(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の帯域通過フィルタにおいて、前記1組の層のセットは、約1100ナノメートル(nm)〜2000nmの間におけるスペクトル範囲に関連する光の閾値部分を通過させるよう構成されている、帯域通過フィルタ。
請求項1記載の帯域通過フィルタにおいて、前記1組の層のセットは、約1400ナノメートル(nm)〜2000nmの間におけるスペクトル範囲に関連する光の閾値部分を通過させるよう構成されている、帯域通過フィルタ。
請求項1記載の帯域通過フィルタにおいて、前記1組の層のセットは、約1550ナノメートルの中心波長を有するスペクトル範囲に関連する光の閾値部分を通過させるよう構成されている、帯域通過フィルタ。
請求項1記載の帯域通過フィルタにおいて、前記層の第1サブセットは、中心波長が約1550ナノメートルのスペクトル範囲で約0.01未満の吸光係数を有する、帯域通過フィルタ。
請求項1記載の帯域通過フィルタにおいて、スペクトル範囲の中心波長に対する変化は、0゜〜40゜の入射角に関して40ナノメートル未満である、帯域通過フィルタ。
請求項1記載の帯域通過フィルタにおいて、スペクトル範囲の中心波長に対する変化は、0゜〜40゜の入射角に関して30ナノメートル未満である、帯域通過フィルタ。
請求項1記載の帯域通過フィルタにおいて、スペクトル範囲の中心波長に対する変化は、0゜〜30゜の入射角に関して20ナノメートル未満である、帯域通過フィルタ。
請求項1記載の帯域通過フィルタにおいて、スペクトル範囲の中心波長に対する変化は、0゜〜20゜の入射角に関して10ナノメートル未満である、帯域通過フィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
例示的実施形態の詳細を以下に添付図面につき説明する。異なる図面における同一参照符号は、同一又は類似の素子を特定することができる。
【0008】
光センサデバイスは、光トランスミッタ、電球、外光源等のような光源から発生する光を受光するセンサ素子のセンサ素子アレイを有することができる。光センサデバイスは、1つ又はそれ以上のセンサ技術を利用することができ、例えば、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)技術、電荷結合素子(CCD)技術等を利用することができる。光センサデバイスのセンサ素子(例えば、光センサ)は、1組の電磁的周波数のセットに関する情報(例えば、スペクトルデータ)を捕捉することができる。センサ素子は、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)をベースとするセンサ素子、シリコンゲルマニウム(SiGe)をベースとするセンサ素子、等々とすることができる。
【0009】
センサ素子は、センサ素子への光をフィルタ処理するフィルタに関連付けして、センサ素子が電磁的周波数の特定スペクトル範囲に関する情報を捕捉できるようにする。例えば、センサ素子は、約1100ナノメートル(nm)〜約2000(nm)のスペクトル範囲、約1500ナノメートル(nm)〜約1600(nm)のスペクトル範囲、約1550nmの中心波長があるスペクトル範囲等における通過帯域を有するフィルタに整列させ、センサ素子に指向する光の一部をフィルタ処理させる。フィルタは、光の一部をフィルタ処理する誘電体層のセットを有することができる。例えば、フィルタは、高屈折率層及び低屈折率層を交互配置する誘電体フィルタのスタックを有することができ、例えば、高屈折率材料として水素化シリコン(Si:H若しくはSiH)又はゲルマニウム(Ge)及び低屈折率材料として二酸化ケイ素(SiO
2)を交互配置する。しかし、約1550nmの中心波長を有するスペクトル範囲に関連するフィルタのために高屈折率材料として水素化シリコンを使用することは、過剰な角度シフト(例えば、閾値よりも大きい角度シフト)を生ずる結果となるおそれがある。さらに、高屈折率材料としてゲルマニウムを使用することは、約1550nmに中心がある通過帯域用の閾値透過率よりも低い、例えば、約1550nmの波長で約20%より低い透過率となる結果を生じ得る。
