【文献】
フタージェント製品一覧表,https://www.neos.co.jp/product/ftergent/pdf/list.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について詳述する。
本発明は、吸水率1.0%以下の基材フィルムの少なくとも片面に電離線硬化型樹脂及びレベリング剤を含有するハードコート層を設けたハードコートフィルムにおいて、該ハードコート層表面の水の接触角が70度以下、且つヘキサデカンの接触角が20度以下であることを特徴とするハードコートフィルムである。
【0019】
ここでいう「吸水率」とは、日本工業規格JIS K7209に準じて次の通り得ることができる。
まず25℃50%の環境で24時間静置した100mm×100mmサイズの基材フィルムの重量Aを測定し、その後23℃に調整した蒸留水に十分に浸漬するように24時間浸漬する。
その後取り出してすぐに試験片に付着した水分を拭き取り浸漬後の重量Bを測定し、浸漬前後重量差((B−A)/A×100)から吸水率(%)を得ることができる。
【0020】
本発明に用いられる吸水率1.0%以下の基材フィルムとしては、上記アクリル系基材フィルムまたはCOP系基材フィルムを好ましく挙げることができる。
以下、基材フィルムとしてアクリル系基材フィルムを用いる場合を第1の実施の形態、COP系基材フィルムを用いる場合を第2の実施の形態として説明する。
【0021】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態は、アクリル系基材フィルムの少なくとも片面に電離線硬化型樹脂及びレベリング剤を含有するハードコート層を設けたハードコートフィルムにおいて、該ハードコート層表面の水の接触角が70度以下、且つヘキサデカンの接触角が20度以下であることを特徴とするハードコートフィルムである。
【0022】
<アクリル系基材フィルム>
本発明において、アクリル系基材フィルムとは、熱可塑性アクリル樹脂からなる透明フィルム基材のことをいい、その算術平均表面粗さ(Ra)が1nm以下であるものを用いることができる。例えばこのフィルムを偏光板の保護フィルム(ディスプレイの最表面)に使用した場合、ディスプレイの外観品位が大きく向上する。なお、ここで、算術平均表面粗さ(Ra)とは、JIS B 0031(1994)/JIS B 0061(1994)付属書で定義される、ある基準長さにおける粗さ曲線の平均線からの絶対偏差を平均化した値であり、つまり平均線以下の粗さ曲線部分を正値側に折り返した時の凹凸の平均値をいう。
【0023】
本発明において、熱可塑性アクリル樹脂としては、例えば熱可塑性のメタクリル系樹脂を含有するフィルムが好適である。このメタクリル系樹脂は、アルキルメタクリレートを含有する単量体混合物を重合することによって得られる。アルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレートなどが挙げられる。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましい。これらのアルキルメタリレートは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0024】
中でも例えば上記ペンチルメタクリレート等を環化させている化合物を含有する単量体混合物を重合することによって得られるラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が望ましい。このようなラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、透湿度が低く、さらには耐熱性にも優れるため、高温高湿の環境下においても、光学特性の変化の小さいフィルムを得ることができる。
【0025】
上記フィルム成形の方法としては、例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法等、任意の適切なフィルム成形法が挙げられる。溶融押出法が好ましい。溶融押出法は溶剤を使用しないので、製造コストや溶剤による地球環境や作業環境への負荷を低減することができる。
【0026】
上記溶融押出法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられる。成形温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。
【0027】
上記Tダイ法でフィルム成形する場合は、公知の単軸押出機や二軸押出機の先端部にTダイを取り付け、フィルム状に押出されたフィルムを巻取って、ロール状のフィルムを得ることができる。この際、巻取りロールの温度を適宜調整して、押出方向に延伸を加えることで、1軸延伸することも可能である。また、押出方向と垂直な方向にフィルムを延伸することにより、同時2軸延伸、逐次2軸延伸等を行うこともできる。
【0028】
<ハードコート層>
次に、上記ハードコート層について説明する。
本発明において、ハードコート層の電離線(電離放射線)硬化型樹脂としては、電子線または紫外線等を照射することによって硬化する透明な樹脂であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、及びエポキシアクリレート系樹脂等の中から適宜選択することができる。これらの中で電離線硬化型樹脂として好ましいものは、透明フィルム基材との良好な密着性を得るために分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化可能な多官能アクリレートからなるものが挙げられる。分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化可能な多官能アクリレートの具体例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどのエポキシ(メタ)アクリレート、多価アルコールと多価カルボン酸及び/またはその無水物とアクリル酸とをエステル化することによって得ることができるポリエステル(メタ)アクリレート、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレート、ポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの中で、ハードコート層を形成した際のハード性と柔軟性の両方に優れる、ウレタンアクリレートを用いることが望ましい。
【0029】
