特許第6985902号(P6985902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライミクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6985902-攪拌羽根および攪拌装置 図000002
  • 特許6985902-攪拌羽根および攪拌装置 図000003
  • 特許6985902-攪拌羽根および攪拌装置 図000004
  • 特許6985902-攪拌羽根および攪拌装置 図000005
  • 特許6985902-攪拌羽根および攪拌装置 図000006
  • 特許6985902-攪拌羽根および攪拌装置 図000007
  • 特許6985902-攪拌羽根および攪拌装置 図000008
  • 特許6985902-攪拌羽根および攪拌装置 図000009
  • 特許6985902-攪拌羽根および攪拌装置 図000010
  • 特許6985902-攪拌羽根および攪拌装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985902
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】攪拌羽根および攪拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 7/22 20060101AFI20211213BHJP
   B01F 15/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   B01F7/22
   B01F15/00 B
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-225538(P2017-225538)
(22)【出願日】2017年11月24日
(65)【公開番号】特開2019-93347(P2019-93347A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2020年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000225016
【氏名又は名称】プライミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】金澤 賢次郎
(72)【発明者】
【氏名】仁井 翔一
(72)【発明者】
【氏名】古市 尚
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−180073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 7/00− 7/32
B01F 15/00−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌装置に取り付けられ、軸方向周りに回転させられ、回転方向に配列された複数の羽根部からなる羽根群を備える攪拌羽根であって、
単一の金属板材料からなり、径方向中心に位置する基部および前記基部に繋がる複数の羽根要素を各々が有し、前記軸方向に積層された複数の板材を備え、
前記羽根部は、前記軸方向に隣接する前記複数の板材の前記羽根要素同士が互いに接触または近接して構成された攪拌対象を流動させる羽根面を有し、
前記軸方向に隣接する複数の板材の基部は、前記軸方向に離間し、かつ連結しており、
前記羽根面は、前記軸方向に隣接する複数の板材の羽根要素にそれぞれ含まれる面部によって構成される包括的な面である
ことを特徴とする、攪拌羽根。
【請求項2】
前記複数の板材は、互いに分離可能に構成されている、請求項1に記載の攪拌羽根。
【請求項3】
前記複数の板材の前記羽根要素同士が互いに接触又は近接して、前記羽根面を形成するための位置決め機構を有する、請求項1または請求項2に記載の攪拌羽根。
【請求項4】
前記羽根部は、前記径方向における内方端に繋がり且つ前記軸方向視において前記回転方向前方に凸である前方湾曲部を有する、請求項1ないし3のいずれかに記載の攪拌羽根。
【請求項5】
前記羽根部は、前記前方湾曲部に対して前記径方向外方に繋がり且つ前記軸方向視において前記回転方向後方に凸である後方湾曲部を有する、請求項4に記載の攪拌羽根。
【請求項6】
前記軸方向両側に位置する一対の前記羽根群を備える、請求項1ないし5のいずれかに記載の攪拌羽根。
【請求項7】
前記軸方向の一方側に位置する前記羽根群と、他方側に位置する前記羽根群とは、各々の前記羽根部の前記回転方向位置が互いに異なる、請求項6に記載の攪拌羽根。
【請求項8】
攪拌対象物を収容する容器と、