【0010】
本明細書に記載の幾つかの実施形態は、高屈折率材料として水素化ゲルマニウム(Ge:H若しくはGeH)を使用し、これにより閾値よりも小さい角度シフトを生ずる結果となる光学フィルタを提供する。例えば、光学フィルタは、水素化ゲルマニウム若しくはアニール処理(焼鈍)した水素化ゲルマニウムによる1つ又はそれ以上の層と、及び二酸化ケイ素による1つ又はそれ以上の層とを備え、約1550nmの波長に中心がある通過帯域に対して、45゜の入射角で約100nmより少ない角度シフト、30゜の入射角で約30nmより少ない角度シフト、15゜の入射角で約10nmより少ない角度シフト、等々をもたらすことができる。さらに、水素化ゲルマニウム及び/又はアニール処理した水素化ゲルマニウムを使用する光学フィルタは、約1550nmの波長に中心がある通過帯域に対して、閾値レベルよりも高い透過率、例えば、約40%より高い、約80%より高い、約85%より高い、等の高い透過率をもたらすことができる。このようにして、本明細書に記載の幾つかの実施形態において、閾値より少ない角度シフトかつ閾値レベルより大きい透過率で光をフィルタ処理する。
【0011】
図1A〜1Cは、本明細書に記載の例示的実施形態100/100′/100″の概略図である。
図1Aに示すように、例示的実施形態100は、センサシステム110を備える。センサシステム110は、光学系の一部分であり、またセンサ決定に対応する電気出力を供給することができる。センサシステム110は、光学フィルタ130を含む光学フィルタ構体120と、及び光センサ140とを有する。例えば、光学フィルタ構体120は、通過帯域フィルタ処理する機能を実施する光学フィルタ130を含むことができる。他の実施例において、光学フィルタ130は、光センサ140におけるセンサ素子のアレイに整列することができる。
【0012】
本明細書に記載の幾つかの実施形態は、センサシステムにおける光学フィルタに関して説明するが、本明細書に記載の実施形態は他タイプのシステムに使用することができ、センサシステム等の外部で使用することができる。
【0013】
図1Aにさらに示すように、参照符号150は、光学フィルタ構体120に向かって指向する入力光信号である。入力光信号は、限定しないが、1500nm〜1600nmのスペクトル範囲、1100nm〜2000nmのスペクトル範囲、等々のような、特定スペクトル範囲(約1550nmに中心があるスペクトル範囲)に関連する光を含むことができる。例えば、光トランスミッタ(光送信機)は、光を光センサ140に向かうよう指向させ、光センサ140が光の測定を実施できるようにすることができる。他の実施例において、光トランスミッタは、検査機能性、感知機能性、通信機能性、等々のような他の機能向けに光の他のスペクトル範囲を指向させることができる。
【0014】
さらに
図1Aに参照符号160で示すように、光信号の第1スペクトル範囲を有する第1部分は、光学フィルタ130及び光学フィルタ構体120によって通過することができない。例えば、光学フィルタ130の高屈折率材料層及び低屈折率材料を含むことができる誘電体薄膜層における誘電体フィルタのスタックによれば、光の第1部分を第1方向に反射させる、吸収させる等々を行わせることができる。このケースにおいて、光の第1部分は、光学フィルタ130に入射する光学フィルタ130の通過帯域には含まれず、約1550nmに中心がある特定スペクトル範囲内ではない光の95%より多い光の閾値部分であり得る。参照符号170で示すように、光信号の第2部分は光学フィルタ130及び光学フィルタ構体120によって通過する。例えば、光学フィルタ130は、第2スペクトル範囲を有する光の第2部分を第2方向に光センサ140に向けて通過することができる。この場合、光の第2部分は、光学フィルタ130に入射する光学フィルタ130の通過帯域内であり、例えば、約1550nmに中心がある特定スペクトル範囲内における入射光の50%より多い光の閾値部分であり得る。
