【実施例1】
【0013】
図1は本実施例における電力変換装置の構成図である。
図1において、電力変換装置は、破線で囲われたモータケーブルMCu、MCv、MCwあるいは3相モータMTと、大地ETとの間で地絡が発生した場合、地絡発生箇所を推定することができる。
【0014】
電力変換装置101の出力端子U、V、Wには3本のモータケーブルMCu、MCv、MCwが接続され、その先に3相モータMTが接続されている。一方、電力変換装置101の入力端子R、S、Tには3本の電源ケーブルTCが接続され、その先がトランスTRNの2次側に接続されている。トランスTRNの内部あるいはケーブルTCのいずれかにおいて、大地ETあるいは接地されている配線に接続されている。
【0015】
電力変換装置101は、交流電力を入力としてモータに電力を供給するための順変換器回路102、平滑コンデンサ103、逆変換器回路104を備えている。また、電力変換装置101は、逆変換器回路104を制御するための制御回路105と、制御回路105へ手動で情報入力するための入力器106、外部システムから受信するための受信機107と、制御回路105からの出力情報を表示するための表示器108、外部のシステムへ送信するための送信機109を備えている。
【0016】
順変換器回路102は6つのダイオードで構成され、入力端子R、S、Tから入力される交流電力を直流電力に変換し、平滑コンデンサ103の両電極に出力する。順変換器回路102のダイオードの整流作用によりノードP側の直流電圧配線に正電圧、ノードN側の直流電圧配線に負電圧とした直流電圧Vdcが発生する。平滑コンデンサ103はノードPとNにおいて直流電圧配線に接続し、配線間の電圧を平滑化する。逆変換器回路104は、直流電力を、モータを駆動するための交流電力に変換し、出力端子U、V、Wへ出力する。
【0017】
逆変換器回路104はU相、V相、W相の3つのハーフブリッジ回路から構成されている。U相のハーフブリッジ回路はスイッチSWuとダイオードDIuが逆並列に接続された上アームと、スイッチSWxとダイオードDIxが逆並列に接続された下アームで構成されている。同様にして、V相のハーフブリッジ回路は、スイッチSWvとダイオードDIv、スイッチSWyとダイオードDIyで、W相のハーフブリッジ回路は、スイッチSWwとダイオードDIw、スイッチSWzとダイオードDIzで構成されている。
図1ではスイッチとしてIGBTを用いているが、MOSFETで構成してもよい。また、半導体デバイスはシリコンを使うのが一般的だが、低損失化のためにワイドギャップ半導体であるSiC(シリコンカーバイト)やGaN(ガリウムナイトライド)を用いてもよい。全てのスイッチSWu、SWv、SWw、SWx、SWy、SWzには、スイッチ駆動回路SDu、SDv、SDw、SDx、SDy、SDzがそれぞれ接続されており、各スイッチ駆動回路は各スイッチのエミッタ、ゲート、コレクタの各電極に接続されている。エミッタ、ゲート、コレクタはIGBTの電極名称であり、MOSFETの場合は、ソース、ゲート、ドレインの電極名称に相当する。全てのスイッチ駆動回路には、スイッチのゲート電圧を制御することでスイッチのONとOFFを切り替えるゲートドライバ回路と、スイッチに過電流が流れたことを検知してスイッチを高速に遮断する(OFFにする)過電流保護回路とを内蔵している。各スイッチ駆動回路は制御回路105との通信手段を持っており、通信手段は、制御回路105からスイッチ駆動回路へスイッチのON/OFF制御信号を伝えるのと、スイッチ駆動回路から制御回路105へ過電流検知信号を伝えるために用いられる。
【0018】
電力変換装置101は、逆変換器回路104と出力端子U、V、Wの間に、各相の出力電流値を測定する3つの電流センサ110u、110v、110wと、それらの測定値を計測するための電流計測回路111を備えている。電流センサ110u、110v、110wは出力端子U、V、Wから出力される電流値Iu,Iv,Iwを計測し、アナログ電圧または電流として電流計測回路111に伝える。電流計測回路111は、そのアナログ情報をサンプリングし、デジタルデータ化して制御回路105へ送信する。電流計測回路111は一般的なサンプリング回路とA/D変換回路によって構成することができる。
【0019】
