(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。各図面において、同一部材は同一符号で示されている。また、部材の番号にa、b、cを付したものは同様の構成の部材が複数(この場合3個)あることを示している。同様の構成の部材を峻別しない場合、部材の番号のみを用いることにより代表の部材として取り扱う。
【0010】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1における防振装置100の分解斜視図である。実施例1の防振装置100は、光軸OAの方向に沿って第1の固定部材31、ボール51、可動部材41、駆動ユニット33、FPC35、第2の固定部材32から構成されている。すなわち、実施例1の防振装置100は、第1の固定部材31と第2の固定部材32によって可動部材41が挟まれた構成となっている。
【0011】
図2(A)は、防振装置100を光軸OAの方向に見た正面図、
図2(B)は同底面図である。
図2(C)は
図2(A)の断面線IIC−IICにおける断面図、
図2(D)は
図2(A)の断面線IID−IIDにおける断面図、
図2(E)は
図2(C)の断面図における円で囲まれた駆動ユニット33a付近の拡大図である。
【0012】
図2(A)において、3個の駆動ユニット33a、33b、33cがそれぞれ破線の矩形で示されるとともに、各駆動ユニット33a、33b、33cの発生する駆動力a、b、cがそれぞれ矢印で示されている。各穴34a、34b、34cは、第1の固定部材31を後述の撮像装置10の本体に固定するための穴である。FPC35は、駆動ユニット33に給電するためのフレキシブルプリント基板である。そして、締結部材であるネジ36a、36b、36cは、第1の固定部材31と第2の固定部材32を光軸OAの方向にスペーサ部材37a、37b、37cを介して連結し、締結する。なお、明細書における30番台の数字は、固定部(防振のための駆動に対して移動しない部材)に付されている。
【0013】
防振装置100は、駆動ユニット33により適切な変位を発生させることにより、2方向の並進及び1軸周りの回転運動を可能としている。すなわち
図2(A)の正面図の投影方向に直交する平面内の2方向の並進と、投影方向を回転軸とする1軸周りの回転運動が可能となっている。投影方向は光軸OAの方向であるので、可動部材41が光軸OAの方向に垂直な平面内で移動可能に支持されている。可動部材41には、撮像素子12を取り付けるためのネジ穴と位置決めピンを備えた素子固定部40a、40b、40cが光軸OAの方向に突出して備えられている。そして、後述の
図5(B)で示されるブレ検知手段19の信号に基づいて、駆動ユニット33を適切に駆動させることで、手振れの影響を抑制し、撮像素子12における像を安定させることができる。
【0014】
可動部材41には基板42が取り付けられ、この基板42には実装された電子部品43が配置されている。電子部品43は、不図示のFPC(振動波アクチュエータに給電するFPC35とは異なるフレキシブルプリント基板)を介して、画像処理部13へ信号を伝送する。なお、明細書における40番台の数字は、可動部(防振のための駆動により移動する被駆動部材)に付されている。
【0015】
図2(E)を参照して、駆動ユニット33aの構成について説明する。駆動ユニット33aは、振動板52a及び圧電素子53aから構成される振動波アクチュエータと、振動波アクチュエータを加圧するバネ55aとフェルト54a、振動波アクチュエータにより駆動されるスライダ44aを有する。また、その他の駆動ユニット33b、33cについては、駆動ユニット33aと同様の構成であるため説明を省略する。なお、明細書における50番台の数字は、駆動部を構成する部材に付されている。
【0016】
スライダ44aは、可動部材41に固定されるとともに、振動板52aに当接している。一方、バネ55aは第2の固定部材32に固定されており、フェルト54aはバネ55aの表面に固定されている。そして、FPC35を介して圧電素子53aに適宜電圧を印加することで、振動板52aが超音波領域の周波数の振動(超音波振動)を発生し、スライダ44aを駆動することにより可動部材41を移動させる。
【0017】
第1の固定部材31とスライダ44aの間には、ボール51aが挟持され、振動板52aにより駆動されるスライダ44aが案内される。スライダ44aは、可動部材41に設けられているため、すなわちボール51aは第1の固定部材31と可動部材41に狭持されることになる。
図2(E)に示すような構成とすることで、バネ55aの弾性力により振動波アクチュエータの振動板52aを所定の圧力をもってスライダ44aに当接させることができる。
【0018】
