(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性波送受信部から弾性波を所定の半径方向およびその半径方向と180度異なる半径方向にそれぞれ送信し、各反射波を受信し、前記砂杭の径を計測する請求項1に記載のサンドコンパクションパイル工法用計測装置。
地盤に砂杭を造成するサンドコンパクションパイル工法に用いられるケーシングパイプであって、請求項1乃至4のいずれかに記載のサンドコンパクションパイル工法用計測装置を備えるサンドコンパクションパイル工法用ケーシングパイプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SCP工法による軟弱粘性土における地盤改良の目的として、締め固めた砂杭と軟弱粘性土からなる複合地盤を形成し、上載荷重に対する支持力の増強、ドレーン効果を含めた地盤全体の剛性の増加、すべり抵抗の増加、沈下の低減を図ること等が挙げられる。しかし、従来の管理方法で施工中の管理は砂面計と深度計を用いて投入砂の体積を確認するもので、砂杭の形状を調査する方法がない。このため、強度に影響する砂杭の径が、設計値に通りになっているか分からない。
【0005】
また、砂杭強度については品質および出来形の管理基準がないのが現状であり、次の問題点がある。
(1)従来の管理方法では砂杭の強度は施工後に貫入試験を行うまで分からず、施工中に砂杭強度を直接計測し確認することはできない。
(2)砂杭の強度確認として砂杭造成後に調査ボーリングを行っているが、全数調査ではない。
(3)調査ボーリングは造成した砂杭中にボーリングロッドを貫入するため砂杭密度に影響を及ぼす恐れがある。
(4)事後調査時に設計強度に満たない箇所が確認されても砂杭造成後の手直しをすることが非常に難しい。
【0006】
特許文献1は、ケーシングパイプの上端部に設置された圧入シリンダの押込み圧力、ウインチの吊り荷重、ケーシングパイプの貫入量、砂杭打込み機の作業時間及びケーシングパイプの回転トルクを夫々検出し、検出値に基づいて地盤貫入部もしくは砂杭の応力を算出し、算出値が予め定めた目標値になるようにケーシングパイプの貫入又は砂杭の造成を行うようにしたSCP工法を開示するが、SCP工法による砂杭の径等の形状を評価可能なものではない。また、砂杭の強度(応力)を推定する方法も曖昧である。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、SCP工法による施工中に砂杭の径を計測可能でさらに砂杭強度を計測可能なSCP工法用計測装置、この計測装置を有するSCP工法用ケーシングパイプおよびこの計測装置を用いたSCP工法の施工管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためのサンドコンパクションパイル工法用計測装置は、サンドコンパクションパイル工法用ケーシングパイプの下部内周の中心に配置され軸方向に伸縮可能な貫入ロッドと、前記貫入ロッドを突出させまた退避させるためのアクチュエータと、
前記アクチュエータを収容する収容部と、前記貫入ロッドの先端近傍に設けられた弾性波送受信部と、を備え、
前記収容部は、前記ケーシングパイプ内に供給される砂の流れを阻害しないように、前記ケーシングパイプの下部内周の中央部に設置され、前記貫入ロッドを、前記ケーシングパイプで地盤に造成された砂杭の上端面から前記アクチュエータにより突出させて砂杭内部に貫入させ
た状態で、前記弾性波送受信部が弾性波を前記砂杭の半径方向に送信し、その反射波を受信することで、前記砂杭の径を計測するものである。
【0009】
このSCP工法用計測装置によれば、貫入ロッドをケーシングパイプで地盤に造成された砂杭の上端面から砂杭内部に貫入させ、貫入ロッドの先端近傍の弾性波送受信部が弾性波を砂杭の半径方向に送信し、砂杭と地盤との境界の速度変化部で反射した反射波を受信することで、送信から受信までの時間差に基づいて砂杭の径を計測することができる。なお、貫入ロッドは、計測後、アクチュエータにより貫入位置から上方に退避させることで、ケーシングパイプによる砂杭造成の邪魔にならず、また、砂杭造成による破損を防止できる。
【0010】
上記SCP工法用計測装置において前記弾性波送受信部から弾性波を所定の半径方向およびその半径方向と180度異なる半径方向にそれぞれ送信し、各反射波を受信し、前記砂杭の径を計測することで、砂杭の直径を精度よく計測できる。
