(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985971
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】焼き菓子用ミックス
(51)【国際特許分類】
A21D 2/18 20060101AFI20211213BHJP
A21D 13/31 20170101ALI20211213BHJP
A21D 10/00 20060101ALI20211213BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20211213BHJP
A23G 3/00 20060101ALN20211213BHJP
A23G 3/34 20060101ALN20211213BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D13/31
A21D10/00
A21D13/00
!A23G3/00
!A23G3/34 102
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-70539(P2018-70539)
(22)【出願日】2018年4月2日
(65)【公開番号】特開2019-180242(P2019-180242A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2020年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】312015185
【氏名又は名称】日清製粉プレミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩一
【審査官】
緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/087992(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/173004(WO,A1)
【文献】
特開2010−154801(JP,A)
【文献】
特開2014−161261(JP,A)
【文献】
特開2015−171357(JP,A)
【文献】
特開2014−096991(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0161502(US,A1)
【文献】
特開2018−068241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 3/34
A21D 2/18
A21D 13/31
A21D 10/00
A21D 13/00
A23G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非α化穀粉及び/又は非α化澱粉と、α化澱粉及び/又はα化穀粉と、昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤とを含有し、該α化澱粉と該α化穀粉との合計含有量が0.5〜30質量%であり、該昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤の含有量が該α化澱粉と該α化穀粉の合計量100質量部あたり0.1〜50質量部である、フィリング入り焼き菓子の生地用ミックス。
【請求項2】
前記昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤を0.01〜5質量%含有する、請求項1記載の生地用ミックス。
【請求項3】
前記昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤がメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択されるいずれか1種以上である、請求項1又は2記載の生地用ミックス。
【請求項4】
前記昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤が38〜90℃のゾル−ゲル転移温度を有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の生地用ミックス。
【請求項5】
小麦由来蛋白質を0.5〜10質量%含有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の生地用ミックス。
【請求項6】
前記非α化穀粉と前記非α化澱粉との合計含有量が25質量%以上である、請求項1〜5のいずれか1項記載の生地用ミックス。
【請求項7】
膨張剤を0.2〜4.0質量%含有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の生地用ミックス。
【請求項8】
油脂を1〜20質量%含有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の生地用ミックス。
【請求項9】
前記焼き菓子がたい焼き、今川焼き、人形焼き、ワッフル、又は焼きドーナツである、請求項1〜8のいずれか1項記載の生地用ミックス。
【請求項10】
