特許第6986096号(P6986096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986096
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   A61F13/494 110
【請求項の数】21
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-561498(P2019-561498)
(86)(22)【出願日】2017年12月27日
(86)【国際出願番号】JP2017047069
(87)【国際公開番号】WO2019130509
(87)【国際公開日】20190704
【審査請求日】2020年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有田 光佑
(72)【発明者】
【氏名】福田 優子
(72)【発明者】
【氏名】奥田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】植田 章之
【審査官】 武井 健浩
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/213096(WO,A1)
【文献】 特開2005−7076(JP,A)
【文献】 特開2014−230571(JP,A)
【文献】 特開2000−262555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の両側部域それぞれに、長手方向に沿って延びる防漏カフを備え、
前記防漏カフは、該防漏カフの長手方向に沿って延びる折り目部において折り曲げられて上方域と下方域とに区分されており、
前記折り目部において折り曲げられた状態の前記防漏カフは、該折り目部が、該防漏カフにおける自由縁部よりも幅方向内方に位置しており、
前記上方域は、該上方域の幅方向の中央を基準として自由縁部側に位置する第1領域と前記折り目部側に位置する第2領域とを有し、
前記第1領域及び前記第2領域それぞれに、長手方向に沿って延びる弾性部材が伸長状態で1本以上配されており、
前記上方域の自然状態での伸び量を0とし、最大伸長状態での伸び量を100と定義したとき、
前記伸び量が5であるときには、前記第1領域の応力σ1が、前記第2領域の応力σ2よりも大きく、
前記伸び量が100であるときには、前記第2領域の応力σ2が、前記第1領域の応力σ1よりも大きい、吸収性物品。
【請求項2】
自然状態において、前記第2領域において前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材が配されている部位での該第2領域の長さよりも、前記第1領域において前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材が配されている部位での該第1領域の長さの方が短くなっている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記弾性部材のうち、前記第2領域において前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材の伸長率よりも、前記第1領域において前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材の伸長率の方が高くなっている請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記弾性部材のうち、前記第1領域において前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材のモジュラスよりも、前記第2領域において前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材のモジュラスの方が高くなっている請求項1ないし3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記弾性部材のうち、前記第1領域において前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材の太さよりも、前記第2領域において前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材の太さの方が太くなっている請求項1ないし4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記上方域に、長手方向に延びる前記弾性部材が伸長状態で3本以上配されており、
前記第2領域に位置する弾性部材の本数が、前記第1領域に位置する弾性部材の本数よりも多くなっている請求項1ないし5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記上方域に位置する弾性部材は、隣り合う該弾性部材の間隔がすべて同じになっているか、又は該間隔が前記折り目部に向かうほど短くなっている請求項1ないし6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記伸び量が6以上70以下の範囲で、前記第1領域の応力σ1と、前記第2領域の応力σ2との大小関係が逆転する請求項1ないし7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記上方域に、長手方向に延びる前記弾性部材が伸長状態で3本以上配されており、
前記第1領域において前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材の伸長率は、前記第2領域に配置されたすべての弾性部材の伸長率よりも高く、
前記弾性部材は、前記折り目部に最も近い側に位置するものから、前記自由縁部に最も近い側に位置するものに向けて、伸長率が漸次高くなっている請求項1ないし8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記上方域に、長手方向に延びる前記弾性部材が伸長状態で3本以上配されており、
前記第2領域に配置されたすべての弾性部材の太さは、前記第1領域において自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材の太さよりも太く、
前記弾性部材は、前記自由縁部に最も近い側に位置するものから、前記折り目部に最も近い側に位置するものに向けて、太さが漸次太くなっている請求項1ないし9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記弾性部材のうち、前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材は、前記防漏カフに固定されている長さが最も長くなっている請求項1ないし10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記折り目部が表面シート上に位置している請求項1ないし11のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記折り目部が吸収体上に位置している請求項1ないし12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記弾性部材は、長手方向における端部に位置する前記防漏カフとの2つの固定端のうち少なくとも一方の固定端が、吸収性コアの長手方向における端縁よりも、長手方向の内側に位置している請求項1ないし13のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記下方域は、長手方向における端部域において、その内面が表面シートと接合されて第1接合部を形成しており、
前記第1接合部は、幅方向の内側から外側に向かうに連れて、長手方向に沿う長さが増加している請求項1ないし14のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項16】
前記下方域及び前記上方域は、長手方向における端部域において、それらの外面どうしが接合されて第2接合部を形成している請求項1ないし15のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項17】
前記第2接合部は、幅方向の外側から内側に向かうに連れて、長手方向に沿う長さが増加している請求項16に記載の吸収性物品。
【請求項18】
前記自由縁部は、吸収体の側縁上に位置しているか、又は該側縁よりも幅方向の内側に位置している請求項1ないし17のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項19】
着用状態において、着用者の腹側に配される腹側部及び背側に配される背側部並びにそれらの間に位置する股下部を有し、
前記腹側部寄りに位置するレッグ開口部に沿って腹側部レッグ弾性部材が配されているとともに、前記背側部寄りに位置するレッグ開口部に沿って背側部レッグ弾性部材が配されており、