制御回路105は、地絡電流計測部121、相間短絡電流計測部122、地絡箇所判定部123、インダクタンス値記憶部124を備えている。地絡箇所調査時において、地絡電流計測部121は上アームの全てのスイッチ(SWu、SWv、およびSWw)か、または下アームの全てのスイッチ(SWx、SWy、およびSWz)のいずれかONにして、その際に発生する地絡電流の電流値情報を電流計測回路111から取得し、計測されたU、V、W相の電流値を地絡箇所判定部123に送信する。相間短絡電流計測部122は、上アームのスイッチの1つ(SWu、SWv、あるいはSWw)と、それと異なる相の下アームのスイッチの1つ(SWx、SWy、あるいはSWz)をONにして、その際に発生する相間短絡電流の電流値情報を電流計測回路111から取得し、計測された相間短絡電流の電流値情報を地絡箇所判定部123に送信する。地絡箇所判定部123は、計測された上記の地絡電流と相間短絡電流の電流値情報を基に、電力変換装置101から地絡箇所までのモータケーブルあるいはモータ内配線のインダクタンス値を計算し、インダクタンス値記憶部124が保持しているモータケーブルMCのインダクタンス値Lcとモータ内部巻線のインダクタンス値Lmとの比較により地絡箇所を判定し、表示器108および送信機109に判定結果を送信する。
【0020】
なお、制御回路105は、モータのPWM駆動のための一般的な機能を備えているが、本発明の動作とは関わらないので、その説明については省略する。また、制御回路105内の地絡電流計測部121、相間短絡電流計測部122、地絡箇所判定部123、インダクタンス値記憶部124などの、ロジック回路のみで構成することが可能な要素については、マイコンやプログラマブルロジックでソフトウェア的に実現することも可能である。
【0021】
図2に、本実施例における地絡個所判定のフローチャートを示す。
図2のフローチャートは、地絡発生に伴う保護回路による過電流検知信号、および、入力器106や受信機107からのトリガによって開始される。
図2において、開始後、制御回路105はモータ停止措置を実施する(S101)。具体的には、逆変換器回路104の全スイッチをOFFにすることで、モータへの電力供給を停止し、電流計測回路111で計測される全ての相の電流値が0になるまで待機する。
【0022】
モータ停止後、地絡電流計測部121は地絡電流の計測を行う(S102)。地絡電流計測部は、上アームの全てのスイッチ(SWu、SWv、およびSWw)あるいは下アームの全てのスイッチ(SWx、SWy、およびSWz)を一定期間ONにし、その際、電流センサ110u、110v、110wと電流計測回路111は、U相、V相、W相の出力電流値を計測し地絡電流計測部121に送信する。
【0023】
図3に、
図2における地絡電流計測ステップS102において地絡短絡電流を発生させたときの電流の経路を示す。
図3において、(a)はモータケーブル上で1相地絡(W相が地絡)、(b)は2相のケーブル長手方向の近接した位置での地絡(V相とW相が地絡)、(c)は3相のケーブル長手方向の近接した位置での地絡が発生している場合を示している。
【0024】
図3において、電流を発生させる起電力はトランスの出力(2次側)の対地電圧Vtrnである。トランスの出力は3相あるが、順変換器回路102のダイオードによって対地電圧Vtrnが正である相から電流が流れ込む。対地電圧Vtrnが正である相が複数有る場合は、複数の相から電流が流れ込むが、
図3(a)〜(c)では説明の簡略化のため、トランスTRNと電源ケーブルTCと、順変換器回路102のダイオードを1相分のみ記載している。トランスTRNから供給され、順変換器回路102のダイオードを通して流れ込んだ電流は、ノードPを経由して、ON状態にある逆変換器回路104内の3つの上アームのスイッチSWu、SWv、SWwを通して3つの電流に分流される。分流された電流は、出力端子U、V、Wを経由して、地絡点Sで合流する。合流した電流は大地ETを流れてトランスTRNに戻る。
【0025】
電力変換装置101の出力U、V、Wから地絡箇所Sまでの電流経路に存在するインダクタンス成分は、以下の理由により短絡相の数によって異なる値になる。以下の説明では、全長LenのモータケーブルのインダクタンスをLc、各相のモータ巻き線のインダクタンスをLm、地絡が発生している相の1つの出力から地絡箇所SまでのケーブルのインダクタンスをLs、そして、電力変換装置101の出力U、V、Wから地絡箇所SまでのモータケーブルのインダクタンスをそれぞれLu、Lv、Lwとする。