【0011】
また、前記弾性波の発信周波数を変化させながら前記送信および前記受信を行い、前記受信時に測定された最大受信波強度に対応した発信周波数に基づいて前記砂杭の径を計測するように構成してもよい。
【0012】
また、前記貫入ロッドの砂杭内部への貫入時の貫入抵抗を測定する荷重計をさらに備え、前記貫入時に測定された貫入抵抗に基づいて前記砂杭の強度を計測するように構成できる。これにより、さらに砂杭強度を計測することができる。
【0013】
上記目的を達成するためのサンドコンパクションパイル工法用ケーシングパイプは、地盤に砂杭を造成するサンドコンパクションパイル工法に用いられるケーシングパイプであって、上述のサンドコンパクションパイル工法用計測装置を備える。このケーシングパイプによれば、SCP工法により砂杭を造成し、この砂杭の造成途中や造成後に砂杭の径および/または強度を計測することができる。
【0014】
上記目的を達成するためのSCP工法の施工管理方法は、上述の計測装置を用いて、SCP工法により地盤に砂杭を造成する施工を管理する方法であって、前記砂杭の造成途中または造成後に前記上端面から前記貫入ロッドを砂杭内部に貫入させ、前記弾性波送受信部での前記弾性波の送信および前記反射波の受信により前記砂杭の径を計測し、前記計測値に基づいて前記砂杭の形状を評価し、前記評価結果に基づいてSCP工法の施工を管理するものである。
【0015】
このSCP工法の施工管理方法によれば、砂杭形状の評価工程を組み入れることで、砂杭の径の計測値と設計値(目標値)とから砂杭形状を砂杭の造成途中または造成後に評価でき、また、砂杭の全数について砂杭形状を評価でき、さらに、砂杭形状の評価結果に応じて砂の再投入や締め固めを行うことができる。このため、地盤に造成される砂杭の形状品質に関する施工管理を確実に行うことができ、高品質な砂杭を造成できる。
【0016】
上記目的を達成するためのもう1つのSCP工法の施工管理方法は、上述の荷重計をさらに備える計測装置を用いて、SCP工法により地盤に砂杭を造成する施工を管理する方法であって、前記砂杭の造成途中または造成後に前記上端面から前記貫入ロッドを砂杭内部に貫入させ、前記貫入時に前記荷重計により貫入抵抗を測定し、前記測定された貫入抵抗に基づいて前記砂杭の強度を求めて評価し、前記評価結果に基づいてサンドコンパクションパイル工法の施工を管理するものである。
【0017】
このSCP工法の施工管理方法によれば、砂杭強度の評価工程を組み入れることで、砂杭強度の計測値と設計値(目標値)とから砂杭強度を砂杭の造成途中または造成後に評価でき、また、砂杭の全数について砂杭強度を評価でき、さらに、砂杭強度の評価結果に応じて砂の再投入や締め固めを行うことができる。このため、地盤に造成される砂杭の強度品質に関する施工管理を確実に行うことができ、高品質な砂杭を造成できる。
【0018】
なお、もう1つのサンドコンパクションパイル工法用計測装置は、サンドコンパクションパイル工法用ケーシングパイプの下部内周の中心に配置され軸方向に伸縮可能な貫入ロッドと、前記貫入ロッドを突出させまた退避させるためのアクチュエータと、前記貫入ロッドの砂杭内部への貫入時の貫入抵抗を測定する荷重計と、を備え、前記貫入ロッドを、前記ケーシングパイプで地盤に造成された砂杭の上端面から前記アクチュエータにより突出させて砂杭内部に貫入させ、前記貫入時に前記荷重計により測定された貫入抵抗に基づいて前記砂杭の強度を計測するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、SCP工法による施工中に砂杭の径を計測可能でさらに砂杭強度を計測可能なSCP工法用計測装置、この計測装置を有するSCP工法用ケーシングパイプおよびこの計測装置を用いたSCP工法の施工管理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
図1は本実施形態による砂杭の径を計測するための計測装置を備えるSCP工法用ケーシングパイプの要部縦断面図(a)およびB-B線方向から見た底面図(b)である。
【0022】
