特許第6986044号(P6986044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986044
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】車両用エアバッグ装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/237 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   B60R21/237
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-93251(P2019-93251)
(22)【出願日】2019年5月16日
(65)【公開番号】特開2020-185955(P2020-185955A)
(43)【公開日】2020年11月19日
【審査請求日】2020年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】石垣 良太
(72)【発明者】
【氏名】ヴィセンテ アダオ
(72)【発明者】
【氏名】小泉 晃
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−103308(JP,A)
【文献】 特開2003−081046(JP,A)
【文献】 特開2012−071715(JP,A)
【文献】 特開平11−192908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレータのインフレータガスが導入されると、インフレータ取付用の開口を有する第1パネルが車両前方に面し、第2パネルが乗員に面して、展開膨張される袋状のエアバッグクッションを備えた車両用エアバッグ装置において、
平らに広げた状態の上記エアバッグクッションの上記第1パネル側で、上記開口位置で互いに交差するX方向及びY方向の2方向のうち、該X方向における該開口両側の該エアバッグクッションがそれぞれ当該X方向に、該開口付近まで重合され、該第1パネル上の当該開口両側に形成される一対の第1重合部と、
該一対の第1重合部それぞれと上記開口との間に設定され、上記第1パネル上の該第1重合部を、上記第2パネル下へ移すように反転させる一対の第1反転部と、
上記第1パネル側で、上記Y方向における上記開口両側の上記第1反転部及び該第1反転部で反転された上記第1重合部が一体的に、それぞれ当該Y方向に、該開口付近まで重合され、該第1パネルの当該開口両側に形成される一対の第2重合部と、
該一対の第2重合部それぞれと上記開口との間に設定され、上記第1パネル上の該第2重合部を、上記第2パネル下へ移すように反転させる一対の第2反転部とを備え、
該第2反転部で反転され、上記Y方向に互いに向かい合う一対の上記第2重合部の間には、上記X方向に延びて、該第2重合部の姿勢変化に対するフレキシビリティを付与する隙間が設けられ、
さらに、前記エアバッグクッションを収容するハウジングが備えられ、
該ハウジングを区画形成する周囲壁は、3辺以上の壁部から構成され、
上記エアバッグクッションは、上記ハウジング内方に収容されたとき、前記第2重合部の姿勢変化により、上記各壁部及びこれら壁部同士がなす隅角部に接触可能に変形自在であることを特徴とする車両用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記第1重合部及び前記第2重合部は、前記X方向及び前記Y方向の2方向における前記開口両側に位置され、該開口及びその近辺の厚さ寸法が薄いことを特徴とする請求項1に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記第1重合部は、ロール状の巻き取りもしくは蛇腹状の折り畳みで形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記第2重合部は、ロール状の巻き取りもしくは蛇腹状の折り畳みで形成されることを特徴とする請求項1〜3いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記ハウジングの前記周囲壁は、5辺以上の壁部からなることを特徴とする請求項1〜4いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置の製造方法であって、
平らに広げた状態の前記エアバッグクッションの前記第1パネル側で、前記開口位置で互いに交差する前記X方向及び前記Y方向の2方向のうち、該X方向における該開口両側の該エアバッグクッションをそれぞれ当該X方向に、該開口付近まで重合し、該第1パネル上の当該開口両側に前記一対の第1重合部を形成する第1ステップと、
上記一対の第1重合部それぞれと上記開口との間に設定した前記一対の第1反転部により、上記第1パネル上の該第1重合部を、前記第2パネル下へ移すように反転させる第2ステップと、
