特許第6985952号(P6985952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KYB−YS株式会社の特許一覧 ▶ 中央発條株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6985952-緩衝器 図000002
  • 特許6985952-緩衝器 図000003
  • 特許6985952-緩衝器 図000004
  • 特許6985952-緩衝器 図000005
  • 特許6985952-緩衝器 図000006
  • 特許6985952-緩衝器 図000007
  • 特許6985952-緩衝器 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985952
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/508 20060101AFI20211213BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20211213BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   F16F9/508
   F16F9/32 P
   F16F9/34
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-23285(P2018-23285)
(22)【出願日】2018年2月13日
(65)【公開番号】特開2019-138398(P2019-138398A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2020年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155609
【氏名又は名称】KYB−YS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仙田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】内海 孝映
【審査官】 児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−047875(JP,A)
【文献】 特開平07−259917(JP,A)
【文献】 特開平03−104726(JP,A)
【文献】 実開昭61−021673(JP,U)
【文献】 西独国特許出願公告第02139942(DE,B)
【文献】 特開昭55−040386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00− 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝器であって、
作動流体が封入されたシリンダと、
前記シリンダの先端から突出するピストンロッドと、
前記ピストンロッドに対して軸方向に移動可能に前記ピストンロッドの基端側に設けられ、前記シリンダ内を圧側室と伸側室とに区画する可動ピストンと、
前記ピストンロッド及び前記可動ピストンに設けられ、前記シリンダと前記ピストンロッドの相対移動に伴って前記圧側室と前記伸側室との間で作動流体が通過する通路と、
前記通路に設けられ前記通路を通過する作動流体の流れに抵抗を与える絞りと、を備え、
前記絞りは、前記ピストンロッド及び前記可動ピストンの一方に設けられ、大きさの異なる複数の絞り孔を有し、
前記ピストンロッド及び前記可動ピストンの他方には、前記ピストンロッドに対する前記可動ピストンの相対移動に応じて前記複数の絞り孔のそれぞれと選択的に連通する連通孔が設けられ、
前記シリンダと前記ピストンロッドの相対移動に伴って、作動流体の圧力によって前記可動ピストンが前記ピストンロッドに対して相対移動することにより、前記絞りの開口面積が変化する
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
請求項1に記載の緩衝器において、
前記可動ピストンは、前記緩衝器の伸長作動時及び収縮作動時のいずれか一方において、前記ピストンロッドの移動速度が大きいほど、前記絞りの開口面積を小さくする
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の緩衝器において、
前記可動ピストンを付勢する付勢部材をさらに備え、
前記付勢部材は、前記ピストンロッドが所定速度未満で移動しているときには、前記可動ピストンが前記ピストンロッドに対して移動することを規制し、前記ピストンロッドが所定速度以上で移動したときに前記可動ピストンが前記ピストンロッドに対して移動することを許容するように、付勢力が設定される
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の緩衝器において、
前記連通孔は、前記複数の絞り孔のそれぞれの開口面積よりも大きい開口面積を有する連通部を有し、
前記連通部は、前記可動ピストンが前記ピストンロッドに対して相対移動することにより、第1の前記絞り孔と連通している状態から前記第1の絞り孔の隣に設けられ前記第1の絞り孔よりも開口面積が小さい第2の前記絞り孔と連通する状態に移行する移行状態において、前記第1の絞り孔及び前記第2の絞り孔の少なくとも一方に連通する
