(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
0.01〜1.0mg/100mLのティリロサイド及び0.1〜10mg/100mLのマグネシウムを含有し、可溶性固形分濃度が2.0以下であり、波長660nmの吸光度が0.06以下であり、純水を基準とした場合のΔE値(色差)が3.5以下である、飲料。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一態様は、0.01〜1.0mg/100mLのティリロサイド及び0.1〜10mg/100mLのマグネシウムを含有し、可溶性固形分濃度が2.0以下であり、波長660nmの吸光度が0.06以下であり、純水を基準とした場合のΔE値(色差)が3.5以下の飲料である。
【0012】
(ティリロサイド)
本発明の飲料は、0.01〜1.0mg/100mLのティリロサイドを含有する。ティリロサイド(Tiliroside)とは、フラボノイド配糖体に分類される有機化合物の一種であって、下式(1)の構造を有する化合物である。ティリロサイドの別名はKaempferol-3-O-glucoside-6''-E-coumaroylとも称され、そのCAS登録番号は20316−62−5である。構造名及び構造式から自明な通り、ティリロサイドは、ケンフェロール、クマル酸、グルコースから構成されている。
【0014】
本発明の飲料において、ティリロサイドの含有量は0.015mg/100mL以上が好ましく、0.02mg/100mL以上がより好ましい。一方、飲料中のティリロサイド含有量が1.0mg/100mLを超えると、ティリロサイドの苦味や収斂味が強くなりすぎて本発明の効果が得られないことがある。効果及び香味の観点から、飲料中のティリロサイドの含有量は0.8mg/100mL以下が好ましく、0.5mg/100mL以下がより好ましく、0.1mg/100mL以下がさらに好ましい。飲料中のティリロサイドの含有量は、HPLCを用いて測定することができる。HPLCによる測定条件を以下に示す。
・溶離液:37.5%アセトニトリル
・流速:1 mL
・検出:UV 254 nm
・カラム:資生堂CAPCELL PAK C18 (4.6 × 250 mm)
【0015】
ティリロサイドは、市販されている既知の化合物である。本発明では、ティリロサイドは純品又は植物抽出物の形態で用いることができる。ティリロサイドの市販品としては、フナコシより販売されているもの、Merck KGaAによって販売されているもの等が挙げられる。また、ティリロサイドを含有する植物抽出物としては、森下仁丹製のローズヒップ抽出物、オリザ油化製のイチゴ種子抽出物等が挙げられる。
【0016】
(マグネシウム)
本発明の飲料は、0.1〜10mg/100mLのマグネシウムを含有する。マグネシウムの含有量が前記範囲内であることにより、ティリロサイドに由来する苦味や収斂味を効果的に低減することができる。また、マグネシウムの含有量が前記範囲内であれば、無色透明飲料に特徴的なすっきりした味わいや爽やかな風味といった飲料の美味しさを維持することもできる。なお、マグネシウムは苦味を有するミネラルとして知られている成分であることから、マグネシウムを用いてティリロサイド由来の苦味や収斂味が抑制できることは驚くべきことである。
【0017】
本発明において、香味的な観点からは、飲料中のマグネシウムの含有量は8.0mg/100mL以下が好ましく、5.0mg/100mL以下がより好ましく、0.8mg/100mL以下がさらに好ましい。また、効果の顕著さから、マグネシウムの含有量は0.2mg/100mL以上が好ましく、0.4mg/100mL以上がより好ましい。
【0018】
本発明において用いられるマグネシウムが塩の形態にある場合は、これを遊離体(フリー体)の量に換算した上で飲料中のマグネシウムの含有量を算出することができる。また、本発明において飲料中のマグネシウムの含有量は、ICP発光分光分析装置(ICP−AES)を用いて公知の方法により測定することができる。
【0019】
マグネシウムの供給源としては、これらに限定するものではないが、例えば以下の形態のものが挙げられる:硫酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、ビス−グリシン酸塩、アミノ酸キレート、炭酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、およびリンゴ酸塩。本発明において好ましいマグネシウム塩は、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、及びグルコン酸マグネシウムである。また、無色透明の物性を損なわない範囲で、天然物由来のマグネシウムを供給源とすることもできる。具体的にはミネラルウォーターが挙げられる。
