(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986025
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】自動車の使用の承認
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20211213BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20211213BHJP
【FI】
E05B49/00 J
B60R25/24
【請求項の数】26
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-549873(P2018-549873)
(86)(22)【出願日】2016年10月21日
(65)【公表番号】特表2019-513199(P2019-513199A)
(43)【公表日】2019年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2016075335
(87)【国際公開番号】WO2017162317
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2019年4月26日
(31)【優先権主張番号】102016204749.3
(32)【優先日】2016年3月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】ハインボッケル・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァガタ・ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】ホッケ・フレドリク
(72)【発明者】
【氏名】ヴィストロフ・ラルフ
【審査官】
内山 隆史
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第01403653(EP,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0033752(US,A1)
【文献】
特開2010−274682(JP,A)
【文献】
特開2010−024746(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/84852(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00
B60R 25/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別子発信機用アンテナを備えた携帯可能な識別子発信機を用いて、少なくとも第一と第二のアンテナを備え、これらの第一と第二のアンテナが互いに空間的に離れて設置された自動車、特に、二輪又は四輪の自動車の使用を承認する方法であって、
車両の第一のアンテナが、磁場が第一の偏りを有した第一の電磁場による第一の信号を送信して、この第一の信号が、識別子発信機用アンテナにより受信される工程と、
識別子発信機が、角度分解能を有する磁界センサーを用いて、受信した第一の信号の第一の電磁場の磁場の空間成分の中の少なくとも、磁界センサーが感度を有する一つの2次元面内に射影した成分を特定する工程と、
車両の第二のアンテナが、磁場が第一の偏りとは異なる第二の偏りを有した第二の電磁場による第二の信号を送信して、この第二の信号が、識別子発信機用アンテナにより受信される工程と、
識別子発信機が、角度分解能を有する磁界センサーを用いて、受信した第二の信号の第二の電磁場の磁場の空間成分の中の少なくとも前記2次元面内に射影した成分を特定する工程と、
識別子発信機が、受信した第一の信号の第一の電磁場の磁場の特定された空間成分および受信した第二の信号の第二の電磁場の磁場の特定された空間成分又はそれらに対応する第一のデータを車両に伝送する工程と、
車両内の計算機が、少なくとも、受信した第一の信号の第一の電磁場の磁場の特定された空間成分および受信した第二の信号の第二の電磁場の磁場の特定された空間成分の間の角度を特定する工程と、
特定された角度が、予め決められた閾値を上回った場合にのみ、車両が、自動車の使用を承認する第一の承認信号を提供する工程と、
を有する、自動車の使用を承認する方法。
【請求項2】
識別子発信機が動きセンサーを備え、この動きセンサーが、動きセンサー又は識別子発信機が動かされるかどうかを特定し、この動きセンサーが識別子発信機の動きを特定した場合にのみ、識別子発信機が、自動車の使用を承認する第二の承認信号を自動車に送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項3】
動きセンサーは、動きセンサーが動かされるかどうか繰り返し特定し、動きセンサーは、動きを検知又は特定する毎に、その動きの発生及び/又はその動きの種類にタイムスタンプを付与することを特徴とする請求項2に記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項4】
