特許第6985870号(P6985870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985870
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】レーザノズルの清掃方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20211213BHJP
【FI】
   B23K26/70
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-176344(P2017-176344)
(22)【出願日】2017年9月14日
(65)【公開番号】特開2019-51531(P2019-51531A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】浅見 淳一
(72)【発明者】
【氏名】岩田 和浩
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−076137(JP,A)
【文献】 特開2006−142437(JP,A)
【文献】 特開2016−034650(JP,A)
【文献】 特開2016−112601(JP,A)
【文献】 特開2016−112593(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0112668(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
B23K 9/00、9/007 − 9/013、9/04、9/14 − 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在な回転ブラシの偏心位置に、3つの軸の方向へ移動自在なレーザ加工ヘッドに装着したレーザノズルを位置決めし、
前記回転ブラシの回転を相対的に速くするように、前記レーザノズルを前記回転ブラシの中心軸と同じ回転軸回りに前記回転ブラシの回転方向とは逆方向に旋回させ、
記回転ブラシの回転と前記レーザノズルの旋回とが相俟って前記レーザノズルの少なくとも先端面を清掃する
ーザノズルの清掃方法。
【請求項2】
記回転ブラシの回転方向と前記レーザノズルの旋回方向を、予め設定された時間間隔逆方向に切り換える請求項1に記載のレーザノズルの清掃方法。
【請求項3】
前記レーザノズルを上下動させて、前記レーザノズルを前記回転ブラシに対して接近と離隔とを繰り返す請求項1または2に記載のレーザノズルの清掃方法。
【請求項4】
前記回転ブラシの回転の増速及び減速をパルス的に行う請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザノズルの清掃方法。
【請求項5】
ーザノズルを清掃するための回転自在な回転ブラシと
前記回転ブラシを回転させるモータと
3つの軸の方向へ移動自在なレーザ加工ヘッドに装着したレーザノズルを前記回転ブラシの偏心位置に位置決めした状態で、前記回転ブラシの回転を相対的に速くするように、前記回転ブラシの中心軸と同じ回転軸回りに前記回転ブラシの回転方向とは逆方向に旋回させる旋回手段と、
記モータの正回転と逆回転とを予め設定された時間間隔制御するモータ回転制御手段と、
を備え、
前記モータ回転制御手段が正回転と逆回転とを切り換えて前記回転ブラシの正回転と逆回転とを切り換えるごとに、前記旋回手段は前記レーザノズルの旋回方向を切り換える
ーザノズルの清掃装置。
【請求項6】
記回転ブラシにおけるブラシは、高低差を有するように、環状の領域に植設された高さ寸法の大きな長繊維束と高さ寸法の小さな短繊維束とを含む請求項5に記載のレーザノズルの清掃装置。
【請求項7】
記回転ブラシは、レーザ加工装置に備えたベースフレーム上に備えたケーシング内に格納されており、かつ前記ベースフレーム上に備えた加工テーブルの加工面より高位置において前記加工テーブル上に出入可能に備えられている請求項5または6に記載のレーザノズルの清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工機におけるレーザ加工ヘッドに備えられたレーザノズルの清掃方法及び装置に関する。さらに詳細には、レーザノズルの清掃をより早く効果的に行うことができる清掃方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工機によって、例えばワークの切断加工や溶接等の各種のレーザ加工を行うと、レーザ加工機におけるレーザ加工ヘッドに備えたレーザノズルに、スパッタやヒューム等の粉塵が付着する。そして、粉塵等が付着すると、加工不良を生じることがある。そこで、レーザノズルの清掃を行うことが行われている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−142437号公報
