(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電解質溶液を還元する工程、および、前記精製電解質溶液を酸化する工程は、還元側および酸化側を有する電解質のみの電気化学セルを用いて行われ、前記電解質溶液が還元側にあり、前記精製電解質溶液が酸化側にある
請求項4に記載の方法。
前記負側電解質溶液として前記還元電解質溶液の前記第2分液を与える工程は、前記第2分液を酸化して、前記第2分液の原子価を、一組のより低い酸化状態にある値に高める工程を含む
請求項26に記載の方法。
前記電解質のみの電気化学セルに用いられる前記電解質溶液は、一組のより高い酸化状態を有する正側電解質溶液と、一組のより低い酸化状態を有する負側電解質溶液とから成り、
前記酸化側の前記精製電解質溶液は、より高い酸化状態の負側電解質溶液からより低い酸化状態の正側電解質溶液に酸化される
請求項48に記載のシステム。
【背景技術】
【0003】
電池および他の用途のための電解質は、一般にそれらの用途にとって有害である不純物を含まないようにする必要がある。
例えば、酸化還元電池に関しては、使用される各電解質は電池の成分を汚染する不純物を含まないようにする必要がある。
特定の例において、バナジウム酸化還元電池(VRFB)は、電気エネルギーを化学エネルギーに変換し、そして、需要があるときに、その化学エネルギーを電気として放出するシステムである。
このタイプの電池は、太陽光発電および/または風力発電の基地とペアになっていることが多く、これらの再生可能エネルギー源に関連する電力生産の断続性を解消するのに役立つ。
【0004】
VRFBは、化学エネルギーと電気エネルギーとの間の変換を行う電気化学セルを備える。
電気化学セルは、負極、電解質セパレータ(しばしばプロトン交換膜)、および負極を含む。
二つの別々のバナジウム溶液が個々のタンクに貯蔵されている。つまり、一方のタンクは、負極に供給される負の電解質溶液を含み、他方のタンクは、正極に供給される正の電解質溶液を含む。
通常の動作中、負の電解質溶液は、バナジウム(II)および(III)イオンを含み、正の電解質溶液は、バナジウム(IV)および(V)イオンを含む。
充電中、バナジウム(III)イオンは、負極において負極電解質溶液中でバナジウム(II)イオンに還元され、バナジウム(IV)イオンは、正極において正極電解質溶液中でバナジウム(V)イオンに酸化される。放電中は、逆のことが起こる。
【0005】
新しいVRFBを作動させるときは、平均原子価が約3.5の平衡電解質溶液、すなわち、バナジウム(III)イオンとバナジウム(IV)イオンの濃度が等しい電解質溶液が、負と正の両方の電解タンクに移される。
電池は、負および正の電解質溶液が、それぞれ、所望のバナジウム(II)/(III)イオンの比、および、所望のバナジウム(IV)/(V)イオンの比になるまでゆっくりと充電される。
この最初の充電の後、負の電解質溶液中に存在するいくらかの不純物は、一般的に固体金属相沈殿物として沈殿する。
これらの不純物としては、AsおよびGeが挙げられるが、これらに限定されない。
これらの沈殿物は、負極を詰まらせ、電池性能に悪影響を及ぼすので、電気化学セルにとって有害である。
【0006】
バナジウムベースの電解質溶液を製造するための従来の方法のほとんどは、以下の2つの方法のうちの1つを含む。
・方法1:過剰の酸中で3:1のモル比でV
2O
3とV
2O
5とを混合して、平均原子価が3.5の溶液を生成する。
・方法2:VRFB電気化学セルを用いる。VRFB電気化学セルでは、負極を用いてバナジウム系電解質溶液を3.5価に還元し、正極が、化学還元剤を用いて周期的または連続的に還元されるバナジウム系電解質溶液を酸化する。
ほとんどの有機還元剤はバナジウム(V)イオンをバナジウム(IV)イオンに還元することしかできない(つまり、ほとんどの有機還元剤は、バナジウム(IV)イオンをより低原子価に化学的に還元することはできない)ため、この種のアプローチが必要である。
【0007】
これら従来の方法のいずれも、VRFBの電気化学セルをしばしば汚染する不純物を適切に除去することはできない。
むしろ、両方の方法において、バナジウム供給原料が、適切な機能およびVRFBシステムにおける汚染防止のために選択された不純物について低い不純物含有量を有していることが必要とされる。
その結果、多くの精製方法は、バナジウム供給原料の精製に焦点をあてている。
これらの方法の多くは効果的であるが、それらは多くの化学物質を消費し、そして、最終製品は、高い値段となってしまう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
いくつかの態様において、本開示は、化学還元および濾過プロセスを使用して電解質溶液から不純物を除去するための方法およびシステムに関する。
バナジウム酸化還元電池(VRFB)の通常の使用中において、VRFBの電気化学セルを普通に詰まらせるであろう1つ以上の不純物であって、バナジウム系電解質溶液中の1つ以上の不純物が除去される、バナジウム酸化還元電池(VRFB)に関連して特に有用な実施形態を以下で説明する。
電気化学酸化プロセスのような酸化プロセスは、濾過後に使用でき、還元電解質溶液の原子価を所望の値に、多くの場合、電解質を原子価3.5に調整する。
【0014】
他の態様において、本開示は、酸化還元電池(RFB)の作動に関する方法およびシステムに関する。
特定の実施形態において、電解質溶液を最初に比較的低い酸化原子価に還元し、その後、酸化して、異なる原子価を有する負および正の電解質溶液を作製する。
負および正の電解質溶液は、それぞれ、RFBの負側および正側に設置され、これにより、従来の電池の作動に伴う典型的な電池充電プロセスが不要となる。