前記腹側部レッグ弾性部材及び前記背側部レッグ弾性部材は、それらの一端がそれぞれ前記腹側部及び前記背側部の各側縁の位置において終端しているとともに、それらの他端を含む他端域が前記股下部において幅方向の内側に向けて延びている請求項1ないし18のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項20】
展開且つ伸長状態の前記吸収性物品の平面視において、前記腹側部レッグ弾性部材及び前記背側部レッグ弾性部材と、前記防漏カフの前記弾性部材とが、前記股下部において厚み方向に重なっている請求項19に記載の吸収性物品。
【請求項21】
展開且つ伸長状態の前記吸収性物品の平面視において、前記股下部において厚み方向に重なっている前記腹側部レッグ弾性部材と前記背側部レッグ弾性部材との交点が、前記防漏カフの前記弾性部材のうち、前記第1領域における前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材よりも、幅方向の内側に位置している請求項19又は20に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防漏カフを備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品においては、該物品の着用状態において、着用者の脚周りでの密着性を高め、該物品からの液漏れを防止することを目的として、幅方向の両側部域に、長手方向に沿って延びる防漏カフが配置されることがある。例えば特許文献1には、使い捨ておむつの内面において前後方向へ延びる防漏カフが、おむつ内面から起立可能な突出部と、突出部から内方への第1張り出し部及び外方への第2張り出し部からなるシール面域とを有することが記載されている。シール面域内側縁部に位置する第1張り出し部の第1弾性部材は、シール面域外側縁部に位置する第2張り出し部の第2弾性部材よりも高い伸長応力を有する。
【0003】
特許文献2には、起立カフスを有する使い捨て吸収性物品において、該起立カフスが、これを長手方向に伸長した状態で、その起立端から物品の中央側に向かう起立部と、途中で折り返し反転して外側に向かう平面当り部とを有することが記載されている。平面当り部及び起立部には弾性伸縮部材がそれぞれ幅方向に間隔をおいて複数本配されている。
【0004】
特許文献3には、弾性伸縮部材が配置された立体ギャザーを有する吸収性物品において、該立体ギャザー部分に、複数の弾性伸縮部材を、位相をずらして接着することにより、及び/又は複数の弾性伸縮部材間の収縮力を変えることにより、弾性伸縮部材の収縮力による溝又は皺を吸収性物品の幅方向と交差する方向に発生させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−276520号公報
【特許文献2】特開2001−25485号公報
【特許文献3】特開2004−290498号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、幅方向の両側部域それぞれに、長手方向に沿って延びる防漏カフを備えた吸収性物品を提供するものである。
前記防漏カフは、該防漏カフの長手方向に沿って延びる折り目部において折り曲げられて上方域と下方域とに区分されている。
前記折り目部において折り曲げられた状態の前記防漏カフは、該折り目部が、該防漏カフにおける自由縁部よりも幅方向内方に位置している。
前記上方域は、該上方域の幅方向の中央を基準として自由縁部側に位置する第1領域と前記折り目部側に位置する第2領域とを有している。
前記第1領域及び前記第2領域それぞれに、長手方向に沿って延びる弾性部材が伸長状態で1本以上配されている。
前記上方域の自然状態での伸び量を0とし、最大伸長状態での伸び量を100と定義したとき、
前記伸び量が5であるときには、前記第1領域の応力σ1が、前記第2領域の応力σ2よりも大きく、
前記伸び量が100であるときには、前記第2領域の応力σ2が、前記第1領域の応力σ1よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつを模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すおむつの展開且つ伸長状態における肌対向面側を模式的に示す展開平面図である。
図3図3は、図1に示すおむつを分解して模式的に示す分解斜視図である。
図4図4は、図2におけるIV−IV線断面図である。
図5図5は、図2におけるV−V線断面図である。
図6図6は、防漏カフに取り付けられた弾性部材の伸び率と応力との関係を示すグラフである。
図7図7は、図1に示すおむつを着用者に着用させたときの股間部の状態を示す模式図である。
図8図8は、図1に示すおむつを着用者に着用させたときの股間部の別の状態を示す模式図である。
図9図9(a)ないし(c)は、防漏カフの下方域と表面シートとの接合領域を示す斜視図である。
図10図10(a)ないし(c)は、防漏カフの下方域と上方域との接合領域を示す斜視図である。
図11図11は、図1に示すおむつの股下部の要部を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
吸収性物品に防漏カフを設けることで、吸収性物品と着用者の脚周りとの密着性は向上する傾向にある。しかし、着用者の姿勢が変化することに起因して、吸収性物品と着用者の脚周りとの距離が変化すると、防漏カフが着用者の脚周りへ当接する程度が変化して、吸収性物品と着用者の脚周りとの密着性が低下して両者間に隙間が生じることがある。そのような隙間は液漏れの発生の一因となる。
【0009】
本発明は、防漏カフを有する吸収性物品の改良に関し、更に詳しくは防漏カフと着用者の脚周りとの密着性が更に向上した吸収性物品に関する。
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1ないし図3には、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ1の概略構成が示されている。おむつ1は、着用者の腹側に配される腹側部1A及び背側に配される背側部1Cとそれらの間に位置する股下部1Bとを有する。おむつ1は、腹側部1Aから股下部1Bを介して背側部1Cに延びる長手方向Xと、これに直交する幅方向Yとを有している。
【0011】
おむつ1は、吸収体23、該吸収体23の肌対向面側に配された表面シート21及び該吸収体23の非肌対向面側に配された裏面シート22を有する吸収性本体2と、該吸収性本体2の非肌対向面側に位置して該吸収性本体2を固定している外装体3とを有する。おむつ1においては、腹側部1Aにおける外装体3及び背側部1Cにおける外装体3それぞれの長手方向Xに沿う両側縁部どうしが接合されており、それによって一対のサイドシール部S,S、並びに着用者の胴が通されるウエスト開口部WH、及び着用者の下肢が通される一対のレッグ開口部LH,LHが形成されている。
【0012】
本明細書において、「肌対向面」は、おむつ1又はその構成部材(例えば表面シート)における、おむつ1の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、おむつ1又はその構成部材における、おむつ1の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち当該使い捨ておむつ1の正しい着用位置が維持された状態を意味し、おむつ1が該着用位置からずれた状態にある場合は含まない。
【0013】
腹側部1A及び背側部1Cは、いずれも長手方向Xに沿って見たときサイドシール部Sと同位置にある部分であり、おむつ1の着用時に着用者の胴回りに配される胴回り部である。股下部1Bは、外装体3の長手方向Xに沿う両側縁部にレッグ開口部LH,LH形成用の凹欠部が形成されている領域である。股下部1Bは、おむつ1の着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部を有しており、該排泄部対向部は通常、おむつ1の長手方向Xの中央部又はその近傍に位置している。
【0014】
吸収性本体2は、図2に輪郭線で示したように平面視して長方形形状をなしている。吸収性本体2は、その長手方向を、展開且つ伸長状態におけるおむつ1の長手方向Xに一致させて、外装体3の幅方向Yの中央部に固定されている。外装体3は、図2に示すとおり、おむつ1の伸長状態においておむつ1の外形を形作っており、外装体3の周縁は、その状態のおむつ1の輪郭線を形成している。おむつ1の「伸長状態」とは、おむつ1をサイドシール部Sで切り離して展開状態とし、その展開状態のおむつ1を各部の弾性部材を伸長させて設計寸法、すなわち弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に拡げたときの寸法と同じとなるまで拡げた状態をいう。
【0015】