【特許文献2】特開2006−175580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の構成においては、遊星歯車機構によって公転、自転されるブラシに対して、レーザノズルを公転方向に旋回しつつレーザノズルの清掃を行う構成である。したがって、遊星歯車機構を構成することにより、構成が複雑化する、という問題がある。また、ブラシの公転方向とレーザノズルの旋回方向が同方向の回転方向であるので、清掃効率が悪い、という問題がある。
【0005】
特許文献2に記載の構成は、総形砥石によって構成された加工工具における凹状の加工面をノズルの外形形状に対応して形成してある。したがって、この構成においては、ノズルの外形形状が変わると、ノズル外形形状に対応して新たに加工工具を用意する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転自在な回転ブラシの偏心位置に、3つの軸の方向へ移動自在なレーザ加工ヘッドに装着したレーザノズルを位置決めし、前記回転ブラシの回転を相対的に速くするように、前記レーザノズルを前記回転ブラシの中心軸と同じ回転軸回りに前記回転ブラシの回転方向とは逆方向に旋回させ、前記回転ブラシの回転と前記レーザノズルの旋回とが相俟って前記レーザノズルの少なくとも先端面を清掃するレーザノズルの清掃方法を提供する。
【0007】
上記のレーザノズルの清掃方法において、前記回転ブラシの回転方向と前記レーザノズルの旋回方向を、予め設定された時間間隔逆方向に切り換えるのがよい
【0008】
上記のレーザノズルの清掃方法において、前記レーザノズルを上下動させて、前記レーザノズルを前記回転ブラシに対して接近と離隔とを繰り返すのがよい
【0009】
上記のレーザノズルの清掃方法において、前記回転ブラシの回転の増速及び減速をパルス的に行うのがよい
【0010】
本発明は、レーザノズルを清掃するための回転自在な回転ブラシと、前記回転ブラシを回転させるモータと、3つの軸の方向へ移動自在なレーザ加工ヘッドに装着したレーザノズルを前記回転ブラシの偏心位置に位置決めした状態で、前記回転ブラシの回転を相対的に速くするように、前記回転ブラシの中心軸と同じ回転軸回りに前記回転ブラシの回転方向とは逆方向に旋回させる旋回手段と、前記モータの正回転と逆回転とを予め設定された時間間隔制御するモータ回転制御手段とを備え、前記モータ回転制御手段が正回転と逆回転とを切り換えて前記回転ブラシの正回転と逆回転とを切り換えるごとに、前記旋回手段は前記レーザノズルの旋回方向を切り換えるレーザノズルの清掃装置を提供する
【0011】
上記のレーザノズルの清掃装置において、記回転ブラシにおけるブラシは、高低差を有するように、環状の領域に植設された高さ寸法の大きな長繊維束と高さ寸法の小さな短繊維束とを含むのがよい
【0012】
上記のレーザノズルの清掃装置において、前記回転ブラシは、レーザ加工装置に備えたベースフレーム上に備えたケーシング内に格納されており、かつ前記ベースフレーム上に備えた加工テーブルの加工面より高位置において前記加工テーブル上に出入可能に備えられているのがよい
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回転ブラシの回転方向とレーザノズルの旋回方向とを逆方向にして、回転ブラシの回転とレーザノズルの旋回とが相俟ってレーザノズルの清掃を行うものである。したがって、レーザノズルの清掃を短時間で効果的に行い得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る清掃装置を備えたレーザ加工装置の斜視説明図である。
図2】レーザ加工ヘッドと清掃装置との関係を示す斜視説明図である。
図3】清掃装置を格納自在なケーシングの斜視説明図である。
図4】本発明の実施形態に係る清掃装置の平面説明図である。
図5図5における主要部分の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照するに、図1にはレーザ加工装置1が示してある。レーザ加工装置1の全体的構成は既によく知られているが、理解を容易にするために、全体的構成について概略的に説明する。
