(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一端の吸気口が前記排水開始位置よりも低い揚水遮断水位以下の高さに位置するように前記ポンプケーシング外に配置され、他端の給気口が前記ラッパ管に接続された第2給気配管を備える、請求項1に記載の先行待機形ポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のポンプでは、ラッパ管の下端と吸水槽の底との間隔を確保することについて、何も考慮されていない。詳しくは、特許文献1では、排水開始水位を基準として、ポンプケーシング内の動圧による最大負荷分を下げた位置を、給気管の接続位置としている。よって、ポンプの流量が大きい場合、ラッパ管の全長を長くしなければ、給気管を接続できない。しかし、底が浅い吸水槽の場合、全長が長いラッパ管を用いたポンプは設置できない。
【0005】
本発明は、吸水槽の底とポンプケーシングの下端との間隔を確保でき、浅い吸水槽であっても設置可能な先行待機形ポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発
明先行待機形ポンプは、上下方向へ延びるように吸水槽に配置され、下端に前記吸水槽内の水を吸い込むラッパ管を有するポンプケーシングと、前記吸水槽の定められた排水開始水位に位置するように、前記ポンプケーシング内の前記ラッパ管の上方に配置された羽根車と、一端の吸気口が前記排水開始位置よりも高い最高水位よりも上方に位置するように前記ポンプケーシング外に配置され、他端の給気口が前記ラッパ管に接続された第1給気配管とを備え、前記ラッパ管は、外筒と、前記羽根車の直下に位置するように前記外筒内に配置され、上端から下端に向けて次第に広がったフレア部を有する内筒とを備え、前記第1給気配管の前記給気口は前記内筒の前記フレア部に接続され、前記第1給気配管によって前記ポンプケーシング外と前記内筒内が常に空間的に連通してい
る。
【0007】
この先行待機形ポンプによれば、第1給気配管はポンプケーシングの内筒のフレア部に接続されており、このフレア部内の動圧は、上端開口部分よりも動圧よりも低い。また、フレア部内の動圧は、水位が排水開始水位よりも高い場合には大気圧よりも低く、水位が排水開始水位よりも低くなると大気圧よりも高くなる。よって、ポンプケーシング外の空気は、水位が排水開始水位よりも高い場合には内筒内には流入せず、水位が排水開始水位よりも低くなると内筒内に流入する。その結果、水位が排水開始水位よりも高い場合には水のみの排水が可能であり、水位が排水開始水位よりも低くなると気水混合運転に移行することが可能である。このように、第1給気配管を内筒のフレア部に接続することで、ラッパ管の全長を長くすることなく、最適な給気が可能である。よって、吸水槽の底とポンプケーシングの下端との間隔を確保でき、浅い吸水槽であっても確実にポンプを設置できる。
【0008】
本発明の第1態様は、前記フレア部の前記第1給気配管が接続された部分の直径は、前記内筒の上端開口の直径の1.4倍以上である
、先行待機形ポンプを提供する。この場合、第1給気配管の接続部分の断面積は、内筒の上端開口の断面積の2倍以上であり、第1給気配管の接続部分の動圧は、内筒の上端の動圧の40%である。この態様によれば、水位が排水開始水位よりも高い場合に、空気が吸い込まれることを効果的に抑制できる。
【0009】
前記内筒の下端は、前記外筒の下端から突出しており、前記内筒と前記外筒は、放射状に配置された2以上の連結板によって連結されている。この態様によれば、ポンプケーシングの下方に位置する吸水槽の底での水中渦の発生を抑制できる。よって、吸水槽内の水を低水位まで効果的に排水できる。
【0010】
前記第1給気配管の前記吸気口は、前記吸水槽内に配置されている。この態様によれば、意図しない異常によって排水が追い付かず、吸水槽内の水が第1給気配管内を逆流した場合でも、その水を吸水槽内に戻すことができる。よって、制御基盤等が配置された据付床上への水の漏出を抑制できる。
【0011】
本発明の第2態様は、一端の吸気口が前記排水開始位置よりも低い揚水遮断水位以下の高さに位置するように前記ポンプケーシング外に配置され、他端の給気口が前記ラッパ管に接続された第2給気配管を備える
、先行待機形ポンプを提供する。この態様によれば、水位が揚水遮断水位まで低下すると、第2給気配管を介して空気がポンプケーシング内に流入し、気水混合運転からエアロック運転に移行できる。