【0015】
さらに
図1Aに示すように、光センサ140まで通過している光信号の第2部分に基づいて、光センサ140は、例えば、画像化、外光感知、物体存在検出、測定実施、通信円滑化、等々に使用するための電気出力信号をセンサシステム110に供給することができる。幾つかの実施形態において、光学フィルタ130及び光センサ140の他の構成を利用することができる。例えば、入力光信号と共線的に光信号の第2部分を通過させるのではなく、光学フィルタ130は光信号の第2部分を異なる位置に配置した光センサ140に向けて他の方向に指向させることができる。
【0016】
図1Bに示すように、他の例示的実施形態100′は、光センサ140を形成し、また光学フィルタ構体120の基板に一体化したセンサ素子アレイにおける1組のセンサ素子のセットを備える。この場合、光学フィルタ130は基板上に直接配置される。入力光信号150-1及び150-2は、複数の異なる角度で受光され、また入力光信号150-1及び150-2の第1部分160-1及び160-2は複数の異なる角度に反射する。入力光信号150-1及び150-2の第2部分は、光学フィルタ130から光センサ140を形成するセンサ素子アレイまで通過し、これにより出力電気信号180を供給する。
【0017】
図1Cに示すように、他の例示的実施形態100″は、光センサ140を形成し、また光学フィルタ構体120から(例えば、光学系の自由空間光通信タイプにおける自由空間によって)離されているセンサ素子アレイにおける1組のセンサ素子のセットを備える。この場合、光学フィルタ130は光学フィルタ構体120上に配置される。入力光信号150-1及び150-2は、光学フィルタ130で複数の異なる角度で受光される。入力光信号150-1及び150-2の第1部分160-1及び160-2は複数の異なる角度に反射し、また入力光信号150-1及び150-2の第2部分170-1及び170-2は光学フィルタ130及び光学フィルタ構体120によって通過する。この第2部分170-1及び170-2を受光することに基づいて、センサ素子アレイは出力電気信号180を供給する。
【0018】
上述したように、
図1A〜1Cは単に例として提示するものである。他の実施例も可能であり、また
図1A〜1Cにつき説明されたのと異なるものであり得る。
【0019】
図2は例示的な光学フィルタ200の概略図である。
図2は、高屈折率材料として水素化ゲルマニウムを使用する光学フィルタの例示的積層体を示す。さらに
図2に示すように、光学フィルタ200は、光学フィルタのコーティング部分210と、及び基板220とを備える。
【0020】
光学フィルタのコーティング部分210は1組の光学フィルタ層のセットを有する。例えば、光学フィルタのコーティング部分210は、層230-1〜230-N(N≧1)の第1セット(例えば、高屈折率層(H層))と、層240-1〜240-(N+1)の第2セット(例えば、低屈折率層(L層))とを有する。幾つかの実施形態において、層230及び240は、特別な順序、例えば(H-L)
m(m≧1)順序、(L-H)
m順序、L-(H-L)
m等々の順序で配列することができる。例えば、図示のように、層230及び240は、H層を光学フィルタ200の表面上に配置し、またH層が基板220の表面に隣接する状態で(H-L)
m-Hの順序で位置決めする。幾つかの実施形態において、1つ又はそれ以上の他の層を光学フィルタ200に設けることができ、例えば、1つ又はそれ以上の保護層、1つ又はそれ以上のフィルタ処理機能(例えば、ブロッカー、反射防止コーティング等)を提供する1つ又はそれ以上の層を設けることができる。
【0021】
