(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は第1実施の形態におけるスパークプラグ10の部分断面図である。
図2はスパークプラグ10の先端付近を拡大したスパークプラグ10の部分断面図である。
図1では、紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という(
図2から
図6においても同じ)。
図1には、スパークプラグ10の先端側の部位の軸線Oを含む断面が図示されている。
図1に示すようにスパークプラグ10は、絶縁体11、中心電極16及び主体金具20を備えている。
【0012】
図2に示すように絶縁体11は、軸線Oに沿う軸孔12が形成された略円筒状の部材であり、機械的特性や高温下の絶縁性に優れるアルミナ等のセラミックスにより形成されている。絶縁体11は、絶縁体11の先端13を含む先端部14と、先端部14の外周に連なり径方向外側に突出する段部15と、を備えている。本実施形態では、先端部14及び段部15は円錐状の外周面をもつ。軸線Oに対する先端部14の外周面の傾斜角は、軸線Oに対する段部15の外周面の傾斜角よりも小さい。
【0013】
絶縁体11の軸孔12の先端側には中心電極16が配置されている。中心電極16は、導電性を有する金属材料(例えばNi基合金等)に芯材が埋設された棒状の部材である。芯材を省略することは可能である。中心電極16の先端17は、軸孔12から突出している。絶縁体11の先端13は、中心電極16の先端17よりも後端側に位置する。
【0014】
中心電極16は、軸孔12内で端子金具18と電気的に接続されている。端子金具18は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具18は絶縁体11の後端に固定されている。
【0015】
主体金具20は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具20は絶縁体11の外周に配置される。主体金具20の内周には、径方向内側に突出する棚部21が設けられている。棚部21は、絶縁体11の段部15よりも先端側に配置される。棚部21は、後端側を向く環状の後端向き面22と、先端側を向く環状の先端向き面23と、先端向き面23と後端向き面22とを接続する環状の接続面24と、を備えている。
【0016】
本実施形態では、棚部21の後端向き面22及び接続面24は、先端側に向かうにつれて縮径する円錐面である。軸線Oに対する後端向き面22の傾斜角は、軸線Oに対する接続面24の傾斜角よりも大きい。棚部21の先端向き面23は、軸線Oにほぼ垂直な面である。従って、軸線Oを含む断面における、棚部21の先端向き面23と接続面24とのなす角は鋭角である。
【0017】
棚部21の後端向き面22と絶縁体11の段部15との間に円環状のパッキン25が介在する。パッキン25は、主体金具20を構成する金属材料よりも軟質の金属材料で作られた円環状の部材である。棚部21の後端向き面22は、パッキン25を介して絶縁体11の段部15を係止する。
【0018】
棚部21の接続面24と絶縁体11との間には、径方向の隙間がある。棚部21の接続面24と絶縁体11との間の距離は、棚部21の後端向き面22と絶縁体11の段部15との間の距離(パッキン25の厚さに等しい)よりも長い。棚部21の接続面24と先端向き面23とがつながる角26は、絶縁体11の先端13よりも先端側に位置する。角26は先端向き面23の全周に亘って連続している。角26は、中心電極16の先端17よりも後端側に位置する。
【0019】
主体金具20は、棚部21の先端側に先端筒状部27が接続されている。先端筒状部27は、内部に中心電極16の先端17が位置する略円筒状の部位である。本実施形態では、先端筒状部27の内径は、先端筒状部27の軸線方向のおよそ全長に亘って同一である。先端筒状部27の先端面28は、軸線方向の先端側を向く円環状の面である。先端面28は中心電極16の先端17よりも先端側に位置する。先端筒状部27の内周面29は、R面30を介して、棚部21の先端向き面23に全周がつながっている。R面30は、先端筒状部27の内周面29と棚部21の先端向き面23とをつなぐ丸面または楕円面である。R面30の曲率半径は任意の大きさに設定される。
【0020】