【0020】
(カルシウム)
本発明の飲料は、0.2〜10mg/100mLのカルシウムをさらに含有することができる。カルシウムは、苦味と塩味が合わさった複雑な味を有するミネラルとして知られている成分である。本発明では、カルシウムの併用により、ティリロサイド由来の苦味及び収斂味をより効果的に改善することができる。
【0021】
本発明において、香味的な観点からは、飲料中のカルシウムの含有量は5.0mg/100mL以下が好ましく、1.0mg/100mL以下がより好ましく、0.8mg/100mL以下がさらに好ましい。また、効果の顕著さから、カルシウムの含有量は0.3mg/100mL以上が好ましく、0.6mg/100mL以上がより好ましい。
【0022】
本発明において用いられるカルシウムが塩の形態にある場合は、これを遊離体(フリー体)の量に換算した上で飲料中のカルシウムの含有量を算出することができる。また、本発明において飲料中のカルシウムの含有量は、ICP発光分光分析装置(ICP−AES)を用いて公知の方法により測定することができる。
【0023】
マグネシウムとカルシウムとを併用する場合は、上述した濃度範囲で両成分を用いることができる。ただし、マグネシウムとカルシウムの合計量が多くなると、マグネシウムとカルシウムに共通する嫌味(苦味や舌に刺激のある硬さ感)を感じることがある。したがって、マグネシウムとカルシウムの合計量は、20mg/100mL以下であることが好ましく、5.0mg/100mL以下であることがより好ましく、1.5mg/100mL以下であることがさらに好ましい。
【0024】
カルシウムの供給源としては、これらに限定するものではないが、例えば以下の形態のものが考えられる:硫酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、ビス−グリシン酸塩、アミノ酸キレート、炭酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、およびリンゴ酸塩。本発明において好ましいカルシウム源は、硫酸カルシウム、クエン酸リンゴ酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、及び乳酸グルコン酸カルシウムである。また、無色透明の物性を損なわない範囲で、天然物由来のカルシウムを供給源とすることもできる。具体的にはミネラルウォーターが挙げられる。
【0025】
(無色透明飲料)
フレーバードウォーターのような無色透明な飲料では、水のように飲みやすくするために全体的に飲料の香味を弱く設定することが要求されており、他の飲料(例えば、色のついた飲料や混濁した飲料)よりもティリロサイド由来の独特の苦味や収斂味が目立ちやすくなる。本発明では、このように香味の弱い無色透明飲料であっても、ティリロサイドの苦味や収斂味を感じさせにくくすることができる。なお、本明細書中、「香味が弱く設定された、無色透明飲料」を、単に「無色透明飲料」と表記することもある。
【0026】
ここで、「香味が弱く設定された飲料」とは、飲料に添加される甘味料や酸味料等の成分が少ない飲料をいい、具体的には、飲料の可溶性固形分濃度(Brix)が2.0以下の飲料をいう。本発明において、可溶性固形分濃度は、糖度計や屈折計などを用いて得られるBrix(ブリックス)値に相当する。ブリックス値は、20℃で測定された屈折率を、ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)の換算表に基づいてショ糖溶液の質量/質量パーセントに換算した値である(単位:「°Bx」、「%」または「度」)。
【0027】
本発明者らの検討によると、飲料中の可溶性固形分濃度が2.0以下のような低Brixの飲料は、それよりもBrixが高い飲料と比較して、ティリロサイドの苦味や収斂味が目立ちやすい。効果の顕著さから、本発明の飲料の可溶性固形分濃度は0〜1.5が好ましく、0〜1.0がより好ましく、0〜0.5がさらに好ましい。
【0028】
また、本発明の飲料は無色透明であることを特徴とする。ここで、無色透明飲料とは次の要件(1)及び(2)を満たす飲料である。
【0029】
(1)飲料が無色である
純水を基準とした場合のΔE値(色差)が3.5以下、好ましくは2.3以下である。ΔE値は、測色色差計(ZE2000(日本電飾工業株式会社製)など)を用いて純水を基準として測定した際の透過光のΔE値(色差)をもって規定することができる。
【0030】
(2)飲料が透明である