吸収性本体2は、肌対向面を形成する液透過性の表面シート21、非肌対向面を形成する液不透過性若しくは液難透過性又は撥水性の裏面シート22、及び両シート21,22間に介在配置された液保持性の吸収体23を具備しており、これらが接着剤等の公知の接合手段により一体化されて構成されている。吸収体23は、おむつ1の幅方向Yの中央部に位置している。表面シート21及び裏面シート22としては、それぞれ、この種の吸収性物品に従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート21として各種の不織布や開孔フィルム等を用いることができる。裏面シート22としては樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布等とのラミネート等を用いることができる。
【0016】
吸収体23は、図3に示すとおり、平面視において長手方向Xに沿って延びる略長方形形状をなし、腹側部1Aから背側部1Cまでにわたって延在している。吸収体23は、吸収性材料を含む液保持性の吸収性コア(図示せず)と、該吸収性コアの肌対向面及び非肌対向面を被覆するコアラップシート(図示せず)とを含んで構成されている。吸収性コアとコアラップシートとの間は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されている。
【0017】
吸収性コアは、吸収性材料を含むコア形成材料が積繊されてなる。吸収性材料としては、この種の吸収性コアの形成材料として通常用いられるものを特に制限なく用いることができる。吸収性コアの形成材料として、例えば木材パルプ、親水化剤により処理された合成繊維等の親水性繊維や吸水性ポリマー粒子が挙げられる。吸収性コアは、親水性繊維の積繊体、あるいは該積繊体に吸水性ポリマー粒子を担持させたものであり得る。コアラップシートとしては、透水性のシート材を用いることができ、例えば、紙及び不織布等を用いることができる。吸収性コアは、おむつ1の具体的な用途に応じて単層構造又は多層構造であり得る。
【0018】
図2及び図3に示すとおり、おむつ1は、吸収性本体2の肌対向面において、幅方向Yの両側部域それぞれに、長手方向Xに沿って延びる一対の防漏カフ28,28を備えている。防漏カフ28は、例えば液抵抗性又は撥水性で且つ通気性のシート材から構成されている。図4に示すとおり、防漏カフ28は長手方向Xに沿って延びる基端部28A及び自由縁部28Bを有している。図2及び図3に示すとおり、防漏カフ28には糸状の防漏カフ形成用弾性部材29が2本以上伸長状態で配されている。防漏カフ28は、伸長状態で配された弾性部材29がおむつ1の着用時に収縮することによって少なくとも股下部1Bで起立し、それによって尿等の排泄液の幅方向Yの外方への流出を阻止する。防漏カフ28の詳細については後述する。
【0019】
外装体3は、図2に示すとおり、前身頃の胴回り部である腹側部1A、及び後身頃の胴回り部である背側部1C、腹側部1Aと背側部1Cとに挟まれた股下部1Bにわたって配されている。外装体3は、その長手方向Xに沿う両側縁が股下部1Bにおいて内向きの円弧状に湾曲して一対のレッグ縁部を形成している。外装体3は、図2に示すとおり、その平面視において、長手方向Xの中央域が幅方向Yの内方に向けて括れた砂時計状の形状を有している。外装体3は、腹側部1Aにおける長手方向Xに沿う両側縁部A1,A2と背側部1Cにおける長手方向Xに沿う両側縁部C1,C2とが、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されており、その接合によって、図1に示すとおり、おむつ1に一対のサイドシール部S,Sが形成され、更にウエスト開口部WH及び一対のレッグ開口部LH,LHが形成されている。図2及び図3に示すとおり、外装体3におけるレッグ開口部LHの開口縁部を構成する部位には、レッグギャザーを形成するレッグ弾性部材4が伸長状態で配されている。レッグ弾性部材4は、糸状又は帯状であり、外装体3を構成する外層シート31と内層シート32との間に接着剤により挟持固定されている。
【0020】
図2及び図3に示すとおり、レッグ弾性部材4は、腹側部1A寄りに位置するレッグ開口部に沿って配されている腹側部レッグ弾性部材4Aと、背側部1C寄りに位置するレッグ開口部に沿って配されている背側部レッグ弾性部材4Cとからなる。腹側部レッグ弾性部材4A及び背側部レッグ弾性部材4Cは、それらの一端がそれぞれ腹側部1A及び背側部1Cの各側縁の位置において終端している。これとともに、図3に示すとおり、腹側部レッグ弾性部材4A及び背側部レッグ弾性部材4Cは、それらの他端を含む他端域4a’,4c’が股下部1Bにおいて幅方向Yの内側に向けて延びている。
【0021】
外装体3は、図3に示すとおり、吸収性本体2から相対的に遠い側に位置する外層シート31と、吸収性本体2から相対的に近い側に位置する内層シート32とを含んで構成されている。おむつ1の着用状態において、内層シート32は着用者の身体に近い側に位置して、おむつ1の肌対向面である内面を形成し、外層シート31は着用者の身体から遠い側に位置して、おむつ1の非肌対向面である外面を形成する。外層シート31と内層シート32とは、所定の部位において接着剤等の公知の接合手段により互いに接合されている。
【0022】
図3に示すとおり、外層シート31は、内層シート32と同形状・同寸法の部分に加えて更に、両シート31,32を積層した際に内層シート32の腹側部1A側の長手方向Xの端部から外方に延出する腹側延出部31Eと、内層シート32の背側部1C側の長手方向Xの端部から外方に延出する背側延出部31Eとを有している。外層シート31の両延出部31E,31Eは、それぞれ、図2に示すとおり、内層シート32上に配置固定された吸収性本体2の長手方向Xの両端部を覆うように、内層シート32側に折り返され、接着剤によって、両延出部31E,31Eと対向するおむつ1の他の構成部材(内層シート32、吸収性本体2、防漏カフ28)に固定されている。この外層シート31の延出部31Eは、疎水性シートとして機能する。
【0023】
外装体3は、腹側部1A及び背側部1Cの少なくとも一方に、幅方向Yに伸縮性を有する伸縮部を有している。ここでいう「外装体の伸縮部」とは、外装体3における幅方向Yに伸縮性を有する部位であり、本実施形態においては、外装体3における腹側部1A及び背側部1Cに位置する部分が伸縮部である。更に説明すると、本実施形態においては、外装体3を構成する外層シート31及び内層シート32は、いずれも伸縮性を有していない非伸縮性シートであるが、腹側部1A及び背側部1Cそれぞれにおける両シート31,32間には、複数の胴回り弾性部材5が幅方向Yに伸長した状態で配されており、その複数の胴回り弾性部材5の幅方向Yの伸縮性によって、「外装体3における腹側部1Aに位置する部分」及び「外装体3における背側部1Cに位置する部分」が、それぞれ、その全域にわたって幅方向Yに伸縮性を有し、前記「伸縮部」となっている。
【0024】
図4に示すとおり、防漏カフ28は、基端部28Aと自由縁部28Bとの間において、該防漏カフ28の長手方向に沿って延びる折り目部42において折り曲げられて、基端部28A側に位置する下方域40と、自由縁部28B側に位置する上方域41とに区分される。おむつ1の自然状態では、少なくとも股下部1Bにおいて、折り目部42において折り曲げられた状態の防漏カフ28は、該折り目部42が、該防漏カフ28における自由縁部28Bよりも幅方向Yの内方に位置している。したがって、防漏カフ28は、折り目部42において屈曲している。下方域40及び上方域41はいずれも長手方向Xに沿って延びており、平面視していずれも略矩形をしている。下方域40及び上方域41は、防漏カフ28を構成する1枚のシートの一部分を構成している。本明細書において自然状態とは、おむつ1に外力を加えない弛緩状態のことであり、更に詳しくは、防漏カフ28の上方域41の伸び量が0のときの状態のことである。伸び量については後述する。
【0025】
図2及び図3に示すとおり、下方域40と上方域41とを区分する折り目部42は、長手方向Xに沿って直線状に延びている。おむつ1の伸長状態及び自然状態のいずれにおいても、折り目部42は表面シート21上に位置していることが、表面シート上に存在する着用者の体液と着用者の肌が接することを防ぎ、着用者の肌への負担軽減の観点から好ましい。また折り目部42は、おむつ1の伸長状態及び自然状態のいずれにおいても、吸収体23上に位置していることが、吸収体23の肌側を防漏カフ28が広く覆うことが可能となるため、体液漏れの防止の観点から好ましい。
【0026】
図5に示すとおり、防漏カフの28の下方域40は、おむつ1の長手方向Xにおける端部域において、その内面が表面シート21と接合されて第1接合部51を形成している。第1接合部51は、下方域40の内面と表面シート21の肌対向面との間を例えば接着剤を用いて接着することによって形成されている。また、図5に示すとおり、防漏カフの28の下方域40及び上方域41は、おむつ1の長手方向Xにおける端部域において、それらの外面どうしが接合されて第2接合部52を形成している。第2接合部52は、防漏カフ28を構成するシートを、折り目部42を折り線として外向きに二つ折りして下方域40と上方域41とに区分し、対向する下方域40と上方域41との間を例えば接着剤を用いて接着することによって形成されている。
【0027】
第1接合部51及び第2接合部52は吸収性本体2における長手方向Xの前後の端部域にのみ形成されており、少なくとも股下部1Bを含む端部域間の領域には形成されていない。
