特許第6985907号(P6985907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985907
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】灯具ユニット
(51)【国際特許分類】
   F21V 23/00 20150101AFI20211213BHJP
   F21S 41/675 20180101ALI20211213BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20211213BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20211213BHJP
   F21Y 115/20 20160101ALN20211213BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20211213BHJP
【FI】
   F21V23/00 113
   F21S41/675
   F21Y101:00 100
   F21Y101:00 300
   F21Y115:10
   F21Y115:20
   F21Y115:30
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-230008(P2017-230008)
(22)【出願日】2017年11月30日
(65)【公開番号】特開2019-102207(P2019-102207A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】八木 隆之
【審査官】 安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−325643(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0261326(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 23/00
F21S 41/00
F21Y 101/00
F21Y 115/10
F21Y 115/20
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影光学系と、
前記投影光学系の後方に配置され、入射した光を選択的に該投影光学系へ反射する光偏向装置と、
前記光偏向装置の反射部へ光を照射する照射光学系と、
前記光偏向装置で反射された光を画像として検知する検知部と、を備え、
前記光偏向装置は、前記反射部の少なくとも一部の領域において、前記照射光学系により照射された光を所望の配光パターンの一部として有効に利用されるように前記投影光学系へ向けて反射する第1反射位置と、前記照射光学系により照射された光が有効に利用されないように反射する第2反射位置とを切り替え可能に構成されており、
前記検知部は、前記光偏向装置が前記第2反射位置で反射した光を検知可能な位置に配置されており、前記第2反射位置となっている前記光偏向装置の反射部へ前記照射光学系から光を照射した際の前記画像の暗部を検知できるように構成されていることを特徴とする灯具ユニット。
【請求項2】
前記検知部は、前記光偏向装置が前記第1反射位置で反射した光を妨げない位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の灯具ユニット。
【請求項3】
投影光学系と、
前記投影光学系の後方に配置され、入射した光を選択的に該投影光学系へ反射する光偏向装置と、
前記光偏向装置の反射部へ光を照射する照射光学系と、
非可視光を照射する検査光照射部と、
前記光偏向装置で反射された前記非可視光を検知する検知部と、を備え、
前記光偏向装置は、前記反射部の少なくとも一部の領域において、前記照射光学系により照射された光を所望の配光パターンの一部として有効に利用されるように前記投影光学系へ向けて反射する第1反射位置と、前記照射光学系により照射された光が有効に利用されないように反射する第2反射位置とを切り替え可能に構成されており、
前記検知部は、前記光偏向装置が前記第1反射位置で反射した前記非可視光を検知可能な位置に配置されていることを特徴とする灯具ユニット。
【請求項4】
前記光偏向装置は、マイクロミラーアレイを有し、