【0016】
レーザ加工装置1は、ベースフレーム3を備えており、このベースフレーム3の左右方向(X軸方向)の両側には、前後方向(Z軸方向)に長いガイドレール5が備えられている。そして、左右のガイドレール5には、門型のキャリッジ7における左右両側のコラム9が移動自在に支持されている。前記キャリッジ7における上部ビーム11は、ベースフレーム3上に備えた加工テーブル13の上方を左右方向に横切って備えられている。前記上部ビーム11には、レーザ加工ヘッド15が左右方向へ移動自在に支承されている。そして、レーザ加工ヘッド15には、レーザノズル17が上下動自在に備えられている。
【0017】
上記構成により、レーザノズル17をX,Y,Z軸方向へ移動する。そして、加工テーブル13上水平に載置した板状のワーク(図示省略)に対してレーザノズル17からレーザ光を照射すると共に、レーザノズル17からアシストガスをワークの加工位置へ噴出することにより、ワークのレーザ加工が行われる。
【0018】
上述のように、ワークのレーザ加工を行うと、レーザ加工位置から飛散したスパッタやヒューム等の粉塵等がレーザノズル17に付着、加工不良を生じ易い。したがって、レーザ加工装置1には、レーザノズル17を清掃する清掃装置19及び交換する複数のレーザノズル17を出入自在に格納したケーシング21が備えられている。
【0019】
より詳細には、ケーシング21は、図1に示すように、レーザ加工ヘッド15と干渉しないように、レーザ加工ヘッド1の移動領域外において、ベースフレーム3上に備えられている。ケーシング21は、加工テーブル13側が開口した箱状に形成してある。そして、ケーシング21は、加工テーブル13がワークを支持するワーク支持部よりも高位置に備えられている。ケーシング21には、図3に示すように、開口部23から出入自在なスライダ25が備えられている。そして、開口部23には、開口部23を閉鎖自在な蓋部材27が備えられている。
【0020】
部材27は、例えばトーションスプリング等の付勢手段(図示省略)によって、開口部23を閉じる方向へ常に付勢されている。したがって、蓋部材27は、スライダ25がケーシング21内に格納されると、開口部23を自動的に閉鎖する。そして、スライダ2が、流体圧シリンダ(図示省略)等によって突出する方向へ作動されると、上記の付勢手段に抗してスライダ25はケーシング21から突出作動される。
【0021】
既に理解されるように、前記スライダ25がケーシング21内に格納されると、ケーシング21の開口部23は、蓋部材27によって閉鎖されるものである。したがって、格納されたレーザノズル17及び清掃装置19は、レーザ加工時に発生した粉塵から保護されるものである。
【0022】
前記清掃装置19は、レーザ加工ヘッド15に備えたレーザノズル17を清掃するために、レーザ加工ヘッド15を移動位置決め自在な領域内へ位置決め自在に備えられている。
【0023】
すなわち、前記清掃装置19は、前記スライダ25上に備えられている。そして、図4,5に概略的に示すように、前記スライダ25には、回転ブラシ29を回転自在に支持する支持ボックス31が備えられている。この支持ボックス31は、前記スライダ25上に備えられた下部支持部材31Aと、この下部支持部材31A上に支持された上部支持部材31Bとを備えている。上記下部支持部材31Aと上部支持部材31Bは、複数のボルト等のごとき固定具33によって着脱可能かつ一体的に固定してある。
【0024】
部支持部材31Aと上部支持部材31Bとの間には空隙35が形成されている。そして、下部支持部材31A、上部支持部材31Bには、上下方向の回転軸37が軸受39を介して回転自在に支持されている。上部支持部材31Bから上方向に突出した回転軸37の上端部には円板状のブラシホルダ41がネジ等の取付具43によって着脱可能かつ一体的に取付けられている。
【0025】
そして、前記ブラシホルダ41の上面に形成した円形状の取付凹部45には、円板状のブラシベース47がネジ等の取付具49によって着脱可能かつ一体的に取付けてある。前記ブラシベース47の上面には、ブラシ51が備えられている。より詳細には、前記ブラシ51は、繊維を束ねた複数の繊維束53を備えている。上記繊維束53において高さ寸法の大きな長繊維束53Aは、ブラシベース47の外周付近に円形状に配置して植設してある。そして、高さ寸法の小さな短繊維束53Bは、長繊維束53Aによって囲繞された領域の内側に配置して植設してある。
【0026】
