(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キャリアピースは、前記第1のワイヤ抜止部と前記ワイヤ挿通溝の延在方向に離間して、前記駆動ワイヤが前記ワイヤ挿通溝から離脱する方向への移動を規制する第2のワイヤ抜止部を有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のウインドレギュレータ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1、
図2は、本実施形態によるウインドレギュレータ1の構成を示す正面図(車外側から見た図)、背面図(車内側から見た図)である。以下の説明中の上、下、前、後、車内、車外の各方向は、図中に記載した矢線方向を基準とする。また、図中の「車外側」が特許請求の範囲の「天面側」に相当し、図中の「前方」が特許請求の範囲の「一端側」に相当し、図中の「後方」が特許請求の範囲の「他端側」に相当する。
【0016】
ウインドレギュレータ1は、車両のドアパネル(図示略)に取り付けられてウインドガラス(図示略)を昇降させる。ウインドレギュレータ1は、車両のドアパネルに固定される4つのワイヤガイド10UF、10UL、10LF、10LLを有している。ワイヤガイド10UFは上方かつ前方に配置されており、ワイヤガイド10ULは上方かつ後方に配置されており、ワイヤガイド10LFは下方かつ前方に配置されており、ワイヤガイドLLは下方かつ後方に配置されている。各ワイヤガイド10UF、10UL、10LF、10LLの内部には、回転可能なプーリ(図示略)又は回転不能なガイド部材(図示略)が設けられている。ワイヤガイド10UFとワイヤガイド10LFを結ぶ直線及びワイヤガイド10ULとワイヤガイド10LLを結ぶ直線は、略平行をなしている。ワイヤガイド10UFとワイヤガイド10ULを結ぶ直線及びワイヤガイド10LFとワイヤガイド10LLを結ぶ直線は、略平行をなしている。
【0017】
ウインドレギュレータ1は、ワイヤガイド10UF、10UL、10LF、10LLによって囲まれた領域に位置して、車両のドアパネルに固定されるワイヤ巻取駆動装置20を有している。ワイヤ巻取駆動装置20は、巻取ドラム21と、巻取ドラム21を正逆に回転駆動するモータユニット22とを有している。
【0018】
ウインドレギュレータ1は、第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40と第3の駆動ワイヤ45を有している。第1の駆動ワイヤ30は、その一端部が巻取ドラム21に巻回(係止)されており、その他端部がワイヤガイド10ULに案内された後に下方に折り返されて後方キャリアピース70(後述)に係止される。第2の駆動ワイヤ40は、その一端部がワイヤガイド10LLに案内された後に上方に折り返されて後方キャリアピース70(後述)に係止され、その他端部がワイヤガイド10UFに案内された後に下方に折り返されて前方キャリアピース50(後述)に係止される。第3の駆動ワイヤ45は、その一端部が巻取ドラム21に巻回(係止)されており、その他端部がワイヤガイド10LFに案内された後に上方に折り返されて前方キャリアピース50(後述)に係止される。
【0019】
図3は、第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40の構成を示す図である。第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40は、例えば、複数のストランドを撚り合わせてなり、自由状態では、マクロに見れば各ストランドが密着し、ミクロに見れば各ストランドに隙間が存在するように構成されている。各ストランドは、数本ないし数十本の素線を撚り合わせてなる。第1の駆動ワイヤ30の両端部には略直方体形状の係止頭部(ワイヤエンド)31が接続されており、第2の駆動ワイヤ40の両端部には略直方体形状の係止頭部(ワイヤエンド)41が接続されている。なお、第3の駆動ワイヤ45も、第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40と同一の構成を有している。
【0020】
ウインドレギュレータ1は、ワイヤガイド10LFから上方に折り返された第3の駆動ワイヤ45の先端部とワイヤガイド10UFから下方に折り返された第2の駆動ワイヤ40の先端部に結合される前方キャリアピース50を有している。前方キャリアピース50には、ウインドガラスの前方下端を保持する前方ガラスホルダ60が固定されている。すなわち、前方キャリアピース50には、前方ガラスホルダ60を介して間接的にウインドガラスの前方下端が取り付けられる。
