み部品等の測定対象物の寸法を計測するためのものであり、例えば部品製造工場で用いられる。測長システム100は、後述する移動部10の変位に基づいて測定対象物の長さを検出するための測長器1と、測長器1に接続され、各種の演算を行なうとともに、寸法の計測や、加工時のワークの仕上がりなどの合否の判定を行い、結果の表示出力を行なうコントローラとしての表示器2と、測長器1と表示器2とを電気的に接続するケーブル3と、を有している。さらに、測長システム100は、後述の移動部10を測定対象物に向けて押し付けるためのエアを測長器1に供給するエア供給器4と、測長器1とエア供給器4とをエアの流通を可能に接続するエアチューブ5と、を有している。
【0009】
測長器1は、筐体部50の先端側に位置し筐体部50に対して軸線方向に移動可能な移動部10を持つ。移動部10は、測定対象物に接触する測定子14を先端側の端部に有する。また、測長器1は、筐体部50の内部に設けられ移動部10の変位を検出する後述の測定部30(図2参照)を持つ。
そして、測長器1は、移動部10の測定子14を測定対象物に接触させることで移動部10の基準位置から変位した量を、後述の測定部30により検出する。なお、測定部30は、後述するように光学的に検出する構成を採用するが、これに限られず、例えば磁気的に検出する構成でもいい。
【0010】
表示器2では、使用者が、測長器1を用いた測定に際して用いられる初期パラメータの設定や、各種パラメータの登録などを行なうことができる。また、表示器2では、設定条件などをSET NO.(セット番号)によって登録することで、SET NO.の指定によって測定条件の呼出しが簡易に行える。これによって、段取り替えを容易としている。また、表示器2の測定画面では、マスター合わせのためのリセット操作などもできる。
表示器2による表示としては、絶対値表示の場合、例えば測長器1の移動部10が最も出ている状態をほぼゼロとして、機械的に固有な測定値を表示する状態を設定できる。また、表示器2は、測定値が設定した合否判定/ランク判定の範囲内かどうかを判定し、表示や出力を行なう合否判定機能を備えている。
【0011】
なお、表示器2は、複数台の測長器1を連結するように構成することもでき、多点の演算表示を行なうことができる。また、表示器2は、外部入出力用の各種インタフェースを設け、用途に合わせて使用することも可能である。
また、表示器2の構成としては、測長器1の内部に同様の機能を持たせることもできる。また、ケーブル3を用いずに、各種無線通信機能を用いて表示器2と通信することも可能である。
【0012】
ケーブル3には、電気信号等の端子を複数持つコネクタが筐体部50の後端側に設けられており、これにより、測長器1の後端側に設けられたコネクタに対して、オス/メスの関係で脱着可能となっている。
【0013】
エア供給器4は、図示されない制御部によって制御される。そして、エア供給器4は、エアチューブ5を介し、測長器1の筐体部50に対してエアの供給を行うことで、筐体部50の内部空間51s(例えば図2参照)の気圧を高めている。より詳細には、エア供給器4は、移動部10が変位することで測定対象物の長さを測定するときにエアの供給を行い、かつ、移動部10が変位していないときにもエアの供給を行う。すなわち、エア供給器4は、電源オン後ないし測定モード時にはエアを供給し続ける。
なお、エア供給器4は、供給するエア圧を測定するときと測定しないときとで変更しない制御を採用するが、これに限られず、測定するときと測定しないときとでエア圧を変更する制御例が考えられる。例えば、測定するときのエア圧を測定しないときよりも高めて筐体部50の内部空間51s(例えば図2参照)への油分や切り粉等の異物侵入をより確実に防止する例や、測定するときのエア圧を測定しないときよりも低くして測定するときのエア放出量を抑制する例である。
【0014】
エアチューブ5は、一端部がエア供給器4のエア出入口に接続し、他端部が測長器1の後端側に設けられた接続部に接続する。そして、エアチューブ5は、エア供給器4と測長器1との間のエアの経路を形成する。なお、エア供給器4からエアチューブ5を介してエアが供給されると測長器1にエアが入り、エア供給が停止すると、測長器1内のエアが主にエア供給器4側に戻り、エア供給器4の電磁弁等を経由して大気開放される。
【0015】
[第1の実施の形態に係る測長器1の説明]
次に、第1の実施の形態の特徴的な構成である測長器1について、図2図4を用いて説明する。
図2は、第1の実施の形態が適用される測長器1の全体断面図であり、(a)はスピンドル13の最大突出の状態を示し、(b)はその部分拡大図である。なお、図2(a)および図2(b)を、単に図2という。測長器1の一部について既に説明しているが、図2を用いて測長器1の構成作用を改めて説明する。