これらハードコート層の電離線硬化型樹脂は、単独でも2種以上を混合し使用しても良い。
【0030】
本発明において、ハードコート層の厚さは、特に制約されるわけではないが、例えば1.0μmから12.0μmの範囲であることが好適である。塗膜厚さが1.0μm未満では必要な表面硬度が得られ難くなる。また、塗膜厚さが12.0μmを超える場合はカールが強く筒カール製造工程などで取扱い性が低下するため好ましくない。なお、ハードコート層の厚さは、マイクロメーターで実測することにより測定可能である。
【0031】
本発明において、ハードコート層は、電離線硬化型樹脂及びレベリング剤の他に、必要に応じて重合開始剤、消泡剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、湿潤分散剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤、その他の添加剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができ、これらを適当な溶媒に溶解、分散したハードコート塗料を基材フィルム上に塗工、乾燥、硬化して形成される。
【0032】
本発明に用いることができる溶媒としては、配合される前記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分(樹脂、重合開始剤、その他添加剤)を均一に溶解あるいは分散できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘプタンなどの芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール系等のアルコール系溶剤等の公知の有機溶剤を単独或いは適宜数種類組み合わせて使用することもできる。
【0033】
本発明のハードコート層の塗工方法については、特に限定はないが、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の塗工方式で塗設した後、通常50〜200℃程度の温度で乾燥し、溶媒が除去される。この乾燥温度は、特に100℃以上140℃以下が望ましい。100℃未満では溶剤が揮発した後の紫外線硬化性樹脂の流動性が得られず、フィルム基材との密着性が十分に得られない。また、140℃よりも高いと、フィルム基材のガラス転移温度より高くなり、基材自身の平坦性が損なわれる恐れがあるため好ましくない。
【0034】
基材フィルム(アクリル系基材フィルム)上に塗工し、溶媒を除去されたハードコート塗料を硬化させる方法としては、電子線又は紫外線を照射させる方法を用いることができる。その照射条件などは、使用する例えば電子線硬化型樹脂、その他添加する各種薬品にあわせて適宜調整すればよいが、例えば、紫外線を用いた場合には波長200〜400nmの範囲が好ましく、照度80〜120mW/cm
2、照射量70〜500mJ/cm
2であることが望ましい。紫外線の照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプなどのランプ光源、アルゴンイオンレーザーやヘリウムネオンレーザーなどのパルス、連続のレーザー光源などを備える照射装置を用いることが可能である。なお、硬化反応時に窒素ガス雰囲気下など、酸素濃度を低下させ実施することができる。
【0035】
ハードコートフィルムに形成されたハードコート層の塗工厚みは、マイクロメーターを用いて測定するなどの既知の方法によって測定することができる。
【0036】
<レベリング剤>
本発明において、ハードコード層に含有されるレベリング剤は、フッ素系、アクリル系、シロキサン系のレベリング剤を挙げることができる。これらの中では、レベリング剤にハードコート層表面の水接触角を低くするため水酸基を含有したタイプが好ましく、特に特定のフッ素系のレベリング剤を用いることが有効である。
【0037】
ここでいう特定のフッ素系レベリング剤とは、例えば、ヘキサフルオロプロペンオリゴマー誘導体を少なくとも含むフッ素系レベリング剤である。このようなヘキサフルオロプロペンオリゴマー誘導体を含むフッ素系レベリング剤は、分子内に二重結合を持ち、全体が分岐したパーフルオロアルケニルの分子構造を有している化合物である。
【0038】
上記フッ素系レベリング剤は、レベリング性を向上させるだけでなく、ハードコート層表面への配向性が良好であり、ハードコート層の濡れ性など、少量添加でも表面改質効果に優れている。
【0039】
本発明に好ましく用いられるフッ素系レベリング剤としては、たとえば市販されているフタージェント681(商品名)(株式会社ネオス製)、フタージェント602A(商品名)(株式会社ネオス製)などが具体的に挙げられる。
【0040】
なお、本発明においては、所望の効果を阻害しない範囲で、上記フッ素系、アクリル系、シロキサン系等のレベリング剤を併用することもできる。
【0041】
本発明において、レベリング剤の好ましい配合量は、電離線硬化型樹脂100重量部に対し0.03重量部から3.0重量部の範囲である。レベリング剤の配合量が0.03重量部未満であると、十分な表面調整作用が得られずに干渉縞の改善に劣る。一方、レベリング剤の配合量が3.0重量部を超えると、ハードコート層に含まれる未硬化性成分の含有率が多い為に、十分なハードコート性を得られがたく、またハードコート層表面のレベリング剤存在率が高くなりすぎるために、本発明を満たす表面性が得られない場合がある。
【0042】
本発明において、ハードコート層表面の水接触角は70度以下である。ハードコート層の水接触角が70度以下であると、親水性の高い樹脂に対する濡れ広がりが良好であり、好ましい。
【0043】
また本発明において、ハードコート層表面のヘキサデカン接触角は20度以下である。ハードコート層のヘキサデカン接触角が20度以下であると、親油性の高い樹脂に対する濡れ広がりが良好であり、好ましい。
【0044】
上記の水及びヘキサデカンで規定される接触角を持つ本実施形態のハードコートフィルムであれば、タッチパネルなどに使用される接着剤などに対し広く良好な濡れ性を有するため、ハードコート層表面にタッチパネルなどを接着剤を介し貼り合わせる場合にも、濡れハジキがなく、そのため良好な接着性を示すことができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、アクリル系基材フィルムを用いた場合にもハードコート層の密着性に優れ、また高い接着剤との接着性(接着剤との濡れ性)を有しているとともに、干渉縞の発生を防止し、さらに耐擦傷性にも優れたハードコートフィルムを提供することができる。