図1(a)(b)のように、SCP工法用ケーシングパイプ10は、鋼製中空管から構成され、SCP工法により地盤に砂杭を造成するもので、その下部内周の中央部には、砂杭造成中に地盤の粘性土等がケーシングパイプ10内に流入するのを防ぐために円形状の閉塞板21が設置され、閉塞板21を補強する脱落防止用の補強部材22が十字状に配置されてケーシングパイプ10の内周面に固定され、また、閉塞板21および補強部材22の中心部を上下に貫通するようにして砂杭の径を計測するための計測装置20が配置されている。
【0023】
計測装置20は、ケーシングパイプ10の下部内周の中心に配置され縦方向(鉛直方向)に伸縮可能な円柱状の貫入ロッド11と、貫入ロッド11の上方に位置し貫入ロッド11を下方に突出させまた上方に退避させるためのアクチュエータ15Aと、貫入ロッド11の先端近傍に設けられた弾性波送受信部13,14と、貫入ロッド11やアクチュエータ15Aを収容する円筒状の収容部16Aと、を備える。貫入ロッド11は、その先端が尖った円錐状に構成されたコーン部12を有し、その砂杭への貫入抵抗を計測することで、砂杭強度を計測することができる。コーン部12の形状例を
図8に示すが、
図8の例では、コーン部12の高さが39.2mm、先端角が30度、直径が20.3mmである。
【0024】
計測装置20の収容部16Aの上側に位置するアクチュエータ15Aは、支持部18を介して収容部16Aの上部で支持され固定されている。また、収容部16Aは、その下部に厚肉円筒部17を有し、厚肉円筒部17の中心孔17aに貫入ロッド11が円滑に摺動可能なようにシールするシール部17bを介して貫入ロッド11が上下に移動可能に配置されている。厚肉円筒部17は、十字状の補強部材22と円形状の閉塞板21の中心部を貫通して配置され、補強部材22に固定されることで、収容部16Aの全体がケーシングパイプ10の下部内周に固定されている。
【0025】
アクチュエータ15Aは、たとえば、水圧ホース15Bが接続されて水圧で作動するシリンダから構成でき、駆動信号に基づいてその作動棒15aの出し入れが制御される。アクチュエータ15Aの作動棒15aはその先端で貫入ロッド11の上端と連結し、貫入ロッド11の上端側にロードセル等からなる荷重計19が配置されている。
【0026】
貫入ロッド11は、ケーシングパイプ10の内周中心に位置し縦方向(鉛直方向)にアクチェエータ15の作動で作動棒15aにより突出しまた退避することができ、計測時に突出させることで砂杭の上端面から砂杭内部に貫入し、このときの貫入抵抗を荷重計19により測定できる。また、貫入ロッド11は、計測後等の非計測時には、アクチュエータ15Aにより貫入位置から上方に退避させることで、ケーシングパイプ10による砂杭造成の邪魔にならず、また、砂杭造成による破損を防止できる。
【0027】
弾性波送受信部13,14は、コーン部12の上方近傍の円筒面に配置され、たとえば、圧電素子から構成され、砂杭中心軸にある貫入ロッド11の位置から弾性波を水平方向の砂杭半径方向に送信し、砂杭と地盤との境界の速度変化部で反射した反射波を受信する機能を有する。弾性波送受信部13はたとえば円周方向0度に位置する場合、弾性波送受信部14は円周方向180度に位置し、互いに弾性波を、砂杭軸を中心にして180度反対方向に送信するようになっている。
【0028】
なお、弾性波は地盤内を弾性運動により伝播する波動で、弾性波には、振動方向が伝搬方向と一致するP波(縦波)と、振動方向が伝搬方向と直交するS波(横波)とがあり、P波はS波よりも速く伝播する。弾性波の伝播速度は、土質により変化するが、砂杭の場合、管理された砂を使用するので、ばらつきは少ないと考えられる。
【0029】
図1(a)(b)のように、計測装置20は、厚肉円筒部17を含めた収容部16Aがケーシングパイプ10の下部内周の中央部において縦方向に細長く構成される。ケーシングパイプ10は、上方から供給される砂を下端開口から吐出して砂杭を地盤内に造成するが、ケーシングパイプ10の下部内周の中央部に閉塞板21があり、その閉塞板21のある中央部付近は、砂の流れが少なく、磨耗も少なく、砂の流れを阻害することもほとんどなく、また、閉塞板21とケーシングパイプ10を連結する構造部材としての補強部材22がある。このような中央部の領域に、ケーシングパイプ10の軸方向に細長い計測装置20を設置してもケーシングパイプ10による砂杭造成の支障にはならず、また、その設置も容易である。
【0030】