本開示のこれら態様および他の態様は、以下において、説明され、例示される。
【0015】
ここで図面を参照する。
図1は、還元に基づく精製とそれに続く濾過および酸化に基づく原子価調整によって、所望の原子価を有する電解質溶液を作製する全体的なプロセスを示す。
精製プロセス、すなわち、
図1に示される電気化学的還元および濾過を理解するために、当の精製は、比較的低いバナジウム原子価で電解質溶液中の不純物から生成する固体沈殿物を除去することを含むことを理解されたい。
いくつかの電解質溶液では、電解質溶液の原子価が比較的高い場合、ある種の不純物は水性状態にあるが、電解質溶液の原子価が十分に低い場合、それらの固体形態に変換される。
電解質溶液の用途によっては、電解質溶液の原子価が比較的低いときに生成される固体は、その用途にとって有害であり得る。
例えば、RFBの場合、RFBの電気化学セルの負側の不純物固体は、負電極を詰まらせる可能性があり、負電極が時間の経過とともに固体によってますます詰まるようになるので、RFBの電気的性能が低下する。
【0016】
一例としてVRFBを使用する場合、費用効果的にVRFB用の電解質溶液を製造するために、安価な酸化バナジウム源が必要とされる。
一般に、低価格の酸化バナジウムは、電解質溶液中で最終的に生じる高レベルの不純物を有し、VRFB性能に大きな悪影響を及ぼす。
上述したように、最も有害な不純物は、受け取ったままの電解質溶液中で水性のものであるが、システムの初期充電後に負極を詰まらせる固体として沈殿する。
すなわち、最も有害な不純物は、バナジウム(III)/(IV)イオンの電解質溶液には可溶性/水性であるが、バナジウム(II)/(III)イオンの溶液には不溶性である(すなわち、固体沈殿物を生成する)。
図1に示す精製プロセスは、溶液をVRFBに使用する前に、沈殿する可能性のある不純物を電解質溶液から濾過するために容易に用いることができる。
【0017】
特に、
図1を参照すると、この図は、電解質溶液が4つの酸化状態、ここでは、+2、+3、+4、および、+5の4つの酸化状態をとりうる電解質溶液の例に関して、本開示に従って行われる精製および原子価調整を示している。
図1のゾーン100に見られるように、精製プロセスは、最初に、電解質溶液を、目標不純物が電解質溶液から沈殿する原子価よりも低い原子価に還元することを含む。
ゾーン100における初期原子価は、使用される酸化バナジウム供給原料に応じて、3.5から5.0のいずれかであり得る。
図1では、V
2O
5が唯一の供給原料であり、得られる初期原子価が5.0であると仮定している。
図示した例では、電解質溶液は、ほぼその最低酸化状態(ここでは(II)(2.0)の酸化状態)まで還元される。
例えば、バナジウム系電解質溶液の場合、目標不純物は、3.0以下の原子価で溶液から沈殿する。
したがって、いくつかの実施形態において、還元は、電解質溶液の原子価を約3.0未満、例えば、2.9〜2.0にするだけでよい。
しかしながら、より低い原子価が、還元プロセスを加速するために望ましい可能性がある。
還元は、電気化学セルを使用する電気化学的還元などの任意の適切な方法を使用して実施することができる。
一例として、一方の半電池がVRB電解質を利用し、他方の半電池が非VRB還元剤を使用するハイブリッド電気化学電池を使用することができる。
別の例として、電気化学セルは、両方の半電池でVRB電解質を受け入れるように構成されてもよい。
【0018】
一旦、不純物が電解質溶液から沈殿すると、
図1のゾーン104において、固体沈殿物が溶液から除去される。
沈殿物の除去は、とりわけ、1つ以上の多孔質フィルター、および/または、1つ以上のサイクロンを介するなど、任意の適切な除去手段を用いて、行うことができる。
電解質溶液の用途によっては、特定のサイズの沈殿物のみを除去する必要があるかもしれず、それに応じて、除去装置を設計することができる。
例えば、特定の孔径を有する負極を含むVRFBでは、この孔径よりも小さい特定のサイズの沈殿物は、それらが負極を通って流れ、負極を詰まらせることはありえないので、濾過する必要はないかもしれない。
【0019】
図1のゾーン108に示す任意の工程で、精製電解質溶液、すなわち、所望量の沈殿物を除去した溶液を所望の原子価に酸化してもよい。
一例として、バナジウム電解質を用いる場合、精製電解質溶液が、バナジウム(III)イオンとバナジウム(IV)イオンとを混合したものを有し、約3.5の原子価を有するように、精製電解質溶液が酸化されてもよい。そして、約3.5の原子価は、VRFBを作動させるために通常提供される、従来のバナジウム系電解質溶液の原子価である。
この混合物は、
図1の線112によって表されている。
【0020】
バナジウムを電解質として使用する別の例として、
図1に示すように、精製電解質溶液を酸化して、異なる原子価の2つの電解質溶液を生成する。異なる原子価の2つの電解質溶液は、例えば、1つの電解質溶液が、バナジウム(II)イオン、および、バナジウム(III)イオンを含有し、3.0以下の原子価の電解質溶液、例えば、原子価が2.5である電解質溶液であり、もう1つの電解質溶液が、バナジウム(IV)イオン、および、バナジウム(V)イオンを含有し、4.0以上の原子価の電解質溶液、例えば、原子価が4.5である電解質溶液である。
これら2つの電解質溶液は、それぞれ、
図1において、線116および120によって表されている。
この例では、これら2つの電解質溶液は、それぞれ、VRFBの負および正の電解質溶液として使用することができる。
【0021】
上述したように、従来のVRFBを作動させるとき、VRFBの負極と正極の両方の電解タンクに3.5価の電解質溶液を供給した後、負極側の電解質溶液が、原子価約2.5で安定し、正極側の電解質溶液が、原子価約4.5で安定するように、VRFBを充電する。
しかしながら、