【0046】
また、本発明は、以上のハードコートフィルムの製造方法についても提供する。すなわち、算術平均表面粗さ(Ra)が1nm以下のアクリル系基材フィルム上にハードコート層を有するハードコートフィルムの製造方法であって、前記アクリル系基材フィルム上に、電離線硬化型樹脂及びレベリング剤を含むハードコート層用塗料を塗布し、ハードコート層を形成し、次いで該ハードコート層を100℃以上で乾燥した後に、紫外線照射を施して得られる、該ハードコート層表面の水の接触角が70度以下、且つヘキサデカンの接触角が20度以下であることを特徴とするハードコートフィルムの製造方法である。このようなハードコートフィルムの製造方法によれば、上述の優れた特性を有するハードコートフィルムを得ることができる。
【0047】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態は、COP系基材フィルムの少なくとも片面に電離線硬化型樹脂及びレベリング剤を含有するハードコート層を設けたハードコートフィルムにおいて、該ハードコート層表面の水の接触角が70度以下、且つヘキサデカンの接触角が20度以下であることを特徴とするハードコートフィルムである。
【0048】
<COP系基材フィルム>
本発明において、COP系基材フィルムとは、シクロオレフィン類単位がポリマー骨格中に交互に又はランダムに重合し分子構造中に脂環構造を有するものであり、ノルボルネン系化合物、単環の環状オレフィン、環状共役ジエンおよびビニル脂環式炭化水素から選択される少なくとも一種の化合物を含んでなる(共)重合体であるシクロオレフィンコポリマーフィルム又はシクロオレフィンポリマーフィルムが対象となり何れかを適宜選択し使用される。
【0049】
また、本発明において、上記COP系基材フィルムの厚さは、ハードコートフィルムが使用される用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性等の観点から、10μm〜300μmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは20μm〜200μmの範囲である。
【0050】
本発明において、上記COP系基材フィルムの耐熱性については、ハードコートフィルム用途に用いる場合には、試料に温度変化を与えた時にその熱変化を測定する熱重量測定(TG)法や示差走査熱量測定(DSC)法等で測定されるガラス転移温度が、120℃から170℃程度のフィルムの使用が好ましい。
【0051】
本発明において、上記COP系基材フィルムは、ハードコートフィルム用途に用いる場合には、紫外線による塗膜の劣化、密着不良を防止する目的で、シクロオレフィン樹脂と紫外線吸収剤を混練した樹脂をフィルム状に製膜、或いはシクロオレフィンフィルムの片面或いは両面に熱可塑性或いは熱硬化性樹脂と紫外線吸収剤とを混合した塗料を塗設したフィルムを使用してもよい。紫外線カット性については、分光光度計による380nm波長における透過率が10%以下であることが好ましい。更に好ましくは7%以下である。
【0052】
<易接着層>
本実施形態においては、ハードコート層の密着性を向上させるため、COP系基材フィルム上に、易接着層を介しハードコート層を設けることができる。そのような易接着層としては、ポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との混合物を少なくとも含有することが必要である。
【0053】
本実施形態において、上記易接着層を構成するポリオレフィン系樹脂は、COP系基材フィルムとハードコート層との密着性の付与を目的に配合する樹脂である。本発明者らは、COP系基材フィルムとハードコート層の双方に対し密着性の優れる易接着層用樹脂について鋭意検討を行った結果、柔軟性に優れるポリオレフィン系樹脂が適することを見出した。
【0054】
本実施形態における上記易接着層に用いられるポリオレフィン系樹脂は特に限定されるものではないが、基材との密着性に優れるものとしてエチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体などの2種以上のモノマーで共重合体を構成するものが好ましく、特に共重合体中にプロピレンモノマーを含むものが好ましい。またその分子量についても特に限定されるものではないが、重量平均分子量10,000〜200,000の範囲にあるものが、柔軟性と密着性のバランスの点で好ましい。その様なポリオレフィン系樹脂としては、たとえば市販されているユニストール(商品名:三井化学株式会社製)、サーフレン(商品名:三菱化学株式会社製)、アローベース(商品名:ユニチカ株式会社製)、アウローレン(商品名:日本製紙株式会社製)等が挙げられる。
【0055】
また、本実施形態において、上記易接着層に含有されるスチレンアクリル系樹脂は、構成単位にアクリルモノマー及びスチレンモノマーを交互に、又はランダムに含んでなるポリマーである。このスチレンアクリル系樹脂は、易接着層とハードコート層との収縮差を少なくし、耐熱条件下におけるクラック発生の防止を目的に配合する樹脂であるため、比較的硬く伸びの少ない樹脂であることが要求される。本発明において、目安としてはガラス転移温度が50℃以上である樹脂の使用が望ましい。その様なスチレンアクリル系樹脂としては、たとえば市販されているARUFON樹脂(商品名:東亜合成株式会社製)や、アクリット樹脂(商品名:大成ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0056】
本実施形態において、上記易接着層に含有される上記ポリオレフィン系樹脂と上記スチレンアクリル系樹脂との配合比率(重量部)は、95/5〜40/60の範囲であることが望ましい。
【0057】
ポリオレフィン系樹脂の配合比率が95重量部を超えると、形成される易接着層が軟らかく伸び易いため、硬く伸びないハードコート層との収縮差により、耐熱条件下(例えば、100℃で5分間保存)でクラックが発生し易い問題点や、易接着層上にハードコート層を形成した際、塗膜硬度(鉛筆硬度)が低下し易い問題点がある。一方、ポリオレフィン系樹脂の配合比率が40重量部未満では、易接着層とハードコート層との収縮差が小さくなり耐熱条件下でのクラックの発生は無く良好であるが、易接着層とCOP系基材フィルムとの密着性が低下する問題点がある。
【0058】