上記第1パネル側で、上記Y方向における上記開口両側の上記第1反転部及び該第1反転部で反転された上記第1重合部を一体的に、それぞれ当該Y方向に、該開口付近まで重合し、該第1パネル上の当該開口両側に前記一対の第2重合部を形成する第3ステップと、
上記一対の第2重合部それぞれと上記開口との間に設定した前記一対の第2反転部により、上記第1パネル上の該第2重合部を、上記第2パネル下へ移すように反転させる第4ステップとを備え、
上記第2反転部で反転され、上記Y方向に互いに向かい合う一対の上記第2重合部の間には、上記X方向に延びて、該第2重合部の姿勢変化に対するフレキシビリティを付与する隙間を設けるようにし、
さらに、前記エアバッグクッションを収容するハウジングは、該ハウジングを区画形成する周囲壁を3辺以上の壁部から構成し、
前記第2重合部の姿勢変化により、上記各壁部及びこれら壁部同士がなす隅角部に接触可能に変形自在である上記エアバッグクッションを、上記ハウジング内方に収容するようにしたことを特徴とする車両用エアバッグ装置の製造方法。
【請求項7】
前記ハウジングの前記周囲壁は、5辺以上の壁部からなることを特徴とする請求項6に記載の車両用エアバッグ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容形態にしたエアバッグを、姿勢変化に対するフレキシビリティに富むようにし、当該エアバッグを収容するハウジングの形態に倣うように変形させることが可能で、良好な製造性と所望の展開膨張性能の保証を確保することが可能な車両用エアバッグ装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用エアバッグ装置が有するエアバッグの折り畳み構造については、種々知られている。特許文献1の「エアバッグ装置」では、エアバッグの内部には、同エアバッグ内で筒状に膨らみ、インフレータから噴出するガスをその両端から同エアバッグ内に導入する整流布が設けられている。エアバッグは、第2の折り畳み部内に同整流布を挟み込んだ状態で収容されている。
【0003】
特許文献1では、パッドの内部に、折り畳まれたエアバッグが収容される。エアバッグの折り畳みは概ね、以下の通りである。エアバッグは、横方向の幅を狭めるようにインフレータ取り付け部に向かって折り畳まれ、インフレータ取り付け部を挟んで縦方向に延びる中間形態にされる。
【0004】
次いで、中間形態のエアバッグは、縦方向に延びる部分が、インフレータ取り付け部に向かって折り畳まれ、インフレータ取り付け部の上側が第1の折り畳み部とされ、下側が第2の折り畳み部とされる。
【0005】
そして、インフレータ取り付け部側に折り重ねられた第1及び第2の折り畳み部は、インフレータ取り付け部とは反対側のキャビン側に向かって折り返され、これがパッドへの収容形態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−71715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のエアバッグの収容形態は、中間形態にする横方向への畳み込み、さらに、中間形態の縦方向への畳み込みによって、第1及び第2折り畳み部を形成している。このため、第1及び第2の折り畳み部は、厚みのある、そして柔軟性に乏しい2つの短柱状の「かたまり」のような様態を呈するものであった。
【0008】
そしてまた、第1及び第2の折り畳み部は、ほとんど隙間なく接近し、さらに剛性を有するインフレータと重ねられる構成であった。
【0009】
このため、収容形態のエアバッグは、パッドに詰め込むようにして収容するときに、パッドの内面に倣うように変形可能で、姿勢変化に対するフレキシビリティに富むものではなかった。
【0010】
すなわち、特許文献1のエアバッグの収容形態は、柔軟性のない硬直したものであり、パッド内へ押し込むとき、パッドの内壁にエアバッグの外回りが当たってしまうなどして収容し難く、製造に手間取るものであった。
【0011】
エアバッグを強引にパッド内へ詰め込んでしまうと、エアバッグが展開膨張するとき、パッドにきつく押し付けられている箇所の展開動作が遅くなってしまうなど、設計通りの展開膨張性能が得られないという課題があった。
