特許第6986049号(P6986049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986049
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20211213BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20211213BHJP
   B60L 50/71 20190101ALI20211213BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20211213BHJP
   B60K 8/00 20060101ALI20211213BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20211213BHJP
【FI】
   H01M8/04 H
   H01M8/2475
   H01M8/04 Z
   H01M8/04 J
   B60L50/71
   B60K1/04 Z
   B60K8/00
   !H01M8/10 101
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-106703(P2019-106703)
(22)【出願日】2019年6月7日
(65)【公開番号】特開2020-202045(P2020-202045A)
(43)【公開日】2020年12月17日
【審査請求日】2020年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】内藤 秀晴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正裕
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−122502(JP,A)
【文献】 特開2008−041334(JP,A)
【文献】 特開2018−181778(JP,A)
【文献】 特開2013−244941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/2495
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 58/40
B60K 1/04
B60K 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電セルを水平方向に複数積層した積層体を収納するスタックケースと、燃料電池用補機を収納する補機ケースと、を備える燃料電池システムであって、
水平方向に隣接する前記スタックケース及び前記補機ケースの内部が隔壁により区画され、
前記補機ケースの上部には、前記補機ケースの内部を補機側排気ダクトに連通させる補機側連通孔が設けられ、
前記隔壁には、前記補機ケースの内部側に突出して鉛直方向に延在する複数のリブが設けられ
前記補機ケースの内部のガスは、前記補機側連通孔を介して前記補機側排気ダクトに向かって排出される、燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムにおいて、
前記補機側連通孔は、前記隔壁の上端よりも上側に配置される、燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池システムにおいて、
前記補機側連通孔は、前記補機ケースの上面を構成する傾斜部の上部に設けられている、燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の燃料電池システムにおいて、
前記スタックケースの上部には、前記スタックケースの内部をスタック側排気ダクトに連通させるスタック側連通孔が設けられ、
前記隔壁の上部には、前記補機ケースの内部と前記スタックケースの内部とを連通させる換気連通口が設けられる、燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の燃料電池システムにおいて、
前記隔壁は、前記補機ケースの一部であり、
前記積層体には、積層方向の一端側に設けられたエンドプレートと、他端側に設けられた前記隔壁との間で締付荷重が付与される、燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1〜の何れか1項に記載の燃料電池システムにおいて、
前記隔壁は、前記補機ケースの内部側の面に、鉛直方向に延在する複数の溝が互いに間隔を置いて設けられ、
前記リブは、互いに隣接する前記溝同士の間に形成される、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電セルを複数積層した積層体を収納するスタックケースと、燃料電池用補機を収納する補機ケースとを備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の一方にアノード電極が配設され、他方にカソード電極が配設された電解質膜・電極構造体(MEA)を備える。電解質膜・電極構造体をセパレータで挟持することにより、発電セルが構成され、複数個の発電セルを積層することにより、積層体が構成される。
