(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記亀裂形状取得部は、前記亀裂の開き具合または前記ずれ幅の少なくとも何れかに加え、前記亀裂の長さ、タイヤ径方向に対する前記亀裂の延在方向の角度を、前記亀裂の形状として取得する請求項1に記載のタイヤ状態推定システム。
前記寿命予測部は、推定された前記亀裂の深さと、前記亀裂の位置における前記タイヤのゲージとに基づいて、前記タイヤの寿命を予測する請求項5に記載のタイヤ状態推定システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0013】
(1)タイヤ状態推定システムの全体概略構成
図1は、本実施形態に係るタイヤ状態推定システム10の全体概略構成図である。
図1に示すように、タイヤ状態推定システム10は、端末装置60、携帯端末100及びタイヤ情報管理サーバ200によって構成される。端末装置60、携帯端末100及びタイヤ情報管理サーバ200は、通信ネットワーク40を介して接続される。
【0014】
建設車両20は、鉱山などの不整地を走行する車両である。具体的には、建設車両20は、大型のダンプトラックである。建設車両20は、無線通信機能を有し、通信ネットワーク40を介してタイヤ状態推定システム10と接続できる。
【0015】
建設車両20には、タイヤ21及びタイヤ22が装着される。タイヤ21は、前輪位置に装着され、タイヤ22は後輪位置に装着される。なお、後輪の構成は、ダブルタイヤであってもよい。
【0016】
建設車両20は、不整地を走行するため、路面R(
図1において不図示、
図2参照)上の鋭利な石などによって、タイヤサイド部21a(
図2参照)にカット傷(亀裂)が生じ易い。特に、車両装着時外側のタイヤサイド部21aに亀裂が生じ易い。
【0017】
作業員50は、建設車両20の運行に携わる。具体的には、作業員50は、建設車両20に装着されているタイヤ21及びタイヤ22の状態を管理し、タイヤ交換または修理の必要性に応じた作業を実行する。作業員50は、端末装置60及び携帯端末100を利用できる。
【0018】
端末装置60は、典型的には、鉱山などの現場管理事務所(バックヤード)に配置されるパーソナルコンピュータによって実現される。端末装置60は、タイヤ情報管理サーバ200が管理するタイヤ情報の検索及び取得などに用いられる。
【0019】
携帯端末100は、典型的には、移動通信ネットワーク(PLMN)に接続可能なスマートフォンまたはタブレット端末などの携帯可能な通信端末によって実現される。携帯端末100は、端末装置60と同様に、タイヤ情報管理サーバ200が管理するタイヤ情報の検索及び取得などに用いられる。
【0020】
タイヤ情報管理サーバ200は、タイヤ21及びタイヤ22に関連する情報を管理する。具体的には、タイヤ情報管理サーバ200は、建設車両20の種別、タイヤ21、タイヤ22及びリムホイール30(
図1において不図示、
図2参照)のサイズ、設定情報(荷重に応じた設定内圧など)、及びタイヤ21、タイヤ22及びリムホイール30の使用履歴(走行時間、走行距離、着脱有無など)を保持している。
【0021】
また、タイヤ情報管理サーバ200は、端末装置60または携帯端末100からの入力に応じて、当該使用履歴などを更新する。
【0022】
特に、本実施形態では、タイヤ情報管理サーバ200は、タイヤ21及びタイヤ22の外側表面に生じた亀裂の状態に基づいて、前記タイヤの寿命を予測する。
【0023】
図2は、タイヤ21の単体側面図である。
図2に示すように、タイヤ21は、リムホイール30に組み付けられる。なお、タイヤ22もタイヤ21と同様に、リムホイール30に組み付けられる。
【0024】
リムホイール30は、建設車両20の仕様に対応した所定の径方向サイズ(例えば、63インチ)を有する。リムホイール30の外周部分は、リムフランジ部31が形成される。リムフランジ部31の形状(大きさ)は、リムホイール30の仕様に応じて異なる。