前記マイクロミラーアレイの各ミラー素子は、前記第1反射位置と、前記第2反射位置との間を回動軸を中心に切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の灯具ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マトリックス状に配列された複数の反射素子が表面に設けられた反射装置により、光源から出射した光を選択的に反射することで、車両前方を所定の配光パターンで照射する車両用照明装置が考案されている(特許文献1)。反射装置は、多数個の反射素子がそれぞれ傾倒可能に配置されており、多数個の反射素子の位置を第1位置と第2位置とに切り替え可能である。そして、反射装置は、各反射素子を、光源からの光の反射方向が配光パターンの形成に寄与する第1位置と配光パターンの形成に寄与しない第2位置とに適宜変化させることで、路面などを照明する配光パターンを形成するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−110760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述の反射装置は、多数個の反射素子が配列されているため、一部の反射素子の位置の切替えに不具合があると、本来照射されない領域を照射してしまったり、所定の配光パターンを形成できなかったりする。そのため、このような不具合を適切に検知することが望ましい。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光偏向装置等の不具合を検知することが可能な新たな灯具ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の灯具ユニットは、投影光学系と、投影光学系の後方に配置され、入射した光を選択的に該投影光学系へ反射する光偏向装置と、光偏向装置の反射部へ光を照射する照射光学系と、光偏向装置で反射された光を検知する検知部と、を備える。光偏向装置は、反射部の少なくとも一部の領域において、照射光学系により照射された光を所望の配光パターンの一部として有効に利用されるように投影光学系へ向けて反射する第1反射位置と、照射光学系により照射された光が有効に利用されないように反射する第2反射位置とを切り替え可能に構成されており、検知部は、光偏向装置が第1反射位置で反射した光を検知可能な位置に配置されている。
【0007】
この態様によると、照射光学系から照射する光と、光偏向装置の反射位置と、検知部における反射光の検出状態に基づいて、光偏向装置の不具合を検知できる。
【0008】
検知部は、光偏向装置が第1反射位置で反射した光を妨げない位置に配置されていてもよい。これにより、検知部は、照射光学系により照射された光を所望の配光パターンの一部として有効に利用することを妨げなくて済む。
【0009】
検知部は、第2反射位置となっている光偏向装置の反射部へ照射光学系から光を照射した際の反射光を検知してもよい。これにより、照射光学系から照射された光は、光偏向装置が正常に第2反射位置に切り替えられていれば、検知部では反射光が検知される。この場合、光偏向装置に不具合がないと推定される。また、光偏向装置が正常に第2反射位置に切り替えられずに少なくとも一部が第1反射位置のままであれば、検知部では反射光の少なくとも一部に非照射部(暗部)が検知される。この場合、光偏向装置には不具合があると推定される。一方、検知部は、第1反射位置となっている光偏向装置の反射部へ照射光学系から光を照射した際の反射光を検知してもよい。照射光学系から照射された光は、光偏向装置が正常に第1反射位置に切り替えられていれば、検知部では反射光は検知されない。この場合、光偏向装置に不具合がないと推定される。また、光偏向装置が正常に第1反射位置に切り替えられずに少なくとも一部が第2反射位置のままであれば、検知部では何らかの反射光が検知される。この場合、光偏向装置には不具合があると推定される。
【0010】
本発明の別の態様もまた、灯具ユニットである。この灯具ユニットは、投影光学系と、投影光学系の後方に配置され、入射した光を選択的に該投影光学系へ反射する光偏向装置と、光偏向装置の反射部へ光を照射する照射光学系と、非可視光を照射する検査光照射部と、光偏向装置で反射された非可視光を検知する検知部と、を備える。光偏向装置は、反射部の少なくとも一部の領域において、照射光学系により照射された光を所望の配光パターンの一部として有効に利用されるように投影光学系へ向けて反射する第1反射位置と、照射光学系により照射された光が有効に利用されないように反射する第2反射位置とを切り替え可能に構成されており、検知部は、光偏向装置が第1反射位置で反射した非可視光を検知可能な位置に配置されている。
