特許第6985989号(P6985989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985989
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】プレス成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/20 20060101AFI20211213BHJP
   B21D 22/26 20060101ALI20211213BHJP
   B21D 24/00 20060101ALI20211213BHJP
   B21D 5/01 20060101ALI20211213BHJP
   B21D 37/08 20060101ALI20211213BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   B21D22/20 G
   B21D22/26 C
   B21D22/26 D
   B21D24/00 Z
   B21D5/01 D
   B21D5/01 M
   B21D37/08
   B62D25/04 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-121198(P2018-121198)
(22)【出願日】2018年6月26日
(65)【公開番号】特開2020-1055(P2020-1055A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2020年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】阪本 和紀
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 憲一
(72)【発明者】
【氏名】史 棟勇
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6340389(JP,B2)
【文献】 特許第6179696(JP,B1)
【文献】 国際公開第2016/075937(WO,A1)
【文献】 特開2017−177115(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/103138(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/20
B21D 22/26
B21D 24/00
B21D 5/01
B21D 37/08
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースワークにパッチワークを溶接して増厚部を形成したパッチワークブランクを準備し、
前記パッチワークブランクの前記増厚部のみを曲げ加工し、
前記増厚部の曲げ加工とは異なる工程で前記増厚部以外の部分を曲げ加工する
ことを含
前記増厚部のみを挟み込んで曲げ加工する第1機構と、前記増厚部以外の部分を曲げ加工する第2機構とを備えるプレス成形装置を使用して前記パッチワークブランクの曲げ加工を行う、プレス成形品の製造方法。
【請求項2】
前記第1機構は、鉛直方向に駆動して前記増厚部に鉛直方向のプレス荷重を加え、
前記第2機構は、前記第1機構の鉛直方向のプレス荷重を鉛直方向から傾斜した方向に変換するカム機構を有し、前記カム機構によって鉛直方向から傾斜した方向に駆動して前記増厚部以外の部分に鉛直方向から傾斜した方向のプレス荷重を加える、請求項に記載のプレス成形品の製造方法。
【請求項3】
前記第1機構は、前記増厚部の形状に対応した第1曲げ駒を有し、
前記第2機構は、前記増厚部以外の部分の形状に対応した第2曲げ駒を有する、請求項に記載のプレス成形品の製造方法。
【請求項4】
前記パッチワークブランクは、軟鋼ないしホットスタンプ材からなる、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法。
【請求項5】