前記容器内に挿入される回転軸と、
前記回転軸に取り付けられた請求項1ないし7のいずれかに記載の前記攪拌羽根と、を備えることを特徴とする、攪拌装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌羽根および攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体または粉体と液体の混合体などの攪拌対象を分散および混合などの攪拌をするための装置として、攪拌羽根を有する攪拌装置が用いられている。特許文献1には、従来の攪拌羽根および攪拌装置の一例が開示されている。本文献に開示された構成においては、回転駆動される回転軸の先端に回転羽根が取り付けられている。回転羽根は、攪拌対象を収容した容器内において回転されることにより、攪拌対象の分散および混合などの攪拌を行う。
【0003】
ここで、攪拌は、分散および混合を含む概念である。攪拌対象を分散するとは、化学的に1つの相となっている物質(たとえば液体)中において、他の物質(例えば液体または粉体)をミクロな状態で散在させる動作である。また、攪拌対象を混合するとは、容器に収容された攪拌対象がより均一な性状となるように容器内においてかき混ぜる動作である。攪拌装置における分散をより高度化するには、攪拌羽根による力をごく一部の攪拌対象に集中させることが重要であり、攪拌羽根のごく近傍に存在する領域において作用する場合が多い。一方、攪拌装置における混合をより高度化するには、攪拌羽根による力を容器内に収容された攪拌対象全体に作用させ、流動させることが重要である。このように、1つの攪拌羽根によって、分散と混合とを高度化することは、相反する挙動を両立させることが求められる。特に、攪拌対象の粘度が高くなるほど、分散と混合とを高度化することは困難である。
【0004】
特許文献1に開示された攪拌羽根は、単一の金属材料からなる板材を、適宜切断加工および折り曲げ加工することによって、基部と、基部に繋がる複数の羽根部とを有するものとして形成されている。より高度な攪拌を実現するには、羽根部の形状、大きさ、角度等を様々に設定する必要がある。しかし、単一の金属材料からなる板材を切断加工および折り曲げ加工することによって得られる羽根部は、形状、大きさ、角度等が自ずと制限されてしまう。また、羽根部をより大きくしたり、より起立したものとすると、基部による羽根部の支持が不足することが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−180073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、分散および混合の高度化を図ることが可能な攪拌羽根および攪拌装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によって提供される攪拌羽根は、攪拌装置に取り付けられ、軸方向周りに回転させられ、回転方向に配列された複数の羽根部からなる羽根群を備える攪拌羽根であって、単一の金属板材料からなり、径方向中心に位置する基部および前記基部に対して径方向外方に繋がる複数の羽根要素を各々が有し、前記軸方向に積層された複数の板材を備え前記羽根部は、前記軸方向に隣接する前記複数の板材の前記羽根要素同士が、互いに接触または近接して構成された攪拌対象を流動させる羽根面を有し、前記軸方向に隣接する複数の板材の基部は、前記軸方向に離間し、かつ連結しており、
前記羽根面は、前記軸方向に隣接する複数の板材の羽根要素にそれぞれ含まれる面部によって構成される包括的な面であることを特徴としている。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数の板材は、互いに分離可能に構成されている。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数の板材の前記羽根要素同士が互いに接触又は近接して、前記羽根面を形成するための位置決め機構を有する。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記羽根部は、前記径方向における内方端に繋がり且つ前記軸方向視において前記回転方向前方に凸である前方湾曲部を有する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記羽根部は、前記前方湾曲部に対して前記径方向外方に繋がり且つ前記軸方向視において前記回転方向後方に凸である後方湾曲部を有する。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記軸方向両側に位置する一対の前記羽根群を備える。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記軸方向の一方側に位置する前記羽根群と、他方側に位置する前記羽根群とは、各々の前記羽根部の前記回転方向位置が互いに異なる。
