(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、勾配路での停車時において前記シフト位置が前記パーキングレンジに切り替えられた際に、前記出力クラッチを半クラッチ状態にさせることによって、前記出力クラッチの締結を解除させる、
請求項1に記載の車両の制御装置。
前記制御部は、勾配路での停車時において前記シフト位置が前記パーキングレンジに切り替えられた際に、前記出力クラッチの作動油の油温に応じて前記出力クラッチへ供給される油圧を制御することによって、前記出力クラッチを半クラッチ状態にさせる、
請求項2に記載の車両の制御装置。
前記制御部は、勾配路での停車時において前記シフト位置が前記パーキングレンジに切り替えられた後において、前記シフト位置が前記パーキングレンジ以外のレンジに切り替えられた後に、前記出力クラッチの出力側回転数の変動が安定したと判定される場合に、前記出力クラッチの再締結を開始させる、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
前記制御部は、勾配路での停車時において前記シフト位置が前記パーキングレンジに切り替えられた際に、前記無段変速機、前記入力クラッチ及び前記出力クラッチの作動油の油温に応じて前記ライン圧を上昇させる、
請求項6に記載の車両の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
<1.動力伝達系の構成>
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係る動力伝達系1の構成について説明する。なお、動力伝達系1は本実施形態に係る制御装置100が適用される動力伝達系の一例にすぎず、制御装置100が適用される動力伝達系は、このような例に特に限定されない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る動力伝達系1の概略構成の一例を示す模式図である。
図2は、本実施形態に係る制御装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0019】
動力伝達系1は、車両に搭載され、例えば、
図1に示されるように、エンジン10と、トルクコンバータ20と、前後進切替機構30と、CVT40と、出力クラッチ50と、ロック機構60と、オイルポンプ70と、バルブユニット90と、制御装置100と、各センサとを備える。
【0020】
動力伝達系1では、例えば、トルクコンバータ20、前後進切替機構30、CVT40及び出力クラッチ50が、この順にエンジン10の出力側に連設される。エンジン10から出力される動力は、トルクコンバータ20を介して前後進切替機構30へ伝達される。前後進切替機構30に伝達された動力は、回転方向を前進方向又は後退方向に切り替えられてCVT40へ伝達される。CVT40に伝達された動力は、CVT40により変速されて駆動輪18側へ出力される。CVT40から出力された動力は、出力クラッチ50、駆動軸15、ディファレンシャルギヤ16及び車軸17を介して駆動輪18へ伝達される。
【0021】
エンジン10は、ガソリン等を燃料として動力を生成する内燃機関である。エンジン10は、本発明に係る駆動源の一例に相当する。エンジン10は、出力軸としてのクランクシャフト11を有する。クランクシャフト11には、ギヤ列12を介して機械式のオイルポンプ70が連結されている。また、クランクシャフト11は、トルクコンバータ20と接続される。
【0022】
オイルポンプ70は、エンジン10のクランクシャフト11の回転により駆動されて、バルブユニット90へ供給される油圧を発生させる。バルブユニット90は、トルクコンバータ20、前後進切替機構30、CVT40及び出力クラッチ50と油路を介して接続されており、これらの各装置へ供給される油圧を調整可能である。バルブユニット90には、各装置へ供給される油圧を制御するための制御弁(例えば、比例電磁制御弁)が設けられる。オイルポンプ70からバルブユニット90へ供給される油圧は、トルクコンバータ20、前後進切替機構30、CVT40及び出力クラッチ50へ供給される油圧の元圧であるライン圧に相当する。ゆえに、オイルポンプ70は、エンジン10により駆動されライン圧を発生させる。
【0023】
トルクコンバータ20は、エンジン10のクランクシャフト11にフロントカバー23を介して連結されるポンプインペラ22と、ポンプインペラ22に対向するとともにタービン軸25に連結されるタービンライナ21とを備える。トルクコンバータ20内には作動油が供給されており、作動油を介して、ポンプインペラ22からタービンライナ21にエンジン10から出力される動力が伝達される。また、トルクコンバータ20内には、エンジン10のクランクシャフト11とタービン軸25とを直結するロックアップクラッチ24が設けられている。タービン軸25は、前後進切替機構30と接続される。
【0024】
ロックアップクラッチ24が開放されている場合(換言すると、トルクコンバータ20のロックアップ状態が解除されている場合)には、エンジン10から出力される動力は作動油を介して前後進切替機構30へ伝達される。一方、ロックアップクラッチ24が締結されている場合(換言すると、トルクコンバータ20がロックアップ状態である場合)には、エンジン10から出力される動力が直接的に前後進切替機構30へ伝達される。
【0025】
前後進切替機構30は、プラネタリギヤ31と、前進クラッチ32と、後退ブレーキ33とを備える。また、前後進切替機構30は、CVT40のプライマリ軸44と接続される。前後進切替機構30では、前進クラッチ32及び後退ブレーキ33の締結状態に応じて、CVT40のプライマリ軸44の回転方向が切り替え可能になっている。前進クラッチ32が締結され後退ブレーキ33が開放されることにより、タービン軸25と接続された入力軸34がプライマリ軸44に対して直結されるため、プライマリ軸44が正転方向に回転し、車両の前進走行が可能となる。また、前進クラッチ32が開放され後退ブレーキ33が締結されることにより、入力軸34がプラネタリギヤ31を介してプライマリ軸44に連結されるため、プライマリ軸44が逆転方向に回転し、車両の後退走行が可能となる。
【0026】
また、前進クラッチ32及び後退ブレーキ33がともに開放されることにより、プライマリ軸44へエンジン10からの動力が伝達されない状態になる。一方、上述したように、前進クラッチ32又は後退ブレーキ33のいずれか一方が締結されることにより、プライマリ軸44へエンジン10からの動力が伝達される状態になる。プライマリ軸44へ伝達される動力は、CVT40のプライマリプーリ41へ伝達される。ゆえに、前後進切替機構30によって、エンジン10とプライマリプーリ41との間の動力の伝達が断接される。このように、前後進切替機構30は、駆動源と無段変速機における入力側要素との間の動力の伝達を断接する本発明に係る入力クラッチの一例に相当する。前進クラッチ32及び後退ブレーキ33がともに開放された状態は入力クラッチとしての前後進切替機構30が開放された状態に相当し、前進クラッチ32又は後退ブレーキ33のいずれか一方が締結された状態は入力クラッチとしての前後進切替機構30が締結された状態に相当する。
【0027】
