(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986032
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】JAK阻害剤としてのピロロピリミジン化合物の結晶
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20211213BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20211213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20211213BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
C07D487/04 140
A61K31/519
A61P35/00
A61P43/00 111
C07D487/04CSP
【請求項の数】21
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-565295(P2018-565295)
(86)(22)【出願日】2017年6月15日
(65)【公表番号】特表2019-521980(P2019-521980A)
(43)【公表日】2019年8月8日
(86)【国際出願番号】CN2017088429
(87)【国際公開番号】WO2017215630
(87)【国際公開日】20171221
【審査請求日】2020年6月12日
(31)【優先権主張番号】201610435947.4
(32)【優先日】2016年6月16日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
(73)【特許権者】
【識別番号】515212149
【氏名又は名称】連雲港潤衆製薬有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】514120955
【氏名又は名称】ケンタウルス バイオファーマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周舟
(72)【発明者】
【氏名】張愛明
(72)【発明者】
【氏名】張喜全
(72)【発明者】
【氏名】姚華東
【審査官】
二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−519340(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/026975(WO,A1)
【文献】
特表2012−504639(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/173506(WO,A2)
【文献】
国際公開第2015/188681(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/04
A61K 31/519
A61P 35/00 −43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I化合物の結晶Aであって、
【化1】
そのX線回折パターンは、2θが9.35°±0.2°、11.93°±0.2°、16.32°±0.2°、21.23°±0.2°、23.13°±0.2°及び25.58°±0.2°である回折ピークを有
する、式I化合物の結晶A。
【請求項2】
前記X線回折パターンは、2θが9.35°±0.2°、11.93°±0.2°、16.32°±0.2°、18.82°±0.2°、20.54°±0.2°、21.23°±0.2°、23.13°±0.2°及び25.58°±0.2°である回折ピークを有する、請求項1に記載の式I化合物の結晶A。
【請求項3】
前記X線回折パターンは、2θが9.35°±0.2°、10.93°±0.2°、11.93°±0.2°、14.46°±0.2°、16.32°±0.2°、18.82°±0.2°、20.54°±0.2°、21.23°±0.2°、21.66°±0.2°、23.13°±0.2°、25.58°±0.2°及び26.34°±0.2°である回折ピークを有する、請求項1に記載の式I化合物の結晶A。
【請求項4】
前記X線回折パターンは、2θが9.35°±0.2°、10.93°±0.2°、11.93°±0.2°、14.46°±0.2°、16.32°±0.2°、17.28°±0.2°、18.82°±0.2°、19.25°±0.2°、20.54°±0.2°、21.23°±0.2°、21.66°±0.2°、22.15°±0.2°、23.13°±0.2°、24.09°±0.2°、25.58°±0.2°及び26.34°±0.2°である回折ピークを有する、請求項1に記載の式I化合物の結晶A。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の式I化合物の結晶Aの製造方法であって、
(1)式I化合物を結晶化溶媒に溶解する工程であって、前記結晶化溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトン、1-ブタノン、2-ブタノン、酢酸エチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、クロロホルム、水、及びこれらのうちの任意2種以上の混合溶媒からなる群より選ばれるものである、工程と、
(2)式I化合物を結晶化する工程とを含む、製造方法。
【請求項6】
前記結晶化溶媒は、エタノール、イソプロピルエーテル、酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、水、及びこれらのうちの任意2種以上の混合溶媒からなる群より選ばれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記結晶化溶媒は、エタノール、エタノール−酢酸エチル混合溶媒、エタノール−水混合溶媒、エタノール−イソプロピルエーテル混合溶媒、アセトン、酢酸エチル又はジクロロメタンである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜4の何れか1項に記載の式I化合物の結晶Aが、結晶組成物の重量の50%以上を占める、結晶組成物。
【請求項9】
有効量の請求項1〜4の何れか1項に記載の式I化合物の結晶A或いは請求項8に記載の結晶組成物を含む、医薬組成物。
【請求項10】
請求項1〜4の何れか1項に記載の式I化合物の結晶A、或いは請求項8に記載の結晶組成物、或いは請求項9に記載の医薬組成物の、ヤヌスキナーゼ媒介性疾患を治療又は予防するための医薬の製造における使用。
【請求項11】
前記ヤヌスキナーゼ媒介性疾患は腫瘍である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
式I化合物の結晶Bであって、
【化2】
そのX線回折パターンは、2θが8.97°±0.2°、9.39°±0.2°、12.90°±0.2°、17.70°±0.2°、20.31°±0.2°及び23.63°±0.2°である回折ピークを有
する、
式I化合物の結晶B。
【請求項13】
前記X線回折パターンは、2θが8.97°±0.2°、9.39°±0.2°、12.90°±0.2°、16.54°±0.2°、17.70°±0.2°、19.20°±0.2°、20.31°±0.2°、22.78°±0.2°及び23.63°±0.2°である回折ピークを有する、請求項12に記載の式I化合物の結晶B。
【請求項14】
前記X線回折パターンは、2θが8.97°±0.2°、9.39°±0.2°、11.24°±0.2°、12.90°±0.2°、14.56°±0.2°、16.54°±0.2°、17.70°±0.2°、19.20°±0.2°、20.31°±0.2°、22.23°±0.2°、22.78°±0.2°、23.63°±0.2°及び25.55°±0.2°である回折ピークを有する、請求項12に記載の式I化合物の結晶B。
【請求項15】
前記式I化合物のアセトニトリル溶媒和物であり、前記式I化合物とアセトニトリルとのモル比は、1:0.5〜1:2.0の範囲内である、請求項12〜14の何れか1項に記載の式I化合物の結晶B。
【請求項16】
前記式I化合物のアセトニトリル溶媒和物であり、前記式I化合物とアセトニトリルとのモル比は、1:0.5、1:1、1:1.5又は1:2.0である、請求項12〜14の何れか1項に記載の式I化合物の結晶B。
【請求項17】
請求項12〜16の何れか1項に記載の式I化合物の結晶Bの製造方法であって、
(1)式I化合物をアセトニトリルに溶解させる工程と、
(2)式I化合物を結晶化する工程とを含む、製造方法。
【請求項18】
請求項12〜16の何れか1項に記載の式I化合物の結晶Bが、結晶組成物の重量の50%以上を占める、結晶組成物。
【請求項19】
有効量の請求項12〜16の何れか1項に記載の式I化合物の結晶B或いは請求項18に記載の結晶組成物を含む、医薬組成物。
【請求項20】