【0025】
径方向サイズとは、リムホイール30の中心CTからリムホイール30の径方向外側端までの直線距離の2倍の距離(直径)であり、リムフランジ部31は含まれない。
【0026】
タイヤ21の外径は、リムホイール30の径方向サイズと、タイヤサイド部21aの径方向サイズとを合計したサイズとなる。タイヤサイド部21aとは、タイヤ21のビード部(不図示)のタイヤ径方向内側端から、タイヤ21のトレッド部(不図示)のタイヤ幅方向における路面Rとの接地端までを意味する。
【0027】
但し、タイヤ21の側面視において撮像可能な範囲は、タイヤサイド部21aと解釈しても構わない。
【0028】
(2)タイヤ状態推定システムの機能ブロック構成
次に、タイヤ状態推定システム10の機能ブロック構成について説明する。具体的には、タイヤ情報管理サーバ200の機能ブロック構成について説明する。
【0029】
図3は、タイヤ情報管理サーバ200の機能ブロック構成図である。
図3に示すように、タイヤ情報管理サーバ200は、画像データ取得部210、入力情報取得部220、亀裂情報DB230、亀裂形状取得部240、亀裂深さ推定部250及び寿命予測部260を備える。
【0030】
画像データ取得部210は、タイヤ21(及びタイヤ22、以下同)を撮像した画像データを取得する。本実施形態では、画像データ取得部210は、作業員50が携帯端末100に実装されているカメラ機能を用いてタイヤ21の外側表面を撮像した画像データを、通信ネットワーク40を介して取得する。
【0031】
また、画像データ取得部210は、静止画データに限らず動画データを取得してもよい。
【0032】
入力情報取得部220は、作業員50によって入力される情報を取得する。具体的には、入力情報取得部220は、作業員50が目視によって認識したタイヤ21の外側表面に生じた亀裂C(
図7参照)の形状を示す情報を取得する。
【0033】
当該情報としては、亀裂Cの長さ、幅(開き具合)、ずれ幅、位置及び角度(方向)などが挙げられる。作業員50は、これらの情報を、定規などの計測機器を用いて測定してもよいし、当該測定機器を代替可能なアプリケーションがインストールされた携帯端末100を用いて測定してもよい。
【0034】
亀裂情報DB230は、タイヤ21の外側表面に生じる亀裂Cに関する情報(亀裂情報)によって構成されるデータベースである。本実施形態において、亀裂情報DB230は、亀裂情報保持部を構成する。
【0035】
具体的には、亀裂情報DB230は、亀裂Cの外側表面の形状などと、亀裂Cの深さ(
図8の深さD参照)との対応関係を示す各種データを保持する。なお、亀裂Cの深さとは、タイヤ21(タイヤサイド部21a)の外側表面の位置から、最もタイヤ内面側に位置する亀裂Cの深さ方向における先端までの距離である。
【0036】
特に、亀裂情報DB230は、当該外側表面における亀裂Cの形状に基づく亀裂Cの開き具合(
図8の幅W参照)またはずれ幅(
図9のずれ幅S参照)の少なくとも何れかと、亀裂Cの深さとが対応付けられた対応関係を保持する。
【0037】
図5は、亀裂情報DB230によって保持される亀裂Cの開き具合と、亀裂Cの深さとの対応関係の例をグラフ化した図である。
図5に示す対応関係231aでは、亀裂Cの開き具合(横軸)と、亀裂Cの深さ(縦軸)とが対応付けられている。
【0038】
具体的には、対応関係231aの曲線Aは、タイヤ21の路面Rとの接地部分近傍、かつタイヤサイド部21aのタイヤ最大幅部分付近に亀裂Cが位置する場合における開き具合と深さの関係を示している。一方、曲線Bは、タイヤ21の路面Rとの接地部分及びタイヤ最大幅部分付近から外れた領域に亀裂Cが位置する場合における開き具合と深さの関係を示している。
【0039】
