特許第6985899号(P6985899)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985899画像符号化装置及びその制御方法並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985899
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】画像符号化装置及びその制御方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/115 20140101AFI20211213BHJP
   H04N 19/159 20140101ALI20211213BHJP
   H04N 19/172 20140101ALI20211213BHJP
【FI】
   H04N19/115
   H04N19/159
   H04N19/172
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-220124(P2017-220124)
(22)【出願日】2017年11月15日
(65)【公開番号】特開2019-92075(P2019-92075A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2020年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 唯史
【審査官】 岩井 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−129304(JP,A)
【文献】 特開2014−123830(JP,A)
【文献】 特開2012−019288(JP,A)
【文献】 特開2010−081182(JP,A)
【文献】 特開2006−303689(JP,A)
【文献】 特開平11−252569(JP,A)
【文献】 特開平10−271516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00 − 19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像を符号化する画像符号化装置であって、
符号化処理にてワークメモリとして利用するメモリと、
動画像を構成するフレームを順に入力する入力手段と、
入力したフレームを、設定された圧縮率に従って符号化し、当該符号化で得た符号化データを前記メモリに格納する第1の符号化手段と、
前記第1の符号化手段に設定する前記圧縮率を決定する決定手段と、
前記メモリに格納された前記第1の符号化手段による符号化データを復号する復号手段と、
前記復号手段及び前記メモリを利用して、前記動画像の符号化データを生成する第2の符号化手段とを有し、
前記決定手段は、
前記第2の符号化手段が符号化する際の、各フレームの、当該フレームを符号化するために他のフレームを参照する回数と、他のフレームを符号化するために参照される回数に基づき、前記圧縮率を決定することを特徴とする画像符号化装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記参照される回数が多いほど前記圧縮率が低くなるように決定することを特徴とする請求項1に記載の画像符号化装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記参照する回数が多いほど前記圧縮率が高くなるように決定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像符号化装置。
【請求項4】
前記第1の符号化手段は、画素単位の予測符号化であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像符号化装置。
【請求項5】
符号化処理にてワークメモリとして利用するメモリを用いて動画像を符号化する画像符号化装置の制御方法であって、
動画像を構成するフレームを順に入力する入力工程と、
入力したフレームを、設定された圧縮率に従って符号化し、当該符号化で得た符号化データを前記メモリに格納する第1の符号化工程と、
前記第1の符号化工程に設定する前記圧縮率を決定する決定工程と、
前記メモリに格納された前記第1の符号化工程による符号化データを復号する復号工程と、
前記復号工程を利用すると共に、前記メモリを利用して、前記動画像の符号化データを生成する第2の符号化工程とを有し、
前記決定工程は、