請求項12〜16の何れか1項に記載の式I化合物の結晶B、或いは請求項18に記載の結晶組成物、或いは請求項19に記載の医薬組成物の、ヤヌスキナーゼ媒介性疾患を治療又は予防するための医薬の製造における使用。
【請求項21】
前記ヤヌスキナーゼ媒介性疾患は腫瘍である、請求項20に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2016年6月16日に中国国家知的財産局に出願された出願番号がCN201610435947.4である中国特許出願に基づく優先権及び利益を主張し、当該中国特許出願の内容のすべてを本願に援用する。
【0002】
本発明は医薬化学分野に属する。具体的には、本発明は、JAK阻害剤としてのピロロピリミジン化合物の(3R)-3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-3-シクロペンチルプロピオニトリルの結晶、結晶組成物、医薬組成物、並びにその製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ヤヌスキナーゼ(Janus kinase:JAK)は、非受容体型チロシンキナーゼ(PTK)の一種であり、細胞内に存在し、JAK−STAT経路により、サイトカインの刺激シグナルを伝達する。JAK−STAT経路は、細胞外の化学シグナルを細胞膜により細胞核内に位置するDNAにおける遺伝子プロモーターに伝達し、最終的に、細胞におけるDNA転写と活性レベルとの変更を影響する。JAK−STAT経路は、(1)受容体、(2)ヤヌスキナーゼ(JAK)、および(3)シグナル伝達および転写活性化因子(STAT)の3つの要素からなる。前記受容体は、インターフェロン、インターロイキン、増殖因子または他の化学的メッセンジャーにより活性化され、活性化でJAK自己リン酸化をもたらし、続いてSTATタンパク質とリン酸化受容体とを結合し、これにより、STATはJAKリン酸化され、その後、リン酸化STATタンパク質が受容体から解離し、二量化して細胞核に移行し、特定のDNA部位に結合して転写を変更する(Scott,M.J.,C.J.Godshall et al.(2002). 「Jaks,STATs,Cytokines, and Sepsis」 Clin Diagn Lab Immunol 9(6):1153−9)。
【0004】
JAKファミリーは、免疫応答に関与する細胞の増殖および機能のサイトカイン依存性制御において役割を果たしている。現在、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2(Tyrosine kinase 2)という4つの哺乳類JAKファミリーメンバーが知られている。JAKタンパク質は、サイズが120〜140kDaの範囲であり、7つの保存されたJAKホモロジー(JH)ドメインを含み、それらの1つは、機能的触媒キナーゼドメインであり、もう1つは、制御機能を有効に果たす、および/または、STATのためのドッキング部位として作用する偽キナーゼ(pseudokinase)ドメインである(Scott, Godshall et al. 2002,supra)。
【0005】
現在、複数のヤヌスキナーゼ阻害剤が報告されており、その中で、出願日が2014年12月16日である出願番号201410784461.2の中国特許出願には、複数のJAK阻害剤(ここで参照のために全文として本明細書に組み込む)が開示され、下記式Iで表される(3R)-3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-3-シクロペンチルプロピオニトリル化合物を含む。
【化1】
【0006】
治療効果の他、医薬研究開発者は、医薬としての性質を有する活性分子の適切な形式を提供することを試みる。商業的に実行可能な製造方法を得る観点から、または活性化合物を含む医薬組成物を製造する観点から、活性成分の化学的な安定性、固形安定性および貯蔵寿命は、いずれも非常に重要な要素である。そのため、必要な性質を有する形式を提供することは、医薬研究開発に極めて重要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様では、式I化合物(下記式Iで表される化合物、以下同じ)の結晶Aを提供する。
【化2】
前記式I化合物の結晶AのX線回折(XRD)パターンは、2θが9.35°±0.2°、11.93°±0.2°、16.32°±0.2°、21.23°±0.2°、23.13°±0.2°及び25.58°±0.2°である回折ピークを有する。
【0008】
本発明の他の態様では、(1)式I化合物を結晶化溶媒に溶解する工程であって、前記結晶化溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトン、1-ブタノン、2-ブタノン、酢酸エチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、クロロホルム、水、及びこれらのうちの任意2種以上の混合溶媒からなる群より選ばれるものである、工程と、(2)式I化合物を結晶化する工程とを含む、式I化合物の結晶Aの製造方法を提供する。
【0009】
本発明の他の態様では、式I化合物の結晶Aが前記結晶組成物の重量の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を占める、結晶組成物を提供する。
【0010】
本発明の他の態様では、有効量の式I化合物の結晶A、又は式I化合物の結晶Aの結晶組成物を含む、医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明の他の態様では、前記式I化合物の結晶A、又は上記結晶組成物、又は上記医薬組成物の、ヤヌスキナーゼ媒介性疾患を治療又は予防するための医薬の製造における使用を提供する。
【0012】
本発明の更なる態様では、式I化合物の結晶Bを提供する。
【化3】
前記式I化合物の結晶BのX線回折(XRD)パターンは、2θが8.97°±0.2°、9.39°±0.2°、12.90°±0.2°、17.70°±0.2°、20.31°±0.2°及び23.63°±0.2°である回折ピークを有する。
本発明の他の態様では、(1)式I化合物をアセトニトリルに溶解させる工程と、(2)式I化合物を結晶化する工程とを含む、式I化合物の結晶Bの製造方法を提供する。
【0013】
本発明の他の態様では、式I化合物の結晶Bが前記結晶組成物の重量の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を占める、結晶組成物を提供する。
【0014】
本発明の他の態様では、有効量の式I化合物の結晶B、又は式I化合物の結晶Bの結晶組成物を含む、医薬組成物を提供する。
【0015】
本発明の他の態様では、前記式I化合物の結晶B、又は上記結晶組成物、又は上記医薬組成物の、ヤヌスキナーゼ媒介性疾患を治療又は予防するための医薬の製造における使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】式I化合物の結晶A(実施例2の方法1)のXRDパターンである。
【
図2】式I化合物の結晶A(実施例2の方法1)のDSCパターンである。
【
図3】式I化合物の結晶A(実施例2の方法2、エタノール−酢酸エチル(4:1))のXRDパターンである。
【
図4】式I化合物の結晶A(実施例2の方法3)のXRDパターンである。
【
図5】式I化合物の結晶B(実施例3)のXRDパターンである。
【
図6】式I化合物の結晶B(実施例3)のDSCパターンである。
【0017】
本発明の更なる態様では、式I化合物の結晶Aを提供する。
【化4】
前記式I化合物の結晶AのX線回折(XRD)パターンは、2θが9.35°、11.93°、16.32°、21.23°、23.13°及び25.58°±0.2°である回折ピークを有し、典型的には、2θが9.35°、11.93°、16.32°、18.82°、20.54°、21.23°、23.13°及び25.58°±0.2°である回折ピークを有し、より典型的には、2θが9.35°、10.93°、11.93°、14.46°、16.32°、18.82°、20.54°、21.23°、21.66°、23.13°、25.58°及び26.34°±0.2°である回折ピークを有し、さらに典型的には、2θが9.35°、10.93°、11.93°、14.46°、16.32°、17.28°、18.82°、19.25°、20.54°、21.23°、21.66°、22.15°、23.13°、24.09°、25.58及び26.34°±0.2°である回折ピークを有する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式I化合物の結晶AのX線回折(XRD)パターンには、相対強度の最大のピークは、2θが11.93°、16.32°又は21.23°±0.2°である回折ピークに位置し、好ましくは、相対強度の最大のピークは、2θが11.93°±0.2°である回折ピークに位置する。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式I化合物の結晶AのX線回折(XRD)パターンには、相対強度の上位の3つのピークは、2θが9.35°、11.93°、16.32°、21.23°、23.13°又は25.58°±0.2°である回折ピークに位置する。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式I化合物の結晶AのX線回折ピークは、以下のような特徴を有する。