層230は、1組の水素化ゲルマニウム層のセットを含むことができる。幾つかの実施形態において、H層用に他の材料を使用することができ、例えば、特定スペクトル範囲(例えば、約1100nm〜2000nmのスペクトル範囲、約1400nm〜1600nmのスペクトル範囲、約1550nmの波長、等々)にわたり、L層の屈折率よりも大きい屈折率、2.0より大きい屈折率、3.0より大きい屈折率、4.0より大きい屈折率、4.5より大きい屈折率、4.6より大きい等の屈折率、を有する他の材料を利用することができる。他の実施例において、層230は、約1550nmの波長で約4.2の屈折率を有するものを選択することができる。
【0022】
幾つかの実施形態において、H層230用に特別な水素化ゲルマニウムをベースとする材料、例えば、水素化ゲルマニウム、アニール処理した水素化ゲルマニウム等々を選択することができる。幾つかの実施形態において、層230及び/又は240は特定吸光係数に関連することができ、例えば、約1550nmで、約0.1未満、約0.05未満、約0.01未満、約0.005未満の吸光係数、特定スペクトル範囲にわたり(例えば、約800nm〜約2300nmのスペクトル範囲、約1100nm〜約2000nmのスペクトル範囲、又は約1550nmの波長、等々)、約0.001未満の吸光係数、約0.0008未満の吸光係数、等々の吸光係数に関連することができる。
【0023】
層240は、1組の二酸化ケイ素(SiO
2)層のセットを含むことができる。幾つかの実施形態において、L層用に他の材料を利用することができる。幾つかの実施形態において、L層240のために特定材料を選択することができる。例えば、層240は、二酸化ケイ素(SiO
2)層のセット、酸化アルミニウム(Al
2O
3)層のセット、二酸化チタン(TiO
2)層のセット、五酸化ニオブ(Nb
2O
5)層のセット、五酸化タンタル(Ta
2O
5)層のセット、フッ化マグネシウム(MgF
2)層のセット、等々のセットを含むことができる。この場合、層240は、例えば、特定スペクトル範囲(例えば、約1100nm〜約2000nmのスペクトル範囲、約1400nm〜約1600nmのスペクトル範囲、約1550nmの波長、等々)にわたり、層230の屈折率よりも小さい屈折率を有するよう選択することができる。例えば、層240は、特定スペクトル範囲(例えば、約1100nm〜約2000nmのスペクトル範囲、約1400nm〜約1600nmのスペクトル範囲、約800nmのスペクトル範囲、約1550nmの波長、等々)にわたり、3未満の屈折率に関連するよう選択することができる。
【0024】
他の実施例において、層240は、特定スペクトル範囲(例えば、約1100nm〜約2000nmのスペクトル範囲、約1400nm〜約1600nmのスペクトル範囲、約1550nmの波長、等々)にわたり、2.5よりも小さい屈折率に関連するよう選択することができる。他の実施例において、層240は、特定スペクトル範囲(例えば、約1100nm〜約2000nmのスペクトル範囲、約1400nm〜約1600nmのスペクトル範囲、約1550nmの波長、等々)にわたり、2よりも小さい屈折率に関連するよう選択することができる。他の実施例において、層240は、特定スペクトル範囲(例えば、約1100nm〜約2000nmのスペクトル範囲、約1400nm〜約1600nmのスペクトル範囲、約1550nmの波長、等々)にわたり、1.5よりも小さい屈折率に関連するよう選択することができる。幾つかの実施形態において、層240のための特定材料は、帯域外遮蔽スペクトル範囲の所望幅、入射角変化に関連する所望中心波長シフト、等々に基づいて選択することができる。
【0025】
幾つかの実施形態において、光学フィルタのコーティング部分210は、層の特定数、mに関連させることができる。例えば、水素化ゲルマニウムに基づく光学フィルタは、H層及びL層による約20の層を含むことができる。他の実施例において、光学フィルタ200は、他の層数、例えば2層〜1000層の範囲、4層〜50層の範囲、等々に関連することができる。幾つかの実施形態において、光学フィルタのコーティング部分210の各層は、特定厚さに関連することができる。例えば、層230及び240それぞれは、約5nm〜2000nmの間における厚さに関連することができ、この結果、光学フィルタのコーティング部分210は、約0.2μm〜100μmの間における厚さ、約0.5μm〜20μmの間における厚さ、等々の厚さに関連する。