前記プレス成形品は自動車のBピラーであり、断面形状がハット形である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の骨格部材を金属板のプレス成形により製造する技術が知られている。当該技術分野では、様々な強度設計に対応すべく、板厚が一定の金属板だけでなく増厚部を有する金属板をプレス成形することが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、板状のベースワークに板状のパッチワークを溶接して増厚部を形成したパッチワークブランクをハット形にプレス成形するプレス成形技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−177115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたプレス成形技術では、ベースワークとパッチワークの接合部に曲げ応力が集中し、当該接合部において意図しない割れや折れ曲がりが生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、プレス成形品を製造する方法において、増厚部を有するパッチワークブランクのプレス成形の際の意図しない割れや折れ曲がりを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、ベースワークにパッチワークを溶接して増厚部を形成したパッチワークブランクを準備し、前記パッチワークブランクの前記増厚部のみを曲げ加工し、前記増厚部の曲げ加工とは異なる工程で前記増厚部以外の部分を曲げ加工することを含む、プレス成形品の製造方法を備えるプレス成形品の製造方法を提供する。
【0008】
この方法によれば、増厚部とそれ以外の部分とで曲げ加工の工程を分けているため、ベースワークとパッチワークの接合部に応力が集中することを防止でき、当該接合部において意図しない割れや折れ曲がりが発生することを防止できる。従って、それぞれの部分を正確に曲げ加工できる。ここで、「異なる工程」とは広義に解釈されるものであり、同時に行われるものを除き、多段階で行われるものを示す。従って、「異なる工程」には、複数回のプレスに分けて曲げ加工を行うものだけでなく、1回のプレスで多段階で曲げ加工を行うものを含む。なお、増厚部の曲げ加工の工程と、増厚部以外の部分の曲げ加工の工程とは、いずれが先に実行されてもよい。また、ここでの「曲げ加工」とは、絞り加工を含む広義の概念である。
【0009】
前記増厚部のみを曲げ加工する第1機構と、前記増厚部以外の部分を曲げ加工する第2機構とを備えるプレス成形装置を使用して前記パッチワークブランクの曲げ加工を行ってもよい。
【0010】
この方法によれば、増厚部とそれ以外の部分とを曲げ加工する機構を第1機構と第2機構とに分けているため、増厚部とそれ以外の部分とをそれぞれ正確に曲げ加工できる。
【0011】
前記第1機構は、鉛直方向に駆動して前記増厚部に鉛直方向のプレス荷重を加え、前記第2機構は、前記第1機構の鉛直方向のプレス荷重を鉛直方向から傾斜した方向に変換するカム機構を有し、前記カム機構によって鉛直方向から傾斜した方向に駆動して前記増厚部以外の部分に鉛直方向から傾斜した方向のプレス荷重を加えてもよい。
【0012】
この方法によれば、第1機構と第2機構とによって1つのプレス成形装置で2つのプレス方向を実現できる。従って、ハット形状のような複数の曲げ部を有する形状を正確に曲げ加工できる。好ましくは、第1機構と第2機構は連動し、プレス成形装置の1回のプレスで2段階の曲げ加工を行う。
【0013】
前記第1機構は、前記増厚部の形状に対応した第1曲げ駒を有し、前記第2機構は、前記増厚部以外の部分の形状に対応した第2曲げ駒を有してもよい。
【0014】
この方法によれば、第1曲げ駒によって増厚部を曲げ加工できるともに、第2曲げ駒によって増厚部以外の部分を曲げ加工できる。これらの2つの曲げ駒を付け替えて使用することで、簡易な構成の1つのプレス成形装置で2つの工程の曲げ加工を実現できる。
【0015】
前記パッチワークブランクは、軟鋼ないしホットスタンプ材からなってもよい。
【0016】
この方法によれば、軟鋼ないしホットスタンプ材のように曲げ加工性が良好な部材をパッチワークブランクに使用することで、意図しない割れや折れ曲がりを一層防止できる。また、軟鋼ないしホットスタンプ材のような強度が比較的に低い部材には、増厚部を設けるなどして補強することが必要となることがある。従って、増厚部を形成して補強するとともに、上記方法によって意図しない割れや折れ曲がりを防止して正確な曲げ加工を実現できることは有効である。
【0017】
前記プレス成形品は自動車のBピラーであり、断面形状がハット形であってもよい。
【0018】