【0011】
この態様によると、検査光照射部から照射する非可視光と、光偏向装置の反射位置と、検知部における反射非可視光の検出状態に基づいて、光偏向装置の不具合を検知できる。また、照射光学系から光が照射していない任意のタイミングで光偏向装置の不具合の有無を確かめることができる。そのため、光偏向装置の不具合の有無を確かめる際に、照射光学系からの光がユニットの外部へ漏れ出ることを防止できる。
【0012】
光偏向装置は、マイクロミラーアレイを有してもよい。マイクロミラーアレイの各ミラー素子は、第1反射位置と、第2反射位置との間を回動軸を中心に切り替え可能に構成されていてもよい。回動軸は、ミラー素子の反射面の対角線に沿っていてもよい。これにより、様々な形状の配光パターンを素早く、精度良く形成できる。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光偏向装置等の不具合を検知することが可能な新たな灯具ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施の形態に係る灯具ユニットの概略構造を模式的に示す側面図である。
図2図2(a)は、参考例に係る光偏向装置の概略構成を示す正面図、図2(b)は、図2(a)に示す光偏向装置のA−A断面図である。
図3】光源から出射された光をミラー素子が第1反射位置および第2反射位置で反射した場合の反射光の広がりを模式的に示す図である。
図4】第1の実施の形態に係るミラー素子の回動軸を説明するための模式図である。
図5】第1の実施の形態に係る灯具ユニットの概略構成の正面図である。
図6図5に示す灯具ユニットにおける反射光の広がりを模式的に示す上面図である。
図7】第1の実施の形態に係る灯具ユニットによる照射パターンの一例を示す模式図である。
図8図8(a)は、光偏向装置を第2反射位置P2にした状態でミラーアレイ素子の一部に不具合が生じた場合の撮像範囲を模式的に示す図、図8(b)は、光偏向装置を第1反射位置P1にした状態でミラーアレイ素子の一部に不具合が生じた場合の撮像範囲を模式的に示す図である。
図9】光源から出射された可視光およびIR光源から出射されたIR光をミラー素子が第1反射位置および第2反射位置で反射した場合の反射光の広がりを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0017】
(第1の実施の形態)
[灯具ユニット]
図1は、第1の実施の形態に係る灯具ユニットの概略構造を模式的に示す側面図である。第1の実施の形態に係る灯具ユニット10は、投影光学系12と、投影光学系12の光軸Ax上に配置され、入射した光を選択的に投影光学系12へ反射する光偏向装置100と、光偏向装置100の反射部100aへ光を照射する照射光学系16と、光偏向装置100で反射された光を検知する検知部としての撮像ユニット17と、制御部50と、を備える。投影光学系12は、投影レンズ18を含む。照射光学系16は、光源20と、集光部材22と、リフレクタ24と、を含む。
【0018】
撮像ユニット17は、例えば、撮像素子を備えたカメラやビデオであり、光信号を電気信号に変換することが可能であればよい。また、撮像ユニット17と光偏向装置100との間には、光偏向装置100で反射された光が撮像ユニット17の受光部に集光するための集光部材(リフレクタ等の反射部材やレンズ等の屈折部材)が配置されていてもよい。
【0019】
第1の実施の形態に係る灯具ユニット10は、主として車両用灯具(例えば、車両用前照灯)に用いられる。ただし、用途はこれに限られるものではなく、各種照明装置や各種移動体(航空機や鉄道車両等)の灯具に適用することも可能である。また、図1に示す灯具ユニット10は、各部品が光軸Axを挟んで上下に配置されている。これにより、灯具ユニットの幅方向のサイズをコンパクトにできる。一方、灯具ユニット10を光軸Axを中心に90度回転させることで、各部品が光軸Axを挟んで左右に配置されるようにしてもよい。この場合、灯具ユニットの高さ方向のサイズをコンパクトにできる。
【0020】