図1に戻って説明する。主体金具20は、棚部21よりも後端側に、径方向外側に向けて張り出す円環状の座部31が設けられている。主体金具20は、先端筒状部27から座部31の先端までの外周面に、おねじ32が形成されている。エンジン(図示せず)のねじ穴におねじ32が螺合することにより、スパークプラグ10はエンジンに取り付けられる。座部31よりも後端側に設けられた主体金具20の工具係合部33は、エンジンのねじ穴におねじ32をねじ込むときに、レンチ等の工具を係合させる部位である。
【0021】
エンジン(図示せず)に取り付けられたスパークプラグ10の端子金具18と主体金具20との間に電位差が生じると、棚部21(
図2参照)の接続面24と先端向き面23とがつながる角26と中心電極16との間に、主に絶縁体11の先端部14の表面(特に絶縁体11の先端13)に沿う火花放電(いわゆる沿面放電)が生じる。絶縁体11のうち段部15よりも先端側の先端部14の外周面は、燃焼室内のガスに曝される。
【0022】
先端筒状部27の内周面29に沿って後端側へ流れる燃焼ガスは、R面30に導かれて棚部21の先端向き面23に当たり、燃焼ガスの流れが、先端側へ向かう方向に変わる。棚部21の先端向き面23と接続面24とがつながる角26は絶縁体11の先端13よりも先端側に位置するので、先端向き面23から先端側へ向かって流れる燃焼ガスが絶縁体11の先端部14に当たり難くなる。その結果、燃焼ガスに運ばれたカーボンが絶縁体11の先端部14に堆積し難くなるので、耐汚損性を向上できる。
【0023】
また、絶縁体11の先端部14の表面にカーボンが堆積したときは、火花放電は、絶縁抵抗が低下した絶縁体11の先端部14と主体金具20の棚部21との間を飛ぶ。その結果、先端部14の表面に付着したカーボンが火花放電によって焼失する。よって、絶縁体11の絶縁抵抗の低下をさらに抑制できる。
【0024】
図3を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では、先端筒状部27の内径が、先端筒状部27の軸線方向のおよそ全長に亘って同一である場合について説明した。これに対し第2実施形態では、先端筒状部42が、後端側に向かうにつれて先端筒状部42の内径が拡大する拡大部45を備える場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図3は第2実施の形態におけるスパークプラグ40の部分断面図である。
図3は、
図2で示した部分と同様の部分が拡大されている(
図4から
図6においても同じ)。
【0025】
スパークプラグ40は、絶縁体11、中心電極16及び主体金具41を備えている。主体金具41は、棚部21の先端側に略円筒状の先端筒状部42が接続されている。先端筒状部42の内部に中心電極16の先端17が位置する。主体金具41は、先端筒状部42から座部31(
図1参照)の先端までの外周面に、おねじ32が形成されている。
【0026】
先端筒状部42の内周面43は、C面44を介して棚部21の先端向き面23に全周がつながっている。C面44は、内周面43と先端向き面23とをつなぐ角面である。C面44は、先端向き面23に交わる角度が45°であるものに限られない。
【0027】
先端筒状部42の内周面43に沿って後端側へ流れるガスは、C面44に導かれて棚部21の先端向き面23に当たり、ガスの流れが、先端側へ向かう方向に変わる。棚部21の先端向き面23と接続面24とがつながる角26は絶縁体11の先端13よりも先端側に位置するので、先端向き面23から先端側へ向かって流れるガスが絶縁体11の先端部14に当たり難くなる。その結果、ガスに運ばれたカーボンが絶縁体11の先端部14に堆積し難くなるので、耐汚損性を向上できる。
【0028】
本実施形態では、先端筒状部42は、後端側に向かうにつれて内径が拡大する拡大部45を備えている。拡大部45の内周面は、先端筒状部42の内周面43の全体を占めている。スパークプラグ40は、拡大部45において、先端筒状部42の内部を後端側に流れるガスの流速が低下する。これにより、拡大部45が無い場合に比べて、絶縁体11の先端部14と主体金具20の棚部21との間にガスが侵入し難くなる。その結果、ガスに運ばれたカーボンが絶縁体11の先端部14に堆積し難くなる。よって、耐汚損性をさらに向上できる。
【0029】