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項5】
請求項4に記載の緩衝器において、
前記連通部は、前記ピストンロッドの移動速度を徐々に大きくした場合、前記第1の絞り孔と重なる面積が減少し始めてから前記第2の絞り孔と重なり、前記第2の絞り孔の全体と重なってから前記第1の絞り孔との重なりがなくなる
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の緩衝器において、
前記連通孔は、前記連通部と直列に配置され前記第1の絞り孔と同程度の開口面積の第3の絞り孔をさらに有する
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ピストン収納室の一方の室から他方の室に連通する流路を有するピストンを備えたドアクローザー用のオイルダンパーが開示されている。上記オイルダンパーには、ピストンの可動で移動し、ドアの開方向の移動では流路断面積を大に確保し、ドアの閉塞方向の移動では流路断面積を小に確保するように調整可能な弁体が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−193740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のオイルダンパーは、ドアの開方向または閉方向の移動時に流路断面積を変化させることができない。つまり、特許文献1に記載のオイルダンパーは、伸長作動時または収縮作動時において、減衰力を変化させることができるものではなかった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、作動時に減衰力を変化させることのできる緩衝器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、緩衝器であって、作動流体が封入されたシリンダと、シリンダの先端から突出するピストンロッドと、ピストンロッドに対して軸方向に移動可能にピストンロッドの基端側に設けられ、シリンダ内を圧側室と伸側室とに区画する可動ピストンと、ピストンロッド及び可動ピストンに設けられ、シリンダとピストンロッドの相対移動に伴って圧側室と伸側室との間で作動流体が通過する通路と、通路に設けられ通路を通過する作動流体の流れに抵抗を与える絞りと、を備え、絞りは、ピストンロッド及び可動ピストンの一方に設けられ、大きさの異なる複数の絞り孔を有し、ピストンロッド及び可動ピストンの他方には、ピストンロッドに対する可動ピストンの相対移動に応じて複数の絞り孔のそれぞれと選択的に連通する連通孔が設けられ、シリンダとピストンロッドの相対移動に伴って、作動流体の圧力によって可動ピストンがピストンロッドに対して相対移動することにより、絞りの開口面積が変化することを特徴とする。
【0007】
第1の発明では、作動流体の圧力により可動ピストンがピストンロッドに対して相対移動することにより、絞りの開口面積が変化し、通路を通過する作動流体の流れに与えられる抵抗が変化する。また、大きさの異なる複数の絞り孔が選択され、選択された絞り孔によって作動油の流れに抵抗を与えることができる。
【0008】
第2の発明は、可動ピストンが、緩衝器の伸長作動時及び収縮作動時のいずれか一方において、ピストンロッドの移動速度が大きいほど、絞りの開口面積を小さくすることを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、ピストンロッドの移動速度が大きいほど、大きな減衰力を発生させることができる。
【0010】
第3の発明は、可動ピストンを付勢する付勢部材をさらに備え、付勢部材は、ピストンロッドが所定速度未満で移動しているときには、可動ピストンがピストンロッドに対して移動することを規制し、ピストンロッドが所定速度以上で移動したときに可動ピストンがピストンロッドに対して移動することを許容するように、付勢力が設定されることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、ピストンロッドの移動速度が所定速度未満の場合には、絞りの開口面積が変化しないので、一定の減衰力を発生させることができる。
【0012】
第4の発明は、連通孔が、複数の絞り孔のそれぞれの開口面積よりも大きい開口面積を有する連通部を有し、連通部は、可動ピストンがピストンロッドに対して相対移動することにより、第1の絞り孔と連通している状態から第1の絞り孔の隣に設けられ第1の絞り孔よりも開口面積が小さい第2の絞り孔と連通する状態に移行する移行状態において、第1の絞り孔及び第2の絞り孔の少なくとも一方に連通することを特徴とする。
【0013】
第4の発明では、移行状態のときに、通路が遮断されてしまうことが防止される。
【0014】
第5の発明は、連通部は、ピストンロッドの移動速度を徐々に大きくした場合、第1の絞り孔と重なる面積が減少し始めてから第2の絞り孔と重なり、第2の絞り孔の全体と重なってから第1の絞り孔との重なりがなくなることを特徴とする。
【0015】
第5の発明では、連通部は、第1の絞り孔と第2の絞り孔の双方に連通しているときに、絞りの開口面積が、第1の絞り孔の流路断面積よりも大きくなったり、第2の絞り孔の流路断面積よりも小さくなったりすることを防止できる。
