(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
部品装着機が基板を生産する生産作業で必要となる部品、および前記部品装着機に着脱される生産器具の少なくとも一方を積載して走行経路を走行し、かつ、前記走行経路の少なくとも一部分を他の無人搬送車と共通にする無人搬送車を制御する無人搬送車制御システムであって、
前記生産作業の状況から定まる複数の前記無人搬送車の作業優先度を取得し、取得した前記作業優先度を前記無人搬送車に送信する管理装置と、
前記管理装置から受信した前記作業優先度に基づいて走行優先度を可変に設定し、設定した自身の前記走行優先度が前記他の無人搬送車の前記走行優先度よりも高い場合に、前記走行経路を優先して走行する前記無人搬送車と、を有し、
前記作業優先度は、
前記生産作業に用いられる前記部品および前記生産器具の少なくとも一方を搬送する場合に「高」と定められ、
使用済みの前記生産器具を搬送する場合に「中」と定められ、
搬送を終了した後に待機位置へ戻る場合に「低」と定められる、
無人搬送車制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1実施形態の無人搬送車制御システム8が適用される周辺の構成
第1実施形態の無人搬送車1および無人搬送車制御システム8について、
図1〜
図5を参考にして説明する。
図1は、第1実施形態の無人搬送車制御システム8の全体構成および周辺の構成を模式的に示す平面図である。無人搬送車制御システム8は、複数の無人搬送車1、走行経路2、および生産管理装置3を含んで構成される。無人搬送車制御システム8は、複数の無人搬送車1を制御対象とし、走行経路2に沿って走行させる。無人搬送車1は、第1生産機器91および第2生産機器92と自動倉庫93との間で、部材および生産器具を搬送する。
【0018】
まず、無人搬送車制御システム8が適用される周辺の構成について説明する。第1生産機器91は、基板の生産作業を分担して実施する複数種類の対基板作業機911が列設されて構成された第1対基板作業ラインである。第1生産機器91の近くに、第1セットアップステーション912が設けられる。第1セットアップステーション912には、第1生産機器91の生産作業で必要となる部材、および第1生産機器に着脱される生産器具が搬入および搬出される。また、第1セットアップステーション912において、オペレータの段取り作業や片付け作業が実施される。
【0019】
同様に、第2生産機器92は、基板の生産作業を分担して実施する複数種類の対基板作業機921が列設されて構成された第2対基板作業ラインである。第2生産機器92の近くに、第2セットアップステーション922が設けられる。第2セットアップステーション922には、第2生産機器92の生産作業で必要となる部材、および第2生産機器に着脱される生産器具が搬入および搬出される。そして、第2セットアップステーション922において、オペレータの段取り作業や片付け作業が実施される。
【0020】
対基板作業機911、921として、部品装着機や半田印刷機を例示できる。また、前記した部材として、部品装着機で必要となる各種の部品や、半田印刷機で必要となるクリーム状半田を例示できる。前記した生産器具として、部品装着機に着脱されるテープフィーダ、装着ヘッド、および吸着ノズル、ならびに、半田印刷機に着脱される印刷スクリーンおよびスキージを例示できる。
【0021】
上記した段取り作業として、部品供給用のキャリアテープが巻回されたリールをテープフィーダにセットする作業や、クリーム状半田の温度を適正化する作業を例示できる。段取り作業の終了した部材および生産器具は、無人搬送車1により第1生産機器91および第2生産機器92へと搬送される。第1生産機器91および第2生産機器92への部材の供給作業、および生産器具の取り付け作業は、自動で行われてもよいし、オペレータにより行われてもよい。
【0022】