図1、
図2では、前方キャリアピース50と前方ガラスホルダ60(ウインドガラス)の上死点位置、下死点位置、中間位置を描いている。
【0021】
ウインドレギュレータ1は、ワイヤガイド10ULから下方に折り返された第1の駆動ワイヤ30の先端部とワイヤガイド10LLから上方に折り返された第2の駆動ワイヤ40の先端部に結合される後方キャリアピース70を有している。後方キャリアピース70には、ウインドガラスの後方下端を保持する後方ガラスホルダ80が固定されている。すなわち、後方キャリアピース70には、後方ガラスホルダ80を介して間接的にウインドガラスの後方下端が取り付けられる。
図1、
図2では、後方キャリアピース70と後方ガラスホルダ80(ウインドガラス)の上死点位置、下死点位置、中間位置を描いている。
【0022】
ワイヤガイド10UF、10UL、10LF、10LL、ワイヤ巻取駆動装置20、第1の駆動ワイヤ30、第2の駆動ワイヤ40及び第3の駆動ワイヤ45、前方キャリアピース50及び前方ガラスホルダ60、並びに、後方キャリアピース70及び後方ガラスホルダ80を車両のドアパネルに仮組みした状態で、専用治具(図示略)を用いてワイヤガイドLFの近傍に設けられた張力付与部材90を回転させることで、第1の駆動ワイヤ30、第2の駆動ワイヤ40及び第3の駆動ワイヤ45に張力が付与される。すなわち、ウインドレギュレータ1は、車両に取り付けられることにより第1の駆動ワイヤ30、第2の駆動ワイヤ40及び第3の駆動ワイヤ45に張力が付与される。
【0023】
ワイヤ巻取駆動装置20のモータユニット22を介して巻取ドラム21を正逆に回転駆動すると、第1の駆動ワイヤ30と第3の駆動ワイヤ45の一方が巻き取られて他方が繰り出される結果、ウインドガラス(前方キャリアピース50及び前方ガラスホルダ60並びに後方キャリアピース70及び後方ガラスホルダ80)が昇降する。
【0024】
ウインドレギュレータ1は、ガイドレールを省略して、ウインドガラスが支持された前方キャリアピース50及び前方ガラスホルダ60並びに後方キャリアピース70及び後方ガラスホルダ80を第1の駆動ワイヤ30、第2の駆動ワイヤ40及び第3の駆動ワイヤ45により宙吊り状態で昇降させる、所謂ガイドレスウインドレギュレータである。
【0025】
ガイドレスウインドレギュレータは、ガイドレールを使用したウインドレギュレータと比較して、軽量であり、高性能(高回転剛性)であり、レイアウト性が高く(例えば安全窓を付けたりベルトラインの傾斜を大きくするといったレイアウト上の柔軟性が高く)、共通化がしやすい(例えばガイドレールの型に合わせ込む必要がない)といったメリットを有している。
【0026】
図4〜
図9を参照して、第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40と後方キャリアピース70の組付構造について詳細に説明する。ここで説明する第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40と後方キャリアピース70の組付構造は、第2の駆動ワイヤ40と第3の駆動ワイヤ45と前方キャリアピース50の組付構造と同一(対称)である。
【0027】
後方キャリアピース70は、ワイヤガイド10UL及びワイヤガイド10LLよりも後方にオフセット配置されている。ワイヤガイド10ULで下方に折り返された第1の駆動ワイヤ30及びワイヤガイド10LLで上方に折り返された第2の駆動ワイヤ40は、交差部CSで互いに交差した後に別々に後方に導かれて、後方キャリアピース70に接続される。ここでは、交差部CSにおいて、第1の駆動ワイヤ30が車外側に位置して第2の駆動ワイヤ40が車内側に位置しているが、この位置関係を逆にしてもよい。
【0028】
このように、後方キャリアピース70をオフセット配置して第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40をクロス配索することにより、ウインドガラスの上死点位置では後方キャリアピース70がワイヤガイド10ULの略真横まで上昇し、且つ、ウインドガラスの下死点位置では後方キャリアピース70がワイヤガイド10LLの略真横まで下降する。これにより、ウインドガラスの昇降ストロークを長く確保することが可能になる。
【0029】