【0026】
図3(a)の1相地絡の場合においては、地絡が発生している相(W相)ではLw=Ls、地絡が発生していない相(U相およびV相)ではLu=Lv=(Lc+Lm)+2(Lm+Lc−Ls)=3(Lm+Lc)−2Lsとなる(2(Lm+Lc−Ls)とした理由はその部分に2倍の電流が流れるためである)。
【0027】
図3(b)の2相地絡の場合においては、地絡が発生している相(V相およびW相)ではLv=Lw=Ls、地絡が発生していない相(U相)では、Lu=(Lc+Lm)+0.5(Lm+Lc−Ls)=1.5(Lm+Lc)−0.5Lsとなる(0.5(Lm+Lc−Ls)とした理由はその部分で電流が半分に分かれるためである)。
【0028】
図3(c)の3相地絡の場合においては、Lu=Lv=Lw=Lsとなる。
【0029】
ところで、対地電圧Vtrnが負の場合は、上アームの全てのスイッチ(SWu、SWv、およびSWw)をONにする代わりに、下アームの全てのスイッチ(SWx、SWy、およびSWz)をONにする。その場合、
図3の地絡電流経路に対して、電流がノードPからSWu、SWv、およびSWwに分配して流れる経路に代わり、電流がノードNからSWx、SWy、およびSWzに分配して流れる経路となる。結果、電流方向が逆向きとなること以外は、その他の電流経路は
図3と同じとなる。なお、電流方向が反対方向の場合、通常電流センサでは、電流値がマイナスとして計測されるが、本発明の実施例の説明において電流方向は重要ではないので、全て正(絶対値)として取り扱うこととする。
【0030】
図4に、
図2における地絡電流計測ステップS102における各スイッチの駆動パターン例とそのとき各相出力に発生する電流波形を示す。
図4において、時刻t1で上アームスイッチSWu、SWv、SWwをONにし、その後、時刻t2で上アームスイッチSWu、SWv、SWwをOFFにする。時刻t1とt2の間の時間Tp1の期間に地絡電流が発生し、それによりU相、V相、W相の出力に電流が発生する。時刻t1から時刻t2を超えない時間Tx1経過した時刻に、電流センサ110u、110v、110wおよび電流計測回路111は出力電流を計測し、計測された電流値Iu1、Iv1およびIw1を地絡電流計測部121に送信する。このときに計測される電流値Iu1、Iv1、Iw1の大小関係は地絡が発生した相の数によって異なる。理由は、前述の地絡電流の分流比率がインダクタンスLu、Lv、Lwによって決まるからである。
【0031】
電流値Iu1、Iv1、Iw1を比較すると、1相地絡である
図3(a)の場合はIu1=Iv1<Iw1、2相地絡である
図3(b)の場合はIu1<Iv1=Iw1、3相地絡である
図3(c)の場合はIu1=Iv1=Iw1となる。なお、電流計測回路111の出力電流の計測タイミングは、時刻t1から時刻t2を超えない時刻で行うとして説明したが、上アームスイッチSWu、SWv、SWwをOFFにする時刻t2と同時またはその直後の厳密な意味で過ぎた時刻であっても、過渡状態での地絡電流が流れているので、上アームスイッチSWu、SWv、SWwをONしている期間に発生した地絡電流を計測できる。
【0032】
ここで、
図2のフローチャートの説明に戻る。上記の地絡電流計測S102の後、地絡箇所判定部123は電流値比較を行う(S103)。比較に先立って、Iu1、Iv1、Iw1の3つの電流値のソートを行い、大きい順にI1、I2、I3とする。もしI2とI3が同程度で、I1がそれらより大きいとき、地絡箇所判定部123は地絡が1相であると判定する。また、もしI1とI2が同程度で、それらがI3より大きいとき、地絡が2相であると判定する。また、もしI1〜I3が同程度である場合には、地絡が3相であると判定する。
【0033】
電流値比較S103において、1相地絡と判定された場合、電力変換装置101から地絡箇所SまでのモータケーブルのインダクタンスLsを、電流比率から計算する(S105)。インダクタンスLsは式(1)により計算することができる。
Ls=I3/(I1+I2+I3)・3・(Lc+Lm) ・・・(1)
【0034】