CVT40は、プライマリプーリ41と、セカンダリプーリ42と、チェーン43と、プライマリ軸44と、セカンダリ軸45とを備える。プライマリプーリ41は、駆動源から出力される動力が入力される入力側要素の一例に相当する。また、セカンダリプーリ42は、駆動輪側へ動力を出力する出力側要素の一例に相当する。また、チェーン43は、入力側要素と出力側要素との間で動力を伝達する動力伝達部材の一例に相当する。このように、CVT40は、入力側要素、出力側要素及び動力伝達部材を有する本発明に係る無段変速機の一例に相当する。
【0028】
プライマリ軸44及びセカンダリ軸45は互いに並行に配設され、プライマリプーリ41はプライマリ軸44に固定され、セカンダリプーリ42はセカンダリ軸45に固定されている。プライマリプーリ41及びセカンダリプーリ42には、プライマリプーリ41とセカンダリプーリ42との間で動力を伝達するチェーン43が巻回されている。各プーリには固定シーブ及び可動シーブが設けられており、固定シーブ及び可動シーブによってチェーン43が挟持されている。具体的には、各プーリへ供給される油圧によって可動シーブが固定シーブ側へ押圧されることによって、チェーン43が挟持される。各プーリへ供給される油圧が調整されることにより、各プーリにおけるチェーン43の挟持圧が調整されて、各プーリ上でのチェーン43の巻き掛け半径が調整される。それにより、CVT40の変速比が調整される。CVT40は、プライマリ軸44へ入力される動力を、このように調整される変速比で変速してセカンダリ軸45へ出力する。セカンダリ軸45は、ギヤ列13及び出力クラッチ50を介して、駆動軸15と接続されている。
【0029】
出力クラッチ50は、セカンダリ軸45と駆動軸15との間を締結又は開放する。出力クラッチ50は、具体的には、摩擦式のクラッチであり、エンジン10から出力される動力が入力される入力側(セカンダリ軸45側)に設けられる入力側部材51と、出力クラッチ50へ伝達される動力が出力される出力側(駆動軸15側)に設けられる出力側部材52とを含んで構成される。入力側部材51及び出力側部材52は、具体的には、駆動軸15の軸方向に互いに対向し、当該軸方向に互いに押圧されることによって係合される。より具体的には、出力クラッチ50には入力側部材51及び出力側部材52の一方を他方に対して押圧するピストンが設けられ、出力クラッチ50に供給される油圧によって当該ピストンが押圧されることによって、入力側部材51及び出力側部材52が互いに押圧される。
【0030】
出力クラッチ50が締結されている場合には、セカンダリ軸45と駆動軸15との間で動力が伝達される。一方、出力クラッチ50が開放されている場合には、セカンダリ軸45と駆動軸15との間で動力の伝達が遮断される。ゆえに、出力クラッチ50によって、セカンダリプーリ42と駆動軸15との間の動力の伝達が断接される。このように、出力クラッチ50は、無段変速機における出力側要素と駆動軸との間の動力の伝達を断接する。なお、本明細書では、出力クラッチ50の締結が解除される場合は、出力クラッチ50が半クラッチ状態(換言すると、入力側部材51と出力側部材52とが滑り合いながら係合される状態)となる場合と、出力クラッチ50が開放される状態(換言すると、入力側部材51と出力側部材52とが互いに離隔される状態)となる場合との双方を含む。
【0031】
駆動軸15は、ディファレンシャルギヤ16及び車軸17を介して駆動輪18と接続される。出力クラッチ50を介して駆動軸15へ伝達された動力は、ディファレンシャルギヤ16によって車軸17を介して左右の駆動輪18へ分配されて伝達される。なお、駆動輪18は、前輪であっても、後輪であってもよい。また、駆動軸15へ伝達された動力は、図示しないプロペラシャフトを介して前輪及び後輪の双方へ伝達されてもよい。
【0032】
駆動軸15にはパーキングギヤ14が設けられており、パーキングギヤ14とパーキングポール19とを含んでロック機構60が構成される。パーキングポール19は、動力伝達系1において、パーキングギヤ14と噛み合うことができるように、揺動可能に設けられている。シフト位置としてパーキングレンジ(以下、Pレンジと呼ぶ。)が選択された際に、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ)が動作することによって、パーキングポール19が駆動されて揺動し、パーキングギヤ14と噛み合う。それにより、駆動軸15の回転がロックされる。このように、ロック機構60は、シフト位置としてPレンジが選択されている場合に駆動軸15の回転をロックする。上記駆動装置の駆動は、例えば、制御装置100と異なる他の制御装置によって実行され得る。
【0033】
なお、駆動軸15は、CVT40の出力側要素であるセカンダリプーリ42より駆動輪18側に設けられロック機構60により回転がロックされ得る軸の一例である。ゆえに、セカンダリプーリ42より駆動輪18側に設けられる駆動軸として駆動軸15と異なる他の駆動軸がロック機構60によってロックされてもよい。
【0034】
動力伝達系1には、上述したように、各センサが設けられ得る。例えば、動力伝達系1は、エンジン回転センサ201と、プライマリ回転センサ202と、セカンダリ回転センサ203と、出力クラッチ回転センサ204と、インヒビタスイッチ205と、加速度センサ206と、車速センサ207と、油温センサ208と、アクセル開度センサ209とを備える。
【0035】
エンジン回転センサ201は、エンジン10の回転数を検出し、検出結果を出力する。
【0036】
プライマリ回転センサ202は、プライマリ軸44の回転数を検出し、検出結果を出力する。
【0037】
セカンダリ回転センサ203は、セカンダリ軸45の回転数を検出し、検出結果を出力する。
【0038】
出力クラッチ回転センサ204は、出力クラッチ50の入力側部材51の回転数(以下、入力側回転数とも呼ぶ。)及び出力側部材52の回転数(以下、出力側回転数とも呼ぶ。)をそれぞれ検出し、検出結果を出力する。
【0039】
インヒビタスイッチ205は、運転者により選択されているシフト位置を検出し、検出結果を出力する。運転者は、例えば、車両のシフトレバーの位置を操作することによって、シフト位置を切り替えることができる。その場合、インヒビタスイッチ205は、シフトレバーの位置に基づいて選択されているシフト位置を検出する。
【0040】
加速度センサ206は、車両の加速度を検出し、検出結果を出力する。
【0041】
車速センサ207は、車両の速度である車速を検出し、検出結果を出力する。
【0042】
油温センサ208は、トルクコンバータ20、前後進切替機構30、CVT40及び出力クラッチ50の作動油の油温を検出し、検出結果を出力する。
【0043】
アクセル開度センサ209は、運転者によるアクセルペダルの操作量に相当するアクセル開度を検出し、検出結果を出力する。
【0044】
制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)及びCPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0045】
また、制御装置100は、動力伝達系1における各装置と通信を行う。制御装置100と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。例えば、制御装置100は、エンジン10、バルブユニット90及び動力伝達系1における各センサと通信を行う。本実施形態に係る制御装置100が有する機能は複数の制御装置により分割されてもよく、その場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。例えば、制御装置100が有するエンジン10の制御に関する機能と、トルクコンバータ20、前後進切替機構30、CVT40及び出力クラッチ50の制御に関する機能とは、互いに異なる制御装置に分割されてもよい。