【0012】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、収容形態にしたエアバッグを、姿勢変化に対するフレキシビリティに富むようにし、当該エアバッグを収容するハウジングの形態に倣うように変形させることが可能で、良好な製造性と所望の展開膨張性能の保証を確保することが可能な車両用エアバッグ装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる車両用エアバッグ装置は、インフレータのインフレータガスが導入されると、インフレータ取付用の開口を有する第1パネルが車両前方に面し、第2パネルが乗員に面して、展開膨張される袋状のエアバッグクッションを備えた車両用エアバッグ装置において、平らに広げた状態の上記エアバッグクッションの上記第1パネル側で、上記開口位置で互いに交差するX方向及びY方向の2方向のうち、該X方向における該開口両側の該エアバッグクッションがそれぞれ当該X方向に、該開口付近まで重合され、該第1パネル上の当該開口両側に形成される一対の第1重合部と、該一対の第1重合部それぞれと上記開口との間に設定され、上記第1パネル上の該第1重合部を、上記第2パネル下へ移すように反転させる一対の第1反転部と、上記第1パネル側で、上記Y方向における上記開口両側の上記第1反転部及び該第1反転部で反転された上記第1重合部が一体的に、それぞれ当該Y方向に、該開口付近まで重合され、該第1パネルの当該開口両側に形成される一対の第2重合部と、該一対の第2重合部それぞれと上記開口との間に設定され、上記第1パネル上の該第2重合部を、上記第2パネル下へ移すように反転させる一対の第2反転部とを備え、該第2反転部で反転され、上記Y方向に互いに向かい合う一対の上記第2重合部の間には、上記X方向に延びて、該第2重合部の姿勢変化に対するフレキシビリティを付与する隙間が設けられ、さらに、前記エアバッグクッションを収容するハウジングが備えられ、該ハウジングを区画形成する周囲壁は、3辺以上の壁部から構成され、上記エアバッグクッションは、上記ハウジング内方に収容されたとき、前記第2重合部の姿勢変化により、上記各壁部及びこれら壁部同士がなす隅角部に接触可能に変形自在であることを特徴とする。
【0014】
前記第1重合部及び前記第2重合部は、前記X方向及び前記Y方向の2方向における前記開口両側に位置され、該開口及びその近辺の厚さ寸法が薄いことが好ましい。前記第1重合部または第2重合部は、ロール状の巻き取りもしくは蛇腹状の折り畳みで形成されることが望ましい。
【0015】
前記ハウジングの前記周囲壁は、5辺以上の壁部からなる構成であってもよい。
【0016】
本発明にかかる車両用エアバッグ装置の製造方法は、上記車両用エアバッグ装置の製造方法であって、平らに広げた状態の前記エアバッグクッションの前記第1パネル側で、前記開口位置で互いに交差する前記X方向及び前記Y方向の2方向のうち、該X方向における該開口両側の該エアバッグクッションをそれぞれ当該X方向に、該開口付近まで重合し、該第1パネル上の当該開口両側に前記一対の第1重合部を形成する第1ステップと、上記一対の第1重合部それぞれと上記開口との間に設定した前記一対の第1反転部により、上記第1パネル上の該第1重合部を、前記第2パネル下へ移すように反転させる第2ステップと、上記第1パネル側で、上記Y方向における上記開口両側の上記第1反転部及び該第1反転部で反転された上記第1重合部を一体的に、それぞれ当該Y方向に、該開口付近まで重合し、該第1パネル上の当該開口両側に前記一対の第2重合部を形成する第3ステップと、上記一対の第2重合部それぞれと上記開口との間に設定した前記一対の第2反転部により、上記第1パネル上の該第2重合部を、上記第2パネル下へ移すように反転させる第4ステップとを備え、上記第2反転部で反転され、上記Y方向に互いに向かい合う一対の上記第2重合部の間には、上記X方向に延びて、該第2重合部の姿勢変化に対するフレキシビリティを付与する隙間を設けるようにし、さらに、前記エアバッグクッションを収容するハウジングは、該ハウジングを区画形成する周囲壁を3辺以上の壁部から構成し、前記第2重合部の姿勢変化により、上記各壁部及びこれら壁部同士がなす隅角部に接触可能に変形自在である上記エアバッグクッションを、上記ハウジング内方に収容するようにしたことを特徴とする。
前記ハウジングの前記周囲壁は、5辺以上の壁部からなることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる車両用エアバッグ装置及びその製造方法にあっては、収容形態にしたエアバッグを、姿勢変化に対するフレキシビリティに富むようにし、当該エアバッグを収容するハウジングの形態に倣うように変形させることができ、良好な製造性と所望の展開膨張性能の保証を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る車両用エアバッグ装置及びその製造方法の好適な一実施形態を示すための、第1ステップで、エアバッグクッションを平らに広げた状態を説明する説明図である。
図2図1に引き続き、第1ステップで、エアバッグクッションのX方向への重合を説明する説明図である。
図3図2に引き続き、第1ステップで、第1重合部の形成を説明する説明図である。
図4図3に引き続き、第2ステップで、第1重合部の反転を説明する説明図である。
図5図4に引き続き、第3ステップで、エアバッグクッションのY方向への重合を説明する説明図である。
図6図5に引き続き、第3ステップで、第2重合部の形成を説明する説明図である。