【0028】
図4及び図5に示す実施形態では、防漏カフ28における自由縁部28Bは、吸収体23及び吸収性コア(図示せず)の側縁よりも幅方向Yの外方に位置しているが、これに代えて、おむつ1の自然状態及び伸長状態の少なくとも一方の状態において、自由縁部28Bを、吸収体23の側縁上に位置させるか、又は吸収体23の側縁よりも幅方向Yの内側に位置させてもよい。こうすることで、防漏カフ28における上方域41が吸収体23の全体を覆うようになる。
【0029】
先に述べたとおり、防漏カフ28には糸状の防漏カフ形成用弾性部材29が配されているところ、該防漏カフ形成用弾性部材29は、図4及び図5に示すとおり、防漏カフ28の上方域41に配されている。防漏カフ形成用弾性部材29は、おむつ1の長手方向Xに沿って延びており、伸長状態で上方域41に固定されている。防漏カフ形成用弾性部材29を上方域41に固定するには、例えば防漏カフ28を構成する1枚のシートを二つ折りし、二つ折りされたシート間に防漏カフ形成用弾性部材29を伸長状態で配して接着剤等で固定すればよい。あるいは、防漏カフ28を構成する1枚のシートを二つ折りせず、該シートのいずれか一方の面に防漏カフ形成用弾性部材29を伸長状態で配して接着剤等で固定すればよい。
【0030】
図4に示すとおり、防漏カフ28の上方域41は、該上方域41の幅方向Yの中央を基準として自由縁部28B側に位置する第1領域41Aと折り目部42側に位置する第2領域41Bとを有している。第1領域41A及び第2領域41Bは、平面視して、長手方向Xに延びる矩形をしている。第1領域41A及び第2領域41Bそれぞれには、長手方向Xに沿って延びる防漏カフ形成用弾性部材29が伸長状態で1本以上配されている。したがって、上方域41全体では防漏カフ形成用弾性部材29が2本以上配されている。図4及び図5には、防漏カフ形成用弾性部材29が合計で2本配されている状態が示されている。図示していないが、防漏カフ28における折り目部42の位置に弾性部材が配されている場合には、該弾性部材は第2領域41Bに配された弾性部材の本数としてカウントする。防漏カフ28の下方域40に関しては、該下方域40に弾性部材が配されていてもよく、あるいは配されていなくてもよい。後述する本発明の効果を顕著なものとする観点からは、下方域40においては弾性部材が非配置であることが好ましい。下方域40に弾性部材が配されている場合であっても、その弾性部材の本数は、上述した弾性部材の本数にカウントしない。
【0031】
図4及び図5に示すとおり、防漏カフ28の上方域41には、第1領域41Aに位置する防漏カフ形成用弾性部材29である第1弾性部材29Aと第2領域41Bに位置する防漏カフ形成用弾性部材29である第2弾性部材29Bとが配されている。第1弾性部材29Aは、自由縁部28Bの位置又はその近傍に位置している。一方、第2弾性部材29Bは、第2領域41Bの幅方向Yにおける略中央部に位置している。第1弾性部材29Aと第2弾性部材29Bとは距離を隔てて配置されている。尤も第2弾性部材29Bは、第2領域41Bの幅方向Yにおける略中央部に位置していなくてもよく、例えば第2弾性部材29Bは、防漏カフ28の折り目部42の位置から、第1領域41Aと第2領域41Bとの境目近傍までのいずれかに位置すればよい。
【0032】
第1領域41Aと第2領域41Bとは、これらを伸長させたときの伸長性が相違することによって特徴付けられる。詳細には、防漏カフ28の上方域41の自然状態での伸び量を0とし、最大伸長状態での伸び量を100と定義したとき、伸び量が5であるときには、第1領域41Aの応力σ1が、第2領域41Bの応力σ2よりも大きくなっている。一方、伸び量が100であるときには、第2領域41Bの応力σ2が、第1領域41Aの応力σ1よりも大きくなっている。この関係をグラフに示すと図6に記載のとおりとなる。
【0033】
上方域41の自然状態での伸び量が0であるとは、上方域41にある防漏カフ形成用弾性部材29のすべてが伸長しておらず、該上方域41の長さが最も短い状態をいう。上方域41の中でも、特に、自由縁部28Bに最も近い側に位置する防漏カフ形成用弾性部材29が配されている部位での上方域41の長さが最も短くなっている。この、自由縁部28Bに最も近い側に位置する防漏カフ形成用弾性部材29が配されている部位での上方域41の長さをL1とする。L1は、該防漏カフ形成用弾性部材29の延長線上に存在する。防漏カフ28から上方域41のみを切り出し、更に該上方域41を第1領域41Aと第2領域41Bとに二分して測定した場合には、第1領域41Aと第2領域41Bとで長さが異なる場合があるが、その場合においても、L1を伸び量0のときの長さとする。
【0034】
図6に示すとおり、伸び量が5の場合、第1領域41Aの応力σ1が、第2領域41Bの応力σ2よりも大きくなっている。伸び量を次第に増加させていくと、応力σ1及びσ2のいずれも増加していくが、増加率は両者において相違する。具体的には、応力σ1は、グラフの傾きが小さく、増加率が小さいので、伸び量を大きく増加させても応力σ1は大きく増加しない。これとは対照的に、応力σ2は、グラフの傾きが大きく、増加率が大きいので、伸び量を大きく増加させると応力σ2も大きく増加する。その結果、伸び量が特定の値Xにおいて、応力σ1とσ2との値が一致し、それよりも伸び量が大きくなると、応力σ1とσ2との大小関係がそれまでと逆転し、応力σ2が応力σ1よりも大きくなる。
【0035】
第1領域41Aの応力σ1と、第2領域41Bの応力σ2との間にこのような関係があることで、おむつ1においては、着用者の姿勢が変化することに起因して、おむつ1と着用者の脚周りとの距離が変化した場合であっても、着用者の脚周りへの防漏カフ28の当接が安定的に維持され、両者間に液漏れ発生の原因となる隙間が発生しづらくなるという有利な効果が奏される。更におむつ1の着用状態において、第1領域41Aの応力σ1が過度に高くならないので、着用者の脚周りに加わる着用圧が過度に高くなることが効果的に防止される。その結果、おむつ1と着用者の脚周りとの距離に応じた適切な着用圧を着用者の脚周りに与えることができるので、着用者への身体的な負担が少なくなる。着用圧を単に高くすれば隙間の発生は防止できるが、そのような発想と異なり、本発明においては、第1領域41Aの応力σ1と、第2領域41Bの応力σ2との間に上述の関係があることで、必要なときに必要十分な着用圧を着用者の脚周りに与えることができる。これらのことを図7及び図8を参照しながら説明する。
【0036】
図7は、おむつ1を着用者に着用させたときの股間部の状態を模式的に表したものである。同図に示す状態は、着用者の姿勢に起因して着用者の身体と吸収性本体2との間の距離が離れた状態である。このような状態においては、防漏カフ28の伸び量は一般に小さくなっている。その結果、第1領域41Aの応力σ1と第2領域41Bの応力σ2とを比較すると、σ1>σ2となっている。その結果、第1領域41Aが、第2領域41Bよりも強く収縮しようとするので、防漏カフ28は、図7に示すとおり、第1領域41Aに配置されている第1弾性部材29Aの位置が最高位置となるように起立する。したがって防漏カフ28は、第1弾性部材29Aの位置が、着用者の鼠蹊部近傍に適切に当接し、着用者の脚周りと防漏カフ28との間に隙間が発生しづらくなる。それによって、液漏れの発生が効果的に防止される。
【0037】
一方、図8に示す状態は、着用者の姿勢に起因して着用者の身体と吸収性本体2との間の距離が近くなった状態である。このような状態においては、防漏カフ28の伸び量は一般に大きくなっている。したがって、第1領域41Aの応力σ1と第2領域41Bの応力σ2とを比較すると、σ1<σ2となっている。その結果、第2領域41Bが、第1領域41Aよりも強く収縮しようとするので、防漏カフ28は、図8に示すとおり、第2領域41Bに配置されている第2弾性部材29Bの位置が最高位置となるように起立する。したがって防漏カフ28は、第2領域41Bの第2弾性部材29Bの位置が、着用者の鼠蹊部に適切に当接し、着用者の脚周りと防漏カフ28との間に隙間が発生しづらくなる。それによって、液漏れの発生が効果的に防止される。また、上述したように第1領域41Aの応力σ1の増加率は低いため、着用者の身体と吸収性本体2との間の距離が近くなったときでも着用者の脚に対して第1領域41Aは低い着用圧で当接することになるので、防漏カフ28全体としてみたときに、着用者の脚周りに対し、高すぎない着用圧になっている。
【0038】
このように、本実施形態のおむつ1によれば、おむつ1の着用状態において、おむつ1と着用者の身体との間の距離に応じて、防漏カフ28が着用者の鼠蹊部に当接する位置が変化するので、着用者の脚周りへの防漏カフ28の当接が安定的に維持される。この効果を一層顕著なものとする観点から、伸び量が6以上70以下の範囲で、特に7以上65以下の範囲で、第1領域41Aの応力σ1と、第2領域41Bの応力σ2との大小関係が逆転することが好ましい。第1領域41Aの応力σ1及び第2領域41Bの応力σ2の大小関係は、例えば後述する種々の手段によって適切に調整することができる。
【0039】