つまり、路面Rとの接地部分近傍、かつタイヤ最大幅部分付近では、建設車両20の荷重によってタイヤサイド部21aが撓むため、亀裂Cの開き具合が大きくなり易く、一方で、亀裂Cの深さは浅くなり易い。
【0040】
逆に、路面Rとの接地部分及びタイヤ最大幅部分付近から外れた領域では、接地部分近傍ほどタイヤサイド部21aが撓まないため、亀裂Cの開き具合が小さくなり易く、一方で、亀裂Cの深さは深くなり易い。
【0041】
亀裂情報DB230は、対応関係231a以外にも、タイヤサイド部21aのおける亀裂Cの位置、ずれ幅、タイヤサイド部21aの撓み量などに応じた複数の対応関係(
図5に示す対応関係231b, 対応関係231c)を保持することができる。
【0042】
なお、
図5では、便宜上、対応関係231a〜231cのみが図示されているが、実際には、亀裂Cの位置及び形状に応じた多数の開き具合またはずれ幅−亀裂Cの深さの対応関係を特定可能なデータが保持される。
【0043】
また、当該データは、データベース形式で保持されてもよいし、回帰方程式として保持されていてもよい。さらに、当該データは、過去における実際の開き具合またはずれ幅−亀裂Cの深さの対応関係に基づいて生成されてもよいし、有限要素法(FEM)などを用いたシミュレーション結果に基づいて生成されてもよい。
【0044】
また、
図5に示した例では、直線状(タイヤ21の側面視からの形状)の亀裂Cをベースとして、開き具合と深さとの対応関係が作成されているが、亀裂Cの形状が直線状でない場合、多項式を用いて当該形状に近似させ、当該多項式の係数に応じた開き具合と深さとの対応関係を作成すればよい。
【0045】
ここで、
図10は、多項式を用いて非直線状の亀裂Cの形状に近似させる処理の説明図である。
図10に示すように、亀裂Cは、直線状でなく、湾曲している。このような亀裂Cの場合、亀裂Cの幅方向における中心線CLを離散化し、複数の端点Pを設定する。端点P間の直線を多項式で近似させる。亀裂情報DB230は、当該多項式の係数、及び当該直線の切片と亀裂Cの深さとの対応関係を保持する。
【0046】
亀裂形状取得部240は、タイヤ21の外側表面における亀裂Cの形状を取得する。具体的には、亀裂形状取得部240は、画像データ取得部210によって取得された画像データ、または入力情報取得部220によって取得された亀裂Cのサイズなどを含む亀裂情報に基づいて、亀裂Cの形状を特定する。
【0047】
なお、亀裂形状取得部240は、過去に取得した複数の画像データに含まれる亀裂Cの形状の相関分析結果を、亀裂Cの形状の特定に用いてもよい。
【0048】
より具体的には、亀裂形状取得部240は、亀裂Cの開き具合(幅W)またはずれ幅Sの少なくとも何れかを取得する。
【0049】
また、亀裂形状取得部240は、開き具合またはずれ幅Sに加え、亀裂Cの長さ(
図7の長さL参照)、タイヤ径方向に対する亀裂Cの延在方向の角度(
図7の角度θ)を、亀裂Cの形状として取得することができる。
【0050】
さらに、亀裂形状取得部240は、亀裂Cのタイヤ周方向及びタイヤ径方向における位置を、亀裂Cの形状としてさらに取得すること、及び亀裂Cの位置におけるタイヤサイド部21aの撓み量を亀裂Cの形状としてさらに取得することができる。
【0051】
亀裂深さ推定部250は、亀裂形状取得部240によって取得された亀裂Cの形状と、亀裂情報DB230によって保持される対応関係231a〜231cとに基づいて、亀裂Cの深さを推定する。
【0052】
具体的には、亀裂深さ推定部250は、亀裂Cの形状を特定し、亀裂情報DB230に保持されている複数の対応関係231a〜231cのうち、亀裂Cの位置などに応じて、最適な対応関係を選択する。
【0053】
さらに、亀裂深さ推定部250は、選択した対応関係に基づいて、開き具合(幅W)またはずれ幅Sの値から、亀裂Cの深さの値を導出する。亀裂深さ推定部250は、導出された深さの値を、亀裂Cの深さとして用いる。
【0054】