【0014】
本発明の第2の側面によって提供される攪拌装置は、攪拌対象物を収容する容器と、前記容器内に挿入される回転軸と、前記回転軸に取り付けられた本発明の第1の側面によって提供される前記攪拌羽根と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、分散および混合の高度化を図ることができる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る攪拌羽根を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る攪拌羽根を示す正面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る攪拌羽根を示す平面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る攪拌羽根を用いた攪拌装置を示す断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る攪拌羽根を示す斜視図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る攪拌羽根を示す正面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る攪拌羽根を示す平面図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る攪拌羽根を示す斜視図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る攪拌羽根を示す正面図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る攪拌羽根を用いた攪拌装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
以降の説明において、攪拌とは、分散および混合を含む概念である。攪拌対象を分散するとは、化学的に1つの相となっている物質(たとえば液体)中において、他の物質(例えば液体または粉体)をミクロな状態で散在させる動作をいう。また、攪拌対象を混合するとは、容器に収容された攪拌対象がより均一な性状となるように容器内においてかき混ぜる動作をいう。
【0020】
〔第1実施形態〕
図1図3は、本発明の第1実施形態に基づく攪拌羽根を示している。本実施形態の攪拌羽根A1は、取付部11および軸部12と羽根群2とを備えており、羽根群2を構成する部材として、複数の板材3,4を具備している。
【0021】
図1は、攪拌羽根A1を示す斜視図である。図2は、攪拌羽根A1を示す正面図である。図3は、図1および図2におけるz方向上側から見た攪拌羽根A1を示す平面図である。回転方向θは、攪拌羽根A1が回転する方向であり、軸方向zおよび径方向rに対して、一般的に周方向と称される方向である。また、これらの図における矢印は、攪拌羽根A1が回転する向きを示している。
【0022】
攪拌羽根A1は、たとえば図4に示す攪拌装置B1に取り付けられるものである。攪拌装置B1は、容器81、回転軸82および駆動部83を備えている。容器81は、分散および混合の対象である攪拌対象Tを収容する。回転軸82は、その下端に攪拌羽根A1が取り付けられ、容器81の攪拌対象T内に挿入されている。駆動部83は、回転軸82を軸方向z周りに回転させるものであり、たとえばモータを具備する。攪拌装置B1の他の構成要素としては、たとえば容器81および駆動部83を支持する筐体や、駆動部83の駆動を制御する制御部等を適宜採用してもよい。
【0023】
攪拌羽根A1を攪拌装置B1の回転軸82に取り付ける構造としては、種々の係合機構や締結機構などの取り付け機構が採用されてもよいし、回転軸82と攪拌羽根A1の少なくとも一部とが一体的に形成された構造であってもよい。攪拌羽根A1の大きさは特に限定されず、本実施形態においては、攪拌羽根A1の直径が、50mm程度である。
【0024】
取付部11は、攪拌羽根A1を攪拌装置B1の回転軸82に取り付けるための部位である。取付部11は、たとえば係合やねじによる締結等の手法によって攪拌羽根A1を回転軸82に固定する。
【0025】
軸部12は、取付部11に繋がっており、軸方向zに沿った円柱形状または円筒形状である。
【0026】
取付部11および軸部12の材質は、特に限定されず、金属や樹脂などが適宜選択される。取付部11および軸部12を構成する好ましい金属としては、たとえばステンレスが挙げられる。