光源20は、LED(Light emitting diode)、LD(Laser diode)、EL(Electro luminescence)素子等の半導体発光素子や、電球、白熱灯(ハロゲンランプ)、放電灯(ディスチャージランプ)等を用いることができる。集光部材22は、光源20から出射した光の多くをリフレクタ24の反射面24aに導けるように構成されているものであり、例えば、凸レンズ、砲弾形状の中実導光体や、内面が所定の反射面となっている反射鏡等が用いられる。より具体的には、複合放物面集光器(Compound Parabolic Concentrator)が挙げられる。なお、光源20から出射したほとんどの光をリフレクタ24の反射面に導ける場合は、集光部材を用いなくてもよい。光源20は、例えば、金属やセラミック等のヒートシンクの所望の位置に搭載される。
【0021】
光偏向装置100は、投影光学系12の後方の光軸X上に配置され、光源20から出射した光を選択的に投影光学系12へ反射するように構成されている。光偏向装置100は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical System)やDMD(Digital Mirror Device)といった複数のマイクロミラーをアレイ(マトリックス)状に配列したものである。これらの複数のマイクロミラーの反射面の角度をそれぞれ制御することで、光源20から出射した光の反射方向を選択的に変えることができる。つまり、光源20から出射した光の一部を投影光学系12へ向けて反射し、それ以外の光を有効に利用されないような方向へ向けて反射することができる。ここで、有効に利用されないような方向とは、例えば、反射光の影響が少ない方向(例えば所望の配光パターンの形成にほとんど寄与しない方向)や光吸収部材(遮光部材)に向かう方向と捉えることができる。
【0022】
第1の実施の形態に係る投影光学系12は、投影レンズ18の焦点近傍に光偏向装置100の後述するマイクロミラーアレイが配置される。なお、投影光学系12は、レンズ等の光学部材を複数備えてもよい。また、投影光学系が含む光学部材は、レンズに限られず反射部材であってもよい。
【0023】
なお、第1の実施の形態に係る投影光学系12は、光源20から出射した光を光偏向装置100へ反射するリフレクタ24を有している。リフレクタ24は、反射した光を光偏向装置100の反射部100aへ集束するように構成されている。これにより、光源20から出射した光を無駄なく光偏向装置100の反射部100aへ向かわせることができる。
【0024】
また、リフレクタ24の反射面24aは、光偏向装置100の反射部100aよりも面積が大きい。これにより、光偏向装置100を小型化できる。また、第1の実施の形態に係る照射光学系16は、半導体発光素子を含む光源20と、光源20から出射した光を集光する複合放物面型の集光部材22と、を有している。これにより、光源20から出射した光を無駄なく光偏向装置100の反射部100aへ向かわせることができる。
【0025】
上述のように構成された灯具ユニット10は、部分的な点消灯を実現する可変配光前照灯に用いることができる。
【0026】
[光偏向装置]
図2(a)は、参考例に係る光偏向装置の概略構成を示す正面図、図2(b)は、図2(a)に示す光偏向装置のA−A断面図である。
【0027】
参考例に係る光偏向装置100は、図2(a)に示すように、複数の微小なミラー素子102がマトリックス状に配列されたマイクロミラーアレイ104と、ミラー素子102の反射面102aの前方側(図2(b)に示す光偏向装置100の右側)に配置された透明なカバー部材106と、を有する。カバー部材は、例えば、ガラスやプラスチック等である。
【0028】
マイクロミラーアレイ104の各ミラー素子102は、光源から出射された光を所望の配光パターンの一部として有効に利用されるように投影光学系へ向けて反射する第1反射位置P1(図2(b)に示す実線位置)と、光源から出射された光が有効に利用されないように反射する第2反射位置P2(図2(b)に示す点線位置)とを切り替え可能に構成されている。
【0029】
図3は、光源から出射された光をミラー素子が第1反射位置および第2反射位置で反射した場合の反射光の広がりを模式的に示す図である。なお、図3では、説明を簡略化するためにマイクロミラーアレイを一つのミラー素子に置き換えて図示している。また、図1で示した集光部材22は図示を省略している。
【0030】