上述した「伸び量」は次のように定義される。上方域41にある防漏カフ形成用弾性部材29すべてが伸長しておらず、長さが最も短い状態においては、上述したとおり上方域41の中でも自由縁部28Bに最も近い側に位置する防漏カフ形成用弾性部材29が配されている部位での防漏カフ28の長さが最も短くなっている。このときの、自由縁部28Bに最も近い側に位置する防漏カフ形成用弾性部材29が配されている部位での防漏カフ28の自然長での長さをL1とし、最大伸長状態での長さをL2としたとき、L1とL2との間の任意の長さLでの伸び量は、〔(L−L1)/(L2−L1)〕×100で表される。最大伸長状態での長さとは、第1領域41A及び第2領域41Bから第1及び第2弾性部材29A,29Bを除去した状態で測定される第1領域41A及び第2領域41Bの長さのことである。
【0040】
第1領域41Aの応力σ1及び第2領域41Bの応力σ2は次のようにして測定される。
(1)防漏カフ28から上方域41を切りとる。更に、上方域41の幅方向Yに沿う中央の位置で、第1領域41A及び第2領域41Bに二分し測定片を調製する。
(2)各測定片について、長手方向Xに沿う両端部に位置する弾性部材が存在していない領域をそれぞれ、端部から10mm幅で、(株)ORIENTEC社製のテンシロン万能試験機(RTC−1210A)のチャックに挟む。
(3)各測定片を、伸び量が100になるまで速度300mm/minで上方向に引っ張り、伸び量が5のときの行きの応力と、伸び量が100のときの応力を測定する。伸び量が100のときとは、第1領域41A及び第2領域41Bともに、チャック間距離が、最大伸長状態での長さL2から挟みしろ20mmを差し引いた値になるまで引っ張ったときを指す。
【0041】
おむつ1と着用者の身体との間の距離にかかわらず、防漏カフ28が着用者の鼠蹊部に適切に当接するようにする観点から、自然状態において、すなわち伸び量が0において、第2領域41Bにおいて折り目部42に最も近い側に位置する第2弾性部材29Bが配されている部位での第2領域41Bの長さLbよりも、第1領域41Aにおいて自由縁部28Bに最も近い側に位置する第1弾性部材29Aが配されている部位での第1領域41Aの長さLaの方が短くなっていることが好ましい。つまりLa<Lbであることが好ましい。こうすることで、防漏カフ28の起立性が一層良好になり、特に図7に示す状態において、防漏カフ28が着用者の鼠蹊部に適切に当接するようになる。この効果を一層顕著なものとする観点から、Lb/Laの値は、1.01以上2.00以下であることが好ましく、1.01以上1.50以下であることが更に好ましい。なお、防漏カフ28の上方域41に3本以上の防漏カフ形成用弾性部材29が配されている場合には、折り目部42に最も近い側に位置するものから、自由縁部28Bに最も近い側に位置するものに向けて、防漏カフ形成用弾性部材29が配されている部位での防漏カフ28の長さが漸次短くなっていることが好ましい。当該長さは連続的に短くなっていてもよく、あるいは段階的に短くなっていてもよい。
【0042】
前記のLa及びLbの測定は次のように行う。
(1)防漏カフ28を折り目部42に沿って切断し、上方域41を切り出す。折り目部42の位置に弾性部材が配されている場合には、該弾性部材は第2弾性部材29Bと見なして第2領域41Bに含まれるように防漏カフ28を切断する。更に、上方域41の幅方向に沿う中央において、該上方域41を第1領域41Aと第2領域41Bの2つに切り分けて、測定片を調製する。上方域41の幅方向に沿う中央に弾性部材が配されている場合には、該弾性部材は、第1弾性部材29A及び第2弾性部材29Bであると見なし、第1領域41Aに含まれるように切り分けた測定片、及び第2領域41Bに含まれるように切り分けた測定片の2種を調製する。
(2)第1及び第2弾性部材29A,29Bの収縮力が発現しない限度において、それぞれの測定片を直線状に拡げる。このとき、測定片を、粘着テープなどを用いて台に貼り付けるとよい。
(3)それぞれの測定片において、第1及び第2弾性部材29A,29Bが配されている部位における該測定片の一方の端部から他方の端部までの最短部の長さを測定する。最短部は第1及び第2弾性部材29A,29Bの延長線上に位置している。
(4)(1)〜(3)の測定を3回行い、(3)で測定した第1及び第2弾性部材29A,29Bが配されている部位における測定片の最短部の長さの3回の測定結果の平均をそれぞれLa及びLbとする。
【0043】
La及びLbが上述の関係を満たすようにするためには、例えば防漏カフ28において、上方域41の防漏カフ形成用弾性部材29のうち、第2領域41Bにおいて最も折り目部42に近い側に位置する第2弾性部材29Bの伸長率Sbよりも、第1領域41Aに配された第1弾性部材29Aのうち、自由縁部28Bに最も近い側に位置する該弾性部材29Aの伸長率Saの方が高くなっていることが好ましい。特に、第2領域41Bに複数の第2弾性部材29Bが配されている場合には、第2領域41Bに配されているすべての第2弾性部材29Bの伸長率Sbよりも、第1領域41Aに配された第1弾性部材29Aのうち、自由縁部28Bに最も近い側に位置する該弾性部材29Aの伸長率Saの方が高くなっていることが好ましい。特に、Sa/Sbの値は、1.01以上1.80以下であることが好ましく、1.01以上1.60以下であることが更に好ましい。SbよりもSaを大きくするには、第2弾性部材29Bよりも第1弾性部材29Aを高い伸長率で伸長させた状態下に、第1弾性部材29A及び第2弾性部材29Bを防漏カフ28に取り付ければよい。なお、防漏カフ28の上方域41に3本以上の防漏カフ形成用弾性部材29が配されている場合には、第1領域41Aにおいて自由縁部28Bに最も近い側に位置する第1弾性部材29Aの伸長率Saが、第2領域41Bのすべての第2弾性部材29Bの伸長率Sbよりも高くなっていることが好ましい。更に、折り目部42に最も近い側に位置するものから、自由縁部28Bに最も近い側に位置するものに向けて、防漏カフ形成用弾性部材29の伸長率が漸次高くなっていることがより一層好ましい。この場合、伸長率は連続的に高くなっていてもよく、あるいは段階的に高くなっていてもよい。
【0044】
前記のSa及びSbの測定は次のように行う。
(1)第1領域41A及び第2領域41Bそれぞれを最大伸長状態での長さに伸ばして固定し、第1及び第2弾性部材29A,29Bが防漏カフ28に接着剤などで固定されている伸縮領域の長さを計測する。伸縮領域の長さとは、第1及び第2弾性部材29A,29Bそれぞれの固定端間の距離のことである。固定端とは、第1及び第2弾性部材29A,29Bの長手方向Xにおける端部に位置し、且つ防漏カフ28と固定されている位置の端のことである。
(2)第1及び第2弾性部材29A,29Bが防漏カフ28に固定されている領域の両側端部でこれらの弾性部材29A,29Bを切り、エタノールなどを用いて防漏カフ28からこれらの弾性部材29A,29Bを取り外す。
(3)第1及び第2弾性部材29A,29Bを、収縮力が発現しない程度に直線状に拡げてそれらの自然長を測定する。このとき、取り出した第1及び第2弾性部材29A,29Bを粘着テープなどで台に貼り付けるとよい。
(4)(1)で測定した伸縮領域の長さを、(3)で測定した第1及び第2弾性部材29A,29Bの自然長で割ることで、伸長率Sa及びSbが算出される。
【0045】
防漏カフ28の起立性を一層良好にするために、上方域41の防漏カフ形成用弾性部材29のうち、第1領域41Aにおいて自由縁部28Bに最も近い側に位置する第1弾性部材29Aは、防漏カフ28に固定されている長さが最も長くなっていることが好ましい。防漏カフ28の上方域41に3本以上の防漏カフ形成用弾性部材29が配されている場合には、第1領域41Aにおいて少なくとも自由縁部28Bに最も近い側に位置する第1弾性部材29Aが、第2領域41Bの第2弾性部材29Bに比べて防漏カフ28に固定されている長さが最も長くなっていることが好ましい。更に、折り目部42に最も近い側に位置するものから、自由縁部28Bに最も近い側に位置するものに向けて、上方域41の防漏カフ形成用弾性部材29が防漏カフに固定されている長さが漸次長くなっていることが好ましい。当該長さは連続的に長くなっていてもよく、あるいは段階的に長くなっていてもよい。この場合、上方域41のすべての防漏カフ形成用弾性部材29は少なくとも股下部1Bを通っていることが好ましい。また、上方域41の各防漏カフ形成用弾性部材29は、折り目部42に最も近い側に位置するものから、自由縁部28Bに最も近い側に位置するものに向けて、固定端が、長手方向Xの外方側に順次位置することが好ましい。固定端の定義は上述のとおりである。
【0046】
上方域41に配された防漏カフ形成用弾性部材29の前記固定端に関し、2つの固定端のうち少なくとも一方の固定端が、吸収性コアの長手方向Xにおける端縁よりも、長手方向Xの内側に位置していることが、吸収性コアが、上方域41に配された防漏カフ形成用弾性部材29の収縮力に抗して変形しづらくなる観点から好ましい。この観点から、上方域41に配された防漏カフ形成用弾性部材29の2つの固定端の双方が、吸収性コアの長手方向Xにおける端縁よりも、長手方向Xの内側に位置していることが好ましい。同様の観点から、上方域41に配されたすべての防漏カフ形成用弾性部材29について、その固定端が、吸収性コアの長手方向Xにおける端縁よりも、長手方向Xの内側に位置していることが好ましい。
