特許第6985976号(P6985976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本フイルコン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6985976-工業用織物 図000004
  • 特許6985976-工業用織物 図000005
  • 特許6985976-工業用織物 図000006
  • 特許6985976-工業用織物 図000007
  • 特許6985976-工業用織物 図000008
  • 特許6985976-工業用織物 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985976
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】工業用織物
(51)【国際特許分類】
   D03D 1/00 20060101AFI20211213BHJP
   D03D 11/00 20060101ALI20211213BHJP
   D03D 15/60 20210101ALI20211213BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   D03D1/00 Z
   D03D11/00 Z
   D03D15/60
   D04H3/16
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-90299(P2018-90299)
(22)【出願日】2018年5月9日
(65)【公開番号】特開2019-196559(P2019-196559A)
(43)【公開日】2019年11月14日
【審査請求日】2020年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229818
【氏名又は名称】日本フイルコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】江川 徹
(72)【発明者】
【氏名】梁井 英之
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第4376455(US,A)
【文献】 特表2006−512502(JP,A)
【文献】 特開2008−13881(JP,A)
【文献】 特開2002−105825(JP,A)
【文献】 特表2012−502200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00−27/18
D04H1/00−18/04
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸を織り合わせることによって形成される工業用織物において、前記経糸及び\又は緯糸における表面側に表出するナックル部分の頂点近傍に凹凸状のエンボス柄が形成されていることを特徴とする工業用織物。
【請求項2】
前記エンボス柄が形成されている経糸及び\又は緯糸が、プラスチックモノフィラメントであることを特徴とする請求項1に記載された工業用織物。
【請求項3】
前記工業用織物が、平行又は不定方向に配列され繊維間融着される不織布の製造に使用される織物であることを特徴とする請求項1又は2に記載された工業用織物。
【請求項4】
前記エンボス柄の平面視形状が、縦筋柄、横筋柄、斜め筋柄、斜め筋交差柄、菱形柄、凹状の円形状、楕円形状、亀甲柄、傾斜した楕円形状、円形状千鳥柄又はこれらが複数配列されたものから選択されたものであり、当該エンボス柄の切込み深さが、経糸及び/又は緯糸の線径に対して1〜50%の範囲で形成されていることを特徴とする上記請求項1乃至3のいずれか一に記載された工業用織物。
【請求項5】
前記工業用織物は、正方向のグリップ性が0.25を超えて1.00以下、逆方向のグリップ性が0.26を超えて3.00以下であることを特徴とする上記請求項1乃至4のいずれか一に記載された工業用織物。
【請求項6】
前記経糸及び\又は緯糸の断面形状が、円形、四角形等の矩形状、星形等の多角形状、又は楕円形状であることを特徴とする上記請求項1乃至5のいずれか一に記載された工業用織物。
【請求項7】
工業用織物の製造方法において、経糸と緯糸を織り合わせる工程と、前記経糸及び\又は緯糸の表面側に表出するナックルの頂点近傍に熱エンボス加工によって凹凸状のエンボス柄を形成する工程とを有することを特徴とする工業用織物の製造方法。
【請求項8】