次に、本実施形態による砂杭の径・強度の計測システムについて
図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態による砂杭の径・強度を計測するための計測システムを概略的に示すブロック図である。
【0031】
図2のように、計測システム50は、
図1(a)のケーシングパイプ10の下部に配置された計測装置20の荷重計19および弾性波送受信部13,14と配線Lを通して電気接続する接続部51と、接続部51と有線で電気接続をする計測側接続部52と、荷重計19からの測定信号に基づいて貫入抵抗を計測する荷重計側部54と、弾性波送受信部13,14から弾性波を発信させるための駆動信号を送信する送信部55と、弾性波送受信部13,14で反射波を受信した受信信号を受信する受信部56と、送信部55と受信部56とからの信号に基づいて距離を演算し計測する距離計測部57と、計測装置20のアクチュエータ15Aを水圧で駆動するための水圧ユニット59と、水圧ユニット59に駆動信号を送りアクチュエータ15Aを駆動するアクチュエータ駆動部53と、各部52〜57を制御し、また、各種演算をするパーソナルコンピュータ(PC)から構成される制御部58と、を備える。
【0032】
計測装置20のアクチュエータ15A,荷重計19および弾性波送受信部13,14と接続部51とがケーシングパイプ10側に設置され、計測側接続部52とアクチュエータ駆動部53と荷重計側部54と送信部55と受信部56と距離計測部57と制御部58とが、たとえば、施工中のケーシングパイプ10と離れた作業船の操作室に設置され、水圧ユニット59が作業船上に設置されることで、計測システム50により、造成中の砂杭の径および貫入抵抗を計測することができる。
【0033】
なお、計測装置20の各部13,14,19からの信号線やアクチュエータ15Aから水圧ユニット59へ延びる水圧ホース15Bは、閉塞板21や補強部材22の中を通してケーシングパイプ10の外へ導くことができ、さらに、各部13,14,19の信号線を接続部51に電気接続する配線Lや水圧ホース15Bは、たとえば、ケーシングパイプ10の側面に設けられる空気圧送用配管内を通すようにできる。また、
図2の接続部51と計測側接続部52とを無線通信で接続するようにしてもよい。
【0034】
次に、
図1,
図2の計測装置・計測システムによる造成中における砂杭の径および砂杭強度の計測方法について
図3,
図4を参照して説明する。
図3は、
図1のSCP工法用ケーシングパイプで造成した砂杭の径を弾性波で計測する様子を示す要部縦断面図(a)およびBB-BB線方向から見た底面図(b)である。
図4は、本実施形態による砂杭の形状および強度を計測し評価し施工管理をする工程(S01〜S07)を説明するためのフローチャートである。
【0035】
図3(a)(b)のように、ケーシングパイプ10により粘性土等からなる軟弱地盤G1内に造成され拡径された砂杭SCの径を計測する場合、まず、アクチュエータ駆動部53から送られた駆動信号により水圧ユニット59が作動してアクチュエータ15Aが駆動し、作動棒15aが下方に押し出されると、貫入ロッド11が
図1(a)の退避状態から下方に突出し、コーン部12を先端にして砂杭SCの上端面SSから砂杭内部に貫入する(
図4のS01)。これにより弾性波送受信部13,14を有する貫入ロッド11は、砂杭SCの内部であって軸中心に位置する。
【0036】
次に、弾性波送受信部13,14は、
図2の送信部55からの駆動信号により弾性波T1,T2を互いに反対の半径方向に送信すると、弾性波T1,T2が砂杭SCと軟弱地盤G1との境界BNの速度変化部で反射した反射波R1,R2を弾性波送受信部13,14が受信し、その受信信号が受信部56に送信される。距離計測部57は、砂杭SCの弾性波速度と、弾性波T1,T2の送信時と反射波R1,R2の受信時との時間差とから距離を算出することで、拡径された砂杭SCの直径を計測する(
図4のS02)。
【0037】
また、貫入ロッド11を砂杭SCの内部へ貫入させる時に、コーン部12をアクチュエータ15Aにより一定速度で砂杭中に貫入させ、その貫入抵抗を計測装置20の荷重計19からの測定信号により荷重計測部54で計測する(
図4のS03)。
【0038】
上述のように計測された貫入抵抗に基づいて砂杭の圧縮強度を求める(