ここで、Lcはモータケーブル全長のインダクタンス、Lmはモータ内の巻き線インダクタンスである。また、1相地絡の場合、I2=I3であるから、式(2)でも計算することができる。
Ls=I2/(I1+2・I2)・3・(Lc+Lm) ・・・(2)
【0035】
以下に式(1)、式(2)の導出過程を説明する。I1は地絡相の電流であるため、時刻t1〜t2におけるそれは、I1=(∫Vtrn・dt)/Lsで表される。また、I2およびI3は非地絡相の電流であるため、時刻t1〜t2におけるそれらは、I2=I3=(∫Vtrn・dt)/(3(Lm+Lc)−2Ls)で表される。これら2式のインダクタンスは、前述の1相地絡(
図3(a))の場合の地絡相および非地絡相の電流経路のインダクタンスである。これら2式より(∫Vtrn・dt)を消去すると、式(1)および式(2)が求められる。
【0036】
一方、S103の電流値比較において、2相地絡あるいは3相地絡と判定された場合、相間短絡電流計測部122は相間短絡電流計測を実施する(S106)。
【0037】
図5に、
図2における相間短絡電流計測ステップS106において相間短絡電流を発生させたときの電流の経路を示す。相間短絡電流計測S106においては、1つの相の上アームのスイッチと、それと異なる相の1つの相の下アームのスイッチをそれぞれONにして、相間短絡電流を発生させる。2相地絡と判定されている場合には、電流値比較S103により地絡と判定されている2つの相のうち、1つの相の上アームのスイッチと、もう1つの相の下アームスイッチをONにする。一方、3相地絡と判定されている場合には、任意の2つの相で同様にする。すると、図中の破線で示されている経路に相間短絡電流が発生する。
図5では例としてU相とW相の2相が近接した箇所で地絡した場合を図示している。
【0038】
相間短絡電流を発生させる起電力は平滑コンデンサ103が保持している直流電圧Vdcである。平滑コンデンサ103から供給される電流はノードPと上アームのスイッチを経由して地絡が発生している相(U相)に流れ込む。電流は地絡箇所Sで地絡が発生しているもう一つ相(W相)に流れ込み、ノードNを経由して平滑コンデンサ103に戻る。なお、破線以外にも、トランスの出力(2次側)の対地電圧Vtrnを起電力とした地絡電流が発生するが、一般的に地絡電流経路のインダクタンスは相間短絡経路のインダクタンスより十分に大きいため、地絡電流による影響は無視できる。
【0039】
図6に、
図2における相間短絡電流計測ステップS106における各スイッチの駆動パターン例とそのとき各相出力に発生する電流波形を示す。
図6において、時刻t5で上アームのスイッチSWuを、時刻t6で下アームのスイッチSWzを順次ONにする。その後、時刻t7で上アームのスイッチSWuを、時刻t8で下アームのスイッチSWzをOFFにする。2つのスイッチSWuとSWzの両方がONの時間Tp2の期間に相間短絡電流が発生し、それにより2つの相(U相、W相)の出力に電流が発生する。上記2つのスイッチがONになった時刻t6から時刻t7を超えない時間Tx2経過後に、電流センサ110u、110wおよび電流計測回路111は出力電流を計測し、計測された電流値Iu2およびIw2を相間短絡電流計測部122に送信する。なお、時刻t7と同時またはその直後の厳密な意味で過ぎた時刻であっても、過渡状態での相間短絡電流が流れているので、2つのスイッチSWuとSWzの両方がONしている期間に発生した相間短絡電流を計測できる。
【0040】
ところで、相間短絡電流の電流量をIとすると、Iは式(3)で表される。
I=(∫[積分範囲t6〜t6+Tx2]Vdc・dt)/(2・Ls)・・・(3)
【0041】
ここで、txは上記のスイッチが2つともONになってからの経過時間、Vdsは平滑コンデンサ103の端子間電圧、Lsは電力変換装置101の出力Uから地絡箇所Sまで、および出力Wから地絡箇所Sまでの電流経路のインダクタンスである。
【0042】
平滑コンデンサ103の容量を十分に大きくして、相間短絡電流発生のためにVdcが変化しないようにしたとき、LsとIの関係は式(4)で表される。
Ls=(Vdc・Tx2)/(2・I) ・・・(4)
【0043】
ここで、