前記工業用織物を形成する経糸及び緯糸がプラスチックモノフィラメントであり、かつ前記熱エンボス加工によってエンボス柄を形成する際、温度条件がプラスチックモノフィラメントの材質のガラス転移点を超えて融点未満、圧力条件が10〜150kg/cmで加工されることを特徴とする請求項7に記載された工業用織物の製造方法。
【請求項9】
前記熱エンボス加工によって形成されたエンボス柄の平面視形状が縦筋柄、横筋柄、斜め筋柄、斜め筋交差柄、菱形柄、凹状の円形状、楕円形状、亀甲柄、傾斜した楕円形状、円形状千鳥柄又はこれらが複数配列されものから選択されたものであり、当該エンボス柄を形成する工程がエンボス柄の切込み深さを経糸及び/又は緯糸の線径に対して1〜50%の範囲になるように形成されることを特徴とする上記請求項7又は8に記載された工業用織物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布を製造する工程で使用される工業用織物(以下「工業用織物」と記載する。)に関し、特に製造の際における不織布の捲れや皺の発生を防止するのに好適な工業用織物に関する。特に不織布の製造装置の高速生産化や、また軽量な不織布の製造工程において顕著に発生するウエブの捲れや皺の発生を防止する工業用織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行する無端状の工業用織物上に繊維集合体を供給した後、当該繊維集合体(以下「ウエブ」と記載する。)を搬送しながら不織布を形成することが一般的に行われている。不織布の製法としては、非常に多くの種類が知られており、新しい技術も次々と開発されているのが現状である。
その為、不織布の製法類型を明確に分類することは困難であるが、主に繊維の結合方法によって分類すると、代表的なものとしてウエブに低融点繊維を併用したり、低融点樹脂を被覆した芯鞘型の複合繊維を使用したり、低融点パウダーを混合したウエブを工業用織物上に供給し、加熱又は超音波ウェルダーにより低融点繊維を溶融して繊維間融着を発生させ、不織布を形成するサーマルボンド製法が知られている。又、ウエブを工業用織物上に供給し、接着性樹脂を含浸した後、乾燥することにより不織布を形成するレジンボンド製法が知られている。他にケミカルボンド製法や、高圧水流で繊維を交絡させるスパンレース製法、等も知られている。
不織布の製法をウエブの供給方法によって分類すると、乾式繊維を使用する方法として、カード機を使用してウエブを供給するカーディング方式、解繊した繊維についてエアを使用して供給するエアレイド製法や、予め形成された繊維を使用せず、繊維原料から糸状に紡糸した繊維を工業用織物上に直接供給して、加熱等しながら繊維間融着させるスパンボンド製法が知られている。更に、霧状に紡糸しながら工業用織物上に供給するメルトブロー製法等も知られている。
【0003】
以下、工業用織物を例により具体的に説明をする。工業用織物に関する先行技術としては、特許文献1及び2等が挙げられる。
スパンボンド製法及びメルトブロー製法に使用される工業用織物では、織物の表面に不織布の原材料を平行又は不定方向に配列してウエブを形成し、加熱等しながら繊維間融着させることによって不織布が製造される。この際、製造される不織布が軽量であり、特に近年における不織布の高速生産において、ウエブを搬送する際に、ウエブの周囲に発生した気流によって、ウエブが浮き上がってしまい、部分的な皺が発生したり、時には端部が捲れる等の不具合が散見されていた。
【0004】
図6はスパンボンド不織布の製造工程を示す概略図である。図6に示す如く、ホッパー61より投入された原材料を、エクストルーダー62によって混合、溶融、攪拌等し、ギヤーポンプ63によって一定量の溶融原料を紡糸口金64から押出して長繊維を形成する。次に冷風に晒しながら、エジェクター65で繊維化し、ガイドロール71,72,73,74,75,76に懸掛され回転する無端状の工業用織物70上に捕集し、工業用織物70の裏側から空気を吸引することによってウエブが形成される。ウエブは加熱されたコンパクションロール66及びカレンダーロール67によって加圧・ボンディングされてシート状の不織布SBとなり、巻取り装置68によってロール状の原反が形成される。 ここで不織布SBは長繊維不織布であり、紙おむつや生理用品等の衛生材料から、生活資材、車両資材、土木・建築資材、農業資材等、幅広い用途に使用されている。又、近年における不織布SBは、不織布の中でも比較的に薄く、かつ軽量であるため、製造装置の高速生産に伴ってより、捲れや皺の問題が顕著に発生し易いという問題がある。特にコンパクションロール66通過後にウエブの一部若しくは端部又は全体が浮き上がってしまう。又、スパンボンド不織布に皺が発生すると最終製品の品質低下を招く。このような不織布の製造工程における問題点は、生産性及びランニングコストに多大な影響を及ぼしている。