本明細書において「飲料が透明である」とは、水のように視覚的に透明な飲料であり、いわゆるスポーツドリンクのような白濁や、混濁果汁のような濁りがない飲料をいう。飲料の透明度は波長660nmの吸光度で表すことができ、本発明でいう透明な飲料とは、波長660nmにおける吸光度が0.06以下である。吸光度は紫外可視分光光度計(UV−1600(株式会社島津製作所製)など)を用いて測定することができる。
【0031】
本発明の飲料の種類は特に限定されず、清涼飲料、栄養飲料、機能性飲料、フレーバードウォーター(ニアウォーター)系飲料などいずれであってもよい。
【0032】
(その他の成分)
その他、本発明の飲料には、本発明の所期の目的を逸脱しない範囲であれば、酸化防止剤、乳化剤、保存料、pH調整剤、香料、調味料、甘味料、酸味料、品質安定剤等を単独、或いは併用して配合してもよい。
【0033】
(容器詰飲料)
本発明の飲料は、ティリロサイドの苦味や収斂味が低減された飲料である。したがって、ティリロサイドの生理作用を期待して継続摂取する飲料として、常温で長期保存でき、即時飲用可能な形態(RTD:Ready To Drink)とするのが、ユーザーへの簡便性の観点から好ましい。これについて、加熱殺菌処理を経て得られる容器詰め飲料は本発明の一態様である。
【0034】
本発明の飲料を充填する容器は、特に限定されるものではない。ガラス製容器、金属製容器、紙製容器、更には、ポリエチレン製容器、ポリエチレンテレフタラート製(PET)容器、およびポリプロピレン製容器などのプラスチック容器などを例示できる。中でも、PET容器は本発明の飲料が無色透明であることから好適である。
【0035】
容器の容量に制限はないが、必要に応じて、例えば100mL〜2L、好ましくは300mL〜2Lの容器を適宜選択して用いることができる。
【0036】
(製造方法)
本発明の別の側面によれば、飲料の製造方法が提供される。当該方法は、可溶性固形分濃度が2.0以下であり、波長660nmの吸光度が0.06以下であり、純水を基準とした場合のΔE値(色差)が3.5以下である飲料の製造方法であって、0.01〜1.0mg/100mLのティリロサイドを飲料に配合する工程(ティリロサイド配合工程)、及び飲料中のマグネシウム含有量を0.1〜10mg/100mLに調整する工程(マグネシウム調整工程)を含む、上記製造方法である。
【0037】
本発明の製造方法はまた、飲料中のカルシウム含有量を0.2〜10mg/100mLに調整する工程(カルシウム調整工程)をさらに含むこともできる。
【0038】
ティリロサイド配合工程、マグネシウム調整工程、及びカルシウム調整工程において、飲料中の成分の種類やその含有量等は、本発明の飲料に関して上述した通りであるか、それらから自明である。本発明の飲料において、マグネシウムが所定の濃度範囲を逸脱する場合には、本発明における所望の作用効果の一部または全部が著しく低減するか発揮されなくなることから、マグネシウム調整工程では、原水のミネラル濃度をICP−AESやICP−MSなどの手段により正確に分析し、その分析結果に基づいて本発明のマグネシウムが所定の濃度となるように調整する。カルシウムについても、マグネシウムと同様に原水のミネラル濃度を分析した上で所定の濃度となるように調整する。原水のミネラル濃度(即ち、マグネシウム濃度およびカルシウム濃度)が上記範囲を下回る場合は、所定のミネラルを適宜飲料に配合する。ティリロサイド配合工程、マグネシウム調整工程、及びカルシウム調整工程は同時に行ってもよいし、別々に行ってもよいし、工程の順番を入れ替えてもよい。
【0039】
本発明の飲料が容器詰飲料の場合には、上記の工程に加え、さらに加熱殺菌処理工程および容器充填工程を含む。容器の耐熱性を勘案し、加熱殺菌処理工程と容器充填工程の順番が適宜選択される。加熱殺菌処理は、食品衛生法に定められた殺菌条件で行われる。殺菌機は、チューブ式殺菌機、プレート式殺菌機、FP(Flash Pastrization)プレート式殺菌機、UHT(Ultra High Temperature)殺菌装置等を用いることができる。加熱温度や処理時間等は、飲料の種類によって適宜選択して行われる。通常、60〜150℃で1秒間〜30分間加熱する。
【実施例】
【0040】
以下に実施例に基づいて本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0041】
実験1:ティリロサイド含有飲料(1)
ティリロサイドの苦味や収斂味の有無を確認するために、以下の試料を調製した。
試料1−1:水(pH7のイオン交換水)
試料1−2:水にティリロサイドを0.001mg/100mLの濃度で溶かした溶液
試料1−3:水にティリロサイドを0.01mg/100mLの濃度で溶かした溶液
試料1−4:水にティリロサイドを0.02mg/100mLの濃度で溶かした溶液