【0026】
幾つかの実施形態において、層230及び240は複数の厚さに関連することができ、例えば、層230に対する第1厚さ、層240に対する第2厚さ、層230の第1サブセットに対する第1厚さ、層230の第2サブセットに対する第2厚さ、層240の第1サブセットに対する第1厚さ、層240の第2サブセットに対する第2厚さ、等々に関連することができる。この場合、層の厚さ及び/又は層の個数は、光学フィルタ200を、約1100nm〜約2000nmのスペクトル範囲、約1550nmの中心波長、等々に対して利用できるよう選択することができる。
【0027】
幾つかの実施形態において、光学フィルタのコーティング部分210は、スパッタリング手順を使用して作製することができる。例えば、光学フィルタのコーティング部分210は、パルス状マグネトロンに基づくスパッタリング手順を使用し、ガラス基板上に層230及び240を交互にスパッタリングして作製することができる。幾つかの実施形態において、光学フィルタのコーティング部分210は、入射角変化での比較的低い中心波長シフトに関連することができる。例えば、光学フィルタのコーティング部分210は、0゜から15゜に至る入射角変化で大きさとして約20nm未満の中心波長シフト、約15nm未満の中心波長シフト、約10nm未満、等々の中心波長シフト;0゜から30゜に至る入射角変化で約100nm未満の中心波長シフト、約50nm未満の中心波長シフト、約30nm未満、等々の中心波長シフト;0゜から45゜に至る入射角変化で約200nm未満の中心波長シフト、約150nm未満の中心波長シフト、約125nm未満、約100nm未満、等々の中心波長シフト;等々を引き起こすことができる。
【0028】
幾つかの実施形態において、光学フィルタのコーティング部分210は、基板220のような基板に付着させる。例えば、光学フィルタのコーティング部分210は、ガラス板に付着させる。幾つかの実施形態において、光学フィルタのコーティング部分210は、空気媒体又はガラス媒体のような入射媒体に関連することができる。幾つかの実施形態において、光学フィルタ200は1組のプリズムのセット間に配置することができる。
【0029】
幾つかの実施形態において、アニーリング手順を利用して光学フィルタのコーティング部分210を作製することができる。例えば、基板上に層230及び240をスパッタ堆積後に光学フィルタ200をアニール処理して光学フィルタ200の1つ又はそれ以上の光学的特性を向上させることができ、例えば、アニーリング手順を実施しない他の光学フィルタに対して光学フィルタ200の吸収係数を減少することができる。
【0030】
上述したように、
図2は単に例として提示する。他の例も可能であり、また
図2につき説明したのと異なるものとすることができる。
【0031】
図3は、本明細書に記載の水素化ゲルマニウムに基づく光学フィルタを製造するためのスパッタ堆積装置の実施例300の概略図である。
【0032】
図3に示すように、実施例300は、真空チャンバ310、基板320、カソード330、標的331、カソード電源340、アノード350、プラズマ活性化源(PAS)360、及びPAS電源370を備える。標的331はゲルマニウム材料を含むことができる。PAS電源370は、PAS360に給電するのに利用し、また高周波(RF)電源を有することができる。カソード電源340は、カソード330に給電するのに利用し、またパルス状直流(DC)電源を有することができる。
【0033】
図3につき説明すると、標的331は、水素(H