前記フィリングが、前記焼き菓子の焼成中にペースト状のものである、請求項1〜9のいずれか1項記載の生地用ミックス。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項記載の生地用ミックスを含有する生地と該生地に包まれたフィリングとを含むフィリング入り焼き菓子。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項記載の生地用ミックスを含む液状又はペースト状生地をフィリングとともに焼成することを含む、フィリング入り焼き菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィリング入り焼き菓子のための焼き菓子用ミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
たい焼きや今川焼きのような、液状又はペースト状の生地から製造されるフィリング入りの焼き菓子は、以前から食されている。また最近では、これらフィリング入りの焼き菓子に澱粉やα化澱粉を配合することが行われている。例えば、特許文献1には、加工澱粉および/または馬鈴薯澱粉と油脂類を含む液状生地を焼成することを特徴とするたい焼き類菓子の製造方法が記載されている。
【0003】
一方、穀粉や澱粉を含む食品の品質改良のために増粘剤やゲル化剤が使用されることは少なくない。例えば、特許文献2には、昇温ゲル化性の熱可逆性ゲル化剤を含有するたこ焼き用ミックスにより、たこ焼きの食感や再加熱時の保形性を改善することが記載されている。特許文献3には、メチルセルロース、ローカストビーンガム及びアラビアガムを含有することを特徴とするデンプン品質改良剤により、澱粉含有食品の品質のばらつきを抑え、また老化を防止することが記載されている。さらに増粘剤やゲル化剤は、グルテンを含まない生地の物性改善に用いられている。例えば、特許文献4には、米粉、βでんぷん、α化でんぷん、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが配合されてなる混合紛体を原料とする米粉生地を用いることで、グルテンを含まなくとも発酵過程での膨らみがよく、かつ風味がよい米粉パンが得られることが記載されている。特許文献5には、グルテンを実質的に含有しない穀粉及び/又は澱粉、α化澱粉及び/又はα化穀粉、増粘多糖類及び/又はゲル化剤、油脂、ならびに乳化剤を含有する衣材を用いることで、フライ類等の衣付き食品の衣の風味と保存後の食感が改善されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−321182号公報
【特許文献2】国際公開公報第2015/087992号
【特許文献3】特開2004−049037号公報
【特許文献4】特開2015−226488号公報
【特許文献5】特開2017−042098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たい焼きのような液状又はペースト状の生地から製造されるフィリング入りの焼き菓子は、一般に、加熱した焼き型に該生地を流し入れた後、その上にペースト状のフィリングを載せて焼き、さらにこれを別の焼き型に流し入れた該生地の上に載せてフィリングを包み込みながら生地を焼成することで製造されている。しかしながら、このような菓子では、生地が流動性であること、フィリングがペースト状であること、生地に対してフィリングが比較的多量であることなどから、焼成中にフィリングが生地からはみ出すことがある。フィリングのはみ出しは、菓子の見た目を悪くし商品価値を低下させるため好ましくない。さらに本発明者らは、この焼成中のフィリングのはみ出しの問題が、α化澱粉又はα化穀粉を含む生地において一層顕著であることを見出した。α化澱粉又はα化穀粉を含む液状又はペースト状の生地を上述の一般的な手順でフィリングとともに焼成すると、加熱中に該生地の中からフィリングの噴き出しが起こる。これは焼き菓子の外観上好ましくない。
【0006】
本発明は、液状又はペースト状の生地から製造され、生地からのフィリングのはみ出しが少ないフィリング入り焼き菓子を提供する。より詳細には、α化澱粉又はα化穀粉を含有する液状又はペースト状の生地から製造されていても、高温下での保形性が高く、また焼成中のフィリングの噴き出しによる生地からのフィリングのはみ出しが少ない焼き菓子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、非α化穀粉及び/又は非α化澱粉と、α化澱粉及び/又はα化穀粉と、昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤とを含有し、該α化澱粉と該α化穀粉との合計含有量が0.5〜30質量%であり、該昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤の含有量が該α化澱粉と該α化穀粉の合計量100質量部あたり0.1〜50質量部である、焼き菓子用ミックスを提供する。
また本発明は、前記焼き菓子用ミックスを含有する生地と該生地に包まれたフィリングとを含む焼き菓子を提供する。
