特許第6985981号(P6985981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985981
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20211213BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   H01L21/306 R
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 648L
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-102435(P2018-102435)
(22)【出願日】2018年5月29日
(65)【公開番号】特開2019-207940(P2019-207940A)
(43)【公開日】2019年12月5日
【審査請求日】2020年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】安藤 幸嗣
(72)【発明者】
【氏名】前川 直嗣
(72)【発明者】
【氏名】武明 励
(72)【発明者】
【氏名】安武 陽介
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 大地
【審査官】 田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−115728(JP,A)
【文献】 特開2008−218545(JP,A)
【文献】 特開2011−009300(JP,A)
【文献】 特開2015−213122(JP,A)
【文献】 特開2017−011015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置であって、
水平状態の基板の下面の中央部を吸着保持する基板保持部と、
上下方向を向く中心軸を中心として前記基板保持部を回転する基板回転機構と、
前記基板の上面または外周縁に対して処理液を供給する処理液供給部と、
前記基板保持部の周囲を囲むとともに、上端が前記基板の前記外周縁に近接する円筒状であり、前記処理液から発生するガスの前記下面近傍への回り込みを抑制する防護周壁部と、
前記基板保持部の周囲において前記基板の前記下面に近接し、前記下面を加熱する環状加熱部と、
を備え
前記環状加熱部の外周縁部が、前記防護周壁部の前記上端を含む部位を兼ねることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記防護周壁部の下側開口を閉塞する閉塞部をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部の周囲を囲む円筒状であり、上端が前記環状加熱部の内周縁部に近接する内側周壁部をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項に記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部と前記環状加熱部との間に配置される前記内側周壁部の上端に設けられ、不活性ガスを噴出するガス噴出部をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1つに記載の基板処理装置であって、
前記防護周壁部に囲まれる空間の内部に、不活性ガスを噴出するガス噴出部をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか1つに記載の基板処理装置であって、
前記防護周壁部の外側に配置され、前記防護周壁部の周囲のガスを排気する排気口をさらに備え、
前記処理液を前記基板に供給する際に、前記防護周壁部の下端が、前記排気口よりも下方に配置されることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の製造工程では、基板の表面に対して各種処理が行われる。例えば、特許文献1では、基板の上面周縁部における処理領域に薬液を供給して、当該処理領域に対してエッチング等の処理を行う基板処理装置が開示されている。当該基板処理装置では、スピンチャックにより基板が下方から吸着保持され、スピンチャックの周りには、基板の周縁部を下面側から加熱するヒーターが設けられる。基板の加熱により、薬液による基板の処理レートを向上することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−11015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の基板処理装置では、基板の回転による気流により、薬液の雰囲気が基板の下面近傍へと回り込み、基板の下面に形成された薄膜が薬液雰囲気によりエッチングされたり、変質する(汚染される)場合がある。また、薬液成分が基板の下面に付着した状態で、当該基板がフープ等に収容された場合に、当該基板に対向する他の基板に当該薬液成分が転写され、当該他の基板上の薄膜が変質する可能性もある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、処理液から発生するガスが、基板に悪影響を及ぼすことを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、基板処理装置であって、水平状態の基板の下面の中央部を吸着保持する基板保持部と、上下方向を向く中心軸を中心として前記基板保持部を回転する基板回転機構と、前記基板の上面または外周縁に対して処理液を供給する処理液供給部と、前記基板保持部の周囲を囲むとともに、上端が前記基板の前記外周縁に近接する円筒状であり、前記処理液から発生するガスの前記下面近傍への回り込みを抑制する防護周壁部と、前記基板保持部の周囲において前記基板の前記下面に近接し、前記下面を加熱する環状加熱部とを備え、前記環状加熱部の外周縁部が、前記防護周壁部の前記上端を含む部位を兼ねる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板処理装置であって、前記防護周壁部の下側開口を閉塞する閉塞部をさらに備える。