また、第1生産機器91および第2生産機器92で使用済みとなった生産器具は、無人搬送車1により第1セットアップステーション912または第2セットアップステーション922へと搬送される。上記した片付け作業として、使用済みのテープフィーダからリールを取り外す作業や、使用済みの印刷スクリーンおよびスキージを清掃する作業を例示できる。片付け作業の終了した生産器具は、無人搬送車1により自動倉庫93へと返送される。
【0023】
自動倉庫93は、第1生産機器91および第2生産機器92で用いられる部材および生産器具を保管し、要求に応じて提供する。自動倉庫93は、部材および生産器具を無人搬送車1に積み込むための第1積み込み口931、および第2積み込み口932を有する。積み込み作業は、自動で行われてもよいし、オペレータにより行われてもよい。自動倉庫93は、返送された生産器具を第1積み込み口931または第2積み込み口932で受け取ることもある。
【0024】
2.第1実施形態の無人搬送車1および無人搬送車制御システム8の構成
無人搬送車1および無人搬送車制御システム8の説明に移る。
図2は、第1実施形態の無人搬送車制御システム8の機能構成を示すブロック図である。生産管理装置3は、コンピュータ装置を用いて構成される。生産管理装置3は、生産管理部31、走行管理部32、および通信部33を含む。生産管理部31は、第1生産機器91および第2生産機器92に有線接続されている。生産管理部31は、第1生産機器91および第2生産機器92に対して指令を発し、また、第1生産機器91および第2生産機器92の生産作業の状況を把握する。走行管理部32および通信部33の詳細については、後述する。
【0025】
複数の無人搬送車1が走行する走行経路2は、5つに区分されている。すなわち、走行経路2は、機器側第1走行経路21、機器側第2走行経路22、倉庫側第1走行経路25、倉庫側第2走行経路26、および連絡走行経路29からなる。機器側第1走行経路21は、第1生産機器91に沿って設けられ、第1セットアップステーション912を通り、機器側合流点23まで延在する。機器側第2走行経路22は、第2生産機器92に沿って設けられ、第2セットアップステーション922を通り、機器側合流点23まで延在する。
【0026】
機器側第1走行経路21および機器側第2走行経路22では、異なる目的位置を設定することにより、複数の無人搬送車1が進入可能とされている。第1生産機器91のそれぞれの対基板作業機911、第2生産機器92のそれぞれの対基板作業機921、第1セットアップステーション912、および第2セットアップステーション922には、目的位置を示す図略の位置マーカが設けられる。
【0027】
倉庫側第1走行経路25は、自動倉庫93の第1積み込み口931から、倉庫側合流点27まで延在する。倉庫側第2走行経路26は、第2積み込み口932から、倉庫側合流点27まで延在する。倉庫側第1走行経路25および倉庫側第2走行経路26では、1台の無人搬送車1の進入が可能とされている。無人搬送車1が2台であるとき、ふたつの走行経路(25、26)およびふたつの積み込み口(931、932)が有れば十分である。第1積み込み口931および第2積み込み口932にも、図略の位置マーカが設けられる。なお、当面の搬送物が無いときに待機する待機位置を、目的位置に加えてもよい。
【0028】
連絡走行経路29は、機器側合流点23と倉庫側合流点27とを連絡する。走行経路2の全体が、複数の無人搬送車1に共通とされている。すべての無人搬送車1は、連絡走行経路29を走行して、第1生産機器91および第2生産機器92と自動倉庫93との間を往来する。このため、連絡走行経路29における複数の無人搬送車1の干渉を回避する必要がある。
【0029】
図1において、2台の無人搬送車1は、逆方向から連絡走行経路29に進入する予定であり、干渉のおそれが生じている。2台の無人搬送車1が同方向から連絡走行経路29に進入する場合にも、干渉のおそれが生じる。例えば、或る無人搬送車1が倉庫側第1走行経路25から連絡走行経路29に向かい、別の無人搬送車1が倉庫側第2走行経路26から連絡走行経路29に向かう場合に、干渉のおそれが生じる。
【0030】