図2に示す測長器1は、上述したように、筐体部50に対して移動可能に設けられる移動部10と、移動部10の変位量を測定する測定部30と、移動部10の後端側を収納する筐体部50と、を備える。また、測長器1は、移動部10を軸線方向に移動可能に保持する第1軸受61および第2軸受62と、移動部10を筐体部50から突出する方向(先端側)に付勢する付勢手段として機能する圧縮コイルばね63と、を備える。
【0016】
〔移動部10の説明〕
移動部10は、第1軸受61および第2軸受62に対して軸線方向に摺動する摺動軸11と、目盛が設けられて摺動軸11と一体的に移動するガラススケール12と、先端側に測定子14が設けられ摺動軸11とともに移動するスピンドル13と、摺動軸11およびスピンドル13の軸線方向における先端側の移動範囲を定めるストッパ材15と、を有する。
このスピンドル13は、測定対象物に先端が当接するものであり、具体的には、先端の測定子14を介して測定対象物に当接する。
スピンドル13および測定子14は、スピンドルの一例である。また、スピンドル13を先端側の開口558から移動可能に突出させる筐体部50、後述のステム53およびキャップ55は、筐体の一例である。
【0017】
摺動軸11は、軸線方向に長く延びる棒状の部材である。そして、摺動軸11は、軸線方向に沿って、筐体部50の後述するベース51に対して相対的に移動可能に設けられる。
また、摺動軸11は、後述する発光素子31からガラススケール12に進行する光を通す開口部111と、ガラススケール12を保持するスケールホルダ部112と、を有する。
開口部111の内側には、後述する発光素子31の先端側が入り込む。また、開口部111は、軸線方向に長く延びる長穴等によって形成され、発光素子31が入り込んだ状態にて摺動軸11の軸線方向の移動を可能にする。
【0018】
ガラススケール12は、光を透過可能であって、予め定められた格子目盛が描かれている。そして、ガラススケール12は、摺動軸11に保持されるとともに、後述する発光素子31および受光素子32とに挟まれる位置に設けられる。そして、ガラススケール12は、発光素子31から光が照射される。さらに、ガラススケール12の目盛は、受光素子32によって読取りが行われる。
【0019】
スピンドル13は、軸線方向に沿って長く延びる略円柱状の部材である。そして、スピンドル13は、後端側にて摺動軸11の先端側に固定される。すなわち、スピンドル13は、所謂片持ちの状態で設けられる。また、スピンドル13の測定子14は、略球状に形成される部分を有する。そして、測定子14は、スピンドル13において、測定対象物との当接箇所を形成する。
【0020】
ストッパ材15は、弾性を有し、リング状(環状)に形成される部材である。ストッパ材15には、例えばゴムなどの樹脂を材料とするOリングを用いることができる。そして、ストッパ材15は、スピンドル13の外面に形成された環状凹部131に嵌め込まれる。ストッパ材15は、止め輪16と共にスピンドル13の外周に保持される。止め輪16はストッパ材15の軸方向の移動を制限する。また、ストッパ材15は、筐体部50の内側にて、スピンドル13とともに軸線方向に移動可能に設けられる。
【0021】
さらに、スピンドル13は圧縮コイルばね63による付勢力およびエアチューブ5からのエアの圧力により先端側に移動するが、このスピンドル13の移動により、ストッパ材15が後述するキャップ55の内側端面554に当接した状態にて、スピンドル13が筐体部50に対して最も伸びた状態となり、これがスピンドル13の停止位置になる。
これにより、スピンドル13の最大突出時においては、エア供給器4(図1参照)からエアチューブ5を介して筐体部50の内部空間51sに供給されるエアの外部への放出が封止または抑制される。
より詳細には、スピンドル13が最も突出している状態では、ストッパ材15がキャップ55の内側端面554に当接し、後述のエア通路555を介し先端側の開口558から外部へのエア放出が封止または抑制され、スピンドル13が最も突出している状態から筐体部50の後端側に移動しストッパ材15が内側端面554から離れることで先端側の開口558からエアが外部に放出される。
すなわち、スピンドル13の最大突出時には、ストッパ材15が内側端面554に当接することで、内部空間51sから外部へ放出されるエアが完全封止され、または、放出されるエアの量が抑制される。
【0022】
なお、「スピンドル13の最大突出時」は、微視的には、ストッパ材15の弾性変形があり、幅のあるものである。より具体的には、後述するキャップ55の内側端面554にストッパ材15が当接し、エアや圧縮コイルばね63の付勢力によりストッパ材15が弾性変形しつつスピンドル13の最大突出が規定される。