【0012】
前記第2給気配管の前記給気口は、前記ラッパ管における前記内筒の上端以下の部分に接続されている。このようにすれば、内筒の出口での乱流及び剥離流(内筒の周囲の水流よりも速い水流)の影響を受けないため、速やかに揚水遮断運転に移行できる。
【0013】
前記第2給気配管の前記給気口は、前記第1給気配管の前記給気口よりも上側に配置されている。つまり、第2給気配管は、第1給気配管よりもラッパ管の動圧が高い部分に接続されている。この態様によれば、揚水遮断水位までの水位の低下によって、気水混合運転からエアロック運転に確実に移行できる。
【0014】
前記第2給気配管は、前記給気口を含む前記他端側に、前記揚水遮断水位に位置し、前記ポンプケーシングの径方向に延びる部分を有する。つまり、第2給気配管の給気側は、揚水遮断水位に沿って水平に延びている。この態様によれば、空気の流動抵抗を軽減できるため、揚水を遮断するための空気を効率的に供給できる。
【0015】
前記ポンプケーシングの前記排水開始水位よりも下側を取り囲む環状の横パイプと、上下方向へ延びるように前記ポンプケーシングの外側に配置され、下端が前記横パイプに接続され、上端が塞がれた縦パイプとを有する渦防止配管を備え、前記第2給気配管は、前記縦パイプ内に配置され、前記吸気口を構成する下端が前記縦パイプ外に露出された吸気パイプと、一端が前記横パイプに接続され、前記給気口を構成する他端が前記ラッパ管に接続された給気パイプとを有する。この態様によれば、渦防止配管によって、水面から空気を吸い込むという空気吸込渦の発生を抑制できる。よって、吸水槽内の水をより低水位まで効果的に排水できる。また、渦防止配管が第2給気配管の一部を兼ねるため、ポンプケーシングの外周に配置する配管を簡素化できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の先行待機形ポンプでは、上端開口部分よりも動圧が低いフレア部に第1給気配管が接続されているため、ラッパ管の全長が短くても最適な給気が可能である。よって、吸水槽の底とポンプケーシングの下端との間隔を確保でき、浅い吸水槽であっても確実にポンプを設置できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る先行待機形ポンプ10(以下「ポンプ」と言う。)を示す。このポンプ10は、吸水槽1に流入した水を下流側へ排水する立軸ポンプである。また、本実施形態のポンプ10は、ポンプケーシング12の外側に給気配管30,33を備え、吸水槽1の水位によって、排水(全水)運転、気水混合運転、エアロック(排水遮断)運転に切り換わる先行待機形である。
【0020】
(先行待機形ポンプの概要)
図1に示すように、ポンプ10は、ポンプケーシング12、回転軸22、及び羽根車25を備える。
図4を参照すると、ポンプ10を配置する吸水槽1は、据付床2と底壁3の間の3方が側壁4によって塞がれており、水は、
図4において側壁4が無い左側から流入する。
【0021】
ポンプケーシング12は、吸水槽1内で上下方向に延びるように、吸水槽1の上部を覆う据付床2に固定されている。ポンプケーシング12は、吸水槽1内に配置された揚水管13と、据付床2上に配置された吐出し管20とを備える。揚水管13は、直管14、ベーンケーシング15、及びベルマウス16を備え、この順で上側から下側へ接続されている。吐出し管20は、中心軸が90度湾曲した吐出エルボ21を備え、直管14の上端に接続されている。吐出エルボ21の出口には、下流側へ排水するための送水管(図示せず)が接続されている。
【0022】
回転軸22は、吐出エルボ21を貫通し、揚水管13の軸線に沿って配置されている。
図3を参照すると、回転軸22は、直管14内及びベーンケーシング15内の軸受ケーシング15aに配置された水中軸受23に、回転可能に支持されている。回転軸22の上端は吐出エルボ21から外側へ突出されており、その貫通部分は軸封装置によって水密にシールされている。
【0023】
羽根車25は、ベルマウス16の上方に位置するように、軸受ケーシング15aの下側に配置され、回転軸22の下端に固定されている。羽根車25の上端25aは、仕様によって定められた排水開始水位LWLと同一高さに配置されている。
【0024】