【表1】
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式I化合物の結晶AのX線回折パターンは、
図1に示される。
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式I化合物の結晶AのDSCパターンは、
図2に示される。
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式I化合物の結晶AのX線回折パターンは、
図3に示される。
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式I化合物の結晶AのX線回折パターンは、
図4に示される。
【0022】
本発明の他の態様では、式I化合物の結晶Aの製造方法であって、
(1)式I化合物を結晶化溶媒に溶解する工程であって、前記結晶化溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトン、1-ブタノン、2-ブタノン、酢酸エチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、クロロホルム、水、及びこれらのうちの任意2種以上の混合溶媒からなる群より選ばれるものである、工程と、
(2)結晶化し、且つ必要に応じてろ過、洗浄及び/又は乾燥する工程とを含む、
製造方法を提供する。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態において、式I化合物の結晶Aを製造するための結晶化溶媒は、エタノール、イソプロピルエーテル、酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、水、及びこれらのうちの任意2種以上の混合溶媒からなる群より選ばれるものである。好ましくは、エタノール、エタノール−酢酸エチル混合溶媒、エタノール−水混合溶媒、エタノール−イソプロピルエーテル混合溶媒、アセトン、酢酸エチル又はジクロロメタンである。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態において、式I化合物の結晶Aを製造するための結晶化溶媒は、好ましくは、エタノール又はエタノール含有混合溶媒である。さらに好ましくは、前記エタノール含有混合溶媒における他の溶媒は、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトン、1-ブタノン、2-ブタノン、酢酸エチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、クロロホルム、及び水からなる群より選ばれるものである。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態において、式I化合物の結晶Aを製造する場合、式I化合物(重量単位gで計算)が結晶化溶媒の用量(体積単位mLで計算)に対する割合は1:5〜1:50の範囲内であり、好ましくは、1:7.5、1:10、1:12、1:15、1:18、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45又は1:50であり、より好ましくは1:7.5〜1:30である。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態において、式I化合物の結晶Aを製造するための結晶化溶媒がエタノール含有混合溶媒からなる群より選ばれる場合、エタノールの含有量(体積基準)は、10%〜90%であり、好ましくは、10%、20%、25%、30%、33%、40%、50%、60%、66%、70%、75%、80%又は90%である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式I化合物の結晶Aを製造するための結晶化溶媒がエタノール含有混合溶媒からなる群より選ばれる場合、エタノールとその他の溶媒との割合(体積基準)は、9:1〜1:9、好ましくは9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8又は1:9である。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態において、冷却により、例えば0〜5℃まで冷却して結晶化することができる。本発明のいくつかの実施形態において、減圧濃縮により結晶化することができる。
【0029】
本発明の他の一態様では、式I化合物の結晶Aを含む結晶組成物を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、式I化合物の結晶Aは、結晶組成物の重量の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を占める。
【0030】
本発明の他の態様では、式I化合物の結晶Aを含む医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、有効量の式I化合物の結晶Aを含み、又は式I化合物の結晶Aの結晶組成物を含む。また、当該医薬組成物は、さらに薬理学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒質を含有してもよく、含有しなくてもよい。
【0031】
本発明の他の態様では、前記式I化合物の結晶A、又は上記結晶組成物、又は上記医薬組成物の、ヤヌスキナーゼ媒介性疾患を治療又は予防するための医薬の製造における使用を提供する。
【0032】
本発明の他の態様では、治療有効量の上記式I化合物の結晶A、又は上記結晶組成物、又は上記医薬組成物を、それを必要とする哺乳類に投与することを含む、ヤヌスキナーゼ媒介性疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0033】
本発明の他の態様では、ヤヌスキナーゼ媒介性疾患を治療又は予防するための上記式I化合物の結晶A、又は上記結晶組成物、又は上記医薬組成物を提供する。
【0034】
本発明の更なる態様では、式I化合物の結晶Bであって、
【化5】
前記式I化合物の結晶BのX線回折(XRD)パターンは、2θが8.97°、9.39°、12.90°、17.70°、20.31°及び23.63°±0.2°である回折ピークを有し、典型的には、2θが8.97°、9.39°、12.90°、16.54°、17.70°、19.20°、20.31°、22.78°及び23.63°±0.2°である回折ピークを有し、さらに典型的には、2θが8.97°、9.39°、11.24°、12.90°、14.56°、16.54°、17.70°、19.20°、20.31°、22.23°、22.78°、23.63°及び25.55°±0.2°である回折ピークを有する、式I化合物の結晶Bを提供する。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式I化合物の結晶BのX線回折(XRD)パターンには、相対強度の最大のピークは、2θが9.39°、17.70°又は23.63°±0.2°である回折ピークに位置し、好ましくは、相対強度の最大のピークは、2θが17.70°±0.2°である回折ピークに位置する。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式I化合物の結晶BのX線回折ピークは、以下のような特徴を有する。
【表2】
【0037】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式I化合物の結晶BのX線回折パターンは、
図5に示される。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式I化合物の結晶BのDSCパターンは、
図6に示される。
【0040】
本発明の他の態様では、式I化合物の結晶Bの製造方法であって、
(1)式I化合物をアセトニトリルに溶解させる工程と、
(2)結晶化し、且つ必要に応じてろ過、洗浄及び/又は乾燥する工程とを含む、
製造方法を提供する。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態において、式I化合物の結晶Bを製造する場合、式I化合物(重量単位gで計算)が結晶化溶媒アセトニトリルの用量(体積単位mLで計算)に対する割合は1:5〜1:50の範囲内であり、好ましくは、1:7.5、1:10、1:12、1:15、1:18、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45又は1:50であり、より好ましくは1:10〜1:25である。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態において、冷却により、例えば0〜5℃まで冷却して結晶化することができる。
