(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一開口が形成された第一ケース部材にセンサ基板を配置する工程と、前記センサ基板に第一流体導入孔が形成された第一台座部材を前記第一開口と前記第一流体導入孔が連通するように配置する工程と、前記第一台座部材に差圧を検出するための第一板部、第二板部、及び前記第一板部と前記第二板部との間で挟持されたダイアフラム部を有するセンサチップを配置する工程と、前記センサチップに第二流体導入孔が形成された第二台座部材を配置する工程と、前記第二台座部材にダミー基板を配置する工程と、前記ダミー基板に第二開口が形成された第二ケース部材を前記第二開口と前記第二流体導入孔が連通するように配置する工程とを備えた、ことを特徴とする差圧センサの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の従来例では、流体はそれぞれ配管を通じて互いに反対側から導入されるが、チップの中心が一対のキャップの中心から一方の配管側にオフセットしているので、チップに達するまでの流路の内容積が相違する。一方の流路の内容積が他方の流路の内容積より小さいと、差圧センサの作動開始時、一方の流路からの圧力が他方の流路の圧力に比べてチップに速く伝わることになり、立ち上がり時における測定誤差を生じる恐れがある。
この点、特許文献2の従来例では、仕切板で2つに仕切られた空間の内容積が同一となるように、2つに仕切られた空間の一方にダミー部材が配置されているが、ダミー部材を一方の空間に配置するため、構造が複雑化し、センサ自体が大型化する。
この課題は、より高精度の測定が求められる差圧センサでは、無視できないものとなっている。
【0006】
本発明の目的は、異なる位置から導入される流体の流路の内容積の差を少なくして高精度な測定を簡易な構造で行える差圧センサ及び差圧センサの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の差圧センサは、ケースと、前記ケースの内部に配置されるセンサモジュールとを備え、ケースは第一ケース部材と第二ケース部材とを有し、前記センサモジュールは、前記第一ケース部材に設けられ第一流体導入孔が形成された第一台座部材と、前記第二ケース部材に設けられ第二流体導入孔が形成された第二台座部材と、前記第一台座部材と前記第二台座部材との間に設けられ前記第一流体導入孔から導入された流体の圧力と前記第二流体導入孔から導入された流体の圧力との差を検出するセンサチップとを有し、前記センサチップは、第一板部と、第二板部と、前記第一板部と前記第二板部との間で挟持されたダイアフラム部とを有し、前記第一ケース部材のうち前記ダイアフラム部とは反対側の外面には前記第一流体導入孔と連通する第一開口が形成され、前記第二ケース部材のうち前記ダイアフラム部とは反対側の外面には前記第二流体導入孔と連通する第二開口が形成され、前記第一ケース部材の前記外面と前記第二ケース部材の前記外面との間の中心が前記ダイアフラム部と一致し、かつ、前記ダイアフラム部を挟んで前記第一板部、前記第一台座部材及び前記第一ケース部材と、前記第二板部、前記第二台座部材及び前記第二ケース部材とが対称構造である、ことを特徴とする。
【0008】
本発明では、ダイアフラム部がケースの中心と一致し、しかも、ダイアフラム部を中心として第一ケース部材側と第二ケース部材側とが対称構造であるため、第一流体導入孔の第一開口からダイアフラム部までの流路の内容積と、第二流体導入孔の第二開口からダイアフラム部までの流路の内容積との差がなくなる。そのため、差圧センサの立ち上がり時において、第一流体導入孔を通じて流通する流体と第二流体導入孔を通じて流通する流体とが同時にダイアフラム部に到達するので、精度の高い測定を実現することができる。しかも、別途、内容積を同一にするためのダミー部材を一方の流路に設けることを要せず、その結果、差圧センサを簡易な構造とすることができる。
【0009】