図3に示すように、光源20から出射した光はリフレクタ24により集光反射されるため、入射光Linは完全な平行光とはならない。つまり、入射光Linは、ミラー素子102の反射面102aに入射する際の入射角がある程度の広がりを持つ。そして、ミラー素子102は、第1反射位置P1にて入射光Linを反射した場合に、反射光R1が主として投影レンズ18に向かうように配置されている。また、図3に示すように、ミラー素子102は、第2反射位置P2にて入射光Linを反射した場合に、反射光R2が投影レンズ18に向かわないように配置されている。
【0031】
そして、それぞれのミラー素子102の反射位置を制御し、光源20から出射した光の反射方向を選択的に変えることで、所望の投影画像や反射画像、配光パターンを得ることができる。つまり、第1の実施の形態に係る光偏向装置100は、反射部100aの少なくとも一部のミラー素子102において、照射光学系16により照射された光を所望の配光パターンの一部として有効に利用されるように投影光学系12へ向けて反射する第1反射位置P1と、照射光学系16により照射された光が有効に利用されないように反射する第2反射位置P2とを切り替え可能に構成されている。撮像ユニット17は、ミラー素子102が第2反射位置P2で反射した反射光R2を検知可能な位置に配置されている。
【0032】
図4は、第1の実施の形態に係るミラー素子102の回動軸を説明するための模式図である。ミラー素子102は、四角形(例えば、正方形、菱形、長方形、平行四辺形)の反射面102aを有している。各ミラー素子102は、四角形の反射面102aの対角線に沿った回動軸C1を中心に、第1反射位置P1と、第2反射位置P2との間を切り替え可能に構成されている。これにより、様々な形状の配光パターンを素早く、精度良く形成できる。
【0033】
図5は、第1の実施の形態に係る灯具ユニット10の概略構成の正面図である。図6は、図5に示す灯具ユニットにおける反射光の広がりを模式的に示す上面図である。図7は、第1の実施の形態に係る灯具ユニット10による照射パターンの一例を示す模式図である。
【0034】
図5図6に示すように、第1の実施の形態に係る照射光学系16は、投影光学系12の光軸Axを含む鉛直面S(XZ平面)を基準として第1反射位置P1の正面側(図6に示す光軸Axの右側)にずれた位置から光偏向装置100の反射部にあるミラー素子102を照射するように配置されている。
【0035】
このように構成された灯具ユニット10の照射光学系16は、第2反射位置P2の正面よりも第1反射位置P1の正面にずれた位置から光偏向装置100の反射部100aを照射するように配置されている。そのため、照射光学系16の光の第1反射位置P1での入射角や反射角は、第2反射位置P2での入射角や反射角よりも小さくなる。その結果、照射光学系16および投影光学系12のレイアウトをコンパクトにできる。また、第1反射位置P1にあるミラー素子102に対する入射角および反射角が小さいため、投影光学系12に入射しない反射光を減らせる。つまり、照射光学系16の光を無駄なく配光パターンに利用できる。
【0036】
照射光学系16は、投影光学系12の光軸Axを含む鉛直面Sを基準として、光軸Axを中心に第1反射位置P1の正面に近い側にα°(0<α≦45)回転した場所に配置されている。なお、回転角度αは、ミラー素子102の回動角度(回動軸C1を回転中心とした第1反射位置と第2反射位置との角度変位)の設定に応じて種々変わりうるが、5°以上が好ましく、また、40°以下が好ましい。
【0037】
このように構成された灯具ユニット10は、図7に示すように、矩形に近い照射パターンPHを実現できる。つまり、光偏向装置100で反射される際に光源像が回転することを想定して照射光学系16全体を回転させることで、所望の配光パターンを実現し易くなる。また、光源20とリフレクタ24との相対的な配置関係を維持して全体を回転することで、光源像がリフレクタ24で反射した際の反射像は変わらずに光偏向装置100まで到達するため、光学設計が容易となる。これにより、所望の配光パターンを実現しつつ、灯具全体のレイアウトのコンパクト化と投影光学系12に入射する反射光の量とを高いレベルで両立できる。
【0038】
次に、光偏向装置100の不具合を検知するための撮像ユニット17の働きについて説明する。第1の実施の形態に係る灯具ユニット10は、照射光学系16から照射する光と、光偏向装置100の反射位置(第1反射位置または第2反射位置)と、撮像ユニット17における反射光の検出状態(画像中の暗部または明部)の情報に基づいて、光偏向装置100の不具合を検知できる。以下、光偏向装置100の不具合の検知方法について具体的に説明する。
