(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分散媒が、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、アニソール、及びプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートから選ばれる少なくとも1種である、請求項1から5のいずれかの項に記載のナノカーボン材料用の分散剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、一態様において、下記構成単位Aと下記構成単位Bを含有する重合体と、ナノカーボン材料を分散可能とする分散媒とを含む、分散剤組成物に関する。
前記構成単位A:少なくとも4つの水素結合を形成することが可能な構造を有する不飽和単量体由来の繰返し単位
前記構成単位B:重量平均分子量が1万以上10万以下のホモポリマーを形成した場合に、当該ホモポリマーの前記分散媒に対する溶解度が20℃で20(g/100g分散媒)以上となる、不飽和単量体由来の繰り返し単位
本開示によれば、分散媒におけるナノカーボン材料の分散性を向上できる。
【0012】
本開示の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のことが推定される。
本開示に係る分散剤組成物が、ナノカーボン材料への高い吸着性を有するユニットを含む構成単位Aと、分散媒への高い溶解性を有するユニットを含む構成単位Bとを含む重合体を含んでいるので、構成単位Aにより、分散媒中での重合体のナノカーボン材料への吸着が効率的に行われ、構成単位Bにより、ナノカーボン材料の分散状態の保持と凝集抑制が良好に行われ、その結果、分散媒におけるナノカーボン材料の分散性が向上するものと考えられる。但し、これらは推定であって、本開示はこれらメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0013】
[ナノカーボン材料]
本開示における分散剤組成物への分散対象であるナノカーボン材料は、例えば、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称する場合もある。)、グラフェン、及びフラーレンから選ばれる少なくとも1種である。CNTは、グラフェンシートを円筒状に丸めた構造をしており、例えば、特開2001−48511号公報に記載のものが挙げられる。また、フラーレンは、水への分散性等の物理的性質がCNTと類似する、ナノオーダーサイズの炭素の同素体であるカーボンナノパーティクルであり、フラーレンとしては、例えば、炭素原子60個からなるフラーレン(例えば、フロンティアカーボン株式会社製、「フラーレンC60」)、炭素原子70個からなるフラーレン(例えば、フロンティアカーボン株式会社製、「フラーレンC70」)等が挙げられる。また、ナノカーボン材料は、ボロンや窒素等の異種元素がドープされたものであってもよい。
【0014】
[分散剤組成物]
[分散媒]
本開示の分散剤組成物に含まれる分散媒は、当該分散剤組成物にナノカーボン材料を添加した場合にナノカーボン材料を分散可能とし、前記重合体が溶解する分散媒である。前記分散媒は、水系分散媒、非水系分散媒のいずれであってもよい。
【0015】
(水系分散媒)
水系分散媒は、主として水を含む。水は、含まれるイオンや金属等の不純物の影響回避の観点から、イオン交換水又は蒸留水が好ましく、イオン交換水がより好ましい。水系分散媒は、水以外に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数が8以下、好ましくは炭素数が4以下の低級アルコールを含んでいてもよいが、水からなると好ましい。水系分散媒が、水と水以外の分散媒との併用(混合分散媒)である場合、水系分散媒における、水の割合は、ナノカーボン材料の分散性の向上の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.6質量%以下、更に好ましくは99.3質量%以下である。
【0016】
(非水系分散媒)
非水系分散媒としては、好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、アニソール、及びプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは実質的にNMPであり、さらに好ましくはNMPである。分散剤組成物の使用用途によって分散媒は種々使い分けることが可能である。特に、分散剤組成物を非水系の二次電池の製造に用いる場合はNMPが好ましい。
【0017】
本開示の分散剤組成物に含まれる分散媒の含有量は、分散剤組成物の使用用途等に応じて適宜設定されるが、後述する重合体、及び必要に応じて添加される任意成分を除いた残余であればよい。
【0018】
[重合体]
(構成単位A)
構造単位Aは、少なくとも4つの水素結合を形成することが可能な構造(以下、「四重水素結合単位」ということがある。)を有する不飽和単量体由来の繰返し単位である。当該四重水素結合単位がナノカーボン材料に吸着するか、或いは、2つの四重水素結合単位同士が二量体を形成した状態でナノカーボン材料に吸着する。
【0019】
当該四重水素結合単位は、分散媒中でのナノカーボン材料への吸着性向上の観点から、下記式(1)又は(2)で表される構造であることが好ましい。
A−C−A−C−D−C−D (1)
A−C−D−C−A−C−D (2)
ここで、Aは水素受容部分、Dは水素供与部分、Cは炭素原子を示す。C−D間の結合は単結合、C−A間の結合は二重結合又は単結合を表す。
【0020】
例えば、式(1)で表される2つの四重水素結合単位が存在する場合、一方の四重水素結合単位における2つのAが、他方の四重水素結合単位における2つのDと水素結合することができる。また一方の四重水素結合単位における2つのDが、他方の四重水素結合単位における2つのAと水素結合することができる。この二量体構造とナノカーボン材料の相互作用、または、四重水素結合単位とナノカーボン材料との相互作用により、分散媒中で構成単位Aがナノカーボン材料に効率的に吸着することが可能になると推定される。同様の理由で、式(2)で表される構成単位Aの場合も、分散媒中でナノカーボン材料へ効率的に吸着可能になると推定される。前記不飽和単量体由来の繰返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上が混合していてもよい。