【0003】
この種の積層体を備える燃料電池システムは、例えば、燃料電池車両等の搭載空間に搭載して用いることができる。この場合、特に水素ガスである燃料ガスが積層体等から漏洩したとしても、該漏洩燃料ガスが車両内の搭載空間等に留まることを抑制する必要がある。このため、積層体を収納するスタックケースの内部に排気ダクトを連通させ、スタックケース内の漏洩燃料ガスを、排気ダクトを介して車両の外部等の所定の場所に導出する。このようにしてスタックケース内を換気することで、搭載空間等に漏洩燃料ガスが留まることを抑制できる。
【0004】
ところで、例えば、特許文献1に示すように、燃料電池システムでは、燃料ガスのインジェクタ等を含む燃料電池用補機を収納する補機ケースがスタックケースに隣接して設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−4352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように燃料電池用補機を収納する補機ケースを備える燃料電池システムでは、補機ケースの内部も良好に換気する必要がある。
【0007】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、補機ケースの内部を良好に換気できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、発電セルを水平方向に複数積層した積層体を収納するスタックケースと、燃料電池用補機を収納する補機ケースと、を備える燃料電池システムであって、水平方向に隣接する前記スタックケース及び前記補機ケースの内部が隔壁により区画され、前記補機ケースの上部には、前記補機ケースの内部を補機側排気ダクトに連通させる補機側連通孔が設けられ、前記隔壁には、前記補機ケースの内部側に突出して鉛直方向に延在する複数のリブが設けられ、前記補機ケースの内部のガスは、前記補機側連通孔を介して前記補機側排気ダクトに向かって排出される。
【発明の効果】
【0009】
この燃料電池システムでは、補機ケース内に漏洩燃料ガスが生じた場合、該漏洩燃料ガスは、互いに隣接するリブ同士の間に形成される溝を流通することにより、リブの延在方向(鉛直方向)に沿って補機ケースの上部の補機側連通孔へと導かれる。これによって、補機ケース内の漏洩燃料ガスを補機側排気ダクトに効果的に排出して、補機ケースの内部を良好に換気することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムを備えた燃料電池車両の概略斜視図である。
図2】発電セルの分解斜視図である。
図3】ケースユニットの分解斜視図である。
図4】隔壁の補機ケース内部側の正面図である。
図5図4のV−V線矢視断面図である。
図6】ケースユニットの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る燃料電池システムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の図において、同一又は同様の機能及び効果を奏する構成要素に対しては同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0012】
本実施形態では、図1に示すように、燃料電池システム10が、燃料電池電気自動車である燃料電池車両12に搭載される場合を例に挙げて説明するが、特にこれに限定されるものではなく、燃料電池システム10は種々の搭載体(不図示)に搭載して用いることができる。以下では、特に説明しない限り、燃料電池車両12の運転席に着座した乗員(不図示)から見た方向を基準に、前後方向(矢印A方向)、左右方向(矢印B方向)、上下方向(鉛直方向、矢印C方向)を説明する。
【0013】
図1に示すように、燃料電池システム10は、燃料電池車両12のダッシュボード14の前方(矢印AF側)に形成されたフロントルーム(モータルーム)16内に配設されている。また、燃料電池システム10は、複数の発電セル18(図2)が左右方向(矢印B方向)に積層されてなる積層体20と、積層体20を収納するスタックケース22と、燃料電池用補機24を収納する補機ケース26とを備える。
【0014】
本実施形態に係る燃料電池システム10は、燃料電池車両12に対して、積層体20の積層方向が左右方向(矢印B方向、水平方向)に沿うように配置されることとする。しかしながら、特にこれに限定されるものではなく、例えば、燃料電池システム10は、積層体20の積層方向が前後方向(矢印A方向、水平方向)に沿うように燃料電池車両12に搭載されてもよい。
【0015】
図1に示すように、積層体20の積層方向の左端(矢印BL側端)には、第1ターミナルプレート28と、第1絶縁プレート30とが外方に向かって順次積層される。積層体20の積層方向の右端(矢印BR側端)には、第2ターミナルプレート32と、第2絶縁プレート34とが外方に向かって順次積層される。以下では、積層体20と、第1ターミナルプレート28及び第2ターミナルプレート32と、第1絶縁プレート30及び第2絶縁プレート34とを上記のように積層した構成をスタック36ともいう。