【0043】
本発明の他の一態様では、式I化合物の結晶Bを含む結晶組成物を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、式I化合物の結晶Bは、結晶組成物の重量の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を占める。
【0044】
本発明の他の態様では、式I化合物の結晶Bを含む医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、有効量の式I化合物の結晶Bを含み、又は式I化合物の結晶Bの結晶組成物を含む。また、当該医薬組成物は、さらに薬理学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒質を含有してもよく、含有しなくてもよい。
【0045】
本発明の他の態様では、前記式I化合物の結晶B、又は上記結晶組成物、又は上記医薬組成物の、ヤヌスキナーゼ媒介性疾患を治療又は予防するための医薬の製造における使用を提供する。
【0046】
本発明の他の態様では、治療有効量の上記式I化合物の結晶B、又は上記結晶組成物、又は上記医薬組成物を、それを必要とする哺乳類に投与することを含む、ヤヌスキナーゼ媒介性疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0047】
本発明の他の態様では、ヤヌスキナーゼ媒介性疾患を治療又は予防するための上記式I化合物の結晶B、又は上記結晶組成物、又は上記医薬組成物を提供する。
【0048】
本発明において、X線回折パターンは、下記方法により測定される。機器はBruker D8 ADVANCE X線回折機であり、方法はターゲット:Cu:K−Alphaであり、波長λ=1.54179Å、管電圧Voltageは40kVであり、管電流Currentは40mAであり、スキャン範囲は4〜40°であり、スキャン速度はステップ毎に0.1秒、ステップ毎に0.02°である。
本発明において、示差走査熱量分析(DSC)は、下記方法により測定される。機器はMETTLER DSC−1示差走査熱量分析機であり、方法は試料(〜5mg)を取ってDSCアルミ鍋に入れてテストし、その中で、温度が30℃〜300℃であり、昇温速度が10℃/minである。
【0049】
なお、X線回折スペクトルにおいて、結晶化合物から得られる回折スペクトルは、特定の結晶形に関して特徴的なものである場合が多いが、スペクトル帯(特に低角度において)の相対強度は、結晶条件、粒径及びその他の測定条件の相違により生じる優位配向効果(preferential orientation effects)によって変化する可能性がある。したがって、回折ピークの相対強度は、相応の結晶形に対して特徴的ではなく、既知の結晶形と同じか否かを判断する際に、ピークの相対強度ではなくピークの相対位置をさらに注意すべきである。また、いかなる所定の結晶形に対して、ピークの位置に少しの誤差が存在する可能性があることは、結晶学分野に周知である。例えば、サンプルを分析する際の温度の変化、サンプルの移動、または計器の較正等により、ピークの位置が移動することができ、2θ値の測定誤差は、約±0.2°となる場合がある。そのため、それぞれの結晶形の構造を同定する場合、このような誤差を考慮すべきである。XRDパターンにおいて、通常、2θ角または格子面間隔dでピーク位置を示し、両方の間に簡単な換算関係:d=λ/2sinθを持っており、その中で、dは格子面間隔を表し、λは入射X線の波長を表し、θは回折角を表す。同種の化合物の同種の結晶形には、それらのXRDパターンのピーク位置が全体的に類似性を有し、相対強度の誤差は比較的大きい可能性がある。特に注意すべきは、混合物の同定において、含有量低下等の要素に起因して一部の回折線の欠失を引き起こし、この際に、高純度サンプルから観察された全てのスペクトル帯に頼る必要がなく、ひいては、所定の結晶に対して1本のスペクトル帯だけでも特徴的なものになる可能性がある。
【0050】
なお、DSCでは、結晶がその結晶構造に変化を生じたり、結晶が熔融により熱を吸収又は放出したりする際の転移温度を測定する。同一種類の化合物の同一種類の結晶形について、連続的な分析において、熱転移温度及び融点の誤差は、典型的に約5℃以内にある。ある化合物がある所定のDSCピーク又は融点を有するという場合、当該DSCピーク又は融点±5℃を意味する。DSCは異なる結晶形を判別するための補助方法を提供する。異なる結晶形は、それらの異なる転移温度の特徴によって識別することができる。
【0051】
本明細書に記載のヤヌスキナーゼ媒介性疾患は、腫瘍(例えば、リンパ腫、白血病)を含むが、これらに限らない。本明細書に記載のリンパ腫は、ホジキン病(Hodgkins disease)または非ホジキンリンパ腫(Non−Hodgkinsleukemia)を含んでもよいが、これらに限らなく、前記非ホジキンリンパ腫は、B細胞リンパ腫(B−cell lymphoma)またはT細胞リンパ腫(T−cell lymphoma)を含んでもよいが、これらに限らない。本明細書に記載の白血病は、急性リンパ性白血病(Acute lymphoblastic leukemia)、慢性リンパ性白血病(Chronic lymphocytic leukemia)、急性骨髄性白血病(Acute myeloid leukemia)、慢性骨髄性白血病(Chronic myelocytic leukemia)を含むが、これらに限らない。
【0052】
本発明において、用語「医薬組成物」とは、一種又は複数種の本発明の化合物と、本分野において通常に許容される、生物活性化合物を有機体(例えば、ヒト)に送達するための担体、賦形剤及び/又は媒質からなる製剤を意味する。医薬組成物は、本発明の化合物を有機体に投与することに有利となる目的とする。
【0053】
用語「担体」は、化合物を細胞や組織に導入することに有利である化合物として定義される。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、ある有機化合物を生体の細胞や組織に導入しやすいため、一般的に担体として用いられる。
【0054】
「薬学的に許容される担体」は、ヒトや家畜に用いられることが国家薬品管理機関により許可された佐剤、賦形剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、染剤/着色剤、香味剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒又は、乳化剤を含むが、これらに限られない。
【0055】
「治療有効量」とは、本発明に係る化合物が哺乳類(好ましくは、ヒト)に投与される際に、下記定義されるように哺乳類(好ましくは、ヒト)にウイルス感染に対する治療の実現に十分な量を意味する。「治療有効量」となる本発明に係る化合物の量は、化合物、疾患状況とその重症度、投与方式及び治療しようとする哺乳類の年齢によって変わるが、当業者は、その自身の持つ知識及び本発明に開示された内容により通常的に決めることができる。
【0056】
本発明で用いられる用語「治療」は、ウイルス感染を患う哺乳類(好ましくは、ヒトのウイルス感染)への治療を包含し、且つ
(i)ウイルス感染を阻害し、すなわちその進行を阻止すること、
(ii)ウイルス感染を寛解し、すなわちウイルス感染の回復を引き起こすこと、或いは
(iii)ウイルス感染で引き起こされた症状を寛解すること、を含む。
【0057】
本発明に用いられる全ての溶媒は、市販品であり、更なる精製の必要がなく、そのまま使用されてもよい。反応は、通常、不活性の窒素ガスの条件下で無水溶媒の中に行われる。
【0058】
本発明において、プロトン核磁気共鳴データは、「BRUKER AVANCE III HD 500 M」分光計で記録され、化学シフトは、テトラメチルシラン低磁場側の(ppm)で示され、質量スペクトルは、Waters ACQUITY UPLC+XEVO G2 QTofで測定される。質量分析計は、正又は負のモードで動作されるエレクトロスプレーイオン源(ESI)を一つ備える。
【0059】
本発明に係る式I化合物の結晶A及び結晶Bは、純度が高く、結晶度が高く、安定性が良い等の利点を有すると共に、本発明に係る式I化合物の結晶A及び結晶Bの製造方法は簡単であり、溶媒が安価で入手しやすく、結晶条件が穏やかであり、工業化生産に適する。
【0060】
以下の実施形態では、本発明の技術案をさらに非限定的に詳細に説明する。これらは本発明の例示的な説明と典型的な代表に過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。本発明で用いられる溶剤、試薬及び原料等は、いずれも市販の化学的にまたは分析的に純粋な製品である。