【0005】
発明者は、このようなウエブの浮き上がり、捲れや皺の発生を防止するために、不織布の製造に使用される工業用織物を加工することを思いついた。そこで発明者は、工業用織物を製造した後に、工業用織物の表面に樹脂を塗布する方法を実施した。その結果、一時的には工業用織物の上に載置された不織布の捲れ等の問題は解決したものの、不織布を連続して高速製造したところ、凹凸のある工業用織物の表面から樹脂が経時的に剥離し、効果が持続しないことが分かった。又、工業用織物から剥離した樹脂が製造される不織布に混合してしまい、不織布の品質や歩留まりを低下させるという問題も発生した。
次に発明者は、工業用織物を製造した後に、工業用織物の表面を研磨し粗面化する方法も実施した。その結果、研磨によって工業用織物の表面に形成されたバリは、樹脂と同様に経時的に剥離し、又は原材料等との摩擦によって摩耗してしまい、やはり効果に持続性がないことが判明した。また、再現性や作業性にも問題が発生した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5749795号公報
【特許文献2】特許第5749796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、不織布を製造する際に発生していたウエブの捲れや浮き上がり、不織布の表面に生じる皺を防止する工業用織物を提供することを目的とする。
また本発明は、工業用織物としての剛性を保持しつつウエブ形成工程におけるウエブの浮き上がりや、捲れ及び皺の発生を長期間防止する工業用織物を提供することを目的とする。
更に本発明は、ウエブとの密着性(以下「グリップ性」と記載する。)を必要以上に強くすることなく、ウエブ形成工程から次の工程へ受け渡す際にウエブを円滑に離すことができ、適切なグリップ性を発生し得る工業用織物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために以下の構成を採用した。
(1)経糸と緯糸を織り合わせることによって形成される工業用織物において、前記経糸及び\又は緯糸における表面側に表出するナックル部分の頂点近傍に凹凸状のエンボス柄が形成されていることを特徴とする工業用織物である。
本発明は、経糸及び\又は緯糸における表面側に表出するナックル部分の頂点近傍に凹凸状のエンボス柄が形成されていることに特徴がある。例えば、経糸及び緯糸のナックル部分以外にも凹凸が形成されていると、グリップ性が強くなりすぎるという問題があり、次の工程へ受け渡す際にウエブが円滑に離れなくなる問題が発生する。本発明は、このような問題点を解決し、ウエブを必要な場合にのみグリップし、次の工程へ受け渡す際にウエブを円滑に受け渡す事ができる。
ここで凹凸状のエンボス柄とは、経糸及び\又は緯糸の表面に形成された凹凸模様のことをいう。具体的には、縦筋柄、横筋柄、斜め筋柄(斜め筋交差柄)、菱形柄、凹状の楕円形状、傾斜した楕円形状が斜め方向に複数整列したもの等をいう。
【0009】
(2)前記エンボス柄が形成されている経糸及び\又は緯糸が、プラスチックモノフィラメントであることを特徴とする上記(1)に記載された工業用織物である。
本発明に係る工業用織物を形成する糸の形態としては、工業用織物は張力が経糸方向にかけられて使用されることから、モノフィラメントが好ましい。
本発明に係る工業用織物を形成するプラスチックモノフィラメントは、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン等によって製造することが使用できる。もちろん、共重合体やブレンド品、さらにこれらの材質に目的に応じてさまざまな物質を含有させた糸を使用しても良い。また、本発明に使用されるプラスチックモノフィラメントには、モノフィラメントの表層部と内部で材質の異なる材料を使用した芯鞘構造の糸等が含まれる。
糸の断面形状も円形だけでなく四角形等の矩形状や星形等の多角形状の糸や楕円形状等の糸が使用できる。
(3)前記工業用織物が、平行又は不定方向に配列され加熱等しながら繊維間融着させる不織布の製造に使用される織物であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載された工業用織物である。
【0010】