【0046】
制御装置100は、例えば、
図2に示されるように、取得部110と、制御部120とを備える。
【0047】
取得部110は、制御装置100が行う処理において用いられる各種情報を取得する。また、取得部110は、取得した情報を制御部120へ出力する。
【0048】
例えば、取得部110は、動力伝達系1における各センサと通信することによって、各センサから出力される検出結果を取得する。
【0049】
制御部120は、取得部110により取得された情報を用いて各処理を実行する。制御部120は、具体的には、車両の走行状態に応じて、エンジン10、トルクコンバータ20、前後進切替機構30、CVT40及び出力クラッチ50の動作をそれぞれ制御する。
【0050】
制御部120は、例えば、エンジン制御部121と、トルクコンバータ制御部122と、前後進切替機構制御部123と、CVT制御部124と、出力クラッチ制御部125とを備える。
【0051】
エンジン制御部121は、エンジン10の動作を制御する。具体的には、エンジン制御部121は、エンジン10における各装置の動作を制御することによって、スロットル開度、点火時期及び燃料噴射量等を制御する。それにより、エンジン制御部121は、エンジン10の出力を制御し得る。
【0052】
エンジン制御部121は、具体的には、加速要求に応じてエンジン10の出力を制御する。なお、エンジン制御部121は、車速が比較的低く加速要求が生じていない場合(例えば、停車直前や停車中)、基本的には、再加速時又は再発進時における応答性を十分に確保し得る程度のアイドル回転数でエンジン10をアイドル運転させる。また、加速要求は、アクセル開度の検出結果に基づいて算出され得る。
【0053】
トルクコンバータ制御部122は、トルクコンバータ20の動作を制御する。具体的には、トルクコンバータ制御部122は、バルブユニット90の動作を制御することによって、ロックアップクラッチ24へ供給される油圧を制御する。それにより、トルクコンバータ制御部122は、トルクコンバータ20のロックアップ状態を制御し得る。
【0054】
トルクコンバータ制御部122は、具体的には、車速が閾値より高い場合にトルクコンバータ20をロックアップ状態にし、車速が閾値以下である場合にトルクコンバータ20のロックアップ状態を解除させる。なお、上記の閾値は、車両の設計仕様に応じて適宜設定され得る。
【0055】
前後進切替機構制御部123は、前後進切替機構30の動作を制御する。具体的には、前後進切替機構制御部123は、バルブユニット90の動作を制御することによって、前進クラッチ32及び後退ブレーキ33へ供給される油圧を制御する。それにより、前後進切替機構制御部123は、前後進切替機構30の締結状態を制御し得る。
【0056】
前後進切替機構制御部123は、基本的には、シフト位置に応じて前後進切替機構30の締結状態を制御する。例えば、前後進切替機構制御部123は、シフト位置がPレンジ又はニュートラルレンジ(以下、Nレンジとも呼ぶ。)である場合に、前後進切替機構30を開放させる。また、例えば、前後進切替機構制御部123は、シフト位置がドライブレンジ(以下、Dレンジとも呼ぶ。)又はリバースレンジ(以下、Rレンジとも呼ぶ。)である場合に、前後進切替機構30を締結させる。なお、シフト位置がDレンジである場合にはプライマリ軸44が正転方向に回転し、シフト位置がRレンジである場合にプライマリ軸44が逆転方向に回転するように前後進切替機構30が締結される。Dレンジ及びRレンジを走行レンジとも総称する。
【0057】
CVT制御部124は、CVT40の動作を制御する。具体的には、CVT制御部124は、バルブユニット90の動作を制御することによって、プライマリプーリ41及びセカンダリプーリ42へ供給される油圧を制御する。それにより、CVT制御部124は、CVT40の変速比を制御し得る。
【0058】
CVT制御部124は、具体的には、車速及びアクセル開度に基づいて目標変速比を決定し、CVT40の変速比を目標変速比に近づくように制御する。例えば、CVT制御部124は、プライマリ軸44の回転数及びセカンダリ軸45の回転数の検出結果に基づいてCVT40の変速比を制御する。
【0059】
出力クラッチ制御部125は、出力クラッチ50の動作を制御する。具体的には、出力クラッチ制御部125は、バルブユニット90の動作を制御することによって、出力クラッチ50へ供給される油圧を制御する。それにより、出力クラッチ制御部125は、出力クラッチ50の締結状態を制御し得る。
【0060】
出力クラッチ制御部125は、基本的には、出力クラッチ50を締結させる。一方、出力クラッチ制御部125は、出力クラッチ50の入力トルクに応じた油圧制御をしており、駆動源からの入力トルク以外の外力が駆動輪18側から入力された時に出力クラッチをスリップさせCVT40を保護する。
【0061】
本実施形態に係る制御装置100は、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた場合に、駆動軸15に作用する捩りトルクに起因してCVT40へトルクが入力されることを抑制するための制御である勾配路Pレンジ制御を実行する。それにより、無段変速機であるCVT40の耐久性の低下を抑制することが可能となる。ゆえに、以下では、制御装置100が行う制御のうち、特に勾配路Pレンジ制御について説明する。なお、本明細書において、勾配路は、上り坂と下り坂の双方を含む。
【0062】
なお、以下では、勾配路Pレンジ制御が実行されない通常時(例えば、勾配路での停車時においてPレンジへの切り替えが行われていない場合、平地での停車時又は走行時等)において、制御装置100によって実行される制御を通常制御と呼ぶ。通常制御では、動力伝達系1の各装置は、上述したように、車両の走行状態に応じて適宜制御される。
【0063】
<2.制御装置の動作>
続いて、
図3〜
図7を参照して、本実施形態に係る制御装置100の動作について説明する。
【0064】
図3は、本実施形態に係る制御装置100が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図3に示される制御フローは、例えば、あらかじめ設定された設定時間おきに繰り返される。なお、
図3に示される制御フローは、勾配路Pレンジ制御が実行されていない状態(換言すると、通常制御が実行されている状態)において開始される。
【0065】
図3に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS501において、制御部120は、車両が勾配路において停車しているか否かを判定する。車両が勾配路において停車していると判定された場合(ステップS501/YES)、ステップS503へ進む。一方、車両が勾配路において停車していると判定されなかった場合(ステップS501/NO)、ステップS501の判定処理が繰り返される。
【0066】
例えば、制御部120は、車速が車速基準値V
0以下であり、かつ、車両の加速度の前後方向成分の絶対値が加速度基準値G
0以上である状態で所定時間が経過した場合に、車両が勾配路において停車していると判定する。車速基準値V
0は、具体的には、車両が停車しているか否かを適切に判定し得る値に適宜設定される。加速度基準値G
0は、具体的には、駆動軸15がロックされた場合に駆動軸15に対して捩りトルクが作用し得る程度の勾配を有する路面に車両が位置しているか否かを適切に判定し得る値に適宜設定される。上記所定時間は、具体的には、車速及び車両の加速度の前後方向成分の絶対値の変化が安定したと判定し得る値に適宜設定される。