本発明の差圧センサは、ケースと、前記ケースの内部に配置されるセンサモジュールとを備え、ケースは第一ケース部材と第二ケース部材とを有し、前記センサモジュールは、前記第一ケース部材に設けられ第一流体導入孔が形成された第一台座部材と、前記第二ケース部材に設けられ第二流体導入孔が形成された第二台座部材と、前記第一台座部材と前記第二台座部材との間に設けられ前記第一流体導入孔から導入された流体の圧力と前記第二流体導入孔から導入された流体の圧力との差を検出するセンサチップとを有し、前記センサチップは、第一板部と、第二板部と、前記第一板部と前記第二板部との間で挟持されたダイアフラム部とを有し、前記第一ケース部材のうち前記ダイアフラム部とは反対側の外面には前記第一流体導入孔と連通する第一開口が形成され、前記第二ケース部材のうち前記ダイアフラム部とは反対側の外面には前記第二流体導入孔と連通する第二開口が形成され、前記第一ケース部材の前記第一開口から前記ダイアフラム部までの流路の内容積と、前記第二ケース部材の前記第二開口から前記ダイアフラム部までの流路の内容積とが同じであり、かつ、前記ダイアフラム部を挟んで前記第一板部、前記第一台座部材及び前記第一ケース部材と前記第二板部、前記第二台座部材及び前記第二ケース部材とが対称構造である、ことを特徴とする。
【0010】
本発明では、第一流体導入孔の第一開口からダイアフラム部までの流路の内容積と、第二流体導入孔の第二開口からダイアフラム部までの流路の内容積との差がなく、しかも、ダイアフラム部を中心として第一ケース部材側と第二ケース部材側とが対称構造であるため、差圧センサの立ち上がり時において、第一流体導入孔を通じて流通する流体と第二流体導入孔を通じて流通する流体とが同時にダイアフラム部に到達するので、精度の高い測定を実現することができる。
しかも、別途、内容積を同一にするためのダミー部材を一方の流路に設けることを要せず、その結果、差圧センサを簡易な構造とすることができる。さらに、第一開口あるいは第二開口からダイアフラム部までが直線上にできるから、第一開口からダイアフラム部までの流路と第二開口からダイアフラム部までの流路との内容積を小さくすることが可能となり、センサの感度を上げることが可能となる。
【0011】
本発明では、前記第一ケース部材には前記センサチップからの信号を受けるセンサ基板が設けられ、前記第二ケース部材には前記センサ基板と同じ熱抵抗を有するダミー基板が設けられている、構成としてもよい。
センサ基板が第一ケース部材にのみ設けられている状態では、センサチップを挟んだ第一ケース部材側と第二ケース部材側とでは熱抵抗が相違するが、この構成では、第二ケース部材にダミー基板を設けるので、センサ基板が設けられた第一ケース部材側と第二ケース部材側とで熱抵抗の差が少なくなる。そのため、センサ基板が予め設けられている差圧センサにおいて、センサチップへの熱による影響を少なくすることができ、高精度の測定を実現することができる。
【0012】
本発明では、前記ダミー基板は前記センサ基板と厚さと材質とが同じである、構成としてもよい。
この構成では、ダミー基板とセンサ基板とで部品の共有化を図ることができる。つまり、同じ材質かつ厚さを同じにした板材を用意し、この板材に基づいてセンサ基板とダミー基板とを作製する。そのため、センサ基板とダミー基板とを別々の材料から作製する場合に比べて製造工程の一部共有化が図れ、製造コストを低いものにできる。
【0013】
本発明では、前記第一台座部材、前記第二台座部材、前記第一板部及び前記第二板部は、線膨張係数が同じである、構成としてもよい。
この構成では、第一台座部材、第一板部、第二板部、第二台座部材の線膨張係数が同じであるため、温度変化に伴う流路の内容積のばらつきを少なくできるので、高精度の測定を実現できる。
なお、本発明において、「第一台座部材、第一板部、第二板部、第二台座部材の線膨張係数が同じである」とは、第一台座部材、第一板部、第二板部、第二台座部材の線膨張係数が実質的に同一である場合をいう。つまり、温度変化に伴う流路の内容積のばらつきが実質的になくなるのであれば、第一台座部材、第一板部、第二板部、第二台座部材の線膨張係数の微小な誤差は許容される。