ポンプケーシング12から突出した回転軸22の上端には、駆動手段(図示せず)が機械的に接続されている。駆動手段には、電動モータ又は内燃機関の1つであるディーゼル機関が用いられる。駆動手段を駆動すると、回転軸22と一体に羽根車25が回転されることで、吸水槽1内の水がポンプケーシング12内を通って下流側へ排出される。
【0025】
図2に示すように、先行待機形のポンプ10は、ポンプケーシング12内に水柱WCを保持したエアロック運転を可能とし、周囲の水によって水中軸受23の過熱を防ぎ、吸水槽1に水が無い状態でもポンプ10を継続運転可能とする。このエアロック運転を実現するために、ポンプケーシング12の周囲には、ポンプケーシング12内に吸水槽1内の空気を供給する第1給気配管30と第2給気配管33とが配置されている。
【0026】
第1給気配管30は、排水運転から気水混合運転に切り換えるために設けられ、第2給気配管33は、気水混合運転からエアロック運転に切り換えるために設けられている。給気配管30,33を通したポンプケーシング12内への給気状態は、ポンプケーシング12内の動圧によって切り換わる。
【0027】
この先行待機形のポンプ10は、例えば地域気象観測システムの情報に基づいて、オペレータによって始動される。吸水槽1内の水位が羽根車25よりも低い当初では、羽根車25が気中にあるため、ポンプ10は排水を行うことのない気中運転になる。水位が羽根車25の下端よりも上がると、吸水槽1内の水が羽根車25によって吸い上げられるとともに、第1給気配管30を通して空気が吸い込まれるため、ポンプ10は、水と空気を混合状態で排出する気水混合運転に切り換わる。水位が排水開始水位LWL(羽根車25の上端25a)よりも上がると、第1給気配管30を通した空気の吸い込みが遮断されるため、ポンプ10は、水のみを排出する排水運転に切り換わる。
【0028】
排水により、吸水槽1内の水位が排水開始水位LWLよりも下がると、第1給気配管30を通して再び空気が吸い込まれるため、ポンプ10は、気水混合運転に切り換わる。水位が排水遮断水位LLWLよりも下がると、第2給気配管33からも空気が吸い込まれるため、ポンプ10は、排水することなく水柱WCを保持したエアロック運転に切り換わる。その後、水位が排水遮断水位LLWLよりも上がると、ポンプ10は、再び気水混合運転に切り換わる。つまり、ポンプ10は、オペレータが停止するまで、エアロック運転、気水混合運転、排水運転、気水混合運転、エアロック運転の順で運転状態が切り換わる。
【0029】
前述した排水開始水位LWL、排水遮断水位LLWL、及び最高水位HWLは、要求仕様として定められている。これらは、底壁3からの高さとして定義されており、
図1に示すように、排水遮断水位LLWL、排水開始水位LWL、及び最高水位HWLの順で高くなるように設定されている。排水開始水位LWL以上の高水位では、空気を混入することなく、水だけを排出する必要がある。排水開始水位LWL未満の低水位では、空気の混入が許容される。排水遮断水位LLWL未満の超低水位では、排水を行わないエアロック運転に移行する必要がある。
【0030】
従来の先行待機形ポンプでは、定められた排水開始水位LWLと、ポンプケーシング内の最大負荷とに基づいて給気管の接続位置を設定していたため、長いベルマウスが必要になることがあり、この場合には底が浅い吸水槽には適用できなかった。そこで、本実施形態では、第1給気配管30とポンプケーシング12の接続位置を最適化することで、ベルマウス16の全長を長くすることなく、第1給気配管30からポンプケーシング12内へ所定のタイミングで給気可能とする。また、第2給気配管33の形状と接続位置を最適化することで、揚水遮断のための給気を効率化する。
【0031】
具体的には、ベルマウス16を外筒17と内筒18とを備える二重ラッパ管によって構成する。そして、内筒18のうちの比較的動圧が低いフレア部18bに第1給気配管30を接続する。また、内筒18のうちの比較的動圧が高い筒部18aに第2給気配管33を接続する。これにより、運転切り換えに最適な給気を実行可能とする。詳しくは以下の通りである。
【0032】
(ベルマウスの詳細)
図4に示すように、ベルマウス16は、ベーンケーシング15の下端に接続される外筒17と、外筒17内に配置された内筒18と、これらを連結する2以上の連結板19とを備える。
【0033】
外筒17は、円筒状の筒部17aと、筒部17aの下端に連続したフレア部17bとを備える。筒部17aの上端には、ボルトによってベーンケーシング15に締結されるフランジ部17cが設けられている。フレア部17bは、上端から下端に向けて次第に広がった円錐筒状である。