【0016】
第6の発明は、連通孔が、連通部と直列に配置され第1の絞り孔と同程度の開口面積の第3の絞り孔をさらに有することを特徴とする。
【0017】
第6の発明では、移行状態において、連通部と第1の絞り孔とが重なる面積と、連通部と第2の絞り孔とが重なる面積との和が、第1の絞り孔よりも大きくなる場合に、第3の絞り孔を絞りとして機能させ、移行状態における減衰力の低下を防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、緩衝器の作動時に減衰力を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る緩衝器の全体を示す断面図である。
図2図1のA部の拡大図であり、可動ピストンが初期位置に配置されている状態を示す。
図3図1のA部の拡大図であり、可動ピストンが可動限界位置に配置されている状態を示す。
図4】初期位置からの可動ピストンの移動量と、絞りの開口面積との関係を示す図である。
図5】緩衝器の伸長作動時の絞りの開口面積の変化について説明する断面模式図である。
図6】本実施形態の比較例に係る緩衝器の可動ピストンに設けられたピストン内通路を示す断面模式図である。
図7】本実施形態の変形例に係る緩衝器の絞りと連通孔を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0023】
緩衝器100は、例えば、ドアを取り付ける出入口部の周縁部とドアとの間や住宅の骨組みを構成する梁と柱との間等に介装され、動作対象に対して減衰力を付与する装置である。以下では、ドアクローザーとして用いられる緩衝器100を一例に説明するが、緩衝器100の用途は、これに限定されるものではない。
【0024】
緩衝器100は、作動油が封入された円筒状のシリンダ10と、基端側がシリンダ10内に収容され、先端側がシリンダ10の先端から突出するピストンロッド30と、ピストンロッド30に対して軸方向に相対移動可能にピストンロッド30の基端側に設けられる可動ピストン20と、ピストンロッド30の先端に設けられた第1取付部35と、シリンダ10の基端に設けられた第2取付部15と、を備える。
【0025】
第1取付部35は、取付部材(不図示)を介してドア(不図示)及びドアの出入口周縁部(不図示)の一方に取り付けられ、第2取付部15は、取付部材(不図示)を介してドア(不図示)及びのドアの出入口周縁部(不図示)の他方に取り付けられる。なお、軸方向は、シリンダ10及びピストンロッド30の中心軸Oに平行な方向である。
【0026】
シリンダ10の先端部の内側には、ピストンロッド30を摺動自在に支持するベアリング14と、ピストンロッド30の外周面とシリンダ10の内周面との間をシールするパッキン16と、が設けられる。ベアリング14及びパッキン16は、ピストンロッド30の外周面に摺接する。シリンダ10の開口部はパッキン16によって閉塞され、シリンダ10の内部空間(作動油室)がパッキン16によって密封される。
【0027】
ピストンロッド30は、円柱状のロッド本体131と、ロッド本体131から軸方向に延在する円柱状の軸部132と、を有する。軸部132の外径は、ロッド本体131の外径よりも小さく形成され、軸部132とロッド本体131との間に段差部133が形成される。
【0028】
軸部132の端部には、スプリングガイド122が固定される。本実施形態では、ねじ締結によりスプリングガイド122が固定されているが、固定方法は、かしめ、溶接等、種々の方法を採用できる。
【0029】
スプリングガイド122は、円筒状の筒部122aと、筒部122aの基端(図示右端)に設けられた円環状のフランジ部122bと、を有する。スプリングガイド122のフランジ部122bと、可動ピストン20の基端面(図示右端面)との間には、コイルスプリング123が介装される。コイルスプリング123は、弾性力により、可動ピストン20をピストンロッド30の先端側に向かって付勢する付勢部材である。
【0030】
軸部132には、シリンダ10内を圧側室112と伸側室111とに区画する可動ピストン20が取り付けられる。可動ピストン20は、円筒状の隔壁部材であり、その内周に軸部132が挿入される。可動ピストン20の内周面には、軸部132の外周面が摺接する。可動ピストン20は、段差部133とスプリングガイド122の筒部122aの先端(図示左端)との間で移動可能に配置される。つまり、可動ピストン20は、ピストンロッド30に対して相対的に移動可能とされている。
【0031】
可動ピストン20の外周面には、周方向に沿って環状のシール溝が形成され、このシール溝に環状のシール部材23が取り付けられる。シール部材23は、緩衝器100が伸長する際に可動ピストン20とシリンダ10の内周面との間の隙間をシールする。なお、シール部材23は、緩衝器100が収縮する際には、可動ピストン20とシリンダ10の内周面との間の隙間をシールしない。つまり、本実施形態のシール部材23は、圧側室112から伸側室111への作動油の流入を許容し、伸側室111から圧側室112への作動油の流入を禁止するチェック機能を有する。このため、緩衝器100の収縮作動は、伸長作動よりもスムーズな動作となる。
【0032】