なお、ずれ幅Sは、タイヤ21(具体的には、タイヤサイド部21a)を単純に撮像した画像データからは検出が難しいが、タイヤサイド部21aに予めマーキング(
図9のマークMK参照)、シール或いは細かい凹凸などを付与しておくことによって検出が可能となる。つまり、このようなマークMKと亀裂Cとを含む画像データを解析(例えば、画像相関法)することによって、ずれ幅Sを検出できる。
【0055】
ずれ幅Sとは、端的には、亀裂C周辺のせん断変形の量であり、開き具合(幅W)を代替できる。つまり、ずれ幅Sは、亀裂Cの深さを推定する場合において、開き具合と並ぶ重要な情報である。
【0056】
また、亀裂深さ推定部250は、亀裂Cが非直線状の場合(
図10参照)、上述した多項式の係数、及び亀裂Cの開き具合(幅W)またはずれ幅Sと亀裂Cの深さとの対応関係に基づいて、亀裂Cの深さを推定する。
【0057】
或いは、亀裂深さ推定部250は、亀裂Cが非直線状の場合、亀裂Cの形状を直線に近似させ、近似させた直線状の亀裂Cに応じた適切な亀裂Cの開き具合(幅W)またはずれ幅Sと亀裂Cの深さとの対応関係に基づいて、亀裂Cの深さを推定する。
【0058】
また、亀裂深さ推定部250は、直線に近似させる場合、亀裂Cの延在方向の角度を決定するため、亀裂Cの外接四角形の長辺の角度を使用する方法、または亀裂Cの最小二乗法による楕円近似の長軸の角度を使用する方法を用いることができる。
【0059】
寿命予測部260は、亀裂深さ推定部250によって推定された亀裂Cの深さに基づいて、タイヤ21の寿命(余寿命)を予測する。
【0060】
具体的には、寿命予測部260は、亀裂Cの形状と、タイヤ21の余寿命との関係を示す過去データの相関分析を用いて、タイヤ21の寿命を予測することができる。
【0061】
また、寿命予測部260は、亀裂Cの形状を用いて、FEM解析またはモデル実験などのシミュレーションを実行することによって、タイヤ21の寿命を予測することもできる。なお、亀裂深さ推定部250によって亀裂Cの深さが推定されているため、例えば、上述した特許4708759号公報に記載されているシミュレーション方法を用いて、タイヤ21の寿命を予測してもよい。
【0062】
或いは、寿命予測部260は、上述した相関分析と、シミュレーションとを組み合わせて、タイヤ21の寿命を予測してもよい。
【0063】
また、より平易な方法として、寿命予測部260は、推定された亀裂Cの深さと、亀裂Cの位置におけるタイヤのゲージ(ゴム厚さ)とに基づいて、タイヤ21の寿命を予測してもよい。
【0064】
具体的には、寿命予測部260は、亀裂Cの深さに基づいて、亀裂Cの深さ方向における先端から、タイヤ21の使用限界ゲージ(例えば、10mm厚)、或いはカーカスプライまでの残ゲージの量(ゴム厚さ)に基づいて、タイヤ21の余寿命を予測する。
【0065】
寿命予測部260は、予測したタイヤ21の寿命に関する情報(余寿命の時間数、使用限界に到達する予定日など)を端末装置60または携帯端末100に通知することができる。
【0066】
(3)タイヤ状態推定システムの動作
次に、上述したタイヤ状態推定システム10の動作について説明する。具体的には、タイヤ21の外側表面に生じた亀裂の深さを推定し、タイヤ21(及びタイヤ22)の寿命を予測する動作について説明する。
【0067】
図4は、タイヤ情報管理サーバ200による亀裂の深さ推定に基づくタイヤ寿命の予測動作フローを示す。
【0068】
図4に示すように、タイヤ情報管理サーバ200は、亀裂Cを含む画像データ、または作業員50によって入力された亀裂Cの形状を示す情報を用いて、亀裂Cの長さL及び開き具合(幅W)を取得する(S10)。
【0069】
ここで、
図6は、複数の亀裂を有するタイヤ21の外側表面の画像データ例を示す。
図7は、亀裂Cを含むタイヤサイド部21aの一部拡大図である。
【0070】
タイヤ情報管理サーバ200は、
