【実施例1】
【0012】
以下に本発明の実施例1を
図1〜
図4に基づいて説明する。
【0013】
図1において、本実施例に係る鉄道車両10は、車体1、および、台車16を有する。なお、本実施例では、1つの車体1の前後方向(車体1の長手方向)に沿って2つの台車16が備えられているため、実際には、図示されている前側の台車16(第1の台車の一例)と、図示していないもう片方の台車16である後側の台車(第2の台車の一例)が備えられる。車体1と台車枠3の間は、空気ばね30、および、図示していない牽引装置やヨーダンパ等を介して、弾性支持されている。台車16は、台車枠3、輪軸4a、および輪軸4bで主に構成される。輪軸4(4a、4b)は軸箱体2に対して回転可能に保持されており、その軸箱体2と台車枠3との間は、軸箱支持装置5により弾性支持されている。
【0014】
図2を用いて、本実施例の軸箱支持装置5の構成要素を説明する。
【0015】
軸箱支持装置5は、台車枠3、軸箱体2(第1の輪軸体の一例)、台車枠3と軸箱体2を鉛直方向に接続する支持棒31、コイルばね12、および、円筒積層ゴム22(円筒ゴムの一例)で主に構成される。
【0016】
コイルばね12は、軸箱体2と台車枠3との間に配置され、主に鉛直方向の弾性支持を担う構成となっている。また、軸箱体2における車体1の前後方向の両端部(または一端部)に、円筒積層ゴム22が配置される。円筒積層ゴム22は、その外周部Aがゴム受け座32に圧入されており、ゴム受け座32は軸箱体2の下方よりボルト等で固定されている。円筒積層ゴム22の内周部Bは、支持棒31の下端部とすきま嵌めで固定されている。支持棒31の上端部は台車枠3と固定されている。従って、円筒積層ゴム22は、軸箱体2と台車枠3との間における、主に水平方向の弾性支持を担う構成となっている。
【0017】
図2において、一点鎖線であるK−K断面線(K−K切断線)は、軸箱支持装置5の中心線を含む。
図3に、
図2のK−K断面を模式的に示す。
図3を用いて、円筒積層ゴム22の構成要素を説明する。
【0018】
図2のK−K断面図のうちの円筒積層ゴム22の断面図によれば、円筒積層ゴム22の水平断面(円筒積層ゴム22の内周部Bが延びる方向と垂直平面での断面)は、円環状のゴム層22bと円環状の金属層22cとが交互に半径方向に沿って積層された構成となっている。中心の金属層22dと最外側の金属層22fとの間にある各ゴム層22bおよび各金属層22cは半円状である。中心の金属層(最内側の金属層)22d、および、最外側の金属層22fは、円状である。中心の金属層22dから半径方向に沿って最外側の金属層22fにかけて積層したゴム層22bおよび金属層22cの各々は、その円周方向に欠けている。この欠けた部分22eを間隙部22eと呼ぶ。間隙部22eおよび22eは、金属層22dを中心にして対向している(直径に沿って並んでいる)。中心の金属層22d厚さ(外半径と内半径との差である幅)は、金属層22cおよび22fと比べて、大きくて良い。各金属層22cの厚さは同じで良い。金属層22fの厚さは金属層22cの厚さと同じで良い。各ゴム層22bの厚さは同じで良い。
【0019】
一般的に、ゴムは圧縮方向で変形させた時には剛性が高く、せん断方向で変形させた時には剛性が低くなる。従って、円筒積層ゴム22のK−K断面の平面視において、円筒積層ゴム22のばね特性としては、
図3のC−C方向は、ゴムを圧縮方向であるので剛性が相対的に高く(例えば最も高く)、
図3のD−D方向は、ゴムをせん断方向であるので剛性が相対的に低く(例えば最も低く)なる。本明細書で、
図3に示すように、円筒積層ゴム22のK−K断面の平面視において、円筒積層ゴム22で、剛性が相対的に高くなるC−C方向に沿った仮想的な軸線(太い点線で図示)を、以降は「剛性が高くなる軸線」と呼ぶ。「剛性が高くなる軸線」は、典型的には、円筒積層ゴム22のK−K断面の平面視において、円筒積層ゴム22のせん断方向と平行な直径と垂直の直径と平行の仮想的な線である。
【0020】
以上、
図3の説明を基に、円筒積層ゴム22を、例えば下記のように説明することができる。
・円筒積層ゴム22は、同心状に交互に配置された金属製の筒(以下、金属筒)とゴム製の筒(以下、ゴム筒)とで構成される。最内側および最外側の筒は、例えば金属筒である。