このような「スピンドル13の最大突出時」は、スピンドル13の先端が測定対象物に当接していない状態が含まれる。さらには、「スピンドル13の最大突出時」は、測定対象物に当接しているもののスピンドル13が押し込まれていない状態や、測定対象物への当接によりストッパ材15の弾性変形状態の範囲内でスピンドル13が移動している状態も含まれる。
【0023】
ここで、圧縮コイルばね63は、エアチューブ5から筐体部50の内部空間51sにエアが供給されていない状態でも、スピンドル13を筐体部50から押し出す方向に付勢するものであり、付勢手段の一例である。なお、エアチューブ5からエアが供給された際には、圧縮コイルばね63による付勢力と筐体部50の内部空間51sに供給されたエアによる付勢力によって、スピンドル13は、押し出す方向に付勢される。
別の見方をすると、圧縮コイルばね63は、スピンドル13を筐体部50の先端側へ突出させる方向にスピンドル13を付勢するものであり、スピンドル13を最大突出時に筐体部50から最も突出させるものである。
また、ストッパ材15は、上述したように、スピンドル13の外周に保持されており、スピンドル13の移動に伴って移動するものである。また、ストッパ材15は、スピンドル13が筐体部50の先端側へ最も突出した際に筐体部50の先端側の開口558に連通した内部開口557を形成する内側端面554に当接するものであり、シール材の一例である。
【0024】
なお、第1の実施の形態では、圧縮コイルばね63による付勢力およびエアチューブ5からのエアの圧力により、スピンドル13の最大突出時にストッパ材15がキャップ55の内側端面554に当接する構成を採用するが、圧縮コイルばね63を備えない構成において、エアチューブ5からのエアの圧力だけで筐体部50から押し出す方向に付勢し、これにより、スピンドル13の最大突出時の当接状態を確保する例も考えられる。
【0025】
さらに、止め輪16は、圧縮コイルばね63による付勢力およびエアチューブ5からのエア圧に抗してスピンドル13が後端側に向けて移動した際に、後述するステム53の内側突出部532に当接しスピンドル13が筐体部50に対して最も縮んだ状態の停止位置を定める。
スピンドル13が筐体部50に対して最も伸びた状態から後端側に移動する場合、ストッパ材15がキャップ55の内側端面554に当接しなくなり、内部空間51sのエアがキャップ55とスピンドル13との間の空間から外部に放出される。
ストッパ材15およびキャップ55を含むエア放出を司る部分は、エア放出手段の一例である。
【0026】
〔測定部30の説明〕
図2に示すように、測定部30は、光を照射する発光素子31と、発光素子31が照射した光を受光する受光素子32と、を有する。測定部30は、筐体部50に保持されており、筐体部50に対して相対的な位置の変化はしない。
発光素子31には、LED(Light Emitting Diode)などを用いることができる。そして、発光素子31は、ガラススケール12に向けて予め定められた波長の光を照射する。
受光素子32は、ガラススケール12を間に挟んで、発光素子31に対向して設けられる。受光素子32は、フォトダイオードやイメージセンサなどのセンサICを有し、ガラススケール12を透過した透過光を読み取る。そして、受光素子32は、ガラススケール12を透過した光の光量変化に基づいて得られる、ガラススケール12の目盛の情報を検出する。
このように、測定部30は、測定対象物にスピンドル13の先端側を当接させスピンドル13の位置を検出するものであり、検出部の一例である。
【0027】
〔筐体部50の説明〕
図2に示すように、筐体部50は、各種部品が取り付けられるベース51と、スピンドル13の後端側を収納するステム53と、ステム53に取り付けられるキャップ55と、各種部品を覆う外装体59と、を有する。
【0028】
ベース51には、第1軸受61、第2軸受62、発光素子31の基板、外装体59など、移動部10が移動する際に相対的に移動しない部品が取り付けられる。また、ベース51は、略円筒状に形成され、内側にエア供給器4から供給されるエアが溜まる内部空間51sを形成する。そして、第1の実施の形態では、ベース51の内部空間51sには、摺動軸11の後端部(後端面)が臨む。
【0029】
(ステム53)
ステム53は、ベース51に固定される。また、ステム53は、中空状になっており、略円筒状に形成される。そして、ステム53は、半径方向の外側に向けて突出する外側突出部531と、半径方向の内側に向けて突出する内側突出部532と、先端側に設けられるキャップ保持部533と、を有する。
【0030】
外側突出部531は、第1の実施の形態では、ベース51の先端側の端部面に接触する。そして、外側突出部531は、ベース51に対するステム53の倒れを抑制する。
内側突出部532は、先端側において、後端側に向けて移動してきた止め輪16を受ける。
キャップ保持部533は、キャップ55との接続箇所を形成する。第1の実施の形態では、キャップ保持部533は、ねじ留め箇所を形成する。そして、キャップ保持部533は、キャップ55を保持する。