この方法によれば、Bピラーを好適に製造できる。自動車のBピラーは、側面衝突に対して車室内を保護するために一定の強度を要する。また、組み立て性を考慮して正確なハット形が求められる。従って、上記方法を使用することで、高強度であるとともに正確なハット形のBピラーを製造できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プレス成形品を製造する方法において、増厚部とそれ以外の部分とで曲げ加工の工程を分けているため、パッチワークブランクのプレス成形の際の意図しない割れや折れ曲がりを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】自動車骨格の斜視図。
図2】Bピラーの斜視図。
図3】本発明の第1実施形態に係るプレス成形品の製造方法を実行するプレス成形装置を示す断面図。
図4】第1実施形態の準備工程を示す正面図。
図5】第1実施形態の第1の曲げ加工前を示す正面図。
図6】第1実施形態の第1の曲げ加工後かつ第2の曲げ工程前を示す正面図。
図7】第1実施形態の第2の曲げ加工後を示す正面図。
図8】ハット形にプレス成形されたパッチワークブランクを示す正面図。
図9】第2実施形態の第1曲げ工程を示す正面図。
図10】第2実施形態の第2曲げ工程を示す正面図。
図11】第2実施形態の第1変形例における第1曲げ工程を示す正面図。
図12】第2実施形態の第2変形例における第2曲げ工程を示す正面図。
図13】第2実施形態の第2変形例における第1曲げ工程を示す正面図。
図14】第2実施形態の第2変形例における第2曲げ工程を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0022】
(第1実施形態)
本実施形態に係るプレス成形品の製造方法は、パッチワークブランクをプレス成形して所望の形状のプレス成形品を得るものである。本方法は、特に自動車の骨格(図1参照)を構成する部材を形成するために使用されることができる。以下では、本方法を使用してBピラー100(図2参照)を製造する方法について説明する。後に詳述するように、このプレス成形は、第1の曲げ加工と第2の曲げ加工とにより実行される。
【0023】
図3を参照して、プレス成形装置10は、板状のパッチワークブランク1をハット形にプレス成形する装置である。パッチワークブランク1は、板状のベースワーク2に2枚の板状のパッチワーク3を溶接して2つの増厚部4を形成したものである。パッチワークブランク1は、軟鋼ないしホットスタンプ材からなり、良好な曲げ加工性を有している。例えば、ベースワーク2の厚みは1.6mmまたは1.8mmであり、パッチワーク3の厚みは1.8mmまたは2.3mmである。
【0024】
本実施形態のプレス成形装置10は、固定台11と、固定台11の上方に配置されたスライドプレート12と、金型20と、駆動機構13と、カム機構14とを備える。金型20は、ダイ21と、第1パンチ22と、第2パンチ23とを備える。また、駆動機構13とカム機構14の詳細な構成はプレス成形装置10に一般に使用されるものと相違ないため、詳細な説明および図示は省略する。
【0025】
固定台11は、固定されており不動である。固定台11にはダイ21が取り付けられている。従って、ダイ21も、固定されており不動である。
【0026】
ダイ21は、凹形状を有している。ダイ21の凹形状を構成する底面21aは、水平な平坦面となっている。底面21aの左右の両角部21bは、平坦面よりも一段下げて形成されている。これにより、パッチワークブランク1をハット形に成形した際に頂部110(図8参照)に強度向上のための絞りを形成できる。また、両角部21bから斜め上方に広がって立ち上がる2つの側面21cは、平坦面となっている。
【0027】
スライドプレート12は、駆動機構13によって上下方向(鉛直方向)に駆動され、即ち昇降可能である(矢印A1,A2参照)。本実施形態では、駆動機構13は、油圧式または機械式(サーボ式)である。駆動機構13は、スライドプレート12の昇降を停止させ、加圧状態を保持することもできる。スライドプレート12には、下向きに突出するように第1パンチ22が取り付けられている。従って、第1パンチ22も昇降可能である。
【0028】