【0061】
実施例1: (3R)−3−{3−アミノ−4−{7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}−1H−ピラゾール−1−イル}−3−シクロペンチルプロピオニトリル(I)
【化6】
ステップA:3−シクロペンチルアクリル酸
【化7】
5Mのマロン酸(312g、3.0mol、1.0eq.)を入れたピリジン溶液に、シクロペンチルカルバルデヒド(344.4g、3.51mol、1.17eq.)を室温で滴下し、滴下終了後、10分間撹拌し、ピペリジン(6.2g、0.075mol、0.025eq.)を徐々に滴下し、滴下終了後、室温で1時間撹拌しながら反応させた。得られた混合物を70〜80℃まで加熱して撹拌しながら8時間反応させ、減圧下で濃縮して溶媒を蒸発除去させ、残渣を濃塩酸でpH3.0まで調整し、酢酸エチルで3回抽出して有機層(有機相)を合わせ、2.5Mの水酸化ナトリウム溶液で5回洗浄し、水層(水相)を濃塩酸でpH3.0まで調整し、酢酸エチルで3回抽出して有機層を合わせ、水で3回洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して3−シクロペンチルアクリル酸(391.2g、収率93%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ:7.08 (dd, J = 15.6, 8.1 Hz, 1H)、5.81 (dd, J = 15.6, 1.1 Hz, 1H)、11.25 (s, 1H)、2.64 (m, 1H)、1.63 (m, 2H)、1.42 (m, 2H)、1.86 (m, 2H)、1.72 (m,2H);HRMS (ESI) calcd. for C8H12O2[M−H]
− 139.0765;Found:139.0760。
【0062】
ステップB: 5−シクロペンチルピラゾリジン−3−オン
【化8】
80%のヒドラジン水和物(253.5g、4.05mol、1.5eq.)を室温で撹拌しながら、シクロペンチルアクリル酸(378g、2.7mol、1.0eq.)に滴下した。得られた混合物を70〜80℃まで加熱し、6時間撹拌し、0〜10℃まで冷却し、撹拌しながら結晶化させてろ過した。ろ過ケーキを水で2回洗浄し、45℃で12時間送風乾燥して5−シクロペンチルピラゾリジン−3−オン(292.5g、収率68%)を得た。
【0063】
ステップC: R−5−シクロペンチルピラゾリジン−3−オンーD−酒石酸塩
【化9】
D-酒石酸(135g、0.9mol、0.5eq.)を室温で撹拌しながら5-シクロペンチルピラゾリジン-3-オン(278g、1.8mol、1.0eq.)のアセトン溶液に加え、撹拌しながら2時間反応させた後、結晶化してろ過した。ろ過ケーキを、アセトンで5回叩解して洗練し(refined)、50℃の送風乾燥してR−5−シクロペンチルピラゾリジン−3−オン−D−酒石酸塩(241g、収率88%、ee値99.5%)を得た。
【0064】
ステップD: R−5−シクロペンチルピラゾリジン−3−オン
【化10】
R-5-シクロペンチルピラゾリジン-3-オン-D-酒石酸塩(228g、0.75mol、1.0eq.)を室温で撹拌しながら4Mの水酸化ナトリウム(52.2g、2.61mol、1.74eq.)の溶液に加え、得られた混合物をジクロロメタンで抽出して有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮してR-5-シクロペンチルピラゾリジン-3-オン(100.6g、収率85.2%、ee値99.5%)を得た。
1H−NMR (500 MHz, CDCl
3)δ8.93 (s, 1H)、5.15 (s, 1H)、1.89(m,1H)、1.67 (m,2H)、1.55 (m, 2H)、1.47 (m, 2H)、1.26 (m,1H)、1.14(m,1H);HRMS (ESI) calcd. for C
8H
14N
2O [M+H]
+ 155.1179;Found:155.1183。
【0065】
ステップE: 4−クロロ−7−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン
【化11】
氷浴中で、4-クロロピロロ[2,3 - d]ピリミジン(200g、1.3mol、1.0eq.)のN、N-ジメチルホルムアミド溶液に、60%NaH(62.4g、1.56mol、1.2eq.)に加えた後、室温で1時間撹拌して反応させ、2-(トリメチルシリル)エトキシメチルクロリド(SEMCl、260g、1.56mol、1.2eq.)を、氷浴で冷却しながら徐々に滴下した。滴下終了後、得られた混合物を氷浴中で1時間撹拌して反応させ、そして反応を水でクエンチした。得られた混合物を酢酸エチルで抽出して有機相(有機層)を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、4−クロロ−7−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(312.2g、収率91.8%)を得た。
1H−NMR (500 MHz, CDCl
3):δ8.64 (s, 1H)、7.38 (d, J = 3.6 Hz, 1H)、6.65 (d, J = 3.6 Hz, 1H)、5.64 (s, 2H)、3.52 (t, J = 8.2 Hz, 2H)、0.90(t, J = 8.2 Hz, 2H)、−0.07 (s, 9H);HRMS (ESI) calcd. for C
12H
18N
3OSi [M+H]
+ 284.0980;Found:284.0995。
【0066】
ステップF: 2-シアノ-2-{7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}酢酸エチル
【化12】
炭酸カリウム(207g、1.5mol、3.0eq.)を室温で撹拌しながら4-クロロ-7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(142g、0.5mol、1.0eq.)及びシアノ酢酸エチル(85g、0.75mol、1.51.0eq.)のDMF溶液に加え、得られた混合物を120℃まで加熱し、4時間撹拌して反応させ、室温まで冷却した。反応を水でクエンチし、撹拌して結晶化させてろ過した。ろ過ケーキを水で洗浄し、50℃で送風乾燥させて2-シアノ-2-{7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}酢酸エチル(167g、収率92.6%)を得た。
1H−NMR (500 MHz, CDCl
3):δ 13.46 (s, 1H)、8.45 (s, 1H)、7.56 (d, J = 3.6 Hz, 1H)、7.18 (d, J = 3.6 Hz, 1H)、5.56 (s, 2H)、4.32 (q, J = 7.1 Hz, 2H)、3.52 (t, J = 8.2 Hz, 2H)、1.27 (t, J = 7.1Hz, 3H)、0.83 (t, J = 8.2 Hz, 2H)、−0.08 (s, 9H);HRMS (ESI) calcd. for C
17H
24N
4O
3Si [M+H]
+ 361.1690;Found:361.1699。
【0067】
ステップG: 2−{7−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}アセトニトリル
【化13】
塩化ナトリウム(263g、4.5mol、10eq.)を室温で撹拌しながら2-シアノ-2-{7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}酢酸エチル(162.2g、0.45mol、1.0eq.)のN-メチルピロリドンと水との混合溶液に加え、160〜170℃まで加熱し、撹拌して30時間反応させた。反応を水でクエンチした。得られた混合物を酢酸エチルで抽出して有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、2-(7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アセトニトリル(98.6g、収率76%)を得た。
1H−NMR (500 MHz, CDCl
3):δ8.18 (s, 1H)、7.77 (d, J = 3.4 Hz, 1H)、6.83 (d, J = 3.4 Hz, 1H)、5.65 (s, 2H)、4.56 (s, 2H)、3.52 (t, J = 7.6 Hz, 2H)、0.82 (t, J = 7.6 Hz, 2H)、−0.10 (s, 9H);HRMS (ESI) calcd. forC
14H
20N
4OSi [M+H]
+ 289.1479;Found:289.1498。
【0068】
ステップH: 3−(ジメチルアミノ)−2−{7−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}アクリロニトリル
【化14】
