(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一態様に係る電源装置、音響装置及び非常用装置の実施形態について、
図1〜
図4を参照して詳細に説明する。ただし、下記の実施形態において説明する各図は模式的な図であり、各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。なお、以下の実施形態で説明する構成は本発明の一例にすぎない。本発明は、以下の実施形態に限定されず、本発明の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0016】
本実施形態の非常用装置3は、建物の避難口を表示するための誘導灯器具として実現されている。非常用装置3は、誘導灯信号装置から誘導音指示信号を受けた場合に誘導効果を高めるために、本実施形態の音響装置2から誘導音(「避難口はこちらです。」というような音声メッセージ)を出力させるように構成されている。また、非常用装置3は、誘導灯信号装置から点滅指示信号を受けた場合に誘導効果を高めるために点滅光源を点滅させるように構成されている。なお、以下の説明においては、特に断りのない限り、
図1に矢印で示す向きにおいて、非常用装置3の上下、左右及び前後の各方向を規定する。
【0017】
非常用装置3は、
図1及び
図2に示すように、表示ユニット4、点滅光源ユニット5、駆動装置6、第2蓄電池ブロック7、筐体30などを有している。
【0018】
筐体30は、それぞれ長方形の前壁31、後壁32及び4つの側壁33を有する直方体状に形成されている。ただし、本実施形態における筐体30は、本体300とプレート301で構成されている。本体300は、前面が開放された箱形に形成されており、筐体30の後壁32と4つの側壁33を構成している。上側の側壁33には一対の穴303が貫通している(
図2参照)。
【0019】
プレート301は、四角形の平板状に形成された主部3010と、主部3010の4つの辺から後方へ立ち上がる4つの側部3011とを有している。プレート301の主部3010は筐体30の前壁31を構成している。プレート301の4つの側部3011は筐体30の4つの側壁33の前端部分を構成している。プレート301は、一対の取付ばね302によって着脱可能に本体300に取り付けられる。本体300の前面にプレート301が取り付けられることによって筐体30が構成される。なお、筐体30(本体300及びプレート301)は、鋼板などの不燃物で形成されている。
【0020】
筐体30の内底面(後壁32の前面)には取付台35がねじ止めされている。取付台35は、合成樹脂材料によって前面と下面が開放された箱形に形成されている。表示ユニット4及び駆動装置6は取付台35に取り付けられた状態で筐体30内に収容されている。
【0021】
表示ユニット4は、表示板40と、光源ブロック41と、点灯ブロック42と、第1蓄電池ブロック43とを有している。
【0022】
表示板40は、アクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂などの透光性を有する合成樹脂材料によって四角形の板状に形成されている。ただし、表示板40は、前後方向の厚みを上端から下端に向かって徐々に小さくするように形成されている。表示板40の前面には避難口を示すピクトグラムが描かれている。
【0023】
光源ブロック41は、1つ以上のLED(Light Emitting Diode)と、LEDから放射される光を導光する導光部材と、LED及び導光部材を収容するケース410とを備える。ケース410の下面には導光部材から出射する光をケース410の外に放射するための開口が設けられている。光源ブロック41は、
図2に示すように、取付台35の上部に取り付けられる。また、表示板40は、上側面を光源ブロック41のケース410の開口に対向させるようにして取付台35に取り付けられる。
【0024】
第1蓄電池ブロック43は、電気絶縁性を有する合成樹脂製の電池ケースに複数の電池セルを収容して構成されている。電池セルは、ニッケル水素電池のような蓄電池である。第1蓄電池ブロック43は、取付台35の右端に収容されている(
図2参照)。