【0021】
構成単位Aのナノカーボン材料への吸着性向上の観点から、上記式(1)又は(2)において、「C−A−C」は好ましくは「C=N−C」を表し、また、「C−A」は「C=O」を表す。また、同様の観点から、上記式(1)又は(2)において、「D−C」は、好ましくは「−NH−C」又は「HO−C」を表す。
【0022】
上記構成単位Aは、それぞれ独立に、下記式(3)で表される構造、下記式(4)で表される構造、又はこれらの構造の互変異性体で表される構造のいずれかである四重水素結合単位含有構造において、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つを、結合手及び連結基の少なくとも1つを介して他の構成単位に結合させた構造における、当該四重水素結合単位含有構造並びに当該結合手及び連結基の少なくとも1つよりなる構成単位A’であることが好ましい。
【0024】
式(3)及び(4)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、好ましくは水素、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、炭素数7以上12以下のアリールアルキル基、又は炭素数7以上12以下のアルキルアリール基である。R
1、R
2及びR
3は、ナノカーボン材料の分散性向上の観点から、それぞれ独立に、更に好ましくは水素、又は炭素数1以上20以下のアルキル基である。当該アルキル基の炭素数は、分散媒におけるナノカーボン材料の分散性向上の観点から、より好ましくは10以下、更に好ましくは4以下、より更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1である。
【0025】
第一の好ましい実施形態においては、式(3)、式(4)又はこれらの互変異性体に由来する構成単位は、R
1を、結合手及び連結基の少なくとも1つを介して他の構成単位に結合させたものであることが好ましい。
【0026】
第二の好ましい実施形態においては、式(3)、式(4)又はこれらの互変異性体に由来する構成単位は、R
1及びR
2を、結合手及び連結基の少なくとも1つを介して他の構成単位に結合させたものであることが好ましい。
【0027】
(不飽和単量体)
構成単位Aは、下記式(5)で表される不飽和単量体に由来する構成単位であることが好ましい。
【0029】
式中、R
12、R
13は、それぞれ独立に、好ましくは水素、又は炭素数1以上20以下のアルキル基、より好ましくは水素又はメチル基である。更に好ましくはR
12がメチル基、R
13が水素である。
R
14は、好ましくは水素又はメチル基、より好ましくはメチル基である。
R
11は、好ましくは炭素数1以上12以下のアルキレン基又はR
15−O−C(=O)−NH−R
16で表される基、より好ましくは炭素数1以上12以下のアルキレン基、更に好ましくは炭素数1以上3以下のアルキレン基、より更に好ましくはエチレン基である。
R
15、R
16は、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1以上12以下のアルキレン基である。
前記式(5)で表される不飽和単量体の好ましい具体例は、次のとおりである。
【0032】
(式(5)で表される不飽和単量体の製造)
式(5)で表される不飽和単量体の製造方法は、例えば、少なくとも4つの水素結合の全部又は一部を形成する窒素含有化合物と、少なくとも重合性官能基及び当該窒素含有化合物に結合可能な反応性基を有する重合性化合物と、を反応させることにより、好適に製造することができる。
【0033】
窒素含有化合物としては、好ましくは、イソシトシン誘導体(2−アミノ−4−チミドン誘導体)、トリアジン誘導体、又はこれらの誘導体の互変異体である。より好ましくは、窒素含有化合物は、アルキル基又はオリゴエチレングリコール基を6位に有するイソシトシン、更に好ましくは、メチル基又はエチルへキシル基を6位に有するイソシトシン、より更に好ましくはメチル基を6位に有するイソシトシンである。
【0034】
また、少なくとも2つの重合性官能基を有する重合性化合物としては、好ましくはエチレン性不飽和基及びイソシアネート基の少なくとも2つを有する重合性化合物、より好ましくはエチレン性不飽和基の少なくとも1つ及びイソシアネート基の少なくとも1つを有する重合性化合物、更に好ましくはアルキレン基の両末端のうち一方の末端にエチレン性不飽和基が結合され他方の末端にイソシアネート基が結合されてなる重合性化合物である。
【0035】
上記エチレン性不飽和基としては、好ましくは(メタ)アクリル基、より好ましくはメタクリル基である。
【0036】
上記アルキレン基としては、好ましくは炭素数1以上12以下のアルキレン基、より好ましくは炭素数2以上6以下のアルキレン基、更に好ましくは炭素数2以上4以下のアルキレン基、より更に好ましくはエチレン基である。
【0037】
(構成単位Aの含有量)
構成単位Aの含有量は、ナノカーボン材料への吸着性向上の観点から、重合体中、好ましくは5mol%以上、より好ましくは10mol%以上、更に好ましくは20mol%以上である。また、構成単位Aの含有量は、重合体の分散媒への溶解性向上の観点から、重合体中、好ましくは50mol%以下、より好ましくは45mol%以下、更に好ましくは40mol%以下である。また、構成単位Aの含有量は、重合体の各種分散媒への溶解性によって、種々選択することができる。例えば、前記分散媒が水系分散媒である場合、構成単位Aの含有量は、ナノカーボン材料の分散性向上の観点から、重合体中、好ましくは5mol%以上、より好ましくは8mol%以上、更に好ましくは10mol%以上であり、前記分散媒が、非水系分散媒である場合、重合体中、好ましくは15mol%以上、より好ましくは20mol%以上、更に好ましくは30mol%以上である。構成単位Aの含有量は、公知の分析方法又は分析装置によって求めることができる。構成単位Aが2種以上のモノマーA由来の構成単位からなる場合、構成単位Aの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0038】