機器側第1走行経路21の機器側合流点23に近い傍らに、機器側第1マーカ231が設けられている。機器側第2走行経路22の機器側合流点23に近い傍らに、機器側第2マーカ232が設けられている。同様に、倉庫側第1走行経路25の倉庫側合流点27に近い傍らに、倉庫側第1マーカ271が設けられている。倉庫側第2走行経路26の倉庫側合流点27に近い傍らに、倉庫側第2マーカ272が設けられている。
【0031】
図2に示されるように、生産管理装置3の走行管理部32は、計画部34、設定部35、および指令部36を含む。計画部34は、生産管理部31が把握している第1生産機器91および第2生産機器92の生産作業の進捗状況を取得する。さらに、計画部34は、生産作業の進捗状況に応じて、複数の無人搬送車1の走行計画Pnを設定する。この走行計画Pnは、積載する搬送物の種類、走行開始位置、目的位置、および走行ルートの情報を含む。計画部34は、立案した走行計画Pnを通信部33に送る。通信部33は、各無人搬送車1に対して、それぞれ走行計画Pnを送信する。
【0032】
設定部35は、生産管理部31が把握している第1生産機器91および第2生産機器92の状況から、各無人搬送車1に定まる作業優先度を取得する。作業優先度は、各無人搬送車1に対して可変となる。さらに、設定部35は、作業優先度に基づいて、複数の無人搬送車1の走行優先度をそれぞれ設定する。
図3は、作業優先度を定める三つの要因を説明する図である。三つの要因のうち一要因のみが用いられても、複数の要因が組み合わせられて用いられてもよい。
【0033】
作業優先度を定める第一の要因は、部材または生産器具の必要時期である。例えば、第1生産機器91で、欠品により生産作業が中断している場合、直ちに欠品を解消する必要がある。したがって、欠品した部材または生産器具を積載して走行する無人搬送車1の作業優先度は、「高」と定められる。同様に、欠品した部材または生産器具を積載するために自動倉庫93に向かう無人搬送車1の作業優先度も、「高」と定められる。
【0034】
また、第1生産機器91で、基板のロット生産中に欠品予告が発生した場合、該当する部材または生産器具は、近々に必要となる。したがって、欠品予告が発生した部材または生産器具を積載して走行する無人搬送車1の作業優先度は、「中」と定められる。さらに、第1生産機器91で、次にロット生産する基板の段取り作業に用いられる部材または生産器具は、将来に必要となる。したがって、段取り作業に用いられる部材または生産器具を積載して走行する無人搬送車1の作業優先度は、「低」と定められる。
【0035】
作業優先度を定める第二の要因は、製品の生産順序である。例えば、第1生産機器91で生産する第1基板の生産完了期限が早く、第2生産機器で生産する第2基板の生産完了期限が遅い場合を想定する。この場合、第1生産機器91の生産作業を優先する必要がある。したがって、第1生産機器91への搬送を行う無人搬送車1の作業優先度は、「高」と定められる。一方、第2生産機器92への搬送を行う無人搬送車1の作業優先度は、「低」と定められる。
【0036】
作業優先度を定める第三の要因は、無人搬送車1の走行目的である。例えば、第1生産機器91の生産作業に用いられる部材および生産器具は、搬送が遅れると生産作業に支障が生じるため、重要度が高い。したがって、生産作業に用いられる部材および生産器具の搬送を走行目的とする無人搬送車1の作業優先度は、「高」と定められる。一方、使用済みの生産器具は、返却のための搬送が少し遅れても支障なく、重要度は中程度である。したがって、使用済みの生産器具の返却を走行目的とする無人搬送車1の作業優先度は、「中」と定められる。また、搬送を終了した後に予め設定された待機位置へ戻る走行目的の重要度は低い。したがって、待機位置へ戻る無人搬送車1の作業優先度は、「低」と定められる。
【0037】
設定部35は、作業優先度が高い順番に、複数の無人搬送車1の走行優先度を設定する。設定部35は、複数の無人搬送車1の作業優先度が等しいとき、同じ走行優先度を設定する。なお、三つの要因のいずれかを主要因とし、別の要因を副要因としてもよい。この場合、設定部35は、複数の無人搬送車1の主要因の作業優先度が等しいときに限り、副要因を参照して走行優先度を設定する。
【0038】