本実施形態では、図2に示すように、可動ピストン20が段差部133に当接する位置を「初期位置」と定義し、図3に示すように、可動ピストン20がスプリングガイド122の筒部122aの先端(図示左端)に当接する位置を「可動限界位置」と定義する。
【0033】
図2に示すように、可動ピストン20が初期位置にあるとき、コイルスプリング123は自然長から所定長さだけ圧縮された状態で、スプリングガイド122のフランジ部122bと可動ピストン20の基端面との間に配置される。つまり、可動ピストン20は、伸側室111の作動油圧P1と、圧側室112の作動油圧P2との差圧ΔP(=P1−P2)が、コイルスプリング123の設定圧(ばね圧)P0以上となったときに、コイルスプリング123の付勢力に抗して移動することになる。コイルスプリング123の設定圧P0は、コイルスプリング123の圧縮量に応じた付勢力に基づいて定められる。
【0034】
コイルスプリング123の設定圧P0は、ピストンロッド30が予め定められた所定速度V1未満でシリンダ10に対して相対移動しているときには、可動ピストン20がピストンロッド30に対して相対移動することを規制するように設定される。
【0035】
コイルスプリング123の設定圧P0は、ピストンロッド30が所定速度V1以上でシリンダ10に対して相対移動したときに可動ピストン20がピストンロッド30に対して相対移動することを許容するように設定される。
【0036】
したがって、コイルスプリング123の設定圧P0を変更することにより、ピストンロッド30に対する可動ピストン20の相対移動量を調整することができる。後述するように、ピストンロッド30に対して可動ピストン20が相対移動すると、絞り136の開口面積が変化し、緩衝器100の減衰力が変化する。つまり、コイルスプリング123の設定圧P0を変更することにより、減衰力を変化させるのに必要な緩衝器100の伸長速度を調整することができる。
【0037】
図2を参照して、圧側室112と伸側室111とを連通する通路50について説明する。通路50は、シリンダ10とピストンロッド30との相対移動に伴って圧側室112と伸側室111との間で作動油が通過する流路である。通路50は、可動ピストン20に設けられるピストン内通路125と、ピストンロッド30の軸部132に設けられるロッド内通路135と、を有する。
【0038】
ロッド内通路135は、軸方向に延在しピストンロッド30の基端面に開口する軸穴135aと、緩衝器100の作動時に通路50を通過する作動油の流れに抵抗を与える絞り136と、を有する。絞り136は、軸穴135aとピストンロッド30の外周側に連通する複数の絞り孔(第1絞り孔136a及び第2絞り孔136b)を有する。
【0039】
第1絞り孔136a及び第2絞り孔136bは、筒状の軸部132の内外を貫通する円形状の貫通孔であり、軸方向に並列に配置される。図示するように、第1絞り孔136a及び第2絞り孔136bは、大きさが異なる。本実施形態では、第2絞り孔136bの内径d2は、第1絞り孔136aの内径d1よりも小さい(d1>d2)。つまり、第2絞り孔136bの開口面積(流路断面積)は、第1絞り孔136aの開口面積(流路断面積)よりも小さい。
【0040】
ピストン内通路125は、可動ピストン20の内外を貫通する。ピストン内通路125は、ピストンロッド30に対する可動ピストン20の相対移動に応じて複数の絞り孔(第1絞り孔136a及び第2絞り孔136b)のそれぞれと選択的に連通する連通孔である。
【0041】
ピストン内通路(連通孔)125は、可動ピストン20の内周面に開口する円形状の貫通孔である内周孔125iと、可動ピストン20の外周面に開口する円形状の貫通孔である外周孔125oと、を有する。内周孔125iは、絞り136と直接連通する連通部である。外周孔125oは、内周孔125iに連続して設けられている。つまり、内周孔125iと外周孔125oとは、可動ピストン20の径方向に直列に配置される。なお、内周孔125iと外周孔125oとをテーパ部を介して接続してもよい。内周孔125iの内径diは、外周孔125oの内径doよりも大きい(di>do)。また、内周孔125iの内径diは、第1絞り孔136aの内径d1及び第2絞り孔136bの内径d2よりも大きい(di>d1>d2)。
【0042】
ピストンロッド30がシリンダ10から退出する緩衝器100の伸長作動時には、ピストンロッド30とともに可動ピストン20が移動することで容積が縮小する伸側室111から、容積が拡大する圧側室112に、通路50を介して作動油が移動する。このとき、通路50を通過する作動油の流れに絞り136で抵抗を与え、伸側室111と圧側室112との間に差圧を生じさせて減衰力を発生する。
【0043】
図2に示すように、可動ピストン20が初期位置にあるとき、内周孔125iが第1絞り孔136aの開口全体を覆うように配置され、内周孔125iと第1絞り孔136aとが連通する。このとき、内周孔125iと第2絞り孔136bとの連通は遮断されている。つまり、可動ピストン20が初期位置にあるとき、通路50において最小流路断面を構成する第1絞り孔136aによって、通路50を通過する作動油の流れに抵抗が与えられる。
【0044】