(構成単位B)
構成単位Bは、構成単位Bの重量平均分子量が1万以上10万以下のホモポリマーを形成した場合に、当該ホモポリマーの、ナノカーボン材料を分散可能とする分散媒に対する溶解度が20℃で20(g/100g分散媒)以上となる、不飽和単量体由来の繰り返し単位である。
【0039】
構成単位Bは、ナノカーボン材料を分散させるための分散媒への溶解性が高いユニットとして、オキシアルキレン基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシル基、アゾ基、ニトロ基、チオール基、スルホ基、アルデヒド基、アルキル基、及びアリール基から選ばれる少なくとも1種を含む不飽和単量体由来の繰返し単位である。分散媒が、水系分散媒である場合、前記ユニットは、構成単位Aのナノカーボン材料への非吸着阻害性という観点から、好ましくは、オキシアルキレン基、基、ヒドロキシ基、アミド基、カルボニル基、及びチオール基のような非イオン性基から選ばれる少なくとも1種であり、非水系分散媒である場合、前記ユニットは、分散媒への溶解性向上の観点から、好ましくは、オキシアルキレン基、アルキル基、及びアリール基から選ばれる少なくとも1種である。
【0040】
[オキシアルキレン基]
オキシアルキレン基の炭素数は、ナノカーボン材料の分散性向上の観点から、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である。
【0041】
オキシアルキレン基の平均付加モル数は、ナノカーボン材料の分散性向上の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、そして、重合容易性、入手容易性の観点から、好ましくは50以下、より好ましくは30以下である。
【0042】
[アルキル基]
アルキル基の炭素数は、ナノカーボン材料の分散性向上の観点から、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは4以下である。
【0043】
[アリール基]
アリール基の炭素数は、ナノカーボン材料の分散性向上の観点から、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは4以下である。
【0044】
構成単位Bの具体例としては、単官能(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド付加物、及び単官能(メタ)アクリルアミドのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1種の単官能モノマー由来の構成単位が挙げられる。本開示において、単官能モノマーとは、不飽和結合を1個有するモノマーをいう。単官能モノマーは1種単独でもよいし、2種以上の組合せでもよい。本開示において、(メタ)アクリレートとは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。構成単位Bは、ナノカーボン材料の分散性向上の観点から、これらの中でも、単官能メタクリレートのアルキレンオキサイド付加物及び単官能アクリレートのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1種の単官能モノマー由来の構成単位が好ましく、単官能メタクリレートのアルキレンオキサイド付加物由来の構成単位がより好ましい。
【0045】
構成単位Bの供給源であるオキシアルキレン基を有する不飽和単量体は、合成の容易性の観点から、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)、ポリエチレングリコールアクリレート(PEGA)からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、PEGMAが更に好ましい。
【0046】
構成単位Bの含有量は、分散媒への良好な溶解性発現の観点から、重合体中、好ましくは50mol%以上、より好ましくは55mol%以上、更に好ましくは60mol%以上である。また、構成単位Bの含有量は、重合体のナノカーボン材料への吸着性の観点から、重合体中、好ましくは95mol%以下、より好ましくは90mol%以下、更に好ましくは80mol%以下である。構成単位Bの含有量は、公知の分析方法又は分析装置によって求めることができる。構成単位Bが2種以上のモノマーB由来の構成単位からなる場合、構成単位Bの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0047】
前記重合体中、構成単位Aと構成単位Bのモル比(A/B)は、ナノカーボン材料の分散性向上の観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは20/80以上であり、そして、重合体の分散媒への良好な溶解性の観点から、好ましくは50/50以下、より好ましくは45/55以下、更に好ましくは40/60以下である。
【0048】
(その他の構成単位)
前記重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位A及び構成単位B以外の構成単位Cを含有してもよい。構成単位A及び構成単位Bの合計の含有量は、前記重合体中、好ましくは80mol%以上であり、より好ましくは90mol%以上であり、更に好ましくは99mol%以上であり、更により好ましくは実質的に100質量%であり、更により好ましくは100質量%である。なお、実質的に100質量%とは、前記重合体中に構成単位Aおよび構成単位B以外の構成単位が不可避的に混入する場合を含む意味である。
【0049】
(構成単位C)