(4)前記エンボス柄の平面視形状が、縦筋柄、横筋柄、斜め筋柄、斜め筋交差柄、菱形柄、凹状の円形状、楕円形状、亀甲柄、傾斜した楕円形状、円形状千鳥柄又はこれらが複数配列されたものから選択されたものであり、当該エンボス柄の切込み深さが、経糸及び/又は緯糸の線径に対して1〜50%の範囲で形成されていることを特徴とする上記請求項1乃至3のいずれか一に記載された工業用織物である。
エンボス柄の切込み深さは、糸径の1〜50%で形成される。1%未満では、グリップ性が弱く、50%を超えると糸の強度が低下することに加えて、不織布のグリップ性が強くなり、次の工程へ受け渡す際にウエブが円滑に離れなくなる問題が発生する。特に好ましい切込みの深さは4.0〜23.0%の範囲である。
【0011】
(5)前記工業用織物は、正方向のグリップ性が0.25を超えて1.00以下、逆方向のグリップ性が0.26を超えて3.00以下であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれか一に記載された工業用織物である。
ここで正方向又は逆方向のグリップ性とは、引張試験機AG−IS(島津製作所社製)を使用して、エンボス柄が形成されている工業用織物上に載置された不織布の静摩擦係数を測定した結果である。具体的には、0.2kgの錘を乗せて、正方向(エンボス加工機に通した方向(以下「加工方向」と記載する。)と同方向)及び逆方向(加工方向と逆方向)に不織布を引張り、各方向でそれぞれ3回測定し、平均値を算出した結果である。
当該工業用織物を製作する際は、不織布製造装置における工業用織物の進行方向に、正方向又は逆方向のグリップ性を測定した結果の内、数値の低い加工方向を合わせて製作することで、ウエブ形成工程でのウエブの浮き上がりを防止し、次の工程への円滑な受け渡しが可能となる。
正方向のグリップ性が0.25以下、又、逆方向のグリップ性が0.26以下の場合は、ウエブの浮き上がりや、捲れ及び皺の発生を十分に防止できない懸念がある。一方、正方向のグリップ性が1.00を超える場合、又、逆方向のグリップ性が3.00を超える場合は、ウエブ形成工程から次の工程へ受け渡す際に不織布を円滑に離すことができない懸念がある。
(6)前記経糸及び\又は緯糸の断面形状が、円形、四角形等の矩形状、星形等の多角形状、又は楕円形状であることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれか一に記載された工業用織物である。
(7)工業用織物の製造方法において、経糸と緯糸を織り合わせる工程と、前記経糸及び\又は緯糸の表面側に表出するナックルの頂点近傍に熱エンボス加工によって凹凸状のエンボス柄を形成する工程とを有することを特徴とする工業用織物の製造方法である。
【0012】
(8)前記工業用織物を形成する経糸及び緯糸がプラスチックモノフィラメントであって、かつ前記熱エンボス加工によってエンボス柄を形成する際、温度条件がプラスチックモノフィラメントの材質のガラス転移点を超えて融点未満、圧力条件が10〜150kg/cmで加工されることを特徴とする上記(7)に記載された工業用織物の製造方法である。
以下、プラスチックモノフィラメントの材質がポリエチレンテレフタレートの場合を例に具体的に説明する。ポリエチレンテレフタレートの代表的なガラス転移点は69℃、融点は267℃である。温度条件がガラス転移点以下の場合、プラスチックモノフィラメントの軟化が不十分であるため工業用織物の表面に十分に凹凸形状を形成できない。一方温度条件が融点を超えるとプラスチックモノフィラメントが融解し、工業用織物の形態を維持できない。前記観点から、温度条件は100℃を超えて250℃未満(より好ましくは120℃を超えて200℃未満)が好ましい。
また本発明は、圧力条件10〜150kg/cmによって加工することが好ましい。ここで圧力条件10kg/cm未満の場合、工業用織物の表面に十分に凹凸形状を形成できない。一方圧力条件150kg/cmを超えると、工業用織物が過加工によって網厚が薄くなってしまう。又、網目が潰れ、通気度が低下してしまう。前記観点から、圧力条件20〜100kg/cmがより好ましい。特に好ましい圧力条件が24〜71kg/cmである。
【0013】
(9)前記熱エンボス加工によって形成されたエンボス柄の平面視形状が縦筋柄、横筋柄、斜め筋柄、斜め筋交差柄、菱形柄、凹状の楕円形状、亀甲柄、傾斜した楕円形状、円形状千鳥柄又はこれらが複数整列されたものから選択されたものであり、当該エンボス柄を形成する工程がエンボス柄の切込み深さを経糸及び/又は緯糸の線径に対して1〜50%の範囲になるように形成されることを特徴とする上記(7)又は(8)に記載された工業用織物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る工業用織物を採用することによって、不織布を製造する際に発生していたウエブの捲れの発生や浮き上がり、不織布の表面に生じる皺の発生を防止するという優れた効果を奏する。