図2(D)は、第1の固定部材31と第2の固定部材32とを連結する構成を示している。第1の固定部材31と第2の固定部材32は、円筒形状を成すスペーサ部材37bを介して連結されている。スペーサ部材37bの中央付近には、径が細くなった小径部があり、そこに弾性部材38bが嵌合している。ここでいう嵌合とは、取り付ける前の弾性部材38bの内径が、スペーサ部材37bの径よりも小さくなっている状態において、弾性部材38bが弾性変形してスペーサ部材37bに隙間なく取り付けられることを意味する。この弾性部材38bがいわゆるメカニカルストッパを形成している。このような構成により、外部から加えられた衝撃によって可動部材41が変位した時にも移動が規制される。
【0019】
スペーサ部材37bには、その長手方向の両端部にネジ穴39bが設けられており、長手方向の一端部において、ネジ36bにより第1の固定部材31が締結されている。スペーサ部材37bの他端部において、ネジ36bによりスペーサ部材37bと第2の固定部材32が締結されており、このようにスペーサ部材37bを介すことにより、第1の固定部材31と第2の固定部材32の間隔が保たれる。これらのネジ36bの締結により、駆動ユニット33のバネ55を弾性変形させて、振動板52をスライダ44に押圧させている。すなわち、第1の固定部材31に第2の固定部材32を固定することで、振動板52とスライダ44を所定の圧力をもって接触させる構成となっている。
【0020】
図4(A)、(B)を参照して振動波アクチュエータの構成と動作について説明する。上述のように振動波アクチュエータは、振動板52と圧電素子53から構成されている。そして、圧電素子53には3つの電極61(A相)、62(B相)、63(GND)が形成されている。A相−GND間及びB相−GND間に、振動板52が共振を励起する周波数の電圧を印加するとともに、A相、B相への印加電圧に位相差を与えることで振動板52に形成された出力部52pを楕円運動させる。そして、振動板52の出力部52pが当接するスライダ44をこの楕円運動により変位させることができる。本発明では電磁的な作用を利用せずに、超音波の周波数領域での機械的な振動を直接取り出して駆動するものを振動波アクチュエータ(超音波アクチュエータ)と呼ぶ。上述した振動波アクチュエータの詳細な構成や動作に関しては、特開2016−92879号公報の開示を参照することとし、本発明の振動波アクチュエータの動作についての詳細な説明は割愛する。
【0021】
図3は、可動部材41に固定されたスライダ44よりも第2の固定部材32側に存在する部材を取り外した状態、すなわち第2の固定部材32、FPC35及び駆動ユニット33を取り外した状態の正面図である。
図3に示すように、可動部材41には、スライダ44a、44b、44cの近傍にそれぞれ磁石45a、45b、45cが設けられている。そして、各磁石45a、45b、45cはFPC35と対向し、各磁石45a、45b、45cに対応するFPC35の位置には不図示の磁気センサ(ホール素子などが利用可能)が設けられている。
【0022】
実施例1の防振装置100の制御においては、磁石45a、45b、45cと磁気センサによって可動部材41と第1の固定部材31との相対的な変位(相対移動)を検知して、この検知結果と目標値を比較する、いわゆるフィードバック制御が行われる。さらに、特定の方向に駆動する場合に、駆動に寄与しない方向の振動波アクチュエータも突き上げ方向の振動を励起させる(これは足踏み振動などとも呼ばれる)。一般的には、
図4(A)のA相−GND間及びB相−GND間に同じ位相の電圧を印加することで突き上げ方向の振動を励起することができる。具体的には、可動部材41を
図3の上下方向に移動させる場合には、駆動ユニット33aによって上下方向の駆動力aを発生させるとともに、他の駆動ユニット33b、33cには足踏み振動をさせる。さらに、フィードバック制御を行うことで、可動部材41が上下方向のみに移動する。
【0023】
図2(E)を参照すると、実施例1の防振装置100では、振動板52aがスライダ44aに当接する当接面の裏面が、ボール51aを案内する案内面となっている。表面硬度が求められるスライダ44において、振動板52が当接する当接面及びボール51を案内する案内面を同一部材の表裏に集約したことで、表面処理の工数を削減することができるとともに、このような構成とすることでコストを削減することができる。
【0024】
図1〜
図3に示すように、実施例1の防振装置100は、可動部材41が振動板52と複数のボール51に挟み込まれる構成をしている。このため、振動波アクチュエータに電圧を印加しない時にも摩擦力によって可動部材41が保持されるので、可動部材41を保持するためのロック機構が不要となり装置が大型化することが無い。したがって、大型化することなくガタ等の影響を低減した防振装置100を提供することができる。
【0025】
また、