【0016】
図2に示すように、発電セル18は、電解質膜・電極構造体38と、電解質膜・電極構造体38を両側から挟持する第1セパレータ40及び第2セパレータ42とを有する。電解質膜・電極構造体38は、電解質膜44と、電解質膜44を挟持するカソード電極46及びアノード電極48とを備える。電解質膜・電極構造体38の外周部には、フィルム状の樹脂枠部材50が全周に亘って設けられている。第1セパレータ40及び第2セパレータ42は、金属セパレータ又はカーボンセパレータにより構成される。
【0017】
矩形状の発電セル18の長手方向(矢印A方向)の一端縁部(矢印AR側端部)には、積層方向(矢印B方向)に互いに連通して、酸化剤ガス入口連通孔52a、冷却媒体入口連通孔54a及び燃料ガス出口連通孔56bが、鉛直方向(矢印C方向)に配列して設けられる。酸化剤ガス入口連通孔52aには、酸化剤ガスとして、例えば、酸素含有ガスが供給される。冷却媒体入口連通孔54aは、冷却媒体が供給される。燃料ガス出口連通孔56bからは、燃料ガスとして、例えば、水素含有ガスが排出される。
【0018】
発電セル18の長手方向の他端縁部(矢印AF側端部)には、積層方向に互いに連通して、燃料ガスが供給される燃料ガス入口連通孔56a、冷却媒体を排出する冷却媒体出口連通孔54b及び酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス出口連通孔52bが、鉛直方向に配列して設けられる。
【0019】
第1セパレータ40の電解質膜・電極構造体38に向かう面には、酸化剤ガス入口連通孔52aと酸化剤ガス出口連通孔52bとに連通する酸化剤ガス流路58が設けられる。第2セパレータ42の電解質膜・電極構造体38に向かう面には、燃料ガス入口連通孔56aと燃料ガス出口連通孔56bとに連通する燃料ガス流路60が設けられる。
【0020】
互いに隣接する発電セル18を構成する第1セパレータ40と第2セパレータ42との間には、冷却媒体入口連通孔54aと冷却媒体出口連通孔54bとを連通する冷却媒体流路62が設けられる。第1セパレータ40と第2セパレータ42とには、それぞれ樹脂枠部材50に当接する弾性を有するシール部材64が、一体的又は個別に設けられる。シール部材64の材料としては、例えば、シリコンゴムや、ニトリルゴム等が挙げられる。第1セパレータ40及び第2セパレータ42には、シール部材64に代えて、樹脂枠部材50に向かって突出した弾性を有するビードシール(不図示)がプレス成形により一体で設けられてもよい。
【0021】
図1に示すように、スタックケース22及び補機ケース26は、左右方向(矢印B方向)に隣接するように接合されてケースユニット66を構成している。ケースユニット66は平面視で略矩形状であり、その長辺が車両幅方向(積層体20の積層方向、矢印B方向)に沿って延在する。
【0022】
図3に示すように、スタックケース22は、スタック36(積層体20)の外周面を覆う周壁ケース68と、スタック36の積層方向の右端(矢印BR側端)に配設されたエンドプレート70とを含んで形成される。周壁ケース68は、平面視で矩形状のケース本体72と、後方パネル74とを有する。
【0023】
ケース本体72は、左側(矢印BL側)に形成された矩形状の左開口部76と、右側(矢印BR側)に形成された矩形状の右開口部78と、後側(矢印AR側)に形成された矩形状の後方開口部80とを有する箱型である。また、ケース本体72の上壁72aには、その右端側(矢印BR側)の端部における前後方向(矢印A方向)の両端側にスタック側連通孔82がそれぞれ貫通形成されている。つまり、ケース本体72の上壁72aの右側の角部にスタック側連通孔82がそれぞれ設けられている。
【0024】
後方パネル74は、後方開口部80を閉塞するようにケース本体72にボルト84により接合される。ケース本体72と後方パネル74との間には、後方開口部80の外周に沿って、弾性材料からなるシール部材86が介装されている。なお、後方パネル74は、ケース本体72と別部品ではなく、ケース本体72と一体に構成されてもよい。
【0025】
エンドプレート70は、右開口部78を閉塞するようにケース本体72にボルト84により接合されることで、ケース本体72内のスタック36の右端部(矢印BR側端部)に当接する。ケース本体72とエンドプレート70との間には、右開口部78の外周に沿って、弾性材料からなるシール部材86が介装されている。エンドプレート70は、前後方向(矢印A方向)を長手方向とする矩形板状である。
【0026】
図1に示すように、補機ケース26は、燃料電池用補機24を収納して保護するための保護ケースである。補機ケース26内には、燃料電池用補機24として、水素系補機88が収納されている。水素系補機88は、インジェクタ88a、エジェクタ88b、燃料ガスポンプ88c、バルブ類(図示せず)等を有する。
【0027】