DMF-DMA(119g、1.0mol、3.0当量)を2-{7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}アセトニトリル(95g、0.33mol、1.0eq.)のDMF溶液に加え、加熱還流して2時間反応させた後、室温まで冷却した。水を加えて得られた混合物を撹拌して結晶化させ、ろ過した。ろ過ケーキを水で洗浄し、50℃で送風乾燥させて3-(ジメチルアミノ)-2-(7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アクリロニトリル(106.5g、収率94%)を得た。
1H−NMR (500 MHz, CDCl
3):δ 8.50 (s, 1H)、8.38 (s, 1H)、7.26 (d, J = 3.7 Hz, 1H)、7.18 (d, J = 3.7 Hz, 1H)、5.56 (s, 2H)、3.49 (t, J = 8.4 Hz, 2H)、3.43 (s, 3H)、3.23 (s, 3H)、0.87 (t, J = 8.4 Hz, 2H)、−0.10 (s, 9H);;HRMS (ESI) calcd. for C
17H
25N
5OSi [M+H]
+ 344.1901;Found:344.1907。
【0069】
ステップI: (R)-3-{3-アミノ-4-{7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}-1H-ピラゾール-1−イル}−3−シクロペンチルプロピオン酸
【化15】
酢酸カリウム(1.5eq.)を室温で撹拌しながら3-(ジメチルアミノ)-2-{7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]アクリロニトリル(68.7g、0.2mol、1.0eq.)及びR-5-シクロペンチル−ピラゾリジン-3-オン(37.0g、0.24mol、1.2eq.)のN-メチルピロリドン溶液に加え、得られた混合物を120〜130℃まで加熱し、撹拌して12時間反応させた。反応を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出して有機層を水で3回洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、(R)-3-{3-アミノ-4-{7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}-1H-ピラゾール-1-イル}-3-シクロペンチル−プロピオン酸(37.6g、40.1%収率、ee値99.8%)を得た。
1H−NMR (500 MHz, CDCl
3):δ 8.74 (s, 1H)、7.96 (s, 1H)、7.32 (d, J = 3.4 Hz, 1H)、6.67 (d, J = 3.4 Hz, 1H)、5.63 (m, 2H)、4.19 (t, J = 8.2 Hz, 2H)、3.52 (m, 1H)、3.52 (t, J = 8.4 Hz, 2H)、3.09 (dd, J = 16.7, 8.2 Hz, 1H)、2.87 (d, J = 16.7 Hz, 1H)、2.41 (m, 1H)、1.87 (m, 1H)、1.69 (m, 1H)、1.60 (m, 2H)、1.51 (m, 2H)、1.15 (m, 1H)、0.91 (t, J = 8.4 Hz, 2H)、−0.06 (s, 9H);HRMS (ESI) calcd. for C
17H
25N
5OSi [M+H]
+ 471.2534;Found:471.2538。
【0070】
ステップJ: (R)-3-{3-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)-4-{7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン−4-イル}-1H-ピラゾール-1-イル}-3-シクロペンチルプロピオン酸
【化16】
無水コハク酸(10.4g、104mmol、1.4eq.)を室温で攪拌しながら0.2Mの(R)-3-{3-アミノ-4-{7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}-1H-ピラゾール-1-イル}-3-シクロペンチル−プロピオン酸(35.0g、74.3mmol、1.0eq.)のメチルベンゼン溶液に加え、得られた混合物を窒素ガスの保護下で加熱還流して14時間反応(分水)させた。減圧下で濃縮して溶媒を蒸発除去させ、残渣を酢酸エチルに溶解し、水で洗浄し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウム及び活性炭を酢酸エチル層に加えて撹拌しながら乾燥して脱色し、ろ過し、減圧下で濃縮して(R)-3-{3-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)-4-{7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}-1H-ピラゾール-1-イル}-3-シクロペンチルプロピオン酸(39g、70.6mmol、収率95%)を得た。
1H−NMR (500 MHz, CDCl
3):δ 8.65 (s, 1H)、8.28 (s, 1H)、7.28 (d, J = 3.7 Hz, 1H)、6.62 (d, J = 3.7 Hz, 1H)、5.59 (d, J = 11.1 Hz, 1H)、5.53 (d, J = 11.1 Hz, 1H)、4.44 (td, J = 9.9, 3.2 Hz, 1H)、3.48 (m, 2H)、 3.02 (dd, J = 16.8, 10.0 Hz, 1H)、2.83 (m, 1H)、2.43 (m, 1H)、1.78 (m, 1H)、1.69 (m, 1H)、1.61 (m, 1H)、1.52 (m, 1H)、1.51 (m, 1H)、1.50 (m, 2H)、1.14 (m, 1H)、0.88 (m, 2H)、−0.07 (s, 9H);HRMS (ESI) calcd. for C
27H
36N
6O
5Si [M+H]
+ 553.2589;Found:553.2603。
【0071】
ステップK: (R)-3-シクロペンチル-3-[3-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)-4-(7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンアミド
【化17】
塩化オキサリル(20.0g、158mmol、2.5eq.)を氷浴、窒素ガスの保護下で撹拌しながら0.18Mの(R)-3-{3-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)-4-{7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}-1H-ピラゾール-1-イル}-3-シクロペンチルプロピオン酸(35.0g、63.3mmol、1.0eq.)のジクロロメタン溶液に滴下した。滴下終了後、DMF(0.1g、1.3mmol、0.02eq.)を滴下し、得られた混合物を室温で撹拌して1時間反応させ、減圧下で濃縮して溶媒を蒸発除去させた。得られた混合物を、ナトリウム線で乾燥し再蒸留させたTHFに溶解し、2Mのアンモニア水溶液(20.0、0.32mol、5.0eq.)のTHF溶液に滴下し、氷浴中で撹拌して30分間反応させ、減圧下で濃縮してTHFを蒸発除去させ、氷浴中で2時間冷却して結晶化させ、ろ過し、ろ過ケーキを水で洗浄し、50℃で送風乾燥して、(R)-3-シクロペンチル-3-{3-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)-4-{7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}-1H-ピラゾール-1-イル}プロパンアミド(29.8g、収率85.5%)を得た。
【0072】
1H−NMR (500 MHz, CDCl
3):δ 8.65 (s, 1H)、8.24 (s, 1H)、7.32 (d, J = 3.7 Hz, 1H)、6.63 (d, J = 3.7, 1H)、6.12 (s, 1H)、5.60 (d, J = 11.1 Hz, 1H)、5.56 (d, J = 11.1 Hz, 1H)、5.44 (s, 1H)、4.40 (td, J = 10.6, 3.2 Hz, 1H)、3.47 (dd, J = 9.1, 7.5 Hz, 2H)、2.99 (dd, J = 14.4, 11.0 Hz, 1H)、2.91 (s, 4H)、2.67 (dd, J = 14.4, 3.3 Hz, 1H)、2.48 (m, 1H)、1.84 (m, 1H)、1.66 (m, 1H)、1.58 (m, 2H)、1.57 (m, 1H)、1.50 (m, 1H)、1.31 (m, 1H)、1.21 (m, 1H)、0.88 (dd, 9.1, 7.5, 2H)、−0.08 (s, 9H);;HRMS (ES) calcd. for C