後方キャリアピース70は、交差部CSから一旦下斜め後方に延びてから後方に延びる第1のワイヤ挿通溝(第1のワイヤ挿通部)71と、交差部CSから一旦上斜め後方に延びてから後方に延びる第2のワイヤ挿通溝(第2のワイヤ挿通部)72とを有している。第1のワイヤ挿通溝71は、第1の駆動ワイヤ30が配索(挿通)されるとともに、第1の駆動ワイヤ30の配索方向と交差する方向を上下方向として上方(車外側)が開口している。第2のワイヤ挿通溝72は、第2の駆動ワイヤ40が配索(挿通)されるとともに、第2の駆動ワイヤ40の配索方向と交差する方向を上下方向として上方(車外側)が開口している。第1のワイヤ挿通溝71と第2のワイヤ挿通溝72は、交差部CSの近傍において、第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40のクロス配索を可能にするために、車幅方向位置をオフセットして配置されている(第1のワイヤ挿通溝71が車外側に位置して第2のワイヤ挿通溝72が車内側に位置している)。
【0030】
後方キャリアピース70は、第1のワイヤ挿通溝71及び第2のワイヤ挿通溝72の始点位置である交差部CSの近傍において、互いに交差する第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40の上方に延びる共通ワイヤ抜止爪(第2のワイヤ抜止部)73を有している。共通ワイヤ抜止爪73は、第1の駆動ワイヤ30が第1のワイヤ挿通溝71から離れる方向に抜けることを防ぐとともに、第2の駆動ワイヤ40が第2のワイヤ挿通溝72から離れる方向に抜けることを防ぐ。より具体的に、第2の駆動ワイヤ40は、直上に位置する第1の駆動ワイヤ30と共通ワイヤ抜止爪73により抜け止められ、第1の駆動ワイヤ30は、直上に位置する共通ワイヤ抜止爪73により抜け止められる(
図4、
図5)。
【0031】
第1のワイヤ挿通溝71の前後方向の中間部には、第1のワイヤ挿通溝71の側方部から第1の駆動ワイヤ30の上方(第1のワイヤ挿通溝71の上端)に延びる第1のワイヤ抜止爪(第1のワイヤ抜止部)74が形成されている。第1のワイヤ抜止爪74は、第1の駆動ワイヤ30が第1のワイヤ挿通溝71から離れる方向に抜けることを防ぐ。第1のワイヤ抜止爪74は、第1のワイヤ挿通溝71の側方部から斜め上方に延びる弾性脚部74Aと、弾性脚部74Aの先端部から第1のワイヤ挿通溝71の上方に屈曲する係止爪部74Bとを有している。第1のワイヤ挿通溝71のうち第1のワイヤ抜止爪74の直下に位置する部分には、第1のワイヤ抜止爪74と対向する肉抜き部(貫通穴)71Aが形成されている。第1のワイヤ抜止爪74の弾性脚部74Aは、第1のワイヤ挿通溝71の側方部から肉抜き部71Aの上方に向かって傾斜している。また、第1のワイヤ挿通溝71の内周側(第2のワイヤ挿通溝72に近い側)には、第1のワイヤ抜止爪74の弾性脚部74Aを取り囲む円弧状の切欠部74Cが形成されている(
図9)。肉抜き部71Aから専用治具(図示略)を挿入して弾性脚部74Aに当て付けることにより、弾性脚部74Aを第1のワイヤ挿通溝71の側方部に向かって弾性変形させることができる。係止爪部74Bの上面には、専用治具を用いることなく第1の駆動ワイヤ30を第1のワイヤ挿通溝71に導くことを可能にするためのテーパ面が形成されている。
【0032】
第2のワイヤ挿通溝72の前後方向の中間部には、第2のワイヤ挿通溝72の側方部から第2の駆動ワイヤ40の上方(第2のワイヤ挿通溝72の上端)に延びる第2のワイヤ抜止爪(第1のワイヤ抜止部)75が形成されている。第2のワイヤ抜止爪75は、第2の駆動ワイヤ40が第2のワイヤ挿通溝72から離れる方向に抜けることを防ぐ。第2のワイヤ抜止爪75は、第2のワイヤ挿通溝72の側方部から斜め上方に延びる弾性脚部75Aと、弾性脚部75Aの先端部から第2のワイヤ挿通溝72の上方に屈曲する係止爪部75Bとを有している。第2のワイヤ挿通溝72のうち第2のワイヤ抜止爪75の直下に位置する部分には、第2のワイヤ抜止爪75と対向する肉抜き部(貫通穴)72Aが形成されている。第2のワイヤ抜止爪75の弾性脚部75Aは、第2のワイヤ挿通溝72の側方部から肉抜き部72Aの上方に向かって傾斜している。また、第2のワイヤ挿通溝72の内周側(第1のワイヤ挿通溝71に近い側)には、第2のワイヤ抜止爪75の弾性脚部75Aを取り囲む円弧状の切欠部75Cが形成されている(
図9)。肉抜き部72Aから専用治具(図示略)を挿入して弾性脚部75Aに当て付けることにより、弾性脚部75Aを第2のワイヤ挿通溝72の側方部に向かって弾性変形させることができる。係止爪部75Bの上面には、専用治具を用いることなく第2の駆動ワイヤ40を第2のワイヤ挿通溝72に導くことを可能にするためのテーパ面が形成されている。
【0033】
第1のワイヤ挿通溝71に挿通される第1の駆動ワイヤ30に着目したとき、第1の駆動ワイヤ30が第1のワイヤ挿通溝71から離脱する方向への移動を規制する(抜けることを防ぐ)共通ワイヤ抜止爪73と第1のワイヤ抜止爪74(第1のワイヤ抜止部と第2のワイヤ抜止部)が、第1のワイヤ挿通溝71の延在方向に離間して2つ設けられている。