構成単位Cは、イオン性基を有する不飽和単量体由来の繰返し単位、または、非イオン性基を有する不飽和単量体由来の繰り返し単位である。イオン性基を有する不飽和単量体由来の繰り返し単位は、アニオン性基を有する不飽和単量体に由来する繰返し単位、及びカチオン性基を有する不飽和単量体に由来する繰返し単位のいずれであってもよい。非イオン性基を有する不飽和単量体由来の繰り返し単位は、単官能(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位、単官能(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位、スチレン系の単官能モノマーに由来する繰り返し単位、及び窒素含有複素環を有する単官能モノマーのいずれかであってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0050】
(アニオン性基を有する不飽和単量体)
アニオン性基を有する不飽和単量体としては、好ましくは不飽和カルボン酸モノマー又はその塩、不飽和スルホン酸モノマー又はその塩、及び不飽和リン酸モノマー又はその塩であり、より好ましくは不飽和カルボン酸モノマー又はその塩である。
前記不飽和カルボン酸モノマー又はその塩の具体例としては、好ましくは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等又はこれらの塩である。このうち、入手性の観点から、より好ましくは(メタ)アクリル酸及びマレイン酸の少なくとも1種であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0051】
これら不飽和カルボン酸モノマー由来の繰返し単位は、酸のままであってもよいし、一部又は全部が中和されたものであってよい。中和に使用する塩基化合物の具体例としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;アンモニア;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、モルホリン、アミノメチルプロパノール、アミノエチルプロパンジオール等のアミン化合物等がある。これらのうち、グラフトポリマーのエタノール中での分散性の観点から、一部又は全部が中和されていることが好ましい。
【0052】
(カチオン性の不飽和単量体)
カチオン性不飽和単量体としては、アミノ基を有する不飽和単量体及び4級アンモニウム塩基を有する不飽和単量体から選ばれる1種以上が挙げられる。アミノ基を有する不飽和単量体の具体例としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン及びこれらをH
+X
-で表される酸で中和した構造が挙げられる。
【0053】
ここでX
-は、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、安息香酸イオン、アジピン酸イオン、ギ酸イオン、リンゴ酸イオン、グリコール酸イオン等の有機酸イオン;等のアニオンを示す。
【0054】
また、4級アンモニウム塩基を有する不飽和単量体の具体例としては、X
-を対イオンに持つ(メタ)アクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、(メタ)アクロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム、(メタ)アクロイルアミノエチルトリメチルアンモニウム、(メタ)アクロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム、ジアリルジメチルアンモニウム、1−エチル−4−ビニルピリジニウム、1,2−ジメチル−5−ビニルピリジニウム等が挙げられる。
【0055】
(非イオン性基を有する不飽和単量体)
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エステル(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、アルキルエステル(メタ)アクリレート、シクロアルキル基含有エステル(メタ)アクリレート、芳香族基含有エステル(メタ)アクリレート、水酸基含有エステル(メタ)アクリレート、及び窒素原子含有エステル(メタ)アクリレートから選ばれる1種又は2種以上の組合せが挙げられ、合成の容易性の観点から、上述した単官能(メタ)アクリレートの中でも、アルキルエステル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数1以上8以下のアルキルエステル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0056】
アルキルエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマルプロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、セカンダリーブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ノルマルペンチル(メタ)アクリレート、ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
シクロアルキル基含有エステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロベンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
芳香族基含有エステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
水酸基含有エステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
窒素原子含有エステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アミノ基含有エステル(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、N,N'−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N'−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
単官能(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N、N'−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