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項1または2に記載の基板処理装置であって、前記基板保持部の周囲を囲む円筒状であり、上端が前記環状加熱部の内周縁部に近接する内側周壁部をさらに備える。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の基板処理装置であって、前記基板保持部と前記環状加熱部との間に配置される前記内側周壁部の上端に設けられ、不活性ガスを噴出するガス噴出部をさらに備える。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1つに記載の基板処理装置であって、前記防護周壁部に囲まれる空間の内部に、不活性ガスを噴出するガス噴出部をさらに備える。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1つに記載の基板処理装置であって、前記防護周壁部の外側に配置され、前記防護周壁部の周囲のガスを排気する排気口をさらに備え、前記処理液を前記基板に供給する際に、前記防護周壁部の下端が、前記排気口よりも下方に配置される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、処理液から発生するガスが基板の下面近傍に回り込むことを抑制することにより、当該ガスが基板に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】基板処理装置の構成を示す図である。
図2】基板処理装置の一部を拡大して示す図である。
図3】基板処理装置が基板を処理する流れを示す図である。
図4】比較例の基板処理装置を示す図である。
図5】基板の下面におけるエッチング量の測定結果を示す図である。
図6】基板処理装置の他の例を示す図である。
図7】基板処理装置のさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す図である。図1では、基板処理装置1における一部の構成を、後述の中心軸J1を含む面における断面にて示している(他の図において同様)。基板処理装置1は、基板9に処理液を供給して基板9を処理する装置である。基板処理装置1は、スピンチャック21と、スピンモータ22と、ケーシング23と、カップ部3と、処理液供給部4と、上面ガス供給部5と、加熱ユニット6と、図示省略の制御部とを備える。制御部は、基板処理装置1の全体制御を担う。
【0016】
スピンチャック21は、円板状の部材である。スピンチャック21の外径は、円板状の基板9の外径よりも小さい。スピンチャック21の上面は、水平方向に広がる。基板9は、その中心がスピンチャック21の中心軸上に位置するように、スピンチャック21の上面に載置される。スピンチャック21は、基板9の下方を向く主面92(以下、「下面92」という。)の中央部に対向する。基板9の下面92において中央部よりも外側の領域は、スピンチャック21と対向しない。スピンチャック21の上面には、図示省略の複数の吸引穴が設けられる。基板9の下面92の中央部は、複数の吸引穴により吸着保持される。このようにして、基板保持部であるスピンチャック21により、基板9が水平状態で(すなわち、水平な姿勢で)保持される。
【0017】
スピンチャック21の下面には、軸部221の上端が接続される。軸部221は、上下方向(鉛直方向)を向く中心軸J1を有する。軸部221の中心軸J1は、スピンチャック21の中心軸と一致する。基板回転機構であるスピンモータ22は、軸部221を回転することにより、スピンチャック21および基板9を、中心軸J1を中心として回転する。ケーシング23は、有蓋の円筒状であり、軸部221の下部、および、スピンモータ22を内部に収容する。ケーシング23の上面には、有蓋の円筒状である中央突出部231が設けられる。軸部221は、中央突出部231の上面から上方に突出する。図1の例では、中央突出部231の外径は、スピンチャック21の外径よりも大きい。中央突出部231の上面、および、ケーシング23の上面は水平方向に広がる。
【0018】
カップ部3は、カップ可動部31と、カップ固定部32と、カップ昇降部(図示省略)と、排気部34とを備える。カップ可動部31は、スピンチャック21の周囲を囲む略筒状である。カップ可動部31は、内側円筒部311と、外側円筒部312と、上側傾斜部313とを備える。内側円筒部311および外側円筒部312は、共に中心軸J1を中心とする円筒状の部位である。外側円筒部312の内径は、内側円筒部311の外径よりも大きく、外側円筒部312は、内側円筒部311の外周面との間に隙間を空けて、内側円筒部311の周囲を囲む。内側円筒部311の上端部、および、外側円筒部312の上端部は互いに接続する。上側傾斜部313は、内側円筒部311と外側円筒部312との接続部から中心軸J1に向かって広がる円環板状の部位である。正確には、上側傾斜部313は、中心軸J1に近づくに従って上側に位置するように僅かに傾斜する。上側傾斜部313の内周縁314は、およそ全周に亘って下方に向かって突出する。中心軸J1を中心とする径方向において、内周縁314は、スピンチャック21に保持される基板9の外周縁よりも外側に位置する。
【0019】