図3に示すように、可動ピストン20が可動限界位置にあるとき、内周孔125iが第2絞り孔136bの開口全体を覆うように配置され、内周孔125iと第2絞り孔136bとが連通する。このとき、内周孔125iと第1絞り孔136aとの連通は遮断されている。つまり、可動ピストン20が可動限界位置にあるとき、通路50において最小流路断面を構成する第2絞り孔136bによって、通路50を通過する作動油の流れに抵抗が与えられる。このため、可動ピストン20が可動限界位置にあるときに発生する減衰力は、可動ピストン20が初期位置にあるときに発生する減衰力に比べて大きくなる。
【0045】
ピストンロッド30がシリンダ10から退出する際の移動速度Vが、所定速度V1未満であるときには、可動ピストン20は初期位置に維持され、第1絞り孔136aによって、通路50を通過する作動油の流れに抵抗が与えられる。一方、ピストンロッド30がシリンダ10から退出する際の移動速度Vが、所定速度V1以上であるときには、伸側室111の作動油圧P1と圧側室112の作動油圧P2との差圧ΔP(=P1−P2)が、コイルスプリング123の設定圧P0以上となる。このため、可動ピストン20がコイルスプリング123の付勢力に抗して、ピストンロッド30の先端側に移動する。
【0046】
ピストンロッド30に対して可動ピストン20が相対移動すると、その相対移動量に応じて、ピストン内通路125が大きさの異なる複数の絞り孔(第1及び第2絞り孔136a,136b)のそれぞれと選択的に連通し、連通する絞り孔(選択された絞り孔)によって作動油の流れに抵抗が与えられる。
【0047】
次に、図4及び図5を参照して、本実施形態に係る緩衝器100の伸長作動時における絞り136の開口面積Sの変化について説明する。ここで、絞り136の開口面積Sとは、ピストン内通路125とロッド内通路135との境界面における開口面の面積(作動油が通過する流路断面積)のことを指す。つまり、本実施形態において、絞り136の開口面積Sは、可動ピストン20の内周孔125iと、ピストンロッド30の複数の絞り孔(第1及び第2絞り孔136a,136b)とが重なる面積の和に相当する。
【0048】
本実施形態では、図4に示すように、可動ピストン20が、緩衝器100の伸長作動時において、ピストンロッド30の移動速度Vが大きいほど、絞り136の開口面積Sが小さくなるように、複数の絞り孔の大きさ及び位置並びに内周孔125iの大きさ及び位置が設定される。これにより、ピストンロッド30の移動速度が大きいほど、大きな減衰力を発生させることができる。以下、具体的に説明する。
【0049】
図5(a)に示すように、緩衝器100の伸長作動時において、ピストンロッド30が所定速度V1未満の移動速度Vm0でシリンダ10から退出する場合、可動ピストン20は初期位置で保持される。可動ピストン20が初期位置にあり、内周孔125iが第1絞り孔136aにのみ連通する連通状態では、第1絞り孔136aの開口面積(流路断面積)S1が絞り136の開口面積Sとなる(S=S1)。このように、ピストンロッド30の移動速度Vが所定速度V1未満の場合には、絞り136の開口面積Sが変化しないので、一定の減衰力を発生させることができる。
【0050】
図5(b)に示すように、緩衝器100の伸長作動時において、ピストンロッド30が所定速度V1以上の移動速度Vm1でシリンダ10から退出する場合、可動ピストン20が初期位置から所定距離x1だけ離れた位置まで相対移動する。この状態では、内周孔125iと第1絞り孔136aとが重なる面積、すなわち絞り136の開口面積Sが、移動速度Vm0でピストンロッド30がシリンダ10から退出する場合(図5(a)参照)に比べて、小さくなる。つまり、絞り136の開口面積Sは、第1絞り孔136aの開口面積(流路断面積)S1よりも小さくなる(S<S1)。
【0051】
図5(c)に示すように、緩衝器100の伸長作動時において、ピストンロッド30が移動速度Vm1よりも大きい移動速度Vm2でシリンダ10から退出する場合、可動ピストン20が初期位置から所定距離x2だけ離れた位置まで相対移動する。所定距離x2は、所定距離x1よりも大きい(x2>x1)。この状態では、内周孔125iが第1絞り孔136a及び第2絞り孔136bの双方に連通する。つまり、このときの絞り136の開口面積Sは、内周孔125iと第1絞り孔136aとが重なる面積と、内周孔125iと第2絞り孔136bとが重なる面積の和となる。
【0052】
図5(d)に示すように、緩衝器100の伸長作動時において、ピストンロッド30が移動速度Vm2よりも大きい移動速度Vm3でシリンダ10から退出する場合、可動ピストン20が初期位置から所定距離x3だけ離れた位置まで相対移動する。所定距離x3は、所定距離x2よりも大きい(x3>x2)。この状態では、内周孔125iは、第2絞り孔136bの全体と重なるとともに、第1絞り孔136aの一部と重なる。つまり、絞り136の開口面積Sは、第2絞り孔136bの開口面積(流路断面積)S2よりも大きくなる(S>S2)。
【0053】
図5(e)に示すように、緩衝器100の伸長作動時において、ピストンロッド30が所定速度V2以上の移動速度Vm4でシリンダ10から退出する場合、可動ピストン20が初期位置から所定距離x4だけ離れた位置、すなわち可動限界位置まで相対移動する。所定速度V2は、移動速度Vm3よりも大きい速度であり、可動ピストン20を可動限界位置まで移動させるのに必要なピストンロッド30の移動速度である。所定距離x4は、所定距離x3よりも大きい(x4>x3)。この状態では、内周孔125iと第1絞り孔136aとの重なりがなくなり、内周孔125iは第2絞り孔136bのみと連通する。つまり、絞り136の開口面積Sは、第2絞り孔136bの開口面積(流路断面積)S2と等しくなる(S=S2)。