【0047】
おむつ1と着用者の身体との間の距離にかかわらず、防漏カフ28が着用者の鼠蹊部に適切に当接するようにする観点から、上方域41に配された防漏カフ形成用弾性部材29のうち、第1領域41Aにおいて自由縁部28Bに最も近い側に位置する第1弾性部材29AのモジュラスMaよりも、第2領域41Bにおいて折り目部42に最も近い側に位置する第2弾性部材29BのモジュラスMbの方が高くなっていることが好ましい。モジュラスとは、物体がその原形を保つために外力に対して抵抗しようとする引張応力のことである。Ma<Mbとすることで、防漏カフ28の伸び量が大きい領域において第2弾性部材29BのモジュラスMbを容易に大きくすることができる。この観点から、Mb/Maの値は、1.01以上2.00以下であることが好ましく、1.01以上1.80以下であることが一層好ましい。MbをMaよりも大きくするには、例えば第2弾性部材29Bとして高反発弾性を示すイソプレン系のゴムを用いるか、第1弾性部材29Aとして低反発弾性を示すスチレンブタジエン系の糸ゴムを用いるといった方法などがある。なお、防漏カフ28の上方域41に3本以上の防漏カフ形成用弾性部材29が配されている場合には、第1領域41Aにおいて少なくとも自由縁部28Bに最も近い側に位置する第1弾性部材29AのモジュラスMaが、第2領域41Bに配されたすべての第2弾性部材29Bのモジュラスよりも低くなっていることが好ましい。更に、自由縁部28Bに最も近い側に位置するものから、折り目部42に最も近い側に位置するものに向けて、防漏カフ形成用弾性部材29のモジュラスが漸次高くなっていることが好ましい。この場合、モジュラスは連続的に高くなっていてもよく、あるいは段階的に高くなっていてもよい。
【0048】
上述した「モジュラス」は次のように定義される。上方域41に配された防漏カフ形成用弾性部材29それぞれを防漏カフ28から取り外す。取り外した防漏カフ形成用弾性部材29の自然長での長さをLE1とする。また、LE1の2倍の長さをLE2とする。更に、防漏カフ形成用弾性部材29をLE1の1.5倍の長さLE1.5に引っ張ったときの応力をSE1.5とし、LE2の長さに引っ張ったときの応力をSE2とする。そしてSE1.5とSE2との比である(SE2)/(SE1.5)の値をモジュラスMa,Mbの指標とする。
【0049】
前記のモジュラスMa及びMbの測定は次のように行う。
(1)エタノールなどを用いて防漏カフ28から防漏カフ形成用弾性部材29を取り外す。
(2)防漏カフ形成用弾性部材29を、収縮力が発現しない程度に直線状に拡げて、防漏カフ形成用弾性部材29の両側端部から内側10mmの位置を挟みしろとして印をつけ、両印の間の伸縮領域の自然長(LE1)を測定する。
(3)防漏カフ形成用弾性部材29を、端部から10mm幅で(株)ORIENTEC社製のテンシロン万能試験機(RTC−1210A)に掴み、チャック間距離が、防漏カフ形成用弾性部材29の伸縮領域の自然長の2倍(LE2)になるまで速度300mm/minで上方向に引っ張り、そのときの応力を測定する(SE2)。
(4)防漏カフ形成用弾性部材29を、その伸縮領域の自然長の1.5倍(LE1.5)まで引っ張り、そのときの応力を測定する(SE1.5)。そしてSE2とSE1.5との比である(SE2)/(SE1.5)の値を算出する。
以上の測定においては、それぞれの防漏カフ形成用弾性部材29の伸縮領域の自然長(LE1)は、任意の長さに揃えてもよい。例えば、伸縮領域の自然長(LE1)を70mmとした場合には、挟みしろを含む防漏カフ形成用弾性部材29の長さが90mmになるように該弾性部材29を切り出し、両端部を10mmずつ挟んで、チャック間距離が、該弾性部材29の伸縮領域の自然長(LE1)、すなわち70mmからその2倍(LE2)の長さ、すなわち140mmになるまで引っ張ればよい。
【0050】
上方域41に配された防漏カフ形成用弾性部材29のうち、第1領域41Aにおける自由縁部28Bに最も近い側に位置する第1弾性部材29Aの太さDaよりも、第2領域41Bにおいて前記折り目部に最も近い側に位置する第2弾性部材29Bの太さDbの方が太くなっていることも、おむつ1と着用者の身体との間の距離にかかわらず、防漏カフ28が着用者の鼠蹊部に適切に当接するようにする観点から好ましい。Da<Dbとすることで、防漏カフ28の伸び量が大きい領域において第2領域41Bを強く収縮させることができる。この観点から、Db/Daの値は、1.30以上3.00以下であることが好ましく、1.50以上2.60以下であることが更に好ましい。なお、防漏カフ28の上方域41に3本以上の防漏カフ形成用弾性部材29が配されている場合には、第1領域41Aにおいて少なくとも自由縁部28Bに最も近い側に位置する第1弾性部材29Aの太さDaよりも、第2領域41Bに配されたすべての第2弾性部材29Bの太さの方が太くなっていることが好ましい。更に、上方域41の防漏カフ形成用弾性部材29の太さはそれぞれ異なっていてもよく、その場合には自由縁部28Bに最も近い側に位置するものから、折り目部42に最も近い側に位置するものに向けて、防漏カフ形成用弾性部材29の太さが漸次太くなっていることが好ましい。当該太さは連続的に太くなっていてもよく、あるいは段階的に太くなっていてもよい。
【0051】
前記と同様の観点から、上方域41に、長手方向Xに延びる防漏カフ形成用弾性部材29が伸長状態で3本以上配されている場合には、第2領域41Bに位置する第1弾性部材29Bの本数Nbが、第1領域41Aに位置する第1弾性部材29Aの本数Naよりも多くなっていることが好ましい。特にNb/Naの値は、1超3以下であることが好ましく、1超2以下であることが一層好ましい。上方域41の幅方向Yに沿う中央に防漏カフ形成用弾性部材29が配されている場合には、上述したLa及びLbの測定の場合と異なり、該弾性部材29は、第2領域41Bに位置する第2弾性部材29Bの本数Nbにカウントする。
【0052】
前記と同様に、上方域41に、長手方向Xに延びる防漏カフ形成用弾性部材29が伸長状態で3本以上配されている場合には、防漏カフ形成用弾性部材29は、隣り合う該防漏カフ形成用弾性部材29の間隔がすべて同じになっているか、又は該間隔が折り目部42に向かうほど短くなっていることが好ましい。後者の場合、間隔が狭い状態になっている隣り合う2本の防漏カフ形成用弾性部材29は、擬似的に1本の防漏カフ形成用弾性部材29と同様の伸縮挙動をするので、防漏カフ28の伸び量が大きい領域において、第2領域41Bに配されている防漏カフ形成用弾性部材29を強く収縮させることができる。
【0053】
先に述べたとおり、防漏カフ28の下方域40は、その内面が第1接合部51において表面シート21の肌対向面と接合されている。この場合、第1接合部51は、図9(a)に示すとおり、幅方向Yの内側から外側に向かうに連れて、長手方向Xに沿う長さが増加していることが好ましい。同図では、幅方向Yの内側から外側に向かうに連れて、長手方向Xに沿う長さが漸増している状態が示されている。こうすることで、下方域40の起立性が一層良好になる。図9(a)に示す実施形態では、幅方向Yの最も内側において、第1接合部51の長手方向Xに沿う長さはゼロになっているが、これに代えて図9(b)に示すとおり、幅方向Yの最も内側において、第1接合部51の長手方向Xに沿う長さがゼロ超の所定の値になっていてもよい。また、図9(a)及び(b)に示す実施形態では、第1接合部51は、幅方向Yに沿って連続して形成されていたが、これに代えて図9(c)に示すとおり、第1接合部51を二つの接合部51a,51bに分割し、両接合部51a,51bを幅方向Yに沿って不連続に形成し、第1接合部51全体でみたとき、幅方向Yの内側から外側に向かうに連れて、長手方向Xに沿う長さが増加するようにしてもよい。なお、二つの接合部51a,51bは、幅方向Yの外側に位置する接合部51aの方が、内側に位置する接合部51bよりも長さが長くなっている。
【0054】
一方、第2接合部52に関しては、図10(a)に示すとおり、幅方向Yの外側から内側に向かうに連れて、長手方向Xに沿う長さが増加していることが好ましい。同図では、幅方向Yの外側から内側に向かうに連れて、長手方向Xに沿う長さが漸増している状態が示されている。こうすることで、上方域41の起立性が一層良好になる。図10(a)に示す実施形態では、幅方向Yの最も外側においては、第1接合部51の長手方向Xに沿う長さはゼロになっているが、これに代えて図10(b)に示すとおり、幅方向Yの最も外側において、第2接合部52の長手方向Xに沿う長さがゼロ超の所定の値になっていてもよい。また、図10(a)及び(b)に示す実施形態では、第2接合部52は、幅方向Yに沿って連続して形成されていたが、これに代えて図10(c)に示すとおり、第2接合部52を二つの接合部52a,52bに分割し、両接合部52a,52bを幅方向Yに沿って不連続に形成し、第2接合部52全体でみたとき、幅方向Yの外側から内側に向かうに連れて、長手方向Xに沿う長さが増加するようにしてもよい。なお、二つの接合部52a,52bは、幅方向Yの内側に位置する接合部52aの方が、外側に位置する接合部52bよりも長さが長くなっている。