図7図6に引き続き、第4ステップで、第2重合部の反転を説明する説明図である。
図8】本発明に係る車両用エアバッグ装置の好適な一実施形態を示す斜視図である。
図9図8に示した車両用エアバッグ装置の底面図である。
図10図8に示した車両用エアバッグ装置の作用の一態様を説明する説明図である。
図11図8に示した車両用エアバッグ装置の作用の他の態様を説明するための説明図である。
図12図8に示した車両用エアバッグ装置をハウジングに収容した様子の一例を示す説明図である。
図13図5に示したエアバッグクッションのY方向への重合の変形例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる車両用エアバッグ装置及びその製造方法の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。車両用エアバッグ装置は従来周知のように、インフレータのインフレータガスが袋状のエアバッグクッションの内部に導入され、導入されたインフレータガスによって収容状態から展開膨張したエアバッグクッションが乗員を受け止めて保護するように構成されている。
【0020】
以下の説明では、運転席用のエアバッグクッションを例示して説明するが、助手席用のエアバッグクッションであってもよいことはもちろんである。
【0021】
また、エアバッグクッションは、車両前方側及び車両後方の乗員側の2枚のパネルに加えて、筒体に形成するためのサイドパネルを有しているものや、内部にテザーやディフーザ、仕切りパネルを組み込んだものなど、種々知られているが、説明を簡略化するために、車両前方側及び乗員側の2枚のパネルで形成されるエアバッグクッションを例示して説明する。しかしながら、サイドパネル付きやテザーなどを組み込んだ形式のエアバッグクッションであってもよいことはもちろんである。
【0022】
図1図9は、本実施形態に係る車両用エアバッグ装置とその製造方法を示している。以下、製造方法の手順に沿って説明する。
【0023】
本実施形態に係る車両用エアバッグ装置及びその製造方法では、エアバッグクッション1は図1に示すように、2枚のパネル2,3から構成される。これらパネル2,3は、伸縮性に乏しい布材などで形成される。
【0024】
エアバッグクッション1は、2枚のパネル2,3を重ね合わせ、それらの外周縁同士を縫製などの各種接合手段で接合することにより、袋状に形成される。
【0025】
図示例では、外形輪郭が円形状のパネル2,3により、エアバッグクッション1は、円形状の外形輪郭で形成されている。しかしながら、エアバッグクッション1は、図中、二点鎖線で示した正方形状のパネルやその他の形状のパネルを用いて、どのような外形輪郭に形成してもよいことはもちろんである。
【0026】
また、エアバッグクッション1は、2枚のパネル2,3を重ね合わせて袋状とすることに限らず、1枚のパネルを折り返し重ね合わせることで、2つのパネル面を有する袋状にしてもよい。
【0027】
2枚のパネル2,3のうちの一方の第1パネル2のほぼ中央には、エアバッグクッション1の内部へインフレータガスを導入するインフレータ4(図8参照)を取り付けるために、インフレータ取付用の開口5が形成される。
【0028】
開口5の周りには、インフレータ4が有する取付ボルト4aを挿通するための孔6が形成される。さらに、第1パネル2には、適宜位置にベントホール7が形成される。
【0029】
袋状のエアバッグクッション1は、開口5に取り付けたインフレータ4から内部にインフレータガスが導入されると、第1パネル2が車両前方に面し、第2パネル3が乗員に面して、後述する収容状態から展開膨張される。
【0030】
製造に際しては、図1に示すように、まず、エアバッグクッション1を、第2パネル3が下になり、第1パネル2が上になるようにして、平らに広げた状態にする。図1(a)は、エアバッグクッション1を見下ろした平面図、図1(b)は、開口5位置における断面図である。
【0031】
開口5位置で互いに交差するX方向及びY方向の2方向を規定し、これら方向を、後述する第1重合部8及び第2重合部9の重合方向とする。X方向とY方向は、必ずしも厳密に直交する方向である必要はないが、ほぼ直交する方向に規定することが好ましい。
【0032】
次に、図2に示すように、平らに広げた状態のエアバッグクッション1を、X方向に重合していく。図2(a)は、重合されていくエアバッグクッション1を見下ろした平面図、図2(b)は、開口5位置における断面図である。
【0033】
図示例では、ロール状に巻き取ることによって、エアバッグクッション1を重ね合わせていく(重合していく)場合が示されている。
【0034】
すなわち、X方向における開口5の両側それぞれで、エアバッグクッション1の外周縁1aをそれぞれ第1パネル2上にX方向へ巻き込むことから始め、引き続き、第1パネル2側で開口5両側のエアバッグクッション1それぞれをX方向に開口5付近まで巻き取ることを継続する。