図1の方法を用いて、負(2.5価など)および正(4.5価など)の電解質溶液を作製し、これらの電解質溶液をVRFBに添加する場合、充電を作動させる工程を省略することができる。
なお、原料電解質溶液が十分に純粋である、すなわち、沈殿可能な不純物を十分に含まない場合、不純物除去工程は、負および正の電解質溶液を作製するプロセスにおいて省略され得る。
この実施形態は、電解質を作製するための唯一のバナジウム供給原料としてV
2O
5などの高酸化状態材料が使用されるときに特に有用であり得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、
図1によって表される方法のうちのいずれかは、結果として生じる電解質溶液が、例えば、製造施設からかなり離れたVRFB設備などのような使用場所に搬送されるように、電解質溶液製造施設で実行されるものであってもよい。
しかしながら、電解質溶液を輸送するコストは、距離、電解質溶液の腐食性、および溶液の重量の大部分が、溶液中の溶媒(例えば、酸および水)によるものであるという事実のような要因のために、かなり高くなり得る。
その結果、他の実施形態では、
図1によって表される方法のうちのいずれかを使用場所でまたは使用場所のすぐ近くで実行するようにしてもよい。
例えば、システムの還元装置、沈殿物除去装置、および、酸化装置などの構成要素は、上記方法を局所的に実行できるように、コンテナ化、パレット化、または、他の方法で容易に移動可能にすることができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、電気化学セルは、還元および酸化に使用され、それらのセルは、反応を促進するために電気によりエネルギーを与えられる必要がある。
製造された電解質溶液の使用場所の近くで使用される実施形態であって、風力タービンやソーラーファームなどの再生可能エネルギー源用の電池に使用される、上記のような実施形態では、還元および/または酸化プロセスに必要な電気は、再生可能エネルギー源によって提供されうる。
【0024】
既存の方法に対する本開示の方法の利点として、以下のものが挙げられる。
・従来の方法は、除去のために不純物の沈殿を利用していない。
沈殿した不純物は、例えば、濾過および/または液体サイクロンを介して、機械的に除去される。
・重要な不純物の生成および除去のために電解質の電気化学的酸化および還元の両方を利用する従来の方法はなかった。
・従来の方法は、VRB電解質の還元および酸化に電気化学セルを使用していない。
バナジウム系電解質還元のためのセルの例として、H
2ガスが陰極で酸化(消費)され、VRB電解質が陽極で還元される水素/VRBセルがある。
酸化セルも同様である。H
2が陽極で生成され、VRB電解質が陰極で酸化される。
・同じ電気化学システムを使用して、VRFBシステムのための別々の陽極液と陰極液の両方の溶液を別々に製造できる他の方法はない。
【0025】
図2は、2つの電気化学サブプロセス、すなわち、電解質溶液を還元および精製するための還元/精製サブプロセス200(1)、および、電解質溶液の原子価を所望の原子価に調整するための酸化サブプロセス200(2)を用いる例示的な精製プロセス200を示している。
この例のプロセス200により、単一の酸化状態で純度の低い酸化バナジウムを用いることが可能となる。
例示的なプロセス200における電解質溶液の生成および精製は、連続的に行われ、当該プロセスは、室温で動作するように設計されている。
【0026】
例示的なプロセス200により、VRFB性能に最も有害な不純物、すなわち、混合バナジウム(III)/(IV)溶液中で水性であるが、バナジウム(II)/(III)溶液を製造するために充電後に固体沈殿物を生成するであろう不純物が除去される。
上記のように、負極を詰まらせるのはこれらの沈殿物である。
プロセス200によって行われる精製は、最も有害な不純物がバナジウム(II)/(III)溶液中に沈殿すること、および、これらの不純物がとりわけ濾過および/またはサイクロンなどによって機械的に除去され得るという発見を根拠としている。
この例では、K、Na、および、Alなどの他の不純物は、バナジウム(II)/(III)溶液中に水性イオンとして残るので、プロセス200では除去されない。しかしながら、電池性能に対するこれらの水性イオンの影響は、無視できる程度である。
【0027】
バナジウム系電解質の電気化学的還元およびその後の酸化は、その生成および精製にとって重要である。
この例では、電解質溶液の還元および酸化は、それぞれ、自身の1つまたは複数の電気化学セルを使用して、2つの別々のサブプロセスで行われる。
なお、説明のために、2つのサブプロセス200(1)および200(2)のそれぞれに対して単一の電気化学セルのみが示されているが、各サブプロセスは、2つ以上の電気化学セルを使用することができる。
【0028】
バナジウム電解質の電気化学的還元が起こる状況において、還元/精製サブプロセス200(1)は、ハイブリッド電気化学セルなどの「還元セル」204によって行われる。
還元セル204を動作させるために電気(図示せず)が供給され、バナジウム系電解質溶液208が陰極204C上で還元され、還元剤212が陽極204A上で酸化される。
図示の例では、還元剤212は、H
2ガスであり、これにより、比較的単純で安価なシステムが実現される。
しかしながら、数ある中でも、水、ギ酸、エチレングリコールなどの他の還元剤を還元剤212に使用することができる。
【0029】
図3Aは、
図2の還元セル204に使用することができる還元セル300の例示的な構成を示している。
図3Aを参照すると、例示的な還元セル300は、電解質流動場304、ガス流動場308(ここでは、H
2ガス用)、プロトン交換膜312、カーボンペーパー電極316、および、H