【0031】
(キャップ55)
図2に示すように、キャップ55は、略円筒状に形成された部材である。そして、キャップ55は、スピンドル13が貫通する空間を形成し内径差がある第1内周面551および第2内周面556と、第1内周面551と第2内周面556との内径差により境界を定めて形成される内側端面554と、内側端面554に形成され、筐体部50の先端側の開口558に連通した内部開口557と、を有する。
より詳細には、第1内周面551の内径および第2内周面556の内径は、スピンドル13の軸線方向への移動を可能とするために、共にスピンドル13の外周面で形成される外径よりも大きい。この第1内周面551の内径とスピンドル13の外周面で形成される外径との隙間によって、図2(b)に示すようなエア通路555が形成される。そして、第2内周面556の内径は第1内周面551の内径よりも拡径しており、第2内周面556の内径はスピンドル13の環状凹部131に嵌め込まれているストッパ材15の外径よりも大きいが、第1内周面551の内径はストッパ材15の外径よりも小さくなるように構成されている。このストッパ材15の外径よりも大きい第2内周面556と、ストッパ材15の外径よりも小さい第1内周面551との内径差により、内側端面554が画成される。
【0032】
そして、第1内周面551の内径がストッパ材15の外径よりも小さくなるように形成されていることから、図2に示すようにスピンドル13が先端側に移動してストッパ材15が内側端面554または内部開口557に当接することで、エア通路555が弾性を有するストッパ材15によって塞がれた状態となり、エア通路555を介したエアの放出が封止または抑制される。このように、ストッパ材15がエアの放出を抑制または封止するために、ストッパ材15を内側端面554に当接させるとほぼ同時に内部開口557に当接させ、エア通路555を直接的に塞いでいる。その一方で、ストッパ材15として例えばスカート状に湾曲したシール材や断面が逆U字を形成するシール材を用いるなど、他の形状のシール材を採用した場合には、ストッパ材15を内側端面554に当接させた状態で、内部開口557には直接、接触させることなく、エア通路555を塞ぐ、いわゆる間接的に塞ぐ場合もある。
なお、ストッパ材15による「塞がれた状態」といってもエアの流れを完全に食い止めるものではなく、ここでは「抑制される」と表現している。このストッパ材15が先端側に押し出され内側端面554に当接して停止した状態が、スピンドル13が最も突出している最大突出状態となる。
【0033】
なお、このように、キャップ55の第1内周面551の内径は、スピンドル13の外周面で形成される外径よりも大きく形成され、エア通路555が形成されている。言い換えると、キャップ55は、スピンドル13に対して予め定められた間隔を有して対向することでエア通路555を形成しており、原則としてスピンドル13には接触しない。この予め定められた間隔は、スピンドル13の組付け精度に基づき、スピンドル13が偏芯した場合でもスピンドル13とキャップ55の第1内周面551とが接触しないように定められているが、スピンドル13の軸線方向の動きに影響がなければ、接触しても構わない。
【0034】
(外装体59)
外装体59は、図2に示すように、略円筒状に形成され、少なくともベース51を覆うように設けられる。また、本実施形態では、外装体59は、エア供給器4(図1参照)から供給されたエアを筐体部50内に満たすための最も外側の境界となる。
【0035】
続いて、移動部10と筐体部50との間に設けられる部材について詳細に説明する。
〔第1軸受61および第2軸受62〕
第1軸受61および第2軸受62は、ベース51に保持される。そして、第1軸受61は、摺動軸11の後端側を摺動可能に支持する。また、第2軸受62は、摺動軸11の先端側を摺動可能に支持する。
【0036】
〔圧縮コイルばね63〕
圧縮コイルばね63は、ベース51に取り付けられた基部66に後端側が係合し、圧縮コイルばね63の先端側は、摺動軸11の後端側に形成された凹部11aに挿入される。そして、圧縮コイルばね63は、移動部10を先端側に向けて付勢する。すなわち、圧縮コイルばね63は、移動部10を筐体部50から押し出すように作用する。これにより、ストッパ材15がキャップ55の内側端面554に当接する状態が維持される。また、このような状態維持は、エア供給器4(図1参照)からエアチューブ5を介して筐体部50の内部空間51sに供給されるエアの圧力によっても、行われる。
【0037】
図3は、測長器1により測定される際の押し込み量と測定力との関係を示すグラフであり、横軸がスピンドル押し込み位置(mm)であり、縦軸が測定力(N)である。