【0035】
この巻き取り操作により、図3に示すように、エアバッグクッション1の第1パネル2上には、X方向で開口5の両側に、一対の第1重合部8が形成される。図3(a)は、一対の第1重合部8が形成されたエアバッグクッション1を見下ろした平面図、図1(b)は、開口5位置における断面図である。
【0036】
このとき、X方向に向かい合う一対の第1重合部8で挟まれた開口5及びその近辺は、2枚の第1及び第2パネル2,3を重ね合わせた厚さとなっている。
【0037】
第1重合部8は、ロール状の巻き取りに代えて、第1パネル2側で、エアバッグクッション1の外周縁1aそれぞれからX方向に開口5両側へ向けて、当該第1パネル2上に重ねるように形成される蛇腹状の折り畳みであってもよい。
【0038】
次に、図3(b)中、矢印jで示すように、第1パネル2上の一対の第1重合部8それぞれを、下になっている第2パネル3下へ移すように反転させる。反転操作のために、開口5と第1重合部8との間には、第1反転部10が設定される。
【0039】
第1反転部10は、第1重合部8の開口5側の際(きわ)を折り返し位置10aとして備え、この折り返し位置10aと開口5との間に、反転させた第1重合部8が開口5と上下に重ならない距離を隔てる寸法d1で形成される。
【0040】
これにより、エアバッグクッション1は、見下ろしたときに、図4に示すように、重合したX方向に短尺であり、Y方向に長尺な形態に形成される。図4(a)は、第1重合部8を反転させたエアバッグクッション1を見下ろした平面図、図1(b)は、開口5位置における断面図である。
【0041】
一対の第1重合部8は、エアバッグクッション1の下側であって、X方向に開口5を挟む配置で相対向するように設けられる。第1反転部10は、収容状態のエアバッグクッション1がインフレータガスで展開膨張するとき、インフレータガスが最初に流れ込む開口5周辺と反対側に位置する第1重合部8に弾き出る作用を付与することができる(図4(b)中、矢印Pで示す)。
【0042】
次に、図5に示すように、第1パネル2側でエアバッグクッション1を、Y方向に重合していく。図5(a)は、重合されていくエアバッグクッション1を見下ろした平面図、図5(b)は側面図である。
【0043】
図示例では、ロール状に巻き取ることによって、エアバッグクッション1を重ね合わせていく(重合していく)場合が示されている。
【0044】
すなわち、Y方向における開口5の両側それぞれで、エアバッグクッション1の外周縁1aから、第1反転部10及び第1反転部10で反転された第1重合部8を一体的に、それぞれ第1パネル2上にY方向へ巻き込むことから始め、引き続き、第1パネル2側でそれぞれをY方向に、開口5付近まで巻き取ることを継続する。
【0045】
この巻き取り操作により、図6に示すように、エアバッグクッション1の第1パネル2上には、Y方向で開口5の両側に、一対の第2重合部9が形成される。図6(a)は、一対の第2重合部9が形成されたエアバッグクッション1を見下ろした平面図、図6(b)は側面図である。
【0046】
このとき、一対の第2重合部9で挟まれた開口5及びその近辺は、第1重合部8の形成時と同様に、2枚の第1及び第2パネル2,3を重ね合わせた厚さとなっている。
【0047】
第2重合部9も、第1重合部8と同様に、ロール状の巻き取りに代えて、第1パネル2側で、エアバッグクッション1の外周縁1aそれぞれからY方向に開口5両側へ向けて、当該第1パネル2上に重ねるように形成される蛇腹状の折り畳みであってもよい。そしてまた、第1重合部8を折り畳みとし、第2重合部9を巻き取りとしたり、反対に、第1重合部8を巻き取りとし、第2重合部9を折り畳みとするなど、混在させてもよい。
【0048】
次に、図6(b)中、矢印kで示すように、第1パネル2上の一対の第2重合部9それぞれを、下になっている第2パネル3下へ移すように反転させる。反転操作のために、開口5と第2重合部9との間には、第2反転部11が設定される。
【0049】
第2反転部11は、第1反転部10と同様に、第2重合部9の開口5側の際(きわ)を折り返し位置11aとして備え、この折り返し位置11aと開口5との間に、反転させた第2重合部9が開口5と上下に重ならない距離を隔てる寸法d2で形成される。
【0050】
第2反転部11で一対の第2重合部9を反転させると、図7図9に示すように、これら第2重合部9は、エアバッグクッション1の下側であって、Y方向に開口5を挟む配置で相対向するように設けられる。これにより、収容形態のエアバッグクッション1が形成される。
【0051】
図7(a)は、第2重合部9を反転させた収容形態のエアバッグクッション1を第1パネル2側から見下ろした平面図、図7(b)は側面図、図8はインフレータ4を取り付けた状態の斜視図である。
【0052】