前記第2の符号化工程が符号化する際の、各フレームの、当該フレームを符号化するために他のフレームを参照する回数と、他のフレームを符号化するために参照される回数に基づき、前記圧縮率を決定する
ことを特徴とする画像符号化装置の制御方法。
【請求項6】
コンピュータが読み込み実行することで、前記コンピュータに、請求項5に記載の方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の圧縮符号化技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動画像の圧縮符号化方式として、H.264やH.265等が知られている。これらの圧縮符号化方式を用いた符号化装置においては、メモリに対する原画像データ、参照画像データの読み書きを行いながら符号化処理がなされる。近年では、撮像素子の高解像度化、高フレームレート化されており、必然、単位時間当たりのメモリのアクセス量は増大し、装置の高コスト化の要因となっている。そこで、原画像データを圧縮符号化しデータ量を削減してから、メモリに格納することによって、メモリのアクセス量を削減する技術がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−303689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、画像符号化部のメモリアクセス量は符号化対象のピクチャタイプによって相違する。符号化対象のピクチャがインター予測符号のP、Bピクチャの場合、参照画像データへのアクセスが頻出するので、単位時間当たりのメモリアクセス量が多い。これに比べて、符号化対象のピクチャがイントラ予測符号のIピクチャの場合、P,Bピクチャと比較して、メモリアクセス量は少ない。
【0005】
特許文献1に記載の帯域圧縮部における目標圧縮率は固定であり、メモリアクセス量が少ないピクチャも多いピクチャも同じ圧縮率で圧縮を行っている。この結果、メモリアクセスの少ないピクチャにおいては必要以上に圧縮を行うことになってしまい、画質劣化を招いていた。
【0006】
本発明は係る点に鑑み成されたものであり、メモリへのアクセス量を制御するだけでなく、画質の劣化も抑制する技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するため、例えば本発明の画像符号化装置は以下の構成を備える。すなわち、
動画像を符号化する画像符号化装置であって、
符号化処理にてワークメモリとして利用するメモリと、
動画像を構成するフレームを順に入力する入力手段と、
入力したフレームを、設定された圧縮率に従って符号化し、当該符号化で得た符号化データを前記メモリに格納する第1の符号化手段と、
前記第1の符号化手段に設定する前記圧縮率を決定する決定手段と、
前記メモリに格納された前記第1の符号化手段による符号化データを復号する復号手段と、
前記復号手段及び前記メモリを利用して、前記動画像の符号化データを生成する第2の符号化手段とを有し、
前記決定手段は、
前記第2の符号化手段が符号化する際の、各フレームの、当該フレームを符号化するために他のフレームを参照する回数と、他のフレームを符号化するために参照される回数に基づき、前記圧縮率を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メモリのアクセス量をこれまでよりも削減するだけでなく、画質劣化を低減する符号化データを生成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における画像符号化装置のブロック構成図。
図2】実施形態における第1の画像符号化部のブロック構成図。
図3】実施形態における画像復号化部のブロック構成図。
図4】H.264方式における一般的なGOP構造を示す図。
図5】第1の実施形態における第1の画像符号化部の圧縮率を示す図。
図6】H.265方式における一般的なGOP構造を示す図。
図7】第2の実施形態における第1の画像符号化部の圧縮率を示す図。
図8】制御部106の処理の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に従って本発明に係る実施形態を詳細に説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態における画像符号化装置100のブロック構成図である。本装置100は、第1の符号化部101、復号部102、第2の符号化部103、メモリインターフェース部104、メモリ部105、制御部106を有する。
【0012】