【0062】
スチレン系の単官能モノマーとしては、例えば、スチレン等が挙げられる。
【0063】
窒素含有複素環を有する単官能モノマーとしては、例えば、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0064】
(重量平均分子量)
前記重合体の重量平均分子量は、ナノカーボン材料の分散性向上の観点から、好ましくは1万以上、より好ましくは1.5万以上、更に好ましくは2万以上であり、そして、合成の容易性の観点から、好ましくは300万以下、より好ましくは200万以下、更に好ましくは150万以下、より更に好ましくは100万以下である。
【0065】
(重合体の製造)
前記重合体は、例えば、構成単位Aの供給源であるモノマーA及び構成単位Bの供給源であるモノマーB、並びに必要に応じて構成単位Cの供給源であるモノマーCを共重合させることによって製造できる。すなわち、前記重合体の製造方法は、一態様において、モノマーA及びモノマーB、並びに必要に応じてモノマーCを含むモノマー混合物を重合させる重合工程を含む。
【0066】
重合方法としては、例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法等を採用しうるが、より均一な組成の重合体を製造するために、溶液重合法が好ましい。前記重合工程では、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、重合安定性の観点から、水溶性の重合開始剤が好ましい。水溶性の重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。前記重合工程における重合開始剤の使用量は、適宜設定できるが、モノマー全量に対し、0.01質量%以上2質量%以下が好ましい。
【0067】
本開示において、前記重合体の全構成単位中の構成単位Aの含有量は、重合に用いるモノマー全量に対する、モノマーAの使用量の比と見なすことができる。前記重合体の全構成単位中の構成単位Bの含有量は、重合に用いるモノマー全量に対する、モノマーBの使用量の比と見なすことができる。構成単位Bに対する構成単位Aの含有量の比(A/B)は、重合に用いるモノマー全量における、モノマーBの使用量に対するモノマー(A)の使用量の比と見なすことができる。前記重合体の全構成単位中の構成単位A及び構成単位Bの合計含有量は、重合に用いるモノマー全量に対する、モノマーA及びモノマーBの合計使用量の比と見なすことができる。前記重合体中の構成単位Cの含有量は、モノマー全量に対する、モノマーCの使用量の比と見なすことができる。
【0068】
前記重合工程では、イオン交換水等の水を溶媒として用いることができる。前記重合工程における水の使用量は、適宜設定できるが、例えば、モノマー全量100質量部に対し、40質量部以上1500質量部以下(重合固形分で6.25〜71.4質量%)とすることができる。
【0069】
重合条件としては、使用する重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって適宜設定すればよい。例えば、重合反応は、窒素雰囲気下、60〜100℃の温度範囲で行うことができ、重合時間は、例えば、0.5〜20時間と設定できる。
【0070】
本開示における前記重合体を構成する各構成単位の配列は、ランダム、ブロック、又はグラフトのいずれでもよい。ポリマーの組成分析は、例えば、NMRスペクトル、UV−visスペクトル、IRスペクトル、アフィニティクロマトグラフィー等によって行うことができる。
【0071】
本開示の重合体の形態としては、粉体であってもよいし、重合体を前記溶媒に溶解させた重合体溶液であってもよい。
【0072】
(その他の任意成分)
本開示に係る分散液組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で、前記重合体及びナノカーボン材料を分散可能とする分散媒以外に任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、中和剤等が挙げられる。
【0073】
[分散剤組成物の製造方法]
本開示に係る分散剤組成物は、前記重合体、ナノカーボン材料を分散可能とする分散媒、及び必要に応じて上述した任意成分を公知の方法で配合することにより製造できる。すなわち、本開示は、少なくとも重合体と分散媒とを配合する配合工程を含む、分散剤組成物の製造方法(以下、「本開示に係る製造方法」ともいう)に関する。前記配合は、例えば、スターラー、ディスパー、ホモミキサー等の公知の混合装置を用いて行うことができる。前記配合工程における各成分の配合量は、上述の分散剤組成物中の各成分の含有量と同様とすることができる。
【0074】
本開示に係る製造方法は、構成単位Aの供給源であるモノマーA及び構成単位Bの供給源であるモノマーBを含むモノマー混合物を重合させて重合体を得る重合工程を含むことができる。本開示に係る製造方法の重合工程における、重合方法、重合に用いうる各成分の種類及びその使用量については、上述した重合体の製造と同様とすることができる。
【0075】
[ナノカーボン材料分散液]
本開示のナノカーボン材料分散液は、本開示の分散剤組成物とナノカーボン材料とを含む。本開示のナノカーボン材料分散液は、本開示の分散剤組成物を含んでいるので、ナノカーボン材料分散液におけるナノカーボン材料の分散性は良好である。
【0076】
ナノカーボン材料分散液における、ナノカーボン材料と重合体の質量比は、導電抵抗向上の観点から、好ましくは40/60以上、より好ましくは50/50以上、更に好ましくは60/40以上であり、ナノカーボン材料の分散性向上の観点から、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは80/20以下である。
【0077】
ナノカーボン材料分散液における、ナノカーボン材料の濃度は、分散剤組成物の用途に応じて異なるが、例えば、導電性能発現の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、良好な分散性の確保の観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0078】