図6に示したような画像データに含まれる特定の亀裂を対象として、長さL及び開き具合(幅W)を取得する。なお、特定の亀裂は、作業員50によって手動で選択されてもよいし、条件(例えば、亀裂の面積など)に合致する亀裂が、画像処理によって自動的に選択されてもよい。この結果、
図7に示す亀裂Cが選択される。
【0071】
タイヤ情報管理サーバ200は、亀裂Cの位置を特定する(S20)。具体的には、タイヤ情報管理サーバ200は、タイヤ周方向における亀裂Cの位置、及びタイヤ径方向における亀裂Cの位置を特定する。
【0072】
次いで、タイヤ情報管理サーバ200は、亀裂Cの長さL、開き具合(幅W)、及び位置に基づいて、亀裂Cの深さDを推定する(S30)。
【0073】
具体的には、タイヤ情報管理サーバ200は、上述したように、亀裂Cの形状と、対応関係231a〜231c(
図5参照)の何れかとに基づいて、亀裂Cの深さを推定する。
【0074】
ここで、
図8は、亀裂Cの断面形状を模式的に示す。具体的には、
図8は、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に沿ったタイヤサイド部21aにおける亀裂Cの断面形状を示す。
【0075】
図8に示すように、亀裂Cは、タイヤ内面(カーカスプライ側)に向けて(図中の点線矢印参照)、深さDを有する。亀裂Cの深さ方向における先端が、使用限界ゲージ量、或いはカーカスプライまで到達すると、タイヤ21は建設車両20に装着して使用に供することが難しくなり、寿命を迎える。
【0076】
タイヤ情報管理サーバ200は、推定した亀裂Cの深さDに基づいて、タイヤ21の寿命を予測する(S40)。具体的には、タイヤ情報管理サーバ200は、上述したように、亀裂Cの形状と、タイヤ21の余寿命との関係を示す過去データの相関分析、FEM解析またはモデル実験などのシミュレーション、またはこれらの組み合わせなどに基づいて、タイヤ21の寿命を予測する。
【0077】
或いは、タイヤ情報管理サーバ200は、推定された亀裂Cの深さと、亀裂Cの位置におけるタイヤのゲージ(ゴム厚さ)とに基づいて、タイヤ21の寿命を予測してもよい。
【0078】
また、タイヤ情報管理サーバ200は、予測したタイヤ21の寿命に関する情報(余寿命の時間数、使用限界に到達する予定日など)を端末装置60または携帯端末100に通知する。
【0079】
なお、上述した動作フローでは、深さDを推定するために、亀裂Cの開き具合(幅W)が用いられていたが、開き具合に代えて、ずれ幅Sが用いられてもよい。
【0080】
図9は、ずれ幅Sを用いて亀裂Cの深さを推定する場合におけるタイヤサイド部21aの一部拡大図(画像データ)である。
【0081】
図9に示すように、亀裂Cのずれ幅S、つまり、亀裂C周辺のせん断変形の量を検出できるようにするため、タイヤサイド部21aには、所望の箇所に、方形状のマークMKが予め設けられている。その後、マークMKの部分に重複するように亀裂Cが生じる(但し、亀裂Cの近傍にマークMKが存在していれば、ずれ幅Sは検出可能)と、タイヤ情報管理サーバ200は、亀裂C及びマークMKを含む画像データを解析し、ずれ幅Sを検出する。
【0082】
これにより、タイヤ情報管理サーバ200は、ずれ幅Sに基づいて亀裂Cの深さDを推定する。なお、当該推定には、
図5に示したような対応関係、具体的には、ずれ幅Sと深さDとの対応関係が用いられる。
【0083】
(4)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。具体的には、タイヤ状態推定システム10は、亀裂Cの開き具合(幅W)またはずれ幅Sの少なくとも何れかと、亀裂Cの深さDとが対応付けられた対応関係231a〜231cを用い、亀裂Cの形状と、当該対応関係とに基づいて、亀裂Cの深さを推定する。さらに、タイヤ状態推定システム10は、推定した亀裂Cの深さDに基づいて、タイヤ21の寿命を予測する。
【0084】