【0027】
羽根群2は、軸部12に支持されており、且つ各々が回転方向θに配列された複数の羽根部20からなる。図2に示すように、羽根群2を構成する複数の羽根部20は、軸方向zにおける所定範囲に配置されている。
【0028】
羽根群2を構成する複数の羽根部20の個数は特に限定されない。本実施形態においては、羽根群2を構成する複数の羽根部20の個数は4つである。また、4つの羽根部20は、等ピッチで配列されており、図示された例においては、当該ピッチは90度である。
【0029】
板材3は、単一の金属板材料からなり、基部31および複数の羽根要素32を有する。板材3を構成する金属材料は特に限定されず、好ましい例としてステンレスが挙げられる。板材3の厚さは特に限定されず、たとえば1〜10mmである。
【0030】
基部31は、径方向r中心に位置しており、図示された例においては取付部11と軸部12との境界部分に設けられている。基部31と取付部11および軸部12との固定手法は特に限定されない。たとえば、ねじを用いた締結手法によれば、取付部11および軸部12と板材3とを分離させることが可能であり、使用後の洗浄を行うのに適している。また、攪拌羽根A1は、複数の板材3の羽根要素32同士が互いに接触又は近接して、後述の羽根面を形成するための位置決め機構を有する構成であってもよい。例えば、分離させた取付部11および軸部12と板材3とを再度組立てる場合、この位置決め機構により、複数の板材3の羽根要素32同士が互いに接触又は近接して、羽根面を形成する状態に、攪拌羽根A1を容易に組み立てることができる。本実施の形態においては、攪拌羽根A1を回転軸82に固定するための係合やねじによる締結等の手法が、上述の位置決め機構として機能する。このため、攪拌羽根A1を回転軸82に固定すると、取付部11および軸部12と板材3とが同時に位置決めされる。これは、位置決め機構の一例であり、位置決め機構は、これに限定されるものではなく、例えば、取付部11および軸部12と板材3の間にキー溝を設ける手法を用いることもできる。また、溶接を施した締結手法によれば、取付部11および軸部12と板材3とは、溶接によって接合されることにより、一体化される。このような構成においては、取付部11、軸部12と板材3との隙間をなくすことが可能であり、使用後の洗浄を行うのに適している。
【0031】
複数の羽根要素32は、基部31に繋がっている。複数の羽根要素32は、各々が羽根部20に含まれるものである。複数の羽根要素32の個数は、複数の羽根部20の個数に対応して、4つである。
【0032】
図示された例においては、羽根要素32は、第1面部321および第2面部322を有する。第1面部321および第2面部322は、各々が平板状の部位である。なお、羽根要素32は、複数の平板状の部位からなるものに限定されず、曲板状の部位を有していてもよい。
【0033】
第1面部321は、基部31に繋がる部位である。第1面部321は、折り曲げ部分を介して基部31に繋がっている。図示された例においては、第1面部321は、基部31に対して軸方向z上方に起立している。第1面部321の形状は特に限定されず、図示された例においては略三角形状とされている。第1面部321は、軸方向z上方に位置するほど回転方向θ前方に位置するように傾いている。
【0034】
第2面部322は、第1面部321に繋がる部位である。第2面部322は、折り曲げ部分を介して第1面部321に繋がっている。図示された例においては、第2面部322は、第1面部321に対して径方向r外方に繋がっている。第2面部322の形状は特に限定されず、図示された例においては略三角形状とされている。第2面部322は、軸方向z上方に位置するほど回転方向θ前方に位置するように傾いている。また、図3に示すように、第2面部322は、第1面部321と比較して軸方向z視において径方向r外方に位置するほど回転方向θ後方に位置するように傾いている。
【0035】
板材4は、単一の金属板材料からなり、基部41および複数の羽根要素42を有する。板材4を構成する金属材料は特に限定されず、好ましい例としてステンレスが挙げられる。板材4の厚さは特に限定されず、たとえば1〜10mmである。
【0036】
基部41は、径方向r中心に位置しており、基部31に対して軸方向zに離間して設けられている。図示された例においては、基部41は、軸部12の下端に設けられている。基部41と軸部12との固定手法は特に限定されない。たとえば、ねじを用いた締結手法によれば、軸部12と板材4とを分離させることが可能であり、使用後の洗浄を行うのに適している。また、溶接を施した締結手法によれば、軸部12と板材4とは、溶接によって接合されることにより、一体化される。このような構成においては、軸部12と板材3との隙間をなくすことが可能であり、使用後の洗浄を行うのに適している。