2)並びにアルゴンのような不活性ガスの存在の下にスパッタリングして、基板320上に水素化ゲルマニウム材料を層として堆積させる。不活性ガスは、アノード350及び/又はPAS360を介してチャンバ内に供給することができる。水素は、水素を活性化するよう作用するPAS360から真空チャンバ310内に導入する。付加的又は代替的に、カソード330が水素活性化を引き起こすことができ(例えば、この場合、水素は真空チャンバ310の他の部分から導入することができる)、又はアノード350が水素活性化を引き起こすことができ(例えば、この場合、水素はアノード350によって真空チャンバ310内に導入することができる)。幾つかの実施形態において、水素は、水素ガス、水素ガスと希ガス(例えば、アルゴンガス)の混合気、等々の形式をとることができる。PAS360は、カソード330の閾値近傍内に配置して、PAS360からのプラズマ及びカソード330からのプラズマがオーバーラップできるようにする。PAS360を使用することによって、水素化ゲルマニウム層を比較的高い堆積速度で堆積させることができる。幾つかの実施形態において、水素化ゲルマニウム層は、約0.05nm/s〜約2.0nm/sの堆積速度、約0.5nm/s〜約1.2nm/sの堆積速度、約0.8nm/sの堆積速度、等々の速度で堆積される。
【0034】
本明細書でスパッタリング手順について、特定ジオメトリ及び特定実施形態の観点から説明したが、他のジオメトリ及び他の実施形態も可能である。例えば、水素は、他の方向から、カソード330に対する閾値近傍のガスマニホルドから、等々で注入することができる。本明細書で異なる成分形態の観点から説明したが、異なる材料、異なる製造プロセス、等々を用いて異なるゲルマニウム相対濃度も達成することができる。
【0035】
上述したように、
図3は単に例として提示する。他の例も可能であり、また
図3につき説明したのと異なるものとすることができる。
【0036】
図4A〜4Dは、高屈折率材料として水素化ゲルマニウムを用いる光学フィルタに関連する例を示す。
図4A〜4Dは、水素化ゲルマニウムをベースとする単一層膜に関連する特性を示す。
【0037】
図4Aにおいて、またグラフ400によって示すように、膜410-1〜410-5のセットに関する透過性を示すフィルタ応答を提示する。各膜410は、約2.5マイクロメートルの単層膜とすることができる。膜410-1は、0立方センチメートル毎分(SCCM)の流量の水素濃度に関連する。換言すれば、膜410-1は非水素化ゲルマニウムを使用する。膜410-2、410-3、410-4、及び410-5は、それぞれ20SCCM、100SCCM、160SCCM、及び200SCCMの流量の水素濃度に関連する。換言すれば、膜410-2〜410-5は、水素濃度が増加していく水素化ゲルマニウムを使用する。この場合、膜410-2〜410-5のような水素化ゲルマニウム膜は、非水素化ゲルマニウム膜410-1に比べて増加した透過率に関連する。このようにして、光学フィルタに水素化ゲルマニウムを利用することにより、向上した透過率をもたらすことができる。例えば、水素化ゲルマニウム膜における水素濃度に基づいて、水素化ゲルマニウム膜は、1100nm〜2000nmのスペクトル範囲、1400nm〜1600nmのスペクトル範囲、1550nmの波長を有するスペクトル範囲、等々に対して、20%より高い、40%より高い、60%より高い、80%より高い、85%より高い、90%より高い、等々の透過率に関連することができる。
【0038】
図4Bにおいて、またグラフ420によって示すように、膜410の屈折率及び吸光係数を提示する。1400nmの波長では、非水素化ゲルマニウム膜410-1は約0.1の吸光係数に関連し、この吸光係数は、それぞれ約0.05、約0.005、及び約0.002である、水素化ゲルマニウム膜410-2、410-3、及び410-5の吸光係数よりも大きい。同様に、1400nmの波長では、非水素化ゲルマニウム膜410-1は、それぞれ4.6、4.4及び4.3の屈折率に関連する水素化ゲルマニウム膜410-2、410-3、及び410-5と比べると、4.7の屈折率に関連する。この場合、水素化ゲルマニウム膜410-2、410-3、及び410-5は減少した吸光係数に関連するとともに、閾値屈折率(例えば、4.0より大きい、4.2より大きい、4.4より大きい、4.5より大きい、等々)を維持する。
【0039】