【0067】
ステップS503において、制御部120は、シフト位置がPレンジに切り替えられたか否かを判定する。シフト位置がPレンジに切り替えられたと判定された場合(ステップS503/YES)、ステップS505へ進む。一方、シフト位置がPレンジに切り替えられたと判定されなかった場合(ステップS503/NO)、ステップS503の判定処理が繰り返される。
【0068】
例えば、制御部120は、インヒビタスイッチ205から検出結果としてPレンジ以外のレンジを示す信号が出力される状態からPレンジを示す信号が出力される状態へ切り替わった後に所定時間が経過した場合に、シフト位置がPレンジに切り替えられたと判定する。上記所定時間は、具体的には、インヒビタスイッチ205からの検出結果がノイズ等により一時的に変化したわけではないことを判定し得る値に適宜設定される。
【0069】
以下で説明するステップS505以降の制御が、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた場合に制御装置100によって実行される勾配路Pレンジ制御に相当する。
【0070】
次に、ステップS505において、出力クラッチ制御部125は、出力クラッチ50を半クラッチ状態にさせる。具体的には、出力クラッチ制御部125は、出力クラッチ50へ供給される油圧を制御することによって、出力クラッチ50を半クラッチ状態にさせる。
【0071】
例えば、出力クラッチ制御部125は、学習制御において得られる学習値に対して出力クラッチ50の作動油の油温に応じた値を加算することによって得られる油圧を半クラッチ油圧P
0として決定する。出力クラッチ制御部125は、出力クラッチ50へ供給される油圧をこのように決定される半クラッチ油圧P
0に制御することによって、出力クラッチ50を半クラッチ状態にさせることができる。
【0072】
上記の学習制御では、具体的には、出力クラッチ50へ実際に供給された油圧と出力クラッチ50における入力側部材51及び出力側部材52の間の滑り状態との比較結果に基づいて学習値が補正される。学習値を示す情報は、制御装置100の記憶素子に記憶され得る。このような学習値を利用することによって、出力クラッチ制御部125は、半クラッチ油圧P
0の値を決定し得る。半クラッチ油圧P
0は、具体的には、駆動軸15に作用する捩りトルクに起因したトルクが出力クラッチ50に入力されていない場合においては入力側部材51及び出力側部材52の間で滑りが生じない出力クラッチ50の締結状態を実現し得る値に決定される。例えば、半クラッチ油圧P
0は、出力クラッチ50の作動油の油温依存特性に応じて決定される。このように、出力クラッチ制御部125は、出力クラッチ50の作動油の油温に応じて出力クラッチ50へ供給される油圧を制御することによって、出力クラッチ50を半クラッチ状態にさせてもよい。
【0073】
上記のように、制御部120は、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた際に、出力クラッチ50の締結を解除させる。具体的には、制御部120は、出力クラッチ50を半クラッチ状態にさせることによって、出力クラッチ50の締結を解除させる。
【0074】
次に、ステップS507において、エンジン制御部121は、エンジン10のアイドル回転数を上昇させる。具体的には、エンジン制御部121は、エンジン10のアイドル回転数をシフト位置の切り替え前と比較して上昇させる。それにより、ライン圧がシフト位置の切り替え前と比較して上昇する。
【0075】
例えば、エンジン制御部121は、ライン圧の目標値である目標ライン圧を上昇させ、ライン圧が目標ライン圧に制御されることを実現し得るようにエンジン10のアイドル回転数の目標値である目標回転数を上昇させる。エンジン制御部121は、エンジン10のアイドル回転数をこのように上昇する目標回転数に制御することによって、ライン圧を目標ライン圧に沿って上昇させることができる。
【0076】
目標ライン圧は、具体的には、シフト位置が走行レンジに切り替えられた後に前後進切替機構30及び出力クラッチ50を同時に作動(例えば、前後進切替機構30及び出力クラッチ50の締結状態を切り替えるための各ピストンを同時に駆動)させた場合であっても動力伝達系1の各装置へ供給される油圧の不足が生じない状態を実現し得る値に決定される。例えば、目標ライン圧は、CVT40、前後進切替機構30及び出力クラッチ50の作動油の油温依存特性に応じて決定される。ゆえに、目標回転数は、例えば、CVT40、前後進切替機構30及び出力クラッチ50の作動油の油温に応じた値に決定される。このように、エンジン制御部121は、エンジン10のアイドル回転数をCVT40、前後進切替機構30及び出力クラッチ50の作動油の油温に応じた目標回転数に制御することによって、当該油温に応じてライン圧を上昇させてもよい。
【0077】
上記のように、制御部120は、ライン圧をシフト位置の切り替え前と比較して上昇させる。具体的には、制御部120は、エンジン10のアイドル回転数をシフト位置の切り替え前と比較して上昇させることによって、ライン圧を上昇させる。また、制御部120は、例えば、CVT40、前後進切替機構30及び出力クラッチ50の作動油の油温に応じてライン圧を上昇させる。
【0078】
次に、ステップS509において、制御部120は、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられたか否かを判定する。シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられたと判定された場合(ステップS509/YES)、ステップS511へ進む。一方、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられたと判定されなかった場合(ステップS509/NO)、ステップS509の判定処理が繰り返される。
【0079】
例えば、制御部120は、インヒビタスイッチ205から検出結果としてPレンジを示す信号が出力される状態からPレンジ以外のレンジを示す信号が出力される状態へ切り替わった後に所定時間が経過した場合に、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられたと判定する。上記所定時間は、具体的には、インヒビタスイッチ205からの検出結果がノイズ等により一時的に変化したわけではないことを判定し得る値に適宜設定される。
【0080】
ここで、シフト位置がPレンジに切り替えられた際に、上述したように、駆動軸15の回転がロック機構60によりロックされる。ゆえに、勾配路での停車時には、運転者によるブレーキ操作が解除されることに伴いブレーキ装置による車輪の制動が解除されることによって、駆動軸15に対して駆動輪18からの捩りトルクが作用し得る。駆動軸15に作用する捩りトルクは、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた際に、ロック機構60による駆動軸15のロックが解除されることによって開放される。そして、捩りトルクが開放されることに起因するトルクが出力クラッチ50の出力側部材52へ入力される。
【0081】