タイムスタンプを付与された動きの発生の各々及び/又はタイムスタンプを付与された動きの種類の各々が、識別子発信機内のデータメモリ及び/又は自動車内のデータメモリに保存されて、その後の基準の動きパターンとの動きパターン比較のために予め保持されることを特徴とする請求項3に記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項5】
動きパターン比較が、識別子発信機内の計算機及び/又は自動車内の計算機により実行されて、識別子発信機内の計算機及び/又は自動車内の計算機が、識別子発信機の動きパターンと基準の動きパターンの予め決められた程度の一致を特定した場合にのみ、自動車が、自動車の使用を承認する第一の承認信号を提供するか又は識別子発信機が、自動車の使用を承認する第二の承認信号を自動車に送信するかの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項6】
識別子発信機が実際に動かされる場合に、識別子発信機が、第二の承認信号といったデータを送信することを特徴とする請求項2から5までのいずれか一つに記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項7】
基準の動きパターンが、車両に接近する典型的な場合の動きパターンであることを特徴とする請求項4、5または請求項4を直接的ないし間接的に引用する請求項6に記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項8】
基準の動きパターンが、権利者毎及び/又は識別子発信機毎に収集されて、その後の動きパターン比較のために、識別子発信機及び/又はそれに対応する自動車内に保存されることを特徴とする請求項4、5、7または請求項4を直接的ないし間接的に引用する請求項6に記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項9】
動きセンサーが、加速度センサーにより構成されることを特徴とする請求項2から8までのいずれか一つに記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項10】
車両の第一のアンテナによる第一の信号の送信と車両の第二のアンテナによる第二の信号の送信との間の時間間隔は、運転者が自動車に向かって行く時に、運転者が持ち運ぶ識別子発信機が殆ど動かないように、時間的に短いがゼロではないように選択され、これにより、少なくとも、受信した第一の信号の第一の電磁場の磁場の特定された空間成分および受信した第二の信号の第二の電磁場の磁場の特定された空間成分の間の角度の特定が、運転者の動きによって、或いはそれに伴う識別子発信機の動きによって、誤りのあるものに殆どされない、或いは役立たないものに殆どならないことを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つに記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項11】
自動車が、第一と第二のアンテナからそれぞれ空間的に離れて設置された別の第三のアンテナを備えることと、
車両の第三のアンテナが、磁場が第一の偏りおよび第二の偏りとは異なる第三の偏りを有した第三の電磁場による第三の信号を送信して、この第三の信号が、識別子発信機用アンテナにより受信されることと、
識別子発信機が、角度分解能を有する磁界センサーを用いて、受信した第三の信号の第三の電磁場の磁場の空間成分の中の少なくとも、磁界センサーが感度を有する前記2次元面内に射影した成分を特定することと、
識別子発信機が、受信した第一の信号の第一の電磁場の磁場の特定された空間成分および受信した第三の信号の第三の電磁場の磁場の特定された空間成分、或いはそれらに対応する第二のデータを車両に伝送する工程と、
車両内の計算機が、少なくとも、受信した第一の信号の第一の電磁場の磁場の特定された空間成分および受信した第三の信号の第三の電磁場の磁場の特定された空間成分の間の角度を特定することと、
を特徴とする請求項1から10までのいずれか一つに記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項12】
受信した第一の信号の第一の電磁場の磁場の、識別子発信機により特定される空間成分が、第一の直交座標系の電磁場の磁場の、x,y及びz成分であることを特徴とする請求項1から11までのいずれか一つに記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項13】
角度を繰り返し特定する間の期間を短くすることで、その期間における識別子発信機の動きを小さくして、それにより電磁場の磁場の空間成分の特定時に基本となる、識別子発信機を基準とした直交座標系又は基準系が空間的に僅かしか変化しないようにし、その結果、受信した第二の信号の第二の電磁場の磁場の識別子発信機により特定される空間成分が、前記第一の直交座標系に関する電磁場の磁場のx,y及びz成分であるとみなせるようにすることを特徴とする請求項12に記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項14】