2酸化反応触媒(図示せず)でコーティングされたガス拡散層320を含む。
電解質溶液208(
図2)は、電解質流動場304に流入し、一方、還元剤212(ここでは、H
2ガス)は、ガス流動領域308に流入する。
図3Bは、還元セル300の動作例を示し、ブロック324はH
2還元剤212を受け入れる還元セルの陽極側を表しており、ブロック328は電解質溶液208を受け入れる還元セルの陰極側を表しており、そして、ブロック332は、水素プロトンが陰極側から陽極側へ通過することを可能にし、電子の流れがそれと同じになる、プロトン交換膜312を表している。
また、
図3Bは、バナジウム系電解質溶液208の還元およびH
2還元剤212の酸化を示している。
当業者であれば容易に理解するであろうが、
図3Aに示す還元セル300の構成は単なる例であり、要望に応じて他の構成を用いてもよい。
【0030】
再び
図2を参照すると、還元/精製サブプロセス200(1)は、2つの機能を実行する。すなわち、1)還元/精製サブプロセス200(1)は、電解質216(ここでは、V
2O
5粉末)の化学的溶解および還元を補助するバナジウム(II)イオンを生成する。2)還元/精製サブプロセス200(1)は、最も有害な不純物220を沈殿させ、それらを機械的手段(例えば、濾過および/またはサイクロン化)により除去することを可能にする。
図2に示される例では、システム200は、1つ以上の適切なフィルター(ここでは、粗いフィルター224)と、一対の微細フィルター228(1)および228(2)とを含む。
その結果、ここでもまた、フィルター224、228(1)、および228(2)によって、沈殿した不純物220の一部または全部が除去された程度にまで精製された精製電解質溶液208Pが得られる。
【0031】
還元/精製プロセス200(1)を、プロセスを制御する適切なコントローラ264によって制御してもよい。
コントローラ264は、プログラマブルロジックコントローラ、汎用コンピュータ、特定用途向け集積回路、または、適切な制御アルゴリズムを実行することができる他の任意のハードウェアデバイスなどの任意の適切なハードウェアを含み得る。
コントローラ264に適した多くの種類のハードウェアは、当該技術分野において周知である。
一例として、コントローラ264は、ソフトウェアまたは他の方法で、タンク252から還元セル中への不純電解質溶液208の流れを制御することによって、還元セル204(ここでは電解質溶液208(2.0))から流出する電解質溶液の原子価を制御するように構成されている。
この例において、制御アルゴリズムへの入力には、還元セル204内の電流などのユーザ設定、および、適切な原子価センサ(図示せず)によるタンク252内の電解質の原子価測定値が含まれる。
例えば、固定セル電流により、コントローラ264は、測定された原子価が目標値(例えば、沈殿原子価)を下回っているか否かを判定し、順番に、不純な電解質溶液208の還元タンク252への流れを制御する1つ以上の流量制御装置(図示せず)を制御する1つ以上の制御信号を出力する。
そのような流量制御装置は、例えば、とりわけ、1つ以上のポンプ、1つ以上の弁、またはタンク252への不純な供給原料の流れを変化させる1つ以上の装置、または、これらの任意の組み合わせたものであってもよい。
他の実施形態では、コントローラ264は、タンク252内の電解質溶液の原子価を制御するように、セル電流と不純な電解質溶液208の流れの両方を制御するように構成されうる。
当業者であれば、この開示に基づいて、コントローラ264用に選択された制御方式および使用されるハードウェアの種類に適したアルゴリズムをどのように作製するかを容易に理解するであろう。
【0032】
この実施例における酸化サブプロセス200(2)は、電気化学的酸化を使用して精製電解質溶液を酸化し、それをその所望の原子価状態(例えば、所望の用途に応じて、3.5価付近、2.5価付近、および/または、4.5価付近)にする。
この例において、本明細書で「酸化セル」232と呼ぶハイブリッド電気化学セルを使用して、セルに供給される電気(図示せず)に応じて酸化を促進させる。
精製されたバナジウム系電解質溶液208Pは、陽極232A上で酸化され、酸化剤236は、陰極232C上で還元される。
一例として、プロトンは、還元されて陰極232C上にH
2ガスを生成する。
これは、上述のように、H
2ガスが還元セル204内の還元剤212として使用されるときに特に便利である。
酸化後、ボックス240に示すように、原子価が調整された電解質溶液を任意にVRFBに移してもよい。
【0033】
図4Aは、
図2の酸化セル232に使用することができる還元セル400の例示的な構成を示している。
図4Aを参照すると、例示的な酸化セル400は、電解質流動場404と、酸化剤流動場408(ここでは、H
2ガス用)と、プロトン交換膜412と、酸化側カーボンペーパー電極416と、還元側カーボンペーパー電極420と、H
2酸化反応触媒(図示せず)でコーティングされたガス拡散層424とを含む。
酸化剤236(ここでは、プロトン)は、酸化剤流動場408内に生成され、一方、電解質溶液208(
図2)は、電解質流動場404に流れ込む。
図4Bは、例示的な酸化セル400の動作を示しており、ブロック428は、H
2O 236を受け取る酸化セルの陰極側を表しており、ブロック432は、電解質溶液208Pを受け取る酸化セルの陽極側を表しており、そして、ブロック436は、水素プロトンが陰極側から陽極側へ通過することを可能にし、電子の流れがそれと同じになる、プロトン交換膜412を表している。
また、
図4Bは、バナジウム系電解質溶液208Pの酸化およびプロトンのH
2ガスへの還元を示しており、H
2ガスは、H
2O 236によって除去される。
当業者であれば、