【0037】
複数の羽根要素42は、基部41に繋がっている。複数の羽根要素42は、各々が羽根部20に含まれるものである。複数の羽根要素42の個数は、複数の羽根部20の個数に対応して、4つである。
【0038】
図示された例においては、羽根要素42は、第1面部421、第2面部422および第3面部423を有する。第1面部421、第2面部422および第3面部423は、各々が平板状の部位である。なお、羽根要素42は、複数の平板状の部位からなるものに限定されず、曲板状の部位を有していてもよい。
【0039】
第1面部421は、基部41に繋がる部位である。第1面部421は、折り曲げ部分を介して基部41に繋がっている。図示された例においては、第1面部421は、基部41に対して軸方向z上方に起立している。第1面部421の形状は特に限定されず、図示された例においては略三角形状とされている。第1面部321は、軸方向z上方に位置するほど回転方向θ前方に位置するように傾いている。
【0040】
本実施形態においては、羽根要素32の第2面部322と羽根要素42の第1面部421とが、互いに近接している。第2面部322は、近接端縁320を有し、第1面部421は、近接端縁420を有する。近接端縁320と近接端縁420とは、互いに近接する端縁である。図示された例においては、近接端縁320と近接端縁420とは、互いに平行である。また、図示された例においては、近接端縁320と近接端縁420とは、隙間を隔てている。この隙間の大きさは特に限定されず、好ましくは、板材3および板材4の厚さの0.25〜1.0倍である。なお、図示された例とは異なり、近接端縁320と近接端縁420との少なくとも一部同士が、互いに接触する構成であってもよい。さらに、近接端縁320と近接端縁420とを溶接により接合することにより、近接端縁320と近接端縁420とを連結し、これらの間に隙間を設けない構成であってもよい。
【0041】
第2面部422は、第1面部421に繋がる部位である。第2面部422は、折り曲げ部分を介して第1面部421に繋がっている。図示された例においては、第2面部422は、第1面部421に対して径方向r外方に繋がっている。第2面部422の形状は特に限定されず、図示された例においては略三角形状とされている。第2面部422は、軸方向z上方に位置するほど回転方向θ前方に位置するように傾いている。また、図3に示すように、第2面部422は、第1面部421と比較して軸方向z視において径方向r外方に位置するほど回転方向θ後方に位置するように傾いている。
【0042】
第3面部423は、第2面部422に繋がる部位である。第3面部423は、折り曲げ部分を介して第2面部422に繋がっている。図示された例においては、第3面部423は、第2面部422に対して径方向r外方に繋がっている。第3面部423の形状は特に限定されず、図示された例においては略三角形状とされている。第3面部423は、軸方向z上方に位置するほど回転方向θ前方に位置するように傾いている。また、図3に示すように、第3面部423は、第2面部422と比較して軸方向z視において径方向r外方に位置するほど回転方向θ前方に位置するように傾いている。また、図2に示すように、第3面部423の軸方向z下端は、基部41よりも下方に位置している。
【0043】
羽根部20は、羽根要素32および羽根要素42を含んで構成されている。羽根部20は、互いに別体である羽根要素32および羽根要素42によって構成されるものの、撹拌において1つの羽根部として撹拌対象である攪拌対象Tを流動させる機能を果たす。羽根部20は、軸方向zに隣接する板材3,4の羽根要素32,42同士が互いに接触または近接して構成された羽根面を有する。この羽根面は、本実施形態においては、第1面部321、第2面部322、第1面部421、第2面部422および第3面部423によって構成される包括的な面である。この羽根面は、攪拌対象Tを流動させる。
【0044】
羽根部20は、内方端21、前方湾曲部27および後方湾曲部28を有する。内方端21は、羽根部20のうち径方向rにおいて最も内方に位置する端部である。図示された例においては、図1および図2に示すように、内方端21は、羽根要素32の第1面部321の端縁によって構成されている。本実施形態においては、複数の羽根部20の内方端21どうしは、回転方向θにおいて互いに離間している。
【0045】
前方湾曲部27は、内方端21に繋がり且つ軸方向z視において回転方向θ前方に凸である部位である。より具体的には、前方湾曲部27は、前方湾曲部27の径方向r両端を結ぶ仮想直線よりも回転方向θ前方に凸である形状である。本実施形態においては、前方湾曲部27は、羽根要素32の第1面部321および第2面部322と羽根要素42の第1面部421とによって構成されている。