27H
37N
7O
4Si [M+H]
+ 552.2749;Found:552.2759。
【0073】
ステップL: (R)-3-シクロペンチル-3-[3-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)-4-(7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロピオニトリル
【化18】
オキシ塩化リン(27.8g、181mmol、4.0eq.)を氷浴中で撹拌しながら0.2Mの(R)-3-シクロペンチル-3-{3-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)-4-{7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}-1H-ピラゾール-1-イル}プロパンアミド(25g、45.3mmol、1.0eq.)のジクロロメタン溶液に滴下した。滴下終了後、得られた混合物を室温で撹拌しながら2時間反応させた。反応を水でクエンチした。有機層を水洗し、無水硫酸マグネシウム及び活性炭を入れて撹拌しながら乾燥、脱色した。ろ過し、減圧下で濃縮して溶媒を除去し、(R)-3-シクロペンチル-3-{3-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)-4-{7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}-1H-ピラゾール-1-イル}プロピオニトリル(22.2g、41.7mmol、収率92%)を得た。
【0074】
1H−NMR (500 MHz, CDCl
3):δ 8.70 (s, 1H)、8.35 (s, 1H)、7.35 (d, J = 3.7 Hz, 1H)、6.66 (d, J = 3.7 Hz, 1H)、5.62 (d, J = 10.8 Hz, 1H)、5.58 (d, J = 10.8 Hz, 1H)、4.30 (m, 1H)、3.50 (m, 2H)、3.09 (dd, J = 16.8, 4.3 Hz, 1H)、3.01 (dd, J = 16.8, 4.3 Hz, 1H)、2.94 (s, 4H)、2.62 (m, 1H)、1.96 (m, 1H)、1.69 (m, 2H)、1.60 (m, 1H)、1.58 (m, 2H)、1.27 (m, 2H)、0.90 (t, J = 8.3 Hz, 2H)、−0.06 (s, 9H);HRMS (ESI) calcd. for C
27H
35N
7O
3Si [M+H]
+ 534.2643;Found:534.2657。
【0075】
ステップM: (R)-3-シクロペンチル-3-{3-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)-4−{(7-ヒドロキシメチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}-1H-ピラゾール-1-イル}プロピオニトリル
【化19】
47%の三フッ化ホウ素(34g、112.5mmol、3.0eq.)のジエチルエーテル溶液を、氷浴中で撹拌しながら0.2Mの(R)-3-シクロペンチル-3-{3-(2,5-ジオキソピロール−1-イル)-4-{7−{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}-1H-ピラゾール-1-イル}プロピオニトリル(20g、37.5mmol、1.0eq.)のジクロロメタン溶液に滴下した。滴下終了後、得られた混合物を室温で撹拌しながら4時間反応させた。反応を水でクエンチして得られた混合物を10%NaOH溶液でpH6〜7に調整し、そして酢酸エチルで抽出した。有機層を水洗し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで撹拌しながら乾燥した。ろ過後、ろ液を減圧下で濃縮して(R)-3-シクロペンチル-3-[3-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)-4-(7-ヒドロキシメチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロピオニトリル(14.4g、収率88.5%)を得た。
【0076】
1H−NMR (500 MHz, CDCl
3):δ 8.54 (s, 1H)、8.31 (s, 1H)、7.31(d, J = 3.7 Hz, 1H)、6.52 (d, J = 3.7 Hz, 1H)、5.68 (d, J = 10.9 Hz, 1H)、5.61 (d, J = 10.9 Hz, 1H)、4.32 (m, 1H)、3.13 (dd, J = 17.2, 7.9 Hz, 1H)、3.03 (dd, J = 17.2, 4.3 Hz, 1H)、2.94 (s, 4H)、2.62 (m, 1H)、1.98 (m, 1H)、1.74 (m, 1H)、1.65 (m, 1H)、1.64 (m, 2H)、1.30 (m, 1H)、1.29 (m, 2H);HRMS (ESI) calcd. for C
22H
23N
7O
3 [M+H]
+ 434.1935;Found:434.1944。
【0077】
ステップN: (R)-3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-3-シクロペンチルプロパンニトリル(I)
【化20】
80%ヒドラジン水和物(8.7g、138mmol、5.0eq.)を、室温で撹拌しながら0.2Mの(R)-3-{3-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)-4−{(7−ヒドロキシメチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}-1H-ピラゾール-1-イル}-3-シクロペンチルプロパンニトリル(12g、27.7mmol、1.0eq.)のメタノール溶液に滴下しし、滴下終了後、加熱還流して8時間反応させた後、減圧濃縮して溶媒を留去した。残渣を酢酸エチルに溶解し、水で洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥した。ろ過後、ろ液を減圧かで濃縮して(R)-3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-3-シクロペンチルプロパンニトリル(I)(7.7g、収率87%、ee値99.8%))を得た。
【0078】
1H−NMR (500 MHz, CDCl
3):δ 11.73 (s, 1H)、8.79 (s, 1H)、8.06 (s, 1H)、7.32(d, J = 3.5 Hz, 1H)、6.62 (d, J = 3.5 Hz, 1H)、5.03 (s, 2H)、4.05 (td, J = 9.5, 3.5 Hz, 1H)、3.12 (dd, J = 17.1, 8.9 Hz, 1H)、2.91 (dd, J = 17.1, 3.6 Hz, 1H)、2.54 (m, 1H)、1.74 (m, 1H)、1.63 (m, 4H)、1.27 (m, 1H)、1.26(m, 2H);HRMS (ESI) calcd. for C
17H
19N
7 [M+H]
+ 322.1775;Found:322.1783。
【0079】
実施例2 式I化合物の結晶A
方法1
実施例1で得られた式I化合物2.0gを無水エタノール24mLに加えて得られた混合物を、加熱還流して清澄化溶液を得、0〜5℃まで冷却し、4時間撹拌して結晶化させ、ろ過し、ろ過ケーキを無水エタノール2mLで溶離し、50℃で減圧乾燥して生成物(1.62g、収率81%)を得た。
【0080】
方法2
実施例1で得られた式I化合物2.0gを合計4部で取ってそれぞれ無水エタノール−酢酸エチル(4:1、2:1、1:1、1:4)20mLを加え、得られた混合物を加熱還流して清澄化溶液を得、0〜5℃まで冷却し、4時間撹拌して結晶化させ、そしてろ過した。ろ過ケーキを酢酸エチル2mLで溶離し、50℃で減圧乾燥してそれぞれ1.34g、1.06g、1.00g及び1.60gの生成物(収率67%、53%、50%、80%)を得た。
【0081】
方法3
実施例1で得られた式I化合物2.0gを無水エタノール−水(4:1)の混合溶液20mLに加えて得られた混合物を、加熱還流して清澄化溶液を得、0〜5℃まで冷却し、4時間撹拌して結晶化させ、ろ過し、ろ過ケーキを無水エタノール2mLで溶離し、50℃で減圧乾燥して生成物(1.6g、収率81%)を得た。
【0082】
方法4
実施例1で得られた式I化合物2.0gをアセトン15mLに加えて得られた混合物を、加熱還流して清澄化溶液を得、0〜5℃まで冷却し、4時間撹拌して結晶化させ、ろ過し、ろ過ケーキをアセトン2mLで溶離し、50℃で減圧乾燥して生成物(1.22g、収率61%)を得た。
【0083】
方法5
