(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の床材の構成を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の床材1の一実施態様を示す断面概略図であり、図中、2は表面強化層、3は透明樹脂層、4は印刷層、5は非発泡層、6は補強層、7は発泡層、8は不織布層を、それぞれ示している。すなわち、
図1に示した床材1では、床材1を構成する積層構造において、下層側から上層側に向かって、発泡層7、補強層6、非発泡層5、透明樹脂層3、及び表面強化層2が、この順に含んで積層されたものである。なお、
図1に示した印刷層4及び不織布層8は、必要によって配置される層である。
【0019】
本発明の床材においては、耐摩耗性、耐汚染性、耐クラック性、寸法安定性等の特性を満足させるために、上記表面強化層及び補強層の構成を規定するが、以下では、説明の便宜上、下層側にある層から上層側にある層の順で説明する。また、
図1に示した各層の符号は省略することがある。
【0020】
(発泡層)
発泡層は、床材に耐衝撃性(衝撃吸収性)を付与するために配置されるものである。この発泡層の具体的構成としては、例えば重合度が1000〜1500程度のペーストポリ塩化ビニル(以下、「ペーストPVC」と記載することがある)を主体とし、これにブレンドポリ塩化ビニル(以下、「ブレンドPVC」と記載することがある)を配合し、更に発泡剤を配合することによって構成される。
【0021】
上記のような発泡剤を配合することによって、発泡層内に多数の独立気泡を形成させ、床材の衝撃吸収性を高める。このとき用いる発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゼンスルホニルホドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等の熱分解型有機発泡剤を挙げることができる。
【0022】
発泡剤の含有量は、ペーストPVC100質量部に対して0.5〜5質量部程度とすることが好ましく、より好ましくは0.8〜4質量部程度である。
【0023】
発泡層を配置することによって上記の効果を発揮させるためには、発泡層における発泡倍率は2.5〜5程度であることが好ましい。発泡層の厚みは0.5〜10mm程度であることが好ましく、より好ましくは1〜5mm程度である。
【0024】
なお、耐衝撃性とは、床材のクッション性を示す特性であり、例えば、JIS A 6519の「床の硬さ試験」に準じて測定した最大加速度(G値)で評価される。
【0025】
発泡層には、必要によって可塑剤や充填剤(強化剤)を含有させても良い。発泡層に可塑剤や充填剤を含有させることによって発泡層の柔軟性及び強度を高めて耐衝撃性を更に改善することができる。
【0026】
こうした効果を発揮させるためには、可塑剤の含有量は、ペーストPVCとブレンドPVCの合計100質量部に対して40〜80質量部程度であることが好ましく、より好ましくは45〜75質量部程度である。充填剤を含有する場合の含有量は、ペーストPVCとブレンドPVCの合計100質量部に対して20〜70質量部とすることが好ましく、より好ましくは20〜50質量部程度である。
【0027】
本発明で用いることのできる可塑剤としては、例えば、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸イソヘプチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシルのようなフタル酸エステル系可塑剤、トリ−2−エチルヘキシルトリメリット酸のようなトリメリット酸エステル系可塑剤、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシルのようなニ塩基酸エステル系可塑剤、トリ−2−エチルヘキシルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトのようなリン酸エステル系可塑剤、塩素化パラフィン、ポリエステル系可塑剤をあげることができる。これらは単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