【0025】
点灯ブロック42は、常用点灯回路と、第1充電回路と、非常用点灯回路と、第1制御回路とを有している。常用点灯回路は、外部電源(例えば、商用の電力系統)から供給される電力でLEDを点灯させる。第1充電回路は、外部電源から供給される電力で第1蓄電池ブロック43の電池セルを充電する。非常用点灯回路は、外部電源の電力供給が停止した場合、第1蓄電池ブロック43から放電される電力でLEDを点灯させる。第1制御回路は、外部電源の給電状況を監視し、外部電源から電力供給されているときは常用点灯回路と第1充電回路を動作させるとともに非常用点灯回路を停止させる。また、第1制御回路は、外部電源の電力供給が停止(停電)したときは常用点灯回路と第1充電回路を停止させるとともに非常用点灯回路を動作させる。
【0026】
さらに、第1制御回路は、第1充電回路を動作させているときに第1表示素子を発光させて充電中であることを表示する。第1制御回路は、第1点検スイッチがオンされている間、常用点灯回路及び第1充電回路を強制的に停止させるとともに非常用点灯回路を強制的に動作させて光源ブロック41のLEDを点灯させる。第1制御回路は、自己点検スイッチが所定時間(例えば、2秒)以上オンされると自己点検動作を行う。また、第1制御回路は、受光素子において赤外線を通信媒体とする制御信号を受信した場合も自己点検動作を行う。自己点検動作は、規定時間(20分又は60分)が経過するまで常用点灯回路及び第1充電回路を強制的に停止させるとともに非常用点灯回路を強制的に動作させて光源ブロック41のLEDを点灯させる動作である。そして、第1制御回路は、規定時間が経過したら非常用点灯回路を停止させて非常用点灯回路の入力電圧、すなわち、第1蓄電池ブロック43の電池電圧を測定し、電池電圧の測定値に基づいて第1蓄電池ブロック43の良否を判定する。第1制御回路は、第1蓄電池ブロック43を良好と判定した場合に第1表示素子を連続して発光させ、第1蓄電池ブロック43を不良と判定した場合に第1表示素子を間欠的に発光(点滅)させる。
【0027】
表示ユニット4は、筐体30の前壁31(プレート301の主部3010)に設けられた四角形状の窓310から表示板40の前面を露出させるようにして筐体30内に収容される。表示ユニット4は、光源ブロック41から表示板40の上面に光を入射させ、表示板40全体を発光させることにより、表示板40の前面の輝度を高めてピクトグラムの視認性を高めている。
【0028】
点滅光源ユニット5は、LEDからなる点滅光源と、点滅光源(LED)から放射される光の配光を制御するレンズ55と、点滅光源及びレンズ55が取り付けられる取付部材56とを有している。点滅光源ユニット5は、筐体30の内底面(後壁32の前面)における下端部分に取付部材56が固定されることによって筐体30内に収容されている(
図2参照)。ただし、レンズ55は、筐体30の下側の側壁33における長手方向(左右方向)の中央に設けられた挿通穴34を通して筐体30の外に突出する。
【0029】
また、取付部材56には点滅光源ユニット5だけでなく、第1スイッチブロック57及び第2スイッチブロック58が取り付けられている。
【0030】
第1スイッチブロック57は、上述した第1点検スイッチ、自己点検スイッチ、第1表示素子、受光素子が実装されたプリント配線板と、プリント配線板を収容する第1ケースと、第1点検スイッチを操作するための第1押釦571とを備える。第1ケースは、合成樹脂材料によって直方体形状の箱形に形成されている。第1ケースの下面には、第1押釦571が収容される第1操作穴と、第1操作穴よりも径の小さい第2操作穴と、第1表示穴と、第1操作穴とほぼ同径の受光穴とが設けられている。
【0031】