図1において画像符号化装置100には、外部から符号化対象となる画像データが入力端子107を介して入力される。実施形態では、入力端子107へ符号化対象の画像データを供給する供給源は撮像部とするが、符号化対象の画像データを記憶している記憶媒体、或いは、符号化対象の画像を記憶しているネットワーク上のサーバであっても良く、その種類は問わない。メモリインターフェース部104は、メモリ部105に対するアクセスの調停を行う。他の構成については以下の説明から明らかにする。
【0013】
第1の符号化部101は、入力された画像データについて、メモリ部105に格納する前にそのデータ量を削減するための圧縮符号化を行う。この第1の符号化部101は、後述の制御部106から設定される圧縮率に従って入力された画像データの符号化を行う。
【0014】
図2は第1の符号化部101のブロック構成図である。以下、同図に従って第1の符号化部101を説明する。実施形態における第1の符号化部101は、動画像における着目フレームの画像を、少量のメモリで符号化するため、他のフレームを参照せず、画素単位の予測差分符号化(DPCM)方式を用いるものとする。ただし、これより多少はメモリを必要とするものの、JPEG等の他の方式を用いてもよい。
【0015】
図2に示すように第1の符号化部101は、減算器201、量子化部202、逆量子化部203、加算器204、予測部205、セレクタ206、可変長符号化部207、多重化部208、符号量制御部209より構成される。
【0016】
減算器201は入力された画像データの画素ごとに、後述の予測部205で生成された予測値を減算して、予測差分値(予測誤差とも呼ばれる)を算出する。量子化部202は予測差分値を後述の符号量制御部209から指示される量子化パラメータ(以後QPと呼ぶ)で量子化を行う。QPが小さいほど量子化ステップが細かくなるので、画質劣化を抑制できるものの、符号化効率は低くなる。また、QPが大きいほど量子化ステップを粗くなるので、高い符号化効率が望めるものの、画質劣化はその分だけ大きくなる。
【0017】
逆量子化部203は量子化部202で量子化された予測差分値を量子化部202と同様のQPで逆量子化する。加算器204は逆量子化された予測差分値と、前記予測値とを加算し、復号値を算出する。予測部205は復号値を用いて予測値を生成する。予測値は符号化対象の画素値の近傍に位置する画素であって、既符号化の画素の復号値を用いて生成される。一般に、画素単位の符号化の場合、その画像はラスタースキャン順に符号化されるので、符号化しようとする着目画素の左や上に隣接する画素の値をそのまま予測値として用いたり、それらの平均値が予測値とする。なお、着目画素の左隣の画素を着目画素の予測値として用いる場合、第1の符号化部101は、1つ前に符号化した左隣の画素の復号値を記憶保持するメモリ(もしくはレジスタ)を有すれば実現できることになる。因に、JPEGを採用する場合には、8×8画素にブロック単位に符号化する必要があるので、符号化しようとする画像における8ライン分のバッファメモリがあれば良い。
【0018】
セレクタ206は、ピクチャやラインの先頭などで復号値が存在しない場合に予測値として0を選択するためのセレクタである。0が選択された場合、減算器201は入力した画素値をそのまま量子化部202に供給することを意味する。
【0019】
可変長符号化部207は、量子化された予測差分値を所定の可変長符号化方式による符号化を行って得た1画素毎に符号データを多重部208に出力するとともに、その符号長を符号量制御部209に出力する。ここで所定の可変長符号化方式とは例えばハフマン符号である。可変長符号化部207は、入力値が0の場合に最も短い符号長の符号データが割り当てられ、入力値の絶対値が大きくなるほど、長い符号長の符号データが割り当てられている。一方、予測差分値は正負の値を持つデータであり、画像データの変動の小さい平坦な部分では0付近の値となり、また、変動の大きいエッジ部分などでは大きな差分値になる。一般に予測差分データは0を中心としたラプラス分布の特性を持つ。そのため、一般的な画像においては短い符号長の符号データがより多く使われるため、データ量の削減が可能となる。また、量子化部202において、大きいQPで量子化するほど、予測差分値の絶対値は小さくなり、より符号長を小さくすることができる。なお、実施形態では可変長符号化部207がハフマン符号化を行うものとするが、例えばゴロム符号等であっても構わない。
【0020】
符号量制御部209は可変長符号化部207からの符号長を累積し、着目画像(着目ピクチャ)の先頭画素から着目画素位置までの発生符号量を算出する。着目画素が着目画像の第i番目の画素とし、着目画素から得た符号の符号長をL(i)と表したとき、符号量制御部209は「ΣL(i)」を算出することになる。