受信した第三の信号の第三の電磁場の磁場の識別子発信機により特定される空間成分が、前記第一の直交座標系の電磁場の磁場のx,y及びz成分であることを特徴とする請求項12または13に記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項15】
少なくとも、受信した第一の信号の第一の電磁場の磁場の識別子発信機により特定されたx,y及びz成分から成る第一のベクトルと、受信した第二の信号の第二の電磁場の磁場の識別子発信機により特定されたx,y及びz成分から成る第二のベクトルとが計算により算出されて、これら二つのベクトルから、それらのスカラー積が計算により算出され、このスカラー積を用いて、二つのベクトルの間の角度が計算により決定されることを特徴とする請求項12から14までのいずれか一つに記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項16】
閾値は、ほぼゼロ度又は1〜10度又は1〜5度より大きい値であることを特徴とする請求項1から15までのいずれか一つに記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項17】
前記閾値は、車両からの識別子発信機の間隔が小さくなる程大きくされ、この間隔は、車両と識別子発信機の間で交換される信号間の伝播時間の測定によって決定されることを特徴とする請求項1から16までのいずれか一つに記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項18】
第一及び第二のアンテナが、それぞれ20kHz〜140kHzの周波数帯域内の同じ周波数又は異なる周波数、又は、約125kHzの周波数を送信する、又は、これらの周波数を時間的にずらして送信することを特徴とする請求項1から17までのいずれか一つに記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項19】
第一、第二及び第三のアンテナが、それぞれ20kHz〜140kHzの周波数帯域内の同じ周波数又は異なる周波数、又は、約125kHzの周波数を送信する、又は、これらの周波数を時間的にずらして送信することを特徴とする請求項11または請求項11を直接的ないし間接的に引用する請求項12〜17までのいずれか一つに記載の自動車の使用を承認する方法。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか一つに記載の方法を実施することを特徴とする自動車の使用を承認する車両アクセスシステム。
【請求項21】
請求項1から19までのいずれか一つに記載の方法を実行又は実現するとともに、識別子発信機が、識別子発信機用アプリケーションソフトウェア、所謂アプリなどを有する無線キー又はスマートフォンであることを特徴とする自動車の使用を承認する車両アクセスシステム。
【請求項22】
識別子発信機が、計算機チップを備えたスマートフォン、計算機チップを備えた車両用無線キー又は計算機チップを備えたスマートカードであることを特徴とする請求項20または21に記載の自動車の使用を承認する車両アクセスシステム。
【請求項23】
識別子発信機が、その識別子発信機の領域内の車両の一つ又は複数のアンテナが発生する電磁場の磁場を計測して、電磁場の磁場の成分を特定するセンサーを備えることを特徴とする請求項20から22までのいずれか一つに記載の自動車の使用を承認する車両アクセスシステム。
【請求項24】
請求項1から19までのいずれか一つに記載の方法を実施することを特徴とする自動車の使用を承認するエンジンイモビライザー。
【請求項25】
請求項1から19までのいずれか一つに記載の方法を実施することを特徴とする自動車の使用を承認する車両。
【請求項26】
請求項1から19までのいずれか一つに記載の方法のフローを実現する少なくとも一つのプロセッサを制御するコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、少なくとも第一のアンテナと第二のアンテナを備え、これらの第一のアンテナと第二のアンテナが互いに空間的に離れて設置された自動車の使用を承認する方法に関する。自動車は、特に、二輪又は四輪の自動車である。
【背景技術】
【0002】
こういった周知の方法では、不正操作に対してこれらの方法を一層改善することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、特に、不正操作に対する保護を改善した、自動車の使用を承認する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本課題は、特に、方法に関する独立請求項の特徴を有する、自動車の使用を承認する方法によって解決される。本発明による方法の有利な実施形態は、方法に関する従属請求項の対象である。
【0005】