実施例1で得られた式I化合物2.0gを取って、酢酸エチル50mLに加えて得られた混合物を加熱還流して清澄化溶液を得、減圧化で濃縮して溶媒を留去し、生成物(1.98g、収率99%)を得た。
【0084】
方法6
実施例1で得られた式I化合物2.0gを取ってジクロロメタン60mLに加えて得られた混合物を加熱還流して清澄化溶液を得、減圧化で濃縮して溶媒を留去し、生成物(2.0g、収率100%)を得た。
【0085】
方法7
実施例1で得られた式I化合物2.0gを無水エタノール24mLに加えて得られた混合物を、加熱還流して清澄化溶液を得、イソプロピルエーテル120mLを滴下した。0〜5℃まで冷却し、4時間撹拌して結晶化させ、ろ過し、ろ過ケーキをイソプロピルエーテル2mLで溶離し、50℃で減圧乾燥して生成物(1.56g、収率78%)を得た。
【0086】
式I化合物の結晶Aの典型的なXRDパターン及び典型的なDSCパターンは、それぞれ
図1及び
図2に示す(実施例2の方法1)。
式I化合物の結晶Aの別の典型的なXRDパターンは
図3に示す(実施例2の方法2、エタノール−酢酸エチル(4:1))。
式I化合物の結晶Aの他の典型的なXRDパターンは、
図4に示す(実施例2の方法3)。
【0087】
実施例3 式I化合物の結晶B
実施例1で得られた式I化合物2.0gをアセトニトリル25mLに加えて得られた混合物を、加熱還流して清澄化溶液を得、0〜5℃まで冷却し、4時間撹拌して結晶化させ、ろ過し、ろ過ケーキをアセトニトリル2mLで溶離し、50℃で減圧乾燥して生成物(1.82g、収率91%)を得た。
【0089】
実施例4 安定性実験
実施例2の方法1で得られた結晶Aと実施例3で得られた結晶Bとを開放の清浄な容器に入れて60℃で置き、それぞれ5日目及び10日目にサンプリングして検出し、検出結果を0日目の初期検出結果と比較し、試験結果を下記表に示す。
【0091】
実施例5 生物学的活性実験
1.化合物の酵素学的活性(IC
50)の検出
均一時間分解蛍光(HTRF)法を用いてJAK2(野生型)のキナーゼ活性検出プラットフォームを構築し、化合物活性の測定を行った。均一時間分解蛍光(HTRF)法を用いてJAK2(野生型およびV617F突然変異型)のキナーゼ活性検出プラットフォームを構築し、化合物活性の測定を行った。化合物を1mMから100% DMSOで3倍段階希釈し(合計で11個の濃度)、各濃度を4μL取って反応緩衝液(50mM HEPES、pH7.4、10mM MgCl2、1mM EGTA、0.01% Tween−20、0.005% BAS、2mM DTT) 96μLに加えて均一に混合し、その後2.5μLを取って384ウェルプレート(OptiPlate−384、PerkinElmerから購入された)に加え、その後JAK2キナーゼ(Carnaから購入された)5μLを加えて遠心で均一に混合し、さらにATP(最終濃度は、相応するKm値である)とTK peptide(HTRF(登録商標) KinEASE(商標)−TK、Cisbioから購入された)との混合物2.5μLを加えて反応(総反応体積は10μLである)を開始した。384ウェルプレートをインキュベータに入れ、23℃で120分間反応させ、その後、Eu3+ cryptate−labled anti−phosphotyrosine antibody (Cisbioから購入された) 5μL、Streptavidin−XL−665 (HTRF(登録商標) KinEASE(商標)−TK、Cisbioから購入された) 5μLを加えて反応を停止させた。インキュベータにおいて1時間インキュベートした後、Envision (PerkinElmerから購入された)から蛍光値(320nmで励起し、665nmおよび620nmの出射光を検出し、両方の比率は酵素活性である)を読み取った。11個の濃度で酵素活性を測定し、ソフトウェアGraFit 6.0(Erithacus Software)を用いてデータを計算し、式I化合物のIC
50値を得た。結果から分かるように、式I化合物と対照のRuxolitinib(ルキソリチニブ)とのIC
50値のいずれも20nM未満であった。
【0092】
2. マウス皮下異種移植腫瘍モデルにおける有効性の測定
SPFレベルBalb/cヌードマウス、雌、5〜6週齢。無血清培地を懸濁したBa/F3−JAK2V617F細胞懸濁液0.1mL(1×10
7 cellsを含有し、50% MatriGel)を、各マウスの右側面に皮下注射した。平均腫瘍体積が約500mm
3に達した場合、担癌マウスを犠牲させ、腫瘍組織を滅菌で摘み取り、小さな塊に切り、Balb/cヌードマウスの左右両側の皮下に移植し、また、平均腫瘍体積が約100mm
3に達した場合、各モウスに対して一連番号によって標識を付け、その腫瘍の大きさおよび体重をそれぞれ計量し、腫瘍体積により小から大まで無作為に群分け、かつ、各群の動物の平均体重も同じレベルになるように適当に調整された。5群は、それぞれ、陰性対照群、陽性対照群、低用量群、中用量群、および高用量群である。各群はマウス5匹で、群分けの当日から投与を始め、毎日2回投与し、連続で14日間投与し、その期間に腫瘍体積および体重を週に2回計量した。実験終了時、マウスを犠牲させ、脾臓を分離して秤量した。
【0093】
試験過程において、腫瘍の最長径(L)および垂直方向の最大横径(W)を測定し、腫瘍体積(V)を、V(mm
3)=L×W
2/2で計算した。腫瘍増殖阻害率TGI(%)=100%×(1−(T
t−T
0)/(V
t−V
0))において、T
tは治療群の毎回計量時の平均腫瘍体積であり、T
0は治療群の群分け時の平均腫瘍体積であり、V
tは対照群の毎回計量時の平均腫瘍体積であり、V
0は対照群の群分け時の平均腫瘍体積である。
【0095】
表に示すデータによれば、Ba/F3−JAK2V617F担癌マウスモデルにおいて、式I化合物の塩酸塩は、動物体内における腫瘍阻害効果を測定したところ、Ba/F3−JAK2V617F腫瘍増殖に対して用量依存的な阻害効果が示され、腫瘍阻害効果が非常に顕著であることを見出した。式I化合物の塩酸塩(100mg/kg)を、1日2回(BID)経口(PO)投与して14日間投与した後、腫瘍増殖阻害率(TGI)は85.8%に達し、同じ条件下で陽性対照品Ruxolitinib(100mg/kg)の腫瘍増殖阻害率(TGI)はただ64.5%に達した。式I化合物の塩酸塩50mg/kgの方は、腫瘍阻害効果も、とても顕著であり、TGIが68.4%に達し、陽性対照品Ruxolitinib 100mg/kgの方に比べると、腫瘍阻害効果に相当した。
【0096】
3.成年の雄/雌SDラットにおける薬物動態学的測定
健全な成年(成熟)の雌SDラットは、北京維通利華実験動物技術有限公司により得られ、ラットを2群に分け、群ごとに3匹があり、それぞれ経口投与で被検サンプルの懸濁液(30mg/kg)を単回胃内投与した。実験前に動物を一晩絶食させ、絶食時間は投与前10時間から投与後4時間までである。投与後0.25、0.5、1、2、4、6、8時間、および24時間で採血した。小動物麻酔機を用いてイソフルランで麻酔した後、眼底静脈叢により全血0.4mLを取り、ヘパリン抗凝固管に入れ、サンプルを4℃、4,000rpmで5min遠心し、血漿を遠心管に移動し、かつ−80℃に置いて分析までに保存した。血漿におけるサンプルをタンパク質沈殿法により抽出し、抽出液をLC/MS/MSにより分析した。
【0097】
【表5】
付注:a.アメリカ食品医薬品局FDAに公開された薬理学的概観によるデータ。
【0098】
ラット(30mg/kg PO)のPKデータは、式I化合物のデータがRuxolitinib(ルキソリチニブ)よりも優れたことが明らかにされた。
【0099】
4.成年ビーグル犬における薬物動態学的測定
研究用の4匹の健全な成年ビーグル犬は、北京瑪斯生物技術有限公司から入手された。研究は、2回に分けて行い、1回目に、動物(雌雄いずれも2匹)を単回静脈注射投与し、用量が5mg/kgであり、2回目に、一週間後、同じ群の動物(雌雄いずれも2匹)を単回胃内投与し、用量が10mg/kgである。実験前に、胃内投与される動物を一晩絶食させ、絶食時間は投与前10時間から投与後4時間までである。静脈投与群の動物に食物の制限がない。静脈投与群は、投与後0.083、0.25、0.5、1、2、4、6、8時間および24時間で採血し、胃内投与群は投与後0.25、0.5、1、2、4、6、8時間および24時間で採血した。動物をイソフルランで浅麻酔させ、ガラス採血管を用いて眼窩静脈叢から全血を約0.4mL採血し、ヘパリン抗凝固管に入れ、サンプルを4℃、4,200rpmで5min遠心し、血漿を遠心管に移動し、かつ−80℃に置いて分析まで保存した。血漿におけるサンプルをタンパク質沈殿法により抽出し、抽出液をLC/MS/MSにより分析した。
【0100】
【表6】
付注:a.アメリカ食品医薬品局FDAに公開された薬理学的概観によるデータ。
【0101】
犬(10mg/kg PO、5mg/kg IV)のPKデータより、式I化合物を静注(IV)投与した後、AUCが陽性対照Ruxolitinibに相当したが、経口投与の生物学的利用率は、さらに優れた(114%対57%)ことが明らかにされる。