また本発明で用いることのできる充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミ、クレー、シリカ等挙げることができる。
【0029】
(補強層)
補強層は、適度の剛性を示して床材の寸法安定性を高め、反りを防止するという作用を発揮するものである。この補強層は、ガラス繊維製不織布にペーストPVCを含浸した層からなる。具体的には、例えば重合度が1000〜1500程度のペーストPVCを、補強材としてのガラス繊維製不織布に含浸することによって構成される。
【0030】
このとき用いるガラス繊維製不織布は、目付量が30〜80g/m
2程度であるものが好ましく、より好ましくは32〜60g/m
2程度である。ガラス繊維製不織布の目付量が30g/m
2未満となると、充分な寸法安定性や反り防止効果を得ることができないおそれがあり、また目付量が80g/m
2を超えると、補強層の剛性が増し施工性が低下するとともに、耐クラック性が劣化するおそれがある。
【0031】
上記の効果を発揮させるためには、補強層の塗布量は200〜500g/m
2程度であることが好ましく、より好ましくは250〜450g/m
2程度である。補強層の塗布量が200g/m
2未満となると、充分な寸法安定性や反り防止効果を得ることができないおそれがあり、また塗布量が500g/m
2を超えると剛性が増し補強層の剛性が増し施工性が低下するとともに、耐クラック性が劣化するため好ましくない。
【0032】
補強層には、必要によって上述した可塑剤を含有させても良い。この可塑剤は、PVCに適度の柔軟性を付与して寸法安定性や反り防止効果を発揮させる上で有効である。こうした効果を発揮させるためには、可塑剤の含有量は、ペーストPVCとブレンドPVCの合計100質量部に対して40〜80質量部程度であることが好ましく、より好ましくは45〜75質量部程度である。可塑剤の含有量が、40質量部未満となると、ペーストPVCの粘度が高くなり不織布への含浸性が悪くなる。また、可塑剤の含有量が80質量部を超えると、粘度が低くなり不織布に保持できずに流れてしまうおそれがある。
【0033】
なお、寸法安定性とは、長期間の使用によっても床材の寸法が変化しない特性を意味する。この寸法安定性は、JIS A 1454に規定される「加熱による長さ及び幅変化試験」によって評価される特性である。
【0034】
(非発泡層)
非発泡層は、床材に耐キャスター性を付与する作用を発揮するものであり、例えば重合度が1000〜1500程度のペーストPVCを主体とし、これにブレンドPVCを配合し、必要によって、更に上述した可塑剤を配合することによって構成される。
【0035】
非発泡層に可塑剤を含有させる場合には、可塑剤の含有量は、ペーストPVCとブレンドPVCの合計100質量部に対して40〜80質量部程度であることが好ましく、より好ましくは45〜75質量部程度である。可塑剤の含有量が、40質量部未満となると、柔軟性が失われる。また、可塑剤の含有量が80質量部を超えると、柔らかすぎる。
【0036】
非発泡層には、必要によって上述した充填剤を含有させても良い。この充填剤は、非発泡層の強度を高めて耐キャスター性を更に向上させるという作用を発揮する。充填剤を含有する場合の含有量は、ペーストPVCとブレンドPVCの合計100質量部に対して20〜70質量部とすることが好ましく、より好ましくは20〜50質量部程度である。
【0037】
非発泡層の厚さは、例えば0.1〜1.5mm程度であることが好ましく、より好ましくは0.12〜1.0mm程度である。非発泡層の厚さが0.1mmよりも薄くなると、耐キャスター性が悪くなる。一方、非発泡層の厚さが1.5mmよりも厚くなると、柔軟性がなくなる。
【0038】
なお、耐キャスター性とは、キャスター付き機器の移動がある場所で使用される床材に要求される特性であり、キャスターによるねじり力に対する床材表面の耐性を意味する。この耐キャスター性は、JIS A 1455に規定される「耐キャスター性試験A−1法」によって評価される特性である。