[用途]
本開示に係るナノカーボン材料分散液は、例えば、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタ用導電剤、プリンタブルエレクトロニクス用導電インク材料、透明導電膜用導電インク材料、フラットパネルディスプレイ用の電界電子放出源(エミッター)材料、インクジェットプリント方式による集積回路(LSI、超LSI等)の微細配線用インク材料、セラミックス用導電性、熱伝導性材料、樹脂・ゴム用の導電性フィラー、増粘剤等に好適に使用される。
【0079】
[ナノカーボン材料分散液の製造方法]
本開示に係るナノカーボン材料分散液の製造方法は、本開示の分散剤組成物にナノカーボン材料を添加し、分散処理する工程を含む。分散処理は、分散剤組成物にナノカーボン材料全量を添加した後に行ってもよいし、分散剤組成物にナノカーボン材料を添加しながら行ってもよい。更に、本開示に係るナノカーボン材料分散液の製造方法は、本開示の分散剤組成物を調製する工程を含んでいてもよい。
【0080】
分散剤組成物へのナノカーボン材料の添加の際、例えば、スパーテラ等を用いて適宜混合してもよい。カーボンナノチューブの添加量は、ナノカーボン材料分散液中の所望するカーボンナノチューブの濃度に応じて決定すればよい。分散剤成分である前記重合体の使用量により一概には言えないが、本開示の製造方法によれば、例えば、ナノカーボン材料の濃度が0.1〜15重量%程度の分散液を得ることができる。ナノカーボン材料を分散剤組成物に添加する際、その添加量の全部を一度に分散剤組成物に添加することもできるが、ナノカーボン材料の濃度が高くなるような場合には、少量ずつ分割して添加するのが好ましい。そうすることにより、ナノカーボン材料の凝集を効果的に抑制することができ、より効率的に高濃度のナノカーボン材料分散液を製造することができる。
【0081】
分散処理の方法としては、高効率化の観点からは、超音波処理が好適である。ナノカーボン材料からの分散剤成分(重合体)の脱吸着、ナノカーボン材料の再凝集等を抑制する観点から、分散処理の際、分散剤組成物及びナノカーボン材料が添加された分散剤組成物の温度は、好ましくは0〜60℃、より好ましくは5〜30℃の温度範囲内に保持する。超音波発生装置の好ましい出力は、例えば、200〜500μAの範囲内の値である。分散処理を、超音波発生装置を用いて行う場合、本開示に係るナノカーボン材料分散液の製造方法は、ナノカーボン材料が添加された分散剤組成物を冷却する工程を更に含んでいてもよい。
【0082】
本開示は、さらに下記の組成物等に関する。
[1] 下記構成単位Aと下記構成単位Bを含有する重合体と、ナノカーボン材料を分散可能とする分散媒とを含む、分散剤組成物。
前記構成単位A:少なくとも4つの水素結合を形成することが可能な構造を有する不飽和単量体由来の繰返し単位
前記構成単位B:重量平均分子量が1万以上10万以下のホモポリマーを形成した場合に、当該ホモポリマーの前記分散媒に対する溶解度が20℃で20(g/100g分散媒)以上となる、不飽和単量体由来の繰り返し単位
[2] 少なくとも4つの水素結合を形成することが可能な構造が、下記式(1)又は下記式(2)で表される構造である、前記[1]に記載の分散剤組成物。
A−C−A−C−D−C−D (1)
A−C−D−C−A−C−D (2)
ただし、前記式(1)又は前記式(2)において、Aは水素受容部分、Dは水素供与部分、Cは炭素原子を示す。C−D間の結合は単結合、C−A間の結合は二重結合又は単結合を表す。
[3] 前記式(1)又は(2)において、「C−A−C」は好ましくは「C=N−C」を、「C−A」は好ましくは「C=O」を、「D−C」は好ましくは「−NH−C」又は「HO−C」を表す、前記[2]に記載の分散剤組成物。
[4] 構成単位Bは、オキシアルキレン基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシル基、アゾ基、ニトロ基、チオール基、スルホ基、アルデヒド基、アルキル基、及びアリール基から選ばれる少なくとも1種を含む、前記[1]から[3]のいずれかに記載の分散剤組成物。
[5] 構成単位Bは、好ましくは単官能(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド付加物、及び単官能(メタ)アクリルアミドのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の単官能モノマー由来の構成単位、より好ましくはポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)、ポリエチレングリコールアクリレート(PEGA)から選ばれる少なくとも1種以上の単官能モノマー由来の構成単位、更に好ましくはポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)に由来の構成単位である、前記[1]から[4]のいずれかに記載の分散剤組成物。
[6] 構成単位Aと構成単位Bのモル比(A/B)が、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは20/80以上であり、そして、好ましくは50/50以下、より好ましくは45/55以下、更に好ましくは40/60以下である、前記[1]から[5]のいずれかに記載の分散剤組成物。
[7] 前記重合体における前記構成単位Aの含有量が、好ましくは5mol%以上、より好ましくは10mol%以上、更に好ましくは20mol%以上であり、そして、好ましくは50mol%以下、より好ましくは45mol%以下、更に好ましくは40mol%以下である、前記[1]から[6]のいずれかに記載の分散剤組成物。
[8] 前記重合体中、構成単位A及び構成単位Bの合計の含有量は、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは99mol%以上、更により好ましくは実質的に100質量%、更により好ましくは100質量%である、前記[1]から[7]のいずれかに記載の分散剤組成物。
[9] 前記重合体の重量平均分子量が、好ましくは1万以上、より好ましくは1.5万以上、更に好ましくは2万以上であり、そして、好ましくは300万以下、より好ましくは200万以下、更に好ましくは150万以下、より更に好ましくは100万以下である、前記[1]から[8]のいずれかに記載の分散剤組成物。