【0014】
本発明では、前記センサ基板と前記第一ケース部材との間及び前記センサ基板と前記第一台座部材との間のうち少なくとも一方には、前記センサ基板の板厚方向に沿った隙間があり、前記隙間にはセラミックビーズを混入した接着剤が設けられている、構成としてもよい。
この構成では、センサ基板と第一ケース部材との間の寸法やセンサ基板と第一台座部材との間の寸法が設計時と製造時とで相違することがあっても、セラミックビーズの直径を適宜選択することで、センサチップの中心をケースの中心となるように調整することができる。ここで、セラミックビーズの直径を適宜選択するとは、センサ基板の板厚方向に沿った隙間に対応する直径のセラミックビーズを1種類用意し、それを用いることや、直径の異なるセラミックビーズを予め複数用意しておき、そのうち前述の隙間に対応する直径のセラミックビーズを用いることが含まれる。
【0015】
本発明の差圧センサの製造方法は、第一開口が形成された第一ケース部材にセンサ基板を配置する工程と、前記センサ基板に第一流体導入孔が形成された第一台座部材を前記第一開口と前記第一流体導入孔が連通するように配置する工程と、前記第一台座部材に差圧を検出するための第一板部、第二板部、及び前記第一板部と前記第二板部との間で挟持されたダイアフラム部を有するセンサチップを配置する工程と、前記センサチップに第二流体導入孔が形成された第二台座部材を配置する工程と、前記第二台座部材にダミー基板を配置する工程と、前記ダミー基板に第二開口が形成された第二ケース部材を前記第二開口と前記第二流体導入孔が連通するように配置する工程とを備えた、ことを特徴とする。
【0016】
本発明では、第一ケース部材、センサ基板、第一台座部材、センサチップ、第二台座部材、ダミー基板、第二ケース部材を下から上に順番に積み上げることで、容易に差圧センサを製造することができる。
【0017】
本発明では、前記第一ケース部材に前記センサ基板を配置する工程と、前記センサ基板に前記第一台座部材を配置する工程との一方では、セラミックビーズを混入した接着剤を用い、前記センサ基板に前記第一台座部材を配置する工程との他方では、セラミックビーズを混入していない接着剤を用いる、構成としてもよい。
この構成では、製造誤差があっても、セラミックビーズを混入した接着剤とセラミックビーズを混入していない接着剤とを部位によって使い分けることで、センサチップのダイアフラム部をケースの中心となるように調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[差圧センサの構成]
本実施形態の差圧センサは、小型電子部品の気密の検査をする気密検査装置に用いられる。気密検査装置は、例えば、水晶デバイス、セラミック発振子、光デバイス、パワー半導体、CANデバイス、レーザーダイオード、MEMSデバイス、SAWフィルタ、小型リレー、コンデンサ等、気密性が求められる小型電子部品のリークテストを行う装置である。気密検査装置は、テーブルを備え、このテーブルに本実施形態に係る差圧センサが複数取り付けられる。なお、本実施形態では、差圧センサは、気密検査装置に用いられるものに限定されない。
【0020】
図1には差圧センサの平面図が示され、
図2には差圧センサの断面図が示され、
図3には差圧センサの分解斜視図が示されている。
これらの図において、差圧センサは、ケース1と、ケース1の内部にそれぞれ配置されるセンサモジュール2、基板ユニット3及びダミー基板4と、を備えている。
ケース1は、金属、その他の材料から形成され、第一ケース部材11と第二ケース部材12とを有する。
【0021】
第一ケース部材11は、平面矩形状の板部111と、板部111の3辺に一体形成された壁部112とを有し、板部111の残り1辺側が開口されている。板部111の中心には第一開口11Aが板部111を貫通して形成されている。第一開口11Aには、気密検査装置の配管T1が接続されている。