また、上記易接着層の塗膜厚さは、特に制約されるわけではないが、COP系基材フィルム及びハードコート層との密着性、或いはハードコート層の鉛筆硬度に悪影響を起こさない範囲の0.1μm〜1.0μmであることが望ましく、更に望ましくは0.2μm〜0.6μmの範囲である。上記易接着層の厚みが0.1μm未満では、ハードコート層との密着性が低下するため好ましくない。一方、上記易接着層の厚みが1.0μmを超えると、ハードコート層の下層に硬度が低い樹脂層からなる易接着層が形成されることになり、ハードコートフィルムの鉛筆硬度が低下(例えば、鉛筆硬度Hから鉛筆硬度HBに低下)し、また耐熱条件下においてクラックが発生し易くなるため好ましくない。
【0059】
上記易接着層には、塗工性の改善を目的にレベリング剤の配合が可能であり、たとえばフッ素系、アクリル系、シロキサン系、及びそれらの付加物或いは混合物などの公知のレベリング剤を使用可能である。配合量は、たとえば易接着層の樹脂成分100重量部に対し0.03重量部〜3.0重量部の範囲での配合が可能である。
【0060】
また、上記易接着層には、耐光密着性の付与(紫外線による密着不良を防止)を目的に、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤の配合が可能である。配合量は、易接着層の樹脂成分100重量部に対し0.05重量部〜10.0重量部の配合が好ましい。特に好ましくは、1.0重量部〜5.0重量部である。
【0061】
また、上記易接着層に添加するその他の添加剤として、本発明の効果を損なわない範囲で、消泡剤、防汚剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤等を必要に応じて配合してもよい。
【0062】
本実施形態において、上記易接着層は、上記ポリオレフィン系樹脂と上記スチレンアクリル系樹脂の他に、その他の添加剤等を適当な有機溶剤に溶解、分散した塗料を上記COP系基材フィルム上に塗工、乾燥、或いはその後硬化し形成される。この場合の有機溶剤としては、含有される上記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分(樹脂、その他添加剤)を均一に溶解あるいは分散できる溶媒であること、及び塗工時の作業性、乾燥性の観点から沸点が50℃〜160℃の有機溶剤の使用が好ましい。そのような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘプタン等の芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノール系等のアルコール系溶剤等の公知の有機溶剤を単独或いは適宜数種類組み合わせて使用することも可能である。
【0063】
本実施形態において、上記の易接着層用塗料をCOP系基材フィルム上に塗布する方法としては、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の塗工方式で塗設することができる。COP系基材フィルム上に塗工された塗料は、通常50〜120℃程度の温度で乾燥し溶剤を除去した後、熱エネルギー又は紫外線や電子線等の外部エネルギーを与えることによって硬化させ塗膜を形成する。
【0064】
<ハードコート層>
次に、上記ハードコート層について説明する。
本実施形態において、ハードコート層の電離線(電離放射線)硬化型樹脂は、第1の実施の形態の場合と同様、電子線または紫外線等を照射することによって硬化する透明な樹脂であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、及びエポキシアクリレート系樹脂等の中から適宜選択することができる。これらの中で電離線硬化型樹脂として好ましいものは、透明フィルム基材との良好な密着性を得るために分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化可能な多官能アクリレートからなるものが挙げられる。分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化可能な多官能アクリレートの具体例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどのエポキシ(メタ)アクリレート、多価アルコールと多価カルボン酸及び/またはその無水物とアクリル酸とをエステル化することによって得ることができるポリエステル(メタ)アクリレート、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレート、ポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの中で、ハードコート層を形成した際のハード性と柔軟性の両方に優れる、ウレタンアクリレートを用いることが望ましい。これらハードコート層の電離線硬化型樹脂は、単独でも2種以上を混合し使用しても良い。
【0065】
本実施の形態において、その様な電離線硬化型樹脂としては、未硬化の状態で赤外分光スペクトルにおいて1350〜1390cm
-1及び715〜745cm
-1にピークを示す(メタ)アクリロイル基を含むアクリル系樹脂を含むものであることが好ましい。後述のハードコート層のピーク面積比が450%以上とするために好ましい。
【0066】
本実施形態において、ハードコート層の厚さは、特に制約されるわけではないが、例えば1.0μmから12.0μmの範囲であることが好適である。塗膜厚さが1.0μm未満では必要な表面硬度が得られ難くなる。また、塗膜厚さが12.0μmを超える場合はカールが強く筒カール製造工程などで取扱い性が低下するため好ましくない。なお、ハードコート層の厚さは、マイクロメーターで実測することにより測定可能である。
【0067】
本実施形態において、ハードコート層は、電離線硬化型樹脂及びレベリング剤の他に、必要に応じて重合開始剤、消泡剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、湿潤分散剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤、その他の添加剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができ、これらを適当な溶媒に溶解、分散したハードコート塗料を基材フィルム上に塗工、乾燥、硬化して形成される。
【0068】