第1パンチ22は、凸形状を有している。第1パンチ22の凸形状の頂部22aは、水平な平坦面22a1と、平坦面22a1から突出した突部22a2とを有している。突部22a2は水平方向において第1パンチ22の中央に設けられ、その幅は2枚のパッチワーク3の間に配置可能な大きさである。また、突部22a2の高さは、パッチワーク3の厚みに概ね対応している。頂部22aの左右の両角部22bは、頂部22aよりも下方へ突出している。従って、プレス成形の際には、最初に両角部22bがパッチワークブランク1に接触するようにされている。両角部22bから斜め上方に広がって立ち上がる側面22cは、段差22dのある平坦面となっている。段差22dの高さは、パッチワーク3の厚みに概ね対応している。従って、第1パンチ22の表面は、パッチワーク3の大きさに対応して突部22a2から段差22dにかけて一段下げられている。また、プレス成形の際には、鉛直方向において、段差22dの位置とダイ21の最上部の位置は対応する。従って、ダイ21と第1パンチ22とによって、増厚部4のみを挟み込むことができる。また、第1パンチ22の側面22cは、角部22eを介してフランジ面22fに接続されている。フランジ面22fは、水平方向外側に延びる平坦面となっている。
【0029】
第1パンチ22の下方であって、ダイ21の側方には、第2パンチ23が配置されている。第2パンチ23は、カム機構14と機械的に接続されており、カム機構14によって斜め上方に第1パンチ22に向かって駆動される(矢印A3参照)。カム機構14は、駆動機構13の鉛直方向(矢印A1,A2参照)の駆動力を鉛直方向から傾斜した方向(矢印A3参照)の駆動力に変換するものである。鉛直方向から傾斜した方向(矢印A3参照)は、第1パンチ22の側面22cに垂直な方向でもある。
【0030】
第2パンチ23は正面視において概ねL字型を有し、2つの第2パンチ23がダイ21を挟んで両側に配置されている。第2パンチ23は、鉛直方向に延びる基部23aと、基部23aの上端部から水平方向内側(ダイ21に向かう側)に延びる先端部23bとを備える。先端部23bの側面23cは、第1パンチ22の側面22cと対向し、第1パンチ22の側面22cおよびダイ21の側面21cと概ね平行に形成されている。第2パンチ23の上面23dは、第1パンチ22のフランジ面22fと対向し、水平方向に延びる平坦面となっている。
【0031】
本実施形態では、ダイ21と第1パンチ22と駆動機構13とが本発明の第1機構を構成し、第1パンチ22と第2パンチ23とカム機構14とが本発明の第2機構を構成する。第1機構と第2機構は、連動して駆動することが好ましい。本実施形態では、第1機構と第2機構が連動し、後述する図4〜7の各工程をプレス成形装置10の1回のプレスで実行できるようにされている。
【0032】
図4〜7は、本実施形態に係るプレス成形品の製造方法の各工程を順に示している。なお、図4〜7では、図示を明瞭にするため、パッチワークブランク1と金型20(ダイ21、第1パンチ22、および第2パンチ23)のみが示されている。
【0033】
図4は、準備工程を示している。準備工程では、パッチワークブランク1を金型20にセットする。このとき、パッチワークブランク1は、パッチワーク3が溶接された面を上側にして配置される。このように配置すると、パッチワークブランク1がハット形にプレス成形された際にハット形の内側にパッチワーク3が配置されることになり、美観を損ねない。第1パンチ22とダイ21は鉛直方向に間隔を空けて配置され、第2パンチ23はダイ21の水平方向の両側に配置される。
【0034】
図5,6は、第1の曲げ加工を実行する第1曲げ工程を示している。図5は第1の曲げ加工前を示しており、図6は第1の曲げ加工後を示している。第1曲げ工程では、増厚部4のみを曲げ加工する。「増厚部4のみを曲げ加工する」とは、プレス成形によって増厚部4のみを挟み込んで曲げ加工し、当該部分をプレス成形品(Bピラー100)の形とすることをいう。従って、当該曲げ加工に付随して増厚部4以外の部分が部分的に曲げられることもあるが、当該曲げはプレス成形品(Bピラー100)の形状とするものではなく、後に修正加工等されるものである(図6の破線円参照)。
【0035】
第1曲げ工程では、駆動機構13(図3参照)によって第1パンチ22が下降され、第1パンチ22の両角部22bがパッチワークブランク1の増厚部4に接触する。そして、ダイ21の両角部21bと第1パンチ22の両角部22bとによって増厚部4を挟み込み、パッチワークブランク1の増厚部4を曲げ加工する。本工程によって、ハット形の頂部110(図2,8参照)が成形される。
【0036】