板部111のうち開口が形成された1辺と交差する2辺に設けられた壁部112には、1つの取付凹部11Bと、取付凹部11Bを挟んで配置された2つの取付孔11Cと、がそれぞれ形成されている。
第二ケース部材12は、第一ケース部材11と同じ構造であり、平面矩形状の板部121と、板部121の3辺に一体形成された壁部122とを有する。板部121の中心には第二開口12Aが板部121を貫通して形成されている。第二開口12Aには、気密検査装置の配管T2が接続されている。
壁部122には、1つの取付凹部(図示せず)と、取付凹部を挟んで配置された2つの取付孔12Cと、がそれぞれ形成されている。
第一ケース部材11と第二ケース部材12とが重ね合わされた状態では、取付孔11C,12Cに図示しないボルトが挿通され、このボルトが図示しないナットと螺合されて両者が固定される。
【0022】
センサモジュール2は、第一ケース部材11に設けられた第一台座部材21と、第二ケース部材12に設けられた第二台座部材22と、第一台座部材21と第二台座部材22との間に設けられたセンサチップ5とを備えている。
第一台座部材21は、コバール、ガラス、その他の材料から形成され、平面十字状に形成された板部211と、板部211の中心に基端が一体形成された筒部212とを有する。筒部212の内部は、第一開口11Aを通じて第一流体が導入される第一流体導入孔21Aとされ、この第一流体導入孔21Aは板部211に連続して形成されている。筒部212の先端は第一開口11Aに挿通され、接着剤Bにより第一ケース部材11に固定されている。
第二台座部材22は、第一台座部材21と同じ構造であり、板部221と、板部221に基端が一体に形成された筒部222とを有する。
筒部222の内部は、第二流体が導入される第二流体導入孔22Aとされ、第二流体導入孔22Aは、板部221を貫通して形成されている。第二流体は、第一流体とは別流路で導入される。筒部222の先端は、第二開口12Aに挿通され、接着剤Bにより第二ケース部材12に固定されている。
【0023】
センサチップ5は、第一流体導入孔21Aから導入された第一流体の圧力と、第二流体導入孔22Aから導入された第二流体の圧力との差を検出するものであり、第一板部51、第二板部52、及び第一板部51と第二板部52との間で挟持されたダイアフラム部53を有する。
第一板部51は、コバール、ガラス、その他の材料からなる板部材であり、中央に第一流体導入孔21Aと連通する孔部が形成されている。
第二板部52は、第一板部51と同様の構造であり、中央に第二流体導入孔22Aと連通する孔部が形成されたガラス製の板部材である。
第一板部51と第二板部52の一方、例えば、第二板部52には固定電極52Aが形成されている。固定電極52Aは、第二板部52の孔部を介して第一板部51と対向する面とは反対側の面に形成された取出電極52Bに接続されている。
【0024】
ダイアフラム部53は、導電性が付与されたシリコンから形成される可動電極であり、その中央部が第一流体と第二流体との圧力差によって変位する。
第一ケース部材11の外面11Sと第二ケース部材12の外面12Sとの間の中心Cはダイアフラム部53の厚さ方向の中心と一致する。
第一ケース部材11の第一開口11Aからダイアフラム部53までの流路D1の内容積と、第二ケース部材12の第二開口12Aからダイアフラム部53までの流路D2の内容積とは同じである。
ダイアフラム部53を挟んで第一板部51、第一台座部材21及び第一ケース部材11と、第二板部52、第二台座部材22及び第二ケース部材12とは対称構造とされる。
【0025】
第一板部51、ダイアフラム部53及び第二板部52は重なり合っており、その互いに反対側に位置する角部には一対のピン54が設けられている。
これらのピン54は、その一端部が第一ケース部材11の取付凹部11Bに嵌合され、その他端部が第二ケース部材12の取付凹部に嵌合される。
ここで、第一台座部材21、第二台座部材22、第一板部51及び第二板部52は、線膨張係数が同じである。ここで、線膨張係数が同じとは、実質的に同一であることをいい、温度変化に伴う流路の内容積のばらつきが実質的になければ、誤差が許容される。