図2のフローチャートの説明に戻る。上記の相間電流計測S106の後、電力変換装置101から地絡箇所SまでのモータケーブルのインダクタンスLsの算出を式(3)あるいは線形で使い勝手の良い式(4)を用いて行う(S107)。電流Iには地絡相にて計測された電流値の値を代入する。
【0044】
電流比率からのLsの算出ステップS105と、電流値からのLsの算出ステップS107によって得られたインダクタンスLsと、インダクタンス値記憶部124が保持しているLcとLmの値より地絡箇所判定を行う(S108)。その後、判定結果を表示器108および送信機109へ送信して(S109)、地絡箇所判定のフローを終了する。
【0045】
図7に、制御回路105内の地絡箇所判定部123で用いられる地絡箇所診断方法を示す。地絡箇所判定部123は、算出したLsを、地絡箇所判定情報に変換する。
図7では3つの判定方法の例を示す。判定方法(1)は地絡箇所がモータケーブル上か、モータ内かを判定する方法である。算出したLsがモータケーブルのインダクタンス値Lcより小さいときはモータケーブル上で、大きいときはモータ内部で地絡が発生していると判定する方法である。判定方法(2)は、モータケーブル上およびモータ内部のおおよその地絡箇所を判定する方法である。算出したLsが0に近い場合は電力変換装置の近傍で、Lcの近傍でわずかに小さい場合はモータ近傍のケーブル上で、Lcの近傍でわずかに大きい場合はモータ内部の接続端子付近で、Lc+Lmの近傍でわずかに小さい場合はモータ内の中性点付近で地絡が発生していると判定する方法である。判定方法(3)は、モータケーブル上の地絡箇所を詳細に判定する方法である。モータケーブルの全長を100%としたときに、Ls/Lcの値より電力変換装置からモータケーブル全長の何%の箇所に地絡があるかを判定する方法である。
【0046】
インダクタンス値記憶部124が保持しているLcとLmは、入力器106あるいは受信機107より事前に入力されている。モータケーブルのインダクタンス値Lcを入力する代わりに、使用しているモータケーブルのケーブル長Lenとケーブル種類を入力し、ケーブル種類に応じた比例係数を使ってケーブル長Lenからインダクタンス値Lmを計算する手段も可能である。また、モータ内部の巻線のインダクタンス値Lmを入力する代わりに、通常モータ駆動時のオートチューニング動作によって、インダクタンス値Lm+Lcを取得し、そこからLcを引いた値から求める手段もある。
【0047】
図1に示した表示器108は、例えば、デコーダ、LEDドライバ、2ケタ表示のLEDセグメントから構成される。制御回路105から送られてきた地絡箇所判定結果は、デコーダでLEDセグメントの数字および文字の表示パターンにデコードされる。LEDドライバは電流信号によって、デコードされた表示パターンをLEDセグメントに表示させる。
【0048】
図8にLEDセグメントに表示される表示パターンと、地絡箇所との対応表を示す。
図8において、(B)表示パターンは(A)コードを7セグメントLEDで表現したものである。
図8(a)は地絡相の情報を表示している場合である。コードA1〜A7は、U相、V相、W相の各相での地絡発生の有無を表している。
図8(b)は地絡箇所の大まかな情報を表示している場合である。コードb1は地絡箇所がモータケーブルのインバータ付近、コードb2は、地絡箇所がモータケーブルのモータ付近、コードb3は、地絡箇所がモータ巻線上の端子付近、コードb4は、地絡箇所がモータ巻線上の中性点付近であることを表している。
図8(c)はモータケーブル上短絡箇所のインバータからの距離(単位:メートル)を数値00〜99で表している場合である。
図8の対応表を電力変換装置のマニュアルや電力変換装置の側面に掲示することで、使用者はコードと地絡箇所情報の対応を容易に把握することができる。
【0049】
図1に示した送信機109は、例えば、変調器、増幅器、アンテナで構成され、制御回路105から送られてきた地絡箇所判定結果は変調器で変調され、増幅器で電力増幅され、アンテナより外部へ無線送信される。図示していないが、別の機器やシステムは、無線送信された信号を受信し、復調することで、地絡箇所判定結果と短絡相番号の情報を得ることが可能である。また、タブレット型端末を利用し、タブレット型端末に
図8の対応表を内蔵したアプリケーションソフトをインストールすることで、地絡箇所情報をタブレット型端末の画面に表示することができる。
【0050】