ステップS511において、制御部120は、出力クラッチ50の出力側回転数の変動が安定したか否かを判定する。出力クラッチ50の出力側回転数の変動が安定したと判定された場合(ステップS511/YES)、ステップS513へ進む。一方、出力クラッチ50の出力側回転数の変動が安定したと判定されなかった場合(ステップS511/NO)、ステップS511の判定処理が繰り返される。
【0082】
例えば、制御部120は、出力クラッチ50の出力側回転数が回転数基準値以上であり、かつ、出力クラッチ50の出力側回転数の変化率が変化率基準値以上であることが検出された後に所定時間が経過した場合に、出力クラッチ50の出力側回転数の変動が安定したと判定する。回転数基準値及び変化率基準値は、具体的には、駆動軸15のロックが解除されることに伴い、捩りトルクが開放されることに起因するトルクが出力クラッチ50の出力側部材52に入力されたか否かを適切に判定し得る値に適宜設定される。上記所定時間は、具体的には、捩りトルクが開放されることに起因するトルクが出力クラッチ50の出力側部材52に入力された時点から出力クラッチ50の出力側回転数の変動の幅が比較的小さくなるまでの間にかかると予想される時間に適宜設定される。
【0083】
なお、制御部120は、出力クラッチ50の出力側回転数が回転数基準値以上であり、かつ、出力クラッチ50の出力側回転数の変化率が変化率基準値以上であることが検出された後において、出力クラッチ50の出力側回転数の変動の幅に基づいて、出力クラッチ50の出力側回転数の変動が安定したか否かを判定してもよい。
【0084】
ステップS513において、出力クラッチ制御部125は、出力クラッチ50の再締結を開始させる。具体的には、出力クラッチ制御部125は、出力クラッチ50へ供給される油圧を制御することによって、出力クラッチ50を再締結させる。
【0085】
例えば、出力クラッチ制御部125は、一定の時間変化率で出力クラッチ50へ供給される油圧を上昇させることによって、出力クラッチ50を再締結させる。それにより、出力クラッチ50の締結状態を半クラッチ状態から入力側部材51及び出力側部材52の間で滑りが生じない状態へ遷移させることによって、出力クラッチ50を再締結させることができる。
【0086】
上記のように、制御部120は、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた際に、出力クラッチ50の締結を解除させ、その後、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた後に出力クラッチ50を再締結させる。具体的には、制御部120は、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた後に、出力クラッチ50の出力側回転数の変動が安定したと判定される場合に、出力クラッチ50の再締結を開始させる。
【0087】
次に、ステップS515において、制御部120は、出力クラッチ50の再締結が終了したか否かを判定する。出力クラッチ50の再締結が終了したと判定された場合(ステップS515/YES)、ステップS517へ進む。一方、出力クラッチ50の再締結が終了したと判定されなかった場合(ステップS515/NO)、ステップS515の判定処理が繰り返される。
【0088】
例えば、制御部120は、出力クラッチ50へ供給される油圧が油圧基準値P
1以上である状態で所定時間が経過した場合に、出力クラッチ50の再締結が終了したと判定する。油圧基準値P
1は、具体的には、出力クラッチ50の入力側部材51及び出力側部材52の一方を他方に対して押圧するピストンの移動が停止する圧力に設定される。上記所定時間は、具体的には、出力クラッチ50へ供給される油圧の上昇が終了したと判定し得る値に適宜設定される。
【0089】
ステップS517において、制御部120は、シフト位置が走行レンジ(たとえば、Dレンジ又はRレンジ)に切り替えられたか否かを判定する。シフト位置が走行レンジに切り替えられたと判定された場合(ステップS517/YES)、ステップS519へ進む。一方、シフト位置が走行レンジに切り替えられたと判定されなかった場合(ステップS517/NO)、ステップS517の判定処理が繰り返される。
【0090】
例えば、制御部120は、インヒビタスイッチ205から検出結果として走行レンジ以外のレンジを示す信号が出力される状態から走行レンジを示す信号が出力される状態へ切り替わった後に所定時間が経過した場合に、シフト位置が走行レンジに切り替えられたと判定する。上記所定時間は、具体的には、インヒビタスイッチ205からの検出結果がノイズ等により一時的に変化したわけではないことを判定し得る値に適宜設定される。
【0091】
ステップS519において、前後進切替機構制御部123は、前後進切替機構30を締結させる。
【0092】
ここで、前後進切替機構制御部123は、上述したように、シフト位置がPレンジ又はNレンジである場合に、前後進切替機構30を開放させる。このように、制御部120は、シフト位置が走行レンジ以外のレンジに切り替えられた場合に、前後進切替機構30を開放させる。ゆえに、シフト位置がPレンジに切り替えられる以前において、例えば、シフト位置が走行レンジからNレンジに切り替えられた際に、前後進切替機構30は開放される。よって、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた際に、前後進切替機構30が開放された状態で、勾配路Pレンジ制御が実行され得る。
【0093】
具体的には、前後進切替機構制御部123は、前後進切替機構30へ供給される油圧を制御することによって、前後進切替機構30を締結させる。例えば、前後進切替機構制御部123は、シフト位置がDレンジに切り替えられた場合、プライマリ軸44が正転方向に回転するように前後進切替機構30を締結させる。また、例えば、前後進切替機構制御部123は、シフト位置がRレンジに切り替えられた場合、プライマリ軸44が逆転方向に回転するように前後進切替機構30を締結させる。
【0094】
上記のように、制御部120は、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた後において、出力クラッチ50の再締結が終了したと判定され、かつ、シフト位置が走行レンジに切り替えられている場合に、前後進切替機構30を締結させる。
【0095】
次に、
図3に示される制御フローは終了する。
【0096】
なお、上記では、出力クラッチ50の出力側回転数の変動が安定したと判定されたことをトリガとして出力クラッチ50の再締結が開始される例を説明したが、制御部120は、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられたと判定された後に所定時間が経過した場合に出力クラッチ50の再締結を開始させてもよい。
【0097】
シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられたと判定された後に所定時間が経過した場合に出力クラッチ50の再締結を開始させることによって、出力クラッチ50の出力側回転数の変動が生じない場合に出力クラッチ50の再締結が開始されない事態を回避することができる。上記所定時間は、具体的には、出力クラッチ50の出力側回転数の変動が生じたか否かを適切に判定し得る時間に適宜設定される。
【0098】
続いて、
図4及び
図5を参照して、
図3に示される制御装置100による制御が行われる場合についての、勾配路での停車時における各状態量の推移について説明する。
【0099】
図4は、本実施形態に係る制御装置100による制御が行われる場合についての、勾配路での停車時における各状態量の推移の一例を示す説明図である。