【0026】
基板ユニット3は、センサチップ5からの信号を受信して外部に送信するものであり、センサ基板30と、センサ基板30に設けられた複数のスペーサ31と、センサチップ5からの信号を外部に出力する端子32とを備えている。
センサ基板30の中心部には、第一台座部材21の筒部212を挿通する孔部3Aが形成されている。
スペーサ31は、センサ基板30の孔部3Aを囲んで配置されている。
端子32は、センサ基板30の端部にケース1から露出して設けられている。端子32は、図示しないケーブルを通じて外部機器(図示せず)に接続されている。
【0027】
センサ基板30と第一台座部材21の板部211との間には、センサ基板30の板厚方向に隙間S1が形成され、この隙間S1には接着剤B1が設けられている。
センサ基板30と第一ケース部材11の板部111との間には、センサ基板30の板厚方向に隙間S2が形成され、この隙間S2には接着剤B2が設けられている。
第一ケース部材11と第二ケース部材12との間には、接着剤B3が設けられている。
第一台座部材21とセンサチップ5との間には接着剤B4が設けられている。
センサチップ5と第二台座部材22との間には、接着剤B5が設けられている。
ダミー基板4と第二台座部材22の板部221との間には、接着剤B6が設けられている。
第二台座部材22の板部221と第二ケース部材12とに間には、接着剤B7が設けられている。
【0028】
なお、
図2では、接着剤B,B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7のうち、接着剤B1にはセラミックビーズSBを混入しており、接着剤B,B2,B3,B4,B5,B6,B7には、セラミックビーズSBを混入していない状態が図示されているが、本実施形態では、接着剤B1と接着剤B2の少なくとも一方にセラミックビーズSBを混入していればよく、接着剤B2のみ、接着剤B1と接着剤B2の双方にセラミックビーズSBを混入するものも含まれる。本実施形態では、センサチップ5の中心がケース1の中心Cとなるようにするため、接着剤B1と接着剤B2との双方にセラミックビーズSBを混入することが好ましい。
セラミックビーズSBの直径を適宜選択することにより、センサ基板30と第一台座部材21の板部211との隙間S1の寸法が設定される。隙間S1を所定の寸法に設定することで、センサチップ5の中心Cをケース1の中心と一致させる。
【0029】
ダミー基板4は、平面略矩形状の平板部材であり、そのうち3辺が第二ケース部材12の壁部122に対向し、残り1辺がケース1の開口に対向している。
ダミー基板4は、基板ユニット3とは厚さ(板厚方向の寸法)、材質及び熱抵抗が同じである。
ダミー基板4は、その中央部分に第二台座部材22の筒部222を挿通する孔部40Aが形成されている。
【0030】
[差圧センサの製造方法]
次に、本実施形態の差圧センサの製造方法について説明する。
予め、第一板部51、第二板部52及びダイアフラム部53からセンサチップ5を組み立てておき、これらの角部にピン54を取り付けておく。
そして、第二板部52と第二台座部材22の板部221との間に接着剤B5を塗布した後、所定の温度を所定時間かけて、接着剤B5を硬化させる。
【0031】
センサ基板30にスペーサ31と端子32とを設けて基板ユニット3を組み立てておき、この基板ユニット3のセンサ基板30を、第一ケース部材11の板部111に予め塗布された接着剤B2の上に配置する。そして、センサ基板30の上に接着剤B1を塗布し、この接着剤B1の上に第一台座部材21の板部211を配置する。この際、接着剤B1のみ、接着剤B2のみ、好ましくは、接着剤B1と接着剤B2の双方にセラミックビーズSBを混入しておく。
さらに、第一台座部材21の筒部212の先端をセンサ基板30の孔部3Aと第一ケース部材11の第一開口11Aに挿通するとともに、第一台座部材21をセンサ基板30に押し当てるようにして個々のセラミックビーズSBが第一台座部材21とセンサ基板30とに当接するようにする。