・最内側および最外側の筒以外の全ての筒である中間筒群に、水平断面(例えば、円筒積層ゴム22の高さ方向における中心での水平断面)において、最内側の層の外周から最外側の層の内周にかけた間隙が設けられる。円筒積層ゴム22の水平断面において、複数の間隙が設けられる。
・複数の間隙は、円筒積層ゴム22の水平断面において、最内側の筒を対称の中心として、対称的に設けられる(例えば、複数の間隙が、円筒積層ゴム22のK−K断面の直径に沿って並ぶ)。
【0021】
図4(
図2のK−K断面の模式図)を用いて、本実施例の軸箱支持装置5について、輪軸4aに対する円筒積層ゴム22の配置を説明する。
【0022】
図4において、
図4の右側は車体1の車端側を意味する。車両10には各台車16に2本ずつの輪軸(1つの車両10につき合計4本の輪軸)が搭載されており、
図4に示す配置は、車端側の輪軸に適用する。
【0023】
図4に示すように、車端側の輪軸においては、輪軸4aに対して、車両10の前後方向の両端部において、進行方向の前側(進行方向側)に配置した円筒積層ゴム22の「剛性が高くなる軸線(C1−C1)」、進行方向の後側(進行方向反対側)に配置した円筒積層ゴム22の「剛性が高くなる軸線(C2−C2)」の交点が、点線で図示する輪軸中心線111よりも、車両前後方向で言えば車端部よりも内側(
図4では左側)寄り(輪軸中心線111よりも車両中心側)となるように配置されている。この交点を、以降は「仮想回転中心110」と呼ぶ。
【0024】
以上、
図4の説明を基に、軸箱支持装置5を、例えば下記のように説明することができる。
・車両10の平面視において、車両前後方向の前側および後側の少なくとも1つの円筒積層ゴム22(支持ゴムの一例)の圧縮方向が、車両前後方向(車両長手方向)に対して傾いている。
・例えば、軸箱支持装置5の平面視において、前側の円筒積層ゴム22の剛性が高くなる第1の軸線と、後側の円筒積層ゴム22の剛性が高くなる第2の軸線とのいずれも、車両前後方向に対して傾いている。軸箱支持装置5の平面視において、第1の軸線と第2の軸線との交点が、輪軸中心線よりも車両後側に設けられる。
【0025】
図5を用いて、本実施例の鉄道車両が、曲率の大きな曲線軌道を通過する際に対脱線安全性指標である横圧(車輪とレールの左右方向の力)が低減する時の動作を説明する。
【0026】
図5は、曲率の大きな曲線軌道に鉄道車両が進入した際の台車挙動を模式的に示した図である。
図5に示すように、進行方向の前側(つまり進行方向側)に位置する輪軸4a(以降「前輪軸4a」と呼ぶ)は、曲線軌道の接線方向に対して、角度(アタック角)35をなして進入していく。このアタック角35が大きくなると、前輪軸4aが軌道に対してヨー方向に角度をもつことになるので、前輪軸4aのフランジ部100が軌道と接触しながら走行する。このアタック角35が大きな状態では、フランジ部100と軌道との接触部位101では、台車全体を、曲線軌道の接線方向に沿わせる(操舵する)ためのモーメントを生じさせるように、
図5に灰色矢印で図示する向きに、車輪とレールの左右方向に反力(以下、横圧102)が作用する。一方、この状態において、台車の進行方向の後側に位置する輪軸4b(以降「後輪軸4b」と呼ぶ)は、軌道中心に近いところに位置し、フランジ部100と軌道との接触はしないため、車輪とレールの左右方向の反力である、横圧はさほど大きな値とはならない。
【0027】
軸箱支持装置5は、この
図5で説明した姿勢に推移しようとする際に効果を発揮する。前述の通り、前輪軸4aでは、フランジ部100と軌道との接触部位101において、横圧102が発生する。この横圧102は、軌道から前輪軸4aに対して、前輪軸4aを軌道中心に向かって押し戻す力と、解釈することもできる。横圧102の作用位置と、前述の「仮想回転中心110」との間には、車両の前後方向においてモーメントのリーチH(前輪軸4aの中心線111と、仮想回転中心110との距離)があるため、横圧102が作用しはじめると同時に、
図5に黒矢印で図示するように、前輪軸4aを時計回りの方向(操舵する方向)に回転させるモーメントが作用する。これにより、前輪軸4aは、曲線軌道の接線方向に沿うように姿勢が変わるので、アタック角35を減らすことができる。このアタック角35の減少に伴って、前輪軸4aのフランジ部100は、曲線軌道から離れようとする方向に姿勢になろうとするので、接触部位101で作用する力である、横圧102を低減することができる。これにより、車両10の対脱線安全性能を高めることができる。