上記のハードコート塗料に用いることができる溶媒としては、配合される前記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分(樹脂、重合開始剤、その他添加剤)を均一に溶解あるいは分散できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘプタンなどの芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール系等のアルコール系溶剤等の公知の有機溶剤を単独或いは適宜数種類組み合わせて使用することもできる。
【0069】
上記ハードコート層の塗工方法については、第1の実施形態の場合と同様、特に限定はないが、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の塗工方式で塗設した後、通常50〜120℃程度の温度で乾燥し、溶媒が除去される。
【0070】
前述の第1の実施形態の場合と同様、基材フィルム(COP系基材フィルム)上に塗工し、溶媒を除去されたハードコート塗料を硬化させる方法としては、電子線又は紫外線を照射させる方法を用いることができる。その照射条件などは、使用する電子線硬化型樹脂、その他添加する各種薬品にあわせて適宜調整すればよい。なお、硬化反応時に窒素ガス雰囲気下など、酸素濃度を低下させ実施することができる。
【0071】
本実施の形態において、上記の様にして得られたハードコート層は、赤外分光スペクトル測定において、855〜1325cm
-1に現れるピークの面積をAとし、1650〜1800cm
-1に現れるピークの面積をBとしたとき、ピーク面積比((A/B)×100)が450%以上であることが好ましい。ハードコート層のピーク面積比が本範囲を満たすことで、本発明の効果をより得ることができる。また、前記易接着層を設けなくても、ハードコート層の密着性が良好になるという効果も奏する。
【0072】
なお、ハードコートフィルムに形成されたハードコート層の塗工厚みは、マイクロメーターを用いて測定するなどの既知の方法によって測定することができる。
【0073】
<レベリング剤>
本実施形態において、ハードコード層に含有されるレベリング剤としては、第1の実施形態の場合と同様、フッ素系、アクリル系、シロキサン系のレベリング剤を挙げることができる。これらの中では、レベリング剤にハードコート層表面の水接触角を低くするため水酸基を含有したタイプが好ましく、特に特定のフッ素系のレベリング剤を用いることが有効である。
【0074】
ここでいう特定のフッ素系レベリング剤とは、例えば、ヘキサフルオロプロペンオリゴマー誘導体を少なくとも含むフッ素系レベリング剤である。このようなヘキサフルオロプロペンオリゴマー誘導体を含むフッ素系レベリング剤は、分子内に二重結合を持ち、全体が分岐したパーフルオロアルケニルの分子構造を有している化合物である。
【0075】
上記フッ素系レベリング剤は、レベリング性を向上させるだけでなく、ハードコート層表面への配向性が良好であり、ハードコート層の濡れ性など、少量添加でも表面改質効果に優れている。
【0076】
本実施形態に好ましく用いられるフッ素系レベリング剤としては、たとえば市販されているフタージェント681(商品名)(株式会社ネオス製)、フタージェント602A(商品名)(株式会社ネオス製)などが具体的に挙げられる。
【0077】
なお、本実施形態においても、所望の効果を阻害しない範囲で、上記フッ素系、アクリル系、シロキサン系等のレベリング剤を併用することもできる。
【0078】
本実施形態においても、レベリング剤の好ましい配合量は、電離線硬化型樹脂100重量部に対し0.03重量部から3.0重量部の範囲である。レベリング剤の配合量が0.03重量部未満であると、十分な表面調整作用が得られずに干渉縞の改善に劣る。一方、レベリング剤の配合量が3.0重量部を超えると、ハードコート層に含まれる未硬化性成分の含有率が多い為に、十分なハードコート性を得られがたく、またハードコート層表面のレベリング剤存在率が高くなりすぎるために、本発明を満たす表面性が得られない場合がある。
【0079】
本実施形態において、ハードコート層表面の水接触角は70度以下である。ハードコート層の水接触角が70度以下であると、親水性の高い樹脂に対する濡れ広がりが良好であり、好ましい。
【0080】
また本実施形態において、ハードコート層表面のヘキサデカン接触角は20度以下である。ハードコート層のヘキサデカン接触角が20度以下であると、親油性の高い樹脂に対する濡れ広がりが良好であり、好ましい。
【0081】
上記の水及びヘキサデカンで規定される接触角を持つ本実施形態のハードコートフィルムであれば、タッチパネルなどに使用される接着剤などに対し広く良好な濡れ性を有するため、ハードコート層表面にタッチパネルなどを接着剤を介し貼り合わせる場合にも、濡れハジキがなく、そのため良好な接着性を示すことができる。
【0082】
以上説明したように、本実施形態によれば、COP系基材フィルムを用いた場合にもハードコート層の密着性に優れ、また高い接着剤との接着性(接着剤との濡れ性)を有しているとともに、干渉縞の発生を防止し、さらに耐擦傷性にも優れたハードコートフィルムを提供することができる。
【実施例】
【0083】
以下、具体的実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例の態様に限定されるものではない。
なお、以下の実施例1〜11は、前述の本発明の第1の実施の形態に対応する実施例である。
【0084】
(アクリル系基材フィルムの作製)
メタクリル系樹脂からなるペレットを十分に真空乾燥した後供給し、250℃で溶融混錬後、Tダイから押出して、冷却ロールで水冷して引取り、厚み100μmのフィルムを得た。この後、逐次二軸押出機で、縦延伸1.8倍(加熱温度140℃)、つづいて横延伸2.4倍(加熱温度140℃)し、厚み40μmの二軸延伸フィルムである算術平均表面粗さ(Ra)が0.7nm、吸水率0.5%のアクリル系基材フィルム((メタ)アクリル系樹脂フィルム)を得た。
【0085】
<実施例1>
アクリル系基材フィルムの一方の面に、下記組成からなるハードコート層形成用樹脂組成物をバーコータを用いて塗布し、100℃の乾燥炉で20秒間乾燥させ膜厚が5μmのハードコート層を形成した。これを、塗布面より60mmの高さにセットされたUV照射装置を用いUV照射量100mJ/cm
2にて硬化させハードコートフィルムを作製した。
【0086】
(ハードコート層形成用樹脂組成物)
ウレタンアクリレート100重量部(商品名:DIC−17−806、DIC(株)製、官能基数2以上の多官能ポリマー)、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、BASF(株)製) 5重量部、フッ素系レベリング剤(商品名:フタージェント681、(株)ネオス製)0.1重量部、>N−CH