【0046】
後方湾曲部28は、前方湾曲部27に対して径方向r外方に繋がり且つ軸方向z視において回転方向θ後方に凸である部位である。より具体的には、後方湾曲部28は、後方湾曲部28の径方向r両端を結ぶ仮想直線よりも回転方向θ後方に凸である形状である。本実施形態においては、後方湾曲部28は、羽根要素42の第2面部422および第3面部423によって構成されている。
【0047】
図1図3においては、前方湾曲部27および後方湾曲部28について、理解の便宜上一点鎖線の矢印によってそれぞれの範囲を示している。本実施形態においては、羽根部20は、前方湾曲部27および後方湾曲部28を有することにより、略S字形状とされている。なお、前方湾曲部27および後方湾曲部28が設けられる範囲や、それぞれの湾曲度合い等は特に限定されない。
【0048】
また、本実施形態においては、前方湾曲部27が軸方向zにおいて回転方向θ前方に位置するように傾いており、後方湾曲部28が軸方向zにおいて上方に位置するほど回転方向θ前方に位置するように傾いている。
【0049】
次に、攪拌羽根A1および攪拌装置B1の作用について説明する。
【0050】
本実施形態によれば、羽根部20は、互いに近接する板材3の羽根要素32と板材4の羽根要素42とを含んで構成されている。羽根要素32と羽根要素42とは、軸方向zに互いに離間して設けられた基部31と基部41とにそれぞれ繋がっている。このため、羽根部20は、羽根要素32単体または羽根要素42単体と比べて面積がより大きいものや、軸方向zにおいてより起立寸法が大きいものや、形状がより複雑なものとすることが可能である。また、羽根要素32および羽根要素42は、基部31および基部41それぞれ支持されているため、単一の金属板材料によって羽根部20と同じ形状、同じ大きさおよび同じ角度の羽根部を形成した場合と比べて、支持強度を高めることができる。また、羽根部20は、軸方向zに隣接する板材3,4の羽根要素32,42同士が互いに接触または近接して構成された羽根面を有する。この羽根面により、たとえば羽根要素32,42が互いに離間した状態で攪拌対象Tを流動させる場合と比べて、より大きく効率的に攪拌対象Tを流動させることが可能である。したがって、攪拌対象Tをより効果的に流動させることが可能であり、分散および混合の高度化を図ることができる。
【0051】
近接端縁320と近接端縁420とが隙間を隔てていることにより、攪拌羽根A1の使用後に、近接端縁320と近接端縁420との間に付着した攪拌対象Tを確実に洗浄することができる。また、近接端縁320と近接端縁420とが互いに平行であることにより、近接端縁320と近接端縁420との間に、過大な隙間が生じることを回避することができる。近接端縁320と近接端縁420との隙間が、板材3および板材4の厚さの0.25〜1.0倍であることは、当該隙間によって羽根部20による流動が阻害されることを抑制しつつ、洗浄を適切に行うのに好ましい。あるいは、図示された例とは異なり、取付部11、軸部12および近接端縁320と近接端縁420に溶接を施し一体として隙間を無くすことにより、攪拌羽根A1の使用後に、付着した攪拌対象Tを確実に洗浄することができる。
【0052】
また、攪拌羽根A1による混合状態は、攪拌羽根Xによる混合状態と比べて容器81のより広い範囲においてより大きな流速が得られており、攪拌対象Tの全体がより高度に混合されている。
【0053】
攪拌羽根A1,A2による混合の高度化の要因として、まず、羽根部20の前方湾曲部27の寄与が挙げられる。発明者らの研究によれば、図3および図6に示すように、前方湾曲部27を回転方向θ前方に凸とすることにより、内方端21において攪拌対象Tをより強力に吸引しつつ、吸引した攪拌対象Tを径方向r外方へとよりスムーズに移動させることが可能であるという知見が得られた。特に、図示された例においては、内方端21における羽根部20と回転方向θとがなす角度が相対的に小となっていることが、攪拌対象Tをより強力に吸引するのに有利であることが判明した。また、図示された前方湾曲部27においては、径方向r外方に向かうほど羽根部20と回転方向θとがなす角度が徐々に大きくなっていることが、吸引した攪拌対象Tを径方向r外方へとよりスムーズに移動させるのに有利であることが判明した。この強力な吸引とスムーズな移動は、攪拌対象T全体の混合を生じさせる一因と考えられる。
【0054】