なお、ティリロサイドにはフナコシ製の純度99%のものを使用し、最終濃度が上記濃度となるように調製を行った。いずれの溶液もBrix:0.5以下の無色透明(波長660nmにおける吸光度:0.01以下、純水を基準とした場合のΔE:0.0)であった。
【0042】
得られた各種溶液について、パネル3名により苦味や収斂味の有無を評価した。各パネルが評価した結果を再度全員で自由討議し、全員の合意のもとに苦味や収斂味の有無を表記した。結果を表1に示す。ティリロサイドを0.01mg/100mL以上含有する無色透明飲料において、ティリロサイドに由来する苦味や収斂味が知覚され、飲みにくくなることが判明した。
【0043】
【表1】
【0044】
実験2:マグネシウムによるティリロサイドの苦味及び収斂味の緩和効果(1)
飲料中の濃度が表2の数値となるように、ティリロサイド(フナコシ、純度99%)及び硫酸マグネシウム(和光純薬工業)を純水に溶解し、ティリロサイドとマグネシウムを含有する飲料を調製した(試料2−1〜2−17)。いずれの飲料もBrix:0.5以下の無色透明飲料(波長660nmにおける吸光度:0.01以下、純水を基準とした場合のΔE:0.0)であった。
【0045】
得られた低Brixの無色透明飲料の味につき、パネル3名にて、1〜5点の5段階評価法にて評価した。官能評価基準は、以下とした。
ティリロサイド由来の苦味又は収斂味を感じるかにつき、5点:全く感じない、4点:ほとんど感じない、3点:少し感じるが問題ない、2点:やや感じる、1点:強く感じる、として各パネルが評価した結果を、再度全員で自由討議し、全員の合意のもとに整数値で表記した。なお、評価点は、3点を超えるものがティリロサイド由来の苦味や収斂味を感じない飲料であり無色透明飲料として好ましい飲料であると判定した。
【0046】
結果を表2に示す。飲料中のマグネシウム濃度が0.1mg/100mL以上の場合、ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味が抑制されることが明らかとなった。
【0047】
【表2】
【0048】
なお、マグネシウム濃度が20mg/100mL(試料2−12)であると、マグネシウムに起因する嫌味が生じたことから、マグネシウム濃度の上限は10mg/100mLが好ましいことが示唆された。マグネシウム濃度が0.2〜0.8mg/100mLの範囲では、水のようにすっきり感を有する無色透明飲料として好ましい飲料であり、当該濃度が10mg/100mL以下(即ち、0.2〜10mg/100mL)であっても、水のようにすっきり感を有する好ましい無色透明飲料であることが示唆された。
【0049】
実験3:マグネシウムによるティリロサイドの苦味及び収斂味の緩和効果(2)
マグネシウム塩を塩化マグネシウム6水和物(和光純薬工業)に変えること以外は実験2と同様にして、ティリロサイドとマグネシウムを含有する飲料を調製した(試料3−1〜3−17)。いずれの飲料もBrix:0.5以下の無色透明飲料(波長660nmにおける吸光度:0.01以下、純水を基準とした場合のΔE:0.0)であった。
【0050】
実験2と同様に官能評価試験を行った。結果を表3に示す。飲料中のマグネシウム濃度が0.1mg/100mL以上の場合、マグネシウム供給源が変わってもティリロサイドに由来する苦味及び収斂味が抑制されることが明らかとなった。
【0051】
【表3】
【0052】
なお、マグネシウム濃度が20mg/100mL(試料3−12)であると、マグネシウムに起因する嫌味が生じたことから、マグネシウム濃度の上限は10mg/100mLが好ましいことが示唆された。また、マグネシウム濃度が0.2〜0.8mg/100mLの範囲であれば、ティリロサイド由来の苦味及び収斂味の抑制と共に水のようなすっきり感が得られた。当該濃度が10mg/100mL以下(即ち、0.2〜10mg/100mL)であっても、ティリロサイドにする苦味及び収斂味やマグネシウムに由来する嫌味を感じない、水のように飲みやすい無色透明飲料であることが示唆された。
【0053】
実験4:カルシウムによるティリロサイドの苦味及び収斂味の緩和効果
マグネシウム塩を乳酸カルシウム5水和物(和光純薬工業)に変えること以外は実験2と同様にして、ティリロサイドとカルシウムを含有する飲料を調製した(試料4−1〜4−11)。いずれの飲料もBrix:0.5以下の無色透明飲料(波長660nmにおける吸光度:0.01以下、純水を基準とした場合のΔE:0.0)であった。
【0054】
実験2と同様に官能評価試験を行った。結果を表4に示す。飲料中のカルシウム濃度が0.2mg/100mL以上の場合、ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味が抑制されることが明らかとなった。
【0055】
【表4】
【0056】