第1押釦571は円柱状に形成されており、上下方向に移動可能な状態で第1操作穴内に収容されている。第1ケース内において第1操作穴と上下方向に対向する位置に、押釦スイッチからなる第1点検スイッチが配置されている。したがって、第1ケースの外から押された第1押釦571が第1ケース内に移動し、第1押釦571の上端で第1点検スイッチが押操作されてオンする。第1ケース内において第2操作穴と上下方向に対向する位置に、押釦スイッチからなる自己点検スイッチが配置されている。すなわち、自己点検スイッチは、第2操作穴を通して第1ケースの外から挿入される細い工具(例えば、ドライバなど)の先端で押操作されてオンする。第1ケース内において第1表示穴と上下方向に対向する位置に第1表示素子が配置されている。すなわち、第1表示素子の発する光は第1表示穴を通して第1ケースの外に放射される。第1ケース内において受光穴と上下方向に対向する位置に受光素子が配置されている。すなわち、自己点検用のリモートコントローラから送信される制御信号が受光穴を通して受光素子で受光(受信)される。なお、第1点検スイッチ、自己点検スイッチ、第1表示素子及び受光素子は、それぞれ複数の電線によって点灯ブロック42と電気的に接続されている。
【0032】
第2スイッチブロック58は、第2点検スイッチ及び第2表示素子が実装されたプリント配線板と、プリント配線板を収容する第2ケース580と、第2点検スイッチを操作するための第2押釦581とを備える。第2ケース580は、合成樹脂材料によって直方体形状の箱形に形成されている。
【0033】
第2ケース580の下面には、第2押釦581が収容される第3操作穴と、第3操作穴よりも径の小さい第2表示穴とが設けられている。第2押釦581は円柱状に形成されており、上下方向に移動可能な状態で第3操作穴内に収容されている。第2ケース580内において第3操作穴と上下方向に対向する位置に、押釦スイッチからなる第2点検スイッチが配置されている。したがって、第2ケース580の外から押された第2押釦581が第2ケース580内に移動し、第2押釦581の上端で第2点検スイッチが押操作されてオンする。第2ケース580内において第2表示穴と上下方向に対向する位置に第2表示素子が配置されている。すなわち、第2表示素子の発する光は第2表示穴を通して第2ケース580の外に放射される。
【0034】
筐体30の下側の側壁33に、第1スイッチブロック57の第1ケースの第1操作穴、第2操作穴、第1表示穴及び受光穴、第2スイッチブロック58の第2ケース580の第3操作穴及び第2表示穴と各々一対一に対応した複数の穴331〜336が設けられている。穴331は、第1操作穴と対向している。したがって、第1押釦571の先端部分が穴331を通して筐体30の外に突出する。穴332は第2操作穴と対向している。穴333は第1表示穴と対向している。穴334は受光穴と対向している。穴335は第3操作穴と対向している。したがって、第2押釦581の先端部分が穴335を通して筐体30の外に突出する。穴336は第2表示穴と対向している。
【0035】
第2蓄電池ブロック7は、複数本の乾電池型の電池セルが熱収縮チューブに包まれて構成されている。各電池セルは、ニッケル水素電池のような蓄電池である。第2蓄電池ブロック7は、筐体30内において取付台35の左隣に収容されている(
図2参照)。また、筐体30内における第2蓄電池ブロック7の上方に、音響装置2を構成するスピーカ21が収容されている。筐体30の前壁31(プレート301の主部3010)における窓310の左側に、スピーカ21用の窓311が開口している。この窓311は、カバー312で塞がされている。ただし、カバー312は、カバー312の厚み方向に貫通する多数の穴を有している。つまり、スピーカ21から出力される音がカバー312を貫通する多数の穴を通して筐体30の外に放出される。
【0036】
駆動装置6は、点滅光源ユニット5の点滅光源を駆動する点滅光源駆動回路と、音響装置2に含まれる電源装置1、駆動回路20及び音響出力回路142とを有する。駆動装置6は、更に、点滅光源駆動回路及び音響装置2に電力を供給するための第2蓄電池ブロック7を充電する第2充電回路と、点滅光源駆動回路及び第2充電回路を制御する第2制御回路とを有する。第2制御回路は、信号線を介して誘導灯信号装置から点滅指示信号を受信したとき、点滅光源駆動回路を制御し、第2蓄電池ブロック7から供給される電力で点滅光源を駆動して点滅光源を発光させる。ただし、第2制御回路は、誘導効果を高めるために点滅光源を間欠駆動するように駆動回路を制御する。例えば、第2制御回路は、約500ms毎に約50msの期間だけ点滅光源を駆動して発光させるように駆動回路を制御することが好ましい。第2充電回路は、外部電源から供給される電力で第2蓄電池ブロック7を充電する。さらに、第2制御回路は、第2充電回路を動作させているときに第2表示素子を発光させて充電中であることを表示する。第2制御回路は、第2点検スイッチがオンされている間、第2充電回路を強制的に停止させるとともに駆動回路を制御して第2蓄電池ブロック7から供給される電力で点滅光源ユニット5の点滅光源を発光させる。