【0034】
内筒18は、羽根車25の直下に位置するように外筒17内に固定され、外筒17の下端から下向きに突出している。内筒18は、回転軸22と同一軸線上に位置する円筒状の筒部18aと、筒部18aの下端に連続したフレア部18bとを備える。筒部18aの上端は、外筒17のフレア部17bの上下方向における中間部分に位置し、揚水遮断水位LLWLと同じ位置に配置されている。フレア部18bは、上端から下端に向けて次第に広がった円錐筒状である。フレア部18bの最大外径は、外筒17(筒部17a)の最小内径よりも小さい。
【0035】
連結板19は、本実施形態では4枚有し、回転軸22の軸線を中心として90度間隔をあけて放射状に配置されている。連結板19の内縁部19aは、内筒18の上端から下端までの外面形状に沿った形状を有し、内筒18の外面に固定されている。連結板19の外縁部19bは、外筒17の上端近傍から下端近傍までの内面形状に沿った形状を有し、外筒17の内面に固定されている。内縁部19aの下端から外縁部19bの下端にかけて延びる下縁部19cは、外筒17から下方に突出し、下側から上側に向けて外向きに傾斜している。内縁部19aの上端から外縁部19bの上端にかけて延びる上縁部19dは、外筒17内に収まっており、下側から上側に向けて外向きに傾斜している。
【0036】
このように、外筒17から内筒18を突出させたベルマウス16によれば、ポンプケーシング12の下方に位置する底壁3での水中渦の発生を抑制できる。水中渦とは吸水槽1の底壁3からベルマウス16に向けて流れる水に、空気が連続的又は断続的に含まれる水流である。内筒18と放射状に突出する連結板19とに水中渦が干渉することによって、水中渦を消滅できるため、吸水槽1内の水を低水位まで効果的に排水できる。
【0037】
図6は内筒18内の圧力と速度を表すグラフである。横軸は内筒18の下端からの距離(m)を示し、縦軸は圧力と速度の大きさを示している。この
図6を参照すると、内筒18の下端から上端に向かうに従って、内部の圧力は次第に高くなり、内部の流速は次第に早くなることが分かる。つまり、内筒18内の動圧は、下端が最も低く、上端に向かうに従って高くなる。よって、この内筒18に対する第1給気配管30の接続位置を調整することで、吸水槽1の深さに拘わらず、運転時の最大負圧による吸込揚程ΔHaを調節できる。
【0038】
(第1給気配管の詳細)
図1に示すように、第1給気配管30は、上端側に吸気口30aを備え、下端に給気口30bを備えるパイプであり、ポンプケーシング12の内外を常に空間的に連通させている。第1給気配管30の大部分は、ポンプケーシング12の外部に配置され、ポンプケーシング12に沿って上下方向に延びている。
【0039】
吸気口30aは、吸水槽1内に配置され、最高水位HWLよりも上方に位置している。吸気口30aが下向きに開口するように、第1給気配管30の上部にはU字状に折り返した折返部30cが設けられている。折返部30cの内側頂部が、第1給気配管30において最も高い位置である。底壁3から折返部30cの内側頂部までの第1給気配管30の高さは、最高水位HWLに、揚水によって内筒18内で発生する最大負圧による吸込揚程ΔHaを加えた値に設定されている。
【0040】
第1給気配管30の下部には、ベルマウス16に向けて屈曲し、外筒17を貫通して内筒18に接続される接続部30dが形成されている。外筒17の接続部30dが貫通した部分は、液密にシールされている。接続部30dの先端である給気口30bは、内筒18のフレア部18bに接続されている。
【0041】
図4を参照すると、接続部30d(給気口30b)が接続された部分のフレア部18bの直径D1は、筒部18aの直径D2の1.4倍以上である。つまり、接続部30dは、フレア部18bにおいて、筒部18aの直径D2の1.4倍以上となる部分に接続されている。面積比で言い換えると、第1給気配管30の接続部分の断面積は、内筒18の上端開口の断面積の2倍以上である。そして、この接続部分の動圧は、内筒18の上端の動圧の40%である(
図6参照)。
【0042】
より具体的に説明すると、フレア部18bに対する接続部30dの接続位置は、以下の式に基づいて設定される。ΔHaは内筒18の吸込揚程(吸込ロス)、ζaは内筒18内での損失係数、Vdは内筒18内の吸込口速度、Vsは外筒17と内筒18の間の吸込口速度、ddは内筒18の内径、Ddは外筒17の最小内径である。