指令部36は、複数の無人搬送車1がともに連絡走行経路29に進入する予定がある場合に、設定した走行優先度に基づいて、進入の可否を判定する。換言すると、指令部36は、複数の無人搬送車1が連絡走行経路29で干渉するおそれが生じた場合に、干渉を回避すべく判定する。具体的には、指令部36は、走行優先度の最も高い無人搬送車1に対して、進入可を意味する走行指令C1を割り付ける。また、指令部36は、その他の無人搬送車1に対して、進入否を意味する停止指令C2を割り付ける。
【0039】
なお、複数の無人搬送車1の走行優先度が等しいとき、指令部36は、予め定めたルールに基づいて走行指令C1を割り付ける1台の無人搬送車1を決定する。例えば、指令部36は、走行優先度が等しい複数の無人搬送車1のうち最も早くマーカ(231、232、271、272)に接近した無人搬送車1に、走行指令C1を割り付ける。指令部36は、各無人搬送車1に対する指令Cd(走行指令C1または停止指令C2)を通信部33に送る。通信部33は、各無人搬送車1に対してそれぞれ指令Cdを送信する。
【0040】
また、
図2に示されるように、無人搬送車1は、駆動部11、マーカ検出部12、通信部13、干渉回避部14、および駆動制御部15を有する。駆動部11は、無人搬送車1の走行を駆動する。駆動部11として、回転モータやリニアモータを利用でき、これらに限定されない。マーカ検出部12は、無人搬送車1がマーカ(231、232、271、272)に接近したことを検出して、検出信号Dtを通信部13に送る。また、マーカ検出部12は、位置マーカを検出する。無人搬送車1は、走行中に検出した位置マーカが目的位置を示す場合に停止し、検出した位置マーカが目的位置を示さない場合に走行を継続する。
【0041】
通信部13は、生産管理装置3の通信部33との通信により情報の授受を行う。通信部13および通信部33は、双方向の無線通信機能をもち、これに限定されず任意の通信方式を採用できる。通信部13は、通信部33から走行計画Pnおよび指令Cdを受信する。また、通信部13は、無人搬送車1の状況を表す接近信号Sa、方向信号Sd、および停止中信号Ssを通信部33に送信する。
【0042】
接近信号Saは、通信部13が検出信号Dtを受け取ったときに送信される。方向信号Sdは、接近信号Saに付随して送信される。方向信号Sdは、無人搬送車1の走行方向を意味する。すなわち、方向信号Sdは、連絡走行経路29に進入する進入方向、および、連絡走行経路29から出てくる(退出する)退出方向の一方を意味する。停止中信号Ssは、無人搬送車1が所定の目的位置に到達して停止しており、すぐには走行を再開しないことを表す。
【0043】
干渉回避部14は、指令部36からの指令Cdにしたがって、連絡走行経路29への進入を実行するか否かを制御する。駆動制御部15は、通常時には、走行計画Pnにしたがって駆動部11を制御する。また、駆動制御部15は、干渉回避部14の動作時には、干渉回避部14の制御にしたがって駆動部11を制御する。
【0044】
3.第1実施形態の無人搬送車1および無人搬送車制御システム8の動作
次に、第1実施形態の無人搬送車1および無人搬送車制御システム8の動作について説明する。
図4は、無人搬送車1の動作を説明する動作フローの図である。また、
図5は、生産管理装置3の走行管理部32の動作を説明する動作フローの図である。走行管理部32は、複数の無人搬送車1に対し、
図5に示される動作フローを並行して用いる。
【0045】
図4のステップS1で、無人搬送車1の通信部13は、走行計画Pnを受信する。次のステップS2で、無人搬送車1は、走行計画Pnにしたがい、走行経路2に沿って走行する。次のステップS3で、無人搬送車1は、走行計画Pnに設定された目的位置に到達したか否かを判定する。目的位置に到達した場合のステップS4で、無人搬送車1は、目的位置に停止して、部材や生産器具の積み下ろしなどの作業が可能な状態となる。次のステップS5で、通信部13は、停止中信号Ssを送信する。これにより、走行計画Pnの実行が終了する。この後、動作フローの実行がステップS1に戻されて、次の走行計画Pnが開始される。