【0039】
撮像ユニット17は、図3に示すように、光偏向装置100が第1反射位置P1で反射した反射光R1を妨げない位置に配置されている。これにより、撮像ユニット17は、照射光学系16により照射された光を所望の配光パターンの一部として有効に利用することを妨げなくて済む。
【0040】
図8(a)は、光偏向装置100を第2反射位置P2にした状態でミラーアレイ素子の一部に不具合が生じた場合の撮像範囲を模式的に示す図、図8(b)は、光偏向装置100を第1反射位置P1にした状態でミラーアレイ素子の一部に不具合が生じた場合の撮像範囲を模式的に示す図である。
【0041】
灯具ユニット10が備える制御部50は、光偏向装置100の不具合の有無を確認するための検知動作を所定のタイミングで行うように、照射光学系16や光偏向装置100の動作を制御する。具体的には、制御部50は、灯具ユニット10の照射に支障がないタイミング(例えば、停車時や灯具ユニット不使用時)で、照射光学系16の光源20を全点灯して光偏向装置100の反射部100aを光で照射するとともに、全てのミラー素子102が第2反射位置P2となるように光偏向装置100を制御する。そして、この状態で、撮像ユニット17は、光偏向装置100の反射部100aからの反射光R2を検知する。
【0042】
これにより、照射光学系16から照射された入射光Linは、光偏向装置100の全てのミラー素子102が正常に第2反射位置P2に切り替えられていれば、撮像ユニット17では画像欠け(暗部)のない反射光R2が検知される。この場合、光偏向装置100に不具合がないと推定される。
【0043】
一方、一部のミラー素子102が不具合により第1反射位置P1のままであると、図8(a)に示すように、撮像画像Pにおける反射光R2の一部に画像欠け(非照射部(暗部)Dが検知される。この場合、光偏向装置100には不具合があると推定され、一部のミラー素子102の不具合を前提としてその後の配光制御(例えば光源の消灯、減光)が可能となる。
【0044】
なお、制御部50は、灯具ユニット10の照射に支障がないタイミングで、照射光学系16の光源20を全点灯して光偏向装置100の反射部100aを光で照射するとともに、全てのミラー素子102が第1反射位置P1となるように光偏向装置100を制御する。そして、この状態で、撮像ユニット17は、光偏向装置100の反射部100aからの反射光R2を検知する。
【0045】
これにより、照射光学系16から照射された入射光Linは、光偏向装置100の全てのミラー素子102が正常に第1反射位置P1に切り替えられていれば、撮像ユニット17では反射光R2が全く検知されない。この場合、光偏向装置100に不具合がないと推定される。
【0046】
一方、一部のミラー素子102が不具合により第2反射位置P2のままであると、図8(b)に示すように、撮像画像Pにおける反射光R2に相当する領域の一部に輝点(反射光)Bが検知される。この場合、光偏向装置100には不具合があると推定される。
【0047】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る灯具ユニットは、第1の実施の形態に係る灯具ユニット10と比較して、非可視光である赤外線(IR)光を照射する検査光照射部を備える点が主な相違点である。以下の説明では、灯具ユニット10の構成や作用効果と重複する内容の説明を適宜省略する。図9は、光源から出射された可視光およびIR光源から出射されたIR光をミラー素子が第1反射位置および第2反射位置で反射した場合の反射光の広がりを模式的に示す図である。
【0048】
図9に示すように、第2の実施の形態に係る灯具ユニット110は、投影光学系を構成する投影レンズ18と、光偏向装置100と、光偏向装置100の反射部へ光を照射する照射光学系を構成する光源20と、IR光を照射する検査光照射部26と、光偏向装置100で反射されたIR光を検知する撮像ユニット17と、を備える。撮像ユニット17は、光偏向装置100が第1反射位置P1で反射したIR光(反射光R1’)を検知可能な位置に配置されている。
【0049】
光源20から出射した光は不図示の集光部材により集光され、入射光Linは、ミラー素子102の反射面102aに入射する。そして、ミラー素子102は、第1反射位置P1にて入射光Linを反射した場合に、反射光R1が主として投影レンズ18に向かうように配置されている。また、図3に示すように、ミラー素子102は、第2反射位置P2にて入射光Linを反射した場合に、反射光R2が投影レンズ18に向かわないように配置されている。