また本発明は、前記焼き菓子用ミックスを含む液状又はペースト状生地をフィリングとともに焼成することを含む、焼き菓子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、α化澱粉又はα化穀粉による独特の食感を有しつつ、高温下での保形性が高く、かつ焼成中のフィリングの噴き出しによる生地からのフィリングのはみ出しが少ない焼き菓子を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の焼き菓子用ミックスは、フィリング入り焼き菓子のためのミックスである。より詳細には、本発明の焼き菓子用ミックスは、焼き型に流し入れた液状又はペースト状の生地をフィリングとともに焼成することによって製造されるタイプのフィリング入り焼き菓子のためのミックスである。本発明の焼き菓子用ミックスによって製造される焼き菓子としては、型を用いて焼成される型焼き菓子が好適である。本発明の焼き菓子用ミックスを用いて製造される焼き菓子の例としては、たい焼き、今川焼き、人形焼き、ワッフル、焼きドーナツなどが挙げられるが、その名称や種類はこれらに限定されず、上述した手順で生地から製造されるフィリング入り焼き菓子であればよい。
【0010】
本発明の焼き菓子用ミックスは、非α化穀粉及び/又は非α化澱粉とともに、α化澱粉及び/又はα化穀粉と、昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤とを含有する。該α化澱粉又はα化穀粉により、焼成後の焼き菓子に軽さとしっとり感のある好ましい食感が付与される。焼き菓子の生地がα化澱粉又はα化穀粉を含む場合、上述したように焼成中における生地からのフィリングの噴き出しが起こりやすくなるが、本発明では、焼き菓子用ミックスにα化澱粉及び/又はα化穀粉とともに所定量の昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤を含有させることにより、そのフィリングの噴き出しの問題を改善した。
【0011】
本発明の焼き菓子用ミックスに含まれ得るα化澱粉の例としては、α化タピオカ澱粉、α化馬鈴薯澱粉、α化小麦澱粉、α化コメ澱粉、α化コーンスターチ、及びさらなる加工(アセチル化、ヒドロキシプロピル化、エーテル化、架橋、酸化等)がされている上記のα化澱粉などが挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を混合して使用することができる。また本発明の焼き菓子用ミックスに含まれ得るα化穀粉の例としては、α化小麦粉、α化米粉などが挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を混合して使用することができる。このうち、α化澱粉としてはα化小麦澱粉が好ましく、α化穀粉としてはα化小麦粉が好ましい。該α化澱粉とα化穀粉は、いずれか一方のみを使用してもよく、両方を組み合わせて使用してもよい。好ましいα化澱粉とα化穀粉の組み合わせとしては、α化小麦澱粉とα化小麦粉が挙げられる。
【0012】
本発明の焼き菓子用ミックスにおける該α化澱粉とα化穀粉との合計含有量は、ミックス全量中、0.5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。含有量0.5質量%程度でフィリングの噴き出しが生じ得る。さらに食感の観点からは、ミックス中のα化澱粉とα化穀粉との合計含有量は1質量%以上が好ましい。一方、ミックス中のα化澱粉とα化穀粉との合計含有量が高すぎると、焼き菓子がベタついたり、その保形性が低下する。
【0013】
昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤とは、可逆的にゾル−ゲル転移するゲル化剤であって、高温でゲル化し、低温でゾル化するものをいう。本発明の焼き菓子用ミックスに含まれる昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤の例としては、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カードランなどが挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を混合して使用することができる。このうち、MC、HPMC及びそれらの混合物が好ましく、HPMCがより好ましい。本発明で用いられる昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤は、そのゾル−ゲル転移温度が、好ましくは38〜90℃、より好ましくは55〜90℃、さらに好ましくは62〜90℃である。当該ゾル−ゲル転移温度を有するMCやHPMCは市販されている。本発明で用いられる昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤のより好ましい例としては、ゾル−ゲル転移温度が38〜55℃程度、好ましくは38〜44℃程度であるMC、ゾル−ゲル転移温度が55〜90℃程度、好ましく70〜90℃又は62〜68℃程度であるHPMC、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0014】