図4では、走行中の車両がブレーキ操作に伴い減速し、その後、停車している場合における各状態量の推移が示されている。
【0100】
なお、
図4及び後述される
図6において、「Pレンジ信号」では、インヒビタスイッチ205から検出結果としてPレンジを示す信号が出力されているか否かが示されている。また、「Dレンジ信号」では、インヒビタスイッチ205から検出結果としてDレンジを示す信号が出力されているか否かが示されている。また、「勾配路停車判定」では、車両が勾配路において停車しているか否かの判定結果が示されている。また、「出力クラッチ油圧」では、出力クラッチ50へ供給される油圧が示されている。また、「出力クラッチの回転数」では、実線により入力側回転数が示され、破線により出力側回転数が示されている。
【0101】
例えば、
図4に示されるように、時刻T1以前において、車速が低下して車速基準値V
0を下回り、車両が停車する。また、時刻T1以前において、車両の加速度の前後方向成分の絶対値が上昇して加速度基準値G
0を上回る。そして、車速が車速基準値V
0以下であり、かつ、車両の加速度の前後方向成分の絶対値が加速度基準値G
0以上となった時点の後の時刻T1において、制御部120により車両が勾配路において停車していると判定される。
【0102】
なお、時刻T1以前において、トルクコンバータ20のロックアップ状態が解除された状態で、エンジン10が再加速時又は再発進時における応答性を十分に確保し得る程度のアイドル回転数でアイドル運転されている。また、時刻T1以前において、車速の低下に伴い、プライマリ軸44及びセカンダリ軸45の回転数が低下し、各軸の回転が停止する。また、時刻T1以前において、出力クラッチ50は締結されている。
【0103】
その後、時刻T2において、シフト位置がDレンジから走行レンジ以外のレンジ(例えば、Nレンジ)に切り替えられることに伴い、前後進切替機構30が開放される。
【0104】
その後、時刻T3において、シフト位置がPレンジに切り替えられる。そして、時刻T3の後の時刻T4において、制御部120によりシフト位置がPレンジに切り替えられと判定され、勾配路Pレンジ制御が実行される。それにより、出力クラッチ50へ供給される油圧が半クラッチ油圧P
0まで低下し、出力クラッチ50が半クラッチ状態になる。また、目標回転数が上昇することに伴いエンジン10のアイドル回転数が上昇することにより、ライン圧が目標ライン圧に沿って上昇する。
【0105】
図5は、本実施形態に係る制御装置100による制御が行われた場合についての、勾配路での停車時にシフト位置がPレンジに切り替えられた後の動力伝達系1における前後進切替機構30及び出力クラッチ50による動力の伝達の断接状態を説明するための図である。
【0106】
上記のように、本実施形態では、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた際に、出力クラッチ50の締結が解除される。それにより、動力伝達系1は、シフト位置がPレンジに切り替えられた後において、具体的には、前後進切替機構30が開放され出力クラッチ50の締結が解除された状態となる。このような状態では、
図5に示されるように、前後進切替機構30よりエンジン10側の部分R1と、前後進切替機構30と出力クラッチ50との間のCVT40を含む部分R2との間において、動力の伝達は遮断される。また、前後進切替機構30と出力クラッチ50との間のCVT40を含む部分R2と、出力クラッチ50より駆動軸15側の部分R3との間において、少なくとも捩りトルクが開放されることに起因するトルクのように比較的大きな動力の伝達は遮断される。
【0107】
その後、時刻T5において、ブレーキ操作が解除される。それにより、ブレーキ装置による車輪の制動が解除される。そして、時刻T6において、ブレーキ操作が再開される。ここで、シフト位置がPレンジに切り替えられた時刻T3以後において、駆動軸15の回転はロック機構60によりロックされている。ゆえに、時刻T5において、ブレーキ装置による車輪の制動が解除されることによって、駆動軸15に対して駆動輪18側から捩りトルクが作用する。
【0108】
その後、時刻T7において、シフト位置がPレンジからPレンジ以外のレンジ(例えば、Nレンジ)に切り替えられる。それにより、ロック機構60による駆動軸15のロックが解除されて捩りトルクが開放される。そして、捩りトルクが開放されることに起因するトルクが出力クラッチ50の出力側部材52へ入力される。ゆえに、
図4に示されるように、時刻T7において、出力クラッチ50の出力側回転数の変動が生じる。ここで、出力クラッチ50の締結は解除されているので、捩りトルクが開放されることに起因するトルクが出力クラッチ50の入力側部材51へ入力することが抑制される。ゆえに、入力側回転数と出力側回転数とは相違し、入力側回転数の変動の発生が抑制される。その後、出力クラッチ50の出力側回転数の変動が時間の経過に伴って減衰される。そして、時刻T7の後の時刻T9において、制御部120により出力クラッチ50の出力側回転数の変動が安定したと判定され、出力クラッチ50へ供給される油圧が上昇し始めて出力クラッチ50の再締結が開始される。
【0109】
上記のように、本実施形態では、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた後において、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた後に出力クラッチ50が再締結される。ゆえに、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた際に、動力伝達系1において駆動軸15とCVT40との間の出力クラッチ50の締結が解除された状態が維持されている。それにより、
図5に示されるように、前後進切替機構30と出力クラッチ50との間のCVT40を含む部分R2と、出力クラッチ50より駆動軸15側の部分R3との間において、少なくとも捩りトルクが開放されることに起因するトルクのように比較的大きな動力の伝達は遮断される。よって、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた際に、駆動軸15のロックが解除されることに伴い、捩りトルクが開放されることに起因するトルクがCVT40へ入力されることを抑制することができる。ゆえに、例えば、
図4に示されるように、出力クラッチ50の出力側回転数の変動が生じる時刻T7において、プライマリ軸44の回転数の変動は抑制されている。
【0110】
時刻T9以後において、出力クラッチ50へ供給される油圧が上昇して油圧基準値P
1を上回る。そして、時刻T9より後の時刻T10において、制御部120により出力クラッチ50の再締結が終了したと判定される。ここで、時刻T9より前の時刻T8において、シフト位置がDレンジに切り替えられている。ゆえに、時刻T10において、前後進切替機構30が締結される。そして、勾配路Pレンジ制御が終了し、通常制御が実行される。よって、時刻T10の後において、目標回転数が低下することに伴いエンジン10のアイドル回転数が通常制御時のアイドル回転数へ低下する。また、アイドル回転数の低下に伴い、ライン圧が低下し通常制御時の目標ライン圧に制御される。
【0111】
上記のように、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた後において、出力クラッチ50の再締結が終了したと判定され、かつ、シフト位置が走行レンジに切り替えられている場合に、前後進切替機構30が締結され得る。ゆえに、例えば、