補機ケース26は、具体的には、図3に示すように、一端が開口し、その開口周縁部にフランジ90a、92aがそれぞれ設けられた箱型の第1ケース部材90及び第2ケース部材92を有する。第1ケース部材90と第2ケース部材92は互いのフランジ90a、92a同士がボルト止めされることによって一体化される。このようにして一体化された第1ケース部材90と第2ケース部材92との間に、燃料電池用補機24(図1参照)を収納する補機ケース26の内部空間(以下、「補機収納空間94」という)が形成されている。
【0028】
図3及び図6に示すように、第2ケース部材92の上部には、補機収納空間94の内部と外部とを連通する補機側連通孔96が貫通形成されている。補機側連通孔96は、第2ケース部材92の上面を構成する傾斜部98aの上部に設けられている。
【0029】
図3に示すように、具体的に、第2ケース部材92の上部は、上方に向う突形状を構成する複数(本実施形態では3個)の傾斜部98aを有する。これらの複数の傾斜部98aは、第1ケース部材90側に向かって鉛直方向に高くなるように傾斜している。また、複数の傾斜部98aが集合する頂部に、補機側連通孔96が設けられている。補機側連通孔96は、第2ケース部材92において、左端側(矢印BL側)の斜め上方に向けて開口している。
【0030】
図3に示すように、第1ケース部材90の上部は、上方に向かう突形状を構成する複数(本実施形態では3個)の傾斜部98bを有し、複数の傾斜部98bは、第2ケース部材92側に向かって鉛直方向に高くなるように傾斜している。このため、補機ケース26の上部(第1ケース部材90及び第2ケース部材92の上部)は、積層体20の積層方向(矢印B方向、水平方向)から見たとき、及び車両前後方向(矢印A方向)から見たときの何れにおいても、逆V字形状(三角屋根形状)となっている。
【0031】
第1ケース部材90の右端(矢印BR側端)には、補機ケース26の一部として隔壁100が設けられている。図4図6に示すように、隔壁100の左端側(矢印BL側)には、補機ケース26の内部側(補機収納空間94側)に突出して鉛直方向(矢印C方向)に延在する複数のリブ102が設けられている。複数のリブ102は、水平方向に互いに間隔を置いて形成され、隔壁100を補強する。本実施形態では、図5に示すように、隔壁100の左端側(補機ケース26の内部側)の面に、鉛直方向に延在する複数の溝104が互いに水平方向に間隔を置いて設けられ、互いに隣接する溝104同士の間にリブ102がそれぞれ形成されている。換言すると、互いに隣接するリブ102同士の間に溝104がそれぞれ形成されている。複数のリブ102の各々の上端は、第1ケース部材90の高さ方向(鉛直方向)中心位置よりも高い位置に設けられている。複数のリブ102の各々の下端は、第1ケース部材90の高さ方向(鉛直方向)中心位置よりも低い位置に設けられている。
【0032】
図3及び図6に示すように、隔壁100の右端側(矢印BR側)が、ケース本体72の左開口部76を閉塞するように、隔壁100とケース本体72とはボルト84により接合される。これによって、隔壁100の右端側は、ケース本体72内に配設されたスタック36(図1図3)の左端部(矢印BL側端部)に当接し、スタック36の左端側のエンドプレートの機能を果たす。つまり、スタック36には、その右端側に設けられたエンドプレート70と、左端側に設けられた隔壁100との間で積層方向の締付荷重が付与される。なお、図6では、ケースユニット66内に配設されたスタック36や燃料電池用補機24等の構成要素の図示を省略している。
【0033】
また、補機ケース26の隔壁100はスタックケース22と共有され、該隔壁100と、周壁ケース68と、エンドプレート70とによって、スタック36(積層体20)を収納するスタックケース22の内部空間(以下、「スタック収納空間106」という)が形成されている。
【0034】
図1及び図6に示すように、上記のようにして隔壁100がケース本体72に接合されることで、補機ケース26の右側(矢印BR側)にスタックケース22が接合されたケースユニット66が構成される。このケースユニット66では、隔壁100よりも右側にスタック収納空間106が形成されるとともに、隔壁100よりも左側に補機収納空間94が形成される。すなわち、左右方向(積層方向、矢印B方向、水平方向)に隣接するスタックケース22及び補機ケース26の内部が隔壁100により区画される。
【0035】
図3及び図4に示すように、隔壁100の上部には、スタック収納空間106と補機収納空間94とを連通させる複数(本実施形態では3個)の換気連通口108が設けられている。また、隔壁100には、積層体20に設けられた酸化剤ガス入口連通孔52a、酸化剤ガス出口連通孔52b、燃料ガス入口連通孔56a、燃料ガス出口連通孔56b、冷却媒体入口連通孔54a及び冷却媒体出口連通孔54b(図2参照)にそれぞれ接続される接続配管(図示せず)を通すための例えば2個の縦長形状の配管用開口部110が形成されている。
【0036】
隔壁100とケース本体72との間には、換気連通口108及び配管用開口部110よりも外側にシール部材86が配置されている。なお、図6では、隔壁100とケース本体72との間に配設されるシール部材86の図示を省略している。