カップ固定部32は、ケーシング23の周囲を囲む略筒状である。カップ固定部32は、固定円筒部321と、環状底部322とを備える。固定円筒部321は、中心軸J1を中心とする円筒状の部位である。固定円筒部321の内径は、内側円筒部311の外径よりも大きく、固定円筒部321の外径は、外側円筒部312の内径よりも小さい。固定円筒部321の上部は、内側円筒部311と外側円筒部312との間の隙間に配置される。環状底部322は、固定円筒部321の下端部から中心軸J1に向かって広がる円環板状の部位である。環状底部322の内周縁は、全周に亘ってケーシング23の外周面に接続する。環状底部322には、排出管(図示省略)が設けられる。排出管は、気液排出部に接続され、環状底部322近傍におけるガスおよび液体が外部に排出される。
【0020】
カップ昇降部は、カップ可動部31を上下方向に昇降して、カップ可動部31を上位置と下位置とに選択的に配置する。図1では、上位置に配置されたカップ可動部31を実線で示し、下位置に配置されたカップ可動部31を二点鎖線で示している。後述の処理液による処理では、カップ可動部31を上位置に配置することにより、基板9から飛散する処理液がカップ可動部31の内周面により受けられる。また、基板処理装置1への基板9の搬入搬出時に、カップ可動部31が下位置に配置されることにより、カップ可動部31が外部の搬送機構と干渉することが防止される。カップ部3では、カップ可動部31が上位置と下位置との間の任意の位置に配置可能であってよい。
【0021】
排気部34は、例えばカップ可動部31に接続される。排気部34は、固定円筒部321と外側円筒部312との間の隙間、および、固定円筒部321と内側円筒部311との間の隙間を減圧することにより、カップ部3の内部(すなわち、カップ部3により周囲が囲まれる空間内)のガスを排気する。換言すると、内側円筒部311の下端と固定円筒部321との間に、環状の排気口341が設けられる。
【0022】
処理液供給部4は、ノズルヘッド41と、ヘッド移動機構42と、複数の処理液供給源431〜433とを備える。ノズルヘッド41は、複数のノズル部411〜413を備える。複数のノズル部411〜413には、弁を介して複数の処理液供給源431〜433がそれぞれ接続される。図1の例では、複数のノズル部411〜413(および複数の処理液供給源431〜433)の個数は3であるが、1、2、または、4以上であってもよい。
【0023】
処理液供給源431は、SC−1(アンモニアと過酸化水素水の混合液)を処理液としてノズル部411に供給する。処理液供給源432は、DHF(希フッ酸)を処理液としてノズル部412に供給する。処理液供給源433は、リンス液を処理液としてノズル部413に供給する。リンス液は、例えば純水である。SC−2(塩酸と過酸化水素水の混合液)や、フッ硝酸等の他の種類の処理液が、ノズル部411〜413に供給されてもよい。各ノズル部411〜413では、処理液が下方に向かって吐出される。ノズル部411〜413から吐出される処理液は、例えば液柱状であり、液滴状であってもよい。
【0024】
ヘッド移動機構42は、上下方向を向く中心軸を中心としてアーム421を回動する。アーム421の先端には、ノズルヘッド41が取り付けられており、ヘッド移動機構42によりノズルヘッド41が、水平方向に移動する。本実施の形態では、ヘッド移動機構42は、ノズルヘッド41を処理位置と待機位置とに選択的に配置する。
【0025】
処理位置では、スピンチャック21に保持される基板9の上方を向く主面91(以下、「上面91」という。)にノズルヘッド41が対向する。詳細には、処理位置に配置されたノズルヘッド41の複数のノズル部411〜413は、周方向に沿って並んだ状態で、上面91の周縁部に対向する。上面91の周縁部は、基板9の外周縁近傍の環状領域である。基板9の半径が150mmである場合、周縁部は、外周縁から幅が数mmの範囲の領域である。後述するように、複数のノズル部411〜413は、順に上面91の周縁部(正確には、ほぼ外周縁)に対して処理液を供給するため、複数のノズル部411〜413により処理液が供給される径方向の位置が同じとなるように、ヘッド移動機構42によりノズルヘッド41の位置が微調整されてもよい。待機位置では、例えばノズルヘッド41が、径方向におけるカップ部3の外側に配置される。
【0026】
上面ガス供給部5は、遮断板51と、ガスノズル52と、保持部材53と、ガス供給源54と、遮断板移動機構(図示省略)とを備える。遮断板51は、円板状の部材である。遮断板51の下面は、水平方向に広がる。保持部材53は、遮断板51と同心の円柱状の部材であり、遮断板51の上面に取り付けられる。保持部材53および遮断板51には、その中心軸の位置に貫通孔が設けられる。ガスノズル52は、当該貫通孔に挿入されて固定される。ガスノズル52の噴出口は、遮断板51の下面において開口する。
【0027】
ガスノズル52には、弁を介してガス供給源54が接続される。ガス供給源54は、不活性ガスを保護ガスとしてガスノズル52に供給する。不活性ガスは、基板9の材質、および、その表面に形成された薄膜との反応性に乏しいガスであり、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等である。他の種類の保護ガスが、ガスノズル52に供給されてもよい。ガスノズル52では、保護ガスが下方に向かって噴出される。
【0028】
遮断板移動機構は、例えばヘッド移動機構42と同様の構造を有し、遮断板51(並びに、ガスノズル52および保持部材53)を水平方向に移動する。本実施の形態では、遮断板移動機構は、遮断板51を対向位置と待機位置とに選択的に配置する。対向位置では、スピンチャック21に保持される基板9の上面91に対して、遮断板51の下面が対向する。詳細には、遮断板51が対向位置に配置された状態では、ガスノズル52が、上下方向において基板9の中心に対向する。また、遮断板51の下面は、基板9の上面91と平行であり、上面91と近接する。待機位置では、例えば遮断板51が、径方向におけるカップ部3の外側に配置される。