本発明による方法は、識別子発信機用アンテナを備えた携帯可能な識別子発信機を用いて、少なくとも第一のアンテナと第二のアンテナを備え、これらの第一のアンテナと第二のアンテナが互いに空間的に離れて設置された自動車、特に、二輪又は四輪の自動車の使用を承認する方法を出発点とする。
【0006】
この周知の方法は、本発明において、次の工程によって発展的に構成される。
【0007】
第一の工程では、車両の第一のアンテナが第一の信号を送信して、この第一の信号が、識別子発信機用アンテナにより受信される。
【0008】
第二の工程では、識別子発信機が、有利には、角度分解能を有する磁気センサー(磁界センサー)を用いて、受信した第一の信号の第一の電磁場の空間成分の中の少なくとも一つを特定する。
【0009】
第三の工程では、車両の第二のアンテナが、第二の信号を送信して、この第二の信号が、識別子発信機用アンテナにより受信される。
【0010】
第四の工程では、識別子発信機が、有利には、角度分解能を有する磁気センサーを用いて、受信した第二の信号の第二の電磁場の空間成分の中の少なくとも一つを特定する。
【0011】
第五の工程では、識別子発信機が、受信した第一の信号の第一の電磁場の特定された少なくとも一つの空間成分および受信した第二の信号の第二の電磁場の特定された少なくとも一つの空間成分又はそれらに対応する第一のデータを車両に伝送する。
【0012】
第六の工程では、第一の計算機、有利には、自動車内の計算機が、少なくとも、受信した第一の信号の第一の電磁場の特定された空間成分および受信した第二の信号の第二の電磁場の特定された空間成分の間の角度を特定し、第七の工程では、特定された角度が、予め決められた閾値を上回った場合にのみ、自動車が、自動車の使用を承認する承認信号を提供する。
【0013】
要約すると、本発明による方法によって、空間的に分離された、或いは離れて設置された少なくとも二つの送信機を用いて、受信機又は識別子発信機の位置を角度分解能を有する形で決定することができる。不正操作の観点において、離れて設置された送信機の信号がリピータにより転送される場合、その伝播時間が長くなって、角度情報が失われる。本発明による角度分解能を有する形の方法は、識別子発信機及び/又は自動車により信号の平行性を検知して、識別子発信機及び/又は自動車が承認信号の送信を阻止することによって、無線区間のそのような不正操作を検知する。
【0014】
本発明による方法の特に有利な実施形態では、識別子発信機が動きセンサーを備えるものとされている。動きセンサーは、有利には、動きセンサー又は識別子発信機が動かされるかどうかを特定して、動きセンサーが識別子発信機の動きを特定した場合にのみ、識別子発信機が、自動車の使用を承認する第一の承認信号及び/又は第二の承認信号を自動車に送信する。それに対応する第一のデータが、第二の承認信号を表すか、或いは第二の承認信号に相当することができる。
【0015】
本発明による方法の有利な発展形態では、動きセンサーは、動きセンサーが動かされるかどうか繰り返し特定するとされている。有利には、動きセンサーは、動きを検知又は特定する毎に、その動きの発生及び/又はその動きの種類にタイムスタンプを付与する。
【0016】
前述の本発明による任意選択の措置によって、不正操作が一層阻止又は防止される。
【0017】
本発明による方法の有利な実施構成では、タイムスタンプを付与された動きの発生の各々及び/又はタイムスタンプを付与された動きの種類の各々が、識別子発信機内のデータメモリ及び/又は自動車内のデータメモリに保存されて、その後の基準の動きパターンとの動きパターン比較のために予め保持されるものとされている。
【0018】
代替的ないし付加的に、本発明による方法の一つの実施構成では、動きパターン比較が、識別子発信機内の計算機及び/又は自動車内の計算機により実行されて、識別子発信機内の計算機及び/又は自動車内の計算機が、識別子発信機の動きパターンと基準の動きパターンの予め決められた程度の一致を特定した場合にのみ、識別子発信機及び/又は自動車が、自動車の使用を承認する承認信号を提供するとされている。
【0019】
本発明による方法の特に有利な実施形態では、識別子発信機が実際に動かされる場合に、識別子発信機が、承認信号といったデータを送信するとされている。
【0020】
更に、本発明による方法の特に有利な実施構成では、基準の動きパターンが、車両に接近する典型的な場合の動きパターンであるとされている。
【0021】
本発明による方法の一つの実施形態では、基準の動きパターンが、権利者毎及び/又は識別子発信機毎に収集されて、その後の動きパターン比較のために、識別子発信機及び/又はそれに対応する自動車内に保存される。
【0022】
本発明による方法の有利な実施構成では、動きセンサーが加速度センサーにより構成されるものとされている。
【0023】
前述の本発明による任意選択の措置は、不正操作を一層阻止又は防止するのに適している。
【0024】