【0034】
第2のワイヤ挿通溝72に挿通される第2の駆動ワイヤ40に着目したとき、第2の駆動ワイヤ40が第2のワイヤ挿通溝72から離脱する方向への移動を規制する(抜けることを防ぐ)共通ワイヤ抜止爪73と第2のワイヤ抜止爪75(第1のワイヤ抜止部と第2のワイヤ抜止部)が、第2のワイヤ挿通溝72の延在方向に離間して2つ設けられている。
【0035】
後方キャリアピース70は、ウインドガラスを保持した後方ガラスホルダ80に後方キャリアピース70を締結する締結部材(例えば締結ボルト)(図示略)を挿通するための挿通孔76を有している。この挿通孔76に締結部材を挿通した状態では、第1の駆動ワイヤ30と第1のワイヤ抜止爪74の上方と、第2の駆動ワイヤ40と第2のワイヤ抜止爪75の上方とに跨るようにして、締結部材が位置している。すなわち、第1の駆動ワイヤ30は、第1のワイヤ抜止爪74と締結部材により二重で抜け止められ、第2の駆動ワイヤ40は、第2のワイヤ抜止爪75と締結部材により二重で抜け止められる。
【0036】
主に
図9に示すように、後方キャリアピース70は、第1のワイヤ挿通溝71の終点位置に、第1の駆動ワイヤ30の係止頭部(ワイヤエンド)31が係止(収納)される第1の係止部(第1のワイヤエンド収納部)77を有している。第1の係止部77は、底壁部(底壁)77Aと、一対の対向壁部77Bと、先端側抜止壁部(他端壁)77Cと、基端側抜止壁部(一端壁)77Dと、天井側抜止壁部(天面壁)77Eとを有している。また第1の係止部77は、天面側と他端面側を含んだ斜め方向に開口する開口部77Fを有している。なお、開口部77Fは、少なくとも天面側が開口していればよい(天面側だけが開口されて他端面側が閉塞されていてもよい)。
【0037】
底壁部77Aは、第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31が載置される。一対の対向壁部77Bは、底壁部77Aを挟んだ上下方向に対向しており、底壁部77Aに載置された第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31を上下方向に位置規制する。
【0038】
先端側抜止壁部77Cは、底壁部77Aから起立するとともに、先端側(他端側)から基端側(一端側)に向かって底壁部77Aからの起立量を増大させる傾斜壁部(傾斜壁)77CSを有している。先端側抜止壁部77C(傾斜壁部77CS)は、第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31の先端側(他端側)に当接することで、天面視したときに第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31と天井側抜止壁部77Eが重なるように、第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31が開口部77Fの先端側(他端側)から離脱する方向への移動を規制する。先端側抜止壁部77Cに傾斜壁部77CSを設けることにより、第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31を確実に移動規制することができる。なお、先端側抜止壁部77Cの傾斜壁部77CSは必須の構成ではなく、傾斜壁部77CSを省略する(先端側抜止壁部77Cを同一高さの段部とする)態様も可能である。
【0039】
基端側抜止壁部77Dは、第1のワイヤ挿通溝71に連通するとともに、第1のワイヤ挿通溝71の両側に二股に形成されており、第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31の基端側(一端側)に当接することで、第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31が基端側(一旦側)に抜けることを防ぐ。天井側抜止壁部77Eは、第1のワイヤ挿通溝71の両側に二股に形成されており、第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31の天井側に当接することで、第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31が開口部77Fの天面側から離脱する方向への移動を規制する。
【0040】
底壁部77A、一対の対向壁部77B、先端側抜止壁部77C、基端側抜止壁部77D及び天井側抜止壁部77Eは、略直方体形状の収納空間を画成する。この収納空間の形状ないし体積は、第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31の形状ないし体積と同じかそれより若干大きく設定されている。