【0039】
(透明樹脂層)
透明樹脂層は、表面強化層をサポートして表面強化層に疵等が発生しないようにする作用を発揮する。また透明樹脂層を設けずに、表面強化層だけで強化層としての機能を発揮させようとすると、表面強化層の厚みが厚くなり過ぎ、表面強化層が硬くなるとともに、コストアップを招くことにもなる。
【0040】
この透明樹脂層の具体的な構成としては、例えば重合度が1000〜1500程度のペーストPVCを主体とし、これにブレンドPVCを配合し、必要によって更に上述したような可塑剤を配合することによって構成される。
【0041】
透明樹脂層に可塑剤を含有させる場合には、可塑剤の含有量は、ペーストPVCとブレンドPVCの合計100質量部に対して40〜80質量部程度であることが好ましく、より好ましくは45〜75質量部程度である。可塑剤の含有量が、40質量部未満となると、柔軟性が失われる。また、可塑剤の含有量が75質量部を超えると、柔らかくなり過ぎる。
【0042】
透明樹脂層の厚さは、例えば0.1〜1.5mm程度であることが好ましく、より好ましくは0.12〜1.0mm程度である。透明樹脂層の厚さが0.1mmよりも薄くなると、傷防止効果がなくなる。一方、透明樹脂層の厚さが1.5mmよりも厚くなると、硬くなり過ぎて耐クラック性が悪くなる。
【0043】
(表面強化層)
表面強化層は、官能基の数が1〜3であるウレタンアクリレートを主体とする層からなり、その厚さは0.01〜0.03mmとする必要がある。
【0044】
ウレタンアクリレートは、適度な柔軟性を有し、クラックが生じにくい(すなわち、耐クラック性の良好な)樹脂である。ウレタンアクリレートの柔軟性は、官能基の数によって影響される。官能基の数が多くなるにつれて、表面強化層が硬くなって脆くなり、耐クラック性が劣化する。表面強化層に適度な柔軟性を与えて耐クラック性を良好にするためには、ウレタンアクリレートの官能基の数は1〜3とする必要がある。
【0045】
ウレタンアクリレートを主成分とする表面強化層は、無溶媒型のコーティング剤を用いて形成することが好ましい。無溶媒型のコーティング剤を用いることによって、コーティング剤の相分離を招くことなく、良好な塗布性を発揮しつつ、表面が平滑なコーティング層を形成することができる。
【0046】
ウレタンアクリレートを主成分とするコーティング剤は、溶融させた状態で床材の最表面層(表面強化層)として塗布される。このコーティング剤には、光重合開始剤を含有させ、紫外線照射することによって、ウレタンアクリレートを重合硬化させ、本発明の床材の表面強化層としてのコーティング層となる。
【0047】
こうした効果を発揮させるためには、光重合開始剤の含有量は、ウレタンアクリレート100質量部に対して、1質量部以上とすることが好ましい。より好ましくは、3質量部以上である。しかしながら、光重合開始剤の含有量が過剰になっても、その効果が飽和するので、8質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、7質量部以下である。
【0048】
本発明で用いる光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、キサントン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0049】
表面強化層には、その一部に(例えば、ウレタンアクリレート層全体に対して40質量%程度まで)、ウレタンアクリレート以外の樹脂を含有させてもよい。このような樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等を挙げることができる。
【0050】