【0044】
上記式のように、内筒18の任意の位置の吸込揚程ΔHaは、内部ベルマウスの吸込口速度Vdと損失係数ζaとで演算できる。よって、内筒18の適切な位置に接続部30d(給気口30b)を接続することで、吸込揚程ΔHaの大きさを必要に応じて調整できる。その結果、浅い吸水槽1であっても、所定のタイミングでポンプケーシング12内に空気を供給でき、気水混合運転を実行できる。具体的には、給気口30bの接続部分の動圧が、排水開始水位LWLよりも高水位の場合には大気圧よりも低く、排水開始水位LWLよりも低水位になると大気圧よりも高くなる位置に、給気口30bを接続する。これにより、ポンプケーシング12外の空気は、水位が排水開始水位LWLよりも高い場合には内筒18内には流入せず、水位が排水開始水位LWLよりも低くなると内筒18内に流入する。その結果、水位が排水開始水位LWLよりも高い場合には水のみの排水が可能であり、水位が排水開始水位LWLよりも低くなると気水混合運転に移行する。
【0045】
このように、最高水位HWLよりも高い位置で吸気口30aを開口させ、フレア部18bの所定直径部分に給気口30bを接続しているため、ベルマウス16の全長を長くすることなく、最適な給気が可能である。よって、吸水槽1の底壁3とポンプケーシング12の下端との間隔を確保できるため、浅い吸水槽1であっても確実にポンプ10を設置できる。
【0046】
第1給気配管の吸気口30aは吸水槽1で開口されているため、意図しない異常によって排水が追い付かず、吸水槽1内の水が第1給気配管30内を逆流した場合でも、その水を吸水槽1内に戻すことができる。よって、制御基盤等が配置された据付床2上への水の漏出を抑制できる。
【0047】
(第2給気配管の詳細)
図1に示すように、第2給気配管33は、概ね逆U字形状に屈曲されたパイプであり、ポンプケーシング12の内外を常に空間的に連通させている。第2給気配管33の大部分は、ポンプケーシング12の外部に配置され、ポンプケーシング12に沿って上下方向に延びている。第2給気配管33の一端側が吸気口33aを構成し、第2給気配管33の他端側が給気口33bを構成する。
【0048】
吸気口33aは、ポンプケーシング12から離れて位置する第1管部33cの下端に形成されている。吸気口33aは、揚水遮断水位LLWL以下の高さに配置されることが好ましく、本実施形態では同じ高さに配置されている。つまり、第1管部33cは、吸気口33aが所定位置に配置されるように、ポンプケーシング12外に配置されている。
【0049】
給気口33bは、第1管部33cよりもポンプケーシング12側に位置する第2管部33dの端に形成されている。第1管部33cと第2管部33dは、U字状に折り返した折返部33eを介して連続している。第1給気配管30の折返部30cと同様に、底壁3から折返部33eの内側頂部までの第2給気配管33の高さは、最高水位HWLに吸込揚程ΔHaを加えた値に設定されている。
【0050】
第2管部33dの下部には、ベルマウス16に向けて屈曲し、外筒17を貫通して内筒18に接続される接続部33fが形成されている。外筒17の接続部33fが貫通した部分は、液密にシールされている。接続部33fは、揚水遮断水位LLWLと同じ高さに位置し、ポンプケーシング12の径方向へ水平に延びている。接続部33fの先端である給気口33bは、第1給気配管30の給気口30bよりも上側に位置するように、内筒18の筒部18aの上端に接続されている。
【0051】
このように、第2給気配管33は、吸気口33aが揚水遮断水位LLWL以下の高さに位置するように配置され、給気口33bが内筒18に接続されている。よって、水位が揚水遮断水位LLWLに低下した場合のみ、吸気口33aからポンプケーシング12内へ空気を供給できるため、ポンプ10を気水混合運転からエアロック運転に移行できる。
【0052】
第2給気配管33の給気口33bは、給気口30bよりも上側に配置され、内筒18の上端に接続されているため、内筒18の出口での乱流及び剥離流(内筒18の周囲の水流よりも速い水流)の影響を受けない。よって、速やかに揚水遮断運転に移行できる。
【0053】
しかも、第2給気配管33は揚水遮断水位に位置する接続部33fを備え、その先端に給気口33bを有するため、空気の流動抵抗を軽減でき、揚水を遮断するための空気を効率的に供給できる。
【0054】
(各給気配管の配置)