【0050】
加えて、灯具ユニット110においては、検査光照射部26から出射したIR光は不図示の集光部材により集光され、入射光L’inは、ミラー素子102の反射面102aに入射する。そして、ミラー素子102は、第1反射位置P1にて入射光L’inを反射した場合に、反射光R1’が主として撮像ユニット17に向かうように配置されている。なお、灯具ユニット110は、光源20の可視光の一部やユニット外部からの可視光が撮像ユニット17に入射しないように、ミラー素子102と撮像ユニット17との間に可視光をカットしIR光を透過させるIRフィルタ28が配置されている。
【0051】
灯具ユニット110は、光源20の入射光Lin、検査光照射部26の入射光L’in、光偏向装置100の反射部100aによる反射光R1,R2,R1’が、互いに重複しないように構成されているとよい。
【0052】
このような構成の灯具ユニット110が備える制御部は、光偏向装置100の不具合の有無を確認するための検知動作を所定のタイミングで行うように、光源20や検査光照射部26や光偏向装置100の動作を制御する。具体的には、制御部は、灯具ユニット10の照射に支障がないタイミング(例えば、停車時や灯具ユニット不使用時)で、検査光照射部26の光源を全点灯して光偏向装置100の反射部100aをIR光で照射するとともに、全てのミラー素子102が第2反射位置P2となるように光偏向装置100を制御する。そして、この状態で、撮像ユニット17は、光偏向装置100の反射部100aからの反射光R1’の有無を検知する。
【0053】
これにより、検査光照射部26から照射された入射光L’inは、光偏向装置100の全てのミラー素子102が正常に第2反射位置P2に切り替えられていれば、撮像ユニット17では反射光R1’が一切検知されない。この場合、光偏向装置100に不具合がないと推定される。
【0054】
一方、一部のミラー素子102が不具合により第1反射位置P1のままであると、図8(b)に示すように、撮像画像Pにおける反射光R1に相当する領域の一部に輝点(反射光)Bが検知される。この場合、光偏向装置100には不具合があると推定され、一部のミラー素子102の不具合を前提としてその後の配光制御(例えば光源の消灯、減光)が可能となる。
【0055】
なお、第1の実施の形態と同様に、制御部は、検査光照射部26の光源を全点灯して光偏向装置100の反射部100aをIR光で照射するとともに、全てのミラー素子102が第1反射位置P1となるように光偏向装置100を制御してもよい。この際、図8(a)に示すように、撮像画像Pにおける反射光R1’の一部に画像欠け(非照射部(暗部)Dが検知された場合、一部のミラー素子102が第2反射位置P2のままと考えられ、光偏向装置100に不具合があると推定される。
【0056】
このように、第2の実施の形態に係る灯具ユニット110は、検査光照射部26から照射するIR光と、光偏向装置100の反射位置(第1反射位置または第2反射位置)と、撮像ユニット17における反射光の検出状態に基づいて、光偏向装置100の不具合を検知できる。また、IR光を検査光として用いているため、照射光学系から光が照射していない任意のタイミングで光偏向装置100の不具合の有無を確かめることができる。
【0057】
本実施の形態に係る灯具ユニット110は、光偏向装置100の不具合の有無を確かめる際に照射光学系からの可視光を用いずにIR光を用いるため、照射光学系からの可視光が灯具ユニット110の外部へ漏れ出ることを防止できる。また、検査光にIR光を利用するため、ランプ外光の影響をうけづらい。
【0058】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0059】
C1 回動軸、 P1 第1反射位置、 P2 第2反射位置、 10 灯具ユニット、 12 投影光学系、 16 照射光学系、 17 撮像ユニット、 18 投影レンズ、 20 光源、 22 集光部材、 24 リフレクタ、 24a 反射面、 26 検査光照射部、 28 IRフィルタ、 50 制御部、 100 光偏向装置、 100a 反射部、 102 ミラー素子、 102a 反射面、 104 マイクロミラーアレイ、 110 灯具ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9