【0029】
後述の処理液による処理では、ガスノズル52が基板9の上面91の中心に向かって保護ガスを噴出することにより、上面91と遮断板51の下面との間の隙間を通って外側へと広がる保護ガスの流れが形成される。保護ガスの流れは、上面91の中央部から全周に亘って周縁部へと向かう。これにより、基板9の上面91において、周縁部よりも内側の領域(非処理領域)に処理液が入り込むことが防止または抑制され、当該領域が処理液から保護される。
【0030】
図2は、基板処理装置1の一部を拡大して示す図である。図1に示すように、加熱ユニット6は、環状加熱部61と、ガス供給源62と、加熱部昇降機構(図示省略)とを備える。図2に示すように、環状加熱部61は、加熱本体部611と、発熱体612とを備える。加熱本体部611は、例えば炭化ケイ素(SiC)等のセラミックにて形成される。加熱本体部611は、中心軸J1を中心とする円環状の部材であり、スピンチャック21の周囲を囲む。加熱本体部611の内径は、スピンチャック21の外径よりも大きい。加熱本体部611の上面は、水平方向に広がり、スピンチャック21に保持される基板9の下面92に平行である。加熱本体部611の外径は、基板9の外径よりも僅かに小さい。加熱本体部611の外周縁は、上下方向において基板9の周縁部と重なっている。発熱体612は、例えば、ニクロム線等の抵抗発熱体が内蔵されたヒーターである。発熱体612は、水平方向に広がる円環板状であり、加熱本体部611の内部に設けられる。発熱体612と加熱本体部611の上面との間の距離は、全周に亘ってほぼ一定である。環状加熱部61は、抵抗発熱体以外の熱源を利用するものであってもよい。
【0031】
加熱本体部611の内部には、後述する加熱ガスのガス流路613が形成される。ガス流路613は、発熱体612と加熱本体部611の下面との間において、加熱本体部611の全周に亘って設けられる。例えば、ガス流路613は、加熱本体部611を複数回周回するように一繋がりに形成される。加熱本体部611の上面における内周縁の近傍には、複数の内側噴出口614が周方向に等間隔に設けられる。また、当該上面における外周縁の近傍には、複数の外側噴出口615が周方向に等間隔に設けられる。複数の内側噴出口614および複数の外側噴出口615はガス流路613に接続される。図2の例では、各内側噴出口614は、ガス流路613の最内周の部分から上方に延びる孔部の開口であり、後述の内周縁部619に設けられる。各外側噴出口615は、ガス流路613の最外周の部分から上方に延びる孔部の開口であり、後述の外周縁部610に設けられる。
【0032】
環状加熱部61には、ガス流路613の所定位置から下方に延びるガス導入孔(図示省略)が形成される。ガス導入孔は、環状加熱部61の下面にて開口する。ガス導入孔には、弁を介してガス供給源62(図1参照)が接続される。ガス供給源62は、ガス流路613に不活性ガスを供給する。加熱本体部611を複数回周回するガス流路613において、例えば、内側噴出口614に接続される位置と外側噴出口615に接続される位置との中間に、ガス導入孔が形成される。したがって、ガス供給源62から供給される不活性ガスの一部は、ガス流路613の最内周の部分に向かって流れ、複数の内側噴出口614から噴出される。不活性ガスの残りは、ガス流路613の最外周の部分に向かって流れ、複数の外側噴出口615から噴出される。
【0033】
このとき、ガス流路613を流れる不活性ガスは、発熱体612により加熱されるため、複数の内側噴出口614および複数の外側噴出口615では、加熱された不活性ガス(以下、「加熱ガス」という。)が上方に向かって噴出される。基板9の下面92と環状加熱部61との間の空間に噴出された加熱ガスは、環状加熱部61の周囲に存在するガスが、当該空間に入り込むことを抑制するとともに、基板9の下面92も加熱する。
【0034】
加熱部昇降機構は、環状加熱部61を上下方向に昇降する。本実施の形態では、加熱部昇降機構は、環状加熱部61を近接位置と離間位置とに選択的に配置する。図1では、近接位置に配置された環状加熱部61を実線で示し、離間位置に配置された環状加熱部61を二点鎖線で示している。
【0035】
近接位置では、スピンチャック21に保持される基板9の下面92に対して、環状加熱部61の上面が近接する。詳細には、環状加熱部61の上面は、基板9の下面92において中央部よりも外側の領域と対向する。近接位置に配置された環状加熱部61の上面と、基板9の下面92との間の間隔は、例えば、2〜5mmである。既述のように、環状加熱部61の外周縁は、上下方向において基板9の周縁部と重なっており、環状加熱部61が近接位置に配置された状態では、環状加熱部61の上面の外周縁は、基板9の外周縁に近接する。後述の処理液による処理では、近接位置に配置された環状加熱部61により基板9が下面92側から加熱されることにより、処理液による基板9の処理レートを向上することが可能となる。離間位置における上記間隔は、例えば近接位置における上記間隔の数倍となる。基板処理装置1への基板9の搬入搬出時には、環状加熱部61が離間位置に配置されることにより、環状加熱部61が外部の搬送機構と干渉することが防止される。加熱ユニット6では、環状加熱部61が近接位置と離間位置との間の任意の位置に配置可能であってよい。
【0036】