図5を参照すると、第1給気配管30は、ポンプケーシング12に対して水の流入方向上流側に位置するように、2本配置されている。第2給気配管33は、ポンプケーシング12に対して水の流入方向下流側に位置するように、2本配置されている。合計で4本の給気配管30,33は、ポンプケーシング12の軸線を中心として放射状に配置されている。なお、給気配管30,33とポンプケーシング12は、周知の連結部材(例えばステー)によって連結することが好ましい。
【0055】
第1給気配管30における接続部30dよりも上側の部分と、第2給気配管33の管部33c,33dとは、実測又は演算によって想定される空気吸込渦の発生位置に位置するように、ポンプケーシング12に対して定められた間隔をあけて配置されている。空気吸込渦とは、水面側からベルマウス16の吸込口に向けて流れる水に、吸水槽1内の空気が連続的又は断続的に含まれる水流である。この空気吸込渦は、吸水槽1内の水位が低下し、水面の流速が一定レベルに達することで発生する。水面側からベルマウス16へ向かう水流が給気配管30,33に干渉することで、空気を吸い込む前に水流を消滅できる。
【0056】
このようにしたポンプ10は、水中渦の発生抑制、空気吸込渦の発生抑制、及び先行待機運転の機能を併せ持つため、第1給気配管30及び第2給気配管33が無いポンプよりも、低水位での排水を効果的に実現できる。
【0057】
詳しくは、排水運転では、吸水槽1内の水位が渦発生水位になっても、給気配管30,33によって空気吸込渦の発生を抑制できる。また、二重ラッパ管からなるベルマウス16によって、水中渦の発生を抑制できる。よって、吸い込んだ空気が羽根車25に衝突することによるポンプケーシング12の振動を防止できる。
【0058】
気水混合運転では、ポンプ10の吸引力(内筒18の動圧)によって、吸水槽1内の空気を第1給気配管30からポンプケーシング12内へ供給できる。よって、ベルマウス16からの吸水量は減るが、吸水槽1内の水面での流速が遅くなるため、空気吸込渦の発生を抑制し、排水可能な水位を下げることができる。但し、この場合でも、水位が低くなるに従って、やがて水面は空気吸込渦が生じる流速になるが、この時の空気吸込渦の発生も給気配管30,33によって抑制できる。
【0059】
エアロック運転では、第2給気配管33も空気を吸い込むことで、ベルマウス16からの吸水量が更に減る。よって、ポンプケーシング12から下流側への排水を確実に停止し、
図2に示すようにポンプケーシング12内では水柱WCを保持した状態を維持できる。この水柱WCによってポンプケーシング12内の摺動部品である水中軸受23が冷却され、過熱が防止されるため、ポンプ10の駆動を継続した待機運転を実現できる。
【0060】
以上のように、本実施形態のポンプ10では、内筒18の動圧が低いに部分に第1給気配管30が接続されているため、ベルマウス16の全長が短くても最適な給気が可能である。よって、浅い吸水槽1であっても確実にポンプ10を設置できる。また、二重ラッパ管からなるベルマウス16によって水中渦の発生を抑制でき、4本の給気配管30,33によって空気吸込渦の発生を抑制できるため、ポンプ10によって排水可能な水位を効果的に低くできる。
【0061】
また、第1給気配管30と第2給気配管33の全高は、最高水位HWLに吸込揚程ΔHaを加えた高さよりも高く設定されているため、折返部30c,33eを越えて水が吸い上げられることはない。よって、第1給気配管30と第2給気配管33にゴミなどが流入し、折返部30c,33e詰まることを抑制できる。
【0062】
また、内筒18に供給された空気は羽根車25の中心部に導入されるため、外周から導入する場合よりも空気注入による羽根車25の負荷を小さくできる。よって、運転状態の切り換えによるポンプ10の振動を抑制できる。
【0063】
(第2実施形態)
図7及び
図8は第2実施形態のポンプ10を示す。この第2実施形態では、ポンプ10を気水混合運転からエアロック運転に切り換える第2給気配管40を、空気吸込渦の発生を抑制するための渦防止配管35に組み込んだ点で、第1実施形態と相違する。
【0064】
具体的には、渦防止配管35は、排水開始水位LWLよりも下側でポンプケーシング12を取り囲む環状の横パイプ36と、上下方向へ延びるようにポンプケーシング12の外側に配置された直管状の縦パイプ37とを備える。第2実施形態の第2給気配管40は、縦パイプ37内に配置された吸気パイプ41と、横パイプ36とポンプケーシング12の間に配置された給気パイプ42とを備える。