また本発明に係る工業用織物を採用することによって、工業用織物としての剛性を保持しつつウエブ形成工程におけるウエブの浮き上がりや、捲れ及び皺の発生を長期間防止する優れた効果を提供することができる。
更に本発明に係る工業用織物を採用することによって、ウエブとのグリップ性を必要以上に強くすることなく、ウエブ形成工程から次の工程へ受け渡す際にウエブを円滑に離すことができ、適切なグリップ力を発生し得るという顕著な効果を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1に係る工業用織物に関する平面図である。
図2】本発明の実施形態2に係る工業用織物に関する平面図である。
図3】本発明の実施形態3に係る工業用織物に関する平面図である。
図4】本発明の実施形態4に係る工業用織物に関する部分的な斜視図である。
図5】本発明の実施形態5に係る工業用織物に関する経糸の構成を示す断面図である。
図6】スパンボンド不織布の製造工程を示す概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に則して本発明に係る工業用織物の実施形態を説明する。ただし、以下の記載は本発明の例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
実施形態1
図1に示す如く、本発明の実施形態1に係る工業用織物10は、経糸1と緯糸2を織り合わせることによって形成される工業用織物である。本実施形態1に係る工業用織物は、経糸1の表面側に表出するナックル部分の頂点近傍Tにのみ凹状のエンボス柄7が形成されている。かかるエンボス柄7は、横筋状に形成されている。
このようなエンボス柄7を形成することによって、本実施形態1に係る工業用織物10の上にウエブを載置しても、不織布の当接面がエンボス柄に引掛かることによって、浮き上がりを防止することができる。その結果、ウエブの表面に生じる皺の発生を抑止することができる。又、不織布の端部における捲れの発生を抑止することができる。更に、ウエブ形成工程から次の工程に、ウエブを受け渡す際、必要以上にウエブの当接面がエンボス柄に引掛かることがないため、円滑に次の工程に不織布を受け渡すことができる。
なお、実施形態1に係る工業用織物を構成する経糸及び緯糸は、ポリエチレンテレフタレートによって形成されている。
【0017】
実施形態1に係る工業用織物におけるエンボス柄を形成する方法は、凸状体を有するエンボスロールに、工業用織物を押圧することによって行う。押圧は、温度条件180℃、圧力条件90kg/cmによって加工される。
このような条件下で、凸状体を有するエンボスロールに工業用織物を押圧することによって、横筋柄における1〜50%の切込み深さを有するエンボス柄を形成することができる。
【0018】
実施形態2
図2に示す如く、本発明の実施形態2に係る工業用織物20は、経糸11と緯糸12を織り合わせることによって形成される工業用織物である。本実施形態2に係る工業用織物は、経糸11の表面側に表出するナックル部分の頂点近傍Tにのみ凹状のエンボス柄17が形成されている。かかるエンボス柄17は斜め筋交差柄に形成されている。
このようなエンボス柄17を形成することによって、本実施形態2に係る工業用織物20の上にウエブを載置しても、浮き上がりを防止することができる。その結果、ウエブの表面に生じる皺の発生や、端部における捲れの発生を抑止することができる。更に、円滑にウエブ形成工程から次の工程にウエブを受け渡すことができる。
なお、実施形態2に係る工業用織物20を構成する経糸11及び緯糸12は、ポリアミドによって形成されている。
【0019】
実施形態3
図3に示す如く、本発明の実施形態3に係る工業用織物30は、経糸21と緯糸22を織り合わせることによって形成される工業用織物である。本実施形態3に係る工業用織物は、経糸21の表面側に表出するナックル部分の頂点近傍Tにのみ凹状のエンボス柄27が形成されている。かかるエンボス柄27は、円形状を千鳥配置した円形状千鳥柄に形成されている。
このようなエンボス柄27を形成することによって、本実施形態3に係る工業用織物30の上にウエブを載置しても、浮き上がりを防止することができる。その結果、ウエブの表面に生じる皺の発生や、端部における捲れの発生を抑止することができる。更に、円滑にウエブ形成工程から次の工程に不織布を受け渡すことができる。