図4Aに示す還元セル400の構成は単なる一例であり、要望に応じて他の構成を使用できることを容易に理解するであろう。
【0034】
図2の例示プロセス200に対する入力は、以下の通りである。
・材料:
・一般に、金属酸化物216(ここでは、V
2O
5粉末)を溶解するための溶媒244。
図示した例のバナジウム化合物に関して、この溶媒は、硫酸および/または塩酸などの1つまたは複数の強酸からなる。
他の実施形態では、とりわけ、塩酸や塩素酸などの他の溶媒を使用することができる。
・上記溶媒が極性溶媒ではない場合、極性溶媒248。
図示のバナジウム化合物には、水が使用される。
・電解質216のような電解質。
本実施例では、電解質は、五酸化バナジウム(V
2O
5)粉末である。
他の実施形態では、酸化バナジウム(III)(V
2O
3)を単独で、または、酸化バナジウム(V)(V
2O
5)と組み合わせて、1つまたは複数の酸化バナジウムを使用することができる。
他の実施形態では、とりわけ、鉄−クロムフロー電池、および、すべてのウランフロー電池などの他の電解質を使用することができる。
・還元剤212のようなプロトン供与還元剤。
本実施例では、H
2ガスを用いる。
他の実施形態では、とりわけ、水素、水、ギ酸、エチレングリコール、H
2O
2などの他の還元剤を使用することができる。
・酸化剤232などのプロトン消費酸化剤。
この例では、プロトンは、H
2ガスに還元された。
代わりに、酸素または空気を使用することが可能であり、そこでは、O
2がH
2Oに還元される。
・電気:
・電気(図示せず)により、還元セルと酸化セルの両方に入力されるエネルギーが供給される。
【0035】
本実施例における最終の精製調整電解質溶液208P+A(すなわち、3.5価に原子価調整されたバナジウム系電解質溶液)は、以下のものを含んでもよい。
・支持酸溶液(一般に、硫酸および/または塩酸)を有する電解質。
・溶液中のバナジウム(III)および(IV)イオンのバランスは、一般に1:1の比である。
・熱安定化のための追加の添加剤。
【0036】
この例では、還元/精製サブプロセス200(1)は、バナジウム電解質溶液208の電気化学的還元を含む。
この例示的な還元/精製サブプロセス200(1)の化学的/電気化学的反応を以下の表1に示す。
【表1】
【0037】
V
2O
5粉末(電解質216)を使用することの主な課題の1つは、強酸溶液中でのその限られた溶解度である。
バナジウム(V)電解質溶液を作製する代わりに、この例示的な方法は、バナジウム(II)イオンが優勢である還元電解質溶液を利用して、V
2O
5粉末を溶解し還元する。
V
2O
5粉末、水、および、酸を、バナジウム(II)イオンが優勢である電解質溶液208を含むよく混合されたタンク(
図2のタンク252)にゆっくり加える。
タンク252内のバナジウム(II)が優勢である溶液208の原子価は、還元セル204を介して維持される。
V
2O
5粉末(金属酸化物216)が、バナジウム(II)が優勢である溶液208中に溶解され(表1、式1)、還元されると(表1、式2)、他のバナジウムイオンは、酸化される(表I、式2)。
バナジウムイオンのこの酸化は、一定の原子価を維持するために電解質溶液208を連続的に還元する還元セル204を使用してバランスがとられる。
バナジウム(II)および(III)濃度、並びに、総体積を測定する一組のセンサ(図示せず)からの測定値を用いて、V
2O
5(金属酸化物216)、酸(溶媒244)および水(極性溶媒248)のタンク252への供給速度と、還元セル204への電流と、還元セルの出口204Oから酸化サブプロセス200(2)のタンク256への約2.0価の電解質208(2.0)の抽出速度とを制御するようにしてもよい。
バナジウム(II)および(III)濃度を測定するためのセンサーの例として、とりわけ、市販されている既製の光センサーおよび基準電極を有する電気化学セルが挙げられる。
【0038】
タンク252内のバナジウム(II)イオンは2つの目的を果たす。
第一に、それらは前述のように、V
2O
5粉末(金属酸化物216)の急速な溶解および還元を補助する。
第二に、バナジウム(II)イオンは、最も有害な不純物(例えば、不純物220)の多くをそれらの固体の中性状態に還元するための還元雰囲気を提供する。
不純物は、固体状態にあるとき、機械的手段を使用して、つまり、ここでもまた還元セル204の上流に配置された一連の粗いフィルター224および微細フィルター228(1)を使用して、濾過される。
図示の例では、粗いフィルター224、例えば、活性炭フィルターは、比較的大きい沈殿固体を濾過し、微細フィルター228(1)および228(2)、例えば、PTFE親水性フィルターは、比較的小さい沈殿粒子を濾過する。
上記のように、VRFBについて、濾過のレベルは、目標VRFBに使用される負極の孔径に依存し得る。
【0039】
この例において、還元電解質溶液208から沈殿する不純物220は、AsおよびGe金属沈殿物を含み得るが、これらに限定されない。
還元セル204の前のフィルター224、228(1)、および228(2)は、以下の2つの機能を果たす。1)電解質溶液208から不純物220を除去する、および、2)沈殿した不純物から還元セルを保護する。
第2の機能は、フィルター224、228(1)、および228(2)のいずれかが、
図3Aのカーボンペーパー電極316のような還元セル204のカーボンペーパー電極よりも小さい有効孔径を有する場合にうまく達成される。
図2に示されるフィルター224、228(1)および228(2)、並びに、還元セル204のシステムは、還元セルの連続動作を可能にする。
電気メッキ/電解採取を使用する方法は、セルの頻繁な化学的洗浄または電極の交換を必要とし、一時的に作業を停止させる。
【0040】