【0065】
横パイプ36は、中空状の円環パイプであり、ベルマウス16の外周に配置されている。横パイプ36の内径は、外筒17の最大外径と概ね同一である。横パイプ36は、ポンプケーシング12と同軸に位置するように、外筒17の最小外径部分と同じ高さに配置され、リブ(図示せず)によって固定されている。これにより、横パイプ36と外筒17の間には定められた隙間(流路)が形成されている。
【0066】
縦パイプ37は、中空状の直管パイプであり、上端がカバー37aによって液密かつ気密に塞がれている。縦パイプ37の下端は、横パイプ36に空間的に連通するように、横パイプ36に接続されている。本実施形態では4本の縦パイプ37が、ポンプケーシング12を中心として周方向に所定間隔をあけて配置されている。縦パイプ37の上端は、吸気パイプ41の上端(排気口41c)よりも高い位置に配置されている。
【0067】
第2実施形態の第1給気配管30は、横パイプ36の外側に位置するように配置されている。接続部30dは、横パイプ36と同じ高さで屈曲され、第1実施形態と同様に、先端の給気口30bが内筒18のフレア部18bに接続されている。
【0068】
第2給気配管40の吸気パイプ41は、縦パイプ37内に配置された概ね直管状のパイプからなる。吸気パイプ41の下端には、外向きに屈曲された屈曲部41bが設けられている。屈曲部41bは排水遮断水位LLWLに位置する横パイプ36を貫通し、横パイプ36の屈曲部41bが貫通する部分は液密にシールされている。屈曲部41bの先端の吸気口41aは、排水遮断水位LLWLと同じ高さに位置し、吸水槽1内に露出している。吸気パイプ41は、最高水位HWLに吸込揚程ΔHaを加えた位置よりも高い位置まで延び、上端の排気口41cが縦パイプ37内で開口している。
【0069】
第2給気配管40の給気パイプ42は直管状のパイプであり、内端の給気口42aが外筒17の筒部17aに接続され、外端の接続口42bが横パイプ36の内周に接続されている。つまり、給気パイプ42は、縦パイプ37と横パイプ36を介して吸気パイプ41に連通しており、第2給気配管40は渦防止配管35を流路として兼用している。また、給気パイプ42の給気口42aは、第1給気配管30の給気口30bよりも上側に位置するように、ベルマウス16を構成する外筒17に接続されている。
【0070】
図8に最も明瞭に示すように、本実施形態では4本の縦パイプ37内に吸気パイプ41がそれぞれ配置されている。また、4本の給気パイプ42が、ポンプケーシング12を中心として周方向に等間隔で配置されている。4本の給気パイプ42と4本の縦パイプ37とは、周方向に間隔をあけて配置され、平面視での角度位置が一致しないように構成されている。これにより、縦パイプ37から横パイプ36に流入した空気は、給気パイプ42に直接流れることなく、必ず横パイプ36内を通って給気パイプ42に流れ、給気パイプ42からベルマウス16内に均等に供給される。その結果、給気が局部に偏ることによるポンプ10の振動を抑制する。
【0071】
この第2実施形態のポンプ10によれば、排水運転では、吸水槽1内の水位が渦発生水位になっても、渦防止配管35によって空気吸込渦の発生を抑制できる。また、気水混合運転では、ポンプ10の吸引力によって、吸水槽1内の空気を第1給気配管30からポンプケーシング12内へ供給できる。エアロック運転では、吸気口41aから吸い込まれた空気は、吸気パイプ41、縦パイプ37、横パイプ36、及び給気パイプ42を介してポンプケーシング12内に供給される。
【0072】
以上のように、第2実施形態のポンプ10では、第1実施形態と同様に、吸水槽1の底壁3とポンプケーシング12の下端との間隔を確保でき、浅い吸水槽1であってもポンプ10を設置できる。また、二重ラッパ管からなるベルマウス16によって水中渦の発生を抑制でき、渦防止配管35を構成する4本の縦パイプ37によって空気吸込渦の発生を抑制できるため、ポンプ10によって排水可能な水位を効果的に低くできる。
【0073】
(第3実施形態)
図9及び
図10は第3実施形態のポンプ10を示す。この第3実施形態では、ポンプ10を排水運転から気水混合運転に切り換える第1給気配管45を、渦防止配管35に組み込んだ点で第2実施形態と相違する。
【0074】