【0054】
このように、本実施形態では、ピストンロッド30の移動速度Vを徐々に大きくした場合、内周孔125iは、ピストンロッド30に対する可動ピストン20の相対移動量が大きくなるにしたがって、第1絞り孔136aと重なる面積が減少し始めてから(図5(b)参照)第2絞り孔136bと重なる(図5(c)参照)。さらに、内周孔125iは、可動ピストン20の移動量が大きくなるにしたがって、第2絞り孔136bの全体と重なってから(図5(d)参照)第1絞り孔136aとの重なりがなくなる(図5(e)参照)。
【0055】
これにより、内周孔125iは、第1絞り孔136aと第2絞り孔136bの双方に連通しているときに、絞り136の開口面積Sが、第1絞り孔136aの開口面積(流路断面積)S1よりも大きくなったり、第2絞り孔136bの開口面積(流路断面積)S2よりも小さくなったりすることを防止できる。
【0056】
本実施形態では、以下で定義する「移行状態」において、内周孔125iが第1絞り孔136aと第2絞り孔136bの少なくとも一方に連通する構成とされている(図5(b)〜図5(d)参照)。「移行状態」とは、可動ピストン20がピストンロッド30に対して相対移動することにより、内周孔125iが、第1絞り孔136aと連通している状態(図5(a)に示す可動ピストン20が初期位置に示す状態)から第1絞り孔136aの隣に設けられる第2絞り孔136bと連通する状態(図5(e)に示す可動ピストン20が可動限界位置にあるときの状態)に移行するときの中間の状態のことを指す。
【0057】
ここで、仮に、第1絞り孔136aと第2絞り孔136bとの間の最小寸法が、内周孔125iの内径diよりも大きい場合、移行状態のときに、内周孔125iが第1絞り孔136a及び第2絞り孔136bの双方に連通しない状態となってしまう。
【0058】
これに対して、本実施形態では、第1絞り孔136aと第2絞り孔136bとの間の最小寸法が、内周孔125iの内径diよりも小さく設定され、移行状態において、内周孔125iが第1絞り孔136a及び第2絞り孔136bの少なくとも一方に連通する構成とされている。このため、移行状態のときに、通路50が一時的に遮断されてしまうことが防止される。
【0059】
次に、外周孔125oを設けたことによる作用効果を、本実施形態の比較例と比較して説明する。図6は、本実施形態の比較例に係る緩衝器の可動ピストン920に設けられたピストン内通路925を示す断面模式図である。なお、本実施形態の比較例も本発明の範囲内である。
【0060】
図6に示すように、本実施形態の比較例では、ピストン内通路925は一定の内径を有する円形状の貫通孔である。ピストン内通路925の内径は、本実施形態の内周孔125iの内径と同じである。本実施形態の比較例では、本実施形態と同様、絞り136の開口面積Sが、ピストンロッド30に対する可動ピストン20の相対移動量の増加に応じて、徐々に減少する。しかしながら、各部品の製造誤差、組み付け誤差等に起因して、移行状態において、絞り136の開口面積が第1絞り孔136aよりも大きくなってしまうおそれがある。この場合、ピストンロッド30の移動速度Vが大きくなったときに、減衰力が低下してしまうことがある。
【0061】
そこで、本実施形態では、ピストン内通路125に、内周孔125iよりも内径の小さい外周孔125oが設けられる。外周孔125oは、その内径doが第1絞り孔136aの内径d1と同じになるように形成される。つまり、外周孔125oの開口面積は、第1絞り孔136aの開口面積S1と同程度である。
【0062】
これにより、移行状態において、絞り136の開口面積Sが、第1絞り孔136aの開口面積S1よりも大きくなった場合であっても、外周孔125oの流路断面が通路50における最小流路断面となる。つまり、移行状態において、第3の絞り孔としての外周孔125oを絞りとして機能させ、移行状態における減衰力の低下を防止できる。
【0063】
以上のとおり、本実施形態では、緩衝器100の伸長作動時に、ピストンロッド30の移動速度Vに応じて絞り136の開口面積Sが変化する。なお、緩衝器100の収縮作動時は、可動ピストン20は初期位置に保持されるので、ピストンロッド30の移動速度Vにかかわらず、絞り136の開口面積Sは一定である。つまり、緩衝器100の収縮作動時は、第1絞り孔136aを通過する作動油によって一定の減衰力が発生する。
【0064】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0065】
(1)緩衝器100は、シリンダ10とピストンロッド30の相対移動に伴って、作動油の圧力によって可動ピストン20がピストンロッド30に対して相対移動することにより、絞り136の開口面積Sが変化するように構成されている。したがって、作動油の圧力により可動ピストン20がピストンロッド30に対して相対移動することにより、絞り136の開口面積Sが変化し、通路50を通過する作動油の流れに与えられる抵抗が変化する。これにより、緩衝器100の伸長作動時に減衰力を変化させることができる。
【0066】