さらに、第一台座部材21の板部211の上に接着剤B4を塗布しておき、この接着剤B4の上に第二台座部材22が固定されたセンサチップ5の第一板部51を配置する。この際、センサチップ5のピン54の一部を第一ケース部材11の取付凹部11Bに挿入する。
これらの接着剤B1,B2,B4に所定の温度を所定時間かけて、硬化させる。
【0032】
その後、センサチップ5とスペーサ31とをワイヤボンディングする。ワイヤボンディングのループを確認した後、第二台座部材22の板部221の上に接着剤B6を塗布し、この接着剤B6の上にダミー基板4を配置する。ダミー基板4の上に接着剤B7を塗布し、第一ケース部材11の壁部122の上に接着剤B3を塗布する。
そして、第二ケース部材12を接着剤B3,B6,B7の上に配置する。この際、第二台座部材22の筒部222の先端を、ダミー基板4の孔部40Aと第二ケース部材12の第二開口12Aとに挿通させる。
接着剤B3,B6,B7が硬化したなら、第一ケース部材11の第一開口11Aと筒部212との間、第二ケース部材12の第二開口12Aと筒部222との間に接着剤Bを塗布し、硬化させる。
【0033】
[実施形態の効果]
(1)第一ケース部材11の外面11Sには第一開口11Aが形成され、第二ケース部材12の外面12Sには第二開口12Aが形成され、これらの外面11S,12Sの間の中心Cがダイアフラム部53と一致し、かつ、ダイアフラム部53を挟んで第一板部51、第一台座部材21及び第一ケース部材11と第二板部52、第二台座部材22及び第二ケース部材12とが対称構造とされる。そのため、第一開口11Aからダイアフラム部53までの流路の内容積と、第二開口12Aからダイアフラム部53までの流路の内容積との差がなくなり、差圧センサの立ち上がり時において、第一流体と第二流体とが同時にダイアフラム部53に到達することになり、精度の高い測定を実現することができる。しかも、別途、内容積を同一にするためのダミー部材を一方の流路に設けることを要せず、その結果、差圧センサを簡易な構造とすることができる。
【0034】
(2)第一ケース部材11の第一開口11Aからダイアフラム部53までの流路の内容積と、第二ケース部材12の第二開口12Aからダイアフラム部53までの流路の内容積とが同じであり、かつ、ダイアフラム部53を挟んで第一板部51、第一台座部材21及び第一ケース部材11と第二板部52、第二台座部材22及び第二ケース部材12とが対称構造とされる。つまり、2つの流路の内容積の差がなく、ダイアフラム部53を中心として第一ケース部材11側と第二ケース部材12側とが対称構造であるため、差圧センサの立ち上がり時において、第一流体と第二流体とが同時にダイアフラム部53に到達することになり、精度の高い測定を実現することができ、しかも、別途、内容積を同一にするためのダミー部材を一方の流路に設けることを要しないから、差圧センサを簡易な構造とすることができる。さらに、第一開口11Aあるいは第二開口12Aからダイアフラム部53までを直線上に位置させることができるから、第一開口11Aからダイアフラム部53までの流路と第二開口12Aからダイアフラム部53までの流路との内容積を小さくすることが可能となり、センサの感度を上げることが可能となる。
【0035】
(3)第一ケース部材11にはセンサチップ5からの信号を受けるセンサ基板30が設けられ、第二ケース部材12にはセンサ基板30と同じ熱抵抗を有するダミー基板4が設けられているから、センサ基板30が設けられた第一ケース部材11側と第二ケース部材12側とで熱抵抗の差が少なくなり、センサ基板30が予め設けられている差圧センサにおいて、センサチップ5への熱による影響を少なくすることができ、高精度の測定を実現できる。
【0036】
(4)ダミー基板4は、センサ基板30と厚さと材質とが同じであるので、ダミー基板4とセンサ基板30とで部品の共有化を図ることができる。