第2反転部11については、第1反転部10と同様に、収容状態のエアバッグクッション1がインフレータガスで展開膨張するとき、インフレータガスが最初に流れ込む開口5周辺と反対側に位置する第2重合部9に弾き出る作用を付与することができる(図7(b)中、矢印Qで示す)。
【0053】
収容形態とされたエアバッグクッション1の開口5には、その後、インフレータ4が取り付けられる。インフレータ4の開口5への取り付けは、最初の平らに広げた状態のエアバッグクッション1に対して行ってもよい。図9は、インフレータ4を取り付けた後で、第2パネル3側から見上げた底面図である。
【0054】
本実施形態では、第2反転部11で反転され、Y方向に互いに向かい合う一対の第2重合部9の間には、X方向に延びて隙間Zが設けられ、この隙間Zによって、第2重合部9を、姿勢変化に対するフレキシビリティに富むように、変形しやすくすることができる。
【0055】
第2重合部9は、開口5と上下に重ならないことが望ましいが、変形能が極端に阻害されない限り、開口5と上下に重なることは許容される。
【0056】
加えて、第1重合部8及び第2重合部9は、X方向及びY方向の2方向における開口5両側に位置され、開口5及びその近辺の厚さ寸法は、2枚の第1及び第2パネル2,3を重ね合わせた厚さという薄さなので、高い自由度で収容形態のエアバッグクッション1を変形させることができる。
【0057】
具体的には、図10中、矢印Rで示すように、収容形態のエアバッグクッション1を、Y方向から隙間Zを狭めるように曲げ変形することができ、これにより、エアバッグクッション1のハウジングへの収容時に、Y方向寸法を狭めたり、あるいは開口5周辺を膨出変形させて、エアバッグクッション1の収容形態を様々に変化させることができる。
【0058】
また、図11に示すように、例えば一対の第2重合部9それぞれのX方向両端をY方向に押し込んで(図中、矢印Sで示す)変形させ、第2重合部9のX方向中央を膨出変形させたり、図示しないけれども、第2重合部9のX方向両端ではなく中央を押し込んで変形させ、第2重合部9のX方向両端が迫り出すように変形させることでも、エアバッグクッション1の収容形態を様々に変化させることができる。
【0059】
このように収容形態にしたエアバッグクッション1を、姿勢変化に対するフレキシビリティに富むようにすることができる。
【0060】
これにより、図12に示すように、エアバッグクッション1を収容するハウジング13が8辺の壁部13aからなる周囲壁で区画形成される場合など、このようなハウジング13内方にエアバッグクッション1が収容されたとき、第2重合部9のフレキシビリティに富んだ変形による姿勢変化により、エアバッグクッション1は、各壁部13a及びこれら壁部13a同士がなす隅角部13bに接触可能に変形自在とすることができる。
【0061】
従って、エアバッグクッション1を収容するハウジング13の形態に倣うように変形させることができるので、ハウジング13内に柔らかいタッチで収容することができる。
【0062】
これにより、収納性に優れ良好な製造性を確保できると共に、ハウジング13へのきつい押し付けなどによって展開動作が遅くなってしまうなどの不具合を防止でき、所望の展開膨張性能の保証を確保することができる。
【0063】
また、開口5及びその近辺の厚さが薄いので、容易に後付けで、開口5にインフレータ4を取り付けることができ、インフレータ4が、エアバッグクッション1の巻き取りなどの重合作業に際して、支障となることを避けることができる。
【0064】
図13には、図5で説明したエアバッグクッション1のY方向への重合の変形例が示されている。
【0065】
第1重合部8を形成した後のエアバッグクッション1の形態で、Y方向への巻き取り等の最初の部分(外周縁1a周辺)が尖っている場合などには、折り込みa,bを設けて尖りを開口5側へ丸めるようにまとめることが好ましい。
【0066】
これにより、折り込みa,bを設けずに、ただ巻き取り等を行う場合に比して、形成される第2重合部9の厚みを減らすことができ、収容形態をコンパクト化することができて、製造性を向上することができる。
【0067】
以上に述べた車両用エアバッグ装置及びその製造方法は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施形態例も、各種の方法で実施または遂行できる。特に、本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさおよび構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
1 エアバッグクッション
2 第1パネル
3 第2パネル
4 インフレータ
5 開口
8 第1重合部
9 第2重合部
10 第1反転部
11 第2反転部
13 ハウジング
13a 壁部
13b 隅角部
Z 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13