図3に示すように、押し込み量と測定力とは一次関数の関係にある。同図に実線で示すエア供給なしの場合は、圧縮コイルばね63だけの付勢力の場合であり、押し込み量が多くなると、圧縮コイルばね63のばね定数に応じて測定力が高まっていく。
また、一点鎖線および破線で示すエア供給ありの場合には、圧縮コイルばね63による付勢力にエアによる付勢力が加わることから、測定力がエア供給なしの場合よりも高まる。一点鎖線で示す場合は0.05MPaで、破線で示す場合は0.10MPaであり、いずれの場合も、測長器1による測長に適した範囲内にある。
【0038】
[測長システム100および測長器1の作用]
次に、第1の実施の形態が適用される測長システム100および測長器1の作用を説明する。
図4は、第1の実施の形態が適用される測長器1の動作の説明図であり、(a)はスピンドル13の最大突出状態以外の状態を示し、(b)はその部分拡大図である。なお、図4(a)および図4(b)を、単に図4という。なお、図4では、最大突出状態以外の状態の一つとして、移動部10を構成するスピンドル13が筐体部50に収納された測長器1の状態を示している。
【0039】
測長器1は、図示しない保持具などに筐体部50が固定される。また、測長器1は、移動部10の軸線方向の先端側を下にして、測定子14が最下端にて測定対象物と接触するように配置される。
測長器1における測長に際し、測長システム100では、エア供給器4による測長器1へのエア供給が開始され、表示器2を稼働させる。測長器1による測長の開始前で、スピンドル13の測定子14が測定対象物に接触していない状態では、圧縮コイルばね63の付勢力およびエアによる付勢力によってストッパ材15がキャップ55の内側端面554に当接しており、エア通路555からのエアの放出が封止または抑制された状態にある。測長器1のスピンドル13の測定子14が測定対象物に接触し、スピンドル13が筐体部50に入り込むと、ストッパ材15が内側端面554から離れ、エア通路555がストッパ材15の封止から開放され、エア供給器4により筐体部50の内部に供給されているエアが、キャップ55の先端側から放出され、エアが吹き出される。このように、スピンドル13が筐体部50に入り込んでいる状態では、キャップ55の先端からエアを吹き出すことで、キャップ55の先端からの異物侵入を抑制している。
【0040】
このようにして測長器1にて測長が開始されると、測定対象物の高さ方向の位置に応じて、移動部10が上下動(軸線方向に摺動)し、測定部30に対して移動する。移動部10(スピンドル13)には、圧縮コイルばね63のばね力および供給されたエアの力により、先端側に移動する力が常時、作用している。これによって、測長器1では、測定子14と測定対象物との接触が維持される。なお、ストッパ材15はスピンドル13とともに移動するが、キャップ55の第2内周面556の内径など、ストッパ材15の移動経路にて、ストッパ材15と対峙する筐体部50の内径がストッパ材15の外径よりも充分に大きいことから、ストッパ材15の移動がスピンドル13の摺動抵抗を高めることはない。
【0041】
そして、測長器1では、測定部30に対する移動部10の移動によって、受光素子32により読み取られるガラススケール12の目盛が変化する。そして、受光素子32によって読み取られた目盛の情報は、ケーブル3を経由して表示器2に出力される。表示器2では、各種演算がなされ、例えば測定対象物が予め設定された合否判定/ランク判定の範囲内か否かの表示や、測定対象物の寸法の計測値の表示などが行なわれる。
なお、本実施の形態において「測定」とは、スピンドル13の位置の変動に伴う変化を読み取ることをいい、単にスイッチを入れただけのスタンバイの状態などは含まれない。したがって、「測定前」とは、スピンドル13の位置が変動する前をいう。
【0042】
このように、本実施の形態の測長器1では、測定時に、スピンドル13が最大突出時以外で後端側に移動しているとき、筐体部50の内部空間51sに供給されたエアが先端側から吹き出される。これにより、筐体部50の外部の空気が筐体部50の内部空間51sに侵入することを抑制でき、筐体部50の内部空間51sへの異物侵入が抑制される。
一般には、スピンドル13が筐体部50に対して軸線方向に移動することに伴って筐体部50の内外圧力差が生じることで、測定環境の外部空気が内部空間51sに侵入し易くなる。測定環境が粉塵の存在を抑制した環境室などであれば、外部空気の侵入による悪影響は少ないが、例えば、測定対象物の測定を行なう場所が、油分などを取り扱う工場内などの環境下にあると、その油分を含む空気や、油分そのもの、粉塵などが筐体部50の内部空間51sに侵入してしまう。この油分を含む空気や粉塵などは、測定部30による計測精度の低下を招き、製品寿命の短命化につながる。また、例えば機械加工の現場で測長器1を用いた場合には、金属の切り粉が内部空間51sに侵入することで、計測精度の低下や製品寿命の低下の懸念がある。