図4のS04)。すなわち、貫入抵抗qc(kN/m
2)から一軸圧縮強度qu(kN/m
2)を公知の式により求める。かかる式は、種々知られているが、一例を以下に示す。
qu=a×qc+b (1)
ここで、a=0.0023×Fc−0.0309 (Fc : 細粒分含有率)
b=−0.4732×Fc+47.519
なお、式(1)による演算は、たとえば、
図2の制御部58で行うように構成できる。
【0039】
上述のようにして計測された砂杭の径の計測値と設計値(目標値)とを比較することで砂杭形状(出来形)を評価する(
図4のS05)。また、砂杭強度の計測値と設計値(目標値)とを比較することで砂杭強度を評価する(
図4のS06)。これらの砂杭形状・砂杭強度の評価結果に基づいて砂杭造成の施工管理を行う(
図4のS07)。
【0040】
上述の弾性波の送受信による砂杭の径の計測方法によれば、砂杭SCが管理された砂からなり、弾性波の速度のばらつきは少ないと考えられるため、比較的正確に砂杭SCの径を計測できる。さらに、弾性波の反射面となる砂杭SCと軟弱地盤G1との境界BNは円形で、弾性波T1,T2は軸中心から出て広がるので、必ずしも志向性の高くない弾性波でも、反射波R1,R2が再び軸中心に集まり、反射波が強くなる。このため、弾性波の送受信による砂杭の径の計測時のSN比が高くなり、計測性能が向上する。
【0041】
なお、
図5のように、
図1の弾性波送受信部13,14が弾性波を送信し、その反射波を連続的に受信しながら、弾性波の発信周波数を変化させると、弾性波の波長が砂杭の半径の2倍、4倍、あるいは整数分の一になる定在波周波数で、共鳴現象が起こり、受信波強度がピークを示すが、このときの波長によって砂杭の径を計測するようにしてもよい。
【0042】
また、上述の砂杭強度の計測方法によれば、式(1)等の式では、係数a,b等が細粒分含有率などにより変化するが、砂杭は比較的均質な細粒分の少ない砂を用いており、得られる一軸圧縮強度quのばらつきは少ないと考えられる。
【0043】
なお、砂杭強度として、貫入抵抗qc、一軸圧縮強度quからN値を求める式も種々知られている。粒径に依存するが、砂杭は比較的均質な細粒分の少ない砂を用いており、同様にばらつきは少ないと考えられる。
【0044】
次に、本実施形態による砂杭の造成時における砂杭形状・強度の評価に基づくSCP工法の施工管理方法について
図6,
図7を参照して説明する。
図6は、本実施形態による砂杭の造成工程(a)〜(g)を示す概略図である。
図7は、
図6の砂杭造成工程と砂杭形状・強度の評価工程とを含む施工管理工程S21〜S28を説明するためのフローチャートである。
【0045】
図6のように、本実施形態は、表層の軟弱粘性土層G1とその下層の支持層G2とを有する水底地盤GG内にSCP工法によりケーシングパイプ10を用いて砂杭SCを造成するものである。作業船SPは、砂杭の貫入・造成のためのSCP施工機械15を搭載し、SCP施工機械15は、ケーシングパイプ10やその付属部を駆動し、バイブロハンマ16でケーシングパイプ10を振動させながら表層G1から地中に貫入させ、その砂供給口10aから供給される砂を地盤中に圧入し、締め固められた砂杭を地盤内に略鉛直方向に造成する。造成される砂杭の直径は、たとえば、2mであるが、適宜変更可能である。本実施形態のSCP工法の施工管理方法は、SCP工法の施工途中・直後に砂杭形状・強度を評価する工程を組み入れたものである。
【0046】
まず、
図6(a)のように、作業船SPを用いてSCP施工機械15によりケーシングパイプ10を砂杭の造成位置に設定する(S21)。
【0047】
次に、
図6(b)のように、SCP施工機械15によりケーシングパイプ10を表層の軟弱粘性土層G1に打ち込み貫入させる(S22)。
【0048】
次に、
図6(c)のように、ケーシングパイプ10の先端が支持層G2に達したら、砂供給口10aから砂SDを投入しケーシングパイプ10内に供給する(S23)。
【0049】
次に、
図6(d)のように、SCP施工機械15によりケーシングパイプ10を引き抜く(S24)。
【0050】
次に、
図6(e)のように、SCP施工機械15によりケーシングパイプ10を打ち戻しバイブロハンマ16で上下に振動を与えながら砂SDを締め固めることで、下側に締め固められた大径の砂杭の一部SC1をつくる(S25)。必要に応じて、砂投入工程S23,ケーシングパイプ10の引き抜き工程S24、打ち戻し(締め固め)工程S25を繰り返す。