(2)本実施形態では、可動ピストン20が、緩衝器100の伸長作動時において、ピストンロッド30の移動速度Vが大きいほど、絞り136の開口面積Sを小さくする。このため、ピストンロッド30の移動速度Vが大きいほど、大きな減衰力を発生させることができる。例えば、緩衝器100をドアクローザーに用いた場合、ドアの開き速度が大きいほど、大きな減衰力が発生するので、ドアの開き動作を制限することができる。
【0067】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0068】
(変形例1)
上記実施形態では、大きさの異なる複数の絞り孔を有する絞り136が、ピストンロッド30に設けられ、絞り136に連通する連通孔(125)が可動ピストン20に設けられる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図7に示すように、ピストンロッド30に複数の絞り孔を有する絞り225を設け、可動ピストン20に複数の絞り孔のそれぞれと選択的に連通する連通孔236を設けてもよい。
【0069】
絞り225は、第1絞り孔225aと、第1絞り孔225aよりも開口面積が小さい第2絞り孔225bと、を有し、第1及び第2絞り孔225a,225bは、軸方向に並列に配置される。連通孔236は、内周孔236iと、内周孔236iよりも開口面積が大きい外周孔236oと、を有し、内周孔236iと外周孔236oとは径方向に沿って直列に配設される。本変形例1では、外周孔236oが絞り225と直接連通する連通部として構成され、内周孔236iが第3の絞り孔として構成される。
【0070】
(変形例2)
上記実施形態では、絞り136が、2つの絞り孔(第1絞り孔136a及び第2絞り孔136b)を有する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。3つ以上の絞り孔を軸方向に沿って配設してもよい。この場合、軸方向に沿って配設される複数の絞り孔の大きさをそれぞれ異なるものとすることで、減衰力特性を調整することができる。
【0071】
(変形例3)
上記実施形態では、緩衝器100の伸長作動時において、ピストンロッド30の移動速度が大きいほど、絞り136の開口面積Sが小さくなる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。緩衝器100が適用される装置に対して要求される仕様によっては、緩衝器100の伸長作動時において、ピストンロッド30の移動速度Vが大きいほど、絞り136の開口面積Sを大きくしてもよい。この場合、ピストンロッド30の移動速度Vが大きいほど、小さな減衰力を発生させることができる。
【0072】
(変形例4)
上記実施形態では、緩衝器100の伸長作動時において、作動油圧によって可動ピストン20がピストンロッド30に対して相対移動することにより、絞り136の開口面積Sが変化する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。緩衝器100が適用される装置に対して要求される仕様によっては、緩衝器100の収縮作動時において、作動油圧によって可動ピストン20がピストンロッド30に対して相対移動することにより、絞り136の開口面積Sが変化するように構成してもよい。この場合、上記実施形態で説明したコイルスプリング123と可動ピストン20の配置関係を逆にするなどして、コイルスプリング123によって可動ピストン20をピストンロッド30の基端側に向かって付勢する構成とすればよい。
【0073】
(変形例5)
上記実施形態では、第1及び第2絞り孔136a,136bが円形の貫通孔である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1及び第2絞り孔136a,136bは、種々の断面形状の貫通孔とすることができる。
【0074】
(変形例6)
上記実施形態では、可動ピストン20を付勢する付勢部材としてコイルスプリング123を採用する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。板ばね等、種々の弾性部材を付勢部材として採用できる。
【0075】
(変形例7)
上記実施形態では、ドアクローザーに本発明を適用する例を代表して説明したが、本発明はこれに限定されない。住宅の骨組みを構成する梁と柱との間等に介装され、動作対象に対して減衰力を付与して耐震性を向上させる免震装置、乗り物の運転室と走行装置との間等に介装され、乗り物の乗り心地を向上させる振動吸収装置等、種々の減衰力発生装置に本発明を適用し、その減衰力特性を調整することができる。
【0076】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0077】
緩衝器100は、作動油が封入されたシリンダ10と、シリンダ10の先端から突出するピストンロッド30と、ピストンロッド30に対して軸方向に移動可能にピストンロッド30の基端側に設けられ、シリンダ10内を圧側室112と伸側室111とに区画する可動ピストン20と、ピストンロッド30及び可動ピストン20に設けられ、シリンダ10とピストンロッド30の相対移動に伴って圧側室112と伸側室111との間で作動油が通過する通路50と、通路50に設けられ通路50を通過する作動油の流れに抵抗を与える絞り136,225と、を備え、シリンダ10とピストンロッド30の相対移動に伴って、作動油の圧力によって可動ピストン20がピストンロッド30に対して相対移動することにより、絞り136,225の開口面積Sが変化する。