【0046】
ステップS3で、目的位置に到達していない場合、動作フローの実行はステップS6に進められる。ステップS6で、マーカ検出部12の検出信号Dtの有無が判定される。検出信号Dtが無い場合、動作フローの実行はステップS2に戻されて、無人搬送車1は、走行を継続する。
【0047】
検出信号Dtが有る場合のステップS7で、無人搬送車1は一時停止する。無人搬送車1の停止位置は、いずれかのマーカ(231、232、271、272)の近傍となる。次のステップS8で、通信部13は、接近信号Saおよび方向信号Sdを送信する。この送信は、走行継続の可否を走行管理部32に問い合わせることに相当する。
【0048】
次のステップS9で、通信部13は、指令Cdを受信する。次のステップS10で、無人搬送車1の干渉回避部14は、指令Cdが走行指令C1であるか停止指令C2であるかを判定する。指令Cdが走行指令C1である場合、動作フローの実行はステップS2に戻され、無人搬送車1は、走行を継続する。走行指令C1は、走行優先度が最も高くて、連絡走行経路29を優先して走行できることを意味する。したがって、無人搬送車1は、連絡走行経路29へ進入できる。なお、走行指令C1は、連絡走行経路29から出てきた退出方向の走行を継続してよいことを意味する場合もある。
【0049】
指令Cdが停止指令C2である場合、動作フローの実行はステップS9に戻される。ステップS9で、無人搬送車1は、一時停止の状態を継続する。通信部13は、次回の指令Cdを受信する。停止指令C2は、走行優先度の高い他の無人搬送車1が、連絡走行経路29を走行中、または、連絡走行経路29に進入予定であることを意味する。したがって、当該の無人搬送車1は、停止指令C2を受信している間、ステップS9およびステップS10からなる動作ループを繰り返す。
【0050】
他の無人搬送車1が連絡走行経路29から退出すると、当該の無人搬送車1への停止指令C2が走行指令C1に変更される。すると、当該の無人搬送車1は、動作ループを抜ける。これにより、当該の無人搬送車1は、ステップS2で連絡走行経路29への進入が可能となる。このように、干渉回避部14は、指令Cdに基づいて連絡走行経路29への進入を実行するか否かを制御するので、複数の無人搬送車1の干渉が発生しない。
【0051】
一方、
図5のステップS21で、走行管理部32の計画部34は、生産管理部31から取得した生産作業の進捗状況に基づいて、走行計画Pnを設定する。次のステップS22で、通信部33は、走行計画Pnを送信する。次のステップS23で、設定部35は、生産作業の状況から無人搬送車1に定まる作業優先度を取得する。さらに、設定部35は、作業優先度に基づいて、複数の無人搬送車1の走行優先度をそれぞれ設定する。
【0052】
次のステップS24で、通信部33は、停止中信号Ssを受信しているか否か判定する。停止中信号Ssを受信している場合、走行管理部32は、無人搬送車1が目的位置に到達したことを認識して、動作フローの実行をステップS25に分岐させる。ステップS25で、走行管理部32は、目的位置での作業、例えば積み下ろし作業の終了を待つ。作業が終了すると、動作フローの実行はステップS21に戻され、計画部34は、次の走行計画Pnを設定する。
【0053】
ステップS24で、停止中信号Ssを受信していない場合、動作フローの実行はステップS26に進められる。ステップS26で、通信部33は、接近信号Saおよび方向信号Sdを受信しているか否か判定する。受信していない場合に、動作フローの実行はステップS24に戻される。受信している場合のステップS27で、指令部36は、連絡走行経路29における当該の無人搬送車1と他の無人搬送車1の干渉のおそれの有無を判定する。
【0054】
具体的に、指令部36は、当該の無人搬送車1の方向信号Sdが進入方向を意味しない場合、すなわち退出方向を意味する場合に、干渉のおそれは無いと判定する。つまり、当該の無人搬送車1は、連絡走行経路29に進入しないので、他の無人搬送車1と干渉しない。また、指令部36は、当該の無人搬送車1以外の他の無人搬送車1が停止中信号Ssを送信している場合に、干渉のおそれは無いと判定する。つまり、他に走行中の無人搬送車1が無いため、当該の無人搬送車1が連絡走行経路29に進入しても、干渉は生じない。さらに、指令部36は、他の無人搬送車1が退出方向に走行している場合に、干渉のおそれは無いと判定する。なお、他の無人搬送車1の退出方向への走行は、至近に受信した方向信号Sdから判別可能である。