還元セル204は、陰極204(C)でバナジウム(III)イオンを還元し(表1、式3)、陽極204(A)で還元剤212を酸化することによって動作する。
上記のように、この例では、H
2ガスが還元剤212として使用される(表1、式4)が、上記のように、とりわけ、水、ギ酸、またはエチレングリコールのような他の化学還元剤も使用できる。
この例において、還元剤212(ここでは、H
2ガス)は、H
2ガスを生成する酸化サブプロセス200(2)のH
2供給源260および酸化セル232の両方から供給される。
還元セル204の構成および適切な半電池反応の例が、それぞれ、
図3Aおよび
図3Bに示されている。
還元セル204の出口204O(
図2)の下流で、精製電解質溶液208Pの一部をタンク252に戻して、V
2O
5粉末(金属酸化物216)の溶解および還元を補助し、そして、一部を酸化サブプロセス200(2)に移動する。
【0041】
酸化サブプロセス200(2)は、精製電解質溶液208Pを酸化することを含む。
この例示的な方法についての化学的/電気化学的反応を以下の表2に示す。
【表2】
【0042】
臨界沈殿原子価未満(すなわち、2.9未満)である平均原子価の精製電解質溶液208Pは、サブプロセス200(1)からタンク256に移される。
タンク256内の精製電解質溶液208Pは、最終的な所望の原子価(この例では、一般に、3.5)の直下の原子価に保たれる。
タンク252からの精製電解質溶液208Pは、酸化セル232にポンプ輸送され、そして、酸化セル232は、精製された電解質溶液を所望の最終原子価に酸化して、原子価調整電解質溶液208P+Aを作製する。
酸化セル232の生成物の一部は、タンク256に戻されて、一定の原子価を維持し、そして、この例において、残りは、ボックス240で示されるように、VRFBに移送される。
【0043】
この例では、電気化学酸化セル232は、精製電解質溶液208Pを酸化し、プロトンを還元する(すなわち、H
2ガスを生成する)。
具体的には、酸化セル232は、表2の式7に示される半反応によって陽極232Aでバナジウム(III)イオンを酸化し、そして、表2の式6に示される半反応によって説明されるように、プロトンを還元して陰極232CでH
2ガスを生成する。
例えば、酸化セル232の純反応(ネット反応)は、表2の式8に示されている。
酸化セル232では、水は、膜232Mを越えて陰極に移動するバナジウムイオンを洗い流すのを補助するので、水は、H
2生成側(すなわち、陰極232C)上を循環する。
【0044】
上述のように、代替プロセスにより、任意の所望の原子価で精製原子価調整電解質溶液208P+Aを生成することができる。
例えば、酸化セル232は、VRFBの負の電解質溶液については、精製原子価調整電解質溶液208P+Aの第1のバッチを2.5価に酸化し、VRFBの正の電解質溶液については、精製原子価調整電解質溶液の第2バッチを4.5価に酸化することができる。
これら2つの別々の溶液をそれぞれVRFBの陰極液タンクと陽極液タンクに移すことで、新しい電池システムを作動させるのに必要な生成充電プロセスが不要になる。
【0045】
図12Aおよび12Bに示す別の実施形態では、1つまたは複数の電気化学セル(ここでは、負側1200N(
図12A)および正側1200P(
図12B)を有する電気化学セル1200)のそれぞれが、セルの正側と負側の両方で、バナジウム系電解質溶液のような電解質溶液を受け入れる。
これにより、還元/精製サブプロセス用の別個の還元剤、および、酸化サブプロセス用の別個の酸化剤が不要となる。
図13は、
図12Aおよび
図12Bの電気化学セル1200として使用することができる電気化学セル1300の例を示している。
図13を参照すると、電気化学セル1300は、それぞれ負および正の流れ場1304Nおよび1304Pと、それぞれ負および正のカーボンペーパー電極1308Nおよび1308Pと、セルの負側と正側との間のプロトン交換膜1312とを備える対称的な設計構想を有し得る。
【0046】
バナジウム系電解質溶液を精製するための一例において、初期不純電解質溶液1204(
図12A)は、ほぼ等量のバナジウム(III)およびバナジウム(IV)でできており、プロセスによって除去される少なくとも1種の不純物を含んでいる。
不純電解質溶液1204は、例えば、上記の背景技術の欄で説明した方法のいずれか(すなわち、方法1または方法2のいずれか)を使用して作製することができる。
図12Aおよび
図12Bに示すプロセスでは、各電気化学セル1200の負電極1200Nは、電解質溶液1204を臨界不純物沈殿原子価(例えば、
図1のゾーン104を参照)未満に還元し、一方、各電気化学セルの正電極1200Pは、バナジウム(III)をバナジウム(IV)に酸化する。
負電極1200N(
図12A)の上流において、
図12Aの1212で概略的に表され、
図2のフィルター224、228(1)、および228(2)と同じまたは類似であり得る1つまたは複数のフィルターは、不純物が負極1200Nに入る前に、負極側電解質溶液1204Nで沈殿した不純物を捕獲する。
【0047】
フィルター1212を通過した後、この今精製された電解質1204P溶液の一部を、例えば、正極電解質タンク1216に移すことができる(
図12B)。
この移動プロセスは、正側電解質ループ1220(
図12B)内の流体の電気化学的酸化を打ち消し、約3.5の原子価を維持する。
同様に、純度の低い初期電解質溶液1200(
図12A)をゆっくりと負極側電解タンク1224に移す。
このように移すことで、電気化学的還元を化学的に打ち消し、原子価を臨界沈殿原子価以下に維持する。
(正側タンク1216に貯蔵されている、)正側電解質ループ1228(
図12B)中の溶液には、VRFBシステム内に沈殿するであろう重要な汚染物質が存在しない。