3タイプヒンダードアミン系光安定化剤(商品名:チヌビン292、BASF(株)製)3.2重量部を撹拌し、揮発分が50%となるように酢酸エチルで希釈し、ハードコート層用塗料を得た。
【0087】
<実施例2>
実施例1のフッ素系レベリング剤の配合部数を0.25重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0088】
<実施例3>
実施例1のフッ素系レベリング剤の配合部数を0.5重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0089】
<実施例4>
実施例1のフッ素系レベリング剤の配合部数を1.0重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0090】
<実施例5>
実施例1のフッ素系レベリング剤の配合部数を3.0重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0091】
<実施例6>
実施例2で用いたウレタンアクリレート100重量部(商品名:DIC−17−806、DIC(株)製、官能基数2以上の多官能樹脂)を、ペンタエリスリトールトリアクリレート(商品名:ライトアクリレートPE−3A、共栄社化学製、官能基数:3)100重量部に変更したこと以外は実施例2と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0092】
<実施例7>
実施例2で用いたウレタンアクリレート100重量部(商品名:DIC−17−806、DIC(株)製、官能基数2以上の多官能樹脂)を、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(商品名:ライトアクリレートDPE−6A、共栄社化学製、官能基数:6)100重量部に変更したこと以外は実施例2と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0093】
<実施例8>
実施例2で用いたウレタンアクリレート100重量部(商品名:DIC−17−806、DIC(株)製、官能基数2以上の多官能樹脂)を、ポリプロピレンジメタクリレート(商品名:NKエステル9PG、新中村化学社製、官能基数:2)100重量部に変更したこと以外は実施例2と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0094】
<実施例9>
実施例2のフッ素系レベリング剤を、フッ素系レベリング剤(商品名:フタージェント602A、(株)ネオス製)に変更したこと以外は実施例2と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0095】
<実施例10>
ハードコート層形成用樹脂組成物を、バーコータを用いて塗布し、140℃の乾燥炉で20秒間乾燥させ膜厚が5μmのハードコート層を形成した以外は、実施例2と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0096】
<実施例11>
ハードコート層形成用樹脂組成物をバーコータを用いて塗布し、90℃の乾燥炉で20秒間乾燥させ膜厚が5μmのハードコート層を形成した以外は、実施例2と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0097】
<比較例1>
実施例1のフッ素系レベリング剤を無配合としたこと以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0098】
<比較例2>
実施例1のフッ素系レベリング剤の配合部数を5.0重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0099】
<比較例3>
実施例1のレベリング剤を、シロキサン系レベリング剤(商品名:BYK310、ビックケミー・ジャパン社製)0.25重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0100】
<比較例4>
実施例1のレベリング剤を、アクリル系レベリング剤(商品名:ディスパロンLF−1984、楠本化成社製)0.25重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0101】
<評価>
以上のようにして作製された実施例及び比較例のハードコートフィルムを次の項目について評価し、その結果を纏めて表1に示した。
【0102】
<密着性>
JIS K5600のクロスカット法にしたがって、ハードコート層の密着性の評価を行った。
すなわち、碁盤目剥離試験治具を用い1mm
2のクロスカットマスを100個作製し、積水化学工業(株)製粘着テープNo.252を、その上に貼り付け、ヘラを用いて均一に押し付けた後、90度方向に剥離し、ハードコート層の残存率(残存個数/100)を評価した。評価基準は下記の通りであり、◎または○であれば密着性は良好と判断した。
◎:クロスカットマスの残存率が、100%
○:クロスカットマスの残存率が、90%以上〜100%未満
△:クロスカットマスの残存率が、80%以上〜90%未満
×:クロスカットマスの残存率が、80%未満
【0103】
<フィルムの平坦性>
ハードコートフィルムを蛍光灯下で目視観察し、実施例1に記載される方法で作製された算術平均表面粗さ(Ra)が1nm以下の(メタ)アクリル系樹脂フィルムとハードコートフィルムを比較し、フィルムの平坦性の状態を評価した。評価基準は下記の通りであり、○と△を合格とした。
○:算術平均粗さ(Ra)1nm以下のフィルムと比較し、平坦性が同等。
△:算術平均粗さ(Ra)1nm以下のフィルムと比較し、凹凸が若干みられ平坦性が劣る。
×:算術平均粗さ(Ra)1nm以下のフィルムと比較し、凹凸がみられ平坦性が大きく劣る。
【0104】
<水接触角及びヘキサデカン接触角の測定>
協和界面科学株式会社製全自動接触角計DM−701を用いて、水又はヘキサデカンを1μL滴下し、30秒後の接触角を測定した。
【0105】
<干渉縞(虹彩状色彩)の評価>
実施例及び比較例で得られたハードコートフィルムを10cm×15cmの面積に切り出し、試料フィルムを作製した。この試料フィルムのハードコート層とは反対面に、黒色光沢テープを貼り合わせ、ハードコート面を上面にして、3波長形昼白色蛍光灯(ナショナル パルック、F.L 15EX−N 15W)を光源として、斜め上方より反射光を目視で観察した。評価基準は以下のとおりである。