しかしながら、本実施の形態によれば、少なくとも測長器1を稼働させスピンドル13が移動している際には、筐体部50の内部に供給されたエアがキャップ55の先端から放出されることで、筐体部50の内部への異物侵入を有効に抑制できる。
【0043】
また、エアが外部に放出される場合、スピンドル13の外周面に吹きかかることから、外周面に付着している油分や切り粉等の異物を除去ないし減らすことが可能である。すなわち、スピンドル13が筐体部50の後端側に移動するに伴い、エアによりスピンドル13の外周面をエアブローできることから、筐体部50の内部空間51sを、よりクリーンな状態に保つことができる。
【0044】
なお、例えばストッパ材15による封止力を弱めるように設計したり、筐体部50の内部へのエア供給量を増したりすること等により、スピンドル13が最も突出した状態であっても、キャップ55の先端からエアを放出させることも可能である。このように構成すれば、エア供給器4により測長器1へエアが供給されている間、エアが測長器1の先端から常時、放出されることとなり、測長器1の内部を、よりクリーンな状態に維持することが可能である。ここで、ストッパ材15による封止力を弱めるためには、例えば、内側端面554への当接を弱めたり、当接していても隙間を生じさせたりするなど、ストッパ材15の選定やキャップ55の寸法設計を検討すればよい。
【0045】
また、本実施の形態では、弾性を有するリング状のストッパ材15をスピンドル13の環状凹部131に嵌め込み、ストッパ材15がキャップ55の内側端面554に当接すると、先端側の開口558から外部へのエア放出が封止または抑制されるようにしているが、これに限られるものではない。例えば、リング状のストッパ材15をキャップ55の内側端面554に設け、スピンドル13は、ストッパ材15に当接する径大部(例えば、フランジや、スピンドルの軸径の違う箇所など)を持ち、スピンドル13の径大部がキャップ55のストッパ材15に当接すると、先端側の開口558から外部へのエア放出が封止または抑制されるようにする態様もある。また、ストッパ材15を省略し、スピンドル13の径大部がキャップ55の内側端面554に当接することで、エア放出が封止または抑制されるようにしても良い。さらに、径大部と当接する内側端面554自体が弾性体であるようにしても良い。
【0046】
[第2の実施の形態に係る測長器1の説明]
次に、第2の実施の形態に係る測長器1について、図5図6を用いて説明する。測長器1は、測長システム100の一部を構成するものである。
図5は、第2の実施の形態が適用される測長器1の全体断面図であり、図2に対応するものである。図6は、第2の実施の形態が適用される移動部10の部分拡大図である。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態の場合と基本的な構成が共通することから、共通する構成についての説明を省略する。この第2の実施の形態は、筐体部50の先端側に、スピンドル13の摺動抵抗を低くしつつシール材のシール性能を維持するための揺動機構が加わっている。
【0047】
図5および図6に示すように、第2の実施の形態での測長器1にて、揺動機構の一つとしてシールキャップ57(シール保持部の一例)がキャップ55に保持されるが、この第2の実施の形態では、キャップ55は、倣い用シール材64(弾性部の一例)を介してシールキャップ57を緩く保持する。そして、このシールキャップ57の内側に、スピンドル13と摺動してスピンドル13と筐体部50との間をシールする軸面シール材65(軸面シール部の一例)を備えている。倣い用シール材64は、移動部10のスピンドル13の軸芯を筐体部50の軸芯に倣わせる機能を有する。
図6に示すように、第2の実施の形態に係るキャップ55は、第1の実施の形態と同様に、第1内周面551、内側端面554および第2内周面556を有するが、それに加えて、倣い用シール材64を保持する倣い用シール保持部552と、シールキャップ57との接続箇所を形成する接続部553と、を有する。
【0048】
倣い用シール保持部552は、半径方向外側を向いて開口する環状の凹部を有する。そして、倣い用シール保持部552は、倣い用シール材64が嵌まり込む。また、倣い用シール保持部552は、倣い用シール材64を保持するとともに、倣い用シール材64を介してシールキャップ57を保持する。
【0049】
接続部553は、シールキャップ57との接続箇所を形成する。第2の実施の形態では、接続部553は、キャップ55とシールキャップ57とをねじ接続させており、接続部553には、雄ねじが形成される。
【0050】
(シールキャップ57)
シールキャップ57は、略円筒状に形成され、先端側に開口570を有する部材である。また、シールキャップ57は、軸面シール材65を保持する軸面シール保持部571と、倣い用シール材64の半径方向外側に対向する倣い用シール対向部572と、キャップ55との接続箇所を形成するキャップ接続部573と、を有する。