図4を参照して第3実施の形態について説明する。第2実施形態では、先端筒状部42のほぼ全長に亘って拡大部45が設けられる場合について説明した。これに対し第3実施形態では、先端筒状部52の軸線方向の全長の一部に拡大部56が設けられる場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図4は第3実施の形態におけるスパークプラグ50の部分断面図である。
【0030】
スパークプラグ50は、絶縁体11、中心電極16及び主体金具51を備えている。主体金具51は、棚部21の先端側に略円筒状の先端筒状部52が接続されている。先端筒状部52の内周面53は、R面54を介して棚部21の先端向き面23に全周がつながっている。主体金具51は、先端筒状部52から座部31(
図1参照)の先端までの外周面に、おねじ32が形成されている。
【0031】
本実施形態では、先端筒状部52は、先端側から後端側へ順に、第1部55、拡大部56、第2部57、第3部58がつながっている。第1部55は、先端筒状部52の先端面28を含む部位である。第1部55の内径は、第1部55の軸線方向の全長に亘って同一である。拡大部56の内径は、拡大部56の後端側へ向かうにつれて拡大している。拡大部56の軸線方向の長さは、第1部55の軸線方向の長さに比べて短い。
【0032】
第2部57の内径は、第1部55の内径よりも大きく、第2部57の軸線方向の全長に亘って同一である。第2部57の軸線方向の長さは、第1部55の軸線方向の長さよりも長い。第3部58の内径は、第3部58の後端側へ向かうにつれて縮小している。第3部58の軸線方向の長さは、拡大部56の軸線方向の長さにほぼ等しい。
【0033】
スパークプラグ50は、拡大部56において、先端筒状部52の内部を後端側に流れるガスの流速が低下するので、拡大部56が無い場合に比べて、絶縁体11の先端部14と主体金具20の棚部21との間にガスが侵入し難くなる。その結果、ガスに運ばれたカーボンが絶縁体11に堆積し難くなるので、耐汚損性をさらに向上できる。
【0034】
図5を参照して第4実施の形態について説明する。第4実施形態では、先端筒状部62を先端側から覆うキャップ部65を備える場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図5は第4実施の形態におけるスパークプラグ60の部分断面図である。
【0035】
スパークプラグ60は、絶縁体11、中心電極16、主体金具61及びキャップ部65を備えている。主体金具61は、棚部21の先端側に略円筒状の先端筒状部62が接続されている。先端筒状部62の先端面63は、径方向の外側の部位が、全周に亘って、軸線方向の先端側に向かって突出している。先端筒状部62の先端面63は、中心電極16の先端17よりも先端側に位置する。先端筒状部62の内周面64は、R面30を介して、棚部21の先端向き面23に全周がつながっている。主体金具61は、先端筒状部62から座部31(
図1参照)の先端までの外周面に、おねじ32が形成されている。
【0036】
キャップ部65は、先端筒状部62を先端側から覆う部材である。本実施形態では、キャップ部65はFe等を主成分とする金属材料によって半球状に形成されている。なお、キャップ部65の主成分元素はこれに限られるものではなく、他の元素を主成分とすることは当然可能である。他の元素としては、例えばNiやCuが挙げられる。
【0037】
キャップ部65の後端面66は、先端筒状部62の先端面63に突き当てられている。キャップ部65の後端面66は、径方向の内側の部位が、全周に亘って、軸線方向の後端側に向かって突出している。キャップ部65は、全周に亘って溶接により形成された溶融部(図示せず)によって、先端筒状部62に接合されている。キャップ部65には、キャップ部65を厚さ方向に貫通する貫通孔67が形成されている。本実施形態では、貫通孔67はキャップ部65に複数形成されている。貫通孔67は、キャップ部65に覆われた先端筒状部62の内部の副室68と燃焼室(図示せず)とを連通する。
【0038】
エンジン(図示せず)に取り付けられたスパークプラグ60には、エンジンのバルブ操作により、燃焼室から貫通孔67を通ってキャップ部65の内側の副室68に混合気が流入する。先端筒状部62の内周面64に沿って後端側へ流れるガス(混合気)は、R面30に導かれて棚部21の先端向き面23に当たり、ガスの流れが、先端側へ向かう方向に変わる。棚部21の先端向き面23と接続面24とがつながる角26は絶縁体11の先端13よりも先端側に位置するので、先端向き面23から先端側へ向かって流れるガスが絶縁体11の先端部14に当たり難くなる。その結果、ガスに運ばれたカーボンが絶縁体11の先端部14に堆積し難くなるので、耐汚損性を向上できる。