1550nmの波長では、非水素化ゲルマニウム膜410-1は約0.07の吸光係数に関連し、この吸光係数は、それぞれ約0.03、約0.003、及び約0.001である、水素化ゲルマニウム膜410-2、410-3、及び410-5の吸光係数よりも大きい。同様に、1550nmの波長では、非水素化ゲルマニウム膜410-1は、それぞれ4.4、4.3及び4.2の屈折率に関連する水素化ゲルマニウム膜410-2、410-3、及び410-5と比べると、4.6の屈折率に関連する。この場合、水素化ゲルマニウム膜410-2、410-3、及び410-5は減少した吸光係数に関連するとともに、閾値屈折率(例えば、4.0より大きい、4.2より大きい、4.4より大きい、等々)を維持する。
【0040】
2000nmの波長では、非水素化ゲルマニウム膜410-1は約0.05の吸光係数に関連し、この吸光係数は、それぞれ約0.005、約0.0005、及び約0.000001である、水素化ゲルマニウム膜410-2、410-3、及び410-5の吸光係数よりも大きい。同様に、1550nmの波長では、非水素化ゲルマニウム膜410-1は、それぞれ4.4、4.2及び4.1の屈折率に関連する水素化ゲルマニウム膜410-2、410-3、及び410-5と比べると、4.5の屈折率に関連する。この場合、水素化ゲルマニウム膜410-2、410-3、及び410-5は減少した吸光係数に関連するとともに、閾値屈折率(例えば、3.5より大きい、3.75より大きい、4.0より大きい、等々)を維持する。
【0041】
図4Cにおいて、またグラフ430によって示すように、水素化ゲルマニウム膜410-5及び水素化ケイ素膜410-6の屈折率を提示する。この場合、水素化ゲルマニウム膜410-5の屈折率は、それぞれ水素化ケイ素膜410-6の屈折率よりも大きい。
【0042】
図4Dにおいて、またグラフ440によって示すように、水素化ゲルマニウム膜410-5及びアニール処理した水素化ゲルマニウム膜410-5′の屈折率及び吸光係数を提示する。この場合、例えば、約300℃で60分間にわたるアニーリング手順を適用することによって、アニール済み水素化ゲルマニウム膜410-5′を形成する結果となり、上昇した屈折率(例えば、約4.3まで上昇する)を生ずる結果となり、約1550nmの中心波長を有するスペクトル範囲で、水素化ゲルマニウム膜410-5に比べて減少した吸光係数を生ずる結果となり、これにより角度シフトを減少し、また透過率を向上させる。
【0043】
上述したように、
図4A〜4Dは単に例として提示する。他の例も可能であり、また
図4A〜4Dにつき説明したのと異なるものとすることができる。
【0044】
図5A〜5Cは光学フィルタに関連する特性のグラフである。
図5A〜5Cは帯域通過に関する特性を示す。
【0045】
図5Aにおいて、またグラフ500によって示すように、水素化ゲルマニウム光学フィルタ510のフィルタ応答を提示する。光学フィルタ510は、水素化ゲルマニウム及び二酸化ケイ素の交互層を備えることができる。幾つかの実施形態において、光学フィルタ510は、5.6μmの厚さに関連することができ、また0゜の入射角に対して約1550nmに中心がある帯域通過に関連することができる。さらに、光学フィルタ510は、0゜〜40゜の入射角に対して閾値量よりも大きい透過率(例えば、約90%より大きい)に関連する。
【0046】
図5Bにおいて、またグラフ520によって示すように、水素化ケイ素に基づく光学フィルタ530のフィルタ応答を提示する。光学フィルタ530は、水素化ケイ素及び二酸化ケイ素の交互層を備えることができる。幾つかの実施形態において、光学フィルタ530は、5.9マイクロメートル(μm)の厚さに関連することができ、また0゜の入射角に対して約1550nmに中心がある帯域通過に関連することができる。
【0047】