【0037】
非常用装置3は、壁や天井T1などの造営材に取り付けられる。例えば、天井T1に上端部分が埋め込まれている2本の吊りボルトT10の各々が、非常用装置3の筐体30の上方の側壁33に設けられている一対の穴303のそれぞれに挿通され、各吊りボルトT10にナット(図示せず)が締め付けられる。このように非常用装置3は、一対の吊りボルトT10に筐体30が固定されることで天井T1に設置される。
【0038】
続いて、本実施形態の音響装置2及び電源装置1について、
図3及び
図4を参照して詳細に説明する。
【0039】
音響装置2は、
図3に示すように、スピーカ21と、スピーカ21を駆動する駆動回路(スピーカアンプ)20と、駆動回路20にスピーカ21を駆動するための電力を供給する、本実施形態の電源装置1とを有している。音響装置2は、音響出力回路142を更に有することが好ましい。
【0040】
音響出力回路142は、例えば、音声合成LSIで構成される。音響出力回路142は、合成した誘導音をスピーカ21から出力させるための音響信号S3を駆動回路20に出力する。駆動回路20は、音響出力回路142から入力される音響信号S3を、電源装置1から供給される電力によって増幅し、増幅した音響信号S3をスピーカ21に出力することでスピーカ21から誘導音を出力させるように構成されている。
【0041】
電源装置1は、
図3に示すように、ブーストコンバータ10と、第1の出力コンデンサ11と、第2の出力コンデンサ12と、電流抑制回路13と、コンバータ制御回路140と、制御回路141とを備えている。
【0042】
ブーストコンバータ10は、第2蓄電池ブロック7の蓄電池70から入力される直流電圧(蓄電池電圧)V1を昇圧するように構成されている。ブーストコンバータ(昇圧チョッパ回路)10は、スイッチング素子Q1、チョークコイルL1、ダイオードD1、抵抗器R1などを有している。チョークコイルL1の第1端は、蓄電池70の正極と電気的に接続されている。スイッチング素子Q1は、例えば、エンハンスメント形のNチャネルMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)からなる。スイッチング素子Q1のドレインがチョークコイルL1の第2端及びダイオードD1のアノードと電気的に接続されている。スイッチング素子Q1のソースが抵抗器R1の第1端と電気的に接続されている。抵抗器R1の第2端が蓄電池70の負極及びブーストコンバータ10の負極側の出力端子102と電気的に接続されている。ダイオードD1のカソードはブーストコンバータ10の正極側の出力端子101と電気的に接続されている。
【0043】
コンバータ制御回路140は、第1の出力コンデンサ11の両端電圧(コンバータ出力電圧V2)を検出し、コンバータ出力電圧V2を所定の目標値に一致させるように、スイッチング素子Q1をPWM(パルス幅変調)制御する。なお、コンバータ制御回路140がスイッチング素子Q1をスイッチングするためにスイッチング素子Q1のゲートに入力する信号をコンバータ制御信号S1と呼ぶ。
【0044】
第1の出力コンデンサ11の第1端がブーストコンバータ10の正極側の出力端子101と電気的に接続され、第1の出力コンデンサ11の第2端がブーストコンバータ10の負極側の出力端子102と電気的に接続されている。
【0045】