【0021】
また、符号量制御部209には、外部(制御部106)から指示された圧縮率に基づいて、1画像当たりの目標符号量Tを決定する。1画像の無圧縮のデータ量をAとし、圧縮率をRとしたとき、着目画像の目標符号量Tは、T=A×Rと表せる。ここで、1画像に含まれる画素数をNとしたとき、1画素当たりの目標符号長はT/N=A×R/Nと表せる。従って、先頭(第1番目)の画素から着目(第i番目)画素に至る区間での目標符号量は「i×A×R/N」と表現できる。
【0022】
符号量制御部209は、所定の画素数毎(例えば1ライン分の画素毎)に、先頭画素から着目画素iまでの目標符号量「i×A×R/N」と、実際に発生した符号の符号量「ΣL(i)」とを比較し、1画像の符号化処理の期間で最終的に目標符号量に発生符号量が収まるようにQPを算出する。具体的には、符号量制御部209は、着目画素までに発生した発生符号量が目標符号量より大きい場合(ΣL(i)>i×A×R/Nの場合)、それまでのQPに予め設定された正値ΔQを加算し、着目画素に後続する画素での発生符号量が少なくなるように制御する。また、発生符号量が目標符号量以下の場合(ΣL(i)≦i×A×R/Nの場合)、符号量制御部209は、QPからΔQを減算し、後続する画素での発生符号量が多くなることを許容する。符号量制御部209は算出(更新)したQPを、量子化部202、逆量子化部203、多重部208に供給する。なお、QPの変動を抑制するため、予め設定された正の値εを用いて、次のようにQPを制御しても構わない。
ΣL(i)−i×T/N>εの場合、QP←QP+ΔQ
−ε<ΣL(i)−i×T/N≦εの場合、QPを維持(非変更)
ΣL(i)−i×T/N≦−εの場合、QP←QP−ΔQ
【0023】
多重部208は可変長符号化部207からの符号データと符号量制御部209からのQPとを、所定のフォーマットで多重化し、最終的な符号化データとして出力する。符号化された符号データはメモリインターフェース部104を介して、メモリ部105の所定の領域に格納される。
【0024】
復号部102は、第2の符号化部103から要求に応じて、その要求された画像の符号化データ(第1の符号化部101が生成、格納した符号化データ)を読み出し、復号し、第2の符号化部103に供給する。
【0025】
図3は、復号部102のブロック構成図である。本実施形態では第1の画像符号化部101と同様に予測差分符号化(DPCM)方式を用いた例を説明する。第1の画像符号化部101がJPEG等、他の符号化方式を用いた場合はその方式と同様の方式を用いる事とする。
【0026】
図3に示すように復号部102は、分離部301、可変長復号部302、逆量子化部303、加算器304、予測部305、セレクタ306より構成される。
【0027】
分離部301は入力された符号データを所定のフォーマットによって可変長符号データとQPとに分離する。先の第1の符号化部101にて説明したように、QPは、所定の画素数毎に更新されるものである。可変長復号部302は、可変長符号化部207と同様の方式で、分離部301から供給された可変長符号データを復号し、量子化された予測差分値を得る。逆量子化部303は分離部301によって分離されたQPを用いて、量子化された予測差分値を逆量子化し、予測差分値を得る。加算器304は、逆量子化部303からの予測差分値と後述の予測値とを加算して、復号画像データの画素値として外部へ出力する。
【0028】
予測部305は着目画素用の予測値を生成する。予測値は、既に復号済みの画素地を用いて生成される。例えば復号対象の画素の左側や上側に隣接する画素をそのまま用いたり、平均値を用いたりする。セレクタ306はピクチャやラインの先頭などで復号値が存在しない場合に予測値として0を選択するためのセレクタである。
【0029】
上記のようにして、復号部102は、復号して得られた画像データを第2の符号化部103に供給する。
【0030】
第2の符号化部103は、記録媒体に記録するための画像符号化装置100における主たる画像符号化部として機能する。具体的には、この第2の符号化部103は、インター予測符号化方式を用いた画像符号部である。なお、本実施形態ではH.264方式を用いた例を説明する。
【0031】