図2(A)〜(E)を参照すると、各駆動ユニット33a、33b、33cは、同じ構成で並列に設けられている。第2の固定部材32から各バネ55a、55b(不図示)、55c(不図示)、を介して振動板52a、52b(不図示)、52c(不図示)が並列に配置されて可動部材41のスライダ44a、44b(不図示)、44c(不図示)と当接している。すなわち、可動部材41と第2の固定部材32の間に並列に複数の振動波アクチュエータが設けられた構成となっている。特に複数の振動波アクチュエータの振動板52に設けられた出力部52pが、直接スライダ44に対して接触する構成となっている。このような構成とすることで、スライダ44を他の部材を介在させることなく駆動することができる。すなわち、ガタ等の影響を低減した防振装置100を提供することができる。
【0026】
第1の固定部材31には、防振装置100を撮像装置10の本体に固定するための穴34a、34b、34cが設けられ、特に穴34a、34bの近傍には、防振装置100を撮像装置10に固定する際の位置決めの穴が設けられている。このような構成とすることで、可動部材41の位置を正確に決定することができる。そして、振動波アクチュエータから撮像装置10への部材の配置は、振動波アクチュエータ→可動部材41→ボール51→第1の固定部材31→撮像装置10の順となっており、可動部材41を位置決めするために介在する部材が少ない。さらに、介在する部材のそれぞれが部品精度を高めやすい部材のみで構成されるため、可動部材41の位置を正確に決定することができる。このように、可動部材41(スライダ44)、ボール51、第1の固定部材31だけでフランジバック(FB)を決めることができるので、部材の積層方向(厚み方向)の不安定要素を排除することができる。すなわち、フェルト54や振動板52の劣化による影響を排除することができる。一般的には、撮像装置10のレンズ取付け部(レンズユニット20との機械的な境界部でマウントと呼ばれる)に対して防振装置100に設けられた撮像素子12の位置を正確に決める必要があるが、上述の構成をとることでこれが実現される。
【0027】
(適用例1)
図5(A)は、本発明の実施例1の防振装置100を備えた撮像装置10及びレンズユニット20からなるカメラシステム(光学装置)の断面図、
図5(B)はカメラシステムの電気的構成を示すブロック図である。カメラシステムは、撮像手段、画像処理手段、記録再生手段及び制御手段を有する。撮像手段は、撮影光学系21、シャッタ機構18、撮像素子12を含み、画像処理手段は、画像処理部13を含む。また、記録再生手段は、メモリ手段14、表示手段15(表示手段15は背面表示装置15a、EVF15bを含む)を含む。制御手段は、カメラシステム制御回路11、操作検出部16、ブレ検知手段19、防振装置100、レンズシステム制御回路22及びレンズ駆動手段23を含む。レンズ駆動手段23は、フォーカスレンズ(撮影光学系21の一部のレンズ)、絞りなどを駆動する。
【0028】
撮像手段は、物体からの光を、撮影光学系21を介して撮像素子12の撮像面に結像する光学処理系である。撮影光学系21を介して物体の像が結ぶ面を結像面と呼び、撮像素子12は結像面に配置されている。撮像素子12からピント評価量/適当な露光量の信号が得られるので、この信号に基づいて適切に撮影光学系21が調整されることで、適切な光量の物体光を撮像素子12に露光するとともに、撮像素子12近傍で被写体像が結像する。
【0029】
画像処理部13は、内部にA/D変換器、ホワイトバランス調整回路、ガンマ補正回路、補間演算回路等を有しており、記録用の画像を生成することができる。色補間処理手段はこの画像処理部13に備えられており、ベイヤ配列の信号から色補間(デモザイキング)処理を施してカラー画像を生成する。また、画像処理部13は、予め定められた方法を用いて画像、動画、音声などの圧縮を行う。
【0030】
メモリ手段14は実際の記憶部を備えている。カメラシステム制御回路11により、メモリ手段14の記録部へ出力を行うとともに、表示手段15にユーザに提示する像を表示(再生)する。
【0031】
カメラシステム制御回路11は撮像の際のタイミング信号などを生成して出力する。外部操作に応動して撮像手段、画像処理手段、記録再生手段をそれぞれ制御する。例えば、不図示のシャッターレリーズ釦の押下を操作検出部16が検出して、撮像素子12の駆動、画像処理部13の動作、圧縮処理などを制御する。さらに表示手段15によって情報表示を行う情報表示装置の各セグメントの状態を制御する。また、背面表示装置15aはタッチパネルになっており、操作検出部16に接続されている。
【0032】
撮影光学系21の調整動作について説明する。カメラシステム制御回路11には画像処理部13が接続されており、撮像素子12からの信号を元に適切な焦点位置、絞り位置を求める。カメラシステム制御回路11は、電気接点17を介してレンズシステム制御回路22に指令を出し、レンズシステム制御回路22はレンズ駆動手段23を適切に制御する。