以上のように、本実施例によれば、近接した箇所での複数相の地絡が発生した場合においても、モータおよびケーブル上の地絡箇所を判定し、使用者や外部の装置やシステムに診断結果を報知することができる。
【実施例2】
【0051】
図9に本実施例における電力変換装置の構成図を示す。
図9において、
図1と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図9において、
図1と異なる点は、電流センサがU相、W相だけに設置するように簡略化されており、V相には電流センサが無い点である。なお、
図9において、逆変換器回路204、制御回路205、地絡電流計測部221、相間短絡電流計測部222、地絡箇所判定部223、電流計測回路211は、それぞれ、
図1における、逆変換器回路104、制御回路105、地絡電流計測部121、相間短絡電流計測部122、地絡箇所判定部123、電流計測回路111と、U相、W相だけの電流センサの値を取り扱うという点で符号は異なるものの、同じ機能を有しているので、その説明についても省略する。
【0052】
図9において、電力変換装置201は、電流センサがU相、W相だけに設置するように簡略化されており、V相には電流センサが無い。電流センサ210u、110wは出力端子U、Wから出力される電流値Iu,Iwを計測し、アナログ電圧または電流として電流計測回路211に伝える。
【0053】
図10に、
図9におけるスイッチ駆動回路SDu、SDv、SDw、SDx、SDy、SDzの構成図を示す。
図10に示すように、スイッチ駆動回路は、論理回路151、ゲート駆動アンプ152、ゲート抵抗153、コンパレータ154、キャパシタ155、キャパシタ充電用抵抗156、キャパシタ放電用スイッチ157、ダイオード158、定電圧源159、160から構成されている。なお、
図10において、逆変換器回路204が備えている6つのスイッチ、ダイオード、スイッチ制御回路は同じ構成であるので、記号SW、DI、SDに続くu、v、w、x、y、zの文字を省略して記述してある。
【0054】
ゲート駆動アンプ152とゲート抵抗153は接続するスイッチSWのON/OFF制御に用いられる。制御回路205からのゲート信号GTが1の場合は、ゲート駆動アンプ152がゲートオン電圧を出力しスイッチSWはONに、ゲート信号GTが0の場合は、ゲート駆動アンプ152がゲートオフ電圧を出力しスイッチSWはOFFになる。ゲート抵抗153はスイッチング速度を制御する。一方、コンパレータ154、キャパシタ155、キャパシタ充電用抵抗156、キャパシタ放電用スイッチ157、ダイオード158、定電圧源159、160は過電流検出回路を構成している。この過電流検出回路は非飽和電圧検知(Desaturation detection)方式の回路である。定電圧源160は過電流しきい値電圧VTの、定電圧源159はVTより高い電圧Vccの電圧源である。過電流しきい値VTは、スイッチを流れる電流が過電流しきい値Ithになるときのコレクタ電圧から決定される値である。スイッチSWがOFFの状態においては、キャパシタ放電用スイッチ157がONであるため、コンパレータの出力は0である。また、スイッチSWがONの状態において、過電流が発生していない場合は、スイッチSW(IGBT)のコレクタの電圧が十分に低く、ダイオード158を通してキャパシタ155が放電されるため、コンパレータの出力は0である。ところが、スイッチSWがONの状態において、過電流が発生している場合は、スイッチSW(IGBT)のコレクタの電圧がしきい値電圧VTより高くなり、キャパシタ155が放電されない。キャパシタ充填用抵抗156の充電電流によってキャパシタ155が充電されてキャパシタの電位がしきい値電圧VTを超えるとコンパレータ154は1を出力し、論理回路151によって、スイッチを強制的に遮断させる。また、過電流検知信号DETとして制御回路205に短絡検知が伝えられる。
【0055】
以上のように、
図10に示したスイッチ駆動回路は、過電流保護機能付きのゲートドライバ回路として機能し、短絡発生直後に制御回路205に伝達している。
【0056】
図11に、本実施例における地絡個所判定のフローチャートを示す。
図11において、その開始、及びモータ停止措置(S201)は、実施例1の
図2のステップS101までと同じであるので、省略する。