第2の符号化部103は入力された画像データをH.264方式に従って符号化する。H.264方式にはI、P、Bピクチャと呼ばれるピクチャタイプが存在する。Iピクチャはイントラ予測符号化によって符号化を行う。また、Pピクチャは時間的に前のピクチャを参照画像としてインター予測符号化を行う。また、Bピクチャは前後のピクチャを参照画像としてインター予測符号化を行う。第2の符号化部103は、各フレームの画像の符号化処理において、必要に応じて、メモリ部105に参照画像を書き出したり、メモリ部105に格納された参照画像を読み出したりする。符号化された符号データは出力端子108を介して外部に出力され、非図示の記録媒体に記録される。
【0032】
実施形態における第2の符号化部103は、上記のように、H.264方式に従って符号化を行っていく。この符号化処理中、第2の符号化部103はメモリ部105をワークメモリとして利用して符号化処理を行う。そして、第2の符号化部103は、第1の符号化部101が格納した符号化データの画像を符号化する際には、その符号化データを復号部102により復号した上で、符号化することになる。
【0033】
制御部106は、CPUと、このCPUが実行するプログラムを格納したメモリで構成され、装置全体の制御を司るものであり、とりわけ第1の符号化部101の圧縮率を制御する。制御部106は、第2の符号化部103が符号化するフレーム(ピクチャ)の符号化特性に応じて第1の符号化部101の圧縮率を決定する。以下に、制御部106における、第1の符号化部101の圧縮率の決定方法について詳細に説明する。
【0034】
まず、第2の符号化部103における、各ピクチャの符号化特性を説明するため、ピクチャの参照関係について図4を用いて説明する。図4はH.264における一般的なGOP(Group Of Pictures)構造を表示順で示している。各ピクチャ間の矢印411〜420はピクチャが参照する方向を示している(矢印の先が参照画像)。
【0035】
着目ピクチャの符号化において、参照するために読み出す他のピクチャの数を「参照する回数」とする。また、他のピクチャを符号化するため、着目ピクチャが参照画像として読み出される回数を「参照される回数」とする。この場合、各ピクチャの「参照する回数」、「参照される回数」は以下のようになる。
Iピクチャ403の場合、参照する回数は0回、参照される回数は5回(矢印411〜415)である。
Pピクチャ406の場合、参照する回数は1回(矢印413)、参照される回数は5回(矢印416〜420)である。
Bピクチャ404の場合、参照する回数は2回(矢印414、416)であり、参照される回数は0回である。
【0036】
また、各ピクチャにおいて、メモリ部105から参照画像を読み出す回数と、メモリ部105へ参照画像を書き出す回数は以下のようになる。
Iピクチャ403は読み出す回数は0回、書き出す回数は1回。
Pピクチャ406は読み出す回数は1回、書き出す回数は1回。
Bピクチャ404は読み出す回数は2回、書き出す回数は0回。
【0037】
上記のように、ピクチャタイプによって「参照する回数」、「参照される回数」、「参照画像を読み出す回数」、「参照画像を書き出す回数」が異なり、メモリアクセスへの影響度が異なることがわかる。
【0038】
一般に参照されるピクチャの画質は、それを参照する符号化対象のピクチャの画質に影響することが知られている。よって参照される回数が多いピクチャほど、第1の符号化部101での画質劣化が発生しないよう、第1の符号化部101の圧縮率を低くすることが望ましいと言える。
【0039】
また、参照画像を読み出す回数と参照画像を書き出す回数はメモリアクセス量に影響するため、これらの回数が多いピクチャほど、第1の符号化部101の符号データ量をより削減するため、第1の符号化部101の圧縮率を高くすることが望ましいと言える。
【0040】
これらのことから、制御部106は、第2の画像符号化部103における「参照される回数」、「参照画像を読み出す回数」、「参照画像を書き出す回数」を取得して、これらの値に基づいて、次式(1)のようにして、第1の画像符号化部101の圧縮率を決定し、第1の画像符号化部101に指示する。
Rate=1/((read_num * x) + (write_num * y) - (ref_num * z) + offset) …(1)
ここで、各記号の意味は以下の通りである。
rate:第1の画像符号化部101の圧縮率
read_num:参照画像を読み出す回数
write_num:参照画像を書き出す回数
ref_num:参照される回数
x、y、z:所定の係数
offset:所定の定数
式(1)において、x=1、y=1、z=0.1、offset=1.5として算出した圧縮率の一例を図5に示す。
【0041】
なお、制御部106は、着目画像(フレーム)を符号化する度に式(1)を演算しても良いが、例えば着目画像が第2の符号化部103によりI,P,Bピクチャのいずれとして符号化されるのか、並びに図5に示すテーブルを参照した処理を行なっても良い。