本発明の表面強化層は、上記のように表面が平滑な層とすることができるので、耐汚染性にも優れたものとなる。なお、本発明では、耐汚染性は耐ヒールマーク性で評価した。耐ヒールマーク性とは、例えば、最表面層に微細な凹凸が存在したり、微細な疵が存在したりすると、靴底の黒色ゴムが付着して「ヒールマーク」と呼ばれる汚れが付着しやすくなるのであるが、表面が平滑な状態であるとこのような汚れがつきにくく、拭き掃除等の簡単なメンテナンスで汚れが落ちやすい特性を意味する。
【0051】
上記のような表面強化層は、耐摩耗性、耐汚染性及び耐クラック性等に優れた層となるが、これらの特性を有効に発揮させためには、表面強化層の厚さも適切な範囲とする必要がある。すなわち、表面強化層の厚さは、0.01〜0.03mmとする必要があり、表面強化層の厚さをこの範囲内とすることによって、上記の特性が有効に発揮される。
【0052】
表面強化層の厚さが0.01mmよりも薄くなると、耐摩耗性が劣化するばかりか、下層の表面性状の影響によって、表面の平滑度が低下し、耐汚染性も悪くなる。一方、表面強化層の厚さが0.03mmよりも厚くなると、表面強化層の靱性が低下して耐クラック性が劣化する。表面強化層の厚さの上限は、0.02mm以下であることが好ましい。
【0053】
表面強化層中には、本発明の目的を阻害しない範囲で、抗菌剤、消臭剤等を含有させてもよい。抗菌剤としては、ニトリル系化合物、ピリジン系化合物、ハロアルキルチオ系化合物、有機ヨード系化合物、チアゾール系化合物、ベンズイミダゾール化合物、わさび成分(アリルイソチオシアネート)、銀・亜鉛・銅などの無機系の化合物等が挙げられる。また消臭剤としては、無機系化合物と有機系化合物があり、無機系化合物では、銀イオンや亜鉛イオンを有する珪酸塩化合物、銀イオンや亜鉛イオンを有するリン酸塩化合物、銀イオンや亜鉛イオンを有するリン酸カルシウム化合物、活性炭、ホタテ貝殻を焼成した水酸化カルシウム等が挙げられる。これらを含有する場合に、抗菌剤では、ウレタンアクリレート100質量部に対して、0.1〜5質量部程度が好ましく、より好ましくは0.5〜1質量部程度である。また消臭剤では、ウレタンアクリレート100質量部に対して、5〜15質量部程度が好ましく、より好ましくは5〜10質量部程度である。
【0054】
本発明の床材は、上記表面強化層及び補強層以外にも、透明樹脂層、非発泡層、及び発泡層を有するものである。これらの層による作用効果は、下記の通りである。
【0055】
本発明の床材は、上記のような各層を積層して構成されるが、必要によって、最下層として不織布層(前記
図1に示した符号「8」)を備えたものであってもよい。この不織布層は、本発明の床材を床下地(前記
図1参照)に接着する際に、床材と床下地の接着強度を高めるために配置される。この不織布層は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)繊維からなる不織布層によって構成される。不織布層の塗布量は10〜50g/m
2程度であることが好ましい。
【0056】
また本発明の床材においては、透明樹脂層と非発泡層の間に印刷層(前記
図1に示した符号「4」)を備えたものであっても良い。この印刷層は、床材に色彩や装飾を付与するために配置されるものであり、例えば、熱可塑性樹脂シート表面に、木目調等の装飾を印刷して構成される。
【0057】
本発明の床材においては、積層構造全体の強度バランスを図ることも有用である。こうした観点から、補強層を境にして、上層部(すなわち、表面強化層、透明樹脂層及び非発泡層)と、下層部(すなわち、発泡層)の樹脂量の質量割合(上層部の樹脂量:下層部の樹脂量)が、60:40〜40:60の範囲内にあることが好ましい。この範囲を外れると、反りが大きくなりやすく、補強層では防止しにくくなる。
【0058】
本発明の床材は、床下地の表面に接着剤9によって接着され(前記
図1参照)、少なくとも耐摩耗性、耐汚染性、耐クラック性及び寸法安定性等に優れた床構造を形成する。
【0059】
本発明の床材を製造するには、例えば
図2に示す工程図に従って製造することができる。
図2に示した工程では、印刷層を積層しない場合を示したが、印刷層を積層する場合には、一連の工程の途中に印刷層を積層する工程を付加すればよい。
【0060】
図2は、本発明の床材を製造する工程を模式的に示す説明図である。所定幅に裁断して巻回された長尺状のガラス繊維製不織布10の両面に、ポリ塩化ビニル(PVC)の樹脂液11aを、ピックアップロール12a、コーティングロール13a及び供給ロール14aによって塗布し、ガラス繊維製不織布10内に樹脂液11を含浸させ、補強層6を形成する(補強層形成工程A)。その後、補強層6の下面側に、発泡層7の素材となる樹脂液11bを、ピックアップロール12bによって塗布して発泡層7を形成するとともに(発泡層形成工程B)、更に発泡層7の下面側に不織布15を貼付して不織布層8を形成する(不織布層形成工程C)。
【0061】
引き続き、不織布層8を形成した面と反対側の面(すなわち、発泡層7の上側面)に、非発泡層5の素材となる樹脂液11cを、コーティングロール13b及び供給ロール14bによって塗布して非発泡層5を形成するとともに(非発泡層形成工程D)、非発泡層5の上面に、透明樹脂層3の素材となる樹脂液11dを、コーティングロール13c及び供給ロール14cによって塗布して透明樹脂層3を形成する(透明樹脂層形成工程E)。
【0062】
最終的に、透明樹脂層3を形成した上面側に、表面強化層の素材となる樹脂液11eを、コーティングロール13d及び供給ロール14dによって塗布して表面強化層2を形成し(表面強化層形成工程F)、積層構造の床材1を得る。
【0063】
なお、
図2には示していないが、各樹脂液11a〜11eの塗布量については、ドクタブレード等を配置して調整することができる。また、必要によって、上記工程の途中、若しくは最終段階で、加熱・加圧を行い、各層を一体化するようにしても良い。
図2に示した工程では、ガラス繊維製不織布10内への樹脂液11の含浸は、ロールコーティングによって行ったが、その他、デッピング、バーコティング、スプレーコーティングなど公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0065】
本実施例で使用した各成分の詳細は以下の通りである。
【0066】
(表面強化層)
・3官能ウレタンアクリレート
・5官能ウレタンアクリレート
・光重合開始剤:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
・抗菌剤:Ag−Cu系化合物
・消臭剤:亜鉛イオンを有する珪酸塩化合物
(透明樹脂層)
・重合度が1000〜1500のペーストPVC
・ブレンドPVC
・可塑剤:DOP(フタル酸ジオクチル)
(非発泡層)
・重合度が1000〜1500のペーストPVC
・ブレンドPVC
・可塑剤:DOP(フタル酸ジオクチル)
・充填剤:重質炭酸カルシウム
(補強層)
・重合度が1000〜1500のペーストPVC
・可塑剤:DOP(フタル酸ジオクチル)
・補強材:ガラス繊維製不織布
(発泡層)
・重合度が1000〜1500のペーストPVC
・ブレンドPVC
・可塑剤:DOP(フタル酸ジオクチル)
・充填剤:重質炭酸カルシウム
・発泡剤:ADCA(アゾジカルボンアミド)
(不織布層)
PET繊維不織布
【0067】
上各記成分を用い、以下に示す方法により表面強化層を製造した。
【0068】
表1、2に示す成分割合(表中の成分の数値はすべて質量部を示す)で、各層を形成し、前記
図2に示した製造工程に従って各種を積層して積層構造の床材を製造した。このとき、表面強化層については、表1、2に示す成分割合で各種原料を混合し、無溶媒型で均一なコーティング剤を調製し、表面強化層となるコーティング剤を調製した。なお、表1、2には質量割合(上層部の樹脂量:下層部の樹脂量)も示したが、この値は各層の厚さも考慮して計算した値に基づくものである。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
上述のようにして得られた試料(実施例1〜6および比較例1〜8)について、以下の評価試験を行った。
【0072】
[耐摩耗性]
JIS K 7204に準拠してテーバ摩耗試験を行い(荷重:9.80N)、試験前と試験後の試験片表面の磨耗跡の状態を観察し、下記の基準で耐摩耗性を評価した。
○:摩耗跡無し、乃至、表面をふき取るとテカリ跡が出てくる程度
×:摩耗跡が完全に見える
【0073】
[耐汚染性(耐ヒールマーク性)]
上記テーバ摩耗試験後の試験片に、カーボン粉末を振り掛け、試験片表面におけるカーボン粉末の付着の有無を観察し、下記の基準で耐汚染性を評価した。
○:カーボン粉末の付着無し、乃至、カーボン粉末の微量の付着あり
×:カーボン粉末の付着あり
【0074】
[耐クラック性]
JIS A 1454に準拠して柔軟性試験を行い、試験片表面のクラック発生状況から、下記の基準で耐クラック性を評価した。
○:クラック発生なし
×:クラック発生あり
【0075】
[寸法安定性]
JIS A 1454の「加熱による長さ及び幅変化試験」に準拠し、300mm×300mmの試験片を80℃の撹拌機付恒温器に6時間保った後取り出し、室内に1時間静置し、長さ方向及び幅方向における試験前の長さに対する変化率を測定した。この変化率がいずれの方向でも0.15%以下の場合を、寸法安定性が良好であると判断できる。
【0076】
[耐キャスター性]
JIS A 1454に規定される「耐キャスター性試験A−2法」に準拠して試験を行い、4時間後の試験片表面の膨れ発生状況から、下記の基準で耐キャスター性を評価した。
○:膨れ発生なし
△:膨れ発生僅かにあり
×:膨れ発生が明らかにある
【0077】
[耐衝撃性]
JIS A 6519の床の硬さ試験に準じて測定した最大加速度(G値)を測定し、耐衝撃性を評価した。上記G値が、150G以下の場合を、耐衝撃性(衝撃吸収性)が良好であると判断できる。
【0078】
[反り]
JIS A 1454の14の「反り試験」に準拠し、300mm×300mmの試験片を用い、表面を上にして5℃の恒温室に12時間静置し、反り量(5℃反り量:mm)を測定した。下反りの場合は、測定値の後ろに(−)を表示した。
【0079】
以上の評価結果を表3、4に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
これらの結果から、次のように考察できる。まず本発明で規定する要件を満足する床材(表1、3に示した実施例1〜6)は、耐摩耗性、耐汚染性、耐クラック性及び寸法安定性のいずれにおいても優れていた。これらの実施例1〜6では、好ましい要件をも満足しているので、耐キャスター性及び耐衝撃性(G値)についても、優れた特性を発揮している。
【0083】
これに対し、本発明で規定する要件、または好ましい要件のいずれかを満足しない床材(表2、4に示した比較例1〜8)では、いずれかの特性で劣っていた。具体的には、比較例1は、補強層における可塑剤の含有量、ガラス不織布の目付量、及び補強層の塗布量が好ましい下限に満たない例であり、寸法安定性が劣化している。比較例2は、補強層における可塑剤の含有量、ガラス不織布の目付量、及び補強層の塗布量が好ましい上限を超える例であり、耐クラック性が劣化している。
【0084】
比較例3は、発泡層における発泡倍率が小さく、また厚さが薄くなった例であり、耐クラック性が劣化している。比較例4は、発泡層における発泡剤の含有量、発泡倍率が大きく、また厚さが厚くなった例であり、沈み込みが大きくなって上層が破損するおそれがあり、耐キャスター性及び耐衝撃性が劣化している。またこの例では、(上層部の樹脂量:下層部の樹脂量)が、好ましい範囲を外れており反りが生じている。
【0085】
比較例5は、発泡層における発泡剤の含有量が過剰であり、発泡倍率が大きくなり、また厚さが厚くなった例であり、耐キャスター性が劣化している。またこの例では、(上層部の樹脂量:下層部の樹脂量)が、好ましい範囲を外れており反りが生じている。比較例6は、表面強化層の厚さが薄くなっている例であり、耐摩耗性及び耐汚染性が劣化している。
【0086】
比較例7は、表面強化層の厚さが厚くなっている例であり、耐摩耗性及び耐汚染性は良好であったものの、耐クラック性が劣化している。比較例8は、表面強化層として、官能基の数が5であるウレタンアクリレートを主体として用いた例であり、表面強化層の柔軟性が低下して耐クラック性が劣化している。