電流抑制回路13は、トランジスタ130と、遅延回路131と、レベルシフト回路132とを有している。トランジスタ130は、例えば、エンハンスメント形のPチャネルMOSFETである。トランジスタ130のソースがブーストコンバータ10の正極側の出力端子101と電気的に接続されている。トランジスタ130のドレインが第2の出力コンデンサ12の正極と電気的に接続されている。トランジスタ130は、ゲート・ソース間電圧がしきい値電圧未満のときにオフ状態となる。また、ゲート・ソース間電圧がしきい値電圧よりも十分に高い電圧(完全オン電圧と呼ぶ。)まで上昇すれば、トランジスタ130は完全なオン状態となる。さらに、ゲート・ソース間電圧がしきい値電圧以上、完全オン電圧未満の範囲においては、トランジスタ130は、オフ状態からオン状態に遷移する過渡状態となる。なお、過渡状態におけるトランジスタ130は、ゲート・ソース間電圧の上昇に伴ってオン抵抗が減少する。つまり、電流抑制回路13は、トランジスタ130がオン状態のときにブーストコンバータ10の出力端子101から負荷(駆動回路20)への給電用の電路を導通させる導通状態とする。また、電流抑制回路13は、トランジスタ130がオフ状態のときに給電用の電路を遮断する遮断状態となる。さらに、電流抑制回路13は、トランジスタ130が過渡状態のときに遮断状態から導通状態に遷移する遷移状態となる。
【0046】
レベルシフト回路132は、制御回路141から駆動信号S2が入力されていないときにトランジスタ130のゲート電位を上昇(レベルシフト)させてゲート・ソース間電圧をしきい値電圧未満とする。一方、制御回路141から駆動信号S2が入力されているとき、レベルシフト回路132は、トランジスタ130のゲート電位を下降させてゲート・ソース間電圧を完全オン電圧まで上昇させる。なお、制御回路141から出力される駆動信号S2は、方形波の電圧信号である。
【0047】
遅延回路131は、例えば、CR回路(積分回路)を有している。遅延回路131は、制御回路141から出力される駆動信号S2の立ち上がりからトランジスタ130のゲート・ソース間電圧が完全オン電圧に達するまでの時間を遅延させる。つまり、電流抑制回路13は、遅延回路131によるゲート・ソース間電圧上昇の遅延時間中に遷移状態となり、遅延時間の経過後に導通状態となる。
【0048】
第2の出力コンデンサ12の負極がブーストコンバータ10の負極側の出力端子102と電気的に接続されている。また、第2の出力コンデンサ12には負荷用コンデンサC0が電気的に並列接続されている。そして、負荷用コンデンサC0の両端電圧が電源装置1の出力電圧V3として負荷(駆動回路20)に印加される。なお、第2の出力コンデンサ12及び負荷用コンデンサC0は、いずれも電解コンデンサで構成されることが好ましい。ただし、第2の出力コンデンサ12と負荷用コンデンサC0とは、1つの電解コンデンサで兼用されてもかまわない。
【0049】
制御回路141は、方形波の電圧信号からなる駆動信号S2を電流抑制回路13に出力する。制御回路141は、マイクロコントローラを有している。制御回路141は、コンバータ制御回路140及び音響出力回路142をそれぞれ制御する。ただし、コンバータ制御回路140、制御回路141、音響出力回路142はそれぞれ単独の半導体集積回路で構成されてもよい。あるいは、コンバータ制御回路140と音響出力回路142のうちの少なくとも一つは、制御回路141が有するマイクロコントローラ(ハードウェア)とソフトウェアとで実現されてもよい。
【0050】
以下、
図3と
図4を参照しながら電源装置1及び音響装置2の動作を説明する。ただし、
図4は、上段から順番に、蓄電池電圧V1、コンバータ出力電圧V2、電源装置1の出力電圧V3、誘導灯信号装置から音響装置2に入力される誘導音指示信号S4、駆動信号S2、コンバータ制御信号S1、音響信号S3の各々の波形を示している。誘導灯信号装置は、音響装置2に対して誘導音の出力を指示する場合に誘導音指示信号S4をハイレベルからローレベルに変化させる。なお、以下の説明においては、誘導音指示信号S4がハイレベルからローレベルに立ち下がることを、「誘導音指示信号S4が入力される」と言い換える場合がある。
【0051】