具体的には、渦防止配管35は、第2実施形態と同様に、1本の横パイプ36と、4本の縦パイプ37を備える。そのうち、流入方向上流側に位置する一方の縦パイプ37Aは、横パイプ36内と空間的に連通しないように、横パイプ36に接続されている。残りの縦パイプ37Bは、横パイプ36内と空間的に連通するように、横パイプ36に接続されている。そして、縦パイプ37Bと横パイプ36には、第2実施形態と同様に、第2給気配管40を構成する吸気パイプ41と給気パイプ42とが接続されている。
【0075】
第3実施形態の第1給気配管45は、渦防止配管35の縦パイプ37Aを吸気パイプとして兼用し、この縦パイプ37Aの下端に給気パイプ46を接続した構成である。
【0076】
吸気パイプを構成する縦パイプ37Aの上端は、第1実施形態と同様に、カバー37aによって塞がれている。縦パイプ37Aには、最高水位HWLよりも上方に位置するように、吸気口37bが設けられている。
【0077】
給気パイプ46は、縦パイプ37A内と空間的に連続するように、縦パイプ37の下端に接続されている。本実施形態では2本の給気パイプ46を用い、45度間隔をあけた異なる位置から内筒18のフレア部18bに空気を供給可能としている。
図10に最も明瞭に示すように、個々の給気パイプ46は、回転軸22を中心として周方向に延びる連続部46bと、連続部46bの先端から屈曲された接続部46cとを備える。接続部46cは、各実施形態と同様に外筒17を貫通され、先端の給気口46aが内筒18のフレア部18bに接続されている。
【0078】
この第3実施形態のポンプ10によれば、各実施形態と同様に、吸水槽1内の水位に応じて排水運転、気水混合運転及びエアロック運転に切り換わる。よって、各実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。また、排水運転から気水混合運転に切り換える第1給気配管45と、気水混合運転からエアロック運転に切り換える第2給気配管40とが、空気吸込渦の発生を抑制する渦防止配管35に組み込まれているため、ポンプケーシング12の外側に配置する配管構造を簡素化できる。
【0079】
(第4実施形態)
図11及び
図12は第4実施形態のポンプ10を示す。この第4実施形態では、渦防止配管35を介して供給される空気の流動性を向上した点で、第3実施形態と相違する。
【0080】
詳しくは、第4実施形態の渦防止配管35は、第3実施形態と同様に、円環状の横パイプ36と4本の縦パイプ37A,37Bとを備える。そのうち、縦パイプ37A,37Bの下部には、ベルマウス16に向けてポンプケーシング12の径方向内向きに屈曲した屈曲部37cが設けられている。ポンプケーシング12の軸線に沿って延びる部分に対する屈曲部37cの傾斜角度は、90度よりも広く180度よりも狭い範囲であり、本実施形態では157.5度としている。
【0081】
第1給気配管45の給気パイプ46は、第3実施形態と同様に、縦パイプ37Aの下端に接続されている。第2給気配管40の吸気パイプ41は、縦パイプ37Bの屈曲部37cを貫通し、吸気口41aが排水遮断水位LLWLに位置するように、配管されている。屈曲部37cにおける吸気パイプ41の貫通部分は液密にシールされている。
【0082】
この第4実施形態のポンプ10によれば、第3実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。しかも、縦パイプ37A,37Bに屈曲部37cが設けられているため、外筒17及び内筒18への空気の流動抵抗を軽減できる。よって、気水混合運転及びエアロック運転に切り換えるための空気を効率的に供給できる。
【0083】
なお、本発明の先行待機形ポンプ10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0084】
例えば、第1給気配管30,45を内筒18のフレア部18bに接続すれば、ベルマウス16の内筒18は外筒17から下方に突出しない構成としてもよい。また、給気配管30,45の吸気口30a,37bは、据付床2上に配置してもよい。第2実施形態から第4実施形態に示す第2給気配管40の給気パイプ42は、第1実施形態と同様に、外筒17を貫通させて内筒18に接続してもよい。
【0085】
ポンプケーシング12の内外が常に空間的に連通していれば、第1給気配管30,45と第2給気配管33,40にはオリフィス(絞り)を設けてもよい。渦防止配管35を配置する場合であっても、第1実施形態に示す第1給気配管30と第2給気配管33を、独立して配管してもよい。