【0055】
一方、指令部36は、他の無人搬送車1が進入方向に走行している場合に、干渉のおそれが有ると判定する。その理由は、短時間のうちに他の無人搬送車1がいずれかのマーカ(231、232、271、272)の近傍を通り連絡走行経路29に進入する、と予測されるからである。なお、他の無人搬送車1の進入方向への走行は、停止中信号Ssが至近に解消されたことから判別可能である。指令部36は、干渉のおそれが無い場合に、動作フローの実行をステップS28に分岐させ、干渉のおそれが有る場合に、動作フローの実行をステップS29に進める。
【0056】
干渉のおそれが無い場合のステップS28で、通信部33は、走行指令C1を当該の無人搬送車1に送信する。この後、動作フローの実行は、ステップS24に戻される。干渉のおそれが有る場合のステップS29で、指令部36は、複数の無人搬送車1に対して、走行優先度に基づく判定を行う。すなわち、指令部36は、走行優先度の最も高い特定の無人搬送車1に対して、走行指令C1を割り付ける。また、指令部36は、特定以外の他の無人搬送車1に対して、停止指令C2を割り付ける。なお、複数の無人搬送車1の走行優先度が等しいとき、指令部36は、前述したルールに基づいて走行指令C1および停止指令C2を割り付ける。
【0057】
次のステップS30で、通信部33は、当該の無人搬送車1に対して指令Cdを送信する。当該の無人搬送車1が特定の無人搬送車1であれば、指令Cdは走行指令C1となる。当該の無人搬送車1が特定以外の無人搬送車1であれば、指令Cdは停止指令C2となる。この後、動作フローの実行は、ステップS24に戻される。第1実施形態において、複数の無人搬送車1の干渉は、走行管理部32からの指令Cdにより回避される。
【0058】
第1実施形態の無人搬送車1は、生産作業の状況から定まる作業優先度に基づいて走行優先度が可変に設定され、自身の走行優先度が他の無人搬送車1の走行優先度よりも高い場合に、走行経路2を優先して走行する。これによれば、高い作業優先度に対応する部材や生産器具を積載した無人搬送車1は、走行経路2を優先して走行するので、他の無人搬送車1と干渉しない。また、高い作業優先度に対応する生産作業は、タイムリーに部材や生産器具が搬送されてくるので、遅滞することがない。さらに、生産作業が仮に中断しても、中断時間が限定される。したがって、第1生産機器91および第2生産機器92の稼働率を高く維持できる。
【0059】
また、第1実施形態の無人搬送車制御システム8は、生産作業の状況から定まる作業優先度に基づいて、複数の無人搬送車1の走行優先度をそれぞれ設定する設定部35と、複数の無人搬送車1がともに連絡走行経路29に進入する予定がある場合に、各無人搬送車1に設定された走行優先度に基づいて、各無人搬送車1の連絡走行経路29への進入の可否を制御する指令部36および干渉回避部14と、を備える。これによれば、複数の無人搬送車1の干渉を防止しつつ、第1生産機器91および第2生産機器92の稼働率を高く維持できる。
【0060】
4.第2実施形態の無人搬送車1Aおよび無人搬送車制御システム8A
次に、第2実施形態の無人搬送車1Aおよび無人搬送車制御システム8Aについて、第1実施形態と異なる点を主にして説明する。第2実施形態において、周辺の構成は第1実施形態と同じであり、走行経路2も第1実施形態と同じである。
図6は、第2実施形態の無人搬送車制御システム8Aの機能構成を示すブロック図である。第2実施形態において、生産管理装置3の走行管理部32Aの一部、および無人搬送車1Aの一部が、第1実施形態と異なる。
【0061】