[10] 前記構成単位Aが、下記式(5)で表される不飽和単量体由来の構成単位である、前記[1]から[9]のいずれかに記載の分散剤組成物。
【化5】
式中、R
12、R
13は、それぞれ独立に、水素、又は炭素数1以上20以下のアルキル基であり、
R
14は、水素又はメチル基であり、
R
11は、炭素数1以上12以下のアルキレン基又はR
15−O−C(=O)−NH−R
16で表される基であり、
R
15、R
16は、それぞれ独立に、炭素数1以上12以下のアルキレン基である。
[11] 前記ナノカーボン材料が、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びフラーレンから選ばれる少なくとも1種である、前記[1]から[10]のいずれかに記載の分散剤組成物。
[12] 前記分散媒が、水、又は、水と炭素数が8以下の低級アルコールとの混合分散媒である、水系媒体である、前記[1]から[11]のいずれかに記載の分散剤組成物。
[13] 前記分散媒が、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、アニソール、及びプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートから選ばれる少なくとも1種である、前記[1]から[11]のいずれかに記載の分散剤組成物。
[14] 少なくとも、下記構成単位Aと下記構成単位Bを含有する重合体と、ナノカーボン材料を分散可能とする分散媒とを配合する配合工程を含む、分散剤組成物の製造方法。
前記構成単位A:少なくとも4つの水素結合を形成することが可能な構造を有する不飽和単量体由来の繰返し単位
前記構成単位B:重量平均分子量が1万以上10万以下のホモポリマーを形成した場合に、当該ホモポリマーの前記分散媒に対する溶解度が20℃で20(g/100g分散媒)以上となる、不飽和単量体由来の繰り返し単位
[15] 構成単位Aの供給源であるモノマーA及び構成単位Bの供給源であるモノマーBを含むモノマー混合物を重合させて重合体を得る重合工程を更に含む、前記[14]に記載の分散剤組成物の製造方法。
[16] ナノカーボン材料と、前記[1]から[13]のいずれかに記載の分散剤組成物とを含む、ナノカーボン材料分散液。
[17] 前記ナノカーボン材料分散液における、ナノカーボン材料と重合体の質量比は、好ましくは40/60以上、より好ましくは50/50以上、更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは80/20以下である、前記[16]に記載のナノカーボン材料分散液。
[18] 前記ナノカーボン材料分散液における、ナノカーボン材料の濃度が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である、前記[16]又は[17]に記載のナノカーボン材料分散液。
[19] 前記[1]から[13]のいずれかに記載の分散剤組成物のナノカーボン材料の分散への使用。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により本開示を説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0084】
1.重合体、分散剤組成物、及びCNT分散液の調製
表1に示す実施例1〜5、比較1〜2の重合体、分散剤組成物、及びCNT分散液の調製は下記のとおり行った。
【0085】
[実施例1]
還流冷却器、温度計、窒素導入管、攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、メタクリル酸イソシアナトエチル(東京化成工業(株))48.81g、メチルイソシトシン(東京化成工業(株))35.79g、ジメチルスルホキシド(和光純薬工業(株))253.00gを仕込んだ。窒素雰囲気下で、160℃に昇温し、30分撹拌した。反応終了後、室温まで急冷すると、白色固体が析出した。これをメタノールで洗浄し、一晩減圧乾燥を行うことで、上記式(6)で表される不飽和単量体A1(Upy−MA)を得た。
【0086】
次に、還流冷却器、温度計、窒素導入管、攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、前記不飽和単量体A1(Upy−MA)を2.52g、PEGMA(新中村化学製:NKエステル−90G、オキシエチレン基の平均付加モル数:9)を40.18g、ジメチルスルホキシドを235gを仕込んだ。窒素雰囲気下で、65℃に昇温し、30分撹拌した。ジメチルスルホキシド5.00gに溶解させたV−65B(2,2'-Azobis(2,4-dimethylvaleronitrile、重合開始剤、和光純薬工業製)0.02gを投入し、そのままの温度で6時間撹拌した。終了後、室温まで冷却した。2Lのジエチルエーテルに反応液を全量投入すると、実施例1の重合体(分散剤)が析出した。表1に示すとおり、実施例1の重合体の重量平均分子量は80万であり、実施例1の重合体の調製に用いた各成分のモノマー比(モル比)は、Upy−MA:PEGMA=10:90である。
【0087】
得られた重合体を水(ナノカーボン材料を分散可能とする分散媒)に溶解させて、実施例1の分散剤組成物を得た。実施例1の分散剤組成物の各成分の含有量は、表1に示すとおり、前記重合体が0.5質量%、残余は水である。
【0088】
更に、実施例1の分散剤組成物に、CNTとして、多層カーボンナノチューブ(Multi Walled Carbon Nanotube, Hyperion Catalysis International Inc.,USA)を添加して、実施例1のCNT分散液を得た。CNT分散液におけるCNTの含有量は、1質量%であり、CNT分散液中において、CNTと重合体(分散剤)との質量比が1対0.5とした。
【0089】
[実施例2]
表1に示すとおり、重合体の調製に用いた各成分のモノマー比(モル比)を、Upy−MA:PEGMA=30:70としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の重合体、分散剤組成物、及びCNT分散液を得た。