【0042】
図8は、実施形態の制御部106の処理の例を示すフローチャートである。以下、同図に従って実施形態における制御部106の処理手順を説明する。
【0043】
まず、S801にて、制御部106は、第1の符号化部に供給される着目画像について、第2の符号化部103が符号化する際のアクセス量に基づき、圧縮率Rを決定する。なお、この決定処理は、1GOPを単位とした周期的なものとなるが、第1の実施形態の場合、アクセス量はI,P,Bピクチャに依存するので、ピクチャタイプで圧縮率を決定しても良い。
【0044】
次に、S802にて、制御部106は、決定した圧縮率Rを第1の符号化部101に設定する。そして、S803にて、制御部106は、第1の符号化部101に符号化処理を行わせ、生成された符号化データをメモリ部105に格納させる。
【0045】
なお、第2の符号化部103の符号化処理は、第1の符号化部101とは別スレッドとして動作する。これは、第2の符号化部103による符号化するピクチャの順番が入力順とは異なるためである。
【0046】
以上、説明したように、図5に示すように各ピクチャの圧縮率はIピクチャが1/2、Pピクチャが1/3、Bピクチャが1/3.5となる。参照される回数の多いIピクチャは低い圧縮率であり、メモリアクセスの多いBピクチャは高い圧縮率となっており、画質面での重要度、およびメモリアクセス量を反映した適切な圧縮率を決定することができ、メモリのアクセス量を削減するとともに、画質劣化を低減することができる。
【0047】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と本第2の実施形態の相違点は、第2の画像符号化部103の符号化方式がH.264からH.265になっている点である。以下に、第2の画像符号化部103の符号化方式にH.265を採用した場合の制御部106の動作を説明する。その他の構成、動作は第1の実施形態と同様であるため説明は省略する。
【0048】
H.265方式の各ピクチャの符号化特性を説明するため、ピクチャの参照関係について図6を用いて説明する。図6はH.265における一般的なGOP(Group Of Picture)構造を表示順で示している。各ピクチャ間の矢印はピクチャが参照する方向を示している(矢印の先が参照画像)。同図に示されるようにH.265においては階層符号化が採用され、参照ピクチャ間の予測構造が階層構造になっている。また、前方予測の参照フレーム数を複数指定可能なBピクチャが使用され、Pピクチャが存在しない場合もある。そのため、先頭のIピクチャ以外はBピクチャというGOP構造となっており、それぞれのBピクチャは異なる参照関係となっている。
【0049】
制御部106は、第2の画像符号化部103における「参照される回数」、「参照画像を読み出す回数」、「参照画像を書き出す回数」を取得して、これらの値に基づいて、例えば先の式(1)のようにして、第1の画像符号化部101の圧縮率を決定し、第1の画像符号化部101に指示する。
【0050】
各ピクチャにおける、参照する回数、参照される回数、参照画像を読み出す回数、参照画像を書き出す回数、並びに、先に示した式(1)において、x=0.5、y=0.5、z=0.3、offset=1.7として算出した場合の圧縮率Rの一例を図7に示す。
【0051】
制御部106は、第1の符号化部101に供給される画像が、図7のいずれに当たるのかに応じて、圧縮率を決定し、第1の符号化部101に設定して符号化を行わせる。従って、本第2の実施形態における制御部106による、第1の符号化部101に対する制御処理は図8のフローチャートと同じなる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、図7に示すように同じBピクチャであっても、参照される回数の多いBピクチャは低い圧縮率であり、メモリアクセスの多いBピクチャは高い圧縮率となっており、画質面での重要度、およびメモリアクセス量を反映した適切な圧縮率を決定することができ、メモリのアクセス量を削減するとともに、画質劣化を低減することができる。
【0053】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0054】
100…画像符号化装置、101…第1の符号化部、102…復号部、103…第2の符号化部、104…メモリインターフェース、105…メモリ部、106…制御部
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8