○:干渉縞が見られない。
△:干渉縞がわずかにみられるが、実用上問題のないレベル。
×:干渉縞が非常に目立つ。
【0106】
<耐擦傷性の評価>
ハードコートフィルムのハードコート面に直径25mmのスチールウール#0000(日本スチールウール社製)を1000gfにて押し当てながら10往復させた際のハードコート面の傷入り状態を3波長形昼白色蛍光灯(ナショナル パルック、F.L 15EX−N 15W)を光源として、斜め上方より反射光を目視で観察した。評価基準は次のとおりである。
○:傷がみられない。
△:傷が見られるが、実用上問題のないレベル。
×:傷が非常に目立つ。
【0107】
<樹脂の濡れ性>
ハードコートフィルムのハードコート層上に、紫外線硬化型アクリルモノマーからなる接着剤用の樹脂としてU‐2110(ケミスタット社製)を0.7g滴下し、5分後の液滴の直径を測定した。評価基準は以下のとおりである。
○:液滴の直径が35mm以上(十分な接着力が得られる)
△:液滴の直径が30〜34mm(接着力にばらつきが出る)
×:液滴の直径が30mm未満(接着力が不十分である)
【0108】
【表1】
【0109】
本発明によれば、表1に示される実施例1〜10で明らかにされるように、アクリル系基材フィルムにおいても密着性に優れ、ハードコート層にレベリング剤を含有し、かつハードコート層表面の水の接触角70度以下、およびヘキサデカンの接触角20度以下のハードコートフィルムであれば、ハードコート層と樹脂との濡れ性が良好で、干渉縞に問題のない、十分な耐擦傷性を有するハードコートフィルムを得ることができる。また、実施例11のハードコートフィルムは、密着性が若干劣るものの、全体的な評価としては良好な特性を有するものである。
これに対し、比較例1〜4では、密着性、干渉縞、耐擦傷性、接着剤用樹脂の濡れ性の全ての評価において良好な特性を有するハードコートフィルムを得ることは困難である。
【0110】
次の実施例12〜21は、前述の本発明の第2の実施の形態に対応する実施例である。
<易接着層塗料の調製>
まず、スチレンアクリル系樹脂「ARUFON UG−4070(商品名)」(固形分100%、東亜合成株式会社製、ガラス転移温度58℃)60部を、攪拌機を用いて酢酸エチル140部中へ攪拌しながら少量ずつ添加し樹脂溶解を行い濃度30%の溶解液を作製した。
【0111】
次いで、ポリオレフィン系樹脂「サーフレンP−1000(商品名)」(固形分20%、三菱化学株式会社製)70部と上記のスチレンアクリル系樹脂「ARUFON UG−4070(商品名)」(固形分30%)20部とを配合し、酢酸ブチル/トルエン=85/15(重量%)にて固形分濃度5%となるまで希釈し易接着層塗料を調製した。
【0112】
<ハードコート層形成用樹脂組成物>
ウレタンアクリレート100重量部(商品名:DIC−17−806、DIC(株)製、官能基数2以上の多官能ポリマー)、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、BASF(株)製) 5重量部、フッ素系レベリング剤(商品名:フタージェント681、(株)ネオス製)0.1重量部、>N−CH
3タイプヒンダードアミン系光安定化剤(商品名:チヌビン292、BASF(株)製)3.2重量部を撹拌し、揮発分が50%となるように酢酸エチルで希釈し、ハードコート層用塗料を得た。
【0113】
<実施例12>
シクロオレフィンフィルムとして厚さ60μmのゼオノアフィルムZF14(日本ゼオン株式会社製、吸水率0.01%)の片面に上記の易接着層塗料を、バーコーターを用いて塗工し、90℃の乾燥炉で1分間熱風乾燥させ乾燥固化し、塗膜厚み0.3μmの易接着層を形成させ、易接着層付きフィルムを得た。
【0114】
次に、その易接着層付きフィルムの易接着層上に、上記のハードコート層塗料を、バーコーターを用いて塗工し、80℃の乾燥炉で1分間熱風乾燥させ、塗膜厚み5.0μmの塗工層を形成した。これを、塗工面より60mmの高さにセットされたUV照射装置を用い、UV照射量150mJ/cm
2にて硬化させてハードコート層を形成し、本実施例のハードコートフィルムを作製した。
【0115】
<実施例13>
実施例12のフッ素系レベリング剤の配合部数を0.25重量部としたこと以外は実施例12と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0116】
<実施例14>
実施例12のフッ素系レベリング剤の配合部数を0.5重量部としたこと以外は実施例12と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0117】
<実施例15>
実施例12のフッ素系レベリング剤の配合部数を1.0重量部としたこと以外は実施例12と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0118】
<実施例16>
実施例12のフッ素系レベリング剤の配合部数を3.0重量部としたこと以外は実施例12と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0119】
<実施例17>
実施例13で用いたウレタンアクリレート100重量部(商品名:DIC−17−806、DIC(株)製、官能基数2以上の多官能樹脂)を、ペンタエリスリトールトリアクリレート(商品名:ライトアクリレートPE−3A、共栄社化学製、官能基数:3)100重量部に変更したこと以外は実施例13と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0120】
<実施例18>
実施例13で用いたウレタンアクリレート100重量部(商品名:DIC−17−806、DIC(株)製、官能基数2以上の多官能樹脂)を、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(商品名:ライトアクリレートDPE−6A、共栄社化学製、官能基数:6)100重量部に変更したこと以外は実施例13と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0121】
<実施例19>
実施例13で用いたウレタンアクリレート100重量部(商品名:DIC−17−806、DIC(株)製、官能基数2以上の多官能樹脂)を、ポリプロピレンジメタクリレート(商品名:NKエステル9PG、新中村化学社製、官能基数:2)100重量部に変更したこと以外は実施例13と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0122】