図2に示すように、基板処理装置1は、外側周壁部71と、内側周壁部72と、ガス噴出部73とをさらに備える。外側周壁部71は、中心軸J1を中心とする円筒部材であり、全周に亘って一定の厚さを有する。外側周壁部71は、ケーシング23の上面における外周縁に沿って設けられ、外側周壁部71の下端は、当該上面に固定される。外側周壁部71は、ケーシング23の上面から上方に突出する。例えば、外側周壁部71の内径は、スピンチャック21に保持される基板9の外径よりも小さく、外側周壁部71の外径は当該基板9の外径よりも大きい。また、外側周壁部71の内径は、環状加熱部61の外径よりも僅かに大きい。外側周壁部71の上端は、近接位置に配置された環状加熱部61の下面よりも上方に位置し、環状加熱部61の上面よりも下方に位置する。外側周壁部71の上端部の内周面は、環状加熱部61の外周面と微小な隙間を介して径方向に対向する。上記隙間の幅は、全周に亘ってほぼ一定である。
【0037】
既述のように、環状加熱部61の上面の外周縁は、基板9の外周縁に近接する。上下方向に沿って見た環状加熱部61において、外周縁、および、当該外周縁の近傍を含む部位を「外周縁部610」と呼ぶと、環状加熱部61の外周縁部610は、基板9の外周縁に近接する。また、環状加熱部61の外周縁部610と外側周壁部71の上端部との間の隙間の幅は僅かである。したがって、環状加熱部61の外周縁部610および外側周壁部71により、基板9下側の空間の周囲を囲む周壁部710が構成される。後述するように、周壁部710は、基板9の下面92を防護するためのものであり、以下、「防護周壁部710」という。防護周壁部710は、上端が基板9の外周縁に近接する円筒状であると捉えることができる。防護周壁部710の下端は、ケーシング23の上面と接し、中央突出部231の上面よりも下方に位置する。
【0038】
防護周壁部710の上側開口は、基板9によりおよそ閉塞される。したがって、基板9の上面91近傍、および、防護周壁部710の周囲に存在するガスが、防護周壁部710の上側から防護周壁部710の内部に入り込むことが抑制される。また、防護周壁部710の下側開口は、ケーシング23の上面により閉塞される。すなわち、ケーシング23は、防護周壁部710の下側開口を閉塞する閉塞部である。これにより、防護周壁部710の周囲に存在するガスが、防護周壁部710の下側から防護周壁部710の内部に入り込むことが抑制される。なお、防護周壁部710の外側周壁部71では、各種配管やケーブル用の貫通孔が必要に応じて設けられてもよい。
【0039】
内側周壁部72は、中心軸J1を中心とする円筒部材であり、全周に亘って一定の厚さを有する。内側周壁部72は、ケーシング23の中央突出部231の上面における外周縁に沿って設けられ、内側周壁部72の下端は、当該上面に固定される。内側周壁部72は、中央突出部231の上面から上方に突出する。例えば、内側周壁部72の内径は、スピンチャック21の外径よりも大きい。また、内側周壁部72の外径は、環状加熱部61の内径よりも僅かに小さい。内側周壁部72の上端は、近接位置に配置された環状加熱部61の下面よりも上方に位置し、環状加熱部61の上面よりも下方に位置する。内側周壁部72の上端部の外周面は、環状加熱部61の内周面と微小な隙間を介して径方向に対向する。上記隙間の幅は、全周に亘ってほぼ一定である。内側周壁部72により、スピンチャック21と環状加熱部61との間の空間がある程度埋められる。
【0040】
上下方向に沿って見た環状加熱部61において、内周縁、および、当該内周縁の近傍を含む部位を「内周縁部619」と呼ぶと、上記のように、内側周壁部72の上端は、環状加熱部61の内周縁部619に近接する。また、内側周壁部72の下側開口は、軸部221の周囲において中央突出部231の上面により閉塞される。したがって、環状加熱部61の下側に存在するガスが、環状加熱部61の内周面に囲まれる空間(以下、「内周側の空間」という。)に入り込む、または、巻き込まれることが、内側周壁部72により抑制される。環状加熱部61の内周側の空間の上側は、基板9により覆われる。これにより、基板9の上面91近傍に存在するガスが、環状加熱部61の内周側に入り込むことが防止される。
【0041】
ガス噴出部73は、中心軸J1を中心とする環状の中空部材である。例えば、ガス噴出部73は、環状のパイプである。ガス噴出部73の直径は、内側周壁部72の直径とほぼ同じであり、ガス噴出部73は、内側周壁部72の上端面に固定される。ガス噴出部73は、径方向外側に向かって開口する複数の噴出口731を有する。複数の噴出口731は、周方向に等間隔に設けられる。ガス噴出部73では、径方向外側に向かって開口するとともに周方向に延びるスリットが、複数の噴出口731に代えて設けられてもよい。図1に示すように、ガス噴出部73には、弁を介してガス供給源62が接続される。ガス供給源62は不活性ガスをガス噴出部73に供給する。これにより、複数の噴出口731から径方向外側に向かって不活性ガスが噴出され、環状加熱部61の内周側の空間に充填される。基板処理装置1では、ガス噴出部73と、環状加熱部61のガス流路613とに対して個別のガス供給源から不活性ガスが供給されてもよい。また、ガス噴出部73に供給されるガスが加熱されていてもよい。
【0042】
図3は、基板処理装置1が基板9を処理する流れを示す図である。まず、処理対象の基板9が、外部の搬送機構により図1の基板処理装置1へと搬送され、スピンチャック21により基板9の下面92が吸引吸着により保持される(ステップS11)。本実施の形態では、基板9の下面92には所定の薄膜(例えば、酸化珪素または窒化珪素の薄膜)が形成されている。基板処理装置1への基板9の搬送時には、カップ可動部31が下位置に配置され、環状加熱部61が離間位置に配置される。また、ノズルヘッド41および遮断板51もそれぞれ待機位置に配置される。これにより、カップ可動部31、環状加熱部61、ノズルヘッド41および遮断板51が当該搬送機構と干渉することが防止される。