【0051】
軸面シール保持部571は、半径方向内側を向いて開口する環状の凹部を有する。そして、軸面シール保持部571には、軸面シール材65が挿入される。
また、第2の実施の形態では、スピンドル13の外面と軸面シール保持部571の内面との間隔H2は、軸面シール材65の自然状態の断面の径D2に対し、90%以上であって100%以下となるように設定している。
【0052】
倣い用シール対向部572は、半径方向内側を向いて開口する環状の凹部を有する。また、倣い用シール対向部572は、倣い用シール保持部552に対向し、倣い用シール材64が挿入される領域(以下、倣い用シール材挿入部55s)を形成する。そして、倣い用シール材挿入部55sには、倣い用シール材64が挿入される。これによって、シールキャップ57は、弾性部材である倣い用シール材64を介してキャップ55に保持された状態になる。
【0053】
さらに、倣い用シール保持部552の外面と倣い用シール対向部572の内面との間隔H1(倣い用シール材挿入部55sの半径方向の幅)は、倣い用シール材64の自然状態の断面の径D1に対し、90%未満となるように設定している。
【0054】
キャップ接続部573は、キャップ55とねじ接続をする箇所を形成しており、キャップ接続部573は、雌ねじが形成される。
そして、第2の実施の形態では、キャップ接続部573は、接続部553に対して密着するのではなく、接続部553に隙間57gを有して接続する。この隙間57gは、キャップ55とシールキャップ57とのねじ接続を緩くはめ合わせることで形成される。但し、他の態様を用いて、予め定められた直線的な間隙を隙間57gとして形成することもできる。
さらに、シールキャップ57とキャップ55とは、倣い用シール材挿入部55sに設けられる倣い用シール材64を介して接続している。そして、シールキャップ57とキャップ55とは、緩く嵌め合った状態で接続する。これによって、シールキャップ57は、倣い用シール材64を基点にして、キャップ55に対して傾くように変位することが可能になっている。
【0055】
なお、シールキャップ57とキャップ55とは、緩く嵌め合った状態で接続されていれば良く、第2の実施の形態のねじ接続に限定されるものではない。例えば、シールキャップ57とキャップ55とは、互いに外れないように軸線方向に掛かり合い、シールキャップ57の変位(傾き)が許容されていれば良い。さらに、シールキャップ57とキャップ55とは、倣い用シール材64のみで掛かり合うように構成されていても構わない。
【0056】
〔倣い用シール材64〕
倣い用シール材64は、弾性を有し、リング状(環状)に形成される部材である。倣い用シール材64には、例えばゴムなどの樹脂を材料とするOリングを用いることができる。そして、図6に示すように、倣い用シール材64は、半径方向内側にてキャップ55に接触し、半径方向外側にてシールキャップ57に接触する。より具体的には、倣い用シール材64は、シールキャップ57が軸面シール材65と当接する箇所よりも後端側にて筐体の構成部材であるキャップ55とシールキャップ57との間に設けられる。
【0057】
また、倣い用シール材挿入部55sに挿入された状態における、倣い用シール材64の自然状態の断面の径D1に対する変形率の割合C1は、10%よりも大きく設定されている。
【0058】
そして、倣い用シール材64は、シールキャップ57を弾性的に保持する。これによって、第2の実施の形態の測長器1においては、シールキャップ57(筐体部50)が、軸面シール材65を弾性的に保持する状態を形成する。
【0059】
〔軸面シール材65〕
軸面シール材65は、弾性を有し、環状に形成される部材である。軸面シール材65には、例えばゴムなどの樹脂を材料とするOリングを用いることができる。軸面シール材65は、半径方向内側にてスピンドル13に接触し、半径方向外側にてシールキャップ57に接触し、スピンドル13と筐体部50との間をシールする。そして、軸面シール材65は、内部空間51sにエアを供給して移動部10を進出させる際に、開口570を介したエアの流出を制限する。また、軸面シール材65は、開口570を介して内部空間51sにエアが流入しようとする際にエアの流入を制限する。
なお、第2の実施の形態の軸面シール材65による封止は、開口570を介したエアの出入りを必ずしも完全に無くすのものではない。
【0060】
そして、軸面シール材65が軸面シール保持部571に挿入された状態における、軸面シール材65の自然状態の断面の径D2に対する変形率の割合C2は、0%以上であって10%以下に設定されている。これによって、軸面シール材65は、筐体部50の内部空間51sへの開口570を介したエアの出入を制限する。さらに、第2の実施の形態の軸面シール材65は、スピンドル13の軸線方向における摺動を許容する。