【0057】
モータ停止後、地絡電流計測部221は地絡電流の計測を行う(S202)。地絡電流計測部は、上アームの全てのスイッチ(SWu、SWv、およびSWw)あるいは下アームの全てのスイッチ(SWx、SWy、およびSWz)をONにし、各スイッチ駆動回路からの過電流検知信号DETによる過電流検出まで待機する。
【0058】
地絡電流計測S202において地絡短絡電流を発生させたときの電流の経路は、実施例1と同じであり、1相地絡の場合は
図3(a)、2相地絡の場合は
図3(b)、3相地絡の場合は
図3(c)となる。
【0059】
図12に、地絡電流計測S202における各スイッチの駆動パターン例とそのとき各相出力に発生する電流波形を示す。時刻t1で上アームスイッチSWu、SWv、SWwをONにし、その後、時刻t3で上アームスイッチSWu、SWv、SWwをOFFにする。時刻t1以降に地絡電流が増加し、やがて、最も早く過電流しきい値Ithに到達した相のスイッチ駆動回路が過電流検知信号DETを発生する。ここで、最も早く過電流しきい値Ithに到達した相は地絡が発生している相であるため、1相地絡の場合は1つの相で過電流検知信号DETが発生し、2相地絡の場合は2つの相で過電流検知信号DETが発生し、3相地絡の場合は全ての相で過電流検知信号DETが発生する。
【0060】
地絡電流計測部221は、上記の過電流検知信号DETを受信した時点で、時刻t1から過電流検知信号DETを受信するまでの時間Tx1を計測する。さらに、電流センサ210u、210wおよび電流計測回路211に出力電流を計測させ、U相およびW相の電流値Iu1およびIw1を取得する。また、スイッチ保護のために速やかに全てのスイッチをOFFにする(時刻t3)。
【0061】
ここで、
図11のフローチャートの説明に戻る。上記の地絡電流計測S202の後、地絡箇所判定部223は過電流検知の相数が地絡相の総数と判断して処理を分岐させる(S203)。過電流検知の相数から1相地絡と判定された場合、電力変換装置201から地絡箇所SまでのモータケーブルのインダクタンスLsを、電流比率から計算する(S205)。インダクタンスLsの算出には、前述の式(2)を用いる。地絡相がV相、つまりV相で過電流検知された場合は、式(2)のI1にはIthを、I2にはIu1あるいはIw1を代入する。地絡相がU相つまりU相で過電流検知された場合は、式(2)のI1にはIthあるいはIu1を、I2にはIw1を代入する。地絡相がW相つまりW相で過電流検知された場合は、式(2)のI1にはIthあるいはIw1を、I2にはIu1を代入する。
【0062】
一方、過電流検知の相数から2相地絡あるいは3相地絡と判定された場合、相間短絡電流計測部222は相間短絡電流計測を実施する(S206)。相間短絡電流計測S206において相間短絡電流を発生させたときの電流の経路は、実施例1と同じであり
図5となる。また、相間短絡電流計測S206における各スイッチの駆動パターン一例とそのとき各相出力に発生する電流波形も第一の実施例と同じであり
図6となる。
【0063】
相間短絡電流計測部222は、地絡と判定されている相の上アームのスイッチ1つと、地絡と判定されている別の相の下アームの1つのスイッチをONにし、2つのスイッチがONになった時刻t6から時間tx2経過後に、電流センサ210u、210wおよび電流計測回路211に出力電流を計測させ、計測された電流値Iu2およびIw2を取得する。
【0064】
相間電流計測S206の後、電力変換装置201から地絡箇所SまでのモータケーブルのインダクタンスLsの算出を前述の式(3)あるいは線形で使い勝手の良い式(4)を用いて行う(S207)。電流Iには電流値Iu2あるいはIw2のうち大きい方の値をIに代入する。なお、相間短絡電流の電流経路は2つの相の出力を通るため、うち1つの相に電流センサが無い場合でも、残りの相の出力には電流センサが有るので、その計測値から相間短絡電流を取得することができる。
S208およびS209は、
図2におけるS108およびS109と同様である。
【0065】
以上のように、本実施例によれば、実施例1と同様に、近接した箇所での複数相の地絡が発生した場合においても、モータおよびケーブル上の地絡箇所を判定し、使用者や外部の装置やシステムに診断結果を報知することができる。