図6に示されるように、走行管理部32Aは、計画部34および取得部37を含む。計画部34の機能は、第1実施形態と同じである。取得部37は、生産管理部31が把握している第1生産機器91および第2生産機器92の状況から、各無人搬送車1Aに定まる作業優先度Wpを取得する。さらに、取得部37は、各作業優先度Wpを通信部33に送る。通信部33は、各無人搬送車1Aの通信部13Aに走行計画Pnおよび作業優先度Wpを送信する。
【0062】
また、無人搬送車1Aは、駆動部11、マーカ検出部12、通信部13A、記憶部16、判断部17、および干渉回避部18を有する。駆動部11およびマーカ検出部12の機能は、第1実施形態と同じである。通信部13Aは、生産管理装置3の通信部33との通信により情報の授受を行う。通信部13Aは、通信部33から走行計画Pnおよび作業優先度Wpの情報を受信する。また、通信部13Aは、通信部33に停止中信号Ssを送信する。
【0063】
さらに、通信部13Aは、複数の無人搬送車1Aの相互間における双方向の無線通信機能を有する。複数の無人搬送車1Aの各通信部13Aは、作業優先度Wpの情報、ならびに、接近信号Sa、方向信号Sd、および停止中信号Ssを相互に交換する。記憶部16は、自身の作業優先度Wpの情報を記憶するとともに、取得した他の無人搬送車1Aの作業優先度Wpの情報を一時記憶する。
【0064】
判断部17は、他の無人搬送車1Aと作業優先度Wpの情報を相互に比較して、自身(当該の無人搬送車1A)の走行優先度の高低を判断する。干渉回避部18は、自身(当該の無人搬送車1A)および他の無人搬送車1Aがともに連絡走行経路29に進入する予定がある場合に、判断部17の判断結果に基づいて、連絡走行経路29への進入を実行するか否かを制御する。干渉回避部18は、通常時には、走行計画Pnにしたがって駆動部11を制御する。
【0065】
次に、第2実施形態の無人搬送車1Aおよび無人搬送車制御システム8Aの動作について説明する。
図7は、第2実施形態の無人搬送車1Aの動作を説明する動作フローの図である。また、
図8は、第2実施形態の生産管理装置3の走行管理部32Aの動作を説明する動作フローの図である。走行管理部32Aは、複数の無人搬送車1Aに対し、
図8に示される動作フローを並行して用いる。
【0066】
図7のステップS1Aで、無人搬送車1Aの通信部13Aは、通信部33から走行計画Pnおよび作業優先度Wpの情報を受信する。続いて、記憶部16は、自身の作業優先度Wpの情報を記憶する。この後のステップS2からステップS7までは、第1実施形態と同じである。ステップS7で、無人搬送車1は、マーカ(231、232、271、272)の近傍で一時停止する。次のステップS14で、通信部13Aは、他の無人搬送車1Aの通信部13Aとの双方向の無線通信により、他の無人搬送車1Aの作業優先度Wpの情報、接近信号Sa、方向信号Sd、および停止中信号Ssを取得する。
【0067】
次のステップS15で、判断部17は、連絡走行経路29における他の無人搬送車1Aとの干渉のおそれの有無を判定する。判定方法は、
図5のステップS27に類似する。すなわち、判断部17は、自身(当該の無人搬送車1A)の走行方向が連絡走行経路29からの退出方向であるときに、干渉のおそれは無いと判定する。また、判断部17は、他の無人搬送車1Aが停止している場合に、干渉のおそれは無いと判定する。さらに、判断部17は、他の無人搬送車1Aが退出方向に走行している場合に、干渉のおそれは無いと判定する。一方、判断部17は、他の無人搬送車1Aが進入方向に走行している場合に、干渉のおそれが有ると判定する。
【0068】
干渉のおそれが無い場合に、判断部17は、動作フローの実行をS2に戻して、走行を継続する。干渉のおそれが有る場合のステップS16で、判断部17は、他の無人搬送車1Aと作業優先度Wpの情報を相互に比較して、自身の走行優先度の高低を判断する。次のステップS17で、干渉回避部18は、自身の作業優先度が高い場合に、動作フローの実行をS2に戻して、走行を継続する。また、干渉回避部18は、自身の作業優先度が低い場合に、動作フローの実行をS18に進める。なお、複数の無人搬送車1Aの作業優先度が等しい場合、第1実施形態で説明したルールが用いられる。
【0069】