図5Cにおいて、またグラフ540によって示すように、光学フィルタ510(Si:G)と比較して、光学フィルタ530(Si:H)は、0゜〜約40゜の入射角に対して減少した角度シフトに関連する。例えば、光学フィルタ510は、例えば、ほぼ0〜10゜の入射角で約5nm未満、ほぼ0〜10゜の入射角で約4nm未満、ほぼ0〜10゜の入射角で約3nm未満、ほぼ0〜10゜の入射角で約2nm未満、等々における中心波長の変化に関連する。同様に、光学フィルタ510は、例えば、ほぼ10〜20゜の入射角で約15nm未満、ほぼ10〜20゜の入射角で約10nm未満、ほぼ10〜20゜の入射角で約9nm未満、ほぼ10〜20゜の入射角で約8nm未満、等々における中心波長の変化に関連する。
【0048】
同様に、光学フィルタ510は、例えば、20゜の入射角で約8nm未満、20゜の入射角で約9nm未満、20〜30゜の入射角で約30nm未満、20〜30゜の入射角で約20nm未満、20〜30゜の入射角で約15nm未満、20〜30゜の入射角で約10nm未満、等々における中心波長の変化に関連する。同様に、光学フィルタ510は、例えば、30゜〜40゜の入射角で約40nm未満、30゜〜40゜の入射角で約35nm未満、30゜〜40゜の入射角で約30nm未満、30゜〜40゜の入射角で約25nm未満、30゜〜40゜の入射角で約20nm未満、等々における中心波長の変化に関連する。
【0049】
上述したように、
図5A〜5Cは単に例として提示する。他の例も可能であり、また
図5A〜5Cにつき説明したのと異なるものとすることができる。
【0050】
このようにして、高屈折率層としての水素化ゲルマニウム及び低屈折率層としての他の材料を有する光学フィルタのような、水素化ゲルマニウム光学フィルタは、約1550nmに中心波長があるスペクトル範囲に関連する光学フィルタ用に他の材料を使用するものに対して改善された角度シフト、改善された透過率、及び減少した物理的厚さをもたらすことができる。
【0051】
上述の開示は図示及び説明を与えるものであり、排他的なものであることを、又は実施形態を開示したそのものに限定することを意図しない。変更及び改変することは、上述の開示を考慮して可能であり、又は上述の実施形態そのものから知得することができる。
【0052】
幾つかの実施形態を本明細書で閾値に関連して説明した。ここで使用されるように、閾値を満たすことは、閾値より大きい、閾値よりも多い、閾値よりも高い、閾値以上の、閾値未満、閾値よりも少ない、閾値よりも低い、閾値以下、閾値に等しい、等々の値に言及し得る。
【0053】
特徴の特別な組合せが特許請求の範囲における請求項で詳述される及び/又は本明細書で開示されたが、これら組合せは、あり得る実施形態の開示に限定することを意図していない。実際、これら特徴の多くは、特許請求の範囲における請求項で詳述されない及び/又は本明細書で開示されないやり方で組み合わせることができる。特許請求の範囲で列挙される各従属項は、1つの請求項のみに直接従属できるが、あり得る実施形態の開示は、請求項セットにおけるすべての他の請求項と組み合せた各従属項を包含する。
【0054】
本明細書で使用される素子、行為、又は指示命令のいずれも、明確にそうであると記載されない限りは、厳密又は必須なものと解すべきではない。さらに、不定冠詞「a」及び「an」は、1つ又はそれ以上の事物(item)を包含することを意図しており、また「1つ又はそれ以上の(one or more)」と互換的に使用することができる。さらに、本明細書で使用されるように、用語「セット」は、1つ又はそれ以上の事物(例えば、関連事物、非関連事物、関連事物及び非関連事物の組合せ、等々)を包含することを意図しており、また「1つ又はそれ以上の(one or more)」と互換的に使用することができる。単に1つの事物を意図する場合、用語「1つ(個)」又は同様の言葉遣いを使用する。さらに、本明細書で使用されるように、用語「has」、「have」、「having」等々は、制約がないものであることを意図している。さらに、語句「〜に基づく/〜をベースとする(based on)」は、それ以外を明示されない限り、「少なくとも部分的に、〜に基づく/〜をベースとする(based, at least in part, on)」を意味することを意図している。