発明者らの研究によれば、前方湾曲部27を回転方向θ前方に凸とすることにより、内方端21において攪拌対象Tをより強力に吸引しつつ、吸引した攪拌対象Tを径方向r外方へとよりスムーズに移動させることが可能であるという知見が得られた。また、発明者らの研究によれば、回転方向θ後方に凸である後方湾曲部28を設けることにより、後方湾曲部28においては、径方向r外方に向かうほど羽根部20と回転方向θとがなす角度が徐々に大となり、吸引した攪拌対象Tを攪拌羽根A1から径方向r外方へとより力強く吐出する効果が得られることが判明した。前方湾曲部27による吸引の強化と後方湾曲部28による吐出の強化とが相乗的に作用することにより、攪拌対象T全体の混合を促進されることができる。
【0055】
また、羽根部20を回転方向θ前方に傾けることにより、羽根部20の回転方向θ後方に、攪拌対象T内に混入した気泡が滞留することを回避することが可能である。気泡の滞留は、攪拌羽根A1による攪拌対象Tの混合を阻害する要因となりうる。攪拌羽根A1によれば、気泡の残留を抑制可能であり、攪拌対象Tの混合の高度化に好ましい。
【0056】
図5図10は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0057】
〔第2実施形態〕
図5図7は、本発明の第2実施形態に係る攪拌羽根を示している。本実施形態の攪拌羽根A2は、羽根部20の構成が、上述した攪拌羽根A1と異なっている。図5は、攪拌羽根A2を示す斜視図である。図6は、攪拌羽根A2を示す正面図である。図7は、図5の軸方向z上方から見た攪拌羽根A2を示す平面図である。攪拌羽根A2は、攪拌羽根A1と同様に、攪拌装置B1に取り付けて用いられる。
【0058】
本実施形態においては、羽根部20は、前方湾曲部27のみを有しており、攪拌羽根A1で述べた後方湾曲部28を有していない。すなわち、図7に示すように、軸方向z視において、羽根部20の全体が前方湾曲部27によって構成されている。また、本実施形態においては、複数の羽根部20の個数は、3つである。これに対応して、板材3の複数の羽根要素32の個数および板材4の複数の羽根要素42の個数は、いずれも3つである。
【0059】
また、本実施形態においては、基部31および基部41が軸部12の軸方向z両側に固定されている。攪拌羽根A1で述べた取付部11は、攪拌羽根A2には設けられていない。攪拌羽根A2は、軸部12、基部31および基部41等を利用して、係合やねじを用いた手法によって回転軸82に取り付けられてもよい。あるいは、攪拌羽根A2は、取付部11と同様の部位を有していてもよい。
【0060】
羽根要素32は、第1面部321および第2面部322を有する。図示された例においては、第1面部321は、略四角形状である。第2面部322は、略三角形状である。図7に示すように、第2面部322は、第1面部321と比較して軸方向z視において径方向r外方に位置するほど回転方向θ後方に位置するように傾いている。
【0061】
羽根要素42は、第1面部421、第2面部422および第3面部423を有する。図示された例においては、第1面部421、第2面部422および第3面部423は、略三角形状である。また、図6に示すように、基部41側から第1面部421、第2面部422および第3面部423の順に、軸方向z下方から上方へと配置されている。図7に示すように、第2面部422は、第1面部421と比較して軸方向z視において径方向r外方に位置するほど回転方向θ後方に位置するように傾いている。また、第3面部423は、第2面部422と比較して軸方向z視において径方向r外方に位置するほど回転方向θ後方に位置するように傾いている。
【0062】
本実施形態においては、羽根要素32の第2面部322と羽根要素42の第3面部423とが、互いに近接している。第2面部322の近接端縁320と第3面部423の近接端縁420とは、隙間を隔てて互いに平行である。この隙間の大きさは、攪拌羽根A1と同様である。本実施形態においては、径方向r内方から第1面部321、第2面部322、第3面部423、第2面部422、第1面部421の順で並んでおり、これらによって、前方湾曲部27のみを有する羽根部20が構成されている。また、図6に示すように、羽根部20は、軸方向zにおいて基部41と同じ位置および基部41よりも上方の位置に設けられている。
【0063】
このような実施形態によっても、分散および混合の高度化を図ることができる。また、本実施形態においても、攪拌羽根A1と同様に、羽根部20の前方湾曲部27が混合の高度化に貢献すると考えられる。前方湾曲部27による強力な吸引とスムーズな移動は、攪拌対象T全体の混合を生じさせる一因と考えられる。特に攪拌羽根A1において、後方湾曲部28が回転方向θ後方に凸であることは、吸引した攪拌対象Tを攪拌羽根A1から径方向r外方へとより強く吐出する効果が得られる。これに加えて、後方湾曲部28は、回転方向θ前方に攪拌対象Tを強く吐出する効果を発揮する場合がある。この吐出が過大であると、遠心力による空気引き込み渦を攪拌対象Tに生じてしまう。攪拌羽根A2では、過大な吐出を抑制することにより、回転方向θ前方流れによる空気引き込み渦を生じにくいようにする効果が期待できる。