【0051】
次に、工程S25の打ち戻しによる締め固めを中断し、
図3のようにケーシングパイプ10の計測装置20の貫入ロッド11を大径の砂杭の一部SC1の上端面SSから貫入させ、荷重計19および弾性波送受信部13,14により
図2の計測システム50を用いて砂杭の一部SC1の径および強度を計測し(S26)、
図4のようにして砂杭形状・強度を評価し、その評価の結果、砂杭形状または砂杭強度が目標値を満足していない場合(S27)、打ち戻し(締め固め)工程S25に戻り、砂杭形状・強度が目標値を満足するまで、工程S25〜S27を繰り返す。
【0052】
次に、砂杭造成を次の深度まで行う場合(S28)、工程S23に戻り、同様の工程を経て、
図6(f)のように大径の砂杭の一部SC2(
図6(e)の砂杭の一部SC1よりも高さが高い)をつくり、砂杭の径の計測工程(S26)を経て砂杭形状・強度が目標値を満足することを確認する。
【0053】
以上の工程を経て砂杭SCを、
図5(g)のように、表層の軟弱粘性土層G1内に造成する。本実施形態では、
図5(e)〜(g)の砂杭の一部(SC1,SC2)を造成した段階および砂杭SCが完成した段階で砂杭の径・強度の計測による砂杭形状・強度の評価を実行し目標値を満足することを確認するので、地盤に造成される砂杭の形状・強度品質に関する施工管理を確実に行うことができ、高品質な砂杭を造成できる。また、砂杭形状・強度の評価結果に基づいて砂杭造成の諸施工条件(たとえば、砂投入量や砂杭造成長)を施工途中で見直して適宜変更できるので、適切な施工管理が可能となる。
【0054】
以上のように、本実施形態によるSCP工法の施工管理方法によれば、次の効果を奏する。
(1)従来までは砂杭造成時における砂杭形状・強度の評価ができなかったのに対し、砂杭造成時に砂杭形状・強度の評価・確認が可能である。
(2)砂杭造成時に砂杭形状・強度評価を行っているので全数調査が可能である。
(3)砂杭をたとえば約1m造成する度に砂杭形状・強度の評価・確認を行うことができるので、目標値(設計値)を満たしていない箇所を早期に発見することができ、締固め等を行うことで即座に補修を行うことができ、高品質の砂杭を造成することが可能になる。従来まで困難であった砂杭造成後の手直しは不要となる。
【0055】
なお、計測装置20の貫入ロッド11の貫入時において、砂杭直径がたとえば、200cm、高さ(各ステップごと)1mに対し、貫入ロッド11の貫入量は弾性波送受信部が砂杭内で正常に働く程度でよく(例えば10cm)、貫入ロッド11の直径も数cmなので、造成された砂杭での損傷は少ない。
【0056】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、
図6(e)〜(g)、
図7では、砂杭の一部SC1,SC2および砂杭SCについて砂杭の径の計測・評価を実行し目標値を満足することを確認するが、さらに多段階に多くの深度で、所定の高さ(たとえば1m)毎に行ってもよい。
【0057】
また、
図1の弾性波送受信部13,14は、1つの圧電素子で弾性波の送信と受信を兼用したが、送信用と受信用とに分けそれぞれに圧電素子を設けてもよい。また、弾性波の発信方式は、パルス波の発信や連続波の発信であってよい。
【0058】
また、アクチュエータ15Aは、水圧シリンダに限定されず、油圧や空気圧で作動するシリンダや電磁式のものから構成してもよい。
【0059】
また、貫入抵抗は、貫入ロッド11に内蔵させたロードセルで計測してもよく、また、アクチュエータ15Aを水圧シリンダや油圧シリンダ等から構成した場合、シリンダに備える圧力計から出力する貫入圧力(電気信号)から計測するようにしてもよい。
【0060】
また、
図6は、砂杭を水底に造成する例を示すが、本発明はこれに限定されず、陸上の地盤に砂杭を造成する場合にも適用できることはもちろんである。
【0061】
また、ケーシングパイプ10の稼働中に
図1(a)の収容部16A内に砂が侵入するのを防ぐために、貫入ロッド11の摺動部分にシール部17bを設けているが、さらに収容部16A内に水を常時注入して、貫入ロッド11とシール部17bとの間に常に外側(
図1(a)の下側)に向かう水の流れを形成して砂の侵入を防ぐようにしてもよい。