ステップS18で、干渉回避部18は、一時停止を継続して、動作フローの実行をS14に戻す。これにより、当該の無人搬送車1Aは、ステップS14からステップS18までの動作ループを繰り返す。他の無人搬送車1Aが連絡走行経路29を抜けて退出した後のステップS14で、他の無人搬送車1Aから接近信号Sa、および退出方向を意味する方向信号Sdが送信される。したがって、ステップS15で干渉のおそれがなくなり、当該の無人搬送車1Aは、動作ループを抜ける。
【0070】
動作ループから抜けた後のステップS2で、当該の無人搬送車1Aは、走行を再開し、連絡走行経路29への進入が可能となる。このように、判断部17および干渉回避部18は、他の無人搬送車1Aとの作業優先度Wpの比較に基づいて連絡走行経路29への進入を実行するか否かを制御するので、複数の無人搬送車1Aの干渉が発生しない。
【0071】
一方、
図8のステップS41で、走行管理部32Aの計画部34は、生産管理部31から取得した生産作業の進捗状況に基づいて、走行計画Pnを設定する。次のステップS42で、取得部37は、各無人搬送車1Aに定まる作業優先度Wpを取得する。次のステップS43で、通信部33は、各無人搬送車1Aの通信部13Aに走行計画Pnおよび作業優先度Wpを送信する。次のステップS44で、通信部33は、停止中信号Ssの受信を待つ。停止中信号Ssを受信していない場合、ステップS44が繰り返される。
【0072】
通信部33が停止中信号Ssを受信すると、走行管理部32Aは、無人搬送車1Aが目的位置に到達したことを認識して、動作フローの実行をステップS45に進める。ステップS45で、走行管理部32Aは、目的位置における作業の終了を待つ。作業が終了すると、動作フローの実行はステップS41に戻され、計画部34は、次の走行計画Pnを設定する。第2実施形態において、複数の無人搬送車1Aの干渉は、双方向通信による作業優先度Wp等の情報交換によって、自律的に回避される。
【0073】
第2実施形態の無人搬送車1Aは、作業優先度Wpの情報を記憶する記憶部16と、他の無人搬送車1Aとの通信により、作業優先度Wpの情報を相互に比較して、自身の走行優先度の高低を判断する判断部17と、自身の無人搬送車1Aおよび他の無人搬送車1Aがともに連絡走行経路29に進入する予定がある場合に、判断部17の判断結果に基づいて、連絡走行経路29への進入を実行するか否かを制御する干渉回避部18と、を備える。これによれば、第1実施形態と同様に、無人搬送車1Aは、他の無人搬送車1Aと干渉しない。また、作業優先度に対応する搬送が行われるので、第1生産機器91および第2生産機器92の稼働率を高く維持できる。
【0074】
また、第2実施形態の無人搬送車制御システム8Aは、第1実施形態と比較して、走行管理部32の干渉回避の機能の一部が無人搬送車1Aの側に移されている。それでも、無人搬送車制御システム8Aは、第1実施形態と同様に、複数の無人搬送車1Aの干渉を防止しつつ、第1生産機器91および第2生産機器92の稼働率を高く維持できる。
【0075】
5.実施形態の変形および応用
なお、生産機器(91、92)は対基板作業ラインに限定されず、適用される周辺の構成は変形可能である。また、第1および第2実施形態は、さらに複雑な走行経路の構成や、無人搬送車(1、1A)が3台以上の場合にも応用することもできる。さらに、
図4および
図7におけるステップS7の一時停止は、必須でない。つまり、無人搬送車(1、1A)は、マーカ(231、232、271、272)の近傍を走行しながら動作フローを実行して、停止する必要が有る場合に限り一時停止するようにしてもよい。
【0076】
また、走行経路2上の任意の位置を検出する機能を無人搬送車(1、1A)に持たせ、マーカ(231、232、271、272)、位置マーカ、およびマーカ検出部12を省略してもよい。この態様でも、第1および第2実施形態と同様に、複数の無人搬送車(1、1A)の干渉を回避できる。さらに、連絡走行経路29に並行する迂回路を設け、干渉のおそれがあるときに、走行優先度の低い無人搬送車(1、1A)は迂回路を走行するようにしてもよい。第1および第2実施形態は、他にも様々な変形や応用が可能である。