制御回路141は、誘導音指示信号S4が入力されていない期間(時間t<t2)では、駆動信号S2を出力せず、かつ、コンバータ制御回路140及び音響出力回路142に対して、コンバータ制御信号S1及び音響信号S3の出力を停止させている。つまり、コンバータ制御回路140がコンバータ制御信号S1を出力しないことでブーストコンバータ10が停止している。また、制御回路141が駆動信号S2を出力しないことで電流抑制回路13が遮断状態に維持される。ここで、ブーストコンバータ10が停止しているときもチョークコイルL1及びダイオードD1を介して蓄電池70の正極と正極側の出力端子101とが電気的に繋がっている。そのため、ブーストコンバータ10の停止中にブーストコンバータ10の出力端子101、102から駆動回路20までの電路(回路)が閉じていると、蓄電池70から駆動回路20に放電されて蓄電池70の容量が減少してしまうおそれがある。これに対して本実施形態の電源装置1では、誘導音指示信号S4が入力されていない期間、蓄電池70から駆動回路20までの電路が電流抑制回路13によって遮断されるので、無駄な放電による蓄電池70の容量の減少を防ぐことができる。
【0052】
制御回路141は、外部(誘導音信号装置)から誘導音指示信号S4が入力されると(時間t=t2)、駆動信号S2をハイレベルに立ち上げる(駆動信号S2を出力する)。ただし、この時点で、制御回路141は、コンバータ制御回路140及び音響出力回路142からコンバータ制御信号S1及び音響信号S3を出力させない。
【0053】
電流抑制回路13のレベルシフト回路132は、駆動信号S2がローレベルからハイレベルに立ち上がると、トランジスタ130のゲート電位を下降させてゲート・ソース間電圧を完全オン電圧まで上昇させるように動作する。しかしながら、遅延回路131がレベルシフト回路132によるトランジスタ130のゲート電位の下降を遅延させる。そのため、遅延回路131がゲート・ソース間電圧の上昇を遅延させている遅延時間中(時間t=t2〜t3)においては、トランジスタ130が過渡状態となってオン抵抗を徐々に減少させる。その結果、電源装置1の出力電圧V3は、0Vから蓄電池70の蓄電池電圧V1にほぼ等しい電圧まで緩やかに上昇する。つまり、電流抑制回路13では、遅延回路131がゲート・ソース間電圧の上昇を遅延させるので、ゲート・ソース間電圧の上昇を遅延させない場合に比べて、第2の出力コンデンサ12及び負荷用コンデンサC0に流れる突入電流の抑制を図ることができる。
【0054】
制御回路141は、トランジスタ130が過渡状態から完全オン状態に移行した後、コンバータ制御回路140からコンバータ制御信号S1を出力させる(時間t=t4)。ブーストコンバータ10は、コンバータ制御回路140からコンバータ制御信号S1が出力されることで動作を開始し、蓄電池電圧V1を昇圧する。そして、蓄電池電圧V1よりも高い電圧まで昇圧されたコンバータ出力電圧V2が電流抑制回路13及び第2の出力コンデンサ12を介して負荷用コンデンサC0の両端に印加される。
【0055】
制御回路141は、コンバータ制御回路140にブーストコンバータ10の動作を開始させた後、音響出力回路142から駆動回路20に音響信号S3を出力させる(時間t=t5)。駆動回路20は、電源装置1の出力電圧V3によって音響信号S3を増幅し、増幅した音響信号S3でスピーカ21を駆動する。その結果、音響装置2のスピーカ21から誘導音が出力される。なお、第2点検スイッチがオンされた場合にも、制御回路141に誘導音指示信号S4が入力され、音響装置2のスピーカ21から誘導音が出力される。
【0056】
ところで、非常用装置3においては、蓄電池70が寿命末期に達した場合に第2蓄電池ブロック7の交換作業が行われる。当該交換作業においては、古い蓄電池70が電源装置1から電気的に切り離され、第1の出力コンデンサ11、第2の出力コンデンサ12及び負荷用コンデンサC0の各々が十分に放電された後、新しい蓄電池70が電源装置1と電気的に接続されると考えられる。そうすると、新しい蓄電池70が満充電又は満充電に近い状態まで充電されていた場合、新しい蓄電池70が電源装置1と電気的に接続された瞬間に突入電流が電源装置1に流れ込む。突入電流の大きさは、新しい蓄電池70と閉回路を形成するコンデンサの容量が大きいほど大きくなる。
【0057】