【0033】
撮像装置10は、シャッタ機構18を備えており、カメラシステム制御回路11からの指令により露光制御することが可能である。また、撮像装置10はブレ検知手段19及び防振装置100を備えており、いわゆる手振れの影響を低減することができる。すなわち、手振れ補正を行う際は、ブレ検知手段19(一例としてはジャイロセンサ)から得られた信号に基づいて、防振装置100に備えられた撮像素子12を変位させることで、手振れ補正を行い、手振れの影響を低減した撮影を行うことができる。
【0034】
広義の意味での防振装置は、ブレ検知手段19、制御を司るカメラシステム制御回路11、及び防振のための機構である防振装置100から成るが、本発明では特に構成に特徴があるので、防振のための構成を指す用語として防振装置という言葉を用いる。
【0035】
(実施例2)
図6は、本発明の実施例2における防振装置200の分解斜視図である。実施例2の防振装置200は、光軸OAの方向に沿って第1の固定部材231、ボール251、アンチロールプレート281、ボール251、案内板246、可動部材241、駆動ユニット233、FPC235、第2の固定部材232から構成されている。実施例1と同様、実施例2の防振装置200は第1の固定部材231と第2の固定部材232によって可動部材241が挟まれた構成となっている。実施例2では、樹脂の成形品である樹脂部材231Bと金属板231Aの2つの部材から第1の固定部材231が構成されている。樹脂部材231Bと金属板231Aをまとめて扱う場合、第1の固定部材231と表すことにする。
【0036】
実施例2の説明において、実施例1と同じ機能を持つ部材には、200を加えた番号が付されている。なお、実施例1では防振において変位させる対象が光学素子である撮像素子12であるが、実施例2では撮像という機能の点で異なるものの、防振において変位させるという点で同一でもある光学部材(光学素子)のレンズに対して防振レンズ212を付している。
【0037】
図7(A)は、防振装置200を光軸OAの方向にみた正面図、
図7(B)は同底面図である。
図7(C)は
図7(A)の断面線VIIC−VIICにおける断面図、
図7(D)は
図7(A)の断面線VIID−VIIDにおける断面図である。
【0038】
図7(A)において、2個の駆動ユニット233a、233bがそれぞれ破線の矩形で示されるとともに、各駆動ユニット233a、233bの発生する駆動力a、bがそれぞれ矢印で示されている。
図7(B)において、樹脂部材231Bが備える穴234aは、第1の固定部材231を後述の撮影光学系21の本体に固定するための穴である。
図7(B)では、穴234aが1つしか示されていないが、さらに他の穴が円周方向に120度等分で2か所に設けられている。FPC235a、235bは、駆動ユニット233a、233bに給電するためのフレキシブルプリント基板である。そして、締結部材であるネジ236a、236b、236cは、第1の固定部材231をなす金属板231Aと第2の固定部材232を光軸OAの方向に連結し、締結する。
【0039】
防振装置200は、駆動ユニット233により適切な変位を発生させることにより、2方向の並進運動を可能としている。すなわち実施例2の防振装置200と実施例1の防振装置100との機構の違いは、防振レンズ212を駆動する防振装置200において、回転が不要な2自由度であるので、光軸OAに垂直な平面内での並進運動のみを行うことである。回転運動を規制するための構成については後述する。
【0040】
可動部材241には、2つの発光素子245a、245bが備えられている。そして、
図7(C)を参照すると、組み立て後に発光素子245a、245bとそれぞれ対向するように位置検出センサ272a、272b(不図示)が第2の固定部材232に固定された制御基板270に設けられている。位置検出センサ272a、272bには1次元PSD等を用いることができる。これにより可動部材241の位置を検出して、いわゆるフィードバック制御を行うことができる。なお、制御基板270にはコネクタ271が実装されている。
【0041】
図7(C)を参照して、駆動ユニット233aの構成について説明する。実施例2の駆動ユニット233aは、実施例1とほぼ同等な構成である。駆動ユニット233aは、振動板252a及び圧電素子253aから構成される振動波アクチュエータと、振動波アクチュエータを加圧するバネ255aとフェルト254a、振動波アクチュエータにより駆動されるスライダ部244aを有する。実施例2の可動部材241は、スライダ機能を兼ねている。
【0042】