【0055】
図11には、おむつ1の股下部1Bの要部が拡大して示されている。同図は、展開且つ伸長状態のおむつ1を平面視したものである。同図に示すとおり、腹側部レッグ弾性部材4A及び背側部レッグ弾性部材4Cは、それらの一端がそれぞれ腹側部1A及び背側部1Cの各側縁の位置において終端しているとともに、それらの他端を含む他端域4a’,4c’が股下部1Bにおいて幅方向Yの内側に向けて延びている。そして、腹側部レッグ弾性部材4Aの他端域4a’と、背側部レッグ弾性部材4Cの他端域4c’とが、股下部1Bにおいて交差している。そして、腹側部レッグ弾性部材4A及び背側部レッグ弾性部材4Cと、防漏カフ形成用弾性部材29とは、股下部1Bにおいて厚み方向に重なっている。こうすることで、腹側部レッグ弾性部材4A及び背側部レッグ弾性部材4Cの収縮作用に起因して防漏カフ形成用弾性部材29が着用者の身体に向けて持ち上げられるので、防漏カフ28と着用者の身体との間に隙間が一層発生しづらくなる。また、股下部1Bにおいて厚み方向に重なっている腹側部レッグ弾性部材4Aと背側部レッグ弾性部材4Cとの交点Cpは、防漏カフ28の防漏カフ形成用弾性部材29のうち、第1領域41Aにおける自由縁部28Bに最も近い側に位置する第1弾性部材29Aよりも、幅方向Yの内側に位置している。
【0056】
図11に示す実施形態では、他端域4a’における腹側部レッグ弾性部材4Aと、他端域4c’における背側部レッグ弾性部材4Cとの交点Cpが複数存在している、この場合、複数の交点Cpのうちの少なくとも一つが、第1領域41Aにおける自由縁部28Bに最も近い側に位置する第1弾性部材29Aよりも幅方向Yの内側に位置していればよい。また、図11に示す状態は、おむつ1の自然状態で満たされていてもよい。つまり、図11に示す状態は、おむつ1の自然状態及び伸長状態のうちの少なくとも一方で満たされていればよい。
【0057】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態は、本発明の吸収性物品をパンツ型使い捨ておむつに適用したものであるが、これに代えて本発明を展開型の使い捨ておむつに適用してもよい。また、本発明を使い捨ておむつ以外の他の吸収性物品、例えば生理用ナプキン及び失禁パッド等に適用してもよい。
【0058】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の吸収性物品を開示する。
<1>
幅方向の両側部域それぞれに、長手方向に沿って延びる防漏カフを備え、
前記防漏カフは、該防漏カフの長手方向に沿って延びる折り目部において折り曲げられて上方域と下方域とに区分されており、
前記折り目部において折り曲げられた状態の前記防漏カフは、該折り目部が、該防漏カフにおける自由縁部よりも幅方向内方に位置しており、
前記上方域は、該上方域の幅方向の中央を基準として自由縁部側に位置する第1領域と前記折り目部側に位置する第2領域とを有し、
前記第1領域及び前記第2領域それぞれに、長手方向に沿って延びる弾性部材が伸長状態で1本以上配されており、
前記上方域の自然状態での伸び量を0とし、最大伸長状態での伸び量を100と定義したとき、
前記伸び量が5であるときには、前記第1領域の応力σ1が、前記第2領域の応力σ2よりも大きく、
前記伸び量が100であるときには、前記第2領域の応力σ2が、前記第1領域の応力σ1よりも大きい、吸収性物品。
【0059】
<2>
前記伸び量が6以上70以下の範囲で、前記第1領域の応力σ1と、前記第2領域の応力σ2との大小関係が逆転する前記<1>に記載の吸収性物品。
<3>
前記伸び量が7以上65以下の範囲で、前記第1領域の応力σ1と、前記第2領域の応力σ2との大小関係が逆転する前記<2>に記載の吸収性物品。
<4>
自然状態において、前記第2領域において前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材が配されている部位での該第2領域の長さよりも、前記第1領域において前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材が配されている部位での該第1領域の長さの方が短くなっている前記<1>ないし<3>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<5>
自然状態において、前記第2領域において前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材が配されている部位での該第2領域の長さLbと、前記第1領域において前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材が配されている部位での該第1領域の長さLaとの比率であるLb/Laの値は、1.01以上2.00以下であることが好ましく、1.01以上1.50以下であることが更に好ましい前記<1>ないし<4>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<6>
前記防漏カフの前記上方域に3本以上の弾性部材が配されており、
前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材から、前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材に向けて、弾性部材が配されている部位での前記防漏カフの長さが漸次短くなっている前記<1>ないし<5>のいずれか1に記載の吸収性物品。
【0060】
<7>
前記弾性部材のうち、前記第2領域において前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材の伸長率よりも、前記第1領域において前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材の伸長率の方が高くなっている前記<1>ないし<6>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<8>
前記上方域に、長手方向に延びる前記弾性部材が伸長状態で3本以上配されており、
前記第1領域において前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材の伸長率は、前記第2領域に配置されたすべての弾性部材の伸長率よりも高く、
前記弾性部材は、前記折り目部に最も近い側に位置するものから、前記自由縁部に最も近い側に位置するものに向けて、伸長率が漸次高くなっている前記<1>ないし<7>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<9>
前記第1領域において前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材の伸長率Saと、前記第2領域において最も前記折り目部に近い側に位置する弾性部材の伸長率Sbとの比率であるSa/Sbの値は、1.01以上1.80以下であることが好ましく、1.01以上1.60以下であることが更に好ましい前記<1>ないし<8>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<10>
前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材から、前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材に向けて、弾性部材の伸長率が漸次高くなっている前記<1>ないし<9>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<11>
前記弾性部材のうち、前記第1領域において前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材のモジュラスよりも、前記第2領域において前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材のモジュラスの方が高くなっている前記<1>ないし<10>のいずれか1に記載の吸収性物品。
【0061】
<12>
前記第2領域において前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材のモジュラスMbと、前記第1領域において前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材のモジュラスMaとの比率であるMb/Maの値は、1.01以上2.00以下であることが好ましく、1.01以上1.80以下であることが一層好ましい前記<1>ないし<11>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<13>
前記防漏カフの前記上方域に3本以上の弾性部材が配されており、