【0039】
スパークプラグ60は、主体金具61の棚部21と中心電極16との間の放電により、副室68に火炎核を生成する。火炎核が成長すると副室68の混合気に点火し混合気が燃焼する。その燃焼によって生じる膨張圧力により、スパークプラグ60は火炎を含むガス流を貫通孔67から燃焼室(図示せず)に噴射する。その火炎の噴流によって燃焼室内の混合気が燃焼する。よって、高速燃焼を実現できる。
【0040】
図6を参照して第5実施の形態について説明する。第1実施形態から第4実施形態では主体金具20,41,51,61と中心電極16との間に火花放電が生じる場合について説明した。これに対し第5実施形態では、接地電極91と中心電極76との間に火花放電が生じる場合について説明する。なお、第1実施形態または第4実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図6は第5実施の形態におけるスパークプラグ70の部分断面図である。スパークプラグ70は、絶縁体71、中心電極76、主体金具80及びキャップ部65を備えている。
【0041】
絶縁体71は、軸線Oに沿う軸孔72が形成された略円筒状のセラミック製の部材である。絶縁体71は、絶縁体71の先端73を含む先端部74と、先端部74の外周に連なり径方向外側に突出する段部75と、を備えている。本実施形態では、先端部74は、先端側に向かうにつれて外径が縮径する円錐部74aと、円錐部74aの後端側に連なり軸線方向の全長に亘って外径がほぼ同一の円筒部74bと、を備えている。段部75は円錐状の外周面をもつ。軸線Oに対する円錐部74aの外周面の傾斜角は、軸線Oに対する段部75の外周面の傾斜角よりも小さい。
【0042】
絶縁体71の軸孔72の先端側には中心電極76が配置されている。中心電極76は、導電性を有する金属材料(例えばNi基合金等)に芯材が埋設された棒状の部材である。芯材を省略することは可能である。中心電極76の先端77は、軸孔72から突出している。中心電極76は、先端77の太さが、軸孔72から突出する中心電極76の根元の太さよりも細い。絶縁体71の先端73は、中心電極76の先端77よりも後端側に位置する。中心電極76は軸孔72内で端子金具18(
図1参照)と電気的に接続されている。
【0043】
主体金具80は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具80は絶縁体71の外周に配置される。主体金具80の内周には、径方向内側に突出する棚部81が設けられている。棚部81は、絶縁体71の段部75よりも先端側に配置される。棚部81は、後端側を向く環状の後端向き面82と、先端側を向く環状の先端向き面83と、先端向き面83と後端向き面82とを接続する環状の接続面84と、を備えている。
【0044】
本実施形態では、棚部81の後端向き面82は、先端側に向かうにつれて縮径する円錐面である。接続面84は、全長に亘って直径がほぼ同一の円
筒面である。棚部81の先端向き面83は、軸線Oにほぼ垂直な面である。棚部81の後端向き面82と絶縁体71の段部75との間に円環状のパッキン25が介在する。棚部81の後端向き面82は、パッキン25を介して絶縁体71の段部75を係止する。
【0045】
棚部81の接続面84と絶縁体71の円錐部74aとの間には、先端側に向かうにつれて次第に大きくなる隙間が設けられている。棚部81の接続面84と先端向き面83とがつながる角86は、絶縁体71の先端73よりも先端側に位置する。角86は、中心電極76の先端77よりも後端側に位置する。
【0046】
主体金具80は、棚部81の先端側に先端筒状部87が接続されている。先端筒状部87は、内部に中心電極76の先端77が位置する略円筒状の部位である。本実施形態では、先端筒状部87の内径は、先端筒状部87の軸線方向の全長に亘って同一である。先端筒状部87の先端面88は、中心電極76の先端77よりも先端側に位置する。先端筒状部87の先端面88は、キャップ部65の後端面66が突き当てられている。
【0047】