フィリングの噴き出し防止、および食感の観点からは、本発明のミックスにおける該昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤の含有量は、上述したα化澱粉とα化穀粉の合計量100質量部あたり、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは1.5〜50質量部である。該α化澱粉とα化穀粉の合計量100質量部当たりの該昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤の含有量が50質量部を超えると、得られた焼菓子が硬さの目立つ食感となるため、α化澱粉やα化穀粉を使用する意義が乏しくなる。また、本発明のミックスにおける該昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤の含有量は、ミックス全量中、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。ミックス中の該昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤の含有量が5質量%を超えると、得られた焼菓子が硬さの目立つ食感となるため、α化澱粉やα化穀粉を使用する意義が乏しくなる。
【0015】
本発明の焼き菓子用ミックスに含まれる非α化穀粉(α化処理されていない穀粉)の例としては、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉、そば粉、コーンフラワーなどが挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を混合して使用することができる。好ましくは、小麦粉、米粉又はそれらの混合物が使用される。小麦粉としては、薄力粉、中力粉、強力粉、全粒粉、デュラム粉などが挙げられる。小麦粉は、熱処理小麦粉であると好ましい。該非α化穀粉の添加により、焼き菓子の保形性及び風味を向上させることができる。本発明の焼き菓子用ミックスが該非α化穀粉を含む場合、その含有量は、ミックス全量中、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜45質量%である。
【0016】
本発明の焼き菓子用ミックスに含まれる非α化澱粉(α化処理されていない穀粉)の例としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、コーンスターチなどのβ澱粉、及びこれらの非α化加工澱粉が挙げられる。これらの非α化澱粉は、いずれか1種又は2種以上を混合して使用することができる。好ましくは、コーンスターチが使用される。非α化澱粉の添加により、焼き菓子の保形性が向上する。さらにα化澱粉又はα化穀粉と非α化澱粉との併用により、焼き菓子に独特の軽い食感(例えばシュー様の食感)を付与することができる。本発明の焼き菓子用ミックスが該非α化澱粉を含む場合、その含有量は、ミックス全量中、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜60質量%である。
【0017】
本発明の焼き菓子用ミックスには、当該非α化穀粉及び非α化澱粉のいずれか一方が含まれていればよいが、両方含まれていてもよい。焼き菓子の風味及び食感の観点からは、本発明の焼き菓子用ミックスにおける上述した非α化穀粉及び非α化澱粉の合計含有量は、ミックス全量中、好ましくは25質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。
【0018】
焼き菓子の保形性の観点からは、本発明の焼き菓子用ミックスが小麦由来蛋白質を含有することが好ましい。本発明のミックスに含まれる小麦由来蛋白質は、失活していないものであれば上述したα化又は非α化穀粉として添加された小麦粉に含有されている蛋白質であってもよく、又は該α化又は非α化穀粉と別途に添加された小麦由来蛋白質であってもよい。穀粉と別途に添加される小麦由来蛋白質としては、市販の小麦蛋白質、活性グルテンなどを用いることができるが、これらに限定されない。本発明の焼き菓子用ミックスにおける該小麦由来蛋白質の含有量は、ミックス全量中、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
【0019】
本発明の焼き菓子用ミックスは、さらに膨張剤を含有していてもよい。膨張剤としては、重曹、ベーキングパウダーなどが挙げられる。本発明の焼き菓子用ミックスにおける該膨張剤の含有量は、ミックス全量中、好ましくは0.2〜4.0質量%、より好ましくは0.5〜3.0質量%である。
【0020】
本発明の焼き菓子用ミックスは、さらに油脂類を含有していてもよい。油脂類としては、大豆油、コーン油、菜種油、紅花油、ショートニング、マーガリンなどが挙げられる。本発明の焼き菓子用ミックスにおける該油脂類の含有量は、ミックス全量中、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%である。
【0021】