【0043】
基板9が搬入されると、ノズルヘッド41が処理位置に移動し、遮断板51が対向位置に移動する。また、カップ可動部31が上位置に配置され、環状加熱部61が近接位置に配置される。このように、カップ可動部31、環状加熱部61、ノズルヘッド41および遮断板51が、図1中に実線で示す位置に配置される。本実施の形態では、環状加熱部61において、発熱体612(図2参照)の一定温度での加熱、および、内側噴出口614および外側噴出口615からの加熱ガスの噴出が常時行われる。したがって、環状加熱部61が近接位置に配置されることにより、基板9の加熱が開始される。環状加熱部61における加熱ガスの噴出量は、例えば毎分20〜100L(リットル)である。基板9の目標加熱温度は、例えば40〜80℃である。また、遮断板51に設けられたガスノズル52からの保護ガスの噴出、および、ガス噴出部73からの不活性ガスの噴出も開始される。ガスノズル52における保護ガスの噴出量は、例えば毎分10〜50Lである。ガス噴出部73における不活性ガスの噴出量は、例えば毎分60〜200Lである。
【0044】
続いて、スピンチャック21の回転が開始される(ステップS12)。スピンチャック21の回転速度は、例えば、800〜2000rpmに設定される。所定時間の経過により、基板9の周縁部の温度が上昇して安定した後、ノズル部412から基板9の上面91の外周縁に対してDHF(希フッ酸)が処理液として供給される(ステップS13)。基板9の上面91に形成された薄膜において、周縁部上の部分がDHFにより除去(エッチング)される。DHFは、回転する基板9の外周縁から外側に飛散し、カップ可動部31の内周面により受けられる。なお、図1の上面ガス供給部5により基板9の上面91の中央部に噴出された保護ガスは、基板9の回転に伴う遠心力の影響により、全周に亘って周縁部へと向かうため、周縁部よりも内側の領域(非処理領域)にDHFが入り込むことが防止または抑制される。図2では、上面ガス供給部5の遮断板51等の図示を省略している。
【0045】
このとき、環状加熱部61により基板9が加熱されていることにより、DHFによる基板9の薄膜のエッチングレートが高くなり、DHFの消費量を削減することが可能となる。一方、基板9を介してDHFが加熱されることにより、比較的多くのフッ化水素ガスが発生する。フッ化水素ガスは、カップ部3における排気動作により、基板9の外周縁と上側傾斜部313の内周縁314との間の隙間からカップ部3の内部へと導かれる。図2では、ガスの流れを符号A1を付す太い矢印で模式的に示している。
【0046】
カップ部3の内部では、上端が基板9の外周縁に近接する防護周壁部710の存在により、フッ化水素ガスが、防護周壁部710の上側から防護周壁部710の内部に入り込むことが抑制される。また、防護周壁部710の下側開口は、ケーシング23の上面により閉塞されることにより、フッ化水素ガスが、防護周壁部710の下側から防護周壁部710の内部に入り込むことが抑制される。さらに、防護周壁部710の外側に配置される排気口341により、フッ化水素ガスを含む、防護周壁部710の周囲のガスが排気される。
【0047】
基板9の回転に伴う遠心力の影響により、基板9の下面92近傍、すなわち、当該下面92と環状加熱部61の上面との間の空間に存在するガスが、全周に亘って基板9の外周縁へと向かう。上記空間には、ガス噴出部73からの不活性ガス、および、環状加熱部61からの加熱ガス(加熱された不活性ガス)が入り込むため、当該空間が過度に低い圧力となることはない。また、上端が環状加熱部61の内周縁部619に近接する内側周壁部72の存在により、環状加熱部61よりも下側に存在するガス(不活性ガス以外のガス)が、環状加熱部61の内周側の空間に入り込んで、下面92と環状加熱部61の上面との間の空間へと流れ込むことが抑制される。基板処理装置1では、基板9の下側において、外側周壁部71、内側周壁部72およびガス噴出部73により、ガスの流れが制御されていると捉えることも可能である。
【0048】
DHFの供給は所定時間継続され、その後、停止される。続いて、ノズル部413から基板9の外周縁に対してリンス液が処理液として供給される。リンス液は、基板9の外周縁から外側に飛散し、カップ可動部31の内周面により受けられる。リンス液の供給により、基板9の周縁部に付着するDHFが除去される。DHFの供給時と同様に、上面ガス供給部5からの保護ガスにより、基板9の上面91において周縁部よりも内側の領域にリンス液が入り込むことが防止または抑制される。また、防護周壁部710の周囲に存在するガスが、防護周壁部710の内部に入り込むことが抑制される。
【0049】
リンス液の供給は所定時間継続された後、停止される。続いて、スピンチャック21の回転速度を処理液の供給時よりも高くすることにより、基板9の乾燥処理が開始される(ステップS14)。乾燥処理が完了すると、スピンチャック21の回転が停止される(ステップS15)。また、上面ガス供給部5からの保護ガスの噴出、および、ガス噴出部73からの不活性ガスの噴出が停止される。続いて、図1中に二点鎖線で示すように、カップ可動部31が下位置に配置され、環状加熱部61が離間位置に配置される。また、ノズルヘッド41および遮断板51が、待機位置にそれぞれ移動する。そして、スピンチャック21による基板9の保持が解除されるとともに、外部の搬送機構により、処理後の基板9が搬出される(ステップS16)。これにより、基板処理装置1による基板9の処理が完了する。上記の処理例では、基板9の外周縁に対してDHFおよびリンス液が供給されるが、例えば、DHFおよびリンス液の供給前に、基板9の外周縁に対してノズル部411からSC−1が供給されてもよい。