【0064】
〔第3実施形態〕
図8および図9は、本発明の第3実施形態に係る攪拌羽根を示している。本実施形態の攪拌羽根A3は、一対の羽根群2を備えている。
【0065】
図8は、攪拌羽根A3を示す斜視図である。図9は、攪拌羽根A3を示す正面図である。
【0066】
一対の羽根群2は、軸方向zにおける一方側と他方側とに位置し、且つ各々が回転方向θに配列された複数の羽根部20からなる。図9に示すように、1つの羽根群2を構成する複数の羽根部20は、軸方向zにおける所定範囲に配置されている。また、一対の羽根群2を構成する複数の羽根部20どうしは、軸方向zにおいて互いに重なっていない。羽根部20の構成は、上述した攪拌羽根A1の羽根部20と同様である。また、羽根群2を構成する板材3および板材4は、攪拌羽根A1の板材3および板材4と同様の構成である。
【0067】
本実施形態においては、2つの羽根群2を構成する複数の羽根部20の個数はともに4つである。また、4つの羽根部20は、等ピッチで配列されており、図示された例においては当該ピッチは90度である。
【0068】
図8および図9に示すように、一対の羽根群2は、各々の羽根部20の回転方向θ位置が互いに異なる。より具体的には、本実施形態においては、各羽根群2を構成する4つの羽根部20が回転方向θにおいて90度ピッチで配列されている。そして、一対の羽根群2を構成する羽根部20同士は、回転方向θにおいて45度ずれた位置に配置されている。すなわち、一対の羽根群2は、羽根部20の配列ピッチの半分に相当する方位だけ互いにずれた関係となっている。
【0069】
図10は、攪拌羽根A3を用いた攪拌装置の一例を示している。本例の攪拌装置B3は、2つの回転軸82と、攪拌羽根A3以外の攪拌羽根84を備えている。
【0070】
2つの回転軸82は、駆動部83によってそれぞれ回転駆動される。2つの回転軸82の長さや回転速度は、適宜設定可能である。攪拌羽根84は、攪拌羽根A3よりも相対的に大きな攪拌羽根であり、容器81の底部付近において径方向r中央に配置される。攪拌羽根84は、たとえば、容器81内の攪拌対象T全体の混合を促進することを目的として設けられている。
【0071】
本例においては、攪拌羽根A3は、径方向rにおける容器81の側壁寄りに配置されており、軸方向zにおいて攪拌羽根84よりも上方に位置している。
【0072】
本実施形態によっても、分散および混合の高度化を図ることができる。また、本実施形態においても、攪拌羽根A1と同様に、前方湾曲部27による吸引の強化と後方湾曲部28による吐出の強化とが相乗的に作用することにより、攪拌対象T全体の混合が促進されると考えられる。
【0073】
また、攪拌羽根A3においては、一対の羽根群2が回転方向θにおいて互いに半ピッチずれて設けられている。このため、攪拌羽根A3による攪拌においては、一対の羽根群2から吐出された攪拌対象Tの軸方向z方向成分が、互いに干渉し合うことを抑制することが可能である。これにより、軸方向zにおいて一方の羽根群2から他方の羽根群2が存在する側へと流入する流動が促進される。これは、混合の高度化に有利である。
【0074】
本発明に係る攪拌羽根および攪拌装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る攪拌羽根および攪拌装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0075】
羽根部20は、羽根要素32および羽根要素42のみを含む構成に限定されない。板材3および板材4に加えて、別の板材を備えることにより、羽根部20が、羽根要素32および羽根要素42に加えて、別の羽根要素を含む構成であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
A1,A2,A3:攪拌羽根
B1,B3:攪拌装置
1 :基部
2 :羽根群
3 :板材
4 :板材
11 :取付部
12 :軸部
20 :羽根部
21 :内方端
27 :前方湾曲部
28 :後方湾曲部
31 :基部
32 :羽根要素
41 :基部
42 :羽根要素
81 :容器
82 :回転軸
83 :駆動部
84 :攪拌羽根
320 :近接端縁
321 :第1面部
322 :第2面部
420 :近接端縁
421 :第1面部
422 :第2面部
423 :第3面部
T :攪拌対象
X :攪拌羽根
r :径方向
z :軸方向
θ :回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10