キャップ部65は、全周に亘って溶接により形成された溶融部(図示せず)によって、先端筒状部87に接合されている。先端筒状部87の内周面89は円筒面をなす。内周面89は、R面30を介して棚部81の先端向き面83に全周がつながっている。主体金具80は、先端筒状部87から座部31(
図1参照)の先端までの外周面に、おねじ32が形成されている。本実施形態では、先端筒状部87の厚さ方向に貫通する穴90が、先端筒状部87のおねじ32の位置に形成されている。
【0048】
接地電極91は、接地電極91の先端部92が、中心電極76に対向する棒状の部材である。接地電極91は先端筒状部87の穴90に挿入された状態で、溶接により先端筒状部87に接合されている。接地電極91はPt等を主成分とする金属材料によって形成されている。接地電極91の主成分元素はこれに限られるものではなく、他の元素を主成分とすることは当然可能である。他の元素としては、例えばNiやIrが挙げられる。接地電極91の先端部92と中心電極76との間の距離は、主体金具80の棚部81の角86と中心電極76との間の距離よりも短い。
【0049】
エンジン(図示せず)に取り付けられたスパークプラグ70には、エンジンのバルブ操作により、燃焼室から貫通孔67を通ってキャップ部65の内側の副室68に混合気が流入する。先端筒状部87の内周面89に沿って後端側へ流れるガス(混合気)は、R面30に導かれて棚部81の先端向き面83に当たり、ガスの流れが、先端側へ向かう方向に変わる。棚部81の先端向き面83と接続面84とがつながる角86は絶縁体71の先端73よりも先端側に位置するので、先端向き面83から先端側へ向かって流れるガスが絶縁体71の先端部74に当たり難くなる。その結果、ガスに運ばれたカーボンが絶縁体71の先端部74に堆積し難くなるので、耐汚損性を向上できる。
【0050】
スパークプラグ70は、主体金具80に接続された接地電極91と中心電極76との間の放電(いわゆる空間放電)により、副室68に火炎核を生成する。火炎核が成長すると副室68の混合気に点火し混合気が燃焼する。その燃焼によって生じる膨張圧力により、スパークプラグ70は火炎を含むガス流を貫通孔67から燃焼室(図示せず)に噴射する。その火炎の噴流によって燃焼室内の混合気が燃焼するので、高速燃焼を実現できる。
【0051】
接地電極91の先端部92と中心電極76の先端77との間の放電により火炎核が生成されるので、火炎核のエネルギーが主体金具80や接地電極91に奪われ難い。消炎し難くできるので、着火性を向上できる。また、耐火花消耗性に優れる材料を接地電極91に採用することにより耐久性を向上できる。
【0052】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば先端筒状部27,42,52,62,87や棚部21,81の形状、キャップ部65の形状は一例である。これらは任意の形状に適宜設定される。
【0053】
実施形態では、先端筒状部27,42,52,62,87が、一体成形により主体金具20,41,51,61,80に設けられている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。主体金具20,41,51,61,80を複数の部材で作ることは当然可能である。例えば、棚部21,81の先端向き面23,83の位置で先端筒状部27,42,52,62,87を切り離した筒状の部材を準備し、その部材を溶接やねじ結合などにより棚部21,81の先端側に接合して、主体金具20,41,51,61,80を製造する。
【0054】
第1実施形態では、R面30を介して、先端筒状部27の内周面29と棚部21の先端向き面23とがつながる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。先端筒状部27の内周面29と棚部21の先端向き面23とを、C面を介してつなぐことは当然可能である。C面は、内周面29と先端向き面23とをつなぐ角面である。C面は、先端向き面23に交わる角度が45°であるものに限られない。これと同様に第3実施形態から第5実施形態においても、先端筒状部52,62,87の内周面53,64,89と棚部21,81の先端向き面23,83とをC面でつなぐことは当然可能である。
【0055】