【0050】
図4は、比較例の基板処理装置8を示す図である。図4では、ガスの流れを符号A2を付す太い矢印で模式的に示している。比較例の基板処理装置8では、図1の基板処理装置1における外側周壁部71、内側周壁部72およびガス噴出部73が省略される。既述のように、基板9が回転することにより、基板9の下面92と環状加熱部61の上面との間の空間に存在するガスが基板9の外周縁へと向かうため、比較例の基板処理装置8では、環状加熱部61の内周側の空間に、周囲のガスが巻き込まれる。したがって、基板9の外周縁にエッチング液であるDHFを供給する際に、DHFから発生するフッ化水素ガスが、カップ部3の内部において環状加熱部61の下側を通過して、環状加熱部61の内周側の空間に入り込む。そして、基板9の下面92と環状加熱部61の上面との間の空間を通過して、基板9の外周縁へと向かう。
【0051】
その結果、比較例の基板処理装置8では、基板9の下面92において中央部(スピンチャック21)よりも外側の領域における薄膜の部分が、フッ化水素ガスによりエッチングされる。DHF以外の処理液(例えば、SC−1、SC−2またはフッ硝酸等)を用いる場合でも、当該処理液から発生するガスが下面92に形成された薄膜との反応性を有するときには、当該薄膜のエッチングや変質等が生じてしまう。また、処理液成分が基板9の下面92に付着した状態で、当該基板9がフープ等に収容された場合、当該基板9に対向する他の基板に当該処理液成分が転写され、当該他の基板上の薄膜が当該処理液成分により変質する可能性もある。
【0052】
図5は、基板9の下面92におけるエッチング量の測定結果を示す図である。図5の縦軸は、エッチング量を示し、横軸は、下面92の半径位置を示す。また、下面92においてスピンチャック21と接触する中央部を、符号H1を付す矢印で示している。比較例の基板処理装置8において図3と同様の処理を行う場合、図5中に符号D2を付す点で示すように、下面92の中央部よりも外側の領域においてエッチング量が大きくなる。特に、当該外側の領域における中央部近傍では、エッチング量が最も大きくなっている。これにより、処理液のガスが、環状加熱部61の内周側の空間に入り込み、下面92と環状加熱部61の上面との間の空間を通過して基板9の外周縁へと向かっていることが推測される。また、基板9の外周縁近傍においてもエッチング量が大きくなっており、処理液のガスは、基板9の外周縁側からも下面92と環状加熱部61の上面との間の空間に入り込んでいると推測される。一方、スピンチャック21と接触する中央部は、ほとんどエッチングされない。なお、比較例の基板処理装置8において環状加熱部61を省略する場合でも、下面92の中央部よりも外側の領域においてエッチング量が大きくなることが確認されている。
【0053】
これに対し、図1の基板処理装置1において図3の処理を行う場合、図5中に符号D1を付す点(図5では、点D1同士が互いに重なるため、太い線状となっている。)で示すように、下面92の中央部よりも外側の領域におけるエッチング量が、比較例の基板処理装置8に比べて大幅に小さくなり、全ての半径位置においてほぼ0となる。したがって、基板処理装置1では、環状加熱部61の内周側の空間への処理液のガスの入り込み、および、下面92と環状加熱部61の上面との間の空間への基板9の外周縁側からの当該ガスの入り込みが、抑制されていると考えられる。なお、基板処理装置1では、ガス噴出部73から不活性ガスを噴出しない場合でも、下面92の中央部よりも外側の領域におけるエッチング量が、比較例の基板処理装置8に比べて大幅に小さくなることが確認されている。
【0054】
以上に説明したように、基板処理装置1では、水平状態の基板9の下面92の中央部がスピンチャック21により吸着保持される。また、スピンチャック21の周囲を囲むとともに、上端が基板9の外周縁に近接する円筒状の防護周壁部710が設けられる。これにより、処理液から発生するガスの下面92近傍への回り込みを抑制する、すなわち、当該ガスから基板9の下面92を防護することができる。その結果、当該ガスが、基板9の下面92上の薄膜に対してエッチングや変質等の悪影響を及ぼすことを抑制することができる。基板9がフープ等に収容された場合に、他の基板が変質することも防止することができる。また、防護周壁部710の下側開口がケーシング23により閉塞されることにより、処理液のガスが下面92近傍に回り込むことをさらに抑制することができる。
【0055】
基板処理装置1では、基板9の下面92を加熱する環状加熱部61が設けられ、環状加熱部61の外周縁部610が、防護周壁部710の上端を含む部位を兼ねる。これにより、基板9を加熱して処理液による処理レートを向上しつつ、処理液のガスが下面92近傍に回り込むことを抑制することが可能となる。
【0056】
基板処理装置1では、スピンチャック21の周囲を囲む円筒状であり、上端が環状加熱部61の内周縁部619に近接する内側周壁部72がさらに設けられる。これにより、環状加熱部61の内周側に処理液のガスが入り込み、基板9の下面92と環状加熱部61の上面との間の空間を通過することを抑制することができる。また、内側周壁部72がスピンチャック21と環状加熱部61との間に配置され、不活性ガスを噴出するガス噴出部73が、内側周壁部72の上端に設けられる。これにより、環状加熱部61の内周側の空間を埋めつつ、不活性ガスにより当該空間の圧力を高くして、処理液のガスが環状加熱部61の内周側に入り込むことをさらに抑制することができる。
【0057】