正側の精製酸化電解質溶液1204P+Oは、遊離の有害不純物を含まず、当該電解質溶液を、使用前に、例えば、VRFBシステム内に貯蔵することができる保持タンク1232に移す。
この実施形態では、化学的還元剤または還元された酸化バナジウムのために電解質に追加の材料コストがかかることになるが、その一方で、その主な機能は、電解質から重要な不純物を除去することである。
個々の電気化学セルが、それらの正側と負側の両方に同じ基本電解質溶液を使用する場合、これらのセルを、便宜上「電解質のみの電気化学セル」ということがある。
【0048】
なお、還元/精製側(
図12A)で、還元/精製サブプロセスを制御する適切なコントローラー1240により、還元/精製プロセス1236を制御してもよい。
図2のコントローラー264と同様に、
図12Aのコントローラー1240は、プログラマブルロジックコントローラー、汎用コンピュータ、特定用途向け集積回路、または、適切な制御アルゴリズムを実行することができる任意の他のハードウェアデバイスなどの任意の適切なハードウェアを含み得る。
コントローラー1240に適した多くの種類のハードウェアは、当該技術分野において周知である。
一例として、コントローラー1240は、ソフトウェアまたは他の方法を介して、負側電解質タンク1224から還元セルへの不純電解質溶液1204の流れを制御することによって、還元セル1200の負側1200Nから流出する電解質溶液(ここでは、電解質溶液1204P)の原子価を制御するように構成されている。
この例において、制御アルゴリズムへの入力には、還元セル1200内の電流などのユーザ設定、および、適切な原子価センサによるタンク1224内の電解質1208の原子価測定値が含まれる。
例えば、固定セル電流では、コントローラ1240は、測定された原子価が目標値(例えば、沈殿原子価)を下回っているか否かを判断し、不純な電解質溶液1204の還元セル1200への流れを制御する1つ以上の流量制御装置(図示せず)を制御する1つ以上の制御信号を出力する。
そのような流量制御装置は、例えば、とりわけ、1つ以上のポンプ、1つ以上の弁、または、負側の電解質タンク1224への流れの不純な供給原料を変化させる1つ以上の装置、または、これらの任意の組み合わせたものであってもよい。
他の実施形態において、コントローラ1240は、電解質溶液(ここでは、溶液1208)の原子価を制御するように、セル電流と不純な電解質溶液の流れの両方を制御するように構成され得る。
当業者は、この開示に基づいて、そして使用されるハードウェアの種類を考慮して、コントローラ1240のために選択された制御方式のための適切なアルゴリズムをどのように作製するかを容易に理解するであろう。
【0049】
図14は、例示的な電気化学セル1200(
図12Aおよび12B)の動作を示しており、ブロック1400は、負側電解質タンク1224から電解質溶液1204を受け取る電気化学セルの陰極側を表しており(
図12A)、ブロック1404は、正側タンク1216から電解質溶液1204(混合)を受け取る電気化学セルの陽極側を表しており(
図12B)、ブロック1408は、水素プロトンが陰極側から陽極側へ通過することを可能にするプロトン交換膜1312を表している(
図13)。
当業者であれば、
図12Aおよび
図12Bに示した電気化学セル1200の構成が単なる一例であり、要望に応じて他の構成を使用できることを容易に理解するであろう。
【0052】
本開示の態様による精製方法を実験室規模で実証した。
以下は、そのプロセスの概要である。
・望ましい工業規模のシステムは、連続的な電解質生成/精製を行うシステムである。
しかしながら、実験室規模での概念実証のために、バッチプロセスが用いられた。
・3.5価の初期電解質溶液の還元は、
図3Aに示したセルと同一のH
2/VRBハイブリッド電気化学セル500(
図5)を用いて行われた。
・精製電解質溶液の酸化は、
図4Aに示すセルと同一のハイブリッド電気化学セル800(
図8)内で行われた。
【0053】
実験室規模での還元/精製サブプロセスの実証
【0054】
3.5の初期原子価を有する初期電解質溶液の2つのサンプル(すなわち、バッチ1およびバッチ2)を、上述のバージョンの還元/精製プロセスにかけた。
各サンプルは、容量が3リットルであり、2.0価の溶液に還元された。
各試料のバナジウム含有量は、1.4モル/リットルと1.65モル/リットルの間であった。
同じ還元セル500(
図5)(電極の交換も膜の交換もしない)を両方の試料に使用した。
還元セル500の構造は、それぞれ、
図3Aおよび3Bに示すように、構造および動作が還元セル300と同一である。
還元セル500(
図5)の活性面積は、23cm
2であった。
【0055】
図5は、バッチ1および2の試験で使用された実験室規模の還元/精製サブプロセスを示している。
水素ボンベ504により、正極508P上のH
2/VRBセル508に水素を供給した。
乾燥水素を、バブラー(気泡放出器)512内のイオン交換水(DI)に通過させることによって加湿した。
流量調整器516により、H
2/VRBセル500への水素の流れを制御した。
VRB電解質520をプラスチックタンク524に貯蔵した。
タンク524内のVRB電解質520を、負極508N上のH
2/VRBセル508を通して再循環させ、セルに入る前に2つのフィルター528(1)および528(2)を通過させた。
再循環は、蠕動ポンプ(図示せず)によって行われた。
DC電流(図示せず)をH
2/VRBセル508に流して、水素を酸化し、VRB電解質520中のバナジウムを還元した。
H
2/VRBセル508の上流のフィルター528(1)および528(2)は、それぞれ粗いフィルター(活性炭)および微細フィルター(孔径0.5ミクロンの親水性PTFEフィルター)から構成された。