図4に示されるように、シフト位置がDレンジに切り替えられた時刻T8から出力クラッチ50の再締結が終了する時刻T10までの間において前後進切替機構30の締結は行われず、時刻T10において前後進切替機構30の締結が行われてもよい。
【0112】
ここで、
図6及び
図7を参照して、参考例に係る制御装置による制御が行われる場合についての、勾配路での停車時における各状態量の推移について説明する。
【0113】
参考例に係る動力伝達系9は、上述した動力伝達系1と異なり、本実施形態に係る制御装置100に替えて参考例に係る制御装置を備える。参考例に係る制御装置は、本実施形態に係る制御装置100と異なり、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた場合に、勾配路Pレンジ制御を実行せず、通常制御を継続して実行する。
【0114】
図6は、参考例に係る制御装置による制御が行われる場合についての、勾配路での停車時における各状態量の推移の一例を示す説明図である。なお、
図6に示される例では、車両の速度の推移、加速度の前後方向成分の絶対値の推移及び運転者による各種操作が
図4に示される例と同様であるものとする。
【0115】
図6に示されるように、車両が勾配路で停車している時刻T3において、シフト位置がPレンジに切り替えられる。しかしながら、参考例では、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた場合に、勾配路Pレンジ制御が実行されず、通常制御が継続して実行される。ゆえに、時刻T3以後において、
図4に示される例と異なり、出力クラッチ50へ供給される油圧が時刻T3以前の油圧に維持されるので、出力クラッチ50は締結された状態に維持される。また、時刻T3以後において、
図4に示される例と異なり、エンジン10のアイドル回転数が上昇せずに時刻T3以前の回転数に維持されるので、ライン圧は上昇せずに時刻T3以前の圧力に維持される。
【0116】
図7は、参考例に係る制御装置による制御が行われた場合についての、勾配路での停車時にシフト位置がPレンジに切り替えられた後の動力伝達系9における前後進切替機構30及び出力クラッチ50による動力の伝達の断接状態を説明するための図である。
【0117】
上記のように、参考例では、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた場合に、出力クラッチ50は締結された状態に維持される。なお、シフト位置がPレンジに切り替えられる時刻T3より前の時刻T2において、
図4に示される例と同様に、前後進切替機構30が開放される。ゆえに、動力伝達系9は、シフト位置がPレンジに切り替えられた後において、具体的には、前後進切替機構30が開放され出力クラッチ50が締結された状態となる。このような状態では、
図7に示されるように、前後進切替機構30よりエンジン10側の部分R1と、前後進切替機構30より駆動輪18側のCVT40及び駆動軸15を含む部分R4との間において、動力の伝達は遮断される。しかしながら、前後進切替機構30より駆動輪18側のCVT40及び駆動軸15を含む部分R4において、CVT40と駆動軸15との間で比較的大きな動力の伝達を含んで動力の伝達が行われ得る。
【0118】
その後、時刻T5において、ブレーキ操作が解除されてブレーキ装置による車輪の制動が解除されることによって、
図4に示される例と同様に、駆動軸15に対して駆動輪18側から捩りトルクが作用する。
【0119】
その後、時刻T7において、シフト位置がPレンジからPレンジ以外のレンジ(例えば、Nレンジ)に切り替えられる。それにより、ロック機構60による駆動軸15のロックが解除されて捩りトルクが開放される。そして、出力クラッチ50が締結されているので、捩りトルクが開放されることに起因するトルクは、出力クラッチ50の出力側部材52から入力側部材51へ入力され、セカンダリプーリ42側からCVT40へ入力される。ここで、入力側部材51と出力側部材52とは一体として回転し、入力側回転数と出力側回転数とが一致する。よって、
図6に示されるように、時刻T7において、出力クラッチ50の出力側回転数及び入力側回転数の双方について変動が生じる。
【0120】
上記のように、参考例では、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた際に、動力伝達系9において駆動軸15とCVT40との間の出力クラッチ50が締結された状態が維持されている。それにより、
図7に示されるように、前後進切替機構30より駆動輪18側のCVT40及び駆動軸15を含む部分R4において、CVT40と駆動軸15との間で比較的大きな動力の伝達を含んで動力の伝達が行われ得る。よって、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた際に、駆動軸15のロックが解除されることに伴い、捩りトルクが開放されることに起因するトルクがCVT40へ入力される。ゆえに、例えば、
図6に示されるように、出力クラッチ50の出力側回転数及び入力側回転数の変動が生じる時刻T7において、プライマリ軸44の回転数の変動が生じている。参考例では、捩りトルクが開放されることに起因するトルクがCVT40へ入力されることによって、CVT40のチェーン43の滑りが生じ、CVT40の耐久性が低下し得る。
【0121】
そして、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた時刻T7より後の時刻T8において、シフト位置がDレンジに切り替えられることに伴い、前後進切替機構30が締結される。
【0122】
<3.制御装置の効果>
続いて、本実施形態に係る制御装置100の効果について説明する。
【0123】
本実施形態に係る制御装置100では、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた際に、出力クラッチ50の締結が解除され、その後、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた後に出力クラッチ50が再締結される。それにより、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた際に、動力伝達系1において駆動軸15とCVT40との間の出力クラッチ50の締結が解除された状態を実現することができる。ゆえに、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた際に、駆動軸15のロックが解除されることに伴い、捩りトルクが開放されることに起因するトルクがCVT40へ入力されることを抑制することができる。よって、CVT40のチェーン43の滑りが生じることを抑制することができるので、CVT40の耐久性の低下を抑制することができる。
【0124】
また、本実施形態に係る制御装置100では、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた際に、出力クラッチ50が半クラッチ状態になることによって、出力クラッチ50の締結が解除され得る。それにより、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた後において、出力クラッチ50を迅速に再締結させることができる。ゆえに、車両の再発進の応答性を向上させることができる。
【0125】