ところで、環状加熱部61では、温度を急激に上下させることが困難であるため、通常、基板9の有無にかかわらず、環状加熱部61の温度を一定に保つ制御が行われる。基板処理装置1において、ガス噴出部73を省略しつつ、環状加熱部61における加熱ガスの噴出量を増大することも考えられるが、この場合、スピンチャック21に基板9が保持された直後に、環状加熱部61の温度が急激に上昇し、環状加熱部61の温度が不安定となる。その結果、処理液による処理レート(例えば、エッチングレート)が不安定となる。したがって、環状加熱部61を有する基板処理装置1において、安定して処理を行うには、環状加熱部61における加熱ガスの噴出量を、環状加熱部61の温度の変動が小さくなる最適値に設定し、不活性ガスを噴出するガス噴出部73を別途設けることが好ましい。なお、環状加熱部61の周囲が外側周壁部71により囲まれる基板処理装置1では、外乱による環状加熱部61の温度の変動を抑制することが可能となる。
【0058】
基板処理装置1において求められる基板9の処理レート(処理液による処理レート)によっては、環状加熱部61が省略されてもよい。図6は、基板処理装置1の他の例を示す図である。図6の基板処理装置1では、図1の基板処理装置1と比較して、環状加熱部61および内側周壁部72が省略される。また、外側周壁部71aの上端が基板9の外周縁に近接し、ガス噴出部73が中央突出部231の上面に取り付けられる。他の構成は、図1の基板処理装置1と同様であり、同じ構成に同じ符号を付している。
【0059】
図6の基板処理装置1では、外側周壁部71aの上端面が、上下方向において基板9の外周縁に近接しつつ直接的に対向する。これにより、外側周壁部71aが、単体で防護周壁部となり、処理液から発生するガスの下面92近傍への回り込みを抑制する。その結果、当該ガスが、基板9の下面92に(および、フープ内で他の基板に)悪影響を及ぼすことを抑制することができる。また、不活性ガスを噴出するガス噴出部73が、外側周壁部71aにより囲まれる空間の内部に設けられる。これにより、当該空間の圧力を高くして、処理液のガスが下面92近傍に回り込むことをさらに抑制することができる。
【0060】
図7は、基板処理装置1のさらに他の例を示す図である。図7の基板処理装置1では、図1の環状加熱部61、内側周壁部72およびガス噴出部73が省略され、厚さが大きい円筒状の外側周壁部71bが用いられる。図7の基板処理装置1においても、外側周壁部71bの上端が基板9の外周縁に近接する。これにより、外側周壁部71bが、単体で防護周壁部となり、処理液から発生するガスの下面92近傍への回り込みを抑制する。その結果、当該ガスが、基板9の下面92に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。また、外側周壁部71bの上端がスピンチャック21の外周縁にも近接する。図7の基板処理装置1では、基板9の下面92の中央部から外側の領域に対する下側の空間を、外側周壁部71bにより埋めることができ、当該下側の空間に多くの処理液のガスが入り込むことを、より確実に防止することができる。
【0061】
上記基板処理装置1では様々な変形が可能である。
【0062】
基板処理装置1において、防護周壁部710(または、防護周壁部である外側周壁部71a,71b)の下側開口は必ずしも閉塞される必要はなく、処理液から発生するガスの下面92近傍への回り込みが抑制可能であるならば、下側開口が部分的、または、全体的に開放されていてもよい。例えば、処理液を基板9に供給する際に、防護周壁部(外側周壁部71,71a,71b)の下端が、排気口341よりも下方に配置される図1図6および図7の基板処理装置1では、下側開口が閉塞されていない場合でも、処理液のガスの下面92近傍への回り込みがある程度抑制可能である。なお、排気口341は、カップ固定部32に設けられてもよい。
【0063】
防護周壁部710(または、防護周壁部である外側周壁部71a,71b)により、処理液から発生するガスの下面92近傍への回り込みを低減する基板処理装置1では、必要に応じて内側周壁部72およびガス噴出部73が設けられるのみであってもよい。すなわち、図1の基板処理装置1において、内側周壁部72およびガス噴出部73が省略されてもよく、図6の基板処理装置1においてガス噴出部73が省略されてもよい。
【0064】
図1の基板処理装置1において、環状加熱部61の外周面の一部に、上下方向に延びる凹部が形成されてもよい。この場合でも、外側周壁部71を有する基板処理装置1では、比較例の基板処理装置8に比べて、処理液から発生するガスの下面92近傍への回り込みが低減されるため、当該ガスが基板9に悪影響を及ぼすことを抑制することが可能である。
【0065】
処理液供給部4は、基板9の外周縁に対して、径方向の外側、または、下側から処理液を供給してもよい。また、処理液供給部4は、基板9の上面91の中央部等に処理液を供給するものであってもよい。基板9の上面91において周縁部よりも内側の領域を処理液から保護する上面ガス供給部5は、必要に応じて設けられればよい。
【0066】
基板9の下面92を吸着保持する基板保持部は、真空チャックであるスピンチャック21以外に、静電チャック等であってもよい。
【0067】
基板処理装置1において処理が行われる基板は半導体基板には限定されず、ガラス基板や他の基板であってもよい。
【0068】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0069】
1 基板処理装置
4 処理液供給部
9 基板
21 スピンチャック
22 スピンモータ
23 ケーシング
61 環状加熱部
71,71a,71b 外側周壁部
72 内側周壁部
73 ガス噴出部
91 (基板の)上面
92 (基板の)下面
341 排気口
610 (環状加熱部の)外周縁部
619 (環状加熱部の)内周縁部
710 防護周壁部
J1 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7