【0028】
なお
図5において、車両10の平面視において、右側(車両左右方向一方)かつ前側の円筒積層ゴム22の剛性が高くなる軸線(第1の軸線)と右側かつ後側の円筒積層ゴム22の剛性が高くなる軸線(第2の軸線)との交点と、左側(車両左右方向他方)かつ前側の円筒積層ゴム22の剛性が高くなる軸線(第3の軸線)と左側かつ後側の円筒積層ゴム22の剛性が高くなる軸線(第4の軸線)との交点が重なる。
【0029】
また
図5において、進行方向の後輪軸4b側の軸箱支持装置5については、前述の通り、横圧はさほど大きくならないため、後輪軸4b側では円筒積層ゴム22の「剛性が高くなる軸線」を、前輪軸4a側のように斜めとする必要がない。
図5の後輪軸4b側に示すような円筒積層ゴム22の配置とした場合は、「剛性が高くなる軸線」の交点が存在しないため、後輪軸4bに横圧が作用した際の、輪軸のヨー方向の運動に対する仮想回転中心も存在しない。従って、後輪軸4bではレールからの反力として横圧が作用しても、前輪軸4a側のように、仮想回転中心周りのモーメントは発生しない。言い換えれば、横圧に起因する輪軸のヨー方向の運動(ふらつき)も発生しにくいため、後輪軸4bの直線安定性は維持されやすい。これに伴い、台車16全体としての直進安定性も維持でき、更には車両10全体としての直進安定性も維持できる。
【0030】
一般的に、急曲線通過時に横圧が最も大きくなるのは、車両10の進行方向の先頭寄りの第1輪軸(進行方向側から進行方向反対側にかけて第1〜第4輪軸と呼ぶ)である。
図5には図示しない、もう片方の台車16においても、車端側に
図5の前輪軸4a側を向ける構成となっているため、車両10が逆方向に走行した場合にも、上述と同様の効果が得られる。
図5の構成は、直進安定性だけでなく、対脱線安全性能も高い水準で求められる、新幹線と在来線区間を直通運転するような鉄道車両等に適用できる。
【0031】
本実施例では、
図3で円筒積層ゴムの構造を説明したが、層の数(つまり筒の数)や間隙部22eの切欠量は必要に応じて変えても良い。また、円筒積層ゴム以外の別形態でも「剛性が高くなる軸線」を実現できる場合、支持ゴムとして、円筒積層ゴム以外のゴム部品を用いても良い。
【実施例2】
【0032】
本発明の実施例2を説明する。その際、実施例1との相違点を主に説明し、実施例1との共通点については説明を省略または簡略する。
【0033】
実施例2の鉄道車両20に関し、
図6に示すように、円筒積層ゴム22の配置が異なる。具体的には、実施例2では、
図6に示すように、
図5の前輪軸4a側の構造を、台車17の進行方向の前側、および、後側の両側に適用した構成となっている。
【0034】
一般的に、地下鉄等の曲率が非常に大きい(曲線半径が非常に小さい)区間を走るような車両の場合、車両進行方向の先頭寄りから第3輪軸においても、第1輪軸ほどではないが大きな横圧が発生する。実施例2では、車両が、どちらの向きに走行しても、台車16の進行方向の前側の輪軸では、実施例1で説明したメカニズムで横圧を低減できる。これにより、車両がどちらの向きに走行しても、車両進行方向の先頭寄りの第1輪軸だけでなく、第2輪軸においても横圧を低減でき、車両全体としての対脱線安全性を高めることができる。
図6の構成は、曲線通過性能を重視する在来線や地下鉄等の車両に適用できる。
【0035】
以上、幾つかの実施例を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施例にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実行することが可能である。
【0036】
例えば、上述の説明を基に、次のような表現がされてもよい。すなわち、支持ゴムの平面視において、支持ゴムの圧縮方向が、鉄道車両の進行方向(前後方向)に対して傾いていてよい。支持ゴムは、例えば、円筒形であり、平面視(例えば支持ゴムの水平断面の平面視)において、支持ゴムの中心を対称の中心として、支持ゴムの直径に沿って複数の間隙が対称的に設けられてもよい。圧縮方向は、複数の間隙が並ぶ直径に沿った方向と垂直の方向である。