前記回転ブラシ29を回転するために、前記回転軸37にはプーリ55が備えられている。より詳細には、前記空隙35の部分において、回転軸37には前記プーリ55が取付けてある。そして、前記支持ボックス31から離隔して前記スライダ25には、前記回転ブラシ29を正回転、逆回転するためのモータ57が備えられている。すなわち、モータ57に備えた駆動プーリ59と前記プーリ55には、例えばタイミングベルトなどのごときエンドレスのベルト61が掛回してある。
【0027】
したがって、前記モータ57を正回転駆動、逆回転駆動することにより、前記回転ブラシ29を正回転、逆回転することができるものである。
【0028】
以上の構成において、モータ57によって回転ブラシ29を、図4に示す矢印A方向(時計回り方向)に回転した状態にあるとき、レーザ加工機におけるレーザ加工ヘッド15を回転ブラシ29の上方に位置決めする。この際、レーザノズル17を回転ブラシ29の中心位置から偏心した位置に位置決めする。そして、レーザ加工ヘッド15を下降することにより、レーザ加工ヘッド15に備えたレーザノズル17(図1参照)の先端部(下端部)を、回転ブラシ29における繊維束53内に没入する。したがって、レーザノズル17の先端面(下端面)は短繊維束53Bの先端部に当接する。そして、レーザノズル17の外周面は長繊維束53Aに接触する。
【0029】
上述のように、レーザ加工ヘッド15を下降して、レーザノズル17を回転ブラシ29の繊維束53内に没入した状態において、レーザ加工ヘッド15を、矢印Aの反対方向(矢印B方向)に旋回する。この旋回は回転ブラシ29の中心位置から偏心した位置において、回転ブラシ29の中心軸と同じ回転軸回りをレーザ加工ヘッド15が回転するものである。この際、レーザノズル17の先端面は短繊維束53Bに接触し、レーザノズル17の外周面は長繊維束53Aに接触した状態にある。
【0030】
したがって、回転ブラシ29の矢印A方向への回転と、レーザ加工ヘッド15の矢印Aの反対方向(矢印B方向)への旋回とが相俟って、レーザノズル17に対する回転ブラシ29の相対的な回転が速くなる。よって、レーザノズル17に付着したスパッタやヒューム等の粉塵の除去が短時間で効果的に行われるものである。
【0031】
ところで、モータ57の回転は、モータ57の回転を制御するためのモータ回転制御手段63の制御の下に、予め設定された時間間隔正回転と逆回転とを繰り返すことが望ましい。この場合、回転ブラシ29の回転方向を切換えるごと、レーザ加工ヘッド15の旋回方向も切換える。
【0032】
上述のように、回転ブラシ29の回転方向とレーザ加工ヘッド15の旋回方向とを切換えることにより、レーザノズル17に対する清掃方向が切り換わることとなり、レーザノズル17に付着した粉塵等の除去を効果的に行い得る。
【0033】
前述のように、回転ブラシ29の回転方向とレーザノズル17の旋回方向とを逆方向にして、レーザノズル17の清掃を行うとき、レーザ加工ヘッド15を上下動して、レーザノズル17を回転ブラシ29に対して接近または離隔する方向(上下方向)へ動作して、回転ブラシ29に対するレーザノズル17の当接干渉を繰り返すことが望ましい。このように、レーザノズル17を上下動することにより、回転ブラシ29における短繊維束53Bにおける一部の繊維がレーザノズル17におけるノズル口内に出入することとなり、そのノズル口の内周面の清掃が行われることになる。
【0034】
前記モータ57によって回転ブラシ29を回転するとき、前記モータ回転制御手段63の制御の下に、モータ57の回転を矩形パルス的に増速、減速することが望ましいものである。上述のように、モータ57の回転を矩形パルス的に増速、減速することにより、回転方向に振動を付与することとなり、モータ57の回転が矩形パルスに対応して急激に増速、減速されることになる。したがって、レーザノズル17に付着した、例えばスパッタ等を回転ブラシ29における繊維束53によって打圧する態様となり、強固に付着した粉塵の除去を効果的に行い得るものである。
【0035】
また、回転ブラシ29において環状に植設した繊維束53に、ブラシベース47の周方向に適宜間隔高低差を備えることが望ましい。この場合、回転ブラシ29の回転方向に繊維束53が高低差を有することになる。したがって、回転ブラシ29がレーザノズル17に対して接触する接触圧に強弱を生じることになる。よって、振動を付与して清掃することになる。
【符号の説明】
【0036】
17 レーザノズル
19 清掃装置
29 回転ブラシ
37 回転軸
41 ブラシホルダ
47 ブラシベース
51 ブラシ
53 繊維束
53A 長繊維束
53B 短繊維束
57 モータ
63 モータ回転制御手段
図1
図2
図3
図4
図5