このため、鉱山などの不整地を走行する建設車両20にタイヤ21が装着されており、亀裂Cの具体的な形状(深さD)を取得することが困難な場合でも、高い精度で深さDを推定でき、タイヤ21の寿命を予測することができる。
【0085】
すなわち、タイヤ状態推定システム10によれば、タイヤ21の外側表面から認識可能な亀裂Cの形状に基づいて、亀裂Cの深さを推定でき、タイヤ21の寿命を予測し得る。また、これにより、タイヤ21の故障による建設車両20の運行中断を確実に回避し得る。
【0086】
本実施形態では、タイヤ状態推定システム10(タイヤ情報管理サーバ200)は、亀裂Cの開き具合(幅W)またはずれ幅Sの少なくとも何れかに加え、亀裂Cの長さ、タイヤ径方向に対する亀裂Cの延在方向の角度θを、亀裂Cの形状として取得することができる。さらに、タイヤ状態推定システム10は、亀裂Cのタイヤ周方向及びタイヤ径方向における位置を、亀裂Cの形状として取得することもできる。
【0087】
これにより、タイヤサイド部21aにおける亀裂Cの相対的な位置及び延在方向などが特定されるため、
図5に示したような対応関係231a〜231cを細かい条件別に準備しておくことによって、さらに高精度に深さDを推定し得る。
【0088】
さらに、本実施形態では、タイヤ状態推定システム10は、亀裂Cの位置におけるタイヤサイド部21aの撓み量を亀裂Cの形状を示す情報としてさらに取得できる。タイヤサイド部21aの撓み量は、上述したように深さDを推定する上で有用であり、これにより、さらに高精度に深さDを推定し得る。
【0089】
また、本実施形態では、タイヤ状態推定システム10は、推定された深さDと、亀裂Cの位置におけるタイヤ21のゲージとに基づいて、タイヤ21の寿命を予測することもできる。このような方法は、高い処理能力を必要とせず、比較的簡易に実装できる利点がある。
【0090】
(5)その他の実施形態
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0091】
例えば、上述した実施形態では、タイヤ情報管理サーバ200は、寿命予測部260を備えていたが、寿命予測部260が必須ではない。つまり、タイヤ情報管理サーバ200は、亀裂深さ推定部250によって推定された亀裂Cの深さDを端末装置60または携帯端末100に通知してもよい。この場合、作業員50は、タイヤ情報管理サーバ200から端末装置60または携帯端末100に通知された深さDに基づいて、タイヤ21に対するメンテナンスの要否、或いはタイヤ21を継続使用可能か否かを判断すればよい。
【0092】
上述した実施形態では、亀裂Cの形状が直線状でない場合、多項式を用いて当該形状に近似させ、当該多項式の係数に応じた開き具合と深さとの対応関係を作成したが、近似の方法はこれに限定されない。例えば、フーリエ級数を用いて近似したときの各次数での係数に応じた開き具合と深さとの対応関係を作成してもよい。
【0093】
上述した実施形態では、タイヤ情報管理サーバ200が亀裂Cの深さDを推定し、タイヤ21の寿命を予測していたが、処理能力を満たすのであれば、端末装置60または携帯端末100が、当該推定及び予測を実行してもよい。或いは、一部の処理をタイヤ情報管理サーバ200が実行し、他の処理を端末装置60または携帯端末100が実行するようにしてもよい。
【0094】
つまり、タイヤ状態推定システム10全体として当該推定及び予測の処理が実行できればよく、さらに、タイヤ状態推定システム10は、通信ネットワーク上のサービスを利用して当該推定及び予測の処理の一部または全部を実行してもよい。
【0095】
上述した実施形態では、ダンプトラックを例として説明したが、他の建設車両、例えば、アーティキュレートダンプ及びホイールローダーなどであっても構わない。
【0096】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。