【0061】
ここで、第2の実施の形態では、軸面シール材65の変形率の割合C2は、スピンドルと筐体との間に設けられる従来のシール材(以下、通常シール材)の変形率の割合よりも小さくなっている。一般的には、シール性能を図るために、取り付けられた状態における通常シール材の自然状態の断面の径に対する変形率の割合は、例えば10%よりも大きい。これに対して、第2の実施の形態の軸面シール材65は、通常シール材と比較して変形率が小さくなっており、スピンドル13に対する摺動抵抗を通常シール材を用いる場合よりも低減している。
【0062】
そして、第2の実施の形態の測長器1において、倣い用シール材64は、スピンドル13に接触するものではなく、スピンドル13の摺動性に影響を及ぼさない。従って、変形率の観点においては、倣い用シール材64の変形率の割合C1は、通常シール材と同様に設定している。従って、第2の実施の形態の測長器1において、軸面シール材65の自然状態の断面の径D2に対する変形率の割合C2は、倣い用シール材64の自然状態の断面の径D1に対する変形率の割合C1よりも小さく設定される(割合C1>割合C2)。
【0063】
ここで、第2の実施の形態の測長器1において、スピンドル13が偏芯する可能性がある。この場合であっても、軸面シール材65を保持するシールキャップ57が、倣い用シール材64を介してキャップ55に対して緩く嵌め合っている。そのため、シールキャップ57は、倣い用シール材64を基点にしてキャップ55に対して傾くことができる。その結果、シールキャップ57および軸面シール材65がスピンドル13に倣って位置することができる。すなわち、第2の実施の形態の測長器1では、シールキャップ57および軸面シール材65による所謂「芯出し」が自動的に行われる。これによって、軸面シール材65は、スピンドル13およびシールキャップ57にそれぞれ接触した状態を維持し、移動部10と筐体部50との間がシールされる。
【0064】
また、上述したとおり、軸面シール材65をスピンドル13の位置に合わせることが可能なため、第2の実施の形態の測長器1では、例えばスピンドル13に対して軸面シール材65を強く締め付ける必要がなくなる。このため、第2の実施の形態の測長器1では、スピンドル13が軸面シール材65から受ける摺動抵抗を低く維持することができる。
【0065】
この第2の実施形態によれば、軸面シール材65によって、筐体部50の内部空間51sに供給されたエアの漏れを抑制することができる。測長器1の使用環境によっては、測長器1の先端からのエアの吹き出しが好ましくない場合があるが、この第2の実施形態によれば、測長器1の先端からのエアの吹き出しを無くすことや、エアの吹き出しを軽減することができる。その一方で、エア供給器4からエアチューブ5を介して供給されたエアが筐体部50の内部空間51sに充填されていることで、筐体部50の内部空間51sへの異物侵入が抑制され、スピンドル13の上下動に伴って筐体部50の内外圧力差が生じることに起因する異物侵入が軽減される。また、この第2の実施の形態によれば、エアが供給されていないときにスピンドル13の上下動があっても、筐体部50の内外圧力差に起因する内部空間51sへの異物侵入が軸面シール材65によって軽減される。
【0066】
なお、第2の実施の形態では、揺動機構として、倣い用シール材64および軸面シール材65を用いているが、これに限られるものではない。例えば、倣い用シール材64および軸面シール材65の機能を一体とした弾性部材を用い、これを、例えば筒状のシール保持部材によって保持する、などの変形例がある。かかる変形例では、一体とした弾性部材に、軸面シール材65の機能を有する軸面シール部と、この軸面シール部の後端側に倣い用シール材64の機能を有する弾性部と、その間を接続する接続部とを備え、筒状に形成する。そして、この筒状の弾性部材の例えば接続部の外周を筒状のシール保持部材によって保持すればよい。
【0067】
また、第2の実施の形態において、筐体部50が軸面シール材65を弾性的に保持する構成として倣い用シール材64を用いたが、これに限定されない。例えば、倣い用シール材64に代えて、ばねを用いたり、磁石の反発力を用いたりしても良い。さらに、例えば軸面シール材65を保持するシールキャップ57自体をゴムなどの弾性材料によって構成しても良い。
【符号の説明】
【0068】
1…測長器、2…表示器、4…エア供給器、13…スピンドル、14…測定子、15…ストッパ材、30…測定部、50…筐体部、51s…内部空間、53…ステム、55…キャップ、63…圧縮コイルばね、100…測長システム、554…内側端面、557…内部開口、558…先端側の開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6