(5)第一台座部材21、第二台座部材22、第一板部51及び第二板部52は、線膨張係数が同じであるため、温度変化に伴う流路の内容積のばらつきを少なくできるので、高精度の測定を実現できる。
【0037】
(6)センサ基板30と第一台座部材21との間の隙間S1及びセンサ基板30と第一ケース部材11との間の隙間S2うち少なくとも一方には、セラミックビーズSBを混入した接着剤B1,B2が設けられているので、センサ基板30と第一ケース部材11との間の寸法やセンサ基板30と第一台座部材21との間の寸法が設計時と製造時とで相違することがあっても、セラミックビーズSBの直径を適宜選択することで、センサチップ5の中心をケース1の中心Cとなるように調整することができる。
【0038】
(7)第一開口11Aが形成された第一ケース部材11にセンサ基板30を配置し、センサ基板30に第一台座部材21を第一開口11Aと第一台座部材21の第一流体導入孔21Aが連通するように配置し、第一台座部材21に差圧を検出するための第一板部51、第二板部52及びダイアフラム部53を有するセンサチップ5を配置し、センサチップ5に第二台座部材22を配置し、第二台座部材22にダミー基板4を配置し、ダミー基板4に第二ケース部材12を第二開口12Aと第二台座部材22の第二流体導入孔22Aが連通するように配置した。第一ケース部材11、センサ基板30、第一台座部材21、センサチップ5、第二台座部材22、ダミー基板4、第二ケース部材12を下から上に順番に積み上げることで、容易に差圧センサを製造することができる。
【0039】
本実施形態の差圧センサを気密検査装置(株式会社フクダ製のエアリークテスタ)に適用した例として説明する。
エアリークテスタの漏れ検査時においては、差圧センサのダイアフラム部53は、エアリークテスタのエア通路の終端部となる。この終端部のエアは、瞬間的に断熱圧縮されて高温となる。この際、エアは、エアリークテスタの通路内のエアやエア接触部材を通じて外部に熱を放出する。この熱の放出によるエアの温度変化は、通路内のエアの内容積や形状(接触部材との接触面積)、接触部材の熱抵抗により変化する。
エアリークテスタの加圧工程から検出工程に入った時、差圧センサを含めた空間は密閉状態となる。このとき、エアの温度変化は、そのまま圧力変化となる。検査品側と基準品側の両空間内の温度変化の差による圧力差(差圧)は、実際の検査品の漏れによる差圧に対しての誤差となる。従って、この誤差を少なくするためには、ダイアフラム部53を境として、通路内のエア内容積や形状、接触部材の熱抵抗を同じにする本実施形態の構成が必要となる。
【0040】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、第一ケース部材11にはセンサ基板30が設けられ、第二ケース部材12にはセンサ基板30と同じ熱抵抗を有するダミー基板4が設けられている構成としたが、本発明では、ダミー基板4を必ずしも設けることを要しない。ダミー基板4を設ける代わりに、第二ケース部材12の板部121の厚さを厚くしてもよい。
仮に、ダミー基板4を設ける場合であっても、センサ基板30と厚さと材質とを同じにすることを要しない。
【0041】
また、前記実施形態では、センサ基板30と第一台座部材21との間の隙間S1及びセンサ基板30と第一ケース部材11との間の隙間S2うち少なくとも一方には、セラミックビーズSBを混入した接着剤B1,B2が設けられている構成としたが、本発明では、これらの接着剤B1,B2に、セラミックビーズSBを必ずしも混入することを要しない。
本発明では、セラミックビーズSBに代えて、あるいは、セラミックビーズSBとともに、ガラス、合成樹脂等から形成され、かつ、導電性が低く、低弾性で粒径が均一なビーズを用いてもよい。
さらに、ダミー基板4とセンサ基板30との厚さと材質とを異なるものとしてもよい。
また、前記実施形態では、センサチップ5を、第一板部51と第二板部52との間でダイアフラム部53が挟持され、第二板部52に固定電極52Aが形成され、ダイアフラム部53が可動電極とした構成としたが、本発明では、この構成に限定されない。