【0037】
図3に示すように、ケースユニット66では、エンドプレート70の下部と、後方パネル74の下部と、補機ケース26の側壁の下部とのそれぞれに貫通形成された換気孔112を介して、該ケースユニット66の内部(スタック収納空間106及び補機収納空間94)に空気を流入させることが可能になっている。なお、図1では、換気孔112の図示を省略している。
【0038】
図1に示すように、ケースユニット66のスタック側連通孔82には、スタック側排気ダクト114がそれぞれ接続されている。つまり、スタック側連通孔82は、スタックケース22の内部(スタック収納空間106)をスタック側排気ダクト114に連通させる。また、ケースユニット66の補機側連通孔96には、補機側排気ダクト116が接続されている。つまり、補機側連通孔96は、補機ケース26の内部(補機収納空間94)を補機側排気ダクト116に連通させる。
【0039】
スタック側排気ダクト114及び補機側排気ダクト116のそれぞれは、連結排気ダクト118に接続されている。連結排気ダクト118の左端(矢印BL側端部)は、燃料電池車両12の左側フェンダー部120Lに設けられた左側排気口122Lに接続される。また、連結排気ダクト118の右端(矢印BR側端部)は、燃料電池車両12の右側フェンダー部120Rに設けられた右側排気口122Rに接続される。つまり、連結排気ダクト118は、左側排気口122L及び右側排気口122Rを介して、燃料電池車両12の外部に連通する。
【0040】
このため、積層体20や燃料電池用補機24等から漏洩燃料ガスが生じた場合、該漏洩燃料ガスは、スタック収納空間106及び補機収納空間94の少なくとも一方と、スタック側排気ダクト114及び補機側排気ダクト116の少なくとも一方と、連結排気ダクト118とを介して燃料電池車両12の外部に排出されるようになっている。
【0041】
上記のように構成される燃料電池システム10の動作について、以下に説明する。燃料電池車両12では、その運転時等に燃料電池システム10による発電が行われる。この場合、上記の接続配管を介してスタック36の燃料ガス入口連通孔56a(図2)に燃料ガスが供給され、酸化剤ガス入口連通孔52a(図2)に酸化剤ガスが供給され、冷却媒体入口連通孔54a(図2)に冷却媒体が供給される。
【0042】
図2に示すように、燃料ガス入口連通孔56aに供給された燃料ガスは、第2セパレータ42の燃料ガス流路60に導入され、アノード電極48に沿って流通する。酸化剤ガス入口連通孔52aに供給された酸化剤ガスは、第1セパレータ40の酸化剤ガス流路58に導入され、カソード電極46に沿って流通する。
【0043】
電解質膜・電極構造体38では、アノード電極48に供給される燃料ガスと、カソード電極46に供給される酸化剤ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。この電力を利用して燃料電池車両12(図1)が走行すること等が可能となる。電気化学反応で消費されなかった残余の燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔56bから排出され、残余の酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔52bから排出される。
【0044】
一方、冷却媒体入口連通孔54aに供給された冷却媒体は、冷却媒体流路62を流通することで、電解質膜・電極構造体38を冷却した後、冷却媒体出口連通孔54bから排出される。
【0045】
図1に示すように、ケースユニット66の内部では、積層体20(スタック36)や燃料電池用補機24等から水素含有ガス等の燃料ガスが漏洩する場合がある。これらの漏洩燃料ガスは、空気よりも軽く、ケースユニット66の上方に向かい易い。
【0046】
このため、図6に示すように、ケースユニット66の補機収納空間94内の漏洩燃料ガスは、第2ケース部材92の上部の傾斜部98aに設けられた補機側連通孔96を介して、図1の補機側排気ダクト116に流入する。この際、図4図6に示すように、隔壁100の補機収納空間94側には、鉛直方向に沿って延在する複数のリブ102が設けられている。このため、漏洩燃料ガスは、互いに隣接するリブ102同士の間に形成される溝104を流通することにより、リブ102の延在方向に沿って補機ケース26の上部の補機側連通孔96(図4図6)へと導かれる。
【0047】
また、例えば、燃料電池車両12(図1)の傾斜時等には、図6に示すように、補機収納空間94内の漏洩燃料ガスは、隔壁100の上部に設けられた換気連通口108を通過してスタック収納空間106へと流入することも可能である。スタック収納空間106に流入した漏洩燃料ガスは、図1に示すように、ケース本体72の上壁72aに設けられたスタック側連通孔82を介してスタック側排気ダクト114に流入する。この場合も、図4及び図6に示すように、補機収納空間94の漏洩燃料ガスは、互いに隣接するリブ102同士の間に形成される溝104を流通することにより、リブ102の延在方向に沿って隔壁100の上部に設けられた換気連通口108へと導かれる。
【0048】