代替的ないし付加的に、本発明による方法の一つの実施形態では、車両の第一のアンテナによる第一の信号の送信と車両の第二のアンテナによる第二の信号の送信との間の時間間隔は、運転者が自動車に向かって行く時に、運転者が持ち運ぶ識別子発信機が殆ど動かないように、時間的に短いがゼロではないように選択されるものとされている。それにより、少なくとも、受信した第一の信号の第一の電磁場の特定された空間成分および受信した第二の信号の第二の電磁場の特定された空間成分の間の角度の特定が、運転者の動きによって、或いはそれに伴う識別子発信機の動きによって、誤りのあるものに殆どされない、或いは役立たないものに殆どならない。
【0025】
本発明による方法の一つの発展形態では、自動車が、第一と第二のアンテナからそれぞれ空間的に離れて設置された別の第三のアンテナを備え、少なくとも、受信した第一の信号の第一の電磁場の特定された空間成分と、第三のアンテナから送信されて識別子発信機により受信された第三の信号の第三の電磁場の特定された空間成分との間の角度が同様に決定されるものとされている。
【0026】
前述の任意選択の措置も、不正操作リスクを一層低減するか、或いは明らかに阻止するのに適している。
【0027】
本発明による方法の一つの実施構成では、受信した第一の信号の第一の電磁場の識別子発信機により特定される空間成分が、第一の直交座標系の電磁場のx,y及びz成分であるとされている。
【0028】
本発明による方法の一つの実施形態では、受信した第二の信号の第二の電磁場の識別子発信機により特定される空間成分が、その電磁場のx,y及びz成分、主に、第一の直交座標系に関する成分であるとされ、その理由は、主に、これらの成分の特定時に基本となる直交座標系又は基準系が、識別子発信機の動きが小さい場合、角度を繰り返し特定する間の非常に短い期間に、空間的に僅かしか変化しないからである。
【0029】
本発明による方法の一つの発展形態では、受信した第三の信号の第三の電磁場の識別子発信機により特定される空間成分が、その電磁場のx,y及びz成分、主に、第一の直交座標系の成分であるとされている。
【0030】
本発明による方法の有利な実施構成では、少なくとも、受信した第一の信号の第一の電磁場の識別子発信機により特定されたx,y及びz成分から成る第一のベクトルと、受信した第二の信号の第二の電磁場の識別子発信機により特定されたx,y及びz成分から成る第二のベクトルとが計算により算出されて、これら二つのベクトルから、それらのスカラー積が計算により算出されるものとされている。
【0031】
本発明による方法の同様に有利な発展形態では、このスカラー積を用いて、二つのベクトルの間の角度が計算により決定される。
【0032】
前述の任意選択の措置は、有利には、本発明による方法を安価に実現するのに適している。
【0033】
本発明による方法の有利な実施構成では、特定される角度が、ほぼゼロ度の予め決められた閾値を上回る、特に、1〜10度、有利には、1〜5度より大きい閾値を上回るとされている。
【0034】
本発明による方法の有利な発展形態では、ゼロ度より大きい閾値は、車両からの識別子発信機の間隔が小さくなる程大きくされ、この間隔は、有利には、車両と識別子発信機の間で交換される信号間の伝播時間の測定によって決定されるものとされている。
【0035】
本発明による方法の有利な実施構成では、第一、第二及び第三のアンテナが、それぞれ20kHz〜140kHzの周波数帯域内の同じ周波数又は異なる周波数、有利には、約125kHzの周波数を送信する、有利には、時間的にずらして送信するとされている。
【0036】
前述の任意選択の措置により、本発明による方法をより一層安全に構成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、有利には、自動車の使用を承認する車両アクセスシステムの提供を可能にし、その場合、この車両アクセスシステムは、本発明による方法の少なくとも一つの工程の実施を実現する。
【0038】
本発明は、更に、本発明による自動車の使用を承認する車両アクセスシステムの提供を可能にし、その場合、この車両アクセスシステムは、本発明のいずれか一つの請求項に記載された方法の少なくとも一つの工程の実施を実行又は実現するとともに、識別子発信機は、有利には、識別子発信機用アプリケーションソフトウェア、所謂アプリなどを有する無線キー又はスマートフォンである。
【0039】
本発明は、更に、本発明による自動車の使用を承認する車両アクセスシステムを提案し、その場合、識別子発信機は、計算機チップを備えたスマートフォン、計算機チップを備えた車両用無線キー又は計算機チップを備えたスマートカードである。
【0040】
更に、本発明は、本発明による自動車の使用を承認する車両アクセスシステムを提案し、その場合、識別子発信機は、その識別子発信機の領域内の車両の一つ又は複数のアンテナが発生する電磁場及び/又は電磁場の成分を計測又は特定するセンサーを備える。
【0041】
本発明は、本発明による方法の少なくとも一つの工程の実施を実現する、自動車の使用を承認するエンジンイモビライザーを提案する。
【0042】
同様に、本発明は、本発明による方法の少なくとも一つの工程の実施を実現する、或いはその実施に関与する自動車を提案する。
【0043】
最後に、本発明による方法の少なくとも一つの工程の進行を実現する少なくとも一つのプロセッサを制御するコンピュータプログラム製品を提案する。