【0041】
主に
図9に示すように、後方キャリアピース70は、第2のワイヤ挿通溝72の終点位置に、第2の駆動ワイヤ40の係止頭部(ワイヤエンド)41が係止(収納)される第2の係止部(第2のワイヤエンド収納部)78を有している。第2の係止部78は、底壁部(底壁)78Aと、一対の対向壁部78Bと、先端側抜止壁部(他端壁)78Cと、基端側抜止壁部(一端壁)78Dと、天井側抜止壁部(天面壁)78Eとを有している。また第2の係止部78は、天面側と他端面側を含んだ斜め方向に開口する開口部78Fを有している。なお、開口部78Fは、少なくとも天面側が開口していればよい(天面側だけが開口されて他端面側が閉塞されていてもよい)。
【0042】
底壁部78Aは、第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41が載置される。一対の対向壁部78Bは、底壁部78Aを挟んだ上下方向に対向しており、底壁部78Aに載置された第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41を上下方向に位置規制する。
【0043】
先端側抜止壁部78Cは、底壁部78Aから起立するとともに、先端側(他端側)から基端側(一端側)に向かって底壁部78Aからの起立量を増大させる傾斜壁部(傾斜壁)78CSを有している。先端側抜止壁部78C(傾斜壁部78CS)は、第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41の先端側(他端側)に当接することで、天面視したときに第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41と天井側抜止壁部78Eが重なるように、第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41が開口部78Fの先端側(他端側)から離脱する方向への移動を規制する。先端側抜止壁部78Cに傾斜壁部78CSを設けることにより、第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41を確実に移動規制することができる。なお、先端側抜止壁部78Cの傾斜壁部78CSは必須の構成ではなく、傾斜壁部78CSを省略する(先端側抜止壁部78Cを同一高さの段部とする)態様も可能である。
【0044】
基端側抜止壁部78Dは、第2のワイヤ挿通溝72に連通するとともに、第2のワイヤ挿通溝72の両側に二股に形成されており、第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41の基端側(一旦側)に当接することで、第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41が基端側(一旦側)に抜けることを防ぐ。天井側抜止壁部78Eは、第2のワイヤ挿通溝72の両側に二股に形成されており、第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41の天井側に当接することで、第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41が開口部78Fの天面側から離脱する方向への移動を規制する。
【0045】
底壁部78A、一対の対向壁部78B、先端側抜止壁部78C、基端側抜止壁部78D及び天井側抜止壁部78Eは、略直方体形状の収納空間を画成する。この収納空間の形状ないし体積は、第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41の形状ないし体積と同じかそれより若干大きく設定されている。
【0046】
以上のように構成された第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40と後方キャリアピース70は、車両のドアパネルに取り付けられる前のサブアッシ状態において、次のようにして組み付けられる。
【0047】