図6,7は、第2の曲げ加工を実行する第2曲げ工程を示している。図6は第2の曲げ加工前を示しており、図7は第2の曲げ加工後を示している。第2曲げ工程では、増厚部4以外の部分を曲げ加工する。第1曲げ加工後は、図6に示すように第1パンチ22とダイ21とでパッチワークブランク1の増厚部4のみが挟み込まれた状態である。換言すれば、増厚部4以外の部分(後述するハット形のつば部120)は、挟み込まれていない。
【0037】
第2曲げ工程では、図6の状態から第1パンチ22およびダイ21のプレス圧を維持しつつ、第2パンチ23が、カム機構14(図3参照)から力を受け、斜め上方(図7の矢印参照)に駆動される。即ち、左右両側から第2パンチ23をパッチワークブランク1に近づけ、第1パンチ22と第2パンチ23とによってパッチワークブランク1の増厚部4以外の部分を挟み込み、増厚部4以外の部分を曲げ加工する。詳細には、第2パンチ23の側面23cと第1パンチ22の側面22cとによってパッチワークブランク1を挟み込むとともに、第2パンチ23の上面23dと第1パンチ22のフランジ面22fとによってパッチワークブランク1を挟み込む。本工程によって、ハット形のつば部120(図2,8参照)が成形される。
【0038】
このようにして図8に示すような増厚部4を有するハット形のBピラー100を製造することができる。
【0039】
本実施形態によれば、以下のメリットがある。
【0040】
増厚部4とそれ以外の部分とで曲げ加工の工程を分けているため、ベースワーク2とパッチワーク3の接合部に応力が集中することを防止でき、当該接合部において意図しない割れや折れ曲がりが発生することを防止できる。従って、それぞれの部分を正確に曲げ加工できる。ここで、「異なる工程」とは広義に解釈されるものであり、同時に行われるものを除き、多段階で行われるものを示す。従って、「異なる工程」には、複数回のプレスに分けて曲げ加工を行うものだけでなく、1回のプレスで多段階で曲げ加工を行うものを含む。なお、増厚部4の曲げ加工の工程と、増厚部4以外の部分の曲げ加工の工程とは、いずれが先に実行されてもよい。
【0041】
増厚部4とそれ以外の部分とを曲げ加工する機構を第1機構と第2機構とに分けているため、増厚部4とそれ以外の部分とをそれぞれ正確に曲げ加工できる。
【0042】
第1機構と第2機構とによって1つのプレス成形装置10で2つのプレス方向を実現できる。従って、ハット形状のような複数の曲げ部を有する形状を正確に曲げ加工できる。好ましくは、第1機構と第2機構は連動し、プレス成形装置10の1回のプレスで2段階の曲げ加工を行う。
【0043】
軟鋼ないしホットスタンプ材のように曲げ加工性が良好な部材をパッチワークブランク1に使用しているため、意図しない割れや折れ曲がりを一層防止できる。また、軟鋼ないしホットスタンプ材のような強度が比較的に低い部材には、増厚部4を設けるなどして補強することが必要となることがある。従って、増厚部4を形成して補強するとともに、上記方法によって意図しない割れや折れ曲がりを防止して正確な曲げ加工を実現できることは有効である。
【0044】
自動車のBピラーは、側面衝突に対して車室内を保護するために一定の強度を要する。また、組み立て性を考慮して正確なハット形が求められる。従って、本実施形態の方法を使用することで、高強度であるとともに正確なハット形のBピラー100を製造できる。
【0045】
(第2実施形態)
図9,10に示す第2実施形態では、第1実施形態のダイ21(図3参照)として2種類の曲げ駒30,40を使用する。また、パッチワーク3の形状が第1実施形態と異なる。これらに関する以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態と同じ部分については説明を省略する場合がある。
【0046】
図9は第1曲げ工程を示し、図10は第2曲げ加工を示している。
【0047】
第1の曲げ工程では、第1曲げ駒30を使用して増厚部4を曲げ加工する。第1曲げ駒30は、増厚部4の形状に対応した形状を有している。第1曲げ駒30は、第1パンチ22の左右に配置された第1側部曲げ駒31と、第1側部曲げ駒31の間に配置された第1下部曲げ駒32とを備える。第1側部曲げ駒31は、第1パンチ22の角部22bから段差22dまでの部分に対向して配置され、当該部分のパッチワークブランク1を第1パンチ22とともに挟み込んで曲げ加工する。第1下部曲げ駒32は、第1パンチ22の角部22eから頂部22aまでの部分に対向して配置され、当該部分のパッチワークブランク1を第1パンチ22とともに挟み込んで曲げ加工する。
【0048】