第2実施形態では、C面44を介して、先端筒状部42の内周面43と棚部21の先端向き面23とがつながる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。先端筒状部42の内周面43と棚部21の先端向き面23とを、R面を介してつなぐことは当然可能である。R面は、内周面43と先端向き面23とをつなぐ丸面または楕円面である。R面の曲率半径の大きさは適宜設定される。
【0056】
実施形態では、棚部21,81の先端向き面23,83が、軸線Oに対してほぼ垂直に交わる平面である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、棚部21,81の先端向き面23,83を、軸線Oに斜めに交わる円錐面や球帯にすることは当然可能である。先端向き面23,83が円錐面や球帯の場合には、加工の容易さの観点から、径方向の内側に向かうにつれて後端側に傾くように先端向き面23,83が設けられているのが好ましい。
【0057】
第3実施形態では、第1部55と第2部57との間に拡大部56が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば第1部55を省略して、先端筒状部51の先端面28に拡大部56をつなぐことは当然可能である。同様に、第2部57を省略して拡大部56を第3部58につないだり、第3部58を省略して第2部57を先端向き面23につないだりすることは当然可能である。また、第2部57及び第3部58を省略して拡大部56を先端向き面23につなぐことは当然可能である。これらの場合も、拡大部56により、先端筒状部52の内部を後端側に流れるガスの流速を低下させることができる。これにより絶縁体11の先端部14と主体金具20の棚部21との間にガスが侵入し難くなるので、ガスに運ばれたカーボンが絶縁体11に堆積し難くなる。
【0058】
第4実施形態および第5実施形態では、主体金具61,80の先端筒状部62,87にキャップ部65が溶接されている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。キャップ部65を溶接する代わりに、先端にキャップ部が形成された筒状部材を準備し、これを主体金具61,80に接続して副室68を形成することは当然可能である。例えば、筒状部材は先端が閉じた筒状の部材であり、主体金具61,80のおねじ32に結合するめねじが内周面に形成されている。筒状部材の外周面には、エンジン(図示せず)のねじ穴に結合するおねじが形成されている。筒状部材のめねじを主体金具61,80のおねじ32に結合することにより、主体金具61,80の先端側にキャップ部が配置される。このキャップ部に貫通孔67が設けられる。
【0059】
なお、筒状部材を主体金具61,80に接続して主体金具61,80の先端側にキャップ部を配置する手段は、筒状部材の内周面のめねじを、主体金具61,80のおねじ32に結合するものに限らない。他の手段によって、キャップ部が設けられた筒状部材を主体金具に接続することは当然可能である。他の手段としては、例えば筒状部材と主体金具とを溶接等によって接合するものが挙げられる。筒状部材は、例えばニッケル基合金やステンレス鋼等の金属材料や窒化ケイ素等のセラミックスにより形成できる。
【0060】
第5実施形態では、キャップ部65で覆われた先端筒状部87に接地電極91が接合される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、キャップ部65に接地電極91を接合することは当然可能である。
【0061】
第1実施形態から第4実施形態では、主体金具20,41,51,61の棚部21と中心電極16との間に火花ギャップを形成する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、主体金具20,41,51,61の先端筒状部27,42,52,62に1つ又は複数の接地電極を接続して、その接地電極と中心電極16との間に火花ギャップを形成することは当然可能である。この場合に、接地電極と絶縁体11の先端部14との間の距離や接地電極と中心電極16との間の距離は適宜設定される。これらの距離の設定により、絶縁体11の先端部14と棚部21との間の放電、先端部14と接地電極との間の放電、及び、接地電極と中心電極16との間の放電の起こり易さを設定できる。例えば、通常のときは接地電極と中心電極16との間の火花放電により点火し、汚損したときは先端部14の表面に付着したカーボンを火花放電によって焼失するように各距離を設定すれば、絶縁低下をさらに抑制できる。