第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31を、先端側抜止壁部77Cの傾斜壁部77CSを乗り越えるようにして、先端側抜止壁部77Cと天井側抜止壁部77Eの間(開口部77F)から第1の係止部77の収納空間に導入する。この導入工程において、第1の駆動ワイヤ30が係止頭部31に対して弾性変形しており、先端側抜止壁部77Cの傾斜壁部77CSを乗り越えた瞬間に、第1の駆動ワイヤ30が係止頭部31に対して弾性復帰して、第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31が第1の係止部77の収納空間にクリック感を持って最小クリアランスで嵌合する。この嵌合状態で、第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31は、底壁部77A、一対の対向壁部77B、先端側抜止壁部77C、基端側抜止壁部77D及び天井側抜止壁部77Eによって位置規制されているので、第1の係止部77の収納空間から外れることはない。
【0048】
第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41を、先端側抜止壁部78Cの傾斜壁部78CSを乗り越えるようにして、先端側抜止壁部78Cと天井側抜止壁部78Eの間(開口部78F)から第2の係止部78の収納空間に導入する。この導入工程において、第2の駆動ワイヤ40が係止頭部41に対して弾性変形しており、先端側抜止壁部78Cの傾斜壁部78CSを乗り越えた瞬間に、第2の駆動ワイヤ40が係止頭部41に対して弾性復帰して、第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41が第2の係止部78の収納空間にクリック感を持って最小クリアランスで嵌合する。この嵌合状態で、第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41は、底壁部78A、一対の対向壁部78B、先端側抜止壁部78C、基端側抜止壁部78D及び天井側抜止壁部78Eによって位置規制されているので、第2の係止部78の収納空間から外れることはない。
【0049】
肉抜き部71Aから専用治具(図示略)を挿入して弾性脚部74Aに当て付けることにより、弾性脚部74Aを第1のワイヤ挿通溝71の側方部に向かって弾性変形させて、第1の駆動ワイヤ30を第1のワイヤ挿通溝71に導く。その後に肉抜き部71Aから専用治具を取り外すと、弾性脚部74Aが弾性復帰して、第1のワイヤ挿通溝71に挿通された第1の駆動ワイヤ30の上方に係止爪部74Bが位置する結果、第1の駆動ワイヤ30が抜け止められる。
【0050】
肉抜き部72Aから専用治具(図示略)を挿入して弾性脚部75Aに当て付けることにより、弾性脚部75Aを第2のワイヤ挿通溝72の側方部に向かって弾性変形させて、第2の駆動ワイヤ40を第2のワイヤ挿通溝72に導く。その後に肉抜き部72Aから専用治具を取り外すと、弾性脚部75Aが弾性復帰して、第2のワイヤ挿通溝72に挿通された第2の駆動ワイヤ40の上方に係止爪部75Bが位置する結果、第2の駆動ワイヤ40が抜け止められる。
【0051】
第1のワイヤ挿通溝71と第2のワイヤ挿通溝72の交差部CSの近傍において、第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40を共通ワイヤ抜止爪73の下方に案内することで、第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40が共通ワイヤ抜止爪73により抜け止められる。
【0052】
このようにして、例えば特許文献1のかしめ固定のような特別な構成や工程を要することなく、第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40と後方キャリアピース70を簡単に組み付けることができる。
【0053】
本実施形態のようなガイドレスウインドレギュレータ1をサブアッシ状態で搬入する場合、第1の駆動ワイヤ30、第2の駆動ワイヤ40にテンションが掛かっていない。このため、従来品のウインドレギュレータでは駆動ワイヤがキャリアピースから外れるおそれがあった。しかし、本実施形態では、先端側抜止壁部77Cが第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31が先端側に抜けることを防ぐとともに、先端側抜止壁部78Cが第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41が先端側に抜けることを防いでいる。また、共通ワイヤ抜止爪73と第1のワイヤ抜止爪74が第1の駆動ワイヤ30が第1のワイヤ挿通溝71から抜けることを防ぐとともに、共通ワイヤ抜止爪73と第2のワイヤ抜止爪75が第2の駆動ワイヤ40が第2のワイヤ挿通溝72から抜けることを防いでいる。これにより、第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40にテンションが掛かっていない搬入時であっても、第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40が後方キャリアピース70から外れるのを防止することができる。