【0090】
[実施例3]
水(ナノカーボン材料を分散可能とする分散媒)に代えて、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、実施例3の重合体、分散剤組成物、及びCNT分散液を得た。
【0091】
[実施例4]
重合体における、Upy−MAに由来の構成単位Aと、PEGMAに由来の構成単位のモル比が、50対50となるように、重合体の合成におけるUpy−MAの使用量及びPEGMAの使用量をUpy−MA:PEGMA=50:50としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の重合体、分散剤組成物、及びCNT分散液を得た。
【0092】
[実施例5]
水(ナノカーボン材料を分散可能とする分散媒)に代えて、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)を用いたこと以外は実施例4と同様にして、実施例5の重合体、分散剤組成物、及びCNT分散液を得た。
【0093】
[比較例1]
還流冷却器、温度計、窒素導入管、攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、LMA(ラウリルメタクリレート)を6.36g、PEGMA(新中村化学製:NKエステル−90G、オキシエチレン基の平均付加モル数:9)を12.40g、NMPを101gを仕込んだ。窒素雰囲気下で、65℃に昇温し、30分撹拌した。NMP5.0gに溶解させたV−65B(2,2'-Azobis(2,4-dimethylvaleronitrile、重合開始剤、和光純薬工業製)0.06gを投入し、そのままの温度で6時間撹拌した。終了後、室温まで冷却した。2Lのジエチルエーテルに反応液を全量投入すると、比較例1の重合体として、重量平均分子量が5.7万のポリマーが析出した。これをNMP(ナノカーボン材料を分散可能とする分散媒)に溶解させ比較例1の分散剤組成物を得た。比較例1の重合体の調製に用いた各成分の量及び種類を表1に示す。比較例1の分散剤組成物の各成分の含有量は、前記重合体が0.5質量%、残余はNMPである。
【0094】
更に、比較例1の分散剤組成物に、CNTとして、多層カーボンナノチューブ(Multi Walled Carbon Nanotube, Hyperion Catalysis International Inc.,USA)を添加して、比較例1のCNT分散液を得た。CNT分散液におけるCNTの含有量は、1質量%であり、CNT分散液中において、CNTと重合体(分散剤)との質量比が1対0.5とした。
【0095】
[比較例2]
還流冷却器、温度計、窒素導入管、攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、BMA(ブチルメタクリレート)を3.56g、PEGMA(新中村化学製:NKエステル−90G、オキシエチレン基の平均付加モル数:9)を12.40g、NMPを85gを仕込んだ。窒素雰囲気下で、65℃に昇温し、30分撹拌した。NMP5.0gに溶解させたV−65B(2,2'-Azobis(2,4-dimethylvaleronitrile、重合開始剤、和光純薬工業製)0.06gを投入し、そのままの温度で6時間撹拌した。終了後、室温まで冷却した。2Lのジエチルエーテルに反応液を全量投入すると、比較例2の重合体として、重量平均分子量が6.4万のポリマーが析出した。これをNMP(ナノカーボン材料を分散可能とする分散媒)に溶解させ比較例2の分散剤組成物を得た。比較例2の重合体の調製に用いた各成分の量及び種類を表1に示す。比較例2の分散剤組成物の各成分の含有量は、前記重合体が0.5質量%、残余はNMPである。
【0096】
更に、比較例2の分散剤組成物に、CNTとして、多層カーボンナノチューブ(Multi Walled Carbon Nanotube, Hyperion Catalysis International Inc.,USA)を添加して、比較例2のCNT分散液を得た。CNT分散液におけるCNTの含有量は、1質量%であり、CNT分散液中において、CNTと重合体(分散剤)との質量比が1対0.5とした。
【0097】
尚、比較例1及び比較例2の重合体は、いずれも水には溶けなかった。
【0098】
2.重合体等の物性について
実施例1〜5及び比較例1〜2の各重合体の重量平均分子量、構成単位Bのホモポリマーの溶解度を、各々下記のようにして求めた。
【0099】
[重量平均分子量]
実施例及び比較例の分散剤組成物の調製に用いた重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、下記条件で測定した。
<GPC測定条件>
カラム:α−M(昭和電工(株)製)2つを直列につないで使用
溶離液:50mM LiBr/DMF
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI
サンプル:5mg/mL、100μL
ポリスチレン換算
【0100】
[構成単位Bのホモポリマーの溶解性]
表1に示したモノマーB(PEGMA)のホモポリマー(重量平均分子量6.2万、エチレンオキシ基の平均付加モル数は9)の分散媒(水又はNMP)に対する溶解性は下記条件で確認した。
フラスコ中に蒸留水100gを量りとり、そこへPEGMAのホモポリマー20gを投入した。室温で3時間、回転速度500rpmで撹拌した後、1時間静置した。外観は均一透明な溶液であり、目視により溶け残りがないことを確認した。NMPについても同様に溶解試験を行い、目視により溶け残りがないことを確認した。
【0101】
3.評価
[分散性の評価]
実施例1〜5、比較例1〜2のCNT分散液に対し、室温で10分間、超音波ホモジナイザーを用いて分散処理をした。分散処理後の分散液に流動性があり、ゼータサイザー測定による分散粒径が1μm以内であれば、分散性あり(A)と判断した。一方、10分間分散処理をしても分散液に流動性が見られなかったものを分散性なし(B)とした。
【0102】
【表1】
【0103】
表1に示すように、CNT分散液が、構成単位Aと構成単位Bとを含む重合体(分散剤)を含んでいると、CNT分散液における、CNTの分散性が向上することが確認できた。