なお、カルシウム濃度が50mg/100mL(試料4−11)であると、カルシウムに起因する嫌味が生じたことから、カルシウム濃度の上限は10mg/100mLが好ましいことが示唆された。カルシウム濃度が0.6〜10mg/100mLの範囲では、水のようにすっきり感を有する無色透明飲料として好ましい飲料であった。
【0057】
実験5:カルシウムおよびマグネシウムの併用によるティリロサイドの苦味及び収斂味の緩和効果(1)
実験2および実験4と同様に硫酸マグネシウムおよび乳酸カルシウムを配合して、0.02mg/100mLのティリロサイド、0.53mg/100mLのマグネシウム及び0.93mg/100mLのカルシウムを含有する飲料を調製した(試料5−1)。いずれの飲料もBrix:0.5以下の無色透明飲料(波長660nmにおける吸光度:0.01以下、純水を基準とした場合のΔE:0.0)であった。
【0058】
実験2と同様に官能評価試験を行った。結果を表5に示す。マグネシウムのみ、又はカルシウムのみを配合した場合、その量を多量に配合してもティリロサイド由来の苦味及び収斂味はほとんど感じないレベル(評価点:4点)であったが(試料5−2〜5−5)、マグネシウムとカルシウムを併用すると全く感じないレベル(評価点:5点)となった。
【0059】
【表5】
【0060】
実験6:カルシウムおよびマグネシウムの併用によるティリロサイドの苦味及び収斂味の緩和効果(2)
硫酸マグネシウムを塩化マグネシウムに変えること以外は実験5と同様にして、0.02mg/100mLのティリロサイド、0.77mg/100mLのマグネシウム及び0.37mg/100mLのカルシウムを含有する飲料を調製し(試料6−1)、実験2と同様に官能評価試験を行った。いずれの飲料もBrix:0.5以下の無色透明飲料(波長660nmにおける吸光度:0.01以下、純水を基準とした場合のΔE:0.0)であった。
【0061】
結果を表6に示す。マグネシウム供給源を変えた場合にも、マグネシウムのみ、又はカルシウムのみを配合した場合、その量を多量に配合してもティリロサイド由来の苦味及び収斂味はほとんど感じないレベル(評価点:4点)であった(試料6−2〜6−5)が、マグネシウムとカルシウムを併用すると全く感じないレベル(評価点:5点)となった。実験5及び6の結果から、無色透明飲料におけるティリロサイドの苦味や収斂味を抑制するには、マグネシウムとカルシウムを併用することがより効果的であることが示唆された。
【0062】
【表6】
【0063】
実験7:鉱水(ミネラルウォーター)を用いて調製した試料
ミネラル供給源として、2種類の市販のミネラルウォーター(以下、製品A、Bとする)を用いた。製品A及びB中のマグネシウムおよびカルシウム濃度を『マルチ CCD−ICP発光分析装置』(スペクトロ社製)を用いる誘導結合プラズマ発光分析法により分析した。結果を表7に示す。
【0064】
【表7】
【0065】
上記の製品A及び製品Bを9:1又は1:9の割合となるように混合し、これにティリロサイドが0.02mg/100mLとなるよう配合して、ティリロサイド、マグネシウム及びカルシウムを含有する飲料を調製した。また、pH7のイオン交換水にティリロサイドを0.02mg/100mLの濃度で溶かした溶液も合わせて調製した。いずれの飲料もBrix:0.5以下の無色透明飲料(波長660nmにおける吸光度:0.01以下、純水を基準とした場合のΔE:0.0)であった。これらの飲料について、実験2と同様に官能評価試験を行った。
【0066】
結果を表8に示す。鉱水、すなわち天然物由来のミネラルを用いた場合にも、ティリロサイドの苦味及び収斂味が効果的に低減されることが示唆された。
【0067】
【表8】
【0068】
実験8:加熱殺菌容器詰め飲料の試料
上記の試料1−4(マグネシウム及びカルシウムを含まない)、試料5−1(硫酸マグネシウム+乳酸カルシウム)、及び試料6−1(塩化マグネシウム+乳酸カルシウム)について、それぞれ飲料をUHT殺菌処理(110〜150℃、1〜数十秒間)した後、500mLのPET容器(透明)に充填して容器詰飲料を調製し(それぞれ殺菌後の飲料を試料1−4’、試料5−1’、試料6−1’とする)、3名のパネルで、2点識別法による官能評価を行った。
【0069】
試料1−4と試料1−4’では、パネル全員が2つの試料に差異があり、試料1−4’の方が試料1−4の飲料よりもティリロサイドに由来する苦味や収斂味をより顕著に感じると判定した。他方、所定量のマグネシウム及びカルシウムを含有する試料5−1と試料5−1’、及び試料6−1と試料6−1’では、加熱殺菌前後の試料の間にティリロサイドに由来する苦味や収斂味について有意な差はないと判定した。なお、試料5−1、5−1’、6−1、及び6−1’は、いずれもティリロサイドに由来する苦味及び収斂味が低減された水のように飲みやすい飲料であった。