<実施例20>
実施例13のフッ素系レベリング剤を、フッ素系レベリング剤(商品名:フタージェント602A、(株)ネオス製)に変更したこと以外は実施例13と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0123】
<実施例21>
ハードコート層形成用樹脂組成物として、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂組成物「TOMAX FA−3246」(固形分40%、日本化工塗料株式会社製)を主剤とし、イルガキュア184(光重合開始剤、BASF社製)(樹脂組成物の固形分に対し3重量部)を、酢酸ブチルで紫外線硬化型樹脂の塗料中の固形分濃度が30%となるまで希釈し十分攪拌してハードコート層塗料2(他の成分(フッ素系レベリング剤、光安定化剤など)は実施例13で用いたハードコート層塗料と同じ。)を調製し、シクロオレフィンフィルムとして上記ゼオノアフィルム「ZF14」(日本ゼオン株式会社製)の片面に、上記易接着層は省いて、上記のハードコート層塗料2を直接、バーコーターを用いて塗工した以外は、実施例13と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0124】
<比較例5>
実施例12のフッ素系レベリング剤を無配合としたこと以外は実施例12と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0125】
<比較例6>
実施例12のフッ素系レベリング剤の配合部数を5.0重量部としたこと以外は実施例12と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0126】
<比較例7>
実施例12のレベリング剤を、シロキサン系レベリング剤(商品名:BYK310、ビックケミー・ジャパン社製)0.25重量部に変更したこと以外は実施例12と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0127】
<比較例8>
実施例12のレベリング剤を、アクリル系レベリング剤(商品名:ディスパロンLF−1984、楠本化成社製)0.25重量部に変更したこと以外は実施例12と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0128】
<評価>
以上のようにして作製された実施例及び比較例のハードコートフィルムを次の項目について評価し、その結果を纏めて表2に示した。
【0129】
<密着性>
JIS K5600のクロスカット法にしたがって、ハードコート層の密着性の評価を行った。
すなわち、碁盤目剥離試験治具を用い1mm
2のクロスカットマスを100個作製し、積水化学工業(株)製粘着テープNo.252を、その上に貼り付け、ヘラを用いて均一に押し付けた後、90度方向に剥離した。操作を5回繰り返したのち、ハードコート層の残存率(残存個数/100)を評価した。評価基準は下記の通りであり、◎または○であれば密着性は良好と判断した。
◎:クロスカットマスの残存率が、100%
○:クロスカットマスの残存率が、90%以上〜100%未満
△:クロスカットマスの残存率が、80%以上〜90%未満
×:クロスカットマスの残存率が、80%未満
【0130】
<ピーク面積比>
赤外分光光度計を用いてハードコートフィルムのハードコート層表面に対するATR法により、赤外分光スペクトル(赤外吸収スペクトル)を測定した。赤外分光光度計はFT−IR Spectrometer Spectrum 100(パーキンエルマージャパン社製)を使用した。得られた横軸を波数(cm
-1)とし、縦軸を吸光度としたスペクトルチャート上において、855〜1325cm
-1、1650〜1800cm
-1にそれぞれベースラインを引き、このベースラインとスペクトル曲線とで囲まれる面積をそれぞれA、及びBとし、その比(A/B)×100をピーク面積比とした。
【0131】
<水接触角及びヘキサデカン接触角の測定>
協和界面科学株式会社製全自動接触角計DM−701を用いて、水又はヘキサデカンを1μL滴下し、30秒後の接触角を測定した。
【0132】
<干渉縞(虹彩状色彩)の評価>
実施例及び比較例で得られたハードコートフィルムを10cm×15cmの面積に切り出し、試料フィルムを作製した。この試料フィルムのハードコート層とは反対面に、黒色光沢テープを貼り合わせ、ハードコート面を上面にして、3波長形昼白色蛍光灯(ナショナル パルック、F.L 15EX−N 15W)を光源として、斜め上方より反射光を目視で観察した。評価基準は以下の通りである。
○:干渉縞が見られない。
△:干渉縞がわずかにみられるが、実用上問題のないレベル。
×:干渉縞が非常に目立つ。
【0133】
<耐擦傷性の評価>
ハードコートフィルムのハードコート面に直径25mmのスチールウール#0000(日本スチールウール社製)を1000gfにて押し当てながら10往復させた際のハードコート面の傷入り状態を3波長形昼白色蛍光灯(ナショナル パルック、F.L 15EX−N 15W)を光源として、斜め上方より反射光を目視で観察した。評価基準は以下の通りである。
○:傷がみられない。
△:傷が見られるが、実用上問題のないレベル。
×:傷が非常に目立つ。
【0134】
<樹脂の濡れ性>
ハードコートフィルムのハードコート層上に、紫外線硬化型アクリルモノマーからなる接着剤用の樹脂としてU‐2110(ケミスタット社製)を0.7g滴下し、5分後の液滴の直径を測定した。評価基準は以下の通りである。
○:液滴の直径が35mm以上(十分な接着力が得られる)
△:液滴の直径が30〜34mm(接着力にばらつきが出る)
×:液滴の直径が30mm未満(接着力が不十分である)
【0135】
【表2】
【0136】
本発明によれば、表2に示される実施例12〜21で明らかにされるように、COP系基材フィルムにおいても密着性に優れ、ハードコート層にレベリング剤を含有し、且つハードコート層表面の水の接触角70度以下、およびヘキサデカンの接触角20度以下のハードコートフィルムであれば、ハードコート層と樹脂との濡れ性が良好で、干渉縞に問題のない、十分な耐擦傷性を有するハードコートフィルムを得ることができる。また、実施例21のハードコートフィルムは、ハードコート層のピーク面積比が450%以上であることにより、易接着層は設けていないが、ハードコート層の密着性は良好である。
これに対し、比較例5〜8では、密着性、干渉縞、耐擦傷性、接着剤用樹脂の濡れ性の全ての評価において良好な特性を有するハードコートフィルムを得ることは困難である。