スライダ部244aは、可動部材241に一体化されるとともに、振動板252aに当接している。一方、バネ255aは第2の固定部材232に固定されており、フェルト254aはバネ255aの表面に固定されている。そして、FPC235aを介して圧電素子253aに適宜電圧を印加することで、振動板252aが超音波領域の周波数の振動(超音波振動)を発生し、スライダ部244aを駆動することにより可動部材241を移動させる。
【0043】
第1の固定部材231と可動部材241の間には、6つのボール251a、251b、251c、251d、251e、251fが挟持され、振動板252aにより駆動されるスライダ部244aが案内される。
図7(C)に示すような構成とすることで、バネ255aの弾性力により振動波アクチュエータの振動板252aを所定の圧力をもってスライダ部244aに当接させることができる。なお、FPC235aは制御基板270に接続されている。
【0044】
図6を参照して実施例2の防振装置200が有する各ボールについて説明する。ボール251aは、可動部材241の平面部と第1の固定部材231をなす金属板231Aの平面部に挟持されており、ボール251bはアンチロールプレート281の平面部と樹脂部材231Bに挟持されている。ボール251c、251dは可動部材241に固定された案内板246とアンチロールプレート281に挟持されており、ボール251e、251fはアンチロールプレート281と第1の固定部材231をなす金属板231Aに挟持されている。
【0045】
図8(A)は、第2の固定部材232、FPC235及び駆動ユニット233を取り外した状態の正面図、
図8(B)は
図8(A)の断面線VIIIB−VIIIBにおける断面図である。
図8(A)に示すように、可動部材241には、発光素子245a、245bが設けられている。
図7(C)を参照すると、発光素子245aは、位置検出センサ272aと対向するように配置されており、可動部材241の上下方向の変位を検出する。
【0046】
図6、
図7(C)を参照すると、実施例2の防振装置200では、振動板252a、252bがスライダ部244a、244bに当接する当接面とボール251aが可動部材241に案内される案内面とを離間させた構成となっている。すなわち、振動板252がスライダ部244に当接する当接面の裏面は、ボール251を案内する案内面になっていない。
【0047】
実施例2の防振装置200において、振動波アクチュエータの振動(特に案内方向ではなく、光軸OAの方向に突き上げるような振動)が課題になるような場合がある。このような場合、可動部材241において、振動板252が当接する当接面及びボール251を案内する案内面を光軸OAの方向から見たときに互いに重ならないようにしたことで、不要な振動を抑制することができる。
【0048】
図6に示すように、実施例2の防振装置200は、可動部材241が振動板252と複数のボール251に挟み込まれる構成をしている。このため、振動波アクチュエータに電圧を印加しない時にも摩擦力によって可動部材241が保持されるので、可動部材241を保持するためのロック機構が不要となり装置が大型化することが無い。したがって、大型化することなくガタ等の影響を低減した防振装置200を提供することができる。
【0049】
図9は、
図8(A)に対してさらに可動部材241を取り外した状態の正面図、
図10はさらにアンチロールプレート281を取り外した状態の正面図である。
図6、
図9及び
図10を用いて、光軸OAに垂直な平面内での並進運動の案内構成について説明する。本発明の実施例2の防振装置200は、可動部材241に固定された案内板246及び可動部材241の光軸OA周りの回転を抑制するアンチロールプレート281を備えている。
【0050】
案内板246は、2つのV溝247c、247dを備えるとともに、固定用のネジ248a、248bによって可動部材241に固定されている。さらに、案内板246に対向する位置にあるアンチロールプレート281は、
図9の上下方向に延在する長穴282a、282bを備えている。そして、アンチロールプレート281は第1の固定部材231をなす金属板231Aに長穴282a、282bを介してピン283a、283bによって図面の上下方向にアンチロールプレート281の移動が許容される状態で光軸OAの方向に固定されている。また、アンチロールプレート281は、4つのV溝284c、284d、284e、284fを備えている。そして、第1の固定部材をなす金属板231Aは、2つのV溝230e、230fを備えている。
【0051】
アンチロールプレート281の2つのV溝284c、284dは、案内板246の2つのV溝247c、247dに対応して延在している。そして、ボール251cがV溝247cとV溝284cとにより、ボール251dがV溝247dとV溝284dとによりそれぞれ狭持されている。また、アンチロールプレート281の2つのV溝284e、284fは、金属板231Aの2つのV溝230e、230fに対応して延在している。そして、ボール251eがV溝284eとV溝230eとにより、ボール251fがV溝284fとV溝230fとによりそれぞれ狭持されている。