また、本実施形態に係る制御装置100では、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた際に、出力クラッチ50の作動油の油温に応じて出力クラッチ50へ供給される油圧が制御されることによって、出力クラッチ50が半クラッチ状態になり得る。それにより、出力クラッチ50の締結圧を、作動油の油温の変化に伴う粘度の変化に応じて適切に制御することができる。よって、捩りトルクが開放されることに起因するトルクがCVT40へ入力されることを適切に抑制しつつ、車両の再発進の応答性を向上させることができる。
【0126】
また、本実施形態に係る制御装置100では、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた後において、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた後に、出力クラッチ50の出力側回転数の変動が安定したと判定される場合に、出力クラッチ50の再締結が開始し得る。ここで、出力クラッチ50の出力側回転数の変動が安定する前に出力クラッチ50の再締結を開始した場合、捩りトルクが開放されることに起因するトルクの一部がCVT40へ入力され得る。ゆえに、出力クラッチ50の出力側回転数の変動が安定したと判定される場合に出力クラッチ50の再締結を開始させることによって、捩りトルクが開放されることに起因するトルクがCVT40へ入力されることをより効果的に抑制することができる。
【0127】
また、本実施形態に係る制御装置100では、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた後において、出力クラッチ50の再締結が終了したと判定され、かつ、シフト位置が走行レンジに切り替えられている場合に、入力クラッチとしての前後進切替機構30が締結され得る。それにより、シフト位置が走行レンジに切り替えられた後に前後進切替機構30及び出力クラッチ50が同時に作動することを抑制することができる。ゆえに、動力伝達系1の各装置へ供給される油圧の不足が生じることを抑制することができる。
【0128】
また、本実施形態に係る制御装置100では、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた際に、CVT40、入力クラッチとしての前後進切替機構30及び出力クラッチ50へ供給される油圧の元圧であるライン圧が、シフト位置の切り替え前と比較して上昇し得る。それにより、シフト位置が走行レンジに切り替えられた後に前後進切替機構30及び出力クラッチ50が作動することに伴い、動力伝達系1の各装置へ供給される油圧の不足が生じることをより効果的に抑制することができる。具体的には、シフト位置が走行レンジに切り替えられた後に前後進切替機構30及び出力クラッチ50が同時に作動した場合であっても、動力伝達系1の各装置へ供給される油圧の不足が生じることを抑制することができる。
【0129】
さらに、シフト位置がPレンジに切り替えられた後にPレンジ以外のレンジに切り替えられた際におけるライン圧を高くすることができるので、CVT40におけるチェーン43の挟持圧を高くすることができる。それにより、捩りトルクが開放されることに起因するトルクの一部がCVT40へ入力された場合に、CVT40のチェーン43の滑りが生じることを抑制することができる。
【0130】
また、本実施形態に係る制御装置100では、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた際に、CVT40、入力クラッチとしての前後進切替機構30及び出力クラッチ50の作動油の油温に応じてライン圧が上昇し得る。それにより、ライン圧を作動油の油温の変化に伴う粘度の変化に応じて適切に上昇させることができる。よって、動力伝達系1の各装置へ供給される油圧の不足が生じることをさらに効果的に抑制することができる。さらに、捩りトルクが開放されることに起因するトルクの一部がCVT40へ入力された場合に、CVT40のチェーン43の滑りが生じることを効果的に抑制することができる。
【0131】
また、本実施形態に係る制御装置100では、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた際に、エンジン10のアイドル回転数がシフト位置の切り替え前と比較して上昇することによって、ライン圧が上昇し得る。それにより、エンジン10により駆動されライン圧を発生させるオイルポンプ70が設けられる動力伝達系1の各装置のライン圧を適切に上昇させることができる。
【0132】
<4.むすび>
以上説明したように、本実施形態に係る制御装置100は、勾配路での停車時においてシフト位置がPレンジに切り替えられた際に、出力クラッチ50の締結を解除させ、その後、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた後に出力クラッチ50を再締結させる制御部120を備える。それにより、シフト位置がPレンジ以外のレンジに切り替えられた際に、出力クラッチ50の締結が解除された状態を実現することができるので、駆動軸15のロックが解除されることに伴い、捩りトルクが開放されることに起因するトルクがCVT40へ入力されることを抑制することができる。よって、CVT40のチェーン43の滑りが生じることを抑制することができるので、CVT40の耐久性の低下を抑制することができる。
【0133】
上記では、動力伝達系1に動力伝達部材として各プーリの間に巻回されたチェーンを備えるチェーン式CVTであるCVT40が設けられる例を説明したが、動力伝達系1に設けられる無段変速機はこのような例に限定されない。例えば、動力伝達系1に設けられる無段変速機は、動力伝達部材としてベルトを備えるベルト式CVTであってもよい。また、例えば、動力伝達系1に設けられる無段変速機は、トロイダル式CVTであってもよい。
【0134】
また、上記では、動力伝達系1に駆動源としてエンジン10が設けられる例を説明したが、動力伝達系1に設けられる駆動源はこのような例に限定されない。例えば、動力伝達系1に設けられる駆動源は、モータであってもよい。
【0135】
また、上記では、エンジン10により駆動されライン圧を発生させるオイルポンプ70が設けられる例を説明したが、動力伝達系1に設けられるオイルポンプはこのような例に限定されない。例えば、動力伝達系1に設けられるオイルポンプは、エンジン10と異なる他の駆動源(例えば、モータ)により駆動されライン圧を発生させるオイルポンプであってもよい。その場合、制御装置100は、当該他の駆動源の動作を制御することによって、ライン圧を制御し得る。
【0136】
また、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。例えば、
図3に示したフローチャートについて、ステップS501及びステップS503の処理は当該フローチャートに示された順序で実行されなくてもよく、並列的に実行されてもよい。また、ステップS505及びステップS507の処理は当該フローチャートに示された順序で実行されなくてもよく、並列的に実行されてもよい。また、ステップS515及びステップS517の処理は当該フローチャートに示された順序で実行されなくてもよく、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0137】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。