【0054】
また、ガイドレスウインドレギュレータ1を車両のドアパネルに取り付けた使用状態では、第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40にテンションが掛かっているので、第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31と第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41が第1の係止部77と第2の係止部78から外れるおそれは小さい。しかし、第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40には車幅方向の外力、すなわち、第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40が第1のワイヤ挿通溝71と第2のワイヤ挿通溝72から抜ける方向の外力が加わる。しかし、本実施形態では、共通ワイヤ抜止爪73と第1のワイヤ抜止爪74が第1の駆動ワイヤ30が第1のワイヤ挿通溝71から抜けることを防ぐとともに、共通ワイヤ抜止爪73と第2のワイヤ抜止爪75が第2の駆動ワイヤ40が第2のワイヤ挿通溝72から抜けることを防いでいる。これにより、ガイドレスウインドレギュレータ1を車両のドアパネルに取り付けた使用状態であっても、第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40が後方キャリアピース70から外れるのを防止することができる。
【0055】
以上の実施形態では、後方キャリアピース70が、第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31が先端側に抜けることを防ぐ先端側抜止壁部77C及び第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41が先端側に抜けることを防ぐ先端側抜止壁部78C、並びに、第1の駆動ワイヤ30が第1のワイヤ挿通溝71から抜けることを防ぐ共通ワイヤ抜止爪73と第1のワイヤ抜止爪74及び第2の駆動ワイヤ40が第2のワイヤ挿通溝72から抜けることを防ぐ共通ワイヤ抜止爪73と第2のワイヤ抜止爪75を有する場合を例示して説明した。しかし、後方キャリアピース70は、第1の駆動ワイヤ30の係止頭部31が先端側に抜けることを防ぐ先端側抜止壁部77C及び第2の駆動ワイヤ40の係止頭部41が先端側に抜けることを防ぐ先端側抜止壁部78Cだけを有していてもよいし、第1の駆動ワイヤ30が第1のワイヤ挿通溝71から抜けることを防ぐ共通ワイヤ抜止爪73と第1のワイヤ抜止爪74及び第2の駆動ワイヤ40が第2のワイヤ挿通溝72から抜けることを防ぐ共通ワイヤ抜止爪73と第2のワイヤ抜止爪75だけを有していてもよい。
【0056】
以上の実施形態では、前方キャリアピース50に前方ガラスホルダ60を介して間接的にウインドガラスの前方下端を取り付け、且つ、後方キャリアピース70に後方ガラスホルダ80を介して間接的にウインドガラスの後方下端を取り付ける場合を例示して説明した。しかし、前方キャリアピース50と前方ガラスホルダ60を一体化した前方キャリアピースとして当該前方キャリアピースに直接的にウインドガラスの前方下端を取り付け、且つ、後方キャリアピース70と後方ガラスホルダ80を一体化した後方キャリアピースとして当該後方キャリアピースに直接的にウインドガラスの後方下端を取り付けることも可能である。
【0057】
以上の実施形態では、後方キャリアピース70をワイヤガイド10ULとワイヤガイド10LLに対してオフセット配置して第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40をクロス配索することにより、ウインドガラスの昇降ストロークを長く確保した場合を例示して説明した。しかし、後方キャリアピース70をワイヤガイド10ULとワイヤガイド10LLに対してオフセット配置することなくワイヤガイド10ULとワイヤガイド10LLの間に配置することも可能である。この場合、第1の駆動ワイヤ30と第2の駆動ワイヤ40のクロス配索も不要となる。
【0058】
以上の実施形態では、前方キャリアピース50と後方キャリアピース70が協働してウインドガラスを保持する場合を例示して説明したが、単一のキャリアピースによって独立してウインドガラスを保持する態様も可能である。