図1に示すように、ケースユニット66のスタック収納空間106内の漏洩燃料ガスは、スタック側連通孔82を介してスタック側排気ダクト114に流入する。また、例えば、燃料電池車両12の傾斜時等には、図6に示すように、スタック収納空間106内の漏洩燃料ガスは、隔壁100の上部に設けられた換気連通口108を通過して補機収納空間94へと流入することも可能である。補機収納空間94に流入した漏洩燃料ガスは、図1に示すように、補機側連通孔96を介して補機側排気ダクト116に流入する。
【0049】
スタック側排気ダクト114及び補機側排気ダクト116のそれぞれは、連結排気ダクト118に連通している。このため、スタックケース22及び補機ケース26の内部(スタック収納空間106及び補機収納空間94)の漏洩燃料ガスを、連結排気ダクト118を通じて燃料電池車両12の外部に導出し、スタックケース22及び補機ケース26の内部を換気することが可能となる。
【0050】
以上から、本実施形態に係る燃料電池システム10では、補機ケース26内に漏洩燃料ガスが生じたとしても、該漏洩燃料ガスを、リブ102の延在方向(鉛直方向)に沿って補機ケース26の上部の補機側連通孔96へと導くことができる。これによって、補機ケース26内の漏洩燃料ガスを補機側排気ダクト116に効果的に排出して、補機ケース26の内部を良好に換気することができる。
【0051】
上記の実施形態に係る燃料電池システム10では、スタックケース22の上部には、スタックケース22の内部をスタック側排気ダクト114に連通させるスタック側連通孔82が設けられ、隔壁100の上部には、補機ケース26の内部とスタックケース22の内部とを連通させる換気連通口108が設けられることとした。
【0052】
この場合、図1に示すように、スタック側連通孔82及びスタック側排気ダクト114を介してスタックケース22の内部を良好に換気できる。また、図6に示すように、補機ケース26内の漏洩燃料ガスを、リブ102の延在方向に沿って換気連通口108に導いてスタックケース22内のスタック収納空間106へと流入させることで、該スタック収納空間106を通じて図1のスタック側排気ダクト114に排出することができる。さらに、図6に示すように、スタックケース22内の漏洩燃料ガスを、換気連通口108から補機ケース26内へと流入させることで、補機収納空間94を通じて図1の補機側排気ダクト116に排出することができる。これらによって、補機ケース26及びスタックケース22の両方の内部(補機収納空間94及びスタック収納空間106)を良好に換気できる。
【0053】
上記の実施形態に係る燃料電池システム10では、隔壁100は、補機ケース26の一部であり、積層体20には、積層方向の一端側に設けられたエンドプレート70と、他端側に設けられた隔壁100との間で締付荷重が付与されることとした。この場合、隔壁100がエンドプレートの役割を果たすとともに、補機ケース26の一部から構成されることで、燃料電池システム10の部品点数を削減したり、燃料電池システム10を軽量化したりすることができる。
【0054】
上記の実施形態に係る燃料電池システム10では、隔壁100は、補機ケース26の内部側の面に、鉛直方向に延在する複数の溝104が互いに間隔を置いて設けられ、リブ102は、互いに隣接する溝104同士の間に形成されることとした。このようにしてリブ102を設けることで、漏洩燃料ガスを補機側連通孔96や換気連通口108に良好に導くことができる。しかも、溝104を設ける分、隔壁100の軽量化を図っても、リブ102により隔壁100の強度を維持することが可能になる。
【0055】
なお、複数のリブ102は、補機ケース26の内部側に突出し、全体として鉛直方向に沿って延在していればよい。このため、各リブ102は、鉛直方向に対して傾斜していてもよいし、湾曲形状であってもよい。また、複数のリブ102は、互いに隣接する溝104同士の間に形成されることに限定されるものではなく、例えば、平面状の隔壁100から補機ケース26の内部側に突出して鉛直方向に延在してもよい。さらに、複数のリブ102は、隔壁100と同一部材から形成されてもよいし、別部材から形成された後に一体化されてもよい。
【0056】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0057】
例えば、上記の実施形態では、スタックケース22の左端に補機ケース26を配設したが、スタックケース22の右端に補機ケース26を配設してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…燃料電池システム 18…発電セル
20…積層体 22…スタックケース
24…燃料電池用補機 26…補機ケース
36…スタック 66…ケースユニット
70…エンドプレート 82…スタック側連通孔
94…補機収納空間 96…補機側連通孔
100…隔壁 102…リブ
104…溝 106…スタック収納空間
108…換気連通口 114…スタック側排気ダクト
116…補機側排気ダクト 118…連結排気ダクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6