電源装置1では、通常、第2蓄電池ブロック7の交換作業中に誘導音指示信号S4が入力されることはないので、電流抑制回路13が遮断状態になっている。そのため、電源装置1において新しい蓄電池70と閉回路を形成するコンデンサは第1の出力コンデンサ11のみとなる。一方、電源装置1が駆動回路20に給電している場合、ブーストコンバータ10の一対の出力端子101、102間には、第1の出力コンデンサ11、第2の出力コンデンサ12及び負荷用コンデンサC0の3つのコンデンサが電気的に並列接続される。つまり、電源装置1が駆動回路20に給電している場合、ブーストコンバータ10の一対の出力端子101、102に接続されるコンデンサの容量が3つのコンデンサ11、12、C0の各容量の合成容量となる。第1の出力コンデンサ11、第2の出力コンデンサ12及び負荷用コンデンサC0の並列回路における合成容量は、それぞれのコンデンサ11、12、C0の容量の和であるから、第1の出力コンデンサ11の容量よりも十分に大きくなる。
【0058】
したがって、
図4に示すように、新しい蓄電池70が電源装置1と電気的に接続され、ブーストコンバータ10に入力される蓄電池電圧V1が立ち上がると(時間t=t1)、上述したように蓄電池電圧V1によって第1の出力コンデンサ11が充電される。そして、第1の出力コンデンサ11の両端電圧(コンバータ出力電圧V2)が蓄電池電圧V1に等しい電圧となるまで蓄電池70から第1の出力コンデンサ11に電流(突入電流)が流れ込む。しかしながら、蓄電池70から第1の出力コンデンサ11に流れ込む電流の大きさは、第1の出力コンデンサ11の容量で決まるので、3つのコンデンサ11、12、C0に電流が流れ込む場合と比較して大幅に減少する。なお、第1の出力コンデンサ11の容量は、第2の出力コンデンサ12と負荷用コンデンサC0の合成容量よりも小さい方が電流の抑制に適している。ただし、第1の出力コンデンサ11の容量が、第2の出力コンデンサ12と負荷用コンデンサC0の合成容量よりと同じ又は大きい場合であっても、電流の抑制を図ることは可能である。また、負荷用コンデンサC0は第2の出力コンデンサ12と兼用されてもかまわない。
【0059】
上述のように本実施形態の電源装置1では、ブーストコンバータ10の出力電圧を平滑するためのキャパシタンスを、電流抑制回路13の前段(入力側)に配置される第1の出力コンデンサ11の容量と、電流抑制回路13の後段(出力側)に配置される第2の出力コンデンサ12の容量とに分配している。さらに、電流抑制回路13は、誘導音指示信号S4が電源装置1の制御回路141に入力されていないときにブーストコンバータ10から負荷(駆動回路20)への給電路(電路)を遮断している。そのため、電源装置1は、第2蓄電池ブロック7の交換作業時においても電流(突入電流)の抑制を図ることができる。ただし、蓄電池70が電源装置1に対して着脱される機会は、第2蓄電池ブロック7の交換作業に限定されず、例えば、非常用装置3の設置作業も含まれる。
【0060】
しかも、本実施形態の電源装置1では、電流抑制回路と遮断回路を一つの電流抑制回路13にまとめてブーストコンバータ10の後段(出力側)に配置している。そのため、それぞれが半導体素子を用いて構成される複数種類の回路(電流抑制回路と遮断回路)を備える場合に比べて、電源装置1は、回路規模の縮小を図りつつ信頼性の向上、例えば、突入電流による回路素子の劣化等の抑制を図ることができる。
【0061】
なお、本実施形態の非常用装置3は誘導灯器具に限定されない。例えば、非常用装置は、表示ユニット4及び点滅光源ユニット5の少なくとも一方を備えない構成であってもよい。
【0062】
上述のように本発明の第1の態様に係る電源装置(1)は、非常用電源(蓄電池70)から入力する入力電圧(蓄電池電圧V1)を昇圧するブーストコンバータ(10)を備える。電源装置(1)は、ブーストコンバータ(10)の一対の出力端子(101,102)と電気的に並列接続されている第1の出力コンデンサ(11)を備える。電源装置(1)は、第1の出力コンデンサ(11)を挟んで一対の出力端子(101,102)のうちの一方の出力端子(101)と電気的に直列接続されている電流抑制回路(13)を備える。電源装置(1)は、電流抑制回路(13)を挟んで第1の出力コンデンサ(11)と電気的に並列接続され、かつ、負荷(駆動回路20)と電気的に接続される第2の出力コンデンサ(12)と、制御回路(141)を備える。制御回路(141)は、電流抑制回路(13)の動作状態を、遮断状態、導通状態、遷移状態に択一的に切り換えさせる。制御回路(141)は、トリガ信号(誘導音指示信号S4)が入力されるまでは電流抑制回路(13)の動作状態を遮断状態とし、トリガ信号が入力されると電流抑制回路(13)の動作状態を遮断状態から遷移状態を経て導通状態に切り換えさせる。遮断状態は、ブーストコンバータ(10)の一方の出力端子(101)から第2の出力コンデンサ(12)への電路を遮断する動作状態である。導通状態は、電路を導通させる動作状態である。遷移状態は、遮断状態から導通状態へ所定の遷移時間を掛けて遷移する動作状態である。