本発明の焼き菓子用ミックスは、上述した材料以外に、さらに焼き菓子用ミックスに通常添加され得る他の材料、例えば、糖類、卵粉、粉乳、調味料、香辛料、着色料、乳化剤等を含有していてもよい。これらの他の材料の含有量は、ミックス全量中、30質量%以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の焼き菓子用ミックスは、焼き菓子用の液状又はペースト状生地の調製のために使用される。好ましくは、本発明の焼き菓子用ミックスは粉末又は顆粒状であり、これに水分を加えて混合することで液状又はペースト状生地が調製される。水分の添加量は、製造する焼き菓子の種類などによって適宜変更すればよいが、例えば本発明の焼き菓子用ミックス100質量部当たり、50〜300質量部が好ましい。水分としては、水、乳などが使用され得る。さらに必要に応じて、生地に卵、糖類、油脂などを添加してもよい。
【0023】
得られた液状又はペースト状生地をフィリングとともに焼成することにより、本発明のフィリング入り焼き菓子を製造することができる。本発明の焼き菓子は、本発明の焼き菓子用ミックスを含有する生地と該生地に包まれたフィリングとを含む焼き菓子である。好適には、本発明による焼き菓子の製造方法においては、2つの焼き型に該液状又はペースト状生地を流し入れて焼き、好ましくは一方の生地にフィリングを載せて焼いた後、それらをフィリングを包み込むように1つにあわせ、あわせたフィリング入りの生地をさらに焼成する。生地を焼く際の加熱の手段は、限定されないが、好ましくは、オーブン等による間接加熱よりも、直火、ヒーター等で焼き型を直接加熱する方法が採用される。
【0024】
本発明の焼き菓子に用いられるフィリングは、該液状又はペースト状生地とともに焼成する際に噴き出しがおこり得るもの、例えば(少なくとも焼成中に)ペースト状のものであり得る。このようなフィリングの例としては、あん、ジャム、クリーム、チーズ、該液状又はペースト状生地とは別の生地(バッター)などが挙げられる。これらのフィリングは、具材を含んでいてもよい。
【0025】
以上の手順で、本発明の焼き菓子用ミックスを用いた焼き菓子が製造される。本発明により提供される焼き菓子は、α化澱粉又はα化穀粉を含んでいるにもかかわらず、焼成中のフィリングの噴き出しによる外観の劣化が生じにくいため、良好な外観と食感を有している。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されない。
【0027】
(焼き菓子用ミックスの調製)
表1〜4に示す組成の焼き菓子用ミックスを調製した。ミックスの材料には以下を使用した。
HPMC(70−90):ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ユニテックフーズ(株)、ゾル−ゲル転移温度70〜90℃)
HPMC(62−68):ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ユニテックフーズ(株)、ゾル−ゲル転移温度62〜68℃)
MC(38−44):メチルセルロース(ユニテックフーズ(株)、ゾル−ゲル転移温度38〜44℃)
小麦粉:フラワー(日清製粉(株))
熱処理小麦粉:熱処理小麦粉(日清製粉(株))
α化澱粉:α化小麦でん粉(三和澱粉工業(株))
α化穀粉:α化小麦粉(フレッシュ・フード・サービス(株))
β澱粉:コーンスターチ(三和澱粉工業(株))
グルテン:小麦グルテン(日本コロイド(株))
膨張剤:ベーキングパウダー(大宮糧食工業(株))
油脂:日清サラダ油(日清オイリオグループ(株))
砂糖:グラニュー糖(日新製糖(株))
乳化剤:グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン(株))
【0028】
(たい焼きの製造)
下記材料をミキシングして液状生地を調製した。
材料 質量部
焼き菓子用ミックス 100
水 100〜120(※)
全卵 80
サラダ油 20
(※製造例13、製造例14及び比較例4では、ミックス100質量部に対する水の量はそれぞれ200質量部、250質量部及び300質量部とした。)
【0029】
たい焼き用の焼き型を加熱(170℃)して油を塗り、焼き型の片面に該液状生地を25g入れ、その上にフィリング(「マイルドモアロクリーム」(株)ソントン)を30g入れて1分30秒加熱した。並行して、もう片面に25gの該液状生地を入れて1分30秒加熱した。その後両面を合わせて更に3分30秒焼成して、たい焼きを製造した。各ミックスについて10個の鯛焼きを製造し、生地からのフィリングの噴き出しを下記基準にて評価し、平均点を求めた。
<評価基準>
5点:フィリングの噴き出しがなく、非常にきれいな外観
4点:生地の内部でフィリングの局在が見られるものの、表面へのフィリングの噴き出しはなく、きれいな外観
3点:フィリングの生地表面への噴き出しが1箇所みられるが、きれいな外観をほぼ保っている
2点:フィリングの噴き出しが複数箇所みられる
1点:フィリングが生地から激しくはみ出している
【0030】
結果を表1〜4に示す。表1に示すとおり、α化澱粉を含まない生地から製造したたい焼きでは、フィリングの噴き出しは起こらなかった(参考例)が、生地にα化澱粉を添加するとフィリングの噴き出しが起こった(比較例1〜2)。α化澱粉を含む生地でのフィリングの噴き出しは、所定量の昇温ゲル化熱可逆性ゲル化剤を添加することで改善された(表1〜4)。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】