H
2/VRBセル500内のセル電圧は、バッチ1については
図6Aに、バッチ2については
図7Aに示され、セル圧力は、バッチ1については
図6Bに、バッチ2については
図7Bに示されている。
図6Aおよび7Aにて報告されている開路電圧は、セルからDC電流を周期的に除去することによって測定された。
還元/精製サブプロセスは、両方の場合に成功したようであり、以下の2つの重要な概念を例証している。
・プロセスが続くにつれて、フィルター528(1)および528(2)(
図5)の上流で測定された圧力(
図6Bおよび
図7B)は増加した。
この圧力上昇は、フィルター528(1)および528(2)が沈殿している不純物をうまく捕獲していることを示している。
・還元セル508(
図5)のすぐ上流の圧力(
図6Bおよび
図7B)は、サブプロセス中に増加せず、これは、フィルター528(1)および528(2)により、還元セルが、沈殿した不純物のために、目詰まりすることが防止されることを示している。
【0056】
実験室規模での酸化サブプロセスの実証
【0057】
還元/精製サブプロセスからの精製電解質溶液のバッチ1は、H
2/VRBセル800(
図8)を使用して3.5価に酸化された。H
2/VRBセル800の構成および動作は、それぞれ、
図4Aおよび
図4Bにそれぞれ示すセル400の構成および動作と同一である。
実験室規模で行われたバッチ式酸化サブプロセスを
図8に示す。
イオン交換水は、プラスチックタンク804に貯蔵され、そこで、負極上のH
2/VRBセル800を通して再循環される。
イオン交換水の流れは、負極800N上に移動した、あらゆるバナジウムを除去するのを補助した。
VRB電解質808をプラスチックタンク812に貯蔵し、セルの正極800P上でH
2/VRBセル800を通して再循環させた。
DC電流(図示せず)をH
2/VRBセル800に流して、プロトンを水素ガスに還元し、VRB電解質808中のバナジウムを酸化した。
H
2/VRBセル800内の電圧および電流密度は、それぞれ、
図9Aおよび
図9Bに示されている。
H
2/VRBセル800(
図8)の活性面積は、23cm
2であった。
【0059】
バッチ1をサブスケールVRBシステムで試験して、重要な不純物が電解質中の許容レベルまで除去されたことを確認した。
精製工程前後の電解質の性能を
図10に示しており、
図10では、実験室規模の精製工程前後の運転中の負極圧力を比較している。
精製されたバッチ1電解質についてのフルセル動作測定基準(電圧、セル抵抗、サイクル性能、および、圧力)が
図11Aから11Cに示されている。
図11Bにおいて、「CE」はクーロン効率を表しており、「EE」はエネルギー効率を表しており、そして、「Util」はバナジウムを利用していることを表している。
図11Cに表されているデータは、実験室規模のフルVRBセルを用いた場合の負側の圧力および正側の圧力についてのデータである。そして、当該フルVRBセルでは、バナジウム系電解質溶液がセルのそれぞれ対応する側に流れている、
【0060】
システムパラメータおよび仕様の概要を以下に示し、そして、
図11Aから
図11Cに例示する。
・サイクリングパラメータ:
・放電終了時の開放電圧=1.28V
・充電終了時の開放電圧=1.52V
・最大充電セル電圧=1.6V
・システム仕様
・1.46mol/L V
・3.50価
・システム全体の容量2.8リットル(正および負の電解質)
・2×カーボンペーパー電極
・プロトン交換膜
・11cm
2の有効面積
【0061】
上記は、本発明の例示的な実施形態の詳細な説明である。
本明細書および添付の特許請求の範囲では、特に明記しない限り、「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」および「X、Y、およびZのうちの1つまたは複数」という句において使用されるような連結する文言が使用される。別段の指定がない限り、連結リスト内の各項目は、リスト内の他のすべての項目を除く任意の数、または連結リスト内の他の項目と組み合わせて任意の数で存在できることを意味するものとする。そして、連結リストのそれぞれは、任意の数で存在できるものであってもよい。
この一般的な規則を適用して、連結リストがX、Y、およびZからなるとする前述の例の連結された句は、それぞれ次のものを包含するものとする。
1つ以上のX;
1つ以上のY;
1つ以上のZ;
1つ以上のXと、1つ以上のY;
1つ以上のYと、1つ以上のZ;
1つ以上のXと、1つ以上のZ;
1つ以上のXと、1つ以上のYと、1つ以上のZ;
【0062】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な修正および追加を行うことができる。
上記の様々な実施形態のそれぞれの特徴を、関連する新しい実施形態において多数の特徴の組み合わせを提供するために、必要に応じて他の記載の実施形態の特徴と組み合わせてもよい。
さらに、前述では多数の別々の実施形態を説明しているが、本明細書で説明されてきたことは、単に本発明の原理の適用の例示に過ぎない。
さらに、本明細書における特定の方法は、特定の順序で実行されるように図示および/または説明され得るが、順序は、本開示の態様を達成するために当業者のスキルにより非常に柔軟に変化させることができる。
したがって、本明細書での説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0063】
例示的な実施形態を上記に開示し、添付の図面に示した。
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に具体的に開示されているものに対して様々な変更、省略および追加をなし得ることが当業者には理解されるであろう。