【0078】
この構成では、作動油の圧力により可動ピストン20がピストンロッド30に対して相対移動することにより、絞り136,225の開口面積Sが変化し、通路50を通過する作動油の流れに与えられる抵抗が変化する。これにより、緩衝器100の作動時に減衰力を変化させることができる。
【0079】
緩衝器100は、可動ピストン20が、緩衝器100の伸長作動時及び収縮作動時のいずれか一方において、ピストンロッド30の移動速度Vが大きいほど、絞り136,225の開口面積Sを小さくする。
【0080】
この構成では、ピストンロッド30の移動速度Vが大きいほど、大きな減衰力を発生させることができる。
【0081】
緩衝器100は、可動ピストン20を付勢するコイルスプリング123をさらに備え、コイルスプリング123は、ピストンロッド30が所定速度V1未満で移動しているときには、可動ピストン20がピストンロッド30に対して移動することを規制し、ピストンロッド30が所定速度V1以上で移動したときに可動ピストン20がピストンロッド30に対して移動することを許容するように、付勢力が設定される。
【0082】
この構成では、ピストンロッド30の移動速度Vが所定速度V1未満の場合には、絞り136,225の開口面積Sが変化しないので、一定の減衰力を発生させることができる。
【0083】
緩衝器100は、絞り136,225が、ピストンロッド30及び可動ピストン20の一方に設けられ、大きさの異なる複数の絞り孔(第1絞り孔136a,225a、第2絞り孔136b,225b)を有し、ピストンロッド30及び可動ピストン20の他方には、ピストンロッド30に対する可動ピストン20の相対移動に応じて複数の絞り孔(第1絞り孔136a,225a、第2絞り孔136b,225b)のそれぞれと選択的に連通する連通孔(125,236)が設けられる。
【0084】
この構成では、大きさの異なる複数の絞り孔(第1絞り孔136a,225a、第2絞り孔136b,225b)が選択され、選択された絞り孔によって作動油の流れに抵抗を与えることができる。
【0085】
緩衝器100は、連通孔(125,236)が、複数の絞り孔(第1絞り孔136a,225a、第2絞り孔136b,225b)のそれぞれの開口面積よりも大きい開口面積を有する連通部(内周孔125i、外周孔236o)を有し、連通部(内周孔125i、外周孔236o)は、可動ピストン20がピストンロッド30に対して相対移動することにより、第1絞り孔136a,225aと連通している状態から第1絞り孔136a,225aの隣に設けられ第1絞り孔136a,225aよりも開口面積が小さい第2絞り孔136b,225bと連通する状態に移行する移行状態において、第1絞り孔136a,225a及び第2絞り孔136b,225bの少なくとも一方に連通する。
【0086】
この構成では、移行状態のときに、通路50が遮断されてしまうことが防止される。
【0087】
緩衝器100は、連通部(内周孔125i、外周孔236o)は、ピストンロッド30の移動速度Vを徐々に大きくした場合、第1絞り孔136a,225aと重なる面積が減少し始めてから第2絞り孔136b,225bと重なり、第2絞り孔136b,225bの全体と重なってから第1絞り孔136a,225aとの重なりがなくなる。
【0088】
この構成では、連通部(内周孔125i、外周孔236o)は、第1絞り孔136a,225aと第2絞り孔136b,225bの双方に連通しているときに、絞り136,225の開口面積Sが、第1絞り孔136a,225aの開口面積(流路断面積)S1よりも大きくなったり、第2絞り孔136b,225bの開口面積(流路断面積)S2よりも小さくなったりすることを防止できる。
【0089】
緩衝器100は、連通孔(125,236)が、連通部(内周孔125i、外周孔236o)と直列に配置され第1絞り孔136a,225aと同程度の開口面積の第3絞り孔(外周孔125o、内周孔236i)をさらに有する。
【0090】
この構成では、移行状態において、連通部(内周孔125i、外周孔236o)と第1絞り孔136a,225aとが重なる面積と、連通部(内周孔125i、外周孔236o)と第2絞り孔136b,225bとが重なる面積との和が、第1絞り孔136a,225aよりも大きくなる場合に、第3絞り孔(外周孔125o、内周孔236i)を絞りとして機能させ、移行状態における減衰力の低下を防止できる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0092】
10・・・シリンダ、20・・・可動ピストン、30・・・ピストンロッド、50・・・通路、100・・・緩衝器、111・・・伸側室、112・・・圧側室、123・・・コイルスプリング(付勢部材)、125・・・ピストン内通路(連通孔)、125i・・・内周孔(連通部)、136,225・・・絞り、136a,225a・・・第1絞り孔、136b,225b・・・第2絞り孔、236・・・連通孔、236o・・・外周孔(連通部)、920・・・可動ピストン、925・・・ピストン内通路(連通孔)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7