前記第1領域において少なくとも前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材のモジュラスMaが、前記第2領域に配されたすべての弾性部材のモジュラスよりも低くなっている前記<1>ないし<12>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<14>
前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材から、前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材に向けて、弾性部材のモジュラスが漸次高くなっている前記<1>ないし<13>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<15>
前記弾性部材のうち、前記第1領域において前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材の太さよりも、前記第2領域において前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材の太さの方が太くなっている前記<1>ないし<14>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<16>
前記上方域に、長手方向に延びる前記弾性部材が伸長状態で3本以上配されており、
前記第2領域に配置されたすべての弾性部材の太さは、前記第1領域において自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材の太さよりも太く、
前記弾性部材は、前記自由縁部に最も近い側に位置するものから、前記折り目部に最も近い側に位置するものに向けて、太さが漸次太くなっている前記<1>ないし<15>のいずれか1に記載の吸収性物品。
【0062】
<17>
前記第2領域において前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材の太さDbと、前記第1領域における前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材の太さDaとの比率であるDb/Daの値は、1.30以上3.00以下であることが好ましく、1.50以上2.60以下であることが更に好ましい前記<1>ないし<16>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<18>
前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材から、前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材に向けて、弾性部材の太さが漸次太くなっている前記<1>ないし<17>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<19>
前記上方域に、長手方向に延びる前記弾性部材が伸長状態で3本以上配されており、
前記第2領域に位置する弾性部材の本数が、前記第1領域に位置する弾性部材の本数よりも多くなっている前記<1>ないし<18>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<20>
前記第2領域に位置する弾性部材の本数Nbと、前記第1領域に位置する弾性部材の本数Naとの比率であるNb/Naの値は、1超3以下であることが好ましく、1超2以下であることが一層好ましい前記<1>ないし<19>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<21>
前記上方域に位置する弾性部材は、隣り合う該弾性部材の間隔がすべて同じになっているか、又は該間隔が前記折り目部に向かうほど短くなっている前記<1>ないし<20>のいずれか1に記載の吸収性物品。
【0063】
<22>
前記弾性部材のうち、前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材は、前記防漏カフに固定されている長さが最も長くなっている前記<1>ないし<21>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<23>
前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材から、前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材に向けて、前記上方域の弾性部材が前記防漏カフに固定されている長さが漸次長くなっている前記<1>ないし<22>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<24>
前記上方域の各弾性部材は、前記折り目部に最も近い側に位置する弾性部材から、前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材に向けて、固定端が、長手方向の外方側に順次位置する前記<1>ないし<23>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<25>
前記弾性部材は、長手方向における端部に位置する前記防漏カフとの2つの固定端のうち少なくとも一方の固定端が、吸収性コアの長手方向における端縁よりも、長手方向の内側に位置している前記<1>ないし<24>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<26>
前記上方域に配された弾性部材の2つの固定端の双方が、吸収性コアの長手方向における端縁よりも、長手方向の内側に位置している前記<1>ないし<25>のいずれか1に記載の吸収性物品。
【0064】
<27>
前記折り目部が表面シート上に位置している前記<1>ないし<26>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<28>
前記折り目部が吸収体上に位置している前記<1>ないし<27>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<29>
前記下方域は、長手方向における端部域において、その内面が表面シートと接合されて第1接合部を形成しており、
第1接合部は、幅方向の内側から外側に向かうに連れて、長手方向に沿う長さが増加している前記<1>ないし<28>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<30>
前記下方域及び前記上方域は、長手方向における端部域において、それらの外面どうしが接合されて第2接合部を形成している前記<1>ないし<29>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<31>
第2接合部は、幅方向の外側から内側に向かうに連れて、長手方向に沿う長さが増加している前記<30>に記載の吸収性物品。
【0065】
<32>
前記自由縁部は、吸収体の側縁上に位置しているか、又は該側縁よりも幅方向の内側に位置している前記<1>ないし<31>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<33>
着用状態において、着用者の腹側に配される腹側部及び背側に配される背側部並びにそれらの間に位置する股下部を有し、
前記腹側部寄りに位置するレッグ開口部に沿って腹側部レッグ弾性部材が配されているとともに、前記背側部寄りに位置するレッグ開口部に沿って背側部レッグ弾性部材が配されており、
前記腹側部レッグ弾性部材及び前記背側部レッグ弾性部材は、それらの一端がそれぞれ前記腹側部及び前記背側部の各側縁の位置において終端しているとともに、それらの他端を含む他端域が前記股下部において幅方向の内側に向けて延びている前記<1>ないし<32>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<34>
展開且つ伸長状態の前記吸収性物品の平面視において、前記腹側部レッグ弾性部材及び前記背側部レッグ弾性部材と、前記防漏カフの前記弾性部材とが、前記股下部において厚み方向に重なっている前記<33>に記載の吸収性物品。
<35>
展開且つ伸長状態の前記吸収性物品の平面視において、前記股下部において厚み方向に重なっている前記腹側部レッグ弾性部材と前記背側部レッグ弾性部材との交点が、前記防漏カフの前記弾性部材のうち、前記第1領域における前記自由縁部に最も近い側に位置する弾性部材よりも、幅方向の内側に位置している前記<33>又は<34>に記載の吸収性物品。
<36>
前記下方域においては弾性部材が非配置である前記<1>ないし<35>のいずれか1に記載の吸収性物品。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上、詳述したとおり、本発明によれば、着用者の姿勢が変化することに起因して、吸収性物品と着用者の脚周りとの距離が変化した場合であっても、着用者の脚周りへの防漏カフの当接が安定的に維持され、両者間に液漏れ発生の原因となる隙間が発生しづらくなる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11