なお、実施形態3に係る工業用織物30を構成する経糸21及び緯糸22は、ポリフッ化ビニリデンによって形成されている。
【0020】
実施形態4
図4に示す如く、本発明の実施形態4に係る工業用織物40は、経糸31と緯糸32を織り合わせることによって形成される工業用織物である。本実施形態4に係る工業用織物40は、経糸31及び緯糸32の表面側に表出するナックル部分の頂点近傍Tにのみ凹状のエンボス柄37が形成されている。かかるエンボス柄37は、斜め筋交差柄に形成されている。
このようなエンボス柄37を形成することによって、本実施形態4に係る工業用織物40の上にウエブを載置しても、浮き上がりを防止することができる。その結果、ウエブの表面に生じる皺の発生や、端部における捲れの発生を抑止することができる。更に、円滑にウエブ形成工程から次の工程に不織布を受け渡すことができる。
なお、実施形態4に係る工業用織物40を構成する経糸31及び緯糸32は、ポリエチレンテレフタレート及び芯鞘構造のカーボン糸によって形成されている。
【0021】
実施形態5
図5に示す如く、本発明の実施形態5に係る工業用織物は、経糸41と緯糸42を織り合わせることによって形成される工業用織物である。本実施形態5に係る工業用織物は、経糸41と緯糸42を平織して構成されている。本実施形態5に係る工業用織物は、経糸41の表面側に表出するナックル部分の頂点近傍にのみ凹状のエンボス柄47が形成されている。
このようなエンボス柄47を形成することによって、本実施形態5に係る工業用織物の上に不織布を載置しても、浮き上がりを防止することができる。その結果、ウエブの表面に生じる皺の発生や、端部における捲れの発生を抑止することができる。更に、円滑にウエブ形成工程から次の工程に不織布を受け渡すことができる。
なお、実施形態5に係る工業用織物を構成する経糸41及び緯糸42は、ポリエチレンテレフタレートによって形成されている。
【0022】
実施例
以下、本発明の工業用織物について実施例を説明する。
経糸と緯糸を平織にて織り合わせることによって二重織の工業用織物を製造した。かかる工業用織物において、前記経糸における表面側に表出するナックル部分の頂点に凹凸状のエンボス柄を形成した。
実施例1〜7の工業用織物に係るエンボス柄は、円形状を千鳥配置した円形状千鳥柄であり、実施例8〜13の工業用織物に係るエンボス柄は、横筋柄である。なお、参考例の工業用織物にはエンボス加工が施されていない。
下記における送り速度、温度、加圧力は、製造した経糸の表面側に表出するナックル部分の頂点にエンボス柄を形成するエンボス加工における、加工条件のことである。温度は160〜200℃の範囲で設定し、加圧力は24〜95kg/cmの範囲で設定し、送り速度は4〜10m/minの範囲で設定した。各実施例における加工条件は、表1に示す如く設定されていた。
経糸は、ポリエチレンテレフタレートによって形成された糸と、芯鞘構造のカーボン系の糸とがある。経糸の線径は0.4mmであるのに対して、ポリエチレンテレフタレートにおける円形状千鳥柄の切込み深さは、約0.016mm(線径比4.0%)、カーボン系は0.075mm(線径比19%)である。
一方、横筋柄のポリエチレンテレフタレートにおける切込み深さは、約0.057mm(線径比14%)、カーボン系は0.057mm(線径比14%)である。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】

【0025】
表1及び表2に明らかなように、参考例に比較して、いずれの実施例に係る工業用織物にも一定のグリップ性が表れている。特に好ましいグリップ性については、実施例7〜13の工業用織物に顕著に表れた。特に実施例8〜13の工業用織物に形成されているエンボス柄は横筋柄であった。
実施例7の工業用織物については、通気度、グリップ性(正方、逆方)とも優れているが、網厚における参考例に対する減少率が7.3%である。網厚は大幅な減少がないものほど良品と思料される。
実施例1〜6の工業用織物については、実施例7〜13の織物に比較してグリップ性等の点で劣っている。特に実施例4は通気度の観点で劣っている。又、実施例1〜6はいずれもグリップ性(正方向)において劣っている。又、実施例2〜4はグリップ性(逆方向)においても劣っている。網厚の減少率においては、実施例4のものが特に劣っている。
又、これらの工業用織物を不織布製造装置に使用したところ、いずれもウエブの浮き上がりや、捲れ及び皺の発生は発生しなかった。又、ウエブ形成工程から次の工程へ受け渡しにおいても、特に問題は発生しなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6