第2の曲げ工程では、第2曲げ駒40を使用して増厚部4以外の部分を曲げ加工する。第2曲げ駒40は、増厚部4以外の部分の形状にも対応した形状を有している。第2曲げ駒40は、第1パンチ22の左右に配置された第2側部曲げ駒41と、第2側部曲げ駒41の間に配置された第2下部曲げ駒42とを備える。第2側部曲げ駒41は、第1パンチ22の角部22bからフランジ面22fまでの部分に対向して配置され、当該部分のパッチワークブランク1を第1パンチ22とともに挟み込んで曲げ加工する。第2下部曲げ駒42は、第1下部曲げ駒32と同じものである。
【0049】
1つのプレス成形装置10で第1曲げ工程と第2曲げ工程とを実行するためには、2回のプレスを行う。具体的には、第1曲げ工程にて1回目のプレスを実行した後に、プレス成形装置10の第1曲げ駒30を第2曲げ駒40に交換し、第2曲げ工程にて2回目のプレスを実行する。
【0050】
(第1変形例)
図11,12に示す第2実施形態の第1変形例のように、第1曲げ駒30は、一体型であってもよい。同様に、第2曲げ駒40も、一体型であってもよい。曲げ加工の態様については前述と同様である。
【0051】
(第2変形例)
図13,14に示す第2実施形態の第2変形例のように、2段階で絞り加工(曲げ加工)を行ってもよい。本変形例では、まず、図13を参照して、第1曲げ駒35と浅絞りパンチ24とで浅い絞り加工を行っている。次に、図14を参照して、第2曲げ駒45と深絞りパンチ25とで深絞り加工を行っている。
【0052】
浅絞りパンチ24および深絞りパンチ25は、前述の第2実施形態の第1パンチ22(図9参照)と概ね同じ形状を有している。ただし、本変形例では、ベースワーク2に1枚のパッチワーク3が溶接されたパッチワークブランク1を絞り加工している。パッチワーク3は、パッチワークブランク1がハット形に形成された際に頂部110(図8参照)全体を覆うようにベースワーク2に溶接されている。このパッチワークブランク1の形状に対応して、本変形例の浅絞りパンチ24および深絞りパンチ25は前述の突部22a2(図3参照)を有していない。また、浅絞りパンチ24は、深絞りパンチ25よりも相対的に下方への突出量が小さく、本変形例では突出量が深絞りパンチ25の半分程度である。
【0053】
第1曲げ駒35は、前述の第2実施形態の第1曲げ駒30(図9参照)と実質的に同じ形状を有している。また、第2曲げ駒45も、前述の第2実施形態の第2曲げ駒40(図9参照)と実質的に同じ形状を有している。
【0054】
本実施形態およびその変形例によれば、第1曲げ駒30によって増厚部4を曲げ加工できるともに、第2曲げ駒40によって増厚部4以外の部分を曲げ加工できる。これらの2つの曲げ駒30,40を付け替えて使用することで、簡易な構成の1つのプレス成形装置10で2つの工程の曲げ加工を実現できる。
【0055】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【0056】
また、本発明の適用対象は上述のBピラー100に限定されない。例えば、車両用骨格部材のドアビームおよびロッカー等に対しても本発明は適用可能である。
【0057】
また、上記各実施形態では、1枚または2枚のパッチワーク3をベースワーク2に溶接したパッチワークブランク1を曲げ加工する例について説明したが、溶接するパッチワーク3の枚数は特に限定されず、3枚以上であってもよい。パッチワークブランク1の曲げ加工形状もハット形に限定されず、パッチワークブランク1は任意の形状に曲げ加工され得る。
【符号の説明】
【0058】
1 パッチワークブランク
2 ベースワーク
3 パッチワーク
4 増厚部
10 プレス成形装置
11 固定台
12 スライドプレート
13 駆動機構(第1機構)
14 カム機構(第2機構)
20 金型
21 ダイ(第1機構)
21a 底面
21b 角部
21c 側面
22 第1パンチ(第1機構、第2機構)
22a 頂部
22a1 平坦面
22a2 突部
22b 角部
22c 側面
22d 段差
22e 角部
22f フランジ面
23 第2パンチ(第2機構)
23a 基部
23b 先端部
23c 側面
23d 上面
24 浅絞りパンチ(第1機構)
25 深絞りパンチ(第2機構)
30,35 第1曲げ駒(第1機構)
31 第1側部曲げ駒
32 第1下部曲げ駒
40,45 第2曲げ駒(第2機構)
41 第2側部曲げ駒
42 第2下部曲げ駒
100 Bピラー
110 頂部
120 つば部
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