【0063】
第1の態様に係る電源装置(1)は、ブーストコンバータ(10)の出力電圧を平滑するためのコンデンサを、第1の出力コンデンサ(11)と第2の出力コンデンサ(12)に分割して電流抑制回路(13)の前段と後段に振り分けて配置している。そのため、第1の態様に係る電源装置(1)は、ブーストコンバータ(10)の入力電圧が急激に立ち上がったときに流れる突入電流を抑制することができる。また、第1の態様に係る電源装置(1)は、トリガ信号が入力されるまでは制御回路(141)が電流抑制回路(13)の動作状態を遮断状態とすることによって無駄な電力消費を抑制することができる。しかも、第1の態様に係る電源装置(1)は、トリガ信号が入力されると制御回路(141)が電流抑制回路(13)の動作状態を遮断状態から遷移状態を経て導通状態に切り換えさせるので、負荷への給電を開始するときの突入電流の抑制を図ることができる。その結果、第1の態様に係る電源装置(1)は、回路規模の縮小を図りつつ信頼性の向上を図ることができる。
【0064】
本発明の第2の態様に係る電源装置(1)は、第1の態様との組合せにより実現され得る。第2の態様に係る電源装置(1)において、第1の出力コンデンサ(11)の容量が第2の出力コンデンサ(12)の容量よりも小さいことが好ましい。
【0065】
第2の態様に係る電源装置(1)は、第1の出力コンデンサ(11)の容量が第2の出力コンデンサ(12)の容量よりも大きい場合に比べて、突入電流の更なる抑制を図ることができる。
【0066】
本発明の第3の態様に係る電源装置(1)は、第1又は第2の態様との組合せにより実現され得る。第3の態様に係る電源装置(1)において、電流抑制回路(13)は、電路に挿入されるトランジスタ(130)を有することが好ましい。電流抑制回路(13)は、制御回路(141)からトランジスタ(130)の制御端子(ゲート)に入力する駆動信号を遅延させる遅延回路(131)を有することが好ましい。
【0067】
第3の態様に係る電源装置(1)は、負荷への給電を開始する際に第2の出力コンデンサ(12)に流れ込む突入電流の更なる抑制を図ることができる。
【0068】
本発明の第4の態様に係る電源装置(1)は、第3の態様との組合せにより実現され得る。第4の態様に係る電源装置(1)において、トランジスタ(130)は電界効果トランジスタであることが好ましい。遅延回路(131)は、トランジスタ(130)のゲート・ソース間に印加する駆動信号の電圧の変化を遅延させることが好ましい。
【0069】
第4の態様に係る電源装置(1)は、負荷への給電を開始する際に第2の出力コンデンサ(12)に流れ込む突入電流の更なる抑制を図ることができる。
【0070】
本発明の第5の態様に係る電源装置(1)は、第3又は第4の態様との組合せにより実現され得る。第5の態様に係る電源装置(1)において、遅延回路(131)はCR積分回路を有することが好ましい。
【0071】
第5の態様に係る電源装置(1)は、遅延回路(131)の回路構成の簡素化を図ること画できる。
【0072】
本発明の第6の態様に係る音響装置(2)は、第1〜第5のいずれかの態様に係る電源装置(1)と、スピーカ(21)と、電源装置(1)から供給される電力でスピーカ(21)を駆動する駆動回路(20)とを有する。
【0073】
第6の態様に係る音響装置(2)は、回路規模の縮小を図りつつ信頼性の向上を図ることができる。
【0074】
本発明の第7の態様に係る非常用装置(3)は、第6の態様に係る音響装置(2)と、音響装置(2)を収容する筐体(30)とを有する。音響装置(2)は、外部からトリガ信号(誘導音指示信号S4)を受け取った場合にスピーカ(21)から避難誘導用の音を出力させる。
【0075】
第7の態様に係る非常用装置(3)は、回路規模の縮小を図りつつ信頼性の向上を図ることができる。