【0052】
ボール251c、251dを一組として同じ方向に案内するために、アンチロールプレート281の一方の平面部において、V溝284c、284dが
図9の左右方向に揃えて設けられている。また、
図6に示すように、案内板246においてV溝247c、247dが同じ方向に揃えて設けられている。さらに、ボール251e及び251fを一組として同じ方向に案内するために、アンチロールプレート281の一方の平面部の反対側の平面部において、V溝284e、284fが
図9の上下方向に揃えて設けられている。また、
図10に示すように、第1の固定部材231をなす金属板231Aの表面においてV溝230e、230fが図面の上下方向に揃えて設けられている。
【0053】
このような構成とすることで、第1の固定部材231をなす金属板231Aに対してアンチロールプレート281は上下方向にのみ、またアンチロールプレート281に対して可動部材241は左右方向にのみ並進できるように案内される。結果として、第1の固定部材231をなす金属板231Aに対して可動部材241は、光軸OAに垂直な平面内での並進運動のみ可能で回転運動は規制されることになる。なお、ボール251bは荷重のバランスをとるために設けられており、方向を規制しない。これらの構成は、特開2011−158924号公報に開示されているため、ここではこれ以上詳述しない。
【0054】
図7(A)において示した駆動ユニット233a、233bが駆動力a、bを発生すると、
図9で説明した案内構成によって可動部材241が光軸OAに垂直な平面内で駆動される。また、各駆動ユニット233a、233bは、同じ構成で並列に設けられている。第2の固定部材232から各バネ255a、255b(不図示)、を介して振動板252a、252b(不図示)が並列に配置されて可動部材241のスライダ部244a、244b(不図示)と当接している。すなわち、可動部材241と第2の固定部材232の間に並列に複数の振動波アクチュエータが設けられた構成となっている。特に複数の振動波アクチュエータの振動板252に設けられた出力部252p(不図示)が、直接可動部材241に対して接触する構成となっている。このような構成とすることで、スライダ部244を他の部材を介在させることなく駆動することができる。すなわち、ガタ等の影響を低減した防振装置200を提供することができる。
【0055】
第1の固定部材231をなす樹脂部材231Bには、防振装置200をレンズユニット20の本体に固定するための穴234a、234b(不図示)、234c(不図示)が設けられている。このような構成とすることで、可動部材241の位置を正確に決定することができる。そして、振動波アクチュエータからレンズユニット20への部材の配置は、振動波アクチュエータ→可動部材241→ボール251a→金属板231A→樹脂部材231B→撮像装置10の順となっている。もしくは振動波アクチュエータ→可動部材241→案内板246→ボール251c、251d→アンチロールプレート281→ボール251e、251f→金属板231A→樹脂部材231B→撮像装置10の順となっている。このように可動部材241を位置決めするために介在する部材が少ない。さらに、介在する部材のそれぞれが部品精度を高めやすい部材のみで構成されるため、可動部材241の位置を精密に決定することができる。上述の後段の配置の順は、経路が一見長いように見えるが、単純な平板部材と転動部材であるので部品精度を高めやすい。一般的には、レンズユニット20の撮像装置10への取付け部(撮像装置10との機械的な境界部でマウントと呼ばれる)に対して防振装置200に設けられた防振レンズ212の位置を正確に決める必要があるが、上述の構成によりこれが実現される。
【0056】
(適用例2)
図11(A)は、本発明の実施例2の防振装置200を備えたレンズユニット20及び撮像装置10からなるカメラシステム(光学装置)の断面図、
図11(B)はカメラシステムの電気的構成を示すブロック図である。
図11(A)、(B)において
図5(A)、(B)と同じ機能のものには同じ番号が付けられている。レンズシステム制御回路22は、ブレ検知手段29の信号に基づいて、防振装置200に備えられた光学素子である防振レンズ212を移動させることで、撮像素子12の像を安定させて手振れの影響を抑制することができる。手ぶれ補正を行う際には、撮像素子12から得られた信号を基にレンズシステム制御回路22を介して光学素子である防振レンズ212を適切にフィードバック制